ドラベ症候群

Dravet Syndrome

ドラベ症候群(Dravet Syndrome)|ドラベ症候群は、乳児期に発熱や入浴などをきっかけとした長いけいれん発作で発症する、重症の遺伝性てんかんです。多くはSCN1A遺伝子の変異が原因で、薬が効きにくい発作が長く続きます。2歳頃から発達の遅れや行動面の特性、歩行の問題も現れ、患者本人の生活と家族の介護に生涯にわたって影響します。早期に診断し、症状を悪化させる薬を避けて適切な治療と救急対応の準備を整えることが大切です。

ドラベ症候群の要点

ドラベ症候群は、多くはSCN1A遺伝子の変異で起こる重症の遺伝性てんかんで、生後1年以内に発熱などを契機とした長いけいれん発作で発症します。薬が効きにくい多彩な発作が続き、2歳頃から発達の遅れや歩行の問題もみられ、日本では指定難病(告示番号140)です。

別名・略称乳児重症ミオクロニーてんかん、重症乳児ミオクロニーてんかん、SMEI、Dravet症候群、severe myoclonic epilepsy in infancy
分野小児神経・てんかん
遺伝形式多くはSCN1A遺伝子の変異が原因(両親にはない新生変異が多い)
好発年齢生後1年以内に発症(多くは生後6か月前後)
主な症状発熱に伴う長い全身性・片側性のけいれん、てんかん重積、ミオクロニー発作などの多彩な発作、発達の遅れ、歩行の問題
主な検査臨床経過の評価、脳波、遺伝学的検査(SCN1A遺伝子)
主な治療抗てんかん薬による発作のコントロール、重積時の対応、発熱・入浴などの誘因への配慮
受診する主な診療科小児神経科、神経内科、てんかん専門外来

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ドラベ症候群とは

ドラベ症候群は、発達性てんかん性脳症(developmental and epileptic encephalopathy:DEE)の代表的な疾患です。それまで正常に発達していた乳児が、生後1年以内(多くは生後6か月前後)に、発熱に伴う全身性または片側性の間代発作・強直間代発作を起こして発症します。発作は長く続きやすく、てんかん重積状態に至ることがまれではありません。1〜2歳以降はミオクロニー発作、非定型欠神発作、焦点発作など多彩な発作型が加わります。抗てんかん薬が効きにくく、発作の始まり以降に発達の停滞が現れます。この発達の問題は、発作そのものの影響(てんかん性脳症)と、遺伝子異常が神経発達に直接及ぼす影響(発達性脳症)の両方によると考えられています。

1978年にフランスの小児神経科医シャルロット・ドラベ(Charlotte Dravet)が乳児重症ミオクロニーてんかん(severe myoclonic epilepsy in infancy:SMEI)として報告しました。その後、ミオクロニー発作を伴わない例(境界型、SMEB)も同じ病態であることがわかり、報告者の名を冠して「ドラベ症候群」と呼ばれるようになりました。2001年にはSCN1A遺伝子の変異が主因であることが報告され、熱性けいれんプラス(GEFS+)を含むSCN1A関連てんかんのスペクトラムの最重症型と位置づけられています。国際抗てんかん連盟(ILAE)の2022年の症候群分類では、乳児期発症の発達性てんかん性脳症に分類されています。日本では指定難病(告示番号140)と小児慢性特定疾病の対象です。

ドラベ症候群の疫学・患者数

海外の疫学研究では、出生およそ1万5千〜4万人に1人の頻度と推定されています。報告によって幅があり、遺伝子検査の普及とともに診断される例が増えています。日本の正確な患者数は明らかではありませんが、数千人規模と推測されています。成人期に入ってから診断される例や、診断されないまま「難治てんかん+知的障害」として経過している成人例も少なくないと考えられます。発症年齢は生後1年以内がほとんどで、生後3〜9か月頃に集中します。明らかな性差はないとされ、人種や地域による大きな差も知られていません。

ドラベ症候群の原因・病態生理

患者の約8割で、電位依存性ナトリウムチャネルNav1.1のαサブユニットをコードするSCN1A遺伝子(2番染色体長腕)にヘテロ接合性の病的変異が見つかります。変異の大部分(約9割)は両親にない新生(de novo)変異です。一方で、親が体細胞モザイクである例や、GEFS+家系の中で常染色体顕性(優性)遺伝する例も報告されています。変異はナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライス変異、欠失などの機能喪失型が多く、片方の遺伝子が働かなくなること(ハプロ不全)が本質と考えられています。SCN1A変異を認めない例では、SCN1B、GABRA1、GABRG2、STXBP1などの変異による類似の表現型(ドラベ様症候群)が報告されています。女性に多いPCDH19関連てんかんも臨床像が似ていますが、現在は別の疾患として扱われます。

Nav1.1は、大脳皮質や海馬の抑制性GABA作動性介在ニューロン(特にパルブアルブミン陽性の高頻度発火型ニューロン)の活動電位発生に重要な役割を担っています。Nav1.1が半分しか働かないと、これらの抑制性ニューロンが十分に発火できなくなります。その結果、脳全体の興奮と抑制のバランスが興奮側に傾く(脱抑制)と考えられており、動物モデルで裏づけられています。Nav1.1チャネルの機能は温度の影響を受けるため、体温上昇時に抑制がさらに破綻しやすくなります。これが発熱や入浴で発作が誘発される理由の一つと推測されています。また、カルバマゼピンやラモトリギンなどナトリウムチャネル遮断作用を持つ薬は、すでに弱っている抑制性ニューロンの働きをさらに抑え、発作を悪化させることがあります。小脳や脳幹の自律神経系に関わるニューロンの障害は、運動失調や、てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP)のリスクとの関連が研究されています。

ドラベ症候群の症状

  • 発熱時の長いけいれん(初発発作): 多くは生後1年以内に、発熱(微熱のこともある)や予防接種後の発熱に伴う全身性または片側性の間代発作で始まります。15分以上続く遷延性発作になりやすいのが特徴です。
  • 片側けいれん(左右交代性): 体の片側だけのけいれんが起こり、発作ごとに左右が入れ替わることがあります。この所見は本症候群を疑う重要な手がかりです。
  • てんかん重積状態: 30分以上続く発作や、意識が戻らないまま発作を繰り返す状態です。乳幼児期に特に起こりやすく、救急治療を要します。
  • 温度変化・入浴による誘発: 熱い湯での入浴、暑い環境、運動による体温上昇が発作の引き金になります。発熱のない時期にも起こります。
  • ミオクロニー発作: 1歳以降に、手足や体幹が一瞬ピクッと動く発作が現れることがあります。頻発すると転倒や物を落とす原因になります。
  • 非定型欠神発作・意識減損発作: ぼんやりして反応が鈍くなる発作です。頻発すると、気づかないうちに意識障害が続く非けいれん性重積に至ることがあります。
  • 光・図形過敏: 明暗のコントラストや縞模様、点滅光などで発作が誘発されることがあり、自分から光を見つめる行動を示す子もいます。
  • 発達の停滞・知的障害: 発症前の発達はおおむね正常ですが、2歳頃から言語や認知の伸びが緩やかになります。成人期には多くが中等度〜重度の知的障害を示します。
  • 行動・情緒の特性: 多動、注意の持続困難、こだわり、自閉スペクトラム症の特性、衝動性などがよくみられ、生活上の大きな課題となります。
  • 運動失調・歩行障害: ふらつきや協調運動の苦手さがみられます。学童期以降には膝を曲げたかがみ歩行(crouch gait)が進むことがあります。
  • 睡眠障害: 入眠困難や中途覚醒が多く、本人の日中の状態と家族の負担の両方に影響します。
  • 自律神経・摂食の問題: 発汗や体温調節の異常、食欲不振、嚥下・咀嚼の問題がみられることがあり、薬の副作用で悪化することもあります。

ドラベ症候群の経過と合併症

自然歴はおおむね3つの時期に分けて理解されます。①発熱期(乳児期):生後1年以内に発熱時の遷延性発作が始まり、発作のない時期の発達は保たれています。脳波も正常であることが多く、この時期に熱性けいれんと区別するのは容易ではありません。②増悪期(1〜5歳頃):発熱のない時期にも発作が起こるようになり、ミオクロニー発作、非定型欠神発作、焦点発作、重積状態が頻発します。発達の停滞や行動の問題が目立ってくる、最も大変な時期です。③安定期(学童期以降):発作の頻度や重積状態は減り、熱への感受性もいくらか弱まります。ただし、主に睡眠中の全身けいれん発作が成人期まで続くことが多く、知的障害、運動の問題、行動面の特性は残ります。成人期にはパーキンソン症状に似た動作の緩慢さが報告されることもあります。

主な合併症には、てんかん重積状態、SUDEP(睡眠中などに起こる、てんかん患者の予期せぬ突然死)、発熱時の急性脳症(重積状態に続く脳浮腫や痙攣重積型急性脳症など)があり、生命予後に直結します。SUDEPは発作の多い幼児期だけでなく成人期にも起こりえます。そのほか、知的障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、睡眠障害、かがみ歩行・扁平足・側弯などの整形外科的問題、摂食障害と体重増加不良、発作時の転倒による外傷、誤嚥性肺炎がみられます。抗てんかん薬の副作用(眠気、食欲低下、肝機能障害、血小板減少など)も、継続的な管理が必要な合併症です。

ドラベ症候群の診断・診断基準

診断は、発症年齢と発作の特徴、経過を中心とした臨床診断が基本です。遺伝子検査は診断を強く裏づけます。具体的には、生後1年以内に発熱で誘発される遷延性の全身性または片側性間代発作で発症し、のちに発熱なしでも発作が起こり、多彩な発作型と抗てんかん薬への抵抗性、発症後の発達の停滞を示す場合に強く疑います。乳児期早期は脳波・MRIとも正常なことが多く、「熱性けいれん」として経過観察されている例も少なくありません。1歳未満の15分以上続く熱性けいれん、片側性のけいれん、繰り返す遷延性発作、入浴での発作があれば、早めに小児神経専門医へ紹介し、SCN1A遺伝子検査を検討することが推奨されます。早期に診断がつけば、症状を悪化させる薬を避けて適切な治療と救急対応の計画を立てることができます。指定難病の申請には、所定の診断基準に沿って専門医が臨床診断書を作成します。

  • 詳細な病歴聴取・発作の記録: 発症年齢、発熱や入浴との関係、発作の持続時間、片側性か、左右の交代があるかを確認します。家族が撮影した発作の動画は診断に非常に役立ちます。
  • 脳波検査(EEG): 乳児期は正常のことが多いですが、1〜2歳以降に全般性棘徐波、多棘徐波、焦点性・多焦点性の異常や光突発反応が現れます。背景活動の徐波化も伴います。所見が経時的に変わるため、繰り返し検査します。
  • 頭部MRI: 通常は正常か、非特異的な萎縮を示す程度です。脳形成異常など他の原因を除外するのが主な目的です。経過中に海馬硬化が出現する例もあります。
  • SCN1A遺伝子検査: 約8割で病的変異が見つかり、診断を強く支持します。ただし、変異が見つからなくても臨床的にドラベ症候群と診断されることがあり、変異の有無だけで診断が決まるわけではありません。
  • 遺伝子パネル・網羅的解析: SCN1A陰性例では、SCN1B、GABRA1、STXBP1、PCDH19など、てんかん関連遺伝子を幅広く調べることがあります。大きな欠失はMLPA法やアレイCGH法で検出します。
  • 血液・代謝検査: 電解質、血糖、アンモニア、乳酸などを調べ、代謝性疾患や感染に伴う症候性発作を除外します。抗てんかん薬の血中濃度、肝機能、血球数のモニタリングにも用います。
  • 髄液検査(必要時): 発熱と意識障害を伴う場合は、髄膜炎や脳炎を除外するために行うことがあります。
  • 発達・心理評価: 発達検査や知能検査、行動評価を定期的に行い、療育・教育的支援の計画や重症度の判定に役立てます。
  • 指定難病の診断基準: 乳児期の発熱関連の発作で発症すること、多様な発作型と難治性、発症後の発達の遅れなどを組み合わせて判定します。重症度は発作頻度や日常生活の障害の程度で評価します。

ドラベ症候群と鑑別すべき疾患

  • 単純型・複雑型熱性けいれん: 多くは生後6か月以降に起こり、短時間で終わり発達も正常です。1歳未満での遷延性・片側性の発作の反復や、発熱のない発作はドラベ症候群を疑う所見です。
  • 熱性けいれんプラス(GEFS+): 同じSCN1A関連スペクトラムに含まれますが、発作は比較的軽く、多くは発達が保たれ、家族内に類似の症状を持つ人がいることが多い点が異なります。
  • PCDH19関連症候群: 主に女性に発症し、発熱で誘発される群発発作という似た臨床像を示しますが、発作が群発しやすく、遺伝子検査で区別されます。
  • ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(ドーゼ症候群): 発症は1歳以降が多く、ミオクロニー脱力発作が中心で、乳児期の発熱時の遷延性片側けいれんがみられない点で区別されます。
  • 痙攣重積型(二相性)急性脳症: 発熱時の重積で始まり、数日後に発作が群発して意識障害が悪化する急性疾患です。数日後のMRI拡散強調像で特徴的な所見(bright tree appearance)を示します。発症前の発達や経過から区別しますが、ドラベ症候群の経過中に合併することもあるため注意が必要です。
  • レノックス・ガストー症候群・代謝性/ミトコンドリア病によるてんかん: 脳波上の遅棘徐波や睡眠中の強直発作、代謝検査・画像所見の異常などで区別されますが、経過中に臨床像が重なることがあり、慎重な評価を要します。

ドラベ症候群の治療

現時点で根本的な治療法はなく、治療の目標は重積状態・長い発作を防ぎ、発作の頻度を減らし、副作用を抑えつつ発達と生活の質を守ることです。発作を完全になくすことは難しいことが多いため、「発作ゼロ」にこだわりすぎて多くの薬を重ねるのではなく、長く続く発作の予防と生活全体のバランスを重視します。薬物療法では、バルプロ酸やクロバザムを基本とし、効果が不十分な場合はスチリペントールやフェンフルラミンなど本症候群で承認された薬を組み合わせます。一方、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン(長期使用)などのナトリウムチャネル遮断薬は発作を悪化させることがあるため、原則として避けます。並行して、誘因の回避、家庭での救急対応計画(レスキュー薬の使い方と救急要請の基準)、療育・リハビリテーション、行動・睡眠への支援を組み合わせた包括的なケアを、てんかん専門医を中心とした多職種チームで行います。薬の選択や変更は効果と副作用のバランスを踏まえ、必ず主治医と相談して決めてください。

  • バルプロ酸: 第一選択として用いられることが多い基本薬です。肝機能障害、高アンモニア血症、血小板減少、膵炎などに注意し、定期的に血液検査を行います。
  • クロバザム(ベンゾジアゼピン系): バルプロ酸と併用されることが多い薬です。眠気、よだれ、気道分泌の増加、耐性(効果の減弱)に注意が必要です。
  • スチリペントール: ドラベ症候群に対して承認され、クロバザムやバルプロ酸と併用します。肝臓の薬物代謝酵素を阻害するため併用薬の血中濃度が上がりやすく、眠気や食欲低下・体重減少が出やすいので、用量調整が重要です。
  • フェンフルラミン: セロトニン系に作用する薬で、ドラベ症候群の発作に対して日本でも承認されています。心臓弁膜症や肺高血圧症のリスクがあるため、投与前と投与中に定期的な心エコー検査を受けることが求められます。
  • 臭化カリウム・トピラマートなど: 臭化カリウムは日本で全身けいれん発作に用いられてきた薬で、本症候群で有効との報告があります。トピラマートやレベチラセタムなども補助的に使われますが、効果には個人差があります。
  • レスキュー薬・救急対応計画: 長く続く発作に備え、ミダゾラム口腔用液やジアゼパム坐剤などを、家庭・園・学校で使えるよう準備します。「何分で使うか」「いつ救急車を呼ぶか」を主治医と書面で決めておきます。
  • ケトン食療法: 糖質を厳しく制限した食事療法で、薬の効きにくい例で発作の減少が報告されています。栄養士を含む専門チームの管理下で行います。
  • 迷走神経刺激療法(VNS): 薬で十分に抑えられない発作に対する緩和的な外科治療の一つです。切除などの根治的てんかん外科手術は、通常は適応になりません。
  • リハビリテーション・療育・研究中の治療: 理学療法、作業療法、言語療法、行動支援、装具などで発達と運動機能を支えます。SCN1Aの発現を高める核酸医薬や遺伝子治療は臨床試験などの研究段階で、カンナビジオール製剤は日本では未承認です(執筆時点)。

ドラベ症候群の予後・長期フォロー

発作は成人期まで続くことが多いものの、学童期以降は重積状態や発熱時の発作が減る傾向にあります。成人期には主に睡眠中の強直間代発作が残る例が多くみられます。知的障害は多くの例で中等度〜重度となり、成人後も何らかの支援や介護を必要とすることがほとんどです。生命予後については、SUDEP、てんかん重積、急性脳症、事故などにより、一般人口や他のてんかんに比べて死亡率が高いことが知られており、小児期の死亡率は数%〜十数%とする報告があります。ただし、早期診断、悪化させる薬の回避、新しい治療薬の導入、適切な救急対応によって、発作の負担や生活の質は改善しつつあります。予後には個人差が大きく、本人なりのペースで成長を続ける子どもも多くいます。

長期フォローアップでは、発作の状況、薬の血中濃度と副作用(肝機能、血球数、体重・栄養、フェンフルラミン使用時の心エコー)、発達・行動、睡眠、歩行・姿勢(かがみ歩行、側弯)を定期的に評価します。思春期以降は、小児科から成人診療科(脳神経内科、精神科など)への移行期医療が重要な課題です。てんかん診療拠点病院などと連携しながら、成人後も継続して診療を受けられる体制を早めに整えておきます。成人期の生活の場(グループホーム、施設など)や意思決定支援についても、家族と支援者で計画的に話し合っておくことが望まれます。

ドラベ症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

発作の誘因をできる範囲で避けることが基本です。具体的には、①発熱時は医師と相談のうえ早めに解熱・冷却を行う、②入浴はぬるめの湯で短時間にし、必ず大人が付き添う、③暑い環境や激しい運動による体温上昇に注意する、④点滅光や縞模様への過敏があれば遮光眼鏡などで対処する、⑤睡眠リズムを整える、といった工夫が勧められます。予防接種は発症の原因ではなく、受けることが推奨されます。接種後の発熱で発作が起こることはあるため、解熱やレスキュー薬の準備について事前に主治医と相談しておきます。感染症を予防することも発作を減らすことにつながります。睡眠中の発作に気づけるよう、見守りの方法(同室での就寝、見守り機器など)を家族の負担も考えて検討します。水遊び・プールは必ず大人がそばで見守り、転倒が多い場合は保護帽の使用も考えます。保育所、幼稚園、学校には、発作時の対応とレスキュー薬の使い方を記した文書を共有します。遺伝については、多くは新生変異のため次の子どもで再発する確率は低いとされています。ただし、親の体細胞モザイクによる再発例もあるため、きょうだいの計画については臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。

利用できる制度・相談窓口

ドラベ症候群は指定難病(告示番号140)で、診断基準と重症度基準を満たす場合は医療費助成の対象になります。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象にもなります。どちらも申請は住所地の都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行い、指定医の診断書が必要です。てんかんの通院医療は自立支援医療(精神通院医療)の対象にもなりえます。障害の程度に応じて、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳(てんかん)、運動障害がある場合は身体障害者手帳の取得を検討します。さらに、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、20歳以降の障害基礎年金(20歳前傷病による障害)や特別障害者手当、児童発達支援・放課後等デイサービス・短期入所・居宅介護などの障害福祉サービスも利用できます。相談窓口としては、主治医や病院の医療ソーシャルワーカー、各都道府県の難病相談支援センター、市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援事業所、てんかん診療拠点病院、日本てんかん協会(波の会)、ドラベ症候群の患者家族会などがあります。

ドラベ症候群に伴う心のケア・心理社会的支援

ドラベ症候群の家族は、「いつ長い発作が起こるかわからない」という持続的な緊張の中で、夜間の見守り、頻繁な救急受診や入院、行動面の特性への対応を続けています。そのため、慢性的な睡眠不足や疲労、不安、抑うつ、燃え尽き、社会的孤立に陥りやすいことが知られています。SUDEPへの不安や、診断までの間に「熱性けいれん」と言われ続けたことへのやりきれなさ、予防接種や遺伝をめぐる自責感を抱える保護者も少なくありません。きょうだいが寂しさや我慢を抱えやすい点にも配慮が必要です。本人も年齢が上がるにつれて、集団生活での困難や制限の多い生活からストレスを感じ、不安や情緒の不安定さを示すことがあります。こうした負担は「頑張りが足りない」ためではなく、疾患に伴う自然な反応です。短期入所などのレスパイトの活用、家族会での経験の共有、主治医・医療ソーシャルワーカー・臨床心理士・精神科への相談を、ためらわずに早めに行うことが大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

ドラベ症候群の受診の目安

  • けいれんが5分以上続く場合や、主治医と決めた時間を過ぎてもレスキュー薬で止まらない場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。
  • 発作が止まった後も意識が戻らない、呼吸が苦しそう、顔色が悪い状態が続く場合は、すぐに救急受診してください。
  • 発熱時に発作が繰り返し起こる場合や、ぼんやりした状態が長く続く・反応が乏しい場合は、重積状態や急性脳症の可能性があるため、急いで受診してください。
  • 乳児が1歳未満で発熱時に長いけいれん(15分以上)や片側だけのけいれんを繰り返した場合は、小児神経専門医への受診を相談してください。
  • 発作の頻度や型が明らかに変わった、歩き方やできていたことが急に悪化した、食欲低下・体重減少・強い眠気が続く場合は、早めに主治医を受診してください。

ドラベ症候群についてのよくある質問

Q. 予防接種が原因でドラベ症候群になったのでしょうか?

A. いいえ。ドラベ症候群の多くは生まれつきのSCN1A遺伝子変異が原因で、予防接種が病気を引き起こすわけではないことが研究で示されています。接種後の発熱が最初の発作のきっかけになることはありますが、感染症にかかったときのほうが危険が大きいため、主治医と発熱時の対策を相談したうえで接種を続けることが勧められます。

Q. 発作は大人になれば治りますか?

A. 成長とともに重積状態や発熱時の発作は減る傾向がありますが、多くの方で睡眠中の発作などが成人期まで続きます。治療の目標は、長い発作を防ぎ、生活の質を保つことに置かれます。

Q. 次の子どもにも遺伝しますか?

A. 大部分は両親にない新生変異のため、再発の確率は一般に低いとされています。ただし、親がモザイクとして変異を持っている場合もあるため、遺伝カウンセリングで個別に相談することをお勧めします。

Q. 他の病院で処方されてはいけない薬はありますか?

A. カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインなどのナトリウムチャネル遮断作用を持つ抗てんかん薬は、発作を悪化させることがあります。救急外来や他の医療機関を受診するときは、診断名と現在の薬、避けるべき薬を記したメモや緊急時の対応シートを持参すると安心です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。