アトピー性脊髄炎
Atopic Myelitis
アトピー性脊髄炎(Atopic Myelitis)|アトピー性脊髄炎は、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアトピー素因をもつ人に起こる、原因不明の炎症性脊髄疾患です。主に頸髄が障害され、手足のしびれや痛み、感覚の鈍さ、ときに筋力低下や排尿障害が現れます。若年から中年の働き盛りや子育て世代に発症しやすく、慢性に経過してしびれや痛みが残ることがあるため、就労や日常生活に長く影響しうる疾患です。指定難病(告示番号116)に指定されています。
アトピー性脊髄炎の要点
アトピー性脊髄炎は、アトピー素因をもつ人に起こる原因不明の炎症性脊髄疾患で、主に頸髄が障害され、好酸球などによるアレルギー性炎症が背景にあると考えられています。手足のしびれや痛み、感覚の鈍さが中心で、ときに筋力低下や排尿障害もみられ、指定難病(告示番号116)です。
| 分野 | 神経・筋疾患 |
|---|---|
| 障害される部位 | 主に頸髄(特に感覚を伝える後索) |
| 好発年齢 | 若年から中年 |
| 主な症状 | 手足、とくに手のしびれ・痛み、感覚の鈍さ。ときに筋力低下・排尿障害 |
| 主な検査 | 血清総IgE・ダニなどの特異的IgE測定、脊髄MRI |
| 受診する主な診療科 | 神経内科 |
| 指定難病 | 告示番号116 |
アトピー性脊髄炎とは
アトピー性脊髄炎は、アトピー素因(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの既往・合併、血清総IgE高値、ダニなど環境アレルゲンに対する特異的IgE陽性)をもつ人に生じる、他に原因が見当たらない脊髄炎と定義されます。脊髄の中でも頸髄、特に感覚を伝える後索が障害されやすく、症状の中心は四肢、とりわけ手のジンジンする異常感覚や痛みです。病理学的には、血管周囲のリンパ球浸潤、好酸球の浸潤、髄鞘や軸索の脱落がみられます。このことから、アレルギー性(好酸球性)炎症が中枢神経に及ぶ病態と考えられています。血液の病気や皮膚の病気とは異なり、神経(脊髄)の炎症が主体となる疾患であるため、診断と治療には脳神経内科での評価が重要です。
本症は1997年、九州大学の吉良潤一らのグループにより、アトピー性皮膚炎と高IgE血症を伴う頸髄炎として初めて報告されました。その後の全国調査で日本各地に患者が存在することが確認され、研究班により診断基準が作成・改訂されています(2012年頃に改訂版が公表)。病型としての厳密な国際分類は確立していませんが、臨床経過から急性~亜急性に発症し一度の炎症で落ち着く単相性のもの、症状が増悪と軽快を繰り返す再発寛解型、ゆるやかに進行・持続する慢性型が区別されることがあります。日本から提唱された疾患概念であり、韓国など東アジアからの報告が中心で、欧米での報告は比較的少ないとされます。疾患概念の独立性については、多発性硬化症などとの関係も含め議論が続いている面があります。
アトピー性脊髄炎の疫学・患者数
正確な患者数は明らかではありませんが、まれな疾患であり、全国調査や指定難病の受給者数から、国内の患者は数百人規模と推定されています。発症年齢は小児から高齢者まで幅がありますが、20~40歳代の若年~中年成人に多いとされ、平均発症年齢は30歳代前後と報告されています。性差については報告により異なり、明確な傾向は確立していません。アトピー性皮膚炎が成人まで持続している人に多い一方で、皮膚炎が軽快・消失していても血清IgE高値やダニ特異的IgE陽性などのアトピー素因をもつ例もあります。日本人ではHLA-DPB1*02:01などの特定のHLA型との関連が報告されており、遺伝的な感受性が関与する可能性があります。ただし、単一遺伝子で遺伝する病気ではありません。
アトピー性脊髄炎の原因・病態生理
原因はまだ完全には解明されていません。中心的な病態は、アトピー素因を背景としたアレルギー性(Th2型)免疫反応が脊髄に及ぶことと考えられています。患者の多くでは血清総IgEが高く、コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどのダニ抗原に対する特異的IgEが陽性です。脳脊髄液では、好酸球の動員や活性化に関わるインターロイキン9(IL-9)やエオタキシン(CCL11)の上昇が報告されており、診断の補助所見として用いられます。遺伝的素因としては特定のHLAクラスII対立遺伝子との関連が報告されています。しかし本症は遺伝病ではなく、家族内に発症が集積することもまれです。視神経脊髄炎スペクトラム障害で検出される抗アクアポリン4抗体は通常陰性です。本症は、多発性硬化症や視神経脊髄炎とは別の免疫機序による疾患と位置づけられています。
想定されている発症機序は次のようなものです。アトピー体質の人では、ダニなどの抗原に反応するTh2型のリンパ球が活性化しやすく、IL-4、IL-5、IL-9などのサイトカインを介して好酸球やIgE産生が亢進しています。何らかのきっかけで血液脳関門(血液脊髄関門)の機能が低下すると、活性化したリンパ球や好酸球が脊髄内に入り込み、好酸球が放出する顆粒蛋白(好酸球カチオン性蛋白など)によって髄鞘や軸索、グリア細胞が傷害されると考えられています。病理組織では、血管周囲のリンパ球浸潤、好酸球浸潤、脱髄と軸索脱落、さらにアストロサイトにおけるエンドセリンB受容体の発現亢進が報告されています。エンドセリン系は神経障害性疼痛にも関与するとされ、本症で頑固な異常感覚・痛みが目立つことの一因と推測されています。好発部位が頸髄後索である理由は明確ではありません。アトピー性皮膚炎の悪化やアレルゲン曝露が症状の悪化と時期的に一致する例もあり、全身のアレルギー状態と神経症状の関連が示唆されています。
アトピー性脊髄炎の症状
- 四肢の異常感覚(しびれ): 最も多い症状で、手指や手のひら、足先などにジンジン、ピリピリする感覚が出ます。片側の手から始まり、反対側や下肢に広がることがあります。
- 異常痛・神経障害性疼痛: 触れただけで痛む、焼けるように痛むといった不快な痛み(アロディニア)が出ることがあります。睡眠や日常動作を妨げ、生活の質を大きく下げる要因となります。
- 感覚鈍麻: 触覚や痛覚、温度覚が鈍くなり、けがややけどに気づきにくくなることがあります。障害部位に応じた範囲に分布します。
- 深部感覚障害(後索症状): 振動覚や関節位置覚が低下し、目を閉じるとふらつく、暗い所で歩きにくいといった症状が出ます。頸髄後索が障害されやすい本症の特徴的な所見です。
- 手の巧緻運動障害: 深部感覚の低下や軽い筋力低下により、ボタンかけ、箸使い、書字などの細かい動作が不器用になります。
- 筋力低下: 感覚症状に比べると軽度であることが多いものの、上肢や下肢の脱力を伴うことがあります。重症例では歩行に支障をきたします。
- 腱反射亢進・痙性: 診察で腱反射の亢進や病的反射がみられ、脚のつっぱりやこわばり(痙性)を生じることがあります。
- レルミット徴候: 首を前に曲げたときに、背中から手足に電気が走るような感覚が生じることがあります。頸髄病変を示唆する所見です。
- 歩行障害: 深部感覚障害や痙性、筋力低下が組み合わさってふらつきや歩きにくさが生じます。重症例では杖や補助具が必要になります。
- 膀胱直腸障害: 頻尿、尿意切迫、排尿困難、便秘などがみられることがありますが、頻度は高くないとされます。
- アトピー性疾患の症状: アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などを合併していることが多く、それらの悪化と神経症状の悪化が重なる例もあります。
アトピー性脊髄炎の経過と合併症
発症様式は急性、亜急性、慢性とさまざまで、数日から数週で症状が完成する例もあれば、数か月以上かけてゆっくりしびれが広がる例もあります。経過は単相性のほか、増悪と軽快を繰り返す再発寛解型、症状が持続・緩徐に進行する慢性型があり、慢性に経過する例が少なくないとされます。全体として感覚障害が主体で、運動障害は比較的軽い例が多いものの、一部では痙性歩行や膀胱直腸障害を伴い、日常生活動作に介助を要する程度まで障害されることもあります。早期に免疫治療を行うと症状が改善しやすいとされる一方、長期間経過した例では軸索障害による後遺症が残りやすく、特に異常感覚や痛みは持続しやすい傾向があります。
合併症としては、まず背景にあるアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎などのアレルギー疾患が挙げられます。治療に伴うものとして、副腎皮質ステロイドの長期使用による骨粗鬆症、糖尿病、感染症、白内障、緑内障、消化性潰瘍、体重増加などに注意が必要です。脊髄障害に伴い、慢性疼痛による睡眠障害や抑うつ、転倒による骨折、排尿障害に伴う尿路感染症などを生じることがあります。また、本症の一部では末梢神経障害の合併が報告されています。
アトピー性脊髄炎の診断・診断基準
診断は、①脊髄の障害を示す神経症状と所見、②アトピー素因の存在、③検査による炎症所見、④他の脊髄疾患の除外、の組み合わせで行います。手足のしびれでは整形外科を受診することも多いですが、頸椎の圧迫所見で説明できない脊髄症状がある場合や、アトピー性疾患を持つ人に原因不明の脊髄炎がみられる場合には、脳神経内科での精査が重要です。研究班による診断基準では、原因不明の脊髄炎であること、アトピー素因(アレルギー疾患の現在または過去の合併、血清総IgE高値、ダニなどの特異的IgE陽性)を有すること、脳脊髄液のIL-9などの上昇、脊髄MRI所見、脊髄生検での好酸球浸潤などの項目をもとに、確実例(definite)や疑い例(probable)などに分類します。多発性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害、寄生虫感染、膠原病、サルコイドーシスなどの除外が診断の前提となります。指定難病の医療費助成を申請する際は、診断基準と重症度基準を満たすことを難病指定医が臨床調査個人票で証明します。
- 神経学的診察: 感覚障害の分布、振動覚・位置覚の低下、腱反射亢進や病的反射、レルミット徴候などから、頸髄を中心とした脊髄病変を推定します。
- 血液検査(IgE・特異的IgE): 血清総IgEの高値やダニ(コナヒョウヒダニ・ヤケヒョウヒダニ)などに対する特異的IgE陽性は、アトピー素因を示す重要な所見です。
- 末梢血好酸球数: 好酸球増多がみられることがありますが、正常範囲の例もあります。著明な好酸球増多では好酸球増多症候群や血管炎の鑑別が必要です。
- 脊髄MRI: 頸髄を中心にT2強調画像で高信号病変がみられ、後索に多い傾向があります。造影効果を伴うこともありますが、病変が検出されない例もあります。
- 脳MRI: 多発性硬化症などで典型的な大脳白質病変がないかを確認し、鑑別に役立てます。
- 脳脊髄液検査: 軽度の細胞数・蛋白の増加がみられることがあり、IL-9やエオタキシン(CCL11)の上昇が補助診断として報告されています。オリゴクローナルバンドは陰性のことが多いとされます。
- 自己抗体検査: 抗アクアポリン4抗体、抗MOG抗体、抗核抗体などを測定し、視神経脊髄炎スペクトラム障害や膠原病などを除外します。
- 感染症・寄生虫検査: HTLV-1抗体のほか、イヌ回虫・ブタ回虫などの寄生虫抗体を必要に応じて調べ、好酸球性脊髄炎の原因となる感染症を除外します。
- 神経生理検査: 体性感覚誘発電位(SEP)で脊髄後索の伝導障害を確認でき、神経伝導検査で末梢神経障害の合併の有無を評価します。
アトピー性脊髄炎と鑑別すべき疾患
- 多発性硬化症: 脳MRIの多発病変、オリゴクローナルバンド陽性、時間的・空間的多発性の有無で鑑別します。
- 視神経脊髄炎スペクトラム障害: 抗アクアポリン4抗体陽性や、3椎体以上に及ぶ長大な脊髄病変、重い視神経炎を伴う点が鑑別点です。
- 寄生虫性脊髄炎(イヌ回虫症など): 生肉摂取歴や寄生虫抗体陽性、高度の好酸球増多があれば疑い、治療方針が大きく異なるため除外が重要です。
- HTLV-1関連脊髄症: 緩徐進行性の痙性歩行と排尿障害が主体で、血清・髄液のHTLV-1抗体陽性で鑑別します。
- 頸椎症性脊髄症・後縦靱帯骨化症: MRIやCTで椎間板や骨化巣による脊髄圧迫が確認され、炎症所見を欠く点で鑑別します。
- 脊髄サルコイドーシス・亜急性連合性脊髄変性症: 前者は他臓器病変や血清ACE・可溶性IL-2受容体上昇、後者はビタミンB12欠乏で鑑別します。
アトピー性脊髄炎の治療
治療の目的は、脊髄の炎症を抑えて神経障害の進行を止め、症状を改善させること、再発・増悪を予防すること、そして残った痛みやしびれを和らげて生活の質を保つことです。確立した大規模臨床試験はなく、治療は国内の症例集積や専門家の経験に基づいて行われています。急性期や増悪期には副腎皮質ステロイドの点滴(パルス療法)が第一に検討され、効果が不十分な場合には血液浄化療法(血漿交換など)や免疫グロブリン大量静注療法が考慮されます。血漿交換は有効例が多いと報告されています。再発や慢性進行がある例では、経口ステロイドや免疫抑制薬による維持療法が検討されます。あわせて背景にあるアトピー性皮膚炎や喘息を適切にコントロールし、ダニなどのアレルゲン曝露を減らすことも重要と考えられています。治療の選択は症状の重さ、経過、合併症、年齢、妊娠の希望などにより個別に異なるため、脳神経内科の専門医とよく相談して決めることが大切です。
- ステロイドパルス療法: メチルプレドニゾロンを数日間点滴する治療で、急性期・増悪期に炎症を速やかに抑える目的で行われます。多くの例で症状の改善が報告されています。
- 経口副腎皮質ステロイド: パルス療法後の後療法や再発予防として使用され、症状をみながら漸減します。長期使用では骨粗鬆症や感染症などの副作用対策が必要です。
- 血液浄化療法(血漿交換・免疫吸着など): ステロイドの効果が不十分な場合などに検討され、本症では有効例が多いと報告されています。専門施設での実施が中心となります。
- 免疫グロブリン大量静注療法: ステロイドや血液浄化療法が困難・無効な場合に選択肢として報告がありますが、本症への保険適用の有無を含め主治医と確認が必要です。
- 免疫抑制薬: 再発を繰り返す例や、ステロイドを減量できない例でステロイド節約目的に検討されることがあります。適応や薬剤選択は専門医が個別に判断します。
- アトピー性疾患の治療とアレルゲン対策: 皮膚科・呼吸器科と連携してアトピー性皮膚炎や喘息を適切に治療し、寝具の清掃などでダニ曝露を減らします。神経症状の安定に寄与する可能性があります。
- 神経障害性疼痛・しびれへの対症療法: プレガバリンやミロガバリン、デュロキセチン、抗てんかん薬などが症状に応じて用いられます。眠気やふらつきなどの副作用に注意して調整します。
- 痙性・排尿障害への対症療法: 痙性には抗痙縮薬、排尿障害には泌尿器科と連携した薬物療法や間欠導尿などを行います。
- リハビリテーション: 感覚障害によるバランス低下や手の巧緻性低下に対し、理学療法・作業療法でバランス訓練、筋力維持、生活動作の工夫を行います。
アトピー性脊髄炎の予後・長期フォロー
生命予後は一般に良好で、本症自体が直接命にかかわることはまれと考えられます。一方で機能予後はさまざまで、早期に免疫治療を受けた例では症状が大きく改善することが多い反面、慢性に経過した例や治療開始が遅れた例では、手足のしびれ、痛み、深部感覚障害などの後遺症が残りやすいとされます。運動障害は軽度にとどまる例が多いものの、一部では歩行に補助具が必要になるなど日常生活に支障が残ります。特に持続する神経障害性疼痛や異常感覚は、睡眠、仕事、家事、育児に影響し、生活の質を左右する大きな要因です。再発・増悪を繰り返す例もあるため、症状が安定していても経過観察が重要です。
長期フォローアップでは、脳神経内科で定期的に神経症状を診察し、必要に応じて脊髄MRI、血清IgEなどを確認します。新たなしびれの拡大や筋力低下があれば早めに再評価を受けることが大切です。ステロイドや免疫抑制薬を使用している場合は、血糖、血圧、骨密度、眼科検査、感染症対策(予防接種を含む)などの副作用モニタリングが欠かせません。アトピー性皮膚炎や喘息の状態も神経症状と関連しうるため、皮膚科・呼吸器科・アレルギー科との連携を続けます。痛みが強い場合はペインクリニック、排尿障害がある場合は泌尿器科、心理的負担が大きい場合は精神科・心療内科など、多職種でサポートを受けることが望まれます。
アトピー性脊髄炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、アトピー性疾患のコントロールとアレルゲン対策が一つの柱になります。寝具をこまめに洗濯・乾燥し、掃除機をかけ、湿度を適切に保つなど、ダニを減らす工夫が勧められます。皮膚の保湿とスキンケア、喘息や鼻炎の治療継続も大切です。感覚が鈍くなっている部位では、やけどやけがに気づきにくいため、入浴時の湯温確認や暖房器具の使い方に注意しましょう。目を閉じたときや暗所でふらつきやすい場合は、夜間の照明、手すりの設置、段差の解消などで転倒を予防します。ステロイド治療中は感染予防(手洗い、人混みでのマスク着用)や、自己判断で薬を中止しないことが重要です。体調や痛みの日記をつけ、受診時に主治医と共有すると治療調整に役立ちます。妊娠・出産を希望する場合は、治療薬の影響も含めて事前に主治医と相談してください。本症は遺伝病ではなく、家族に同じ病気がうつったり遺伝したりする心配はほとんどありませんが、アトピー体質自体は家族内でみられやすいため、不安があれば主治医に相談するとよいでしょう。
利用できる制度・相談窓口
アトピー性脊髄炎は指定難病です。診断基準を満たし、かつ重症度分類で一定以上の重症度と判断された場合に、医療費助成を受けられます。軽症でも高額な医療費が継続する場合(軽症高額該当)も対象になります。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票などが必要で、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で手続きします。認定されると、指定医療機関での医療費の自己負担割合が軽減され、所得に応じた月額上限額が設定されます。また、本症は障害者総合支援法の対象疾病に含まれるため、障害者手帳がなくても必要に応じて障害福祉サービスを利用できる場合があります。肢体不自由や膀胱直腸障害の程度によっては身体障害者手帳の対象となることがあります。日常生活や就労に著しい制限がある場合は、障害年金の対象となる可能性があります。65歳以上の方は介護保険サービスを利用できます(40~64歳の場合、本症は介護保険の特定疾病には含まれていません)。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあり、制度の利用や就労の相談に応じています。
アトピー性脊髄炎に伴う心のケア・心理社会的支援
難病と診断されること自体が大きな心理的負担となり、将来への不安、抑うつ、適応障害などを生じることがあります。アトピー性脊髄炎に特有の課題として、しびれや痛みが外見からはわかりにくく、周囲に理解されにくいことが挙げられます。「見た目は元気そう」と思われて職場や家庭で無理をしてしまったり、つらさを訴えにくくなったりすることがあります。また、持続する神経障害性疼痛は不眠や抑うつと悪循環を形成しやすく、アトピー性皮膚炎のかゆみや外見上の悩みが重なることで、心身の負担がさらに大きくなる場合もあります。働き盛りや子育て世代に発症しやすいため、仕事の継続、キャリア、経済面、家族の役割についての悩みも少なくありません。気分の落ち込みが続く、眠れない、何事にも興味がもてないといった状態があれば、我慢せず主治医に伝え、必要に応じて精神科・心療内科、臨床心理士(公認心理師)のサポートを受けてください。痛みの治療と心のケアを並行して行うことで、生活の質の改善が期待できます。難病相談支援センターや患者同士の交流の場で、同じ経験をもつ人と話すことも支えになることがあります。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
アトピー性脊髄炎の受診の目安
- 手足のしびれや痛みが数日から数週の間に広がってきた場合は、早めに脳神経内科を受診してください。
- 手足の力が急に入りにくくなった、歩きにくくなった、転びやすくなった場合は、速やかに受診してください。
- 尿が出にくい、尿をもらす、便が出ないなど排尿・排便の異常が新たに出た場合は、早急に受診してください。
- 治療中に38℃以上の発熱、強い倦怠感、咳や排尿時痛など感染症を疑う症状が出た場合は、主治医に連絡してください。
- 首を曲げたときに電気が走る感じや、目を閉じるとふらつく症状が新たに出た場合は、次回を待たず相談してください。
- 急速に手足が動かなくなる、呼吸が苦しいなど重い症状がある場合は、ためらわず救急受診してください。
アトピー性脊髄炎についてのよくある質問
Q. アトピー性皮膚炎がある人は、みんなアトピー性脊髄炎になるのですか?
A. いいえ。アトピー性皮膚炎は非常に多い病気ですが、アトピー性脊髄炎はまれな疾患で、発症するのはごく一部です。アトピー体質の方で、手足のしびれや感覚の異常が続く場合には、一度医師に相談するとよいでしょう。
Q. 皮膚炎が治れば脊髄炎も治りますか?
A. アトピー性疾患の悪化と神経症状の悪化が重なる例が報告されており、皮膚炎や喘息のコントロールは大切です。しかし脊髄の炎症自体にはステロイドや血漿交換などの免疫治療が必要になることが多いため、皮膚の治療だけで十分とは限りません。脳神経内科と皮膚科の両方で治療を続けることが勧められます。
Q. 子どもに遺伝しますか?
A. アトピー性脊髄炎は特定の遺伝子異常で起こる遺伝病ではなく、子どもに直接遺伝する可能性は低いと考えられます。ただし、アトピー体質やアレルギー疾患は家族内でみられやすい傾向があります。心配な場合は主治医に相談してください。
Q. しびれや痛みはずっと続くのでしょうか?
A. 早期に治療を受けると改善する例が多い一方で、慢性に経過した場合はしびれや痛みが残ることもあります。残った症状に対しては、神経障害性疼痛に用いる薬やリハビリテーションで和らげる方法があります。症状や生活への影響を具体的に主治医へ伝え、一緒に治療を調整していきましょう。
関連記事(関連する指定難病)
- 多発性硬化症と視神経脊髄炎 Multiple Sclerosis, MS/Neuromyelitis Optica, NMO
- HTLV-1関連脊髄症 HTLV-1-associated myelopathy, HAM
- サルコイドーシス Sarcoidosis
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis, EGPA
- 後縦靱帯骨化症 Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament
- 広範脊柱管狭窄症 Extensive Spinal Canal Stenosis
- 脊髄空洞症 Syringomyelia
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy, CIDP
同じ分野(神経・筋疾患)の指定難病
この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。