球脊髄性筋萎縮症

Spinal and Bulbar Muscular Atrophy, SBMA

球脊髄性筋萎縮症(Spinal and Bulbar Muscular Atrophy, SBMA)|球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は、成人男性に発症し、脳幹と脊髄の下位運動ニューロンが徐々に障害されて、四肢の筋力低下や筋萎縮、飲み込み・話すことの障害(球麻痺)がゆっくり進む遺伝性の神経変性疾患です。原因はアンドロゲン受容体(AR)遺伝子の異常で、男性ホルモンが病態に深く関わります。進行は緩やかですが、長い経過のなかで誤嚥性肺炎などの合併症が生活や生命予後に影響します。

球脊髄性筋萎縮症の要点

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は、アンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート伸長で起こるX連鎖性の遺伝性神経変性疾患で、成人男性に発症し下位運動ニューロンが障害されます。四肢の筋力低下・筋萎縮や球麻痺(嚥下・構音障害)がゆっくり進行し、日本では指定難病(告示番号1)です。

別名・略称ケネディ病、Kennedy病、ケネディ・オルター・ソン症候群、Kennedy-Alter-Sung症候群、SBMA、Kennedy disease、X連鎖性球脊髄性筋萎縮症、X-linked spinal and bulbar muscular atrophy
分野神経・筋疾患
遺伝形式X連鎖性遺伝(AR遺伝子のCAGリピート伸長)
好発年齢成人男性に発症(リピート数が長いほど発症が早い傾向)
主な症状四肢の筋力低下・筋萎縮、球麻痺(嚥下・構音障害)、女性化乳房など
主な検査AR遺伝子のCAGリピート数を調べる遺伝子検査
主な治療リュープロレリン酢酸塩による進行抑制、リハビリテーションなど
受診する主な診療科神経内科

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球脊髄性筋萎縮症とは

SBMAは、X染色体上のアンドロゲン受容体(AR)遺伝子の第1エクソンにあるCAG繰り返し配列(CAGリピート)が異常に伸びることで起こるX連鎖性の遺伝性疾患です。運動ニューロン疾患に分類され、障害の主体は脳幹の運動神経核と脊髄前角にある下位運動ニューロンです。上位運動ニューロン(錐体路)の障害は通常みられません。神経症状に加えて、女性化乳房・精巣萎縮などの軽いアンドロゲン不応症状、肝機能障害・耐糖能異常・脂質異常症などの全身所見を伴うことが特徴です。骨格筋そのものの障害も病態に関わることが近年明らかになっています。

1968年に米国のKennedyらが家族性の疾患として詳しく報告したため、ケネディ病(Kennedy-Alter-Sung症候群)とも呼ばれます。1991年にAR遺伝子のCAGリピート伸長が原因と特定されました。これはハンチントン病や一部の脊髄小脳変性症と同じポリグルタミン病として初めて報告された疾患です。病型の明確な下位分類はありません。リピート数が長いほど発症年齢が早い傾向が知られています。日本では指定難病(告示番号1)に指定されています。また、2017年にリュープロレリン酢酸塩が「球脊髄性筋萎縮症の進行抑制」の効能で承認され、病態に基づく治療が初めて保険診療で使えるようになりました。

球脊髄性筋萎縮症の疫学・患者数

有病率は人口10万人あたり1〜2人程度と推定されています。国内の患者数は数千人規模と考えられていますが、軽症例や未診断例が含まれていない可能性があります。発症は原則として男性で、多くは30〜60歳代です。手指のふるえや筋けいれん(こむら返り)は筋力低下より10年以上前から現れることがあり、筋力低下が自覚されるのは40〜50歳代が多いとされます。女性のヘテロ接合体(保因者)は通常は発症しません。ただし、軽い筋けいれんや筋電図異常などがみられる例が報告されています。家族歴は母方の男性血縁者(おじ、いとこ、兄弟など)にみられることがあります。一方で、家族歴がはっきりしない孤発例のように見える患者も少なくありません。

球脊髄性筋萎縮症の原因・病態生理

SBMAはX連鎖潜性(劣性)遺伝の形式をとります。原因はX染色体長腕にあるAR遺伝子第1エクソンのCAGリピートの伸長です。健常者のリピート数はおおむね30台半ばまでとされ、患者では38程度以上に伸びています。CAGはアミノ酸のグルタミンをコードするため、伸長した遺伝子からは異常に長いポリグルタミン鎖をもつAR(変異AR)が作られます。男性はX染色体を1本しか持たないため、変異を受け継ぐと発症します。女性は2本のX染色体の一方に変異があってももう一方が正常であることに加え、血中テストステロン濃度が低いため、通常は発症しません。男性患者の娘はすべて保因者となり、息子には遺伝しません。保因者女性の息子は1/2の確率で発症します。

変異ARは、男性ホルモン(テストステロン、ジヒドロテストステロン)と結合すると細胞質から核内へ移行します。核内では異常な立体構造をとって凝集・蓄積し、運動ニューロンや骨格筋細胞を障害します。このリガンド(男性ホルモン)依存性がSBMAの最大の特徴です。モデル動物では、去勢や男性ホルモン抑制により症状が軽くなり、雌に男性ホルモンを投与すると症状が出ることが示されています。この知見がホルモン抑制療法の根拠となりました。核内の変異ARは遺伝子の転写を乱し、軸索輸送障害、ミトコンドリア機能障害、タンパク質分解系(ユビキチン・プロテアソーム系、オートファジー)の破綻などを起こすと考えられています。剖検では脳幹運動神経核(舌下神経核など)と脊髄前角の運動ニューロンが減っており、後根神経節の感覚ニューロンにも変化がみられます。女性化乳房や精子形成障害は、本来のAR機能がやや低下した結果(部分的なアンドロゲン不応)と解釈されています。

球脊髄性筋萎縮症の症状

  • 四肢の筋力低下・筋萎縮: 下肢の近位筋(太もも・腰まわり)から始まることが多く、階段昇降や立ち上がりが難しくなります。左右差は比較的少なく、腱反射は低下または消失します。
  • 球麻痺(構音障害): 舌・口唇・咽頭の筋力低下により、言葉が不明瞭になったり、鼻に抜けるような声になったりします。
  • 嚥下障害: 飲み込みにくさやむせが少しずつ強くなり、誤嚥性肺炎や体重減少の原因になります。
  • 舌の萎縮・線維束性収縮: 舌がやせて表面にしわができ、細かくピクピク動く様子(線維束性収縮)がみられます。診断上重要な所見です。
  • 顔面の収縮時線維束性収縮: 口をすぼめる、頬をふくらませるなどの動作で、口のまわりや顎に細かい筋のさざ波様の収縮が出やすく、SBMAに比較的特徴的です。
  • 手指振戦: 姿勢をとったときの手指のふるえが、筋力低下より何年も前に出ることがあり、初発症状となることも多いです。
  • 有痛性筋けいれん: ふくらはぎなどのこむら返りが早期から頻繁に起こり、睡眠の妨げになることがあります。
  • 女性化乳房: 多くの患者で乳房が膨らみ、ときに痛みを伴います。神経症状より先に気づかれることもあります。
  • 精巣萎縮・性機能低下: 精子数の減少、男性不妊、勃起機能や性欲の低下などがみられることがあります。
  • 感覚障害: 手足の先のしびれや振動覚の低下など、軽い感覚障害を伴うことがあります。神経伝導検査で異常が見つかることが多いです。
  • 喉頭けいれん: 飲み物でむせたときなどに声門が急に閉じ、一時的に息が吸えなくなる発作が起こることがあり、強い不安の原因になります。
  • 代謝・肝機能異常: 脂肪肝による肝酵素上昇、耐糖能異常(糖尿病)、脂質異常症を伴いやすいとされます。

球脊髄性筋萎縮症の経過と合併症

経過は非常に緩やかで、数十年単位で進みます。国内の自然歴研究では、まず手指振戦や筋けいれんがみられ、その後に筋力低下が自覚されます。続いて構音障害・嚥下障害、階段昇降での手すりの使用、歩行時の杖の使用と進み、筋力低下の自覚からおおむね十数年〜20年程度で車椅子が必要になる例が多いと報告されています。ただし進行速度の個人差は大きく、高齢になっても歩行を保つ人もいます。CAGリピートが長いほど発症が早い傾向はありますが、リピート数だけで個人の経過は予測できません。ALSのように数年で呼吸不全に至ることは通常ありません。

最も重要な合併症は、嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎です。主な死因の一つとされ、進行期には繰り返し起こることがあります。喉頭けいれんによる窒息感、咳の力の低下による痰の排出困難、進行期の呼吸筋力低下にも注意が必要です。転倒による骨折、廃用による筋力低下、体重減少や低栄養も起こりえます。全身合併症としては、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などの代謝異常がみられます。心電図ではブルガダ型変化などの異常が報告されており、定期的な評価が勧められます。ホルモン抑制療法を受ける場合は、骨密度の低下にも配慮が必要です。

球脊髄性筋萎縮症の診断・診断基準

成人男性に、ゆっくり進む四肢近位筋優位の筋力低下と球症状(舌萎縮、構音・嚥下障害)がみられ、手指振戦、女性化乳房、血清CK高値を伴う場合にSBMAを疑います。神経内科医が診察で下位運動ニューロン徴候(筋萎縮、線維束性収縮、腱反射低下)を確認し、上位運動ニューロン徴候がないことを確かめます。そのうえで筋電図・神経伝導検査、血液検査を行い、最終的にはAR遺伝子のCAGリピート伸長を確認する遺伝子検査で確定します。遺伝子検査は保険適用で、本人の同意と遺伝カウンセリングの体制のもとで行います。結果は血縁者にも関わる情報であるため、検査前後の説明が重要です。指定難病の診断基準では、神経所見・臨床検査所見と遺伝子診断を組み合わせ、ALSなどの鑑別疾患を除外して診断します。

  • 神経学的診察: 舌萎縮と線維束性収縮、顔面の収縮時線維束性収縮、近位筋優位の筋萎縮、腱反射の低下・消失、手指振戦を確認します。病的反射などの上位運動ニューロン徴候がないことが重要です。
  • 血液検査: 血清CKは正常の数倍程度に上昇することが多く、同じ運動ニューロン疾患であるALSより高値になりやすいとされます。肝酵素上昇、耐糖能異常、脂質異常、筋量減少を反映した血清クレアチニン低値もみられます。
  • 針筋電図: 高振幅・長持続の運動単位電位や線維束電位など、慢性の神経原性変化を広い範囲で認めます。
  • 神経伝導検査: 感覚神経活動電位(SNAP)の振幅低下がしばしばみられます。感覚神経が保たれるALSとの鑑別に役立ちます。
  • 遺伝子検査(AR遺伝子CAGリピート解析): CAGリピートの伸長を確認すれば確定診断となります。保険診療で実施でき、遺伝カウンセリングを併せて行うことが望まれます。
  • 嚥下機能評価(嚥下造影・嚥下内視鏡): 誤嚥の有無や、食塊が咽頭に残る程度を評価します。食形態の調整や胃瘻の検討に用います。
  • 呼吸機能検査: 肺活量や咳の強さ(咳嗽時最大呼気流量)を定期的に測り、排痰補助や呼吸管理が必要かを判断します。
  • 心電図・内分泌検査: 心電図でブルガダ型変化などがないかを確認します。テストステロンは正常〜高めのことが多く、ホルモン療法の前後評価にも用います。
  • 筋生検(必要時): 現在は遺伝子検査で診断できるため必須ではありません。行った場合は、神経原性変化に加えて筋原性変化が混在することがあります。

球脊髄性筋萎縮症と鑑別すべき疾患

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS): 上位運動ニューロン徴候を伴うことが多く、進行が速い点で異なります。また、感覚障害や女性化乳房は通常みられず、血清CKの上昇も軽度にとどまることが多い点で区別されます。
  • 成人発症の脊髄性筋萎縮症(SMA): SMN1遺伝子異常などによる下位運動ニューロン疾患で、球症状・女性化乳房・感覚障害は目立たず、遺伝子検査で鑑別します。
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP): 神経伝導検査で脱髄所見がみられ、免疫治療に反応する点が異なります。
  • 封入体筋炎・多発性筋炎: 筋原性疾患でCK高値を示しますが、針筋電図で筋原性変化が主体となり、筋生検所見も異なります。
  • 重症筋無力症: 球症状をきたしますが、症状が日内で変動し易疲労性を示すこと、抗体検査や反復刺激試験で鑑別されます。
  • 頸椎症性筋萎縮症など脊椎疾患: 画像で脊髄・神経根の圧迫を認め、症状が特定の髄節に限局し、球症状を伴わない点で区別されます。

球脊髄性筋萎縮症の治療

現時点で病気を完治させる治療はありません。治療の柱は、①病態に基づく進行抑制療法(男性ホルモン抑制)、②筋力・嚥下・呼吸機能を保つためのリハビリテーション、③誤嚥性肺炎や代謝異常などの合併症管理、④生活を支える福祉的支援の組み合わせです。ホルモン療法は、病初期ほど効果が期待されると考えられています。一方で性機能低下や骨密度低下などの副作用があり、効果の感じ方にも個人差があります。開始するかどうかは、年齢、病期、挙児希望、生活上の価値観を踏まえて、神経内科専門医とよく相談して決めることが大切です。なお、男性ホルモン(テストステロン)製剤の補充は病態を悪化させる可能性があり、避けるべきと考えられています。

  • リュープロレリン酢酸塩(LH-RHアゴニスト): 下垂体に作用して精巣からのテストステロン分泌を抑え、変異ARの核内蓄積を減らすことを狙う薬です。国内で「球脊髄性筋萎縮症の進行抑制」に承認されており、12週ごとの皮下注射で用います。性欲低下、勃起障害、ほてり、骨密度低下などの副作用があり、定期的な評価が必要です。
  • リハビリテーション(理学・作業療法): 筋力・関節可動域・歩行能力の維持を目的に、過度の負荷や疲労を避けた適度な運動を継続します。CKの著しい上昇や翌日まで残る疲労は、負荷が過剰なサインとされます。
  • 装着型サイボーグ(HAL医療用下肢タイプ): SBMAを含む神経・筋疾患の歩行機能改善を目的とした歩行運動療法として保険適用があり、実施できる施設は限られます。
  • 嚥下リハビリテーション・食形態の調整: 言語聴覚士による嚥下訓練、とろみ付けや一口量の調整、食事姿勢の工夫で誤嚥を減らします。
  • 栄養管理・胃瘻: 体重減少や誤嚥が増えた場合は、栄養補助食品を使い、必要に応じて胃瘻などの経管栄養を検討します。経口摂取を一部続けることも可能です。
  • 呼吸ケア: 排痰補助装置(機械による咳介助)や呼吸理学療法で痰を出しやすくします。進行期の呼吸筋力低下には非侵襲的換気などを検討します。肺炎球菌・インフルエンザワクチンの接種も勧められます。
  • 対症療法: 筋けいれんや手指振戦、女性化乳房の痛みなどに対し、症状に応じた薬物療法を主治医が検討します。
  • 合併症の管理: 糖尿病・脂質異常症・脂肪肝の治療、心電図異常の評価を行います。ホルモン療法中は骨密度を測定し、骨粗鬆症対策をとります。
  • 研究段階の治療: 核酸医薬や遺伝子治療など、変異ARそのものを標的とする治療の研究が進められています。臨床試験への参加は専門医療機関に相談できます。

球脊髄性筋萎縮症の予後・長期フォロー

SBMAの進行は緩やかで、ALSに比べ生命予後は良好です。多くの患者が長期間にわたり就労や社会生活を続けています。ただし、病気が進むと歩行障害や嚥下障害によって日常生活動作が制限され、高齢期に誤嚥性肺炎を繰り返すことが生命予後を左右します。生命予後は一般人口と比べてやや短くなる可能性が報告されていますが、嚥下・栄養・呼吸の管理を適切に行うことで改善が期待されます。QOLには、手指振戦や筋けいれんの不快感、性機能の問題、外見上の変化(女性化乳房)も影響します。

長期のフォローアップでは、神経内科専門医のもとで数か月〜1年ごとに筋力、歩行、嚥下、呼吸機能、体重を評価します。あわせてCK、肝機能、血糖・HbA1c、脂質、心電図を確認します。ホルモン療法を受けている場合は、効果と副作用(骨密度、性機能、代謝への影響など)を定期的に見直します。かかりつけ医、リハビリ専門職、言語聴覚士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど多職種が連携し、病期に応じて胃瘻や呼吸管理の希望を前もって話し合っておくこと(アドバンス・ケア・プランニング)が勧められます。

球脊髄性筋萎縮症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

転倒予防が大切です。住環境の段差解消、手すりの設置、杖・装具などを早めに使いましょう。運動は無理のない範囲で続け、強い疲労が翌日まで残るような過負荷は避けます。食事は、姿勢を整えてゆっくり食べ、一口量を少なくします。むせやすい食品(水分、パサつく物、細かく散らばる物)にはとろみや調理の工夫をします。食後の口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に役立ちます。体重を定期的に測り、急に減ってきたら主治医に伝えましょう。糖尿病や脂質異常症を合併しやすいため、バランスの良い食事と定期検査も大切です。テストステロン製剤やいわゆる男性ホルモン系のサプリメントは、自己判断で使わないでください。遺伝については、患者の息子には遺伝しない一方、娘は全員が保因者となり、その息子(孫)は1/2の確率で発症します。姉妹が保因者である可能性もあります。血縁者の検査や将来の家族計画については、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受け、本人の意思を尊重しながら情報を共有することが望まれます。発症していない血縁者の遺伝子検査(発症前診断)は、心理的影響が大きいため慎重な検討が必要です。

利用できる制度・相談窓口

SBMAは指定難病であり、診断基準を満たし、重症度分類(modified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸の評価など)で一定以上に該当する場合、または軽症でも高額な医療費が継続する場合(軽症高額該当)に、難病医療費助成制度を利用できます。申請は都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行い、難病指定医の臨床調査個人票が必要です。障害者総合支援法の対象疾病にも含まれ、障害支援区分に応じて居宅介護や補装具・日常生活用具の給付などを利用できます。肢体不自由や音声・言語・そしゃく機能障害の程度により身体障害者手帳の取得が可能で、日常生活や就労への支障の程度に応じて障害年金の対象となる場合があります。介護保険は65歳以上で利用できます。40〜64歳ではSBMAは介護保険の特定疾病に含まれないため、障害福祉サービスを中心に検討します。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、病院の医療ソーシャルワーカー、患者会、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあります。

球脊髄性筋萎縮症に伴う心のケア・心理社会的支援

ゆっくりではあっても確実に進む病気であることや、遺伝性であることを知ったとき、多くの人は強い衝撃、不安、抑うつを経験します。働き盛りの年代に発症することが多いため、仕事の継続、家計、家族内での役割の変化が大きな負担となります。SBMAに特有の課題として、娘が保因者となることや孫への遺伝についての罪悪感、血縁者に病気を伝えるかどうかの葛藤があります。女性化乳房や性機能の問題は他人に相談しにくく、ホルモン療法による性機能への影響も、男性としての自己像や夫婦関係に影響することがあります。喉頭けいれんの経験から、食事や外出に対する不安が強まることもあります。こうした気持ちは自然な反応ですが、気分の落ち込みや不眠、意欲低下が2週間以上続く場合は、主治医、心療内科・精神科、臨床心理士などに早めに相談してください。患者会で同じ病気の仲間と交流すること、遺伝カウンセリングを家族と一緒に受けることも、孤立を防ぐ助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

球脊髄性筋萎縮症の受診の目安

  • 手指のふるえ、頻繁なこむら返り、女性化乳房に加えて、階段昇降のしにくさやむせが出てきた場合は、神経内科を受診してください。
  • 飲み込みにくさが急に悪化した、食事に時間がかかるようになった、体重が明らかに減ってきた場合は、主治医に早めに相談してください。
  • 発熱、咳、痰の増加、息苦しさがある場合は、誤嚥性肺炎の可能性があるため速やかに受診してください。
  • むせた後に息が吸えない状態が長く続く、唇や顔色が紫色になるなど窒息が疑われる場合は、ためらわず救急要請してください。
  • 転倒して強い痛みがある、立てなくなった場合は、骨折の可能性があるため受診してください。
  • ホルモン療法中に強いほてり、気分の落ち込み、骨の痛みなど気になる症状がある場合は、次回の受診を待たずに相談してください。

球脊髄性筋萎縮症についてのよくある質問

Q. SBMAはALS(筋萎縮性側索硬化症)と同じ病気ですか?

A. どちらも運動ニューロンが障害される病気ですが、別の疾患です。SBMAは遺伝子の異常が原因で、主に下位運動ニューロンが障害され、進行はALSよりかなり緩やかです。感覚障害や女性化乳房、CK高値を伴う点も異なります。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. X連鎖潜性遺伝のため、男性患者の息子には遺伝しません。一方、娘は全員が保因者となり、その娘の息子(患者の孫)は1/2の確率で発症します。家族計画や血縁者の検査については、遺伝カウンセリングで詳しく相談できます。

Q. ホルモン療法(リュープロレリン)を受けると症状は良くなりますか?

A. この薬は失われた筋力を回復させるものではなく、進行を抑えることを目的とした治療です。病初期ほど効果が期待されると考えられていますが、個人差があり、性機能低下や骨密度低下などの副作用もあります。開始するかどうかや継続の判断は、専門医とよく相談してください。

Q. 運動はしたほうがよいですか?

A. 適度な運動は筋力や歩行能力の維持に役立つと考えられています。ただし過度な負荷は筋の障害を強める可能性があります。リハビリ専門職の指導のもと、疲労が翌日まで残らない程度の運動を続けるのが勧められます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。