CFC症候群
Cardiofaciocutaneous Syndrome
CFC症候群(Cardiofaciocutaneous Syndrome)|CFC症候群(心・顔・皮膚症候群)は、心臓(Cardio)・顔貌(Facio)・皮膚(Cutaneous)の特徴的な所見に、知的障害や発達の遅れを伴う先天性の遺伝性疾患です。細胞の増殖や分化を調節するRAS/MAPKシグナル伝達経路の遺伝子変異で起こる「RAS/MAPK症候群(RASopathy)」の一つで、多くは胎児期から乳幼児期に気づかれ、生涯にわたって多くの診療科による継続的な支援が必要になります。症状の種類や重さには個人差が大きく、合併症に応じた医療と、成長・発達を支える療育や福祉の支援を組み合わせていくことが大切です。
CFC症候群の要点
CFC症候群は、RAS/MAPK経路の遺伝子変異で起こる先天性の遺伝性疾患で、特徴的な顔貌、先天性心疾患、皮膚・毛髪の異常、知的障害・発達の遅れを主な特徴とします。症状の程度には個人差があり、指定難病(告示番号103)および小児慢性特定疾病の対象です。
| 別名・略称 | 心・顔・皮膚症候群、心臓・顔・皮膚症候群、Cardio-facio-cutaneous syndrome、CFC syndrome |
|---|---|
| 分野 | 染色体・先天異常症候群 |
| 原因 | RAS/MAPK経路の遺伝子変異(BRAF、MAP2K1、MAP2K2、KRASなど) |
| 遺伝形式 | 常染色体顕性(優性)の形式をとるが、多くは新生変異による孤発例 |
| 好発年齢 | 胎児期から乳幼児期に気づかれることが多い |
| 主な症状 | 特徴的な顔貌、先天性心疾患、皮膚・毛髪の異常、発達遅滞・知的障害、筋緊張低下、摂食障害、低身長、てんかん |
| 主な検査 | 臨床所見の評価、遺伝学的検査、心臓超音波検査 |
| 受診する主な診療科 | 小児科、小児循環器科、小児神経科、皮膚科、臨床遺伝科 |
CFC症候群とは
CFC症候群は、①特徴的な顔貌(高く広い前額、こめかみ部の狭小化、眼瞼裂斜下、眼間開離、眼瞼下垂、低い鼻根、後方に回転した耳介など)、②先天性心疾患(肺動脈弁狭窄、心房中隔欠損、肥大型心筋症など)、③皮膚・毛髪の異常(皮膚の乾燥や角化、毛孔性角化、まばらで縮れた毛髪、眉毛の欠如や疎毛、多発する色素性母斑など)、④精神運動発達遅滞・知的障害を主な特徴とする先天異常症候群です。このほか、筋緊張低下、哺乳・摂食障害、低身長、てんかん、眼の異常などを伴うことが多く、症状の種類や重さには個人差があります。日本では指定難病(告示番号103)に指定されており、小児慢性特定疾病の対象にもなっています。
本症候群は1986年にReynoldsらによって初めて独立した疾患として報告されました。当初は臨床症状が似ているヌーナン症候群の重症型ではないかとの議論もありましたが、2006年に日本の研究グループなどによりBRAF、MAP2K1、MAP2K2、KRASといった遺伝子の変異が原因であることが明らかにされ、ヌーナン症候群・コステロ症候群・神経線維腫症1型などとともに、RAS/MAPK経路の異常で起こる疾患群「RASopathy(ラソパチー)」の一つとして位置づけられるようになりました。原因遺伝子による明確な病型分類は確立していませんが、遺伝子ごとに症状の傾向に違いがある可能性が研究されています。
CFC症候群の疫学・患者数
非常にまれな疾患です。日本で行われた全国調査では国内の患者数は200人程度と推計され、有病率はおよそ80万人に1人程度とする報告があります。ただし、軽症例や遺伝学的検査が行われていない例、ヌーナン症候群などと診断されている例が含まれていない可能性があり、実際の患者数はこれより多いとも考えられています。発症は先天性で、胎児期に羊水過多や胎児の心臓・頸部所見で気づかれることもあり、多くは新生児期から乳幼児期に、哺乳障害・心疾患・特徴的な顔貌・発達の遅れなどをきっかけに診断されます。性差や人種差は明らかではありません。多くは親からの遺伝ではなく、本人で新たに生じた変異(de novo変異)によるため、家族歴がない孤発例がほとんどです。
CFC症候群の原因・病態生理
CFC症候群は常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる疾患で、原因遺伝子としてBRAF、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2(MEK2)、KRASが知られています。このうちBRAF変異が最も多く全体の約7割を占め、MAP2K1とMAP2K2を合わせて約2〜3割、KRASは数%程度とされています。これらの遺伝子は、細胞の外からの増殖因子などの刺激を核へ伝える「RAS/MAPK(RAS-RAF-MEK-ERK)シグナル伝達経路」の構成要素をコードしています。変異の大部分は両親には認められない新生突然変異であり、自然発生的に起こるもので、妊娠中の生活や環境が原因となるわけではありません。免疫異常や自己抗体によって起こる疾患ではありません。
CFC症候群で見つかる変異の多くはタンパク質の働きを強める「機能獲得型」のミスセンス変異で、RAS/MAPK経路のシグナルが過剰に、あるいは調節が効きにくい形で伝わります。この経路は胎児期の心臓・顔面・皮膚・脳など多くの臓器の形成や細胞の増殖・分化に深く関わるため、過剰なシグナルが全身の発生過程に影響し、心臓弁や心筋の形成異常、頭蓋顔面の形態変化、表皮の角化異常や毛包の異常、神経細胞の発達や神経回路形成の障害などが生じると考えられています。なお、BRAFの同じ遺伝子でも、がん細胞で見られる強い活性化変異(V600Eなど)とは異なる部位の変異が多く、全身のすべての細胞に生まれつき存在する点で、腫瘍で見られる後天的な変異とは異なります。同じ経路の異常であるため、ヌーナン症候群やコステロ症候群と症状が重なりますが、CFC症候群では皮膚・毛髪の異常や知的障害・てんかんなどの神経症状がより目立つ傾向があります。
CFC症候群の症状
- 特徴的な顔貌: 高く広い前額、こめかみ部の狭小化、眼瞼裂斜下、眼間開離、眼瞼下垂、低い鼻根と上向きの鼻孔、厚い耳介などがみられます。顔立ちの特徴は年齢とともに変化し、ヌーナン症候群より粗な印象を呈することがあります。
- 先天性心疾患: 約7〜8割に認められ、肺動脈弁狭窄、心房中隔欠損、肥大型心筋症が代表的です。肥大型心筋症は乳児期から進行することがあり、重症度に個人差があります。
- 皮膚の異常: 皮膚の乾燥、毛孔性角化症、魚鱗癬様の角化、手掌・足底の角化肥厚、湿疹、血管腫などがみられます。年齢とともに色素性母斑(ほくろ)が多発する傾向があります。
- 毛髪・眉毛の異常: 毛髪がまばらで細く、縮れていることが多く、眉毛やまつ毛が薄い、あるいは欠如することがあります。眉部の毛孔性角化(眉毛部瘢痕性紅斑)を伴うこともあります。
- 精神運動発達遅滞・知的障害: ほぼ全例で発達の遅れを認め、多くは中等度から重度の知的障害を伴いますが、程度には幅があります。言語の発達が特に遅れやすい傾向があります。
- 筋緊張低下: 乳児期から筋緊張が低く、首のすわりやお座り、歩行の獲得が遅れることが多いです。運動発達の遅れの主因の一つとなります。
- 哺乳障害・摂食障害・消化器症状: 乳児期に吸啜や嚥下が弱く、経管栄養が必要になることが少なくありません。胃食道逆流、嘔吐、便秘などもよくみられ、体重増加不良の原因となります。
- てんかん: 約半数前後に発作がみられるとされ、点頭てんかん(ウエスト症候群)などの難治性てんかんを呈する例もあります。発作型や重症度はさまざまです。
- 低身長・成長障害: 出生時の体格は保たれていることが多いものの、生後の成長が不良となり低身長を呈することが多いです。相対的に大きな頭(相対的大頭症)が目立つことがあります。
- 眼の異常: 斜視、眼振、屈折異常(近視・遠視・乱視)が高頻度にみられ、視神経低形成などを伴うこともあります。早期の眼科評価が視機能の発達に重要です。
- 胎児期の所見: 妊娠中に羊水過多、胎児の頸部浮腫、心臓の異常、相対的な大頭などが指摘されることがあります。羊水過多は早産の一因にもなります。
- その他の症状: 睡眠障害、易刺激性や自閉的行動などの行動特性、リンパ浮腫などのリンパ管の異常、停留精巣、骨格異常(胸郭変形・側弯)などがみられることがあります。
CFC症候群の経過と合併症
CFC症候群は先天性疾患であり、症状が年齢とともに出揃い、また変化していくのが特徴です。新生児期から乳児期は、哺乳障害・体重増加不良・胃食道逆流、心疾患(特に肥大型心筋症の進行)、筋緊張低下への対応が中心的な課題となり、入院や経管栄養、場合によっては胃瘻を要することがあります。幼児期以降は発達の遅れ・知的障害がより明らかとなり、てんかん発作の出現、睡眠障害や行動面の課題、眼科的問題への対応が重要になります。皮膚の角化や母斑は成長とともに目立ってくることがあります。摂食機能は時間をかけて改善し、経口摂取が可能になる例も多くあります。成人期の自然歴についての情報はまだ限られていますが、成人に達して生活している方も多く報告されており、知的障害の程度に応じた生活支援が長期的な課題となります。
主な合併症として、肥大型心筋症による心不全や不整脈、肺動脈弁狭窄の進行、難治性てんかんやてんかん重積、誤嚥性肺炎、重度の胃食道逆流、栄養障害が挙げられます。リンパ管の発生異常による乳び胸やリンパ浮腫、側弯症などの整形外科的問題、視力障害もみられることがあります。また、RASopathyでは一般に腫瘍発生への関心が持たれており、CFC症候群でも急性リンパ性白血病などの悪性腫瘍の報告がありますが、コステロ症候群ほど明確な腫瘍リスクの上昇は示されておらず、定型的な腫瘍スクリーニングの必要性については専門家の間でも定まっていません。全身麻酔や手術の際には、心機能や気道の評価に配慮が必要です。
CFC症候群の診断・診断基準
診断は、特徴的な顔貌、心疾患、皮膚・毛髪の異常、発達遅滞などの臨床症状の組み合わせから本症候群を疑うところから始まります。ただし、ヌーナン症候群やコステロ症候群と症状が大きく重なるため、臨床症状だけで正確に区別することは容易ではなく、確定には遺伝学的検査で原因遺伝子(BRAF、MAP2K1、MAP2K2、KRAS)の病的変異を確認することが重要です。指定難病の診断基準でも、主要な臨床症状に加えて遺伝学的検査で病的変異が確認されたものを確実例としています。日本ではヌーナン症候群・コステロ症候群・CFC症候群などを対象としたRASopathy関連遺伝子の検査が保険診療で実施できるようになっていますが、実施施設や条件は限られるため、遺伝カウンセリング体制のある専門施設(臨床遺伝専門医、小児科の専門医など)で相談するのが一般的です。診断後は、合併症を把握するための全身の系統的評価(心臓、神経、眼、消化器、皮膚、成長・発達)を行います。
- 臨床症状の評価(診察): 顔貌、皮膚・毛髪、心雑音、筋緊張、成長・発達などを総合的に評価します。臨床遺伝専門医など、RASopathyの診療経験のある医師の評価が有用です。
- 遺伝学的検査: 血液などからDNAを抽出し、BRAF、MAP2K1、MAP2K2、KRASなどの原因遺伝子の病的変異を調べます。確定診断と、類縁疾患との鑑別に最も重要な検査で、検査前後の遺伝カウンセリングが推奨されます。
- 心エコー検査・心電図: 肺動脈弁狭窄、心房中隔欠損、肥大型心筋症などの有無と重症度を評価します。心筋症は後から出現・進行することがあるため、定期的な再評価が必要です。
- 脳波検査: てんかんの有無や発作型の評価に用います。点頭てんかんでヒプスアリスミアがみられることがあります。
- 頭部MRI: 脳室拡大、脳梁の形成異常、白質の異常、キアリ奇形などの脳構造の異常を評価します。所見は非特異的で、個人により異なります。
- 眼科検査: 斜視、眼振、屈折異常、視神経低形成などを評価し、眼鏡処方や弱視訓練の必要性を判断します。
- 発達・知能検査: 発達の水準や得意・不得意を評価し、療育や教育的支援の計画に役立てます。
- 消化器・栄養評価: 体重・身長の推移、嚥下機能、胃食道逆流の有無(上部消化管造影やpHモニタリングなど)を評価し、栄養方法を検討します。
- 胎児期の評価: 羊水過多、胎児の心疾患や頸部浮腫などから妊娠中に疑われることがありますが、出生前の確定には侵襲的な検査が必要となるため、実施の判断は遺伝カウンセリングを踏まえて慎重に行われます。
CFC症候群と鑑別すべき疾患
- ヌーナン症候群: 心疾患や顔貌が類似しますが、一般に知的障害は軽度か認めないことが多く、皮膚・毛髪の異常が目立たない点が異なり、PTPN11などの遺伝子変異で区別されます。
- コステロ症候群: 顔貌・心疾患が類似しますが、より粗な顔貌、深い手掌のしわ、乳頭腫、明らかな悪性腫瘍リスク(横紋筋肉腫など)を特徴とし、HRAS変異で区別されます。
- 神経線維腫症1型: カフェ・オ・レ斑や神経線維腫を特徴とし、NF1遺伝子の変異で区別されます。
- 多発性黒子を伴うヌーナン症候群(旧LEOPARD症候群): 多発する黒子、難聴、肥大型心筋症を特徴とし、主にPTPN11の特定の変異で区別されます。
- 毛髪異常を伴うヌーナン様症候群(SHOC2関連など): 成長期毛髪の脱落しやすい毛髪や皮膚の色素沈着を伴うことがあり、SHOC2などの遺伝子変異で区別されます。
- 先天性魚鱗癬などの皮膚疾患: 皮膚の角化異常が目立つ場合に考慮しますが、心疾患や特徴的な顔貌、発達遅滞の合併が鑑別の手がかりとなります。
CFC症候群の治療
現在、CFC症候群の原因そのものを治す根本的治療は確立していません。治療の中心は、それぞれの合併症に対する対症療法と、成長・発達を支える包括的なケアです。小児科(総合・遺伝・循環器・神経・消化器)、心臓血管外科、皮膚科、眼科、整形外科、歯科、リハビリテーション科、栄養士、療育スタッフなどが連携する多職種チームで、年齢と病状に応じた管理を継続します。合併症の種類や重さは個人によって大きく異なるため、治療方針は主治医・専門医と相談しながら個別に決めていくことが大切です。
- 心疾患の管理: 肺動脈弁狭窄にはカテーテル治療(バルーン弁形成術)や手術、心房中隔欠損には状況に応じた閉鎖術が検討されます。肥大型心筋症にはβ遮断薬などの内服治療や定期的な経過観察が行われ、重症例では専門施設での高度な治療を要します。
- 栄養・摂食支援: 哺乳・嚥下が困難な時期には経鼻胃管による経管栄養を行い、長期に必要な場合は胃瘻造設が検討されます。胃食道逆流には体位の工夫、薬物療法、必要に応じて噴門形成術などが行われ、摂食訓練により経口摂取を目指します。
- てんかんの治療: 発作型に応じた抗てんかん薬を用います。点頭てんかんなど難治例では、ACTH療法など専門的治療が検討されることがあります。
- 療育・リハビリテーション: 理学療法、作業療法、言語聴覚療法などにより、運動・コミュニケーション・日常生活動作の発達を支援します。早期からの療育開始が望ましいとされます。
- 皮膚のケア: 保湿剤による日常的なスキンケア、角化に対する外用薬などで皮膚症状を管理します。多発する母斑は通常経過観察しますが、形や色の変化があれば皮膚科で評価します。
- 眼科的治療: 屈折異常に対する眼鏡、斜視・弱視に対する訓練や手術などを行い、視機能の発達を支えます。
- 睡眠・行動面への対応: 睡眠障害や易刺激性、行動上の課題に対し、生活リズムの調整や環境調整を行い、必要に応じて薬物療法が検討されます。
- 成長の評価と内分泌的対応: 成長曲線を定期的に評価します。成長ホルモン治療はヌーナン症候群では保険適用がありますが、CFC症候群では効果や安全性(特に心筋肥大への影響)が十分に確立していないため、適応は専門医と慎重に検討されます。
- 研究段階の治療: RAS/MAPK経路を抑えるMEK阻害薬などの分子標的薬が、RASopathyの重症合併症に対して海外で試みられた報告がありますが、CFC症候群に対する有効性・安全性は確立しておらず、現時点では研究段階です。
CFC症候群の予後・長期フォロー
生命予後は、主に心疾患(特に肥大型心筋症の重症度)、難治性てんかん、乳児期の重度の摂食障害や呼吸器感染症などの合併症に左右されます。重症の心筋症を伴う乳児では生命に関わることもありますが、適切な医療と支援により多くの方が乳幼児期を乗り越え、成人期まで生活されています。知的障害は多くの場合中等度から重度で、成人後も日常生活や社会生活において何らかの支援を必要とすることが多い一方、ゆっくりではあっても発達は続き、歩行や意思疎通の手段を獲得していく方も少なくありません。QOLは、合併症の適切な管理と、療育・教育・福祉の継続的な支援によって大きく向上します。
長期的には、心機能(心エコー・心電図)の定期的な評価、成長と栄養状態のモニタリング、てんかんの管理、眼科・歯科の定期受診、側弯症などの整形外科的評価、皮膚の観察が継続して必要です。成人期の自然歴についての知見は限られているため、悪性腫瘍を含む新たな症状の出現に注意を払いつつ、定期受診を続けることが勧められます。また、小児科から成人診療科への移行(トランジション)は難病・先天異常症候群に共通する課題であり、成人期にどの医療機関で何を診ていくかを、思春期のうちから主治医と計画しておくことが大切です。
CFC症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
乳幼児期は、誤嚥を防ぐ姿勢での授乳・食事、体重の記録、胃食道逆流による嘔吐への対応など、栄養管理が日常の中心になります。皮膚は乾燥しやすいため、入浴後の保湿を習慣にし、強い摩擦を避けるようにします。てんかんのある方は、発作時の対応(安全確保、発作時間の確認、頓用薬の使い方)を家族や保育・学校関係者と共有しておきましょう。心疾患がある場合の運動制限や、感染性心内膜炎予防の必要性については循環器担当医の指示に従ってください。予防接種は基本的に通常のスケジュールで受けられることが多いですが、心疾患や治療内容に応じて主治医と相談します。保育園・幼稚園・学校の選択では、療育機関や特別支援教育の活用を含めて、本人の発達に合った環境を検討します。遺伝については、多くの場合は新生突然変異であり、両親が変異をもたなければ次の子で再発する可能性は一般に低いとされますが、性腺モザイクの可能性からゼロではありません。また、本人が将来子をもつ場合は、理論上50%の確率で子に受け継がれます。こうした点については、遺伝カウンセリングで専門家から個別の説明を受けることが勧められます。
利用できる制度・相談窓口
CFC症候群は指定難病であり、診断基準と重症度基準を満たす場合は、都道府県等に申請することで医療費助成を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)では小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となり、多くの小児はこちらを利用します。このほか、知的障害に対する療育手帳、心疾患や肢体不自由などに対する身体障害者手帳、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、自治体の乳幼児・子ども医療費助成などを、条件に応じて利用できます。児童発達支援や放課後等デイサービス、居宅介護、短期入所などの障害福祉サービスは、市区町村の窓口で相談できます。20歳以降は、障害の状態により障害年金(障害基礎年金)の対象となる可能性があります。医療的ケアが必要な場合は、医療的ケア児支援センターや訪問看護も活用できます。相談窓口としては、主治医や病院の医療ソーシャルワーカー、保健所、難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援事業の窓口があり、同じ疾患をもつ家族の会(患者家族会)から情報や体験を得ることも助けになります。
CFC症候群に伴う心のケア・心理社会的支援
生まれつきの疾患であるCFC症候群では、本人だけでなく家族、特に保護者の心理的負担が大きくなりがちです。診断時の衝撃や「妊娠中の何かが原因だったのでは」という自責感(実際には多くが偶然生じた変異であり、誰の責任でもありません)、乳児期の頻回な入院や経管栄養、てんかん発作、睡眠障害による慢性的な睡眠不足などが重なり、保護者に抑うつ、不安、燃え尽き、適応障害が生じることも少なくありません。まれな疾患であるため、周囲に同じ経験を共有できる人が少なく、孤立感を抱きやすいことも特有の課題です。きょうだい児が寂しさや我慢を抱えることもあり、きょうだい支援の視点も大切です。本人についても、成長とともに不安やかんしゃく、こだわりなどの行動面の課題がみられることがあり、発達特性に応じた環境調整が有効です。つらさを感じたときは一人で抱え込まず、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、保健師などに相談し、レスパイト(短期入所など)や家族会の活用で休息を確保することが、本人と家族の長期的な生活を支えるうえで重要です。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
CFC症候群の受診の目安
- けいれん発作が5分以上続く、発作を繰り返して意識が戻らない場合は、救急車を呼ぶなど直ちに救急受診してください。
- 呼吸が苦しそう、顔色や唇が紫色(チアノーゼ)、ぐったりして元気がない、むくみや急な体重増加がある場合は、心不全の可能性があるため速やかに受診してください。
- 繰り返す嘔吐や哺乳・食事量の明らかな低下、尿量の減少など脱水が疑われる場合は早めに受診してください。
- 発熱に加えて咳や痰が増え、呼吸が速いなど誤嚥性肺炎が疑われる場合は受診してください。
- 新たな発作のような動き、できていたことができなくなるなど発達の後退がみられた場合は、主治医に相談してください。
- ほくろの急な増大や色・形の変化、原因不明の発熱・顔色不良・出血傾向などが続く場合も、主治医に相談してください。
CFC症候群についてのよくある質問
Q. CFC症候群は親からの遺伝ですか?
A. 多くの場合は、両親にはない遺伝子の変化が本人で新たに生じたもの(新生突然変異)で、親の生活や妊娠中の行動が原因ではありません。両親が変異をもたない場合、次の子で再び起こる可能性は一般に低いとされますが、ゼロではないため、遺伝カウンセリングで個別に相談することをお勧めします。
Q. ヌーナン症候群とはどう違うのですか?
A. どちらもRAS/MAPK経路の異常による類縁疾患で、顔貌や心疾患が似ています。CFC症候群では皮膚・毛髪の異常や知的障害、てんかんがより目立つ傾向があり、確実な区別には遺伝学的検査が用いられます。
Q. 成長ホルモン治療は受けられますか?
A. CFC症候群に対する成長ホルモン治療は、有効性や安全性(特に心筋肥大への影響)が十分に確立していません。低身長が目立つ場合は、心臓の状態を含めて内分泌の専門医と主治医に相談してください。
Q. 根本的に治す治療法はありますか?
A. 現時点では原因を治す治療は確立しておらず、心疾患・てんかん・栄養障害などの合併症への治療と、療育などの発達支援が中心です。RAS/MAPK経路を標的とする薬剤の研究は進められていますが、まだ研究段階であり、最新情報は専門医に確認してください。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。