巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症

Megacystis Microcolon Intestinal Hypoperistalsis Syndrome

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(Megacystis Microcolon Intestinal Hypoperistalsis Syndrome)|巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(MMIHS、Berdon症候群)は、膀胱が著しく拡張して排尿できない「巨大膀胱」、結腸が細く未発達な「短小結腸(マイクロコロン)」、小腸を中心とした腸管が内容物を送り出せない「蠕動不全」の3つを特徴とする、きわめてまれな先天性疾患です。多くは胎児期から新生児期に見つかり、長期の静脈栄養や排尿管理が必要になります。生命予後とQOLに大きく影響する重症の小児慢性疾患です。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の要点

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(MMIHS)は、腸管と膀胱の平滑筋の収縮不全により、巨大膀胱、細い結腸、腸管の蠕動不全を来し、腸閉塞に似た症状を示すきわめてまれな先天性疾患です。胎児期や新生児期に発見され、長期の静脈栄養や排尿管理を要し、指定難病(告示番号100)です。

別名・略称MMIHS、Berdon症候群、Berdon syndrome、巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症候群
分野消化器・肝胆膵疾患
遺伝形式原因遺伝子により異なる(ACTG2は常染色体顕性、MYH11・LMOD1・MYLK・MYL9などは常染色体潜性)
好発年齢胎児期〜新生児期に発見されることが多い
主な症状巨大膀胱による排尿困難、腹部膨満、嘔吐、排便困難など
主な検査胎児・腹部超音波、腹部X線・造影検査、遺伝子検査、直腸生検(神経節細胞の確認)
主な治療静脈栄養、導尿などの排尿管理、消化管の減圧、ストーマ造設など
受診する主な診療科小児外科、小児科、小児泌尿器科

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症とは

MMIHSは、腸管と膀胱の壁をつくる平滑筋(内臓平滑筋)の収縮がうまくいかないことによって起こる、機能的な通過障害の症候群です。消化管には物理的な閉塞(狭窄や閉鎖)がないのに、腸閉塞と同じ症状が出ます。このような状態を「偽性腸閉塞」と呼び、MMIHSはその最重症型の一つに位置づけられます。腸管の神経節細胞(腸管神経)は原則として正常に存在します。この点で、神経節細胞が欠如するヒルシュスプルング病や、神経節細胞が少ない腸管神経節細胞僅少症とは区別されます。病理学的には、内臓平滑筋の異常(visceral myopathy)を主体とする疾患と考えられています。

1976年にBerdonらが、巨大膀胱・短小結腸・腸管蠕動不全を示した女児例を報告し、独立した疾患概念として確立しました。そのためBerdon症候群とも呼ばれます。日本では「ヒルシュスプルング病類縁疾患」の一つとして整理されています。厚生労働省研究班の全国調査を経て診断基準と診療ガイドラインが作成され、2015年に指定難病(告示番号100)となりました。小児慢性特定疾病の対象でもあります。近年は原因遺伝子の解明が進みました。その結果、慢性特発性偽性腸閉塞症(CIPO)のうち先天性・重症で膀胱病変を伴う群と、遺伝学的に連続したスペクトラムをなすという考え方も広がっています。腸回転異常症は高頻度に合併しますが、独立した病型分類として確立したものはありません。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の疫学・患者数

世界的に報告数は数百例規模にとどまる、きわめてまれな疾患です。日本でも研究班の全国調査で把握された患者は限られており、国内の患者数は数十人程度の規模と推定されます。発症はほぼ全例が胎児期から新生児期です。近年は妊娠中の超音波検査で胎児の巨大膀胱として見つかる例が増えています。古くから女児に多い(報告によっては男女比がおよそ1:3〜4)とされてきました。ただし遺伝子診断が普及した現在、性差の程度は原因遺伝子によって異なる可能性があります。人種や地域による明らかな偏りは知られていません。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の原因・病態生理

もっとも多く同定される原因は、平滑筋型のγ-アクチンをつくる遺伝子ACTG2のヘテロ接合性変異です。多くは両親に変異のない新生(de novo)変異で、常染色体顕性(優性)の形式をとります。ACTG2変異は、より軽症の偽性腸閉塞の家系でも見つかっており、同じ遺伝子でも重症度に幅があります。このほか、平滑筋の収縮装置にかかわる遺伝子の両アレル変異(常染色体潜性〈劣性〉遺伝)が報告されています。MYH11(平滑筋ミオシン重鎖)、LMOD1、MYLK(ミオシン軽鎖キナーゼ)などです。ムスカリン受容体遺伝子CHRM3の変異による類似病像の報告もあります。一方、遺伝子検査を行っても原因が特定できない例も少なくありません。

腸管と膀胱の壁の平滑筋細胞では、アクチンとミオシンが滑り合うことで収縮が生じます。ACTG2の変異タンパクは正常なアクチンの重合や働きを妨げる(ドミナントネガティブ効果)と考えられています。MYH11・MYLK・LMOD1の機能喪失は、収縮装置そのものの形成や調節を障害します。その結果、腸管は内容物を口側から肛門側へ送る蠕動を起こせません。膀胱は排尿筋が十分に収縮できず、尿をため込んだまま拡張します。胎児期から腸内容が結腸に届きにくいため、結腸は使われないまま細く未発達となり、短小結腸になります。病理学的には、全層生検で神経節細胞は保たれています。一方で平滑筋層の菲薄化、空胞変性、線維化、平滑筋アクチンの免疫染色性の低下などがみられることがあります。ただし所見は一定せず、生検だけで確定できない場合もあります。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の症状

  • 胎児期の巨大膀胱・水腎症: 妊娠中期以降の超音波検査で、膀胱の著明な拡張や両側水腎症として見つかることが多いです。尿道閉鎖などの閉塞性疾患と異なり、羊水量は正常か、むしろ過多のことがあります。
  • 腹部膨満: 出生直後から腹部が大きく張ります。拡張した膀胱と、ガスや内容物がたまった小腸の両方が原因です。腹壁が薄く、たるんで見えることもあります。
  • 胆汁性嘔吐: 腸管が内容物を送れないため、緑色の胆汁を含む嘔吐を繰り返します。哺乳を進めることが困難になります。
  • 胎便排泄遅延・排便困難: 胎便が出ない、あるいはごく少量しか出ません。その後も自力での排便はほとんど期待できません。
  • 排尿障害(尿閉): 排尿筋が収縮しないため、自力で膀胱を空にできません。カテーテルによる導尿が必要になります。
  • 尿路感染症: 残尿や膀胱尿管逆流のために細菌が増えやすく、発熱を伴う腎盂腎炎を繰り返すことがあります。
  • 栄養障害・体重増加不良: 経口・経腸栄養が十分に入らないため、成長に必要な栄養を静脈栄養に頼ることになります。
  • 腸回転異常: 多くの例で合併します。中腸軸捻転(腸がねじれて血流が途絶える状態)の危険があります。
  • 腸内細菌異常増殖: 腸内容がうっ滞するため小腸で細菌が過剰に増え、下痢、腹部膨満、吸収障害を悪化させます。
  • 停留精巣など随伴所見: 男児では停留精巣を伴うことがあります。腹壁筋の脆弱さからプルーンベリー症候群に似た外観を示す例もあります。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の経過と合併症

症状は出生直後から現れ、自然に治ることはありません。腸管と膀胱の機能障害は基本的に生涯続きます。新生児期には腸閉塞症状が強く、試験開腹や腸瘻造設が行われることが多いです。その後は中心静脈カテーテルによる静脈栄養が栄養管理の柱となります。腸管機能の程度には個人差があり、一部の経腸栄養が可能になる例もあれば、ほぼ全量を静脈栄養に依存し続ける例もあります。かつては多くが乳児期に亡くなる致死的疾患とされていました。しかし静脈栄養の進歩、在宅医療の普及、小腸移植の導入によって、学童期・思春期以降まで生存する例が増えています。

主な合併症は四つに分けられます。(1)カテーテル関連血流感染症(敗血症)とカテーテル血栓による血管の閉塞です。これらは静脈栄養を続けるうえで最大の脅威となります。(2)腸管不全関連肝障害(IFALD)は、長期静脈栄養や感染に伴う胆汁うっ滞と肝線維化で、肝不全に進むことがあります。(3)腸内容うっ滞に伴う問題として、細菌の異常増殖、バクテリアルトランスロケーション、中腸軸捻転、腸穿孔があります。(4)泌尿器系の問題として、反復する腎盂腎炎、膀胱尿管逆流、それらによる腎機能障害があります。このほか、電解質異常、脱水、微量元素欠乏、骨代謝異常、発達面への影響なども長期的な課題です。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の診断・診断基準

診断は、胎児期または新生児期の臨床像と画像所見から本疾患を疑うことから始まります。そのうえで、器質的な閉塞やヒルシュスプルング病などの神経性疾患を除外し、総合的に判断します。日本では研究班によるヒルシュスプルング病類縁疾患の診断基準が用いられます。その要点は次のとおりです。新生児期から発症する腸管蠕動不全があること。巨大膀胱を伴うこと。注腸造影で短小結腸を認めること。腸管の全層生検で神経節細胞が存在し、ヒルシュスプルング病や腸管神経節細胞僅少症が否定されること。近年は遺伝学的検査が補助的に行われることもあります。診断と管理には、小児外科・小児消化器・小児泌尿器・新生児科など、経験のある施設での多職種連携が重要です。

  • 胎児超音波・胎児MRI: 巨大膀胱、水腎症、腸管拡張、羊水量を評価します。羊水過少を伴わない巨大膀胱は、尿道閉鎖などとの鑑別の手がかりになります。
  • 腹部単純X線: 拡張した小腸ループと鏡面像を認めます。腸閉塞のパターンを示しますが、閉塞部位ははっきりしません。
  • 注腸造影: 全長にわたって細い短小結腸を示します。腸回転異常に伴う結腸の位置異常がみられることもあります。
  • 上部消化管造影: 腸回転異常の有無を確認します。造影剤の通過遅延から蠕動不全を評価します。
  • 腹部・腎超音波、排尿時膀胱尿道造影: 膀胱拡張、残尿、水腎症、膀胱尿管逆流を評価します。尿道に閉塞がないことを確認します。
  • 直腸粘膜生検(AChE染色): アセチルコリンエステラーゼ陽性神経線維の増生がないことを確認し、ヒルシュスプルング病を除外する助けとします。
  • 腸管全層生検: 手術時に採取し、神経節細胞の存在と数、平滑筋層の変化を評価します。確定診断に重要な検査です。
  • 遺伝学的検査: ACTG2、MYH11、LMOD1、MYLKなどを解析します。原因の確認、遺伝形式の推定、家族への遺伝カウンセリングに役立ちますが、陰性でも診断は否定されません。
  • 血液・尿検査: 電解質、肝機能、栄養状態、炎症反応、尿培養などを調べます。合併症の評価と全身管理に用います。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症と鑑別すべき疾患

  • ヒルシュスプルング病(特に全結腸型・小腸型): 直腸から口側にかけて神経節細胞が欠如しますが、MMIHSでは神経節細胞は存在し、巨大膀胱を伴う点も異なります。
  • 腸管神経節細胞僅少症: 同じく新生児期の蠕動不全と短小結腸を示しますが、全層生検で神経節細胞が少ないこと、巨大膀胱を通常伴わないことで区別されます。
  • 慢性特発性偽性腸閉塞症: 短小結腸や新生児期からの巨大膀胱を必須とせず、発症時期や重症度が多様である点で区別されますが、遺伝学的には連続性があり得ます。
  • 後部尿道弁・尿道閉鎖など下部尿路閉塞: 胎児期の巨大膀胱をきたしますが、尿道の器質的閉塞と羊水過少を伴い、腸管症状は通常みられません。
  • プルーンベリー症候群: 腹壁筋欠損・尿路拡張・停留精巣を三徴とし、男児に多く、重篤な腸管蠕動不全は通常伴いません。
  • 胎便栓症候群・小腸閉鎖症: 短小結腸を示すことがありますが、胎便栓の除去や閉鎖部の手術で通過が回復する点が異なります。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の治療

現時点で、平滑筋の機能を根本的に回復させる治療法は確立していません。治療の基本は次の四つです。静脈栄養による栄養と成長の確保。腸管と膀胱の減圧・排泄管理。感染と肝障害を中心とする合併症の予防と治療。そして必要に応じた小腸移植(多臓器移植を含む)の検討です。消化管運動改善薬で十分な効果が得られることは少ないとされています。不必要な開腹手術を繰り返すと癒着を招き、その後の管理を難しくするため、手術の適応は慎重に判断されます。治療方針は病状や家族の状況によって大きく異なります。小児外科・小児消化器内科・小児泌尿器科・栄養サポートチーム・看護・医療ソーシャルワーカーなどと十分に相談しながら決めていくことが大切です。

  • 中心静脈栄養(在宅静脈栄養を含む): 生命維持と成長のための中心的な治療です。病状が安定すれば在宅中心静脈栄養に移行し、家庭での生活を目指します。カテーテル管理の徹底と、肝障害に配慮した輸液・脂肪乳剤の調整が重要です。
  • 経腸栄養の併用: 少量でも腸を使うことは、腸粘膜の維持や肝障害の予防に役立つとされます。胃瘻や腸瘻から、耐えられる範囲で持続注入などを行います。
  • 消化管減圧と腸瘻造設: 胃瘻からの減圧や小腸瘻・回腸瘻の造設で腸内容のうっ滞を減らし、嘔吐・腹部膨満・細菌異常増殖を軽減します。
  • 腸回転異常に対する手術: 中腸軸捻転を予防・治療するため、ラッド手術などが行われることがあります。
  • 排尿管理(清潔間欠導尿・膀胱瘻): 定期的な導尿で膀胱を空にし、腎機能を守り、尿路感染を予防します。導尿が困難な場合は膀胱皮膚瘻などが選択されます。
  • 感染症対策と抗菌薬: カテーテル関連血流感染症では迅速な抗菌薬治療を行います。細菌異常増殖に対しては、抗菌薬を間欠的に用いることがあります。
  • 肝障害への対応: 脂肪乳剤の種類や量の調整、過剰なエネルギー投与の回避、感染の予防などで、腸管不全関連肝障害の進行を抑えるよう努めます。
  • 小腸移植・多臓器移植: 静脈栄養の継続が困難な場合(重篤な肝障害、中心静脈アクセスの枯渇、致死的感染の反復など)に検討されます。日本でも脳死・生体小腸移植が行われていますが、拒絶反応や感染症などの課題があり、専門施設での慎重な評価が必要です。
  • 消化管運動改善薬など薬物療法: 各種の消化管運動改善薬が試みられることはありますが、有効性は限定的とされます。使用は主治医の判断で個別に検討されます。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の予後・長期フォロー

MMIHSは小児の腸管不全の中でも最重症の部類に入り、かつては1歳までに亡くなる例が大半を占めていました。静脈栄養管理の向上、在宅医療体制の整備、小腸移植の導入により、長期生存例は確実に増えています。報告による幅はあるものの、近年の生存率は以前より改善しているとされます。主な死因は、カテーテル関連敗血症、腸管不全関連肝障害による肝不全、移植後の合併症などです。多くの患者さんは長期にわたり静脈栄養・腸瘻・導尿などの医療的ケアを必要とします。それでも、在宅で家族と生活し、保育園や学校に通う例も増えています。

長期フォローアップでは、定期的に評価すべき項目が多岐にわたります。成長・発達、栄養状態(微量元素・ビタミン・骨代謝を含む)、肝機能と肝線維化、中心静脈の開存状況、腎機能と尿路の状態などです。小腸移植を受けた場合は、免疫抑制薬の管理、拒絶反応、感染症、移植後リンパ増殖性疾患などの観察が生涯必要になります。成長に伴って小児科から成人診療科への移行期医療も課題となるため、早い段階から計画的に準備することが望まれます。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

在宅中心静脈栄養では、カテーテル刺入部の清潔操作、輸液ラインの管理、発熱時の早期対応が何より重要です。家族が手技を習得し、訪問看護や在宅医と連携する体制を整えます。腸瘻や胃瘻のケアでは、皮膚トラブル、排液量の増加による脱水、電解質異常に注意が必要です。排液量の記録が役立ちます。導尿は決まった間隔で行い、尿の濁り・臭い・発熱があれば早めに相談します。感染予防の観点から、予防接種は主治医と相談しながら計画的に進めます(移植を予定している場合は時期の調整が必要です)。保育園や学校には医療的ケアの内容を共有し、看護師配置や合理的配慮について相談します。遺伝面では、ACTG2の新生変異であれば同胞の再発率は一般に低いとされます。ただし親の生殖細胞モザイクの可能性は否定できません。潜性遺伝形式の場合は、同胞の再発率は理論上25%です。次の子どもを考える際などには、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。

利用できる制度・相談窓口

本疾患は指定難病(告示番号100)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合は医療費助成を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象となり、自己負担上限額の設定や日常生活用具給付事業も利用できる場合があります。小腸の機能障害やぼうこう・直腸の機能障害の程度によっては、身体障害者手帳の対象となることがあります。手帳があれば、ストーマ用品や導尿関連物品などの給付・助成、税の控除などにつながります。保護者は、要件を満たせば特別児童扶養手当や障害児福祉手当を申請できます。20歳以降は、障害の程度に応じて障害年金の対象となる可能性があります。医療的ケア児支援法に基づく各都道府県の医療的ケア児支援センター、訪問看護、障害福祉サービス(短期入所など)、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業も活用できます。相談窓口としては、主治医、病院の医療ソーシャルワーカー、市区町村の保健センター・障害福祉窓口、保健所、難病相談支援センター、移行期医療支援センターなどがあります。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症に伴う心のケア・心理社会的支援

出生直後から長期入院や手術が続き、在宅移行後も24時間に近い医療的ケアが必要になります。そのため、家族、特に主な介護者には大きな身体的・精神的負担がかかります。睡眠不足、社会的孤立、将来や生命予後への不安、仕事との両立の難しさなどから、抑うつや不安障害、適応障害を生じることは決してまれではありません。胎児期に診断された場合には、妊娠中から強い不安を抱えることもあります。きょうだい児が寂しさや我慢を抱えやすいことも見落とされがちな課題です。本人は成長とともに、食べられないことや外見(腸瘻・カテーテル)、学校生活での違いに悩むことがあります。思春期には自己像の揺らぎや治療への疲れが表に出ることもあります。移植を検討する段階では、意思決定そのものが大きな心理的負荷になります。つらさを抱え込まず、主治医、看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーなどに早めに相談してください。レスパイト(短期入所)や患者・家族会など同じ立場の人との交流も、支えになることがあります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症の受診の目安

  • 38℃以上の発熱、悪寒、ぐったりしているなどの症状があれば、カテーテル関連血流感染症の可能性があるため、直ちに主治医施設へ連絡・受診してください。
  • 緑色の嘔吐が急に増える、腹部が急に強く張る、激しく泣いて痛がる場合は、腸軸捻転や穿孔の可能性があるため救急受診してください。
  • 腸瘻からの排液や下痢が急に増える、尿が減る、口が乾くなど脱水が疑われるときは早めに受診してください。
  • カテーテルの破損・抜去・閉塞、刺入部の発赤や膿、腕や首・顔のむくみに気づいたら、すぐに主治医施設へ連絡してください。
  • 尿の濁りや悪臭、導尿困難、発熱を伴う場合は、尿路感染症の可能性があるため受診してください。
  • 皮膚や白目が黄色い、便が白っぽい、出血しやすいなどの症状があれば、肝障害の進行が疑われるため相談してください。

巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症についてのよくある質問

Q. この病気は治りますか?

A. 現時点では、腸や膀胱の平滑筋の働きを根本から治す治療法は確立していません。ただし、静脈栄養、腸瘻・導尿による管理、必要に応じた小腸移植によって長期生存例が増えており、在宅で生活する子どもも多くなっています。治療の選択肢については専門施設の主治医とよく相談してください。

Q. 親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因ですか?

A. いいえ、本疾患は主に平滑筋の遺伝子の変化によって起こると考えられています。妊娠中の生活や育て方が原因になることはありません。多くの例では両親に変異のない新生変異とされます。

Q. 次の子どもにも同じ病気が出る可能性はありますか?

A. 原因遺伝子と遺伝形式によって異なります。新生変異の場合は再発率は低いとされますが、ゼロではありません。潜性遺伝の場合は理論上4分の1の確率です。遺伝学的検査の結果を踏まえて、遺伝カウンセリングで個別に説明を受けることをお勧めします。

Q. 口から食べることはできるようになりますか?

A. 腸の機能には個人差があり、少量の経口摂取や経腸栄養が可能になる例もあります。一方で、栄養の大部分を静脈栄養に頼る例も少なくありません。食べる楽しみや口腔機能の発達のために、無理のない範囲で少量を味わうなど、主治医や栄養チームと相談しながら工夫することができます。

この記事をシェア

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

関連記事(関連する指定難病)

同じ分野(消化器・肝胆膵疾患)の指定難病

消化器・肝胆膵疾患の指定難病を一覧で見る / 指定難病リスト(全341疾患)

この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。