片側巨脳症

Hemimegalencephaly

片側巨脳症(Hemimegalencephaly)|片側巨脳症は、胎児期の脳の発生過程の異常により、左右どちらか一方の大脳半球の全体または大部分が大きくなり、その皮質の構造が乱れる先天性の脳形成異常です。多くは新生児期から乳児期早期に始まる薬の効きにくいてんかん発作で見つかり、発作が続くことで発達の遅れや反対側の手足の麻痺が生じやすくなります。早い時期に診断し、専門施設で外科治療を含めて検討することが、発作と発達の見通しを大きく左右します。

片側巨脳症の要点

片側巨脳症は、胎児期の脳発生の異常で一側の大脳半球の全体または大部分が腫大し、皮質の構造が乱れる先天性の脳形成異常です。新生児期から乳児期に薬の効きにくいてんかん発作で始まることが多く、発達の遅れや反対側の麻痺を伴いやすい指定難病です。

別名・略称片側巨大脳症、半側巨脳症、HME、hemimegalencephaly、unilateral megalencephaly
分野小児神経・てんかん
発症時期多くは新生児期〜乳児期早期にてんかん発作で発症
主な症状難治性てんかん、発達の遅れ、反対側の手足の麻痺
遺伝形式多くは孤発例で、体細胞モザイク変異の関与が報告されている
主な検査頭部MRI・CT、脳波
主な治療抗てんかん薬、難治例では大脳半球離断術などの外科治療
受診する主な診療科小児神経科、脳神経外科

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片側巨脳症とは

片側巨脳症(hemimegalencephaly:HME)は、一側大脳半球の全体または一部が過形成によって腫大し、その半球に広範な皮質形成異常を伴う大脳皮質発達異常(malformations of cortical development)の一型です。神経細胞の増殖・分化と、それに続く神経細胞移動・皮質層構造の形成がともに障害されることで生じます。病理組織像は限局性皮質異形成(FCD)II型とよく似ており、皮質の層構造の乱れ、異型(dysmorphic)ニューロン、風船様(balloon)細胞、白質内の異所性神経細胞などがみられます。このため、FCD II型と同じ病態スペクトラム上にあり、異常が半球全体に広がった重症型と理解されています。片側巨脳症は脳の形成異常による病気で、血液や血小板の病気とは関係ありません。

分類としては、ほかの全身疾患を伴わない孤発性(isolated)片側巨脳症と、皮膚や体の症状を伴う症候性(syndromic)片側巨脳症に大きく分けられます。症候性に合併する疾患として、表皮母斑症候群(線状脂腺母斑症候群)、伊藤白斑(hypomelanosis of Ito)、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群、プロテウス症候群、神経線維腫症1型、結節性硬化症、PIK3CA関連過成長スペクトラム(巨脳症-毛細血管奇形症候群など)が知られています。腫大の範囲によっても分類されます。半球全体が侵されるもの、後頭葉など一部に限られるもの(部分的片側巨脳症)、同側の小脳・脳幹まで腫大が及ぶもの(全片側巨脳症:total HME)があります。疾患概念は19世紀(1835年のSimsによる記載)の病理報告にさかのぼります。CT・MRIの普及で生前診断が可能になり、難治てんかんに対する大脳半球切除術、さらに1990年代以降に普及した大脳半球離断術の主要な対象疾患として位置づけられてきました。日本では指定難病(告示番号136)に指定されています。

片側巨脳症の疫学・患者数

片側巨脳症は非常にまれな疾患で、国内の正確な患者数は明らかではありません。小児てんかん全体のなかではごく一部ですが、乳児期発症の難治てんかんや、てんかん外科の対象となる小児例のなかでは一定の割合を占めると報告されています。発症、すなわち症状に気づく時期の多くは新生児期から乳児期で、生後数日から数か月以内にてんかん発作が始まることがよくあります。近年は胎児超音波や胎児MRIで、出生前に頭の大きさの左右差や脳の非対称から疑われる例もあります。一方、腫大が軽い例や部分型では、幼児期以降に発作が始まって診断されることもあります。明らかな性差や左右差はないとする報告が多く、人種・地域による差もはっきりしていません。家族内で繰り返し起こることはまれで、ほとんどは孤発例です。

片側巨脳症の原因・病態生理

片側巨脳症の多くは、受精後の発生途中に一部の細胞だけに生じる体細胞モザイク変異が原因と考えられています。原因遺伝子として最もよく知られるのは、細胞の増殖・成長を調節するPI3K-AKT-mTOR経路の遺伝子です。PIK3CA、AKT3、MTORの機能獲得型変異や、PIK3R2などの変異が、切除脳組織から検出されています。また、同じ経路を抑制する側の遺伝子(TSC1/TSC2、PTEN、DEPDC5などのGATOR1複合体遺伝子)の異常も一部で報告されています。変異は脳の一部の細胞にしか存在しないことが多く、通常の血液検査では検出されないのが特徴です。この点で、両親から受け継ぐ遺伝病とは性質が異なります。症候性の例では、皮膚や血管など脳以外の組織にも同じモザイク変異が分布していると考えられています。

発症機序をみると、mTOR経路が過剰に活性化すると、細胞の大きさや蛋白合成が増え、神経前駆細胞の増殖も亢進します。その結果、大きな異型ニューロンや、神経とグリアの中間的な性質をもつ風船様細胞が生じます。さらに神経細胞の移動や皮質の層形成が乱れ、皮質の肥厚、脳回の異常(厚脳回・多小脳回様の変化)、灰白質と白質の境界の不明瞭化、白質内の異所性神経細胞が生じます。変異が生じた時期が早いほど、また変異をもつ細胞の割合が多いほど、異常は半球全体に広く及ぶと推定されています。逆に、遅い時期の変異では局所的なFCDになると考えられています。異常な皮質は興奮性と抑制性のバランスが崩れており、てんかん原性が非常に強いのが特徴です。このため生後早期から頻回の発作を起こします。繰り返す発作と発作間欠期の異常脳波活動は、健常な対側半球の発達にも悪影響を及ぼすと考えられ、これが発達障害の重要な要因となります。

片側巨脳症の症状

  • 新生児・乳児期発症のてんかん発作: 焦点起始発作(片側のけいれん、眼球や頭部の偏位、無呼吸、顔色不良など)が1日に何回も起こることが多く、抗てんかん薬が効きにくい傾向があります。
  • てんかん性スパズム(ウエスト症候群): 首や体を一瞬かがめる発作が連続して起こり、左右差を伴うこともあります。脳波でヒプスアリスミアを示し、発達の停滞や退行につながりやすい発作型です。
  • 大田原症候群などの早期乳児てんかん性脳症: 新生児期に強直スパズムが群発し、脳波でサプレッション・バースト(平坦な部分と高振幅の部分が交互に現れるパターン)を示す重症型として発症することがあります。
  • てんかん重積状態: 発作が長く続く、または意識が戻らないまま反復することがあり、緊急治療が必要です。
  • 病変と反対側の片麻痺: 病変半球と反対側の手足の動きが悪くなり、乳児期には手の使い方の左右差や握りにくさとして気づかれます。
  • 発達遅滞・知的障害: 運動・言語・認知の発達が遅れることが多く、その程度は発作の重さや持続期間、対側半球の状態によって大きく異なります。
  • 頭囲拡大・頭部の非対称: 病変側の頭がやや大きく、出生時から頭囲が大きめであったり、頭の形が左右非対称だったりすることがあります。
  • 同名半盲などの視野障害: 病変半球と反対側の視野が見えにくくなることがあり、物によくぶつかる、片側を見落とすといった行動として現れます。
  • 行動・精神面の問題: 自閉スペクトラム症様の特性、多動、易刺激性などがみられることがあります。
  • 皮膚・体の症状(症候性の場合): 顔面や頭部の線状の母斑、色素の抜けた線状の皮膚、片側の顔や体・手足の過成長、血管奇形などを伴うことがあります。
  • 摂食・嚥下の問題: 重症例では哺乳力の低下や嚥下障害を伴い、誤嚥や体重増加不良の原因となることがあります。

片側巨脳症の経過と合併症

自然経過は多くの場合、新生児期から乳児期に発作が始まり、抗てんかん薬を複数使っても十分に抑えられない状態が続きます。発作型は、焦点起始発作からてんかん性スパズムへと年齢とともに変化することがあります。成長に伴って、レノックス・ガストー症候群のような全般性の難治てんかんに移行する例もあります。脳の形成異常そのものは腫瘍のように大きくなっていく病気ではありません。しかし、頻回の発作と異常な脳波活動が続く期間が長いほど、発達の遅れが目立ちやすくなります。また、本来正常な反対側の半球の機能発達も妨げられやすいと考えられています。一方、腫大が軽い例や部分型では、発作が比較的軽く、薬物で長期にコントロールされる例もあり、重症度の幅は広い疾患です。

合併症としては、てんかん重積状態とそれに伴う呼吸障害・誤嚥性肺炎、発作による外傷があります。抗てんかん薬の副作用(眠気、食欲低下、肝機能障害、視野障害など薬剤ごとの特有の副作用)も問題になります。運動面では、片麻痺に伴う関節拘縮・側弯・股関節の問題がみられることがあります。重症例では摂食嚥下障害や栄養障害も合併します。症候性の例では、皮膚母斑、血管奇形、片側過成長による脚長差など、背景疾患に応じた合併症に注意が必要です。結節性硬化症やPTEN関連疾患などが背景にある場合は、腫瘍性病変の定期的な評価も求められます。外科治療後には、水頭症やシャント治療の必要性、術後の片麻痺・半盲の固定、まれに残存した脳からの発作の再発などがみられることがあります。

片側巨脳症の診断・診断基準

診断は、乳児期の難治てんかんや頭部の非対称をきっかけに疑い、頭部MRIで一側大脳半球の腫大と皮質形成異常を確認することが中心になります。新生児・乳児の脳は髄鞘化が未完成で所見がわかりにくいことがあるため、経験のある小児神経科・神経放射線科医による読影が重要です。必要に応じて時期をおいてMRIを再検します。脳波でてんかん性異常の局在と重症度を評価し、FDG-PETやSPECTで機能面の左右差を確認します。外科治療を考える場合には、反対側の半球が正常に近いかどうかの評価が特に重要です。皮膚所見や全身の過成長の有無を確認して症候性かどうかを見分け、背景疾患の評価も行います。指定難病の認定では、画像所見を中心とする診断基準と、てんかん発作の頻度や精神・運動機能の障害の程度に基づく重症度基準が用いられます。申請には難病指定医による臨床調査個人票の作成が必要です。

  • 頭部MRI: 一側半球の腫大、皮質の肥厚と脳回の異常、灰白質・白質境界の不明瞭化、白質の信号異常、同側側脳室の拡大と前角の特徴的な変形(前上方に伸びて直線化する形)などがみられます。新生児期には異常な髄鞘化を反映してT1強調像で白質が高信号を示すことがあり、診断の中核となる検査です。
  • 頭部CT・頭部超音波: 新生児期のスクリーニングとして半球の非対称や脳室の左右差をとらえられますが、皮質異常の詳細評価にはMRIが必要です。
  • 胎児超音波・胎児MRI: 妊娠中期以降に、頭囲の左右差や脳室の非対称から疑われることがあり、出生後の早期評価・治療準備につながります。
  • 脳波・長時間ビデオ脳波: 病変側優位の高振幅徐波や棘波、左右差のあるヒプスアリスミアやサプレッション・バーストなどを示します。発作時記録により発作の起始側を確認し、手術適応を判断します。
  • FDG-PET・脳血流SPECT: 病変半球の糖代謝・血流異常を示し、反対側半球が機能的に保たれているかを評価する手がかりになります。
  • 発達・神経学的評価: 発達検査、運動機能(片麻痺の程度)、視野、摂食嚥下機能などを評価し、治療方針とリハビリテーション計画に活用します。
  • 皮膚・全身の診察と合併症評価: 線状母斑、色素異常、血管奇形、片側過成長などの有無を確認し、表皮母斑症候群、伊藤白斑、結節性硬化症、神経線維腫症1型などの背景疾患を検索します。
  • 病理組織検査: 手術で切除された脳組織では、皮質層構造の乱れ、異型ニューロン、風船様細胞、白質内異所性神経細胞などFCD II型類似の所見がみられ、診断が確定します。
  • 遺伝子検査: 切除脳組織を用いた解析で、PI3K-AKT-mTOR経路遺伝子の体細胞モザイク変異が見つかることがあります。血液での検査は陰性のことが多く、実施は研究目的を含めて施設ごとに判断されます。

片側巨脳症と鑑別すべき疾患

  • 限局性皮質異形成(FCD): 病理像は類似しますが、異常は脳葉の一部に限局し、半球全体の腫大や脳室変形は伴いません。
  • スタージ・ウェーバー症候群: 顔面のポートワイン母斑と軟膜血管腫を伴い、MRIの造影所見と皮質石灰化が特徴で、罹患半球はむしろ萎縮していく点が異なります。
  • ラスムッセン脳炎: それまで正常に発達していた小児に発症する慢性炎症性疾患で、一側半球が経時的に萎縮していく点で区別されます。
  • 片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群/後天性片側脳萎縮: けいれん重積や脳梗塞などの後に一側半球が萎縮した状態で、萎縮した側ではなく反対側を「大きい」と誤認しないよう注意が必要です。
  • 結節性硬化症: 多発する皮質結節、上衣下結節、皮膚の白斑や顔面血管線維腫、腎・心病変などを伴い、片側巨脳症を合併することもあるため全身評価で見分けます。
  • びまん性神経膠腫など脳腫瘍: 半球の腫大や信号異常が似ることがありますが、腫瘍では経時的な増大や周囲への圧排、造影効果などがみられます。

片側巨脳症の治療

治療の主な目標は、てんかん発作をできるだけ早く抑えることです。それによって、発達、特に正常な反対側半球の働きを最大限に守ることを目指します。まず抗てんかん薬による治療を行います。てんかん性スパズムにはACTH療法やビガバトリンなど、発作型に応じた治療を選びます。しかし片側巨脳症の発作は薬物治療に抵抗性のことが多く、複数の薬を試しても発作が続く場合には、早い段階でてんかん外科の専門施設に紹介します。そこで大脳半球離断術などの外科治療を検討するのが一般的な考え方です。手術の適応や時期は、発作の重症度、反対側半球の状態、片麻痺や視野の状態、体重・全身状態などを総合して判断されます。手術による利点と、半盲や麻痺の固定などの影響を家族とよく話し合ったうえで決定します。並行して、リハビリテーション、栄養、療育などの包括的な支援を行います。個々の治療の選択は、主治医・専門医と十分に相談してください。

  • 抗てんかん薬: 発作型に応じて各種の抗てんかん薬を単剤または併用で用います。発作を完全に抑えられない場合も多いものの、手術までの期間や軽症例では治療の中心となります。
  • ACTH療法・ビガバトリン: てんかん性スパズム(ウエスト症候群)に対して用いられる治療です。一時的に効果があっても、背景の形成異常のために再燃しやすいことが知られています。
  • 大脳半球離断術(機能的半球切除術): 病変半球と反対側半球・脳幹との神経線維連絡を外科的に切り離す手術です。片側巨脳症の難治てんかんに対して最も発作抑制効果が期待できる治療とされ、多くの報告で半数以上の患者さんが発作消失またはそれに近い状態になっています。
  • 解剖学的半球切除術・部分切除術: 病変半球を切除する術式や、部分型で異常が一部に限られる場合の多脳葉離断・切除が、施設の方針や病変の広がりに応じて選ばれます。乳児期の手術は出血や体温管理などの周術期リスクにも配慮して行われます。
  • 手術時期の判断: 発作が続く期間を短くすることが発達に有利と考えられています。このため、乳児期早期の手術も専門施設で検討されます。一方で、体重や全身状態を考慮して時期を調整することもあります。
  • ケトン食療法: 高脂肪・低糖質の食事療法で、薬物抵抗性発作の補助療法として、あるいは手術までの橋渡しとして試みられることがあります。栄養管理のもとで行います。
  • mTOR経路を標的とする治療: 原因がmTOR経路の過剰活性化にあることから、mTOR阻害薬の効果が研究されています。ただし、片側巨脳症に対して確立した治療ではなく、現時点では研究段階と位置づけられます。
  • リハビリテーション・療育: 片麻痺に対する理学療法・作業療法、言語・コミュニケーション支援、摂食嚥下訓練、視野障害への対応などを、術前・術後を通じて継続的に行います。
  • 合併症・併存症の管理: 発作時の救急対応、誤嚥予防と栄養管理、側弯・拘縮の予防、症候性例での皮膚・血管・過成長の評価など、多診療科で連携して管理します。

片側巨脳症の予後・長期フォロー

予後は、発作がコントロールできるかどうか、発作が続いた期間、反対側半球の状態、背景疾患の有無によって大きく異なります。薬物治療のみで経過した重症例では、発作が持続し、重度の知的障害や運動障害を残すことが少なくありません。重積発作や誤嚥性肺炎などで命に関わる場合もあります。一方、大脳半球離断術で発作が消失した場合は、発達が伸びたり、日常生活の質が改善したりすることが多く報告されています。ただし、病前からの発達障害の程度によって、到達できる発達段階には個人差があります。術後の片麻痺は、もともと麻痺がある場合には大きく変わらないことが多いとされます。歩行は多くの例で獲得が期待できますが、病変と反対側の手の細かい動きは障害が残りやすいです。術後には同名半盲が固定します。

長期フォローアップでは、小児神経科・脳神経外科を中心に、脳波やMRIによる評価、抗てんかん薬の調整を継続します。手術後に発作が消失した場合でも、抗てんかん薬は主治医の判断のもとで慎重に減量・中止を検討します。術後には水頭症が遅れて現れることがあるため、頭痛、嘔吐、元気がないなどの変化に注意が必要です。成長に伴う側弯や脚長差、学習・行動面の課題、思春期以降の自立や就労についても、リハビリテーション・療育・教育機関と連携して支援します。小児期から成人期への移行医療(成人てんかん診療への引き継ぎ)も計画的に進めることが望まれます。

片側巨脳症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、まず発作時の安全確保が大切です。発作が起きたら、平らで危険のない場所に寝かせ、顔を横に向けて吐物による窒息を防ぎます。口の中に物を入れてはいけません。発作の様子や持続時間を記録するか、可能であれば動画で残すと、診療に役立ちます。入浴は見守りのもとで行い、水難事故に注意します。抗てんかん薬は自己判断で中断せず、決められた時間に飲むことが重要です。発熱や睡眠不足は発作を誘発しやすいため、規則正しい生活を心がけます。保育園・幼稚園・学校には、発作時の対応や頓用薬の使用について、主治医の指示書をもとに共有しておくと安心です。片麻痺や半盲がある場合は、見えにくい側からの声かけや、机・ベッドの配置などの工夫が役立ちます。遺伝については、多くが受精後に生じた体細胞モザイク変異による孤発例とされ、きょうだいや次の子どもで繰り返す可能性は一般に低いと考えられています。ただし、結節性硬化症など遺伝性の背景疾患がある場合は話が異なるため、遺伝カウンセリングで個別に相談することをおすすめします。

利用できる制度・相談窓口

片側巨脳症は指定難病(告示番号136)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、医療費助成(特定医療費)を受けられます。また、高額な医療が長期に続く場合には「軽症高額該当」として対象となる場合があります。18歳未満では小児慢性特定疾病(神経・筋疾患)の医療費助成の対象となりうるので、年齢や状況に応じて主治医や自治体窓口で確認してください。このほか、症状に応じて次のような制度があります。<br>・てんかんの通院治療に対する自立支援医療(精神通院医療)<br>・精神障害者保健福祉手帳<br>・片麻痺などに対する身体障害者手帳<br>・知的障害に対する療育手帳<br>・特別児童扶養手当、障害児福祉手当<br>・20歳以降の障害年金(20歳前傷病による障害基礎年金を含む)<br>・障害福祉サービス・障害児通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)<br>重症心身障害のある場合には、医療的ケア児支援の制度も利用できることがあります。相談窓口としては、都道府県・指定都市の難病相談支援センター、保健所、市区町村の障害福祉・子育て支援窓口、医療機関の医療ソーシャルワーカーなどがあります。てんかん診療については、てんかん支援拠点病院や日本てんかん協会などの患者・家族団体も情報源となります。

片側巨脳症に伴う心のケア・心理社会的支援

片側巨脳症は乳児期に診断されることが多い病気です。そのため、ご家族は出産直後から、繰り返す発作、入院、大きな手術の決断と向き合うことになり、強い不安や自責感、抑うつ、睡眠不足による心身の疲弊を経験しやすいといえます。「脳の半分を切り離す手術」という説明は心理的な衝撃が大きく、決断の重さに悩むのは当然のことです。納得できるまで医療者に質問し、必要に応じてセカンドオピニオンを利用することも大切です。きょうだいへの影響や、仕事と介護の両立、地域社会での孤立も課題になります。本人も成長するにつれて、麻痺や視野障害、学習面の困難から、自己肯定感の低下や不安を抱えることがあります。ひとりで抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、心理職、保健師、患者・家族会などに早めに相談してください。気分の落ち込みが続く、眠れない、何も手につかないといった状態があれば、ご家族自身も心療内科や精神科の受診をためらわないことが大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

片側巨脳症の受診の目安

  • 発作が5分以上続く、または発作の合間に意識が戻らないまま繰り返す場合は、ただちに救急要請してください。
  • 発作後に呼吸が苦しそう、顔色が悪い、呼びかけへの反応が戻らない場合は、すぐに救急受診してください。
  • 首や体を一瞬かがめる動きが連続して起こるようになった、発作の回数や型が明らかに変わった場合は、早めに主治医に相談してください。
  • できていたことができなくなる(発達の退行)、手足の動きの左右差が強くなった場合は、早めに受診してください。
  • 術後に頭痛、嘔吐、ぐったりする、頭囲が急に大きくなるなどの変化がある場合は、水頭症の可能性があるため速やかに受診してください。
  • 高熱、哺乳・食事量の著しい低下、むせ込みや咳が続く場合は、脱水や誤嚥性肺炎を考えて受診してください。

片側巨脳症についてのよくある質問

Q. 片側巨脳症は親からの遺伝ですか?

A. 多くは、受精後の発生途中で一部の細胞に生じた遺伝子の変化(体細胞モザイク変異)が原因と考えられており、親から受け継いだものではない孤発例がほとんどです。次の子どもで繰り返す可能性は一般に低いとされます。ただし、結節性硬化症などの背景疾患がある場合は異なるため、遺伝カウンセリングで確認してください。

Q. 脳の半分を手術して、その後の生活は大丈夫なのでしょうか?

A. 大脳半球離断術は、異常な半球の働きを切り離して発作を止める手術です。乳幼児では、残った反対側の脳がある程度その機能を補えると考えられています。多くの場合、歩行は可能となりますが、反対側の手の細かい動きの障害や視野の欠けは残ります。手術の利点と影響は個々に異なるため、専門医と十分に話し合って決めることが大切です。

Q. 薬だけで治療を続けることはできませんか?

A. 腫大が軽い例や部分型では、薬で発作がコントロールされる場合もあります。しかし、片側巨脳症では薬の効きにくいことが多く、発作が長く続くと発達への影響が大きくなると考えられています。複数の薬で効果が不十分な場合は、早めにてんかん外科の専門施設で評価を受けることがすすめられます。

Q. 脳が大きくなっていく病気なのですか?

A. 片側巨脳症は生まれつきの脳の形成異常で、腫瘍のように次々と大きくなっていく病気ではありません。ただし、成長とともに画像の見え方や発作の型が変化することがあるため、定期的に診察と検査を受けて経過をみていきます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。