先天性無痛無汗症

Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis

先天性無痛無汗症(Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis)|先天性無痛無汗症(CIPA)は、生まれつき痛みを感じない(無痛)ことと、汗をかけない(無汗)ことを主な特徴とする、まれな遺伝性の末梢神経の病気です。乳児期から原因不明の発熱(高体温)を繰り返し、成長とともに口や指を噛む自傷、気づかれない骨折、関節の破壊、骨髄炎などが問題になります。知的障害や多動を伴うことも多く、本人と家族の生活全体に長期的な影響が及びます。

先天性無痛無汗症の要点

先天性無痛無汗症は、NTRK1遺伝子の変異により痛みや温度を伝える感覚神経と汗腺を支配する交感神経が十分に形成されず、痛みを感じず汗をかけない常染色体潜性遺伝の病気です。乳児期からの高体温や自傷、骨折・関節破壊がみられ、知的障害を伴うことも多い指定難病です。

別名・略称CIPA、HSAN IV型、遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー4型、無痛無汗症、Hereditary sensory and autonomic neuropathy type IV
分野神経・筋疾患
遺伝形式常染色体潜性(劣性)遺伝
原因遺伝子NTRK1(神経成長因子の受容体TrkAの遺伝子)
好発年齢生まれつきの病気で、乳児期から症状が出る
主な症状痛覚・温度覚の欠如、全身性の無汗、高体温、自傷、骨折・関節破壊、知的障害
主な治療根治療法はなく、体温管理やけが・骨関節障害の予防と治療などの対症療法
受診する主な診療科小児科(小児神経)、整形外科

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先天性無痛無汗症とは

先天性無痛無汗症は、遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー(hereditary sensory and autonomic neuropathy:HSAN)のIV型に分類される常染色体潜性(劣性)遺伝性疾患です。原因は、神経成長因子(NGF)の受容体TrkAをつくるNTRK1遺伝子の病的バリアントです。両方のアレル(父母由来の遺伝子)にこの変化があると、痛みと温度を伝える細い感覚神経と、汗腺を支配する交感神経が、発生の段階から十分に形成されません。中核症状は、全身の痛覚・温度覚の欠如と全身性の無汗で、多くの例では知的障害も伴います。一方、触覚、振動覚、関節位置覚、腱反射、筋力は通常保たれます。本症は自己免疫疾患ではなく、血小板減少などの血液の異常を伴う病気でもありません。

HSANはDyckらの分類で主にI〜V型に整理されてきました。IV型(本症)は無痛・無汗・知的障害の組み合わせが特徴で、1960年代から報告があり、1996年に日本の研究グループ(犬童康弘ら)がNTRK1遺伝子の変異を原因として同定しました。V型は痛覚低下が主体で無汗や知的障害が軽い病型で、NGFをつくるNGF遺伝子(NGFB)の変異のほか、一部のNTRK1変異でも生じるとされ、IV型とV型は連続した表現型スペクトラムと考えられています。また、ナトリウムチャネル遺伝子SCN9Aの機能喪失による先天性無痛症は、発汗が保たれ嗅覚障害を伴う点で本症とは別の疾患です。日本では指定難病(告示番号130)に指定されています。

先天性無痛無汗症の疫学・患者数

きわめてまれな疾患で、国内の患者数は100〜200人程度と推定されていますが、正確な数は明らかではありません。世界的には、イスラエルのベドウィン集団など血族婚の多い地域で集積が報告されています。日本人患者には比較的頻度の高い変異があることも知られています。常染色体潜性遺伝のため性差はありません。症状は新生児期〜乳児期から現れ、多くは乳児期の原因不明の発熱や、歯が生え始めた頃の舌・唇の咬傷をきっかけに疑われます。ただし、軽症例やV型に近い例では、幼児期以降に骨折や関節障害から診断されることもあります。

先天性無痛無汗症の原因・病態生理

NGFは、胎生期に侵害受容性の感覚ニューロン(後根神経節にある細い有髄Aδ線維と無髄C線維の細胞)や交感神経節後ニューロンが生き残り、成熟するために不可欠な栄養因子です。その受容体であるTrkA(NTRK1遺伝子がコードする受容体型チロシンキナーゼ)が働かないと、NGFの信号が伝わりません。その結果、これらのニューロンは発生過程で細胞死(アポトーシス)に陥り、生まれつき欠落します。両親はいずれも保因者であることが多く、同胞(きょうだい)が罹患する確率は1/4です。

病理学的には、末梢神経(腓腹神経)で小径有髄線維と無髄線維が著しく減少し、大径有髄線維は保たれます。皮膚では表皮内神経線維がほとんど見られず、汗腺そのものは存在するものの、汗腺を支配する交感神経線維が欠如しています。このため発汗の指令が届かず、体温が上がっても汗で熱を逃がせず、高体温になります。痛覚の欠如により外傷や炎症の警告信号が働かず、骨折や関節損傷が繰り返し見逃されて、神経病性関節症(シャルコー関節)や骨髄炎に進展します。知的障害や情動・行動面の特徴の機序は完全には解明されていません。NGF依存性の中枢ニューロンの関与や、内受容感覚(体内からの感覚)の欠如が情動形成に影響する可能性が議論されています。

先天性無痛無汗症の症状

  • 全身性の痛覚欠如: 切り傷、熱傷、骨折、内臓の炎症などでも痛みを感じず、けがや病気の発見が遅れます。触覚や圧覚は保たれるため「触られた」ことは分かります。
  • 温度覚の障害: 熱い・冷たいの区別が難しく、熱湯や暖房器具による熱傷、凍傷を起こしやすくなります。
  • 無汗と反復性の高体温: 全身でほとんど汗をかけず、夏季や厚着、運動、入浴で体温が40℃以上に上昇することがあります。乳児期の原因不明の発熱として最初に気づかれる代表的な症状です。
  • 熱性けいれん: 高体温に伴い、乳幼児期にけいれんを起こすことがあります。
  • 自傷(咬傷): 歯が生えると舌先・唇・頬粘膜・指先を噛んで欠損させることがあり、舌下面の潰瘍(Riga-Fede病)も見られます。
  • 骨折・脱臼: 痛みがないため骨折に気づかず歩き続け、偽関節や変形治癒、過剰な仮骨形成を生じやすくなります。
  • 神経病性関節症(シャルコー関節): 膝・足関節・股関節などが繰り返し損傷し、腫脹や不安定性、関節破壊が進みます。
  • 骨髄炎・皮膚感染: 傷や骨折部からの感染が気づかれにくく、慢性骨髄炎や蜂窩織炎に進展することがあります。
  • 知的障害・発達の遅れ: 多くの例で軽度〜中等度の知的障害を伴いますが、程度には個人差があります。
  • 多動・情緒不安定: 注意欠如・多動、衝動性、かんしゃく、こだわりなどの行動特性を伴うことがあります。
  • 皮膚の乾燥・角化: 汗が出ないため皮膚が乾燥し、手掌・足底の角化や亀裂、創傷治癒の遅れが見られます。
  • 眼の障害: 角膜知覚の低下を伴う例では、角膜びらんや潰瘍に気づきにくいことがあります。

先天性無痛無汗症の経過と合併症

本症は神経が進行性に壊れていく変性疾患ではなく、生まれつきの神経欠落による疾患です。神経症状そのものは基本的に大きく変化しません。乳児期は高体温とけいれんが主な問題で、適切な体温管理が行われないと重篤化することがあります。かつては乳幼児期に高体温で死亡する例も少なくないと報告されていました。歯が生える時期から幼児期にかけては、口腔内や指の自傷が目立ちます。歩行開始後は骨折・脱臼・関節損傷が増え、学童期から思春期以降は関節破壊や慢性骨髄炎による運動機能障害が大きな課題になります。年齢とともに自分で危険を回避する行動を学習できる例もあり、成人期まで社会生活を送る人もいます。

合併症として重要なのは、①高体温による熱中症、けいれん、脱水、②骨折の見逃しによる変形治癒・偽関節、③シャルコー関節による関節の崩壊・拘縮・歩行障害、④骨髄炎や化膿性関節炎、場合によっては敗血症や四肢切断、⑤角膜潰瘍、⑥口腔内の潰瘍、歯の早期喪失、顎骨の感染、⑦虫垂炎・腸閉塞・腹膜炎などの内臓疾患の発見の遅れ、⑧皮膚乾燥・亀裂からの感染です。痛みという警告がないため、どの合併症も「気づいたときには進行している」点が本症の最大の特徴です。

先天性無痛無汗症の診断・診断基準

診断は、乳児期からの繰り返す発熱、痛みへの無反応、自傷、骨折の既往といった臨床像から本症を疑うことに始まります。まず、発汗の欠如と痛覚・温度覚の欠如を客観的に確認します。神経伝導検査で大径線維の機能が保たれていることを確かめ、他の末梢神経疾患と区別します。皮膚生検や神経生検で小径線維の欠落を示し、最終的にはNTRK1遺伝子の両アレル病的バリアントの同定で確定するのが一般的です。指定難病の認定では、全身の無痛と無汗という主要症状に加え、検査所見や遺伝学的検査、鑑別診断の除外を組み合わせて判断されます。申請の際は最新の診断基準を主治医に確認してください。乳幼児の多発骨折では虐待との鑑別も慎重に行います。

  • 痛覚・温度覚の診察: ピン刺激や温冷刺激への反応がほぼ全身で欠如し、触覚・振動覚・位置覚と腱反射は保たれるという解離性の所見が特徴です。
  • 発汗検査: ヨード澱粉法(ミノール法)やピロカルピン・イオントフォレーシス、定量的軸索反射性発汗試験(QSART)などで、全身性の発汗消失を確認します。
  • ヒスタミン皮内テスト: 健常者で見られる軸索反射による周囲の発赤(フレア)が欠如し、C線維の機能欠落を示唆します。
  • 神経伝導検査: 運動・感覚神経の伝導速度や振幅はおおむね正常で、大径線維が保たれていることを示し、他のニューロパチーとの鑑別に役立ちます。
  • 皮膚生検: 表皮内神経線維の著明な減少と、汗腺周囲の神経支配の欠如が確認されます。汗腺自体は存在する点が外胚葉形成不全症との違いです。
  • 腓腹神経生検: 無髄線維と小径有髄線維がほぼ欠落し、大径有髄線維は比較的保たれます。侵襲的なため、遺伝学的検査で確定できる場合は省略されることもあります。
  • 遺伝学的検査(NTRK1): NTRK1遺伝子の両アレルに病的バリアントを認めれば確定診断となります。V型が疑われる場合はNGF遺伝子なども検討します。
  • 画像検査(X線・MRI・骨シンチ等): 気づかれていない骨折、過剰仮骨、関節破壊、骨髄炎の評価に用います。骨髄炎の診断では血液検査やMRIを組み合わせます。
  • 発達・行動評価: 知能検査や行動特性の評価を行い、療育・教育的支援の計画に役立てます。

先天性無痛無汗症と鑑別すべき疾患

  • 遺伝性感覚・自律神経ニューロパチーV型: 痛覚低下は共通ですが、発汗は保たれるか軽度の低下にとどまり、知的障害は通常ありません。
  • SCN9A関連先天性無痛症: 痛覚は欠如しますが、発汗は正常で嗅覚障害を伴い、神経生検で小径線維は保たれます。
  • 家族性自律神経失調症(HSAN III型): ELP1遺伝子の異常によるもので、涙の欠如、茸状乳頭の欠如、血圧の変動など自律神経症状が強く、痛覚低下は部分的です。
  • 低汗性外胚葉形成不全症: 無汗による高体温は共通ですが、汗腺そのものが欠如または減少し、歯牙や毛髪の異常を伴い、痛覚は正常です。
  • 骨形成不全症・被虐待児症候群: 多発骨折は共通しますが、痛覚と発汗は正常であり、骨の脆弱性や受傷状況の評価で区別します。
  • レッシュ・ナイハン症候群など自傷を伴う疾患: 自傷行為は共通しますが、痛覚は保たれ、高尿酸血症や不随意運動などの特徴があります。

先天性無痛無汗症の治療

現時点で、欠落した神経を回復させる根本治療は確立していません。治療の中心は、高体温の予防と管理、外傷・自傷・感染の予防と早期発見、そして発達・行動面の支援です。小児科(神経)、整形外科、歯科・口腔外科、皮膚科、眼科、リハビリテーション科、麻酔科、心理・療育職などが連携する多職種チームでの管理が望まれます。痛みという自然な警報がないため、家族や支援者による毎日の観察と、受診時の「痛くない=軽症ではない」という前提を共有しておくことが重要です。個々の治療選択は、主治医・専門医とよく相談して決めてください。

  • 体温管理: 室温・湿度の調整、薄着、冷却(保冷剤・濡れタオル・送風)、こまめな水分補給を行います。夏季の外出、入浴、運動、感染症による発熱時には特に注意が必要です。体温を頻回に測る習慣も大切です。
  • 口腔ケア・歯科的対応: 舌・唇の咬傷を防ぐため、マウスピース(口腔内装置)の使用、歯の鋭縁の削合、症例によっては乳歯の抜歯などが検討されます。小児歯科での定期管理が推奨されます。
  • 外傷予防と全身チェック: 保護具(ヘルメット、膝・肘パッド、靴)の活用や危険物の管理を行います。毎日、皮膚・関節・四肢の腫れや熱感、歩き方の変化を観察します。
  • 骨折・関節障害の整形外科治療: 骨折は通常より長期の固定と免荷を要することが多く、骨癒合を画像で確認しながら慎重に進めます。シャルコー関節には装具療法が中心となり、手術適応は専門医が個別に判断します。
  • 感染症(骨髄炎など)の治療: 骨髄炎や化膿性関節炎には、起炎菌に応じた抗菌薬の長期投与や外科的処置が行われます。発熱があっても無汗による高体温との区別が難しいため、血液検査や画像検査を併用して評価します。
  • 皮膚・眼のケア: 保湿剤で皮膚の乾燥と亀裂を予防し、傷は早期に処置します。角膜知覚が低下している場合は、人工涙液や眼科での定期観察を行います。
  • 発達・行動面の支援: 療育、特別支援教育、行動療法的アプローチを行います。多動や衝動性が強い場合は、児童精神科と連携した薬物療法が検討されることもあります。
  • 手術・麻酔時の配慮: 痛覚がなくても、触覚刺激やストレスへの反応、体温上昇の管理を考慮し、全身麻酔を含む適切な麻酔管理と厳密な体温モニタリングが必要とされます。事前に麻酔科へ診断名を伝えてください。
  • リハビリテーション: 関節保護を意識した運動指導、装具・歩行補助具の調整、日常生活動作の訓練を行い、運動機能の維持を図ります。

先天性無痛無汗症の予後・長期フォロー

生命予後に最も影響するのは乳幼児期の高体温です。体温管理の知識が普及したことで、乳幼児期の死亡は減少していると考えられます。幼児期以降は、骨折や関節破壊、慢性骨髄炎の積み重ねが運動機能とQOL(生活の質)を左右します。重症例では車いす生活や四肢切断に至ることもあります。一方、早期診断と予防的ケア、本人の危険回避行動の学習により、成人期に就労や社会生活を送っている人もいます。知的障害や行動特性の程度も、自立度に大きく関わります。

長期フォローアップでは、定期的な体格・発達評価に加えて、整形外科による関節・脊椎の評価(必要に応じてX線)、歯科での口腔管理、眼科診察、皮膚の観察を継続します。思春期以降は、自分で体調を管理するスキル(体温測定、皮膚・関節の自己点検、受診の判断)の獲得を支援します。小児科から成人診療科への移行(トランジション)を計画的に進めることも重要です。成人期に担当医が見つかりにくい場合は、難病診療連携拠点病院などに相談するとよいでしょう。

先天性無痛無汗症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

家庭では、室温を25〜28℃程度の快適な範囲に保ち、真夏の屋外活動や長時間の入浴を避け、体温計を常備して「元気でも測る」習慣をつけます。熱湯、ストーブ、ホットカーペット、湯たんぽ、日差しで熱くなった遊具や車内などによる熱傷にも注意が必要です。入浴前には湯温を必ず手以外の方法(温度計)で確認します。足に合った靴を選び、毎晩、全身の皮膚・爪・関節を観察して、腫れ・熱感・変形・歩き方の変化があれば早めに受診します。保育園・幼稚園・学校には疾患の特性(痛がらない、汗をかかない、熱がこもりやすい)を文書で伝え、冷房のある環境の確保や活動の調整を依頼しましょう。本症は常染色体潜性遺伝であり、次子が罹患する確率は1/4です。保因者診断や出生前診断を含め、遺伝に関する疑問は臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングで相談できます。

利用できる制度・相談窓口

先天性無痛無汗症は指定難病(告示番号130)であり、診断基準と重症度基準を満たすと、医療費助成(特定医療費)を受けられます。重症度基準を満たさなくても、医療費が一定額を超える状態が続く場合は「軽症高額該当」として対象となることがあります。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象となりうるため、対象疾病名や要件を主治医・自治体で確認してください。運動機能障害がある場合は身体障害者手帳(肢体不自由)、知的障害がある場合は療育手帳の取得が検討でき、補装具や日常生活用具の給付につながります。児童期は特別児童扶養手当や障害児福祉手当、20歳以降は障害基礎年金などの対象となる場合があります。また、指定難病の患者は障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用できます。相談窓口として、都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカー、患者・家族会(先天性無痛症の会「トゥモロウ」など)があります。

先天性無痛無汗症に伴う心のケア・心理社会的支援

本症では、本人よりもまず家族、とくに主な養育者の心理的負担が大きくなりがちです。「目を離すと大けがや高体温につながる」という緊張が24時間続くことで、慢性的な疲労、不安、抑うつ、睡眠不足に陥ることがあります。原因の分かりにくい骨折では、医療機関や周囲から虐待を疑われる経験がつらい記憶として残ることもあります。また、遺伝性であることへの罪悪感や、きょうだい児への関わり不足に悩む家族も少なくありません。本人にとっては、成長とともに運動制限や外見の変化(指先・舌の欠損、関節変形)、知的・行動面の特性による孤立感や自己肯定感の低下が課題になることがあります。気分の落ち込み、強い不安、イライラ、不眠が2週間以上続く場合は、適応障害やうつ病の可能性もあります。早めに主治医、臨床心理士・公認心理師、児童精神科・精神科に相談してください。レスパイト(一時的な預かり)サービスや患者会での交流も、孤立を防ぐ大切な手段です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

先天性無痛無汗症の受診の目安

  • 体温が38.5〜39℃以上に上がり、冷却しても下がらない、ぐったりしている、またはけいれんを起こした場合は、すぐに救急受診してください。
  • 手足や関節が腫れている、熱を持っている、形が変わった、歩き方がおかしい、手足を使わなくなった場合は、痛がっていなくても早めに整形外科を受診してください。
  • 傷が赤く腫れる、膿が出る、治りが悪い、原因の分からない発熱が続く場合は、骨髄炎などの感染症を疑って受診してください。
  • 嘔吐、腹部の張り、食欲低下、顔色不良など、いつもと違う全身状態は、痛みがなくても内臓の病気の可能性があるため受診してください。
  • 目の充血、目やにが増える、目をこする回数が増えた場合は、角膜の傷を確認するため眼科を受診してください。
  • 舌や唇、指の咬傷が深い、出血が止まらない場合は、歯科・口腔外科や救急外来を受診してください。

先天性無痛無汗症についてのよくある質問

Q. 痛みを感じないのは楽なことではないのですか?

A. 痛みは体の異常を知らせる大切な警報です。痛みがないと、骨折や感染、熱傷に気づくのが遅れ、関節の破壊や重い感染症につながります。そのため本症では、周囲の観察と予防的なケアが欠かせません。

Q. 知的障害は必ず伴いますか?

A. 多くの患者さんで軽度から中等度の知的障害や多動などの行動特性がみられますが、程度には大きな個人差があります。早期からの療育や教育的支援によって、生活能力を伸ばしていくことができます。発達の状況は主治医や療育機関と一緒に評価していきましょう。

Q. 次の子どもにも遺伝しますか?

A. 本症は常染色体潜性遺伝の病気で、両親がともに保因者の場合、子どもが発症する確率は妊娠ごとに1/4です。家族の遺伝学的検査や出生前診断の可否などは、遺伝カウンセリングで詳しく相談できます。

Q. 根本的な治療法はありますか?

A. 現在のところ、欠けている神経を回復させる治療は確立していません。原因遺伝子と病態の研究は進められていますが、実用化された根本治療はまだありません。現時点では、体温管理と外傷・感染の予防、早期発見と早期治療が予後を大きく改善する最も重要な手段です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。