ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん

Epilepsy with Myoclonic-Atonic Seizures

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(Epilepsy with Myoclonic-Atonic Seizures)|ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(EMAtS)は、主に1〜5歳ごろの幼児に発症する小児てんかん症候群です。瞬間的な筋のピクつき(ミオクロニー)に続いて全身の力が抜け、突然倒れるミオクロニー脱力発作が特徴です。発病初期は発作が非常に頻回で、転倒によるけがや発達・学習への影響が問題になります。ただし半数前後は数年以内に発作が止まるとされています。早期の正確な診断と適切な治療選択が、経過を大きく左右します。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの要点

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんは、主に1〜5歳ごろに発症し、一瞬のミオクロニー収縮の直後に脱力して突然倒れる発作を特徴とする小児てんかん症候群です。発達性てんかん性脳症に分類され、全般強直間代発作や欠神発作なども伴うことが多く、日本では指定難病の対象です。

別名・略称Doose症候群、ミオクロニー失立発作てんかん、ミオクロニー・アスタティックてんかん、MAE、EMAtS、myoclonic-astatic epilepsy
分野小児神経・てんかん
好発年齢主に1〜5歳ごろの幼児
主な症状ミオクロニー脱力発作(一瞬のピクつきの後に脱力して転倒)、全般強直間代発作、欠神発作など
主な検査脳波(全般性の棘徐波・多棘徐波)
頭部MRI通常は異常を認めない
分類ILAE 2022年分類で小児期発症の発達性てんかん性脳症(DEE)
受診する主な診療科小児神経科

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ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんとは

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(Epilepsy with Myoclonic-Atonic Seizures:EMAtS)は、発症前の発達がおおむね正常な幼児に、ミオクロニー脱力発作を中核とする多彩な全般発作が出現する症候群です。ミオクロニー脱力発作とは、四肢や体幹の一瞬のミオクロニー収縮の直後に、短い脱力(アトニー)が続く発作です。その結果、頭部がガクッと前屈する、膝が折れる、その場に崩れるように倒れるといった症状が数秒以内に起こります。ほかに、全般強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作を伴うことが多いとされます。また、ぼんやりした状態に細かなミオクロニーが重なる非けいれん性てんかん重積状態を呈することもあります。頭部MRIでは通常異常を認めません。脳波では全般性の棘徐波・多棘徐波がみられます。国際抗てんかん連盟(ILAE)の2022年分類では、小児期発症の発達性てんかん性脳症(DEE)に位置づけられています。てんかん活動そのものが一時的または持続的に発達へ影響しうる疾患と考えられています。

歴史的には、1970年代にドイツの小児神経科医Hermann Dooseが体系的に記載しました。このため「Doose症候群」、あるいは「ミオクロニー失立発作てんかん(myoclonic-astatic epilepsy:MAE)」と呼ばれてきました。「失立(astatic)」は立位を保てず倒れる現象を指しますが、発作症状を正確に表す用語として「ミオクロニー脱力(myoclonic-atonic)」が採用されました。その後、症候群名も「ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん」に改められています。かつては素因性(特発性)全般てんかんの一型とみなされていました。しかし経過中に脳症様の経過をたどる例があることから、現在のDEEという位置づけに至っています。ILAEの診断基準では、ミオクロニー脱力発作の存在が必須とされます。そのうえで、発症前の発達、脳波所見、発作型の組み合わせから、レノックス・ガストー症候群などと区別します。日本では指定難病(告示番号143)に指定されています。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの疫学・患者数

小児期に発症するてんかんの約1〜2%を占めると報告されており、まれな症候群です。日本の正確な患者数は明らかではなく、指定難病の受給者数も限られています。発症年齢は生後6か月〜6歳ごろで、多くは2〜4歳前後に集中します。男児に多く、男女比はおおむね2:1前後との報告が多くみられます。患者の家族にてんかんや熱性けいれんの既往をもつ人が比較的多いことが知られています。これが遺伝的素因の関与を示唆する根拠のひとつとなっています。発症前の運動・言語発達は正常またはほぼ正常であることが多いです。ただし軽度の発達の遅れがすでにある例も含まれます。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの原因・病態生理

病因の中心は遺伝的素因と考えられていますが、単一の原因遺伝子で説明できるのは一部です。多くの例では、複数の遺伝要因が関与する多因子的な素因が想定されています。原因遺伝子としては、GABAトランスポーターをコードするSLC6A1の報告が比較的多くあります。ほかにSCN1A、SCN2A、SCN1B、STX1B、CHD2、SYNGAP1、NEXMIFなどの病的バリアントをもつ例が報告されています。これらの多くは新生(de novo)変異です。一方、家族内で熱性けいれんやてんかんが集積する「熱性けいれんプラスを伴う全般てんかん(GEFS+)」家系の一員として発症する例もあります。臨床上とくに重要なのは、グルコーストランスポーター1(GLUT1)欠損症(SLC2A1遺伝子)が同様の発作像を呈しうることです。GLUT1欠損症ではケトン食療法が病態に直結する治療となるため、見逃さないことが重要です。

発症機序の詳細は未解明です。上記の遺伝子群は、シナプス伝達(GABAの再取り込み、神経伝達物質の放出)、神経細胞膜のイオンチャネル(電位依存性ナトリウムチャネル)、クロマチン制御などに関わります。これらの異常によって大脳皮質と視床を結ぶ神経回路の興奮・抑制バランスが崩れ、全般性の同期した放電が生じやすくなると考えられています。ミオクロニー成分は棘波に一致する短い筋収縮です。脱力成分は、それに続く徐波の時期に一致した筋活動の途絶です。表面筋電図を同時記録すると、筋放電に続く無筋電期間として確認できます。幼児期の発達途上の脳は興奮性が高く、こうした放電が非常に頻回になりやすい時期です。この時期に頻回の発作や非けいれん性重積が続くと、覚醒度・注意・言語処理が障害されます。その結果、一時的な発達停滞や退行をきたしうると考えられています。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの症状

  • ミオクロニー脱力発作: 一瞬のピクつきの直後に力が抜け、頭がガクッと落ちる、膝が折れて座り込む、前や後ろに倒れるといった発作です。本症の診断に必須の発作型で、1日に何十回も起こることがあります。
  • 脱力発作(失立発作): 前触れなく全身または頭部の筋緊張が失われ、崩れるように倒れます。顔面・頭部の外傷の大きな原因になります。
  • ミオクロニー発作: 両肩や両腕が一瞬ビクッとする発作で、意識はほぼ保たれます。物を落としたり、こぼしたりする形で気づかれることがあります。
  • 全般強直間代発作: 全身が硬直したあと、がくがくと律動的にけいれんする発作です。初発発作となることが多く、発熱時に起こり熱性けいれんと考えられていた例もあります。
  • 欠神発作: 数秒〜十数秒、動作が止まってぼんやりする発作です。まぶたや口元の細かなピクつきを伴うことがあります。
  • 非けいれん性てんかん重積状態: 数時間〜数日にわたり反応が鈍く、よだれ、ふらつき、顔や手足の細かなピクつきが続く状態です。発達退行や長期予後不良と関連するため、早期の対応が必要です。
  • 強直発作: 主に睡眠中に体幹や四肢が数秒間こわばる発作です。経過中に目立つ場合はレノックス・ガストー症候群との鑑別や予後評価で注意が必要です。
  • 転倒による外傷: 頻回の転倒で、前額・口唇・歯・顎などのけがを繰り返します。保護帽の使用が検討されます。
  • 発達の停滞・退行: 発作が頻回な時期に、言葉の減少、理解力の低下、行動の幼さが目立つことがあります。発作の改善とともに回復する例も少なくありません。
  • 運動失調・ふらつき: 活動期にはふらつきや歩行の不安定さ、不器用さがみられることがあります。抗てんかん発作薬の副作用との区別も必要です。
  • 行動・注意の問題: 多動、注意の持続困難、情緒の不安定さが伴うことがあります。発作が止まった後も学習面の支援が必要になる場合があります。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの経過と合併症

典型的には、発達が正常だった幼児に、発熱の有無にかかわらず全般強直間代発作が初めて起こります。その後数週〜数か月のうちに、ミオクロニー脱力発作、脱力発作、欠神発作などが急速に増えていきます(活動期)。活動期には1日数十回以上の発作や非けいれん性重積をきたすことがあり、発達の停滞や退行がみられやすい時期です。多くの例では、発症から1〜3年程度で発作が軽快に向かうとされます。治療反応が良好な例では、発作消失後に薬物を減量・中止できることもあります。一方で一部の例は難治に経過し、睡眠中の強直発作や遅い棘徐波が出現します。こうした例では、レノックス・ガストー症候群に類似した経過をとり、知的障害が残ることがあります。

合併症として最も頻度が高いのは、転倒による頭部・顔面外傷、歯牙損傷、骨折です。けいれん性・非けいれん性のてんかん重積状態は、意識障害や誤嚥性肺炎の原因になります。また認知機能への影響をきたすため、注意すべき合併症です。経過によっては、知的障害、注意欠如・多動症(ADHD)様の症状、学習障害、行動障害が残ることがあります。治療に伴う問題も合併症として扱われます。抗てんかん発作薬では、眠気、食欲低下、肝機能障害、高アンモニア血症、行動変化などがみられることがあります。ケトン食療法では、低血糖、アシドーシス、便秘、腎結石、成長への影響、脂質異常などがありえます。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの診断・診断基準

診断は、発作症状の詳細な聴取と脳波所見を軸に、他の症候群・疾患を除外して行います。家族がスマートフォンで撮影した発作の動画は非常に有用です。ミオクロニー脱力発作は1秒前後と短く、単なる脱力発作やつまずきとの区別が難しいためです。確定には、ビデオ脳波同時記録(可能なら表面筋電図を併用)で、全般性の棘徐波に一致したミオクロニーとそれに続く脱力をとらえることが理想的です。頭部MRIで構造異常がないことを確認し、代謝疾患や進行性疾患を除外します。ILAE 2022年基準では、ミオクロニー脱力発作の存在と全般性棘徐波が必須とされます。さらに、発症前の発達、他の発作型、強直発作の目立ち方などを総合して判断します。指定難病の申請は、日本の診断基準に基づき、てんかん診療に精通した医師が行います。

  • ビデオ脳波同時記録(表面筋電図併用): 発作時に全般性棘徐波・多棘徐波に一致した短い筋放電と、その後の筋活動の消失(脱力)を確認します。診断確定に最も重要な検査です。
  • 発作間欠期脳波: 全般性の2〜6Hz程度の棘徐波・多棘徐波を認め、背景活動は初期にはおおむね保たれます。頭頂部優位の律動的なθ波がみられることも特徴とされます。持続的な限局性異常が目立つ場合は他疾患を考えます。
  • 睡眠時脳波: 睡眠中の強直発作や遅い棘徐波・速波律動の有無を評価します。レノックス・ガストー症候群との鑑別や予後予測に役立ちます。
  • 頭部MRI: 本症では通常正常です。皮質形成異常などの構造病変があれば、別の病態を考えます。
  • 髄液糖検査(髄液/血糖比): GLUT1欠損症の除外に重要です。空腹時に血糖と同時に測定し、髄液糖が低値でないかを確認します。
  • 血液・代謝検査: 血算、肝腎機能、アンモニア、乳酸、アミノ酸・有機酸分析などで、代謝性疾患や薬剤の安全性を確認します。ケトン食療法の前評価にも用います。
  • 遺伝学的検査: てんかん関連遺伝子パネルなどで、SLC6A1、SCN1A、SLC2A1、CHD2などの病的バリアントを調べます。治療選択や遺伝カウンセリングに有用ですが、陰性でも本症は否定されません。
  • 発達・神経心理評価: 発達検査・知能検査で、発症時と経過中の認知・言語・行動の状態を評価します。療育や就学支援の計画に活用します。
  • 診断基準(ILAE 2022/指定難病診断基準): ミオクロニー脱力発作と全般性棘徐波を必須とし、発症年齢、発症前発達、除外項目を組み合わせて判定します。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんと鑑別すべき疾患

  • レノックス・ガストー症候群: 睡眠中の強直発作、遅棘徐波(2.5Hz未満)、睡眠時速波律動が主体で、発症前から発達の遅れや脳の器質病変を伴うことが多い点で区別されます。
  • ドラベ症候群: 1歳前に発熱・入浴で誘発される長い片側性・全般性けいれんで始まり、脱力発作は目立たず、SCN1A変異の頻度が高い点が異なります。
  • ミオクロニー欠神てんかん: 欠神発作中に両上肢の律動的なミオクロニーと挙上がみられることが主体で、転倒を伴う脱力は中心的ではありません。
  • GLUT1欠損症: 早期発症の欠神発作、ミオクロニー脱力発作、空腹時に悪化する症状、運動異常を伴い、髄液糖低値とSLC2A1変異で診断されます。
  • 進行性ミオクローヌスてんかん(神経セロイドリポフスチン症2型など): 発作に加えて、運動・認知機能が持続的に進行性に低下し、網膜症や小脳症状などを伴う点で区別されます。
  • 非定型良性部分てんかん(偽性レノックス症候群): 脱力・陰性ミオクローヌスで転倒しますが、脳波では中心側頭部の焦点性棘波と睡眠時の持続性棘徐波が特徴です。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの治療

治療の目標は、活動期の頻回発作と非けいれん性重積をできるだけ早く抑えることです。それによって発達への影響を最小限にし、外傷を防ぎます。全般発作に有効な抗てんかん発作薬を中心に、早い段階からケトン食療法を検討する方針が国内外で広く用いられています。本症では、一部の薬剤が発作を悪化させうることが知られています。焦点てんかんに用いるカルバマゼピン、フェニトインなどのナトリウムチャネル遮断薬やビガバトリンがその例です。このため、薬剤選択にはてんかん専門医の判断が欠かせません。どの薬剤・治療を選ぶかは、発作型、年齢、副作用、生活状況によって個別に決まります。必ず主治医・専門医と相談してください。

  • バルプロ酸: ミオクロニー・脱力・欠神・強直間代発作に幅広く有効とされ、第一選択として用いられることが多い薬剤です。肝機能障害、高アンモニア血症、膵炎などへの定期的な監視が必要です。
  • エトスクシミド: 欠神発作やミオクロニー脱力発作への有効性が報告されています。バルプロ酸との併用で用いられることがあります。
  • その他の抗てんかん発作薬: レベチラセタム、クロバザムなどのベンゾジアゼピン系、トピラマート、ラモトリギンなどが選択肢になります。ラモトリギンはミオクロニー発作を悪化させる例があるため、慎重に使用されます。
  • ケトン食療法(修正アトキンス食を含む): 高脂肪・低糖質の食事で脳のエネルギー源をケトン体に切り替える治療です。本症では有効率が高いと報告され、薬剤で効果不十分な場合の早期選択肢とされています。導入と管理は、医師・管理栄養士のもとで行います。
  • ステロイド・ACTH療法: 非けいれん性てんかん重積状態や、活動期の難治発作に対して用いられることがあります。感染症、高血圧、電解質異常などの副作用管理のため、入院で行われることが一般的です。
  • 重積・群発時の救急治療: 長引く発作には、ベンゾジアゼピン系薬の静注や、医師の指示に基づく家庭での頬粘膜投与(ミダゾラム口腔用液)などを用います。あらかじめ発作時の対応計画を主治医と決めておくことが大切です。
  • 悪化させうる薬剤の回避: カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、ビガバトリンなどは発作を増悪させることがあり、原則として避けられます。他院受診時にも診断名を伝えることが重要です。
  • 難治例への追加治療: 複数の治療で抑制困難な例では、ルフィナミドなど他の薬剤の試用が検討されます。施設によっては迷走神経刺激療法や脳梁離断術などの外科的治療が検討されることもあります。適応は専門施設で慎重に判断されます。
  • 療育・リハビリテーション・教育支援: 言語療法、作業療法、発達支援を並行して行い、認知・行動面の後遺症を軽減します。保育園・学校と連携した個別の支援計画も重要です。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの予後・長期フォロー

予後は症例によって大きく異なります。報告によって幅はありますが、半数から3分の2程度で発作が消失し、正常またはほぼ正常の認知機能を保つとされています。発作消失は発症から数年以内に得られることが多く、その後に薬剤を中止できる例もあります。一方、予後不良と関連する因子として次のようなものが挙げられています。非けいれん性てんかん重積状態の反復・遷延、睡眠中の強直発作の出現、発症早期の頻回の全般強直間代発作、背景脳波の徐波化です。こうした例では中等度以上の知的障害や行動障害が残ることがあります。生命予後は多くの場合良好です。ただし難治例では、てんかん重積や、てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP)のリスクにも留意が必要です。

長期フォローアップは、小児神経科・てんかん専門医による定期受診が基本です。発作の頻度・型の変化、脳波、薬物血中濃度、血液検査(肝機能・血算・アンモニアなど)、成長を確認します。ケトン食療法中は、体重・身長、尿検査、脂質、腎結石の有無なども評価します。発作が2年以上消失した場合などには、脳波所見を参考に減薬を検討することがあります。ただし判断は必ず主治医と行います。発達・学習面の評価は就学前後や思春期などの節目に行い、教育的支援につなげます。成人期に向けては、成人てんかん診療への移行(トランジション)や、自動車運転・就労などの課題についても計画的に準備します。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

活動期は転倒発作が頻回なため、保護帽(ヘッドギア)の使用、家具の角の保護、床のクッション材などで外傷を予防します。入浴は大人が付き添い、浅い湯量にするかシャワーを中心にします。プールや水辺の活動は必ず監視下で行いましょう。睡眠不足、発熱、服薬忘れは発作を誘発しやすいため、規則正しい生活と確実な服薬を心がけます。勝手に薬を中断すると重積を招くおそれがあります。ケトン食療法中は、市販の菓子・飲料・薬(シロップ剤など)に含まれる糖質にも注意し、管理栄養士と連携します。保育園・幼稚園・学校には、発作時の対応方法や緊急薬の使い方を書面で共有しておくと安心です。発作の様子は動画で記録し、日誌とともに受診時に持参すると診療に役立ちます。遺伝子変異が見つかった場合や、次子・きょうだいの再発率が気になる場合は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けられます。多くは新生変異とされますが、家系によっては遺伝の可能性があるため、個別の説明を受けることが大切です。

利用できる制度・相談窓口

本症は指定難病(告示番号143)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、難病医療費助成制度の対象となります。申請は都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行い、難病指定医の診断書(臨床調査個人票)が必要です。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となりうるため、どちらが適切か主治医や窓口に確認してください。てんかんの通院治療は、自立支援医療(精神通院医療)の対象になります。発作や知的障害の程度に応じて、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を取得できる場合があります。手帳により、障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)などの福祉サービスにつながります。養育者は条件により特別児童扶養手当や障害児福祉手当を、20歳以降は障害基礎年金(20歳前傷病)を受けられる可能性があります。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、てんかん診療拠点病院、市区町村の障害福祉・子育て支援担当課があります。また、公益社団法人日本てんかん協会(波の会)などの患者・家族会も利用できます。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんに伴う心のケア・心理社会的支援

幼い子どもが前触れなく何度も倒れる様子を目の当たりにすることは、家族にとって大きな恐怖と緊張を伴います。とくに活動期には、「目を離せない」生活が続きます。夜間の発作への不安、慢性的な睡眠不足、きょうだいへの配慮不足、仕事との両立困難などが重なり、養育者に抑うつ、不安障害、適応障害が生じることも少なくありません。本症に特有の課題もあります。発作が止まる例と難治化する例が混在するため、先の見通しが立ちにくいことです。発達の退行を経験すると、喪失感や自責感が強まることもあります。ヘルメット着用や食事制限(ケトン食)が子ども自身の自己イメージや友人関係に影響する場合もあります。本人が成長するにつれ、学習の遅れや周囲の偏見、将来の運転・就労への不安を抱えることもあります。つらさを感じたときは、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、地域の保健師に早めに相談してください。家族会で同じ経験をもつ人とつながることも支えになります。レスパイト(短期入所など)を活用して養育者が休息をとることも、長期的なケアには欠かせません。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんの受診の目安

  • けいれん発作が5分以上続く、または意識が戻らないうちに発作を繰り返す場合は、救急車を呼んでください。
  • 普段と違ってぼんやりした状態が続き、よだれや顔・手足の細かなピクつきを伴う場合は、非けいれん性重積の可能性があるため速やかに受診してください。
  • 転倒で頭を強く打ち、嘔吐、強い頭痛、意識の変化、手足の動かしにくさがみられる場合は、救急受診が必要です。
  • 幼児が急に頻繁に倒れる、首がガクッと落ちる、ぼーっとする動作を繰り返すようになったら、小児科・小児神経科を受診し、可能なら動画を持参してください。
  • 発作の回数や型が変わった、言葉や理解力が後退した、薬を飲み始めてから強い眠気・食欲低下・黄疸・腹痛が出た場合は、予定より早く主治医に相談してください。
  • ケトン食療法中に、ぐったりする、嘔吐が続く、呼吸が速い、水分がとれないといった症状がある場合は、低血糖やアシドーシスの可能性があるためすぐに受診してください。

ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんについてのよくある質問

Q. 発作はいつか止まりますか?

A. 報告によって幅がありますが、半数から3分の2程度の子どもで、発症から数年以内に発作が止まるとされています。一方で難治に経過する例もあり、非けいれん性重積や強直発作の有無などが予後に関わります。経過の見通しは脳波や治療反応をもとに主治医と継続的に確認してください。

Q. 知的な発達に影響は残りますか?

A. 発作が早期に抑えられた場合、正常またはほぼ正常の発達を保つ子どもも多くいます。ただし活動期が長引いた場合などには、知的障害や注意・行動の問題が残ることがあります。定期的な発達評価と療育・教育支援を並行して行うことが大切です。

Q. ケトン食療法は必ずしなければいけませんか?

A. ケトン食療法は本症で有効性が高いと報告されている治療のひとつです。ただし、全員に必須というわけではありません。家庭の負担や子どもの食習慣、薬の効果などを踏まえて、主治医・管理栄養士と相談しながら導入の是非や時期を決めます。

Q. きょうだいや次の子にも遺伝しますか?

A. 多くの例は新生の遺伝子変化や多因子的な素因によると考えられており、きょうだいの再発率は一般に高くないとされます。ただし家族内にてんかんや熱性けいれんが多い家系や、特定の遺伝子変異が見つかった場合は状況が異なります。そのような場合は、遺伝カウンセリングで個別に相談することをおすすめします。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。