ブラウ症候群

Blau Syndrome

ブラウ症候群(Blau Syndrome)|ブラウ症候群は、NOD2遺伝子の変異によって全身に「肉芽腫」と呼ばれる炎症のかたまりができる、まれな遺伝性の自己炎症性疾患です。多くは4歳ごろまでの乳幼児期に、皮疹・関節炎・ぶどう膜炎の三つの症状で発症します。とくに眼の炎症は視力低下や失明につながることがあり、早期診断と長期にわたる治療・経過観察が必要です。

ブラウ症候群の要点

ブラウ症候群は、NOD2遺伝子の変異により自然免疫が過剰に働き、全身に肉芽腫ができるまれな遺伝性の自己炎症性疾患で、指定難病です。多くは乳幼児期に皮疹・関節炎・ぶどう膜炎で発症し、眼の炎症は視力低下や失明につながることがあるため、早期診断と長期の治療・経過観察が必要です。

別名・略称若年発症サルコイドーシス、早期発症サルコイドーシス、EOS、Early-onset sarcoidosis、家族性若年性全身性肉芽腫症、Familial juvenile systemic granulomatosis
分野免疫・膠原病・自己炎症
遺伝形式常染色体顕性(優性)遺伝。孤発例ではNOD2の新生突然変異(de novo変異)が多い
好発年齢多くは4歳ごろまでの乳幼児期
主な症状皮疹・関節炎・ぶどう膜炎(三徴)
主な検査NOD2遺伝子検査、皮膚や滑膜などの生検(乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫)
主な治療副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤などによる炎症の抑制
受診する主な診療科小児科(小児リウマチ)、眼科、皮膚科

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

ブラウ症候群とは

ブラウ症候群(Blau syndrome)は、細胞内で細菌成分を感知する分子NOD2をつくるNOD2遺伝子(別名CARD15)の機能獲得型変異により、自然免疫が過剰に働き続けることで起こる全身性の肉芽腫性疾患です。肉芽腫とは、マクロファージから変化した類上皮細胞や多核巨細胞が集まった炎症組織で、病理学的にはサルコイドーシスと同じ乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が特徴です。自己抗体や自己反応性リンパ球が主役となる自己免疫疾患とは異なり、生まれつきの自然免疫の異常による自己炎症性疾患に分類されます。なお、本症は血小板減少や紫斑を主な症状とする病気ではなく、免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)とはまったく別の疾患です。

1985年、米国の小児科医Edward Blauが、皮疹・関節炎・ぶどう膜炎が常染色体顕性(優性)遺伝形式で受け継がれる家系を報告し、この疾患名の由来となりました。一方、家族歴のない乳幼児に同様の症状がみられる病態は若年発症サルコイドーシス(early-onset sarcoidosis:EOS)と呼ばれ、成人のサルコイドーシスの小児例と考えられてきました。2001年に家族性ブラウ症候群の原因がNOD2変異であることが明らかになり、その後日本の研究グループなどにより、EOSの多くにも同じNOD2変異が新生突然変異(de novo変異)として存在することが示されました。現在では、家族性のものを「ブラウ症候群」、孤発例を「若年発症サルコイドーシス」と呼び分けることはあっても、両者は同一の疾患スペクトラムと理解されており、日本の指定難病でも「ブラウ症候群」として一括して扱われています。

ブラウ症候群の疫学・患者数

ブラウ症候群は世界的にも極めてまれな疾患で、正確な有病率は明らかではありません。日本でも患者数は限られており、全国調査などで把握されているのは数十例規模とされています。発症年齢は大部分が乳幼児期(多くは4歳未満)で、皮疹は生後1年以内に気づかれることも少なくありません。性差や明らかな人種差は報告されていません。家族性(親から受け継ぐ)の例と、家族歴のない孤発例(新生突然変異)の両方があり、日本では孤発例の比率が比較的高いとする報告があります。症状が乏しい時期や一部の症状のみの時期には若年性特発性関節炎などと診断されていることもあり、実際の患者数は把握されている数より多い可能性があります。

ブラウ症候群の原因・病態生理

原因は第16番染色体上のNOD2遺伝子のヘテロ接合性変異で、遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝です。変異をもつ親から子へは50%の確率で受け継がれ、浸透率(変異をもつ人が発症する割合)は高いとされます。変異の多くは、NOD2分子の中央にあるNACHT(NOD)ドメインと呼ばれる自己会合・活性化に関わる領域に集中しており、334番目のアミノ酸アルギニンの置換(R334W、R334Qなど)が代表的とされます。興味深いことに、クローン病の発症しやすさに関わるNOD2変異は主に別の領域(ロイシンリッチリピート)にあり、機能低下型であるのに対し、ブラウ症候群の変異は機能獲得型であり、同じ遺伝子でも異なる病態を生じます。

NOD2は単球・マクロファージ・樹状細胞などの細胞内に存在するパターン認識受容体で、本来は細菌の細胞壁成分であるムラミルジペプチド(MDP)を感知すると、キナーゼRIPK2を介して転写因子NF-κBなどを活性化し、炎症性サイトカインを産生して感染防御に働きます。ブラウ症候群の変異型NOD2は、細菌成分がない状態でも自発的に活性化しやすく、あるいは刺激に過剰に反応するため、NF-κB経路が持続的に活性化されると考えられています。その結果、TNF-α、IL-1β、IL-6、IFN-γなどの炎症性サイトカインが産生され、マクロファージが類上皮細胞へ分化して集簇し、皮膚・関節滑膜や腱鞘・眼のぶどう膜などに肉芽腫が形成されます。どの臓器がいつ障害されるかには個人差が大きく、同じ変異をもつ家族内でも重症度が異なることから、他の遺伝的背景や環境因子の関与も想定されていますが、詳細は解明されていません。

ブラウ症候群の症状

  • 皮疹(苔癬様・魚鱗癬様皮疹): 多くは最初に現れる症状で、粟粒大の淡紅色〜褐色の小丘疹が体幹や四肢に多発し、ざらざらした手触りや細かい鱗屑を伴います。かゆみは軽いことが多く、湿疹やアトピー性皮膚炎と誤認されることがあります。
  • 関節炎(嚢腫状の滑膜炎): 手首・足首・膝・指などに、痛みが比較的軽い割にぶよぶよとした嚢腫状の腫れが生じるのが特徴です。滑膜と腱鞘の肉芽腫性炎症によるもので、関節可動域が保たれる時期もあります。
  • 腱鞘炎: 手背や足背、足関節周囲の腱鞘が腫れ、関節炎と区別しにくい腫脹を示します。超音波やMRIで腱鞘の肥厚や液体貯留として確認されます。
  • 指の屈曲拘縮(カンプトダクチリー): 長期の炎症により指の関節が曲がったまま伸びにくくなる状態で、本症の特徴的所見の一つです。手指の細かい動作に影響します。
  • ぶどう膜炎: 通常、皮疹と関節炎に遅れて発症し、前部ぶどう膜炎から始まって汎ぶどう膜炎(眼全体の炎症)へ進展しやすいとされます。初期は充血や痛みが目立たないことがあり、定期的な眼科診察が欠かせません。
  • 視力低下・羞明: ぶどう膜炎やその合併症(白内障、緑内障、黄斑浮腫など)によって、見えにくさやまぶしさが生じます。幼児は症状を訴えにくいため、物に近づいて見る、よくつまずくなどの行動の変化が手がかりになります。
  • 発熱: 一部の患者では原因不明の発熱を繰り返したり、微熱が続いたりします。炎症の活動性を反映していることがあります。
  • 肝脾腫・リンパ節腫脹: 肝臓や脾臓、リンパ節に肉芽腫が生じて腫大することがあります。成人サルコイドーシスで典型的な両側肺門リンパ節腫脹は本症ではまれとされます。
  • 腎障害: 肉芽腫性間質性腎炎などによる腎機能低下や尿所見の異常が報告されています。自覚症状に乏しいため、定期的な尿・血液検査で確認します。
  • 高血圧・血管炎: 大動脈やその分枝に炎症が及ぶ大型血管炎(高安動脈炎に類似)や、それに伴う高血圧を生じる例が報告されています。
  • 成長障害・全身倦怠感: 慢性炎症や長期のステロイド治療により、身長の伸びが鈍ったり、疲れやすさが続いたりすることがあります。

ブラウ症候群の経過と合併症

典型的には、皮疹(乳児期)→関節炎(幼児期)→ぶどう膜炎(幼児期〜学童期)の順に症状が出そろうとされますが、順序や時期には個人差があり、三つすべてがそろわない例もあります。皮疹は自然に軽快・再燃を繰り返すことが多く、関節炎は慢性に持続して、治療が不十分な場合には関節の変形や拘縮、骨の成長への影響を残すことがあります。ぶどう膜炎は慢性・再発性の経過をとり、本症の機能予後を最も左右する症状です。炎症は成人期になっても持続することが多く、年齢とともに自然に治癒する病気ではないと考えられています。また、三主徴以外の臓器(腎臓、肝臓、血管、肺、中枢神経など)へ病変が広がる「拡大病型」をとる例も報告されています。

最も重要な合併症は眼に関するもので、慢性炎症や治療薬(ステロイド点眼・内服)の影響により、併発白内障、続発緑内障、帯状角膜変性、虹彩後癒着、嚢胞様黄斑浮腫、網膜・脈絡膜の変性、視神経乳頭の炎症などが起こり、重症例では高度の視力障害や失明に至ることがあります。関節では屈曲拘縮や変形、筋力低下が日常動作を妨げます。全身では、間質性腎炎による腎機能障害、大型血管炎や高血圧、肝機能障害などが生じうるほか、治療に伴う合併症として、ステロイドによる成長障害・骨粗鬆症・肥満・糖代謝異常、免疫抑制薬や生物学的製剤による感染症リスクの上昇にも注意が必要です。

ブラウ症候群の診断・診断基準

ブラウ症候群の診断は、①特徴的な臨床症状(皮疹・関節炎・ぶどう膜炎)、②組織生検での非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の確認、③NOD2遺伝子の病的変異の同定を組み合わせて行います。乳幼児期の皮疹や関節腫脹の段階で疑うことが早期診断の鍵であり、「痛みの割に腫れが目立つ関節炎」「湿疹として治療しても治らない小丘疹」「乳幼児のぶどう膜炎」などがきっかけになります。成人型サルコイドーシスと異なり、肺門リンパ節腫脹や肺病変は目立たないことが多いため、胸部所見が正常でも本症を否定する根拠にはなりません。日本の指定難病・小児慢性特定疾病の診断基準でも臨床所見と遺伝学的検査が重視されており、医療費助成の申請には所定の診断基準と重症度などの要件を満たす必要があります。診断は小児リウマチ・自己炎症性疾患の専門医、皮膚科、眼科が連携して行うのが望ましいとされます。

  • 皮膚生検: 皮疹部の組織に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認めることが重要な所見です。侵襲が少なく、乳幼児でも比較的行いやすい検査です。
  • NOD2遺伝子検査: NOD2遺伝子のNACHTドメインを中心とした既知の病的変異が見つかれば、診断の確定に大きく寄与します。新規の変異の場合は、機能解析や家族解析を含めた専門的な評価が必要になることがあります。
  • 眼科検査(細隙灯顕微鏡・眼底検査・OCT・蛍光眼底造影): 前房の炎症細胞、虹彩結節、硝子体混濁、網脈絡膜病変、黄斑浮腫などを評価します。自覚症状がなくても診断時から定期的な検査が必要です。
  • 血液検査(炎症反応・自己抗体): CRPや赤沈が上昇することがありますが、正常範囲の例もあります。リウマトイド因子や抗CCP抗体は通常陰性で、関節リウマチなどとの鑑別に役立ちます。
  • 血清ACE・リゾチーム・可溶性IL-2受容体: 肉芽腫の活動性を反映して上昇することがあり、補助的な指標や経過観察に用いられます。ただし小児の基準値は年齢で異なり、正常でも本症は否定できません。
  • 関節超音波検査・MRI: 滑膜の肥厚や腱鞘の液体貯留・肥厚を描出し、嚢腫状腫脹の実体を評価します。関節破壊が乏しい割に軟部組織の腫れが強いことが特徴です。
  • 滑膜生検・他臓器生検: 皮疹がない場合などに、滑膜や腫大したリンパ節・肝臓などから肉芽腫を確認することがあります。結核などの感染症の除外も兼ねて行われます。
  • 臓器障害の評価(尿・腎機能・血圧・画像検査): 尿検査、腎機能、肝機能、血圧測定、必要に応じて血管の画像検査(超音波・CT・MRIなど)を行い、拡大病型の有無を確認します。
  • 感染症・免疫不全の除外検査: 結核(インターフェロンγ遊離試験など)や真菌感染症、慢性肉芽腫症などの肉芽腫をつくる免疫不全症を除外します。治療開始前の感染症スクリーニングとしても重要です。

ブラウ症候群と鑑別すべき疾患

  • 若年性特発性関節炎(JIA): 関節炎とぶどう膜炎を合併しうる点で似ていますが、ブラウ症候群では嚢腫状の滑膜・腱鞘腫脹と特徴的な皮疹、肉芽腫の存在、NOD2変異が鑑別点となります。
  • サルコイドーシス(成人型): 同じ非乾酪性肉芽腫を示しますが、成人型は思春期以降に多く、両側肺門リンパ節腫脹や肺病変が主体である点が異なります。
  • クローン病: 肉芽腫とNOD2の関連が共通しますが、消化管病変が主体で、NOD2変異の性質(機能低下型)も異なります。
  • 結核・非結核性抗酸菌症などの感染性肉芽腫: 乾酪壊死の有無、培養やPCR、インターフェロンγ遊離試験などで感染症を除外します。
  • 慢性肉芽腫症などの原発性免疫不全症: 肉芽腫形成を伴いますが、重症・反復性の細菌・真菌感染症が目立ち、好中球機能検査などで鑑別します。
  • 高安動脈炎: 大型血管炎を伴うブラウ症候群との鑑別が必要で、皮疹・関節炎・ぶどう膜炎の有無や発症年齢、遺伝子検査が手がかりになります。

ブラウ症候群の治療

現時点でブラウ症候群を根本的に治す治療法は確立しておらず、治療の目標は炎症を抑えて臓器障害(特に視力障害と関節拘縮)を防ぎ、子どもの成長・発達と生活の質を守ることです。症例数が少ないため大規模な比較試験はほとんどなく、治療は症例報告や専門家の経験、類縁疾患(JIA関連ぶどう膜炎や非感染性ぶどう膜炎、サルコイドーシス)の知見に基づいて行われています。一般的には、副腎皮質ステロイドで炎症を抑えつつ、長期使用による副作用を減らすためにメトトレキサートなどの免疫抑制薬を併用し、効果が不十分な場合や眼病変が重い場合にTNF阻害薬などの生物学的製剤を検討するという段階的な考え方がとられることが多いとされます。眼の炎症は自覚症状と一致しないことがあるため、眼科と小児科(リウマチ科)が密に連携し、定期的な診察結果に基づいて治療を調整します。薬剤の選択や保険適用の範囲は病状や年齢により異なるため、具体的な治療方針は必ず主治医・専門医と相談して決めてください。

  • 副腎皮質ステロイド(全身投与): 関節炎や眼炎症の活動期に用いられ、炎症を速やかに抑える効果があります。成長障害や骨粗鬆症などの副作用があるため、できるだけ少量・短期間にとどめ、他の薬剤への移行が図られます。
  • ステロイド局所療法(点眼・眼周囲注射など): 前部ぶどう膜炎にはステロイド点眼と散瞳薬(虹彩癒着の予防)が基本となります。眼圧上昇や白内障の進行に注意しながら使用します。
  • メトトレキサートなどの免疫抑制薬: ステロイドの減量を目的に併用されることが多い薬剤です。効果発現まで時間がかかり、肝機能障害や血球減少などの副作用を定期検査で確認します。
  • TNF阻害薬(生物学的製剤): インフリキシマブやアダリムマブなどのTNF阻害薬は、難治性の関節炎やぶどう膜炎に有効であったとする報告が多く、治療の中心的な選択肢の一つとされています。結核などの感染症スクリーニングと、投与中の感染症への注意が必要です。
  • その他の生物学的製剤・分子標的薬: TNF阻害薬で効果が不十分な例に、IL-6阻害薬、IL-1阻害薬、JAK阻害薬などが試みられたとの報告がありますが、有効性は一定せず、確立した治療ではありません。専門施設での慎重な検討が必要です。
  • 眼科的手術・合併症治療: 白内障、緑内障、帯状角膜変性などに対して手術が行われることがあります。術後に炎症が悪化しやすいため、炎症を十分に抑えたうえで時期を見極めて行います。
  • リハビリテーション・装具療法: 理学療法・作業療法による関節可動域訓練や筋力維持、必要に応じた装具(スプリント)で指や関節の拘縮を予防・改善します。日常生活動作や学校生活を支える重要なケアです。
  • 副作用・合併症の予防的管理: ステロイド長期使用時の骨粗鬆症対策、成長の評価、血圧・腎機能の管理、予防接種計画(生ワクチンは免疫抑制中に原則避けるなど)を主治医と相談しながら行います。

ブラウ症候群の予後・長期フォロー

ブラウ症候群は一般に生命予後は比較的保たれる疾患とされていますが、炎症は生涯にわたって持続・再燃しやすく、機能予後、とくに視力予後が最大の課題です。ぶどう膜炎の治療が遅れたり不十分であったりすると、白内障・緑内障・黄斑病変などが進行し、高度の視力障害に至る例が少なからず報告されています。関節では屈曲拘縮や変形が残ると手指の巧緻動作や歩行に影響します。一方、近年は生物学的製剤の導入や早期診断の普及により、炎症をより良好にコントロールできる例が増えていると考えられています。腎臓や大型血管などに病変が及ぶ拡大病型では、臓器障害が生命予後に関わることもあり、注意深い管理が必要です。

長期フォローアップでは、小児期から成人期まで継続して、定期的な眼科診察(活動性に応じて数週〜数か月ごと)、関節所見と身体機能の評価、血液・尿検査による炎症と臓器障害の確認、血圧測定、成長・発達の評価を行います。治療薬の副作用(感染症、骨密度低下、肝障害、血球減少など)のモニタリングも欠かせません。また、小児科から成人診療科へ移行する時期には、治療の継続性が途切れないよう、移行期医療として受診先の調整や本人への疾患教育を計画的に進めることが大切です。症状が落ち着いていても自己判断で通院や服薬を中断しないことが、長期予後の改善につながります。

ブラウ症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、まず眼の定期受診を欠かさないことが最も重要です。幼児は見えにくさを訴えないことが多いため、家族や保育・学校の関係者が、目の充血、まぶしがる、目を細める、テレビに近づく、つまずきやすいといった変化に注意を払いましょう。関節については、炎症のある時期は無理をせず、落ち着いている時期には医師やリハビリスタッフと相談のうえで適度な運動を続けることが拘縮予防と体力維持に役立ちます。免疫抑制薬や生物学的製剤を使用中は、手洗い・うがいなどの感染予防、発熱時の早めの受診、予防接種のスケジュール(不活化ワクチンの積極的接種、生ワクチンの可否)について主治医と確認しておくことが大切です。ステロイド使用中は、カルシウムやビタミンDを意識したバランスのよい食事、体重管理も心がけます。学校生活では、体育や行事への参加方法、視力に応じた座席や教材の配慮、通院による欠席への理解などについて、学校と情報を共有するとよいでしょう。本症は常染色体顕性遺伝で、患者が子どもをもつ場合には50%の確率で変異が受け継がれます。一方、孤発例では両親が変異をもたないことが多く、きょうだいの再発リスクは一般に低いとされますが、親の体細胞モザイクなどの可能性もあります。将来の家族計画や家族の検査については、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることをおすすめします。

利用できる制度・相談窓口

ブラウ症候群は指定難病(告示番号110)に指定されており、診断基準と重症度などの認定要件を満たすと、難病指定医が作成した臨床調査個人票をもとに都道府県・指定都市へ申請することで、医療費助成(自己負担上限額の設定)を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満)の患者では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があり、乳幼児期の発症が多い本症では、まず小児慢性特定疾病の申請を行い、成人への移行に合わせて指定難病へ切り替えるケースが多くみられます。視力障害や関節機能障害が一定の程度に達した場合には身体障害者手帳(視覚障害・肢体不自由)の対象となり、補装具の給付や各種福祉サービスを利用できることがあります。20歳以降に日常生活や就労に支障がある場合には障害年金、20歳未満で障害のある子どもを養育する家庭では特別児童扶養手当などの対象となる可能性があります。そのほか、高額療養費制度や自治体独自の子ども医療費助成も併用できる場合があります。制度の詳細や手続きは、お住まいの地域の保健所・保健センター、自治体の担当窓口、医療機関の医療ソーシャルワーカー、各都道府県の難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援事業の相談窓口などで相談できます。患者会や自己炎症性疾患に関する情報提供サイトも、情報交換や孤立感の軽減に役立ちます。

ブラウ症候群に伴う心のケア・心理社会的支援

ブラウ症候群のように乳幼児期に発症し、生涯にわたって治療が続く疾患では、患者本人だけでなく家族にも大きな心理的負担がかかります。保護者は、診断がつくまでの長い不安、頻回の通院や注射、薬の副作用への心配、「遺伝する病気」であることへの戸惑いや自責感を抱きやすく、抑うつ、不安、睡眠障害、適応障害などにつながることがあります。子ども本人は、成長とともに見た目(皮疹や関節の変形)、視力低下による学習や遊びの制限、運動や行事に参加しにくいこと、ステロイドによる体型の変化などから、劣等感や疎外感、不登校を経験することがあります。思春期には、服薬や通院への抵抗、将来の進学・就職・結婚・妊娠に関する悩みが生じやすく、本症に特有の課題として、視力を失うことへの恐れや遺伝の問題が重くのしかかることもあります。また、きょうだいが寂しさや我慢を抱えることにも配慮が必要です。こうした気持ちは決して珍しいものではなく、ひとりで抱え込まないことが大切です。主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士(公認心理師)、学校のスクールカウンセラー、遺伝カウンセラーなどに早めに相談し、必要に応じて精神科・心療内科や児童精神科の支援も活用してください。同じ病気をもつ家族との交流が心の支えになることもあります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

ブラウ症候群の受診の目安

  • 目の充血、痛み、まぶしさ、見えにくさ、黒い点が飛んで見えるなどの症状が出た場合や、子どもが物に極端に近づいて見るようになった場合は、早めに眼科を受診してください。
  • 急に視力が落ちた、目の強い痛みや頭痛・吐き気を伴う場合は、緑内障発作などの可能性もあるため当日中に受診してください。
  • 免疫抑制薬や生物学的製剤を使用中に38℃以上の発熱、咳や息苦しさ、強いだるさがある場合は、重い感染症の可能性があるため速やかに主治医に連絡し受診してください。
  • 関節の腫れや痛みが急に強くなった、歩けない・手が使えないなど日常生活に支障が出た場合は、予定を早めて受診してください。
  • むくみ、尿量の減少、頭痛や高血圧の指摘など、腎臓や血管の障害を疑う症状があるときは受診してください。
  • 乳幼児で湿疹のような小さなぶつぶつが治りにくく、関節の腫れやぶどう膜炎を伴う場合は、小児リウマチや自己炎症性疾患の専門医への相談を検討してください。

ブラウ症候群についてのよくある質問

Q. ブラウ症候群は血小板が減って出血しやすくなる病気ですか?

A. いいえ、ブラウ症候群はNOD2遺伝子の変異による自己炎症性の肉芽腫性疾患で、皮疹・関節炎・ぶどう膜炎が主な症状です。血小板減少や紫斑を主症状とする免疫性血小板減少症とは別の病気であり、脾臓摘出なども通常の治療ではありません。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 常染色体顕性(優性)遺伝のため、患者本人の子どもには50%の確率でNOD2変異が受け継がれます。家族歴のない孤発例では、両親は変異をもたないことが多く、きょうだいの再発リスクは一般に低いとされますが、個別の評価が必要です。詳しくは遺伝カウンセリングで相談してください。

Q. 大人になれば自然に治りますか?

A. 炎症は成人期以降も続いたり再燃したりすることが多く、成長とともに自然に治る病気とは考えられていません。症状が落ち着いていても、とくに眼の定期検査は生涯にわたって継続することが大切です。

Q. サルコイドーシスと同じ病気ですか?

A. 肉芽腫という同じ種類の炎症がみられるため、以前は「若年発症サルコイドーシス」と呼ばれていました。しかし、ブラウ症候群はNOD2遺伝子変異が原因で、乳幼児期に発症し、肺病変が目立たない点などで成人のサルコイドーシスとは異なる疾患と考えられています。

この記事をシェア

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

関連記事(関連する指定難病)

同じ分野(免疫・膠原病・自己炎症)の指定難病

免疫・膠原病・自己炎症の指定難病を一覧で見る / 指定難病リスト(全341疾患)

この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。