痙攣重積型(二相性)急性脳症

Acute Encephalopathy with Biphasic Seizures and Late Reduced Diffusion (AESD)

痙攣重積型(二相性)急性脳症(Acute Encephalopathy with Biphasic Seizures and Late Reduced Diffusion (AESD))|痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD)は、主に乳幼児が発熱に伴う長い痙攣(けいれん)を起こしたのち、数日後に再び痙攣が群発し、意識障害が悪化する急性脳症です。日本の小児急性脳症の中で最も頻度が高い病型とされます。生命予後は比較的良好ですが、知的障害、運動障害、てんかんなどの後遺症を残すことが少なくありません。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の要点

痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD)は、感染に伴う発熱で乳幼児に起こる急性脳症で、初日の長い痙攣の後、第3〜7病日に痙攣が群発し意識障害が再び悪化します。MRIで皮質下白質の拡散低下を認め、知的障害やてんかんなどの後遺症を残すことがあり、指定難病です。

別名・略称AESD、けいれん重積型急性脳症、二相性急性脳症、二相性脳症、AEFCSE
分野小児神経・てんかん
好発年齢主に乳幼児
主な症状発熱に伴う長い痙攣、数日後の痙攣群発、意識障害の再増悪
特徴的な経過第1病日の痙攣後、第3〜7病日に遅発性痙攣(二相性)
主な検査頭部MRI拡散強調画像(bright tree appearance)、脳波
主な後遺症知的障害、運動障害、てんかんなど
受診する主な診療科小児科、小児神経科

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痙攣重積型(二相性)急性脳症とは

痙攣重積型(二相性)急性脳症(Acute Encephalopathy with Biphasic Seizures and Late Reduced Diffusion:AESD)は、感染症に伴う発熱を契機に発症する小児の急性脳症の一病型です。経過には二つの相があります。第1病日に遷延性の熱性痙攣(しばしば痙攣重積)が起こり(早期痙攣)、その後いったん意識が回復傾向を示します。第3〜7病日ごろに部分発作を主とする痙攣が群発し(遅発性痙攣)、意識障害が再び悪化します。この二相性の臨床経過が本症の中核的特徴です。もう一つの特徴は、遅発性痙攣のころに頭部MRI拡散強調画像で皮質下白質に拡散低下(bright tree appearance)が現れることです。本症は血液疾患ではなく、脳の急性疾患です。

本症は1990年代以降、主に日本の小児神経科医によって独立した病型として認識されました。当初は「二相性の臨床経過と遅発性拡散低下を呈する急性脳症」、「けいれん重積型急性脳症(AEFCSE)」などの名称で報告され、のちにAESDの呼称で国際的にも定着しました。急性脳症は病態に基づき、①代謝異常によるもの(先天代謝異常症など)、②サイトカインストームによるもの(急性壊死性脳症〔ANE〕、出血性ショック脳症症候群など)、③興奮毒性によるもの(AESDなど)、④その他(可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症〔MERS〕など)に大別されます。AESDは③の代表と位置づけられています。病変分布により、前頭葉優位型、片側型、びまん型などの亜型が記載されています。中心前後回(ローランド領域)が比較的保たれる「central sparing」は特徴的な所見です。日本小児神経学会の『小児急性脳症診療ガイドライン』に診断基準と診療指針が示されており、2015年に指定難病(告示番号129)に指定されました。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の疫学・患者数

日本の全国調査では、AESDは小児急性脳症の病型の中で最も多く、急性脳症全体の約3割を占めると報告されています。年間の新規発症は全国で百数十例程度と推計されていますが、調査時期や方法により幅があります。発症年齢は乳幼児期、とくに1歳前後にピークがあり、大半は3〜4歳未満で発症します。明らかな性差は乏しいとされます。先行感染としては突発性発疹の原因であるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)が最も多く、インフルエンザウイルス、HHV-7、RSウイルスなども報告されています。病原体が特定されない例も少なくありません。欧米での報告は日本に比べて少なく、東アジア、とくに日本人に多い傾向があります。このことから遺伝的背景の関与が示唆されています。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の原因・病態生理

本症の主たる病態は、神経細胞の過剰興奮に伴う興奮毒性(excitotoxicity)と、それに続く遅発性神経細胞死と考えられています。発熱と遷延性痙攣を契機に、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰に放出されます。グリア細胞によるグルタミン酸の取り込みと代謝も破綻し、細胞内カルシウムの過剰流入、細胞毒性浮腫、細胞死へと進展すると推定されています。MRスペクトロスコピー(MRS)では、急性期にグルタミン酸・グルタミン(Glx)の上昇が報告されています。この所見は興奮毒性仮説を支持するものです。サイトカインストームが中心となる急性壊死性脳症とは異なり、全身の炎症反応や多臓器不全は通常目立ちません。

発症には体質(遺伝的素因)の関与が示唆されています。報告されているものとして、てんかん関連遺伝子であるナトリウムチャネル遺伝子(SCN1A、SCN2Aなど)の変異、脂肪酸代謝酵素カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT2)の熱不安定性多型、アデノシンA2A受容体遺伝子(ADORA2A)の多型などがあります。ただし、いずれも単一で発症を説明する原因遺伝子ではありません。多くは疾患感受性を高める要因の一つと考えられ、通常の意味での遺伝性疾患(メンデル遺伝)ではありません。感染に伴う高熱、長時間の痙攣、低年齢などの要因と素因が重なって発症すると考えられています。テオフィリンなど痙攣を誘発・遷延させうる薬剤との関連を指摘する報告もあります。早期痙攣から遅発性痙攣までの数日間に、皮質下白質から皮質にかけて細胞障害が進行します。拡散低下が顕在化するのは第3病日以降です。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の症状

  • 発熱: 突発性発疹やインフルエンザなどの感染症による38〜40℃前後の発熱が先行または同時にみられます。発熱当日(第1病日)に痙攣を起こすことが多いです。
  • 早期痙攣(遷延性痙攣・痙攣重積): 第1病日に、しばしば30分以上続く全身性または片側性の痙攣が起こります。単純型熱性痙攣より長く、救急搬送を要することが一般的です。
  • 痙攣後の意識障害: 早期痙攣後は意識の回復が遅れ、ぼんやりした状態や傾眠が続くことがあります。抗痙攣薬の影響もあり、評価が難しいことがあります。
  • 一時的な意識の改善: 第2〜3病日には意識がいったん改善し、ほぼ普段どおりに見えることもあります。この時期に複雑型熱性痙攣と区別することは困難です。
  • 遅発性痙攣(群発): 第3〜7病日ごろ(典型的には第4〜6病日)に、顔面や四肢のぴくつき、眼球偏位などの焦点発作が繰り返し群発します。
  • 意識障害の再増悪: 遅発性痙攣と前後して意識レベルが再び低下し、反応の乏しさや不穏、異常言動がみられます。
  • 不随意運動・異常行動: 回復期に、口や手の自動症様の動き、舞踏様運動、落ち着きのなさなどが一過性に出現することがあります。
  • 運動麻痺・筋緊張異常: 病変部位に応じて片麻痺や四肢麻痺、筋緊張の低下または亢進がみられます。前頭葉優位型では自発性の低下が目立つことがあります。
  • 言語・知的機能の退行: それまでできていた発語や遊び、理解がみられなくなることがあります。回復の程度は個人差が大きいです。
  • 視覚認知の障害: 後頭葉が障害されると、物を目で追わない、見えていないように振る舞うなど、皮質性視覚障害がみられることがあります。
  • 後遺症としてのてんかん: 急性期を過ぎて数週〜数か月後に、無熱性の発作が繰り返し起こるてんかんへ移行することがあります。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の経過と合併症

典型的な経過は次のとおりです。第1病日に発熱と遷延性痙攣(早期痙攣)が起こります。第2〜3病日に意識がいったん改善し、第3〜7病日に遅発性痙攣の群発と意識障害の再増悪がみられます。頭部MRIは第1〜2病日には正常であることが多いです。遅発性痙攣のころ(第3〜9病日)になって、拡散強調画像で皮質下白質に樹枝状の高信号(bright tree appearance)が出現します。この拡散低下は約2週間で消退します。その後、亜急性期から慢性期にかけて、病変部位に一致した大脳皮質・皮質下の萎縮が残ります。とくに前頭葉や前頭頭頂葉に目立ち、中心前後回は比較的保たれる傾向があります。急性期の後は、数週〜数か月にわたりリハビリテーションとともに機能が回復していきますが、最終的な到達レベルは障害の範囲によって大きく異なります。

急性期の合併症として、痙攣重積に伴う呼吸抑制、誤嚥性肺炎、横紋筋融解、電解質異常(低ナトリウム血症など)、高血糖、抗痙攣薬による呼吸・循環抑制などが起こりえます。重症例では脳浮腫を伴うことがあります。慢性期には知的障害(軽度から重度まで)、運動障害(片麻痺、四肢麻痺)、症候性てんかんが主な後遺症です。てんかんは難治化することがあり、てんかん性スパズムを伴う例もあります。さらに、注意欠如・多動症様の症状、自閉スペクトラム症様の対人関係の困難、高次脳機能障害(注意・記憶・遂行機能の障害)、皮質性視覚障害、摂食嚥下障害が問題となる場合があります。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の診断・診断基準

本症の診断上の最大の難点は、第1病日の時点では一般的な複雑型熱性痙攣(遷延性熱性痙攣)と臨床的に見分けがつきにくいことです。このため、遷延性熱性痙攣で受診した乳幼児では、意識の回復状況、血液検査、脳波、画像所見を組み合わせて急性脳症の可能性を評価します。診断が確定しない場合でも、入院のうえで数日間の経過観察を行います。日本小児神経学会の『小児急性脳症診療ガイドライン』には、二相性の臨床経過と遅発性の拡散低下を主体とする診断基準が示されています。確定診断は、遅発性痙攣と特徴的なMRI所見がそろった時点でなされることが多いです。また、細菌性髄膜炎、単純ヘルペス脳炎などの感染性脳炎、先天代謝異常症、急性壊死性脳症など、他の脳症・脳炎を除外することが重要です。指定難病としての認定には、診断基準を満たすことに加え、重症度基準(日常生活の障害度やてんかん発作の頻度など)による評価が用いられます。

  • 頭部MRI(拡散強調画像): 第3〜9病日ごろに皮質下白質の樹枝状拡散低下(bright tree appearance)が出現し、中心前後回が保たれる(central sparing)ことが特徴です。第1〜2病日のMRIは正常であることが多いため、初回が正常でも本症は否定できません。
  • 頭部MRI(慢性期): 数週以降に病変部位の大脳萎縮や白質信号変化が残ります。後遺症の範囲を評価する手がかりになります。
  • MRスペクトロスコピー(MRS): 急性期にグルタミン酸・グルタミン(Glx)の上昇、その後にN-アセチルアスパラギン酸(NAA)の低下がみられることがあります。病態評価の補助として用いられます。
  • 脳血流SPECT: 病期により病変部の血流低下または増加がみられます。MRIで拡散低下が出る前の変化をとらえる補助検査として報告があります。
  • 脳波検査: 早期には徐波化や左右差がみられます。遅発性痙攣期には焦点性の発作時発作波が確認されることがあり、非痙攣性発作の検出に持続脳波モニタリングが有用です。
  • 血液・生化学検査: AST、ALT、LDH、CK、血糖、クレアチニン、アンモニア、電解質などを評価します。一部の項目の上昇が脳症のリスク評価に用いられますが、本症に特異的な異常はありません。
  • 髄液検査: 細胞数は通常正常かごく軽度の上昇にとどまり、髄膜炎・脳炎との鑑別に用いられます。病原体の核酸検査や各種バイオマーカーの評価も行われます。
  • 病原体検索: HHV-6・HHV-7、インフルエンザウイルスなどについて、迅速検査、PCR、血清抗体を用いて先行感染を確認します。
  • 早期予測スコア・代謝スクリーニング: 遷延性熱性痙攣例から本症を早期に予測するため、意識状態や血液検査値を組み合わせたスコアが国内で提案されています。あわせて、先天代謝異常症の除外のため、血中アミノ酸、アシルカルニチン、乳酸・ピルビン酸などを測定します。

痙攣重積型(二相性)急性脳症と鑑別すべき疾患

  • 複雑型熱性痙攣(遷延性熱性痙攣): 初期には区別が困難ですが、熱性痙攣では意識が速やかに回復し、遅発性痙攣やMRIでの遅発性拡散低下は生じません。
  • 急性壊死性脳症(ANE): 両側視床を中心とする対称性病変と、サイトカインストームに伴うショックや多臓器障害を特徴とし、病変分布と全身状態が異なります。
  • 単純ヘルペス脳炎などの感染性脳炎・髄膜炎: 髄液の細胞数増加や病原体の検出、側頭葉優位の病変などで鑑別し、疑わしければ抗ウイルス薬を早期に開始します。
  • 難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS): 発熱後に焦点発作が数週間以上にわたり頻回・難治性に持続する点が、二相性で比較的短期に経過するAESDと異なります。
  • 可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS): 脳梁膨大部に限局した可逆性の拡散低下を示し、通常は後遺症なく回復します。
  • 先天代謝異常症(ミトコンドリア病、脂肪酸代謝異常症など): 低血糖、高アンモニア血症、乳酸アシドーシス、アシルカルニチン分析の異常などで鑑別し、急性脳症様の発症をきたしうるため常に考慮します。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の治療

本症に対して有効性が確立した特異的治療はまだありません。治療の中心は、①痙攣を速やかに止めて再発を防ぐこと、②呼吸・循環・体温・血糖・電解質を適正に保ち、二次的な脳障害を最小限にすること(全身管理)、③病態に基づく脳保護を目的とした治療の検討、の三点です。早期痙攣の段階で本症を確定することは困難なため、遷延性熱性痙攣で意識の回復が遅い例や、検査値・脳波の異常がある例では、集中治療が可能な施設で慎重に管理します。脳症に準じた治療を早期に検討することもあります。治療法の選択は施設や重症度により異なるため、具体的な方針は主治医・小児神経専門医とよく相談してください。急性期を過ぎた後は、リハビリテーション、てんかんの治療、発達支援へと重点が移ります。

  • 痙攣の初期治療: ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬で発作停止を図ります。止まらない場合は、ホスフェニトイン、フェノバルビタール、レベチラセタムなどの静注薬を用います。
  • 難治性痙攣重積への対応: 一次・二次治療で止まらない場合は、ミダゾラムの持続静注やバルビツレート系薬による昏睡療法などを、人工呼吸管理下で検討します。
  • 全身管理・支持療法: 気道確保と人工呼吸、循環管理を行うとともに、血糖・電解質(とくに低ナトリウム血症の回避)・体温を管理します。脳浮腫がある場合は浸透圧利尿薬を用いるなど、二次性脳損傷の予防に努めます。
  • 体温管理療法(脳低温・平温療法): 脳保護を目的とした体温管理を施設によって行います。有効性については検討段階であり、適応は個別に判断されます。
  • ステロイドパルス療法など: メチルプレドニゾロンのパルス療法が用いられることがありますが、本症における有効性の根拠は限られており、適応は症例ごとに検討されます。
  • ビタミン類・その他の補助療法: 代謝障害の関与を考慮し、ビタミンB1、ビオチン、L-カルニチンなどを投与する施設があります。フリーラジカル消去薬などの報告もありますが、確立した治療ではありません。
  • 病原体に対する治療: インフルエンザでは抗インフルエンザ薬を用います。単純ヘルペス脳炎が否定できない段階ではアシクロビルを投与するなど、原因や鑑別に応じて対応します。
  • リハビリテーション: 急性期から理学療法・作業療法・言語聴覚療法を導入し、運動機能、摂食嚥下、コミュニケーション、日常生活動作の回復を支援します。
  • 後遺症としてのてんかんの治療: 発作型に応じた抗てんかん薬で治療します。難治例ではケトン食療法、迷走神経刺激療法、てんかん外科などを専門施設で検討することがあります。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の予後・長期フォロー

生命予後は急性脳症の中では比較的良好で、死亡例は少数とされています。一方で、全国調査では後遺症を残す例が半数から3分の2程度に及ぶと報告されています。後遺症の内容は、軽度の知的障害や学習・行動面の困難から、重度の知的障害と運動障害を伴い日常生活全般に介助を要する状態まで、幅広く分布します。拡散低下の範囲が広い例、両側びまん性の病変を示す例、早期痙攣が長い例、低年齢での発症例では後遺症が重い傾向があります。前頭葉に限局する例では運動機能が比較的保たれる一方、注意・行動・言語面の課題が残りやすいとされます。後遺症のてんかんは急性期後に出現することがあり、生活の質(QOL)に大きく影響します。

退院後も、小児神経科医を中心に長期のフォローアップを行います。主な内容は、てんかん発作の有無と脳波の評価、抗てんかん薬の調整、運動・言語・認知・社会性の発達評価(定期的な発達検査や知能検査)、視覚・聴覚・摂食嚥下の評価です。リハビリテーションや療育は継続的に行い、就学時には特別支援教育や合理的配慮の要否について学校と連携します。成長とともに、注意欠如・多動症様の症状や学習の困難が顕在化することもあります。学童期・思春期を通じて、発達・行動面の評価と支援を続けることが大切です。成人期に向けた移行医療(成人診療科への引き継ぎ)も計画的に準備します。

痙攣重積型(二相性)急性脳症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

退院後の生活では、まずてんかん発作への備えが重要です。発作が起きたときの対応(安全確保、時間の計測、救急要請の目安、処方された頓用薬の使い方)を、主治医と事前に確認しておきましょう。抗てんかん薬は自己判断で中止せず、飲み忘れを避けます。入浴や水遊びの際は必ず大人が付き添います。本症を経験したお子さんがその後発熱したときに再発するかどうかについては、多くの場合は再発しないとされますが、再発例の報告もあります。発熱時の受診方針や解熱薬の使い方は主治医に相談しておくと安心です。テオフィリン製剤や鎮静作用のある抗ヒスタミン薬など、痙攣への影響が懸念される薬については、他院を受診する際にも既往を伝えてください。予防接種は、状態が落ち着いた後に主治医と相談して計画的に再開することが一般的です。遺伝的素因の関与が示唆されていますが、本症は単一遺伝子による遺伝病ではなく、きょうだいが同じ病気になる可能性は一般に低いと考えられています。ご心配な場合は、遺伝カウンセリングを受けられる施設で相談できます。リハビリテーションや療育を日常に取り入れ、訪問看護や短期入所(レスパイト)などを活用して、介護する家族の休息も確保しましょう。

利用できる制度・相談窓口

本症は指定難病(告示番号129)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合は、難病法に基づく医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に行います。18歳未満では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があります。どちらの制度を利用するかは、自己負担や年齢を考慮して主治医や窓口に相談してください。後遺症の程度に応じて、次のような制度を利用できます。身体障害者手帳(肢体不自由など)、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳(てんかん、高次脳機能障害など)、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)、補装具・日常生活用具の給付、自立支援医療などです。20歳以降に障害が残っている場合は、障害基礎年金(20歳前傷病)の対象となりうるほか、障害福祉サービスも利用できます。相談窓口としては、主治医・病院の医療ソーシャルワーカー、保健所の保健師、難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援事業、市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所があります。急性脳症やてんかんの患者家族会も情報源になります。

痙攣重積型(二相性)急性脳症に伴う心のケア・心理社会的支援

本症は、それまで元気に育っていたお子さんが、ある日の発熱をきっかけに突然重い状態に陥る病気です。そのため、ご家族は大きな衝撃を受け、強い不安や混乱を経験します。とくに、最初の痙攣後にいったん回復したように見えてから悪化するという経過から、「もっと早く気づけたのではないか」「帰宅を許してよかったのか」と自分を責めてしまう方が少なくありません。しかし、初期の段階では医師でも熱性痙攣との区別が難しく、家族の対応の問題ではないことを知っておいてください。後遺症が残った場合は、以前のお子さんの姿を失った悲嘆(喪失感)や将来への不安が長く続きます。抑うつ、不眠、適応障害、急性期の記憶がよみがえるトラウマ反応などが生じることもあります。介護負担による心身の疲労や、きょうだい児が寂しさや我慢を抱えることも、見過ごされやすい課題です。つらさを一人や家族だけで抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士・公認心理師、保健師に率直に相談してください。必要に応じて精神科や心療内科の受診を検討することも大切です。同じ経験をもつ家族との交流が支えになることも多くあります。

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痙攣重積型(二相性)急性脳症の受診の目安

  • 発熱に伴う痙攣が5分以上続く場合、または意識が戻らないうちに痙攣を繰り返す場合は、ただちに救急車を呼んでください。
  • 熱性痙攣の後、時間がたっても呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない、ぐったりしている場合は、速やかに医療機関を受診してください。
  • 熱性痙攣の数日後に、再び顔や手足のぴくつき、目が一方に寄るなどの発作が出たり、意識がぼんやりしてきたりした場合は、すぐに受診してください。
  • 痙攣の後に、手足の片側が動かしにくい、言葉が出なくなった、それまでできていたことができなくなった場合は、早めに受診してください。
  • 退院後に熱のないときの発作が新たに出現した場合や、発作の回数が増えた場合は、主治医に連絡してください。
  • 退院後に、食事でむせる、食べる量が落ちる、睡眠や行動が大きく変化した場合も、主治医に相談してください。

痙攣重積型(二相性)急性脳症についてのよくある質問

Q. 熱性けいれんと痙攣重積型(二相性)急性脳症はどう違うのですか?

A. 熱性けいれんの多くは数分で止まり、その後は意識が回復して後遺症も残しません。本症では長い痙攣の数日後に再び痙攣が群発し、意識障害が悪化して、MRIに特徴的な変化が現れます。初日の時点では区別が難しいため、長い熱性けいれんの後は医療機関で慎重に経過をみることが大切です。

Q. 予防する方法はありますか?

A. 確立した予防法はありません。インフルエンザなど一部の感染症はワクチンで発症リスクを下げられる可能性があり、熱性けいれんが長く続いた場合に速やかに受診することが重要です。熱性けいれんの既往がある場合の発熱時の対応は、かかりつけ医と相談してください。

Q. 同じ病気が再発したり、きょうだいに起こったりしますか?

A. 多くの場合は一度きりですが、まれに再発例が報告されています。遺伝的な体質が関与すると考えられていますが、単一遺伝子による遺伝病ではなく、きょうだいが発症する可能性は一般に低いとされます。心配な場合は主治医や遺伝カウンセリングで相談できます。

Q. 後遺症はどの程度回復しますか?

A. 回復の程度は脳の障害範囲や発症年齢によって大きく異なり、ほぼ元どおりに回復するお子さんから、重い障害が残るお子さんまでさまざまです。発症後数か月から数年かけて少しずつ伸びていくことも多く、リハビリテーションや療育を継続することが大切です。見通しについては主治医と定期的に相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。