ペリー病

Perry Syndrome

ペリー病(Perry Syndrome)|ペリー病は、パーキンソニズム(動作緩慢・筋固縮など)、うつ症状・アパシー(意欲低下)、原因不明の体重減少、中枢性低換気(呼吸の調節障害)の4つを主な特徴とする、きわめてまれな常染色体顕性(優性)遺伝性の神経変性疾患です。多くは40〜50歳代に発症し、数年の経過で進行します。呼吸障害が生命予後を大きく左右するため、早期の診断と呼吸管理が重要です。

ペリー病の要点

ペリー病はDCTN1遺伝子の病的バリアントで起こる常染色体顕性(優性)の神経変性疾患で、黒質などの神経細胞が脱落します。多くは40〜50歳代で発症し、パーキンソニズム、うつ・アパシー、体重減少、中枢性低換気がみられ、日本では指定難病です。

別名・略称ペリー症候群、Perry症候群、Perry病、Perry disease
分野神経・筋疾患
原因遺伝子DCTN1(ダイナクチンp150Glued)
遺伝形式常染色体顕性(優性)遺伝
好発年齢多くは40〜50歳代
主な症状パーキンソニズム、うつ・アパシー、体重減少、中枢性低換気
病理の特徴黒質などの神経細胞脱落とTDP-43陽性封入体(レビー小体は通常みられない)
受診する主な診療科神経内科(脳神経内科)

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ペリー病とは

ペリー病(Perry syndrome)は、ダイナクチン複合体の主要サブユニットp150Glued をコードするDCTN1遺伝子の病的バリアント(変異)によって起こる遺伝性の神経変性疾患です。中脳黒質を中心に神経細胞が脱落します。その結果、パーキンソニズム、うつ・アパシー、体重減少、中枢性低換気が組み合わさって現れます。パーキンソニズムはレボドパに一時的にしか反応しないことが多いのが特徴です。血小板減少や紫斑などの血液の異常を起こす病気ではなく、ペリー病は神経内科(脳神経内科)領域の疾患です。

1975年、カナダの神経科医ペリー(Thomas L. Perry)らが、パーキンソニズム、うつ、体重減少、低換気を呈し短期間で死亡する家系を報告したことから命名されました。その後、世界各地(北米、欧州、日本、トルコなど)で家系報告が蓄積し、2009年に日本の研究者らを含む国際共同研究によってDCTN1遺伝子が原因であることが明らかにされました。病理学的には、黒質や淡蒼球などの神経細胞脱落とともに、TDP-43(TAR DNA結合タンパク43)陽性の封入体がみられ、レビー小体は通常認められないことから、パーキンソン病とは異なる病態であり、TDP-43プロテイノパチーの一つとして位置づけられています。日本では指定難病に指定されています。同じDCTN1遺伝子の異なる部位の変異は、遠位型遺伝性運動ニューロパチーなど別の病態とも関連することが報告されており、遺伝子と表現型の関係は研究が続いています。

ペリー病の疫学・患者数

ペリー病は世界的にも報告が少ない極めてまれな疾患で、これまでに報告された家系は世界で数十家系程度とされています。日本でも複数の家系が報告されており、特に九州地方などからの報告が知られていますが、国内の患者数は非常に少なく、正確な有病率は明らかではありません。発症年齢は多くが40〜50歳代(おおむね30歳代後半〜60歳代の範囲)とされ、明らかな性差は報告されていません。常染色体顕性遺伝のため家系内で世代を超えて発症者がみられることが多い一方、家族歴がはっきりしない例や、新生(de novo)変異と考えられる例の報告もあります。まれな疾患であるうえ、初期にはうつ病やパーキンソン病と診断されることも多く、実際の患者数は過小評価されている可能性があります。

ペリー病の原因・病態生理

原因は、第2染色体短腕に位置するDCTN1遺伝子の病的バリアントです。DCTN1がコードするp150Gluedは、細胞内で物質を微小管に沿って運ぶモータータンパク質「ダイニン」と協調して働くダイナクチン複合体の中心的な構成要素です。ペリー病で見つかる変異の多くは、p150Gluedのうち微小管と結合するCAP-Glyドメインと呼ばれる領域に集中しています。遺伝形式は常染色体顕性(優性)遺伝で、親のどちらかが変異をもつ場合、子が変異を受け継ぐ確率は性別にかかわらず50%です。浸透率は高いとされますが、発症年齢や症状の現れ方には家系内でも幅があります。自己免疫や環境要因が主因となる疾患ではありません。

神経細胞は非常に長い突起(軸索)をもつため、細胞体と神経終末の間で物質や小器官を運ぶ「軸索輸送」が生命線となります。CAP-Glyドメインの変異により、p150Gluedと微小管との結合が弱まり、ダイニン・ダイナクチンによる逆行性輸送(神経終末から細胞体への輸送)や微小管末端での輸送開始が障害されると考えられています。その結果、異常タンパク質の処理や神経栄養因子のシグナル伝達が滞り、選択的な神経細胞死が起こると推定されています。病理学的には、黒質(ドパミン神経)、青斑核、淡蒼球などの神経細胞脱落と、TDP-43陽性の神経細胞内・グリア内封入体やジストロフィー性神経突起が特徴です。また、呼吸リズムを生み出す延髄の呼吸中枢や、セロトニン神経を含む縫線核などの障害が、中枢性低換気やうつ症状、睡眠障害、体重減少の背景にあると考えられていますが、各症状の詳細な機序はなお研究段階です。

ペリー病の症状

  • パーキンソニズム(動作緩慢・筋固縮): 動きが遅く小さくなる、筋肉がこわばるといった症状で、ほぼ全例にみられる中核症状です。左右差が目立たないことが多く、振戦(ふるえ)はパーキンソン病に比べて目立たない場合があります。
  • 姿勢保持障害・歩行障害: 小刻み歩行やすくみ足、バランスの悪化が比較的早期から現れ、転倒の原因になります。
  • うつ症状: 気分の落ち込み、興味の喪失、不眠などで、運動症状に先行して出現することも多く、初期にうつ病と診断される例があります。
  • アパシー(意欲低下)・無関心: 自発性や感情表出が乏しくなり、身の回りのことに関心を示さなくなります。うつとは区別して評価されることもあります。
  • 自殺念慮・自殺企図: 重いうつ症状に伴い、自殺念慮や自殺企図が報告されており、早期の精神科的評価と見守りが重要です。
  • 原因不明の体重減少: 食事量の低下だけでは説明しにくい著明な体重減少がみられ、病気の早期から進行することがあります。
  • 中枢性低換気: 脳の呼吸中枢の障害により呼吸が浅く少なくなり、血中の酸素低下・二酸化炭素貯留が起こります。特に睡眠中に悪化しやすく、本人の息苦しさの自覚が乏しいことが危険な点です。
  • 睡眠障害: 不眠や睡眠の質の低下がみられ、夜間低換気による頻回の覚醒や朝の頭痛、日中の眠気につながることがあります。
  • 嚥下障害・構音障害: 進行に伴い、飲み込みにくさやむせ、声が小さく不明瞭になるなどの症状が現れ、誤嚥性肺炎の危険が高まります。
  • 認知・行動面の変化: 注意力や遂行機能の低下、前頭葉症状を思わせる行動の変化が報告されています。
  • 眼球運動障害: 一部の例では垂直方向の眼球運動制限など、進行性核上性麻痺に類似した所見が報告されています。
  • 自律神経症状: 便秘や発汗異常などがみられることがありますが、多系統萎縮症ほど目立たないことが多いとされます。

ペリー病の経過と合併症

典型的には、40〜50歳代にうつ症状、意欲低下、不眠、体重減少などの非運動症状が先行し、その後、あるいはほぼ同時期にパーキンソニズムが出現します。病初期にはレボドパにある程度反応することがありますが、効果は不十分または一時的であることが多く、運動症状は比較的速やかに進行します。中枢性低換気は経過中のさまざまな時期に出現し、病初期から認められることもあれば、進行期に顕在化することもあります。報告例に基づく平均罹病期間は発症からおよそ5年前後とされてきましたが、10年以上経過した例もあり、人工呼吸管理などにより経過は個人差が大きくなっています。

最も重大な合併症は呼吸不全で、睡眠中の低換気による高二酸化炭素血症・低酸素血症が進行し、突然死や呼吸停止の原因となり得ます。そのほか、嚥下障害による誤嚥性肺炎、低栄養・体重減少に伴う免疫力低下や褥瘡、転倒による骨折・頭部外傷、重度のうつに伴う自殺企図、長期臥床による深部静脈血栓症や関節拘縮などが問題となります。鎮静作用や呼吸抑制作用をもつ薬剤(ベンゾジアゼピン系睡眠薬、オピオイドなど)は低換気を悪化させる可能性があるため、使用には慎重な判断が必要です。

ペリー病の診断・診断基準

診断は、①パーキンソニズム、②うつ症状・アパシー、③体重減少、④中枢性低換気という特徴的な症状の組み合わせと、常染色体顕性遺伝を示唆する家族歴から本症を疑うことに始まります。神経学的診察、頭部画像検査、呼吸機能・睡眠時呼吸の評価などで他の疾患を除外しつつ、最終的にはDCTN1遺伝子検査で病的バリアントを確認することが確定診断の決め手となります。指定難病としての認定には、厚生労働省が定める診断基準に基づく臨床症状と遺伝学的検査の結果などを記載した臨床調査個人票の提出が必要です。家族歴が明らかでない場合や、パーキンソン病・うつ病として治療されている場合でも、レボドパ反応性の乏しさ、早期の体重減少、説明のつかない低換気がそろう場合は本症を念頭に置くことが重要です。

  • 神経学的診察・病歴聴取: 動作緩慢、筋固縮、姿勢反射障害、眼球運動などを評価し、うつ・体重減少・睡眠の問題の経過を詳しく確認します。3世代程度の家族歴(若年でのパーキンソン病、うつ、自殺、突然死、原因不明の呼吸不全など)の聴取が特に重要です。
  • DCTN1遺伝子検査: 血液から抽出したDNAでDCTN1遺伝子を解析し、CAP-Glyドメインなどの既知または病的と考えられるバリアントを確認することで確定診断となります。実施にあたっては遺伝カウンセリングを併せて行うことが望まれます。
  • 動脈血ガス分析: 二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇や酸素分圧の低下により肺胞低換気を評価します。日中は正常でも夜間に異常が出ることがあるため、他の検査と組み合わせます。
  • 睡眠ポリグラフ検査・夜間経皮モニタリング: 睡眠中の呼吸、酸素飽和度、経皮的二酸化炭素分圧などを記録し、閉塞性無呼吸とは異なる中枢性の低換気や無呼吸を検出します。呼吸管理導入の判断材料になります。
  • 呼吸機能検査: 肺活量などを測定し、肺や呼吸筋そのものの障害との区別に役立てます。ペリー病では呼吸筋力が比較的保たれていても換気が低下する点が特徴です。
  • 頭部MRI・CT: 特異的な異常所見は乏しいことが多いものの、脳血管障害、正常圧水頭症、他の変性疾患に特徴的な萎縮パターンなどの除外に用います。
  • ドパミントランスポーターSPECT(DAT-SPECT): 線条体のドパミン神経終末の減少を示すことが多く、薬剤性パーキンソニズムや本態性振戦などとの区別に役立ちますが、他の変性性パーキンソニズムとの鑑別はできません。
  • MIBG心筋シンチグラフィ: パーキンソン病では心臓交感神経の集積低下が典型的ですが、ペリー病では保たれる例が報告されており、鑑別の参考になります。
  • 精神医学的評価・栄養評価: うつの重症度や自殺リスク、認知機能を評価し、体重推移・血液検査で栄養状態や甲状腺疾患・悪性腫瘍など体重減少の他の原因を確認します。

ペリー病と鑑別すべき疾患

  • パーキンソン病: 発症年齢や運動症状は重なりますが、ペリー病ではレボドパの効果が乏しく一時的なことが多く、早期からの体重減少・中枢性低換気・顕性遺伝の家族歴が鑑別の手がかりとなります。
  • 進行性核上性麻痺: 垂直性眼球運動障害や早期の転倒が目立ち、ペリー病でも類似所見が出ることがありますが、中枢性低換気や家族歴は通常目立たず、遺伝子検査で区別されます。
  • 多系統萎縮症: 睡眠関連呼吸障害を伴う点で類似しますが、多系統萎縮症では声帯外転障害による喘鳴や起立性低血圧・排尿障害などの自律神経障害、小脳症状が目立ちます。
  • 前頭側頭葉変性症: 同じTDP-43病理を示し得る疾患で、アパシーや行動変化が共通しますが、前頭側頭葉の萎縮や言語障害が中心で、低換気は通常みられません。
  • うつ病(大うつ病性障害): 初期にはうつ症状のみで区別が難しいことがありますが、パーキンソニズム、説明困難な体重減少、低換気、家族歴の出現に注意が必要です。
  • 筋萎縮性側索硬化症: 呼吸不全と体重減少をきたしますが、呼吸筋を含む筋力低下・筋萎縮や線維束性収縮が主体で、筋電図で神経原性変化を示す点が異なります。

ペリー病の治療

現時点でペリー病の進行を止める、あるいは根本的に治す治療法は確立していません。治療の中心は、①運動症状に対する薬物療法、②うつ・アパシーへの精神医学的対応、③中枢性低換気に対する呼吸管理、④栄養管理とリハビリテーションを組み合わせた対症療法です。なかでも呼吸管理は生命予後に直結するため、症状の自覚がなくても定期的に夜間の呼吸状態を評価し、適切な時期に補助換気を導入することが重要です。人工呼吸器の使用、特に気管切開による長期人工呼吸については、病状の見通しを踏まえ、本人の意思を尊重しながら家族・医療チームと早めに話し合っておく(アドバンス・ケア・プランニング)ことが勧められます。脳神経内科を中心に、精神科、呼吸器内科、リハビリテーション科、栄養サポートチーム、在宅医療チームが連携して支えることが望まれます。個々の治療選択は主治医・専門医とよく相談してください。

  • レボドパ製剤などの抗パーキンソン病薬: 病初期には動作緩慢や筋固縮が一定程度改善する例がありますが、効果は限定的で経過とともに減弱することが多いとされます。ジスキネジアなどの副作用にも注意しながら用量を調整します。
  • 抗うつ薬などの精神科的治療: SSRIなどの抗うつ薬が用いられることがありますが、反応は個人差があります。自殺リスクの評価と家族による見守り体制づくり、精神科医との連携が不可欠です。
  • 非侵襲的陽圧換気(NPPV): マスクを用いて主に夜間の換気を補助する方法で、中枢性低換気による高二酸化炭素血症・低酸素血症の改善が期待されます。在宅人工呼吸療法として導入されることがあります。
  • 気管切開下陽圧換気(TPPV): NPPVで換気が維持できない場合や嚥下障害・排痰困難が強い場合に検討され、生命予後の延長が報告されています。導入は本人・家族の意思を十分に確認して決定します。
  • 酸素療法の慎重な使用: 低換気がある状態で酸素だけを投与すると二酸化炭素がさらに貯留する危険があるため、換気補助と組み合わせるなど専門医の管理下で行います。
  • 栄養管理・嚥下対策: 高エネルギー食や栄養補助食品、食形態の工夫で体重減少を抑え、嚥下障害が進んだ場合は胃ろうなどの経管栄養も選択肢となります。
  • リハビリテーション: 理学療法で歩行・バランス訓練や転倒予防、作業療法で日常生活動作の維持、言語聴覚療法で嚥下・発声訓練を行い、呼吸リハビリテーションも併用します。
  • 薬剤の安全管理: 睡眠薬や鎮静薬、オピオイドなど呼吸を抑制し得る薬剤、パーキンソニズムを悪化させる抗精神病薬などの使用は慎重に判断します。他科受診時には病名を必ず伝えます。
  • 緩和ケア・在宅医療: 症状の苦痛緩和、意思決定支援、在宅療養の調整を含む包括的なケアで、病期を問わず導入を検討できます。

ペリー病の予後・長期フォロー

ペリー病は進行性の疾患で、報告例をもとにした発症からの平均罹病期間はおよそ5年前後とされ、主な死因は中枢性低換気による呼吸不全、突然死、誤嚥性肺炎、自殺などと報告されています。一方で、近年は早期診断と人工呼吸管理の導入によって10年以上の長期経過をたどる例も報告されており、予後は呼吸管理の有無や時期に大きく左右されます。運動機能の低下とうつ・アパシーにより、日常生活動作や社会参加の制限が比較的早い段階から生じることが多く、生活の質(QOL)を保つためには身体面だけでなく精神面・社会面への支援が欠かせません。

診断後は、脳神経内科で数か月ごとの定期的な診察を受け、運動症状、体重、嚥下機能、精神状態を評価します。呼吸については、自覚症状がなくても定期的に血液ガスや夜間の酸素飽和度・二酸化炭素分圧を測定し、低換気の早期発見に努めることが推奨されます。NPPV導入後も設定の見直しや機器管理が必要です。病状の進行に合わせて、栄養法、気管切開、療養場所などの意思決定を段階的に話し合い、記録に残しておくことが望まれます。症状のない血縁者については、本人の希望に応じて遺伝カウンセリングを提供します。

ペリー病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、転倒予防のために住環境を整え(段差解消、手すり設置、床の整理)、必要に応じて杖や歩行器を利用しましょう。体重を定期的に測定し、減少傾向があれば早めに主治医・管理栄養士に相談します。食事はむせにくい形態に工夫し、食後すぐに横にならないようにします。睡眠中の呼吸の異常は本人が気づきにくいため、家族がいびきの変化、呼吸が浅い・止まる様子、朝の頭痛、日中の強い眠気、表情や意識のぼんやり感に注意を払うことが大切です。飲酒や自己判断での睡眠薬服用は呼吸を抑制するおそれがあるため避けてください。気分の落ち込みや「死にたい」という言葉が聞かれた場合は、ためらわず主治医や精神科に相談しましょう。本症は常染色体顕性遺伝のため、子や兄弟姉妹など血縁者に関わる問題が生じます。発症前の遺伝学的検査は、治療法が確立していない疾患であることから、検査を受けるかどうか自体を含めて慎重な検討が必要であり、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けたうえで本人の自由な意思で決めることが原則です。妊娠・出産に関する相談も遺伝カウンセリングで扱うことができます。

利用できる制度・相談窓口

ペリー病は指定難病であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、都道府県・指定都市に申請することで医療費助成(自己負担上限額の設定など)を受けられます。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、窓口は住所地の保健所などです。人工呼吸器を常時装着している場合などには負担がさらに軽減される仕組みもあります。このほか、医療保険の高額療養費制度、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(難病患者も対象。居宅介護、補装具、日常生活用具など)、症状に応じた身体障害者手帳(肢体不自由、呼吸機能障害など)、精神症状が主体の場合の精神障害者保健福祉手帳、障害年金(初診日の要件などあり)が利用できる可能性があります。65歳以上では介護保険による訪問介護・訪問看護・福祉用具貸与などを利用でき、40〜64歳での利用可否は特定疾病の該当性によるため、主治医や市区町村の窓口で確認してください。在宅人工呼吸療法や訪問診療・訪問看護の導入には医療ソーシャルワーカーが調整を支援します。相談窓口として、都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療相談室、難病情報センターのウェブサイトなどがあります。

ペリー病に伴う心のケア・心理社会的支援

難病の診断や進行する身体機能の低下は、患者さん本人にも家族にも大きな心理的負担となり、不安、抑うつ、適応障害などを生じやすくします。ペリー病ではそれに加えて、うつ症状やアパシーそのものが病気の症状として現れるという特有の事情があります。意欲低下は「怠けている」「性格が変わった」と誤解されやすく、家族関係の摩擦や介護者の疲弊につながることがあります。症状であることを家族や周囲が理解し、責めずに支える姿勢が大切です。重いうつに伴う自殺のリスクが報告されているため、精神科医・心療内科医による継続的な評価と治療、危機時の連絡先の共有が重要です。また、遺伝性疾患であることから、子どもへの遺伝に対する罪悪感、発症前の血縁者が抱える不安、家族内での情報共有の難しさなど、家族全体に及ぶ課題も生じます。介護を担う家族自身の心身の健康にも目を向け、レスパイト入院やショートステイ、患者・家族会、カウンセリングなどを活用してください。つらさを一人で抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士などに早めに相談することが大切です。

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ペリー病の受診の目安

  • 呼吸が浅い・止まる、唇や顔色が悪い(チアノーゼ)、呼びかけへの反応が鈍い・意識がぼんやりしている場合は、直ちに救急要請してください。
  • 「死にたい」と口にする、自殺をほのめかす言動や行動がみられる場合は、すぐに主治医・精神科に連絡し、危険が差し迫っていれば救急要請してください。
  • 朝の頭痛、日中の強い眠気、夜間の頻回の覚醒やいびき・呼吸の変化が新たに出てきた場合は、低換気の悪化の可能性があるため早めに受診してください。
  • 発熱、咳、痰の増加、食事中のむせの増加がある場合は誤嚥性肺炎の可能性があるため、速やかに受診してください。
  • 短期間での明らかな体重減少、食事量の低下、転倒の増加がみられた場合は、次回の予定を待たずに主治医に相談してください。
  • 抗パーキンソン病薬を急に中止・減量した後に高熱や強い筋固縮、意識障害が出た場合は、悪性症候群の可能性があり緊急受診が必要です。

ペリー病についてのよくある質問

Q. ペリー病はパーキンソン病とどう違うのですか?

A. どちらも動作緩慢や筋固縮などのパーキンソニズムを示しますが、ペリー病はDCTN1遺伝子の変異による遺伝性疾患で、うつ・体重減少・中枢性低換気を伴い、レボドパの効果が乏しいことが多い点が異なります。病理学的にもレビー小体ではなくTDP-43の蓄積が特徴で、別の病気と考えられています。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 常染色体顕性遺伝のため、患者さんの子どもが原因遺伝子の変異を受け継ぐ確率は、性別にかかわらず50%です。ただし発症時期や症状には個人差があります。遺伝や検査について不安がある場合は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングをご利用ください。

Q. 呼吸の症状を自覚していなくても検査は必要ですか?

A. 必要です。ペリー病の中枢性低換気は睡眠中に起こりやすく、本人が息苦しさを感じにくいため、気づかないうちに進行することがあります。定期的な血液ガス検査や夜間の呼吸モニタリングで早期に発見し、必要に応じてNPPVなどの呼吸補助を検討することが大切です。

Q. 根本的な治療法はありますか?

A. 現在のところ、病気の進行を止める根本的な治療法は確立していません。ただし、抗パーキンソン病薬、抗うつ治療、呼吸管理、栄養管理、リハビリテーションを組み合わせることで、症状を和らげ生活の質や生命予後の改善が期待できます。病態の解明や治療法の研究も進められており、最新の情報は専門医にご相談ください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。