レノックス・ガストー症候群
Lennox-Gastaut Syndrome
レノックス・ガストー症候群(Lennox-Gastaut Syndrome)|レノックス・ガストー症候群(LGS)は、主に幼児期に始まる難治性のてんかん性脳症です。強直発作をはじめとする複数の発作型、特徴的な脳波所見、知的発達の遅れを伴います。発作が抑えにくく、転倒によるけがや発達・行動面の課題が成人期まで続くことが多いため、本人だけでなく家族の生活にも長期にわたって大きな影響を及ぼします。
レノックス・ガストー症候群の要点
レノックス・ガストー症候群(LGS)は、主に1〜8歳の小児期に発症する難治性の発達性てんかん性脳症です。強直発作を含む複数の発作型、脳波の遅棘徐波(2.5Hz以下)、知的障害を特徴とし、発作が続きやすいため長期的な支援が必要で、日本では指定難病(告示番号144)です。
| 別名・略称 | LGS、レンノックス・ガストー症候群、レノックス症候群、レンノックス症候群、Lennox-Gastaut症候群 |
|---|---|
| 分野 | 小児神経・てんかん |
| 好発年齢 | 1〜8歳(多くは3〜5歳ごろ)に発症 |
| 主な症状 | 強直発作、脱力発作、非定型欠神発作などの複数の発作型 |
| 合併しやすい問題 | 知的障害、行動障害(発症時は目立たず経過で明らかになることもある) |
| 主な検査 | 脳波(びまん性遅棘徐波、睡眠中の全般性突発性速波活動) |
| 遺伝形式 | 単一の遺伝形式はなく、原因(構造的・遺伝性・感染後・代謝性など)により異なる |
| 受診する主な診療科 | 小児神経科、神経内科、てんかん科 |
レノックス・ガストー症候群とは
レノックス・ガストー症候群は、小児期(典型的には1〜8歳、多くは3〜5歳ごろ)に発症する発達性てんかん性脳症(developmental and epileptic encephalopathy)の代表的な病型です。特徴は次の三つです。<br>(1)強直発作を必須とする複数の発作型:強直発作、脱力発作、非定型欠神発作など<br>(2)脳波上のびまん性遅棘徐波複合(おおむね2.5Hz以下)と、睡眠中の全般性突発性速波活動(generalized paroxysmal fast activity:GPFA)<br>(3)知的障害や行動障害<br>LGSは単一の病気ではありません。さまざまな原因による脳の障害が、ある年齢で共通の臨床像として表れた「症候群」と理解されています。そのため、原因や重症度、経過は患者さんごとに大きく異なります。
歴史的には、1950年代にLennoxらが「プチマル変異型」として遅棘徐波を伴う小児てんかんを記載しました。1960年代にはGastautらマルセイユ学派が臨床像を体系化し、両者の名を冠して呼ばれるようになりました。2022年の国際抗てんかん連盟(ILAE)の症候群分類では、小児期発症の発達性てんかん性脳症の一つに位置づけられています。診断には、強直発作を含む複数の発作型、脳波所見(遅棘徐波とGPFA)、18歳未満での発症が重視されます。ただし知的障害は発症当初には目立たず、経過の中で明らかになることもあります。原因からは、構造的(脳形成異常、周産期脳障害など)、遺伝性、感染症後、代謝性、原因不明に分けられます。ウエスト症候群(点頭てんかん)から移行する例が少なくないことも知られています。日本では指定難病(告示番号144)に指定されています。
レノックス・ガストー症候群の疫学・患者数
LGSは小児てんかん全体の数%程度を占めるとされます。国内外の報告では概ね1〜4%前後の頻度が示されていますが、研究によって幅があります。日本の正確な患者数は明らかではありません。指定難病の受給者数からも全体像はつかみにくく、成人期の患者を含めると相当数が存在すると考えられています。発症年齢は1〜8歳が多く、3〜5歳ごろが頂点です。まれに思春期以降に発症する例もあります。性別ではやや男児に多いとする報告があります。患者の一部(報告により2〜3割程度)はウエスト症候群など乳児期のてんかん性脳症から移行します。また、それまで発達に大きな問題のなかった子どもに発症する例(いわゆる潜因性・原因不明例)もあります。
レノックス・ガストー症候群の原因・病態生理
原因は多様で、半数以上で何らかの基礎疾患が特定されるとされます。主なものは次のとおりです。<br>・構造的原因:周産期の低酸素性虚血性脳症、脳室周囲白質軟化症、限局性皮質異形成・片側巨脳症・滑脳症などの皮質形成異常、結節性硬化症、脳炎・髄膜炎後遺症、頭部外傷<br>・遺伝的原因:染色体異常(染色体微細欠失・重複など)、単一遺伝子異常。神経細胞の興奮性やシナプス伝達に関わる遺伝子(SCN2A、SCN8A、STXBP1、GABRB3、CHD2、DNM1など)の変異が報告されており、多くは新生突然変異(de novo)で、家族内での遺伝は一般に少ないとされます<br>・代謝性疾患<br>近年は遺伝学的検査の進歩により、以前は原因不明とされた例でも遺伝的原因が見つかることが増えています。
発症機序は完全には解明されていません。現在は、発達途上の脳(とくに前頭葉や視床—皮質回路)に障害や異常な興奮性が加わることで、皮質と視床の間の同期した異常発火ネットワークが形成されると考えられています。遅棘徐波は視床皮質回路の異常な律動、睡眠中のGPFAや強直発作は皮質・脳幹を巻き込む広範な異常発火を反映するとされます。局所的な病変であっても、二次性両側同期により全般性の発作・脳波異常を呈することがあります。このため、焦点性病変の切除で改善する例もあります。頻回の発作とてんかん性放電そのものが、認知機能や行動の発達をさらに妨げます。基礎疾患による発達障害に、てんかん性活動による障害が上乗せされるという「てんかん性脳症」の概念が、本症候群の理解の中心にあります。
レノックス・ガストー症候群の症状
- 強直発作: 全身や体幹・四肢が数秒から数十秒こわばる発作で、LGSの診断に必須です。とくに睡眠中に頻発し、軽微なものは目を見開く、呼吸が乱れるといった程度で見逃されやすいのが特徴です。
- 脱力発作(転倒発作): 瞬間的に全身の筋緊張が失われ、前のめりや尻もちの形で突然倒れます。顔面・頭部・歯の外傷の主な原因となります。
- 非定型欠神発作: 意識がぼんやりと減損する発作です。小児欠神てんかんの欠神発作に比べて始まりと終わりが不明瞭で、持続も長めです。口周りの動きや軽い脱力を伴うことがあります。
- ミオクロニー発作: 手足や体が瞬間的にピクッとする発作です。脱力と組み合わさって転倒につながることもあります。
- 強直間代発作・焦点発作: 全身のけいれん(強直間代発作)や、体の一部から始まる焦点発作を合併することがあります。焦点発作は基礎となる脳病変を示唆することがあります。
- 非けいれん性てんかん重積状態: 非定型欠神や軽微な強直発作が数時間〜数日続き、反応が鈍い、ふらつく、よだれが多いなどの「いつもと違う状態」として現れます。脳波でないと確認できないことがあります。
- 知的障害・発達の停滞や退行: 大部分の患者で中等度から重度の知的障害を認めます。発症後に発達の停滞や、それまでできていたことができなくなる退行がみられることがあります。
- 行動・精神面の問題: 多動、注意の障害、衝動性、こだわり、自閉スペクトラム症様の特性、易刺激性などがしばしばみられ、家庭や学校生活の大きな課題になります。
- 睡眠障害: 夜間の強直発作による睡眠の分断や入眠困難がみられ、日中の眠気や行動の悪化、家族の睡眠不足にもつながります。
- 運動機能障害: 基礎疾患(脳性麻痺など)による麻痺や、加齢に伴う歩行の不安定さ、姿勢の変化がみられることがあります。
- 摂食・嚥下の問題: 重症例や発作の多い時期には、嚥下機能の低下や誤嚥がみられることがあります。抗てんかん薬の影響で食欲が変化することもあります。
レノックス・ガストー症候群の経過と合併症
典型的には、乳幼児期に発作(先行するてんかん性スパズムを含む)が始まり、数か月〜数年かけて複数の発作型と特徴的な脳波所見がそろってLGSの像が完成します。発症初期は発作の頻度が高く、発達の停滞・退行が目立つことが多い時期です。学童期から思春期にかけても大部分の患者で発作は持続します。成人期になると、非定型欠神や脱力発作は減る一方で、睡眠中の強直発作は持続しやすい傾向があります。また脳波上の遅棘徐波が目立たなくなり、焦点性・多焦点性の異常に変化することがあります。そのため、成人期には典型的なLGSと認識されにくくなることがあります。発作が完全に止まる例は少数ですが、治療で頻度や重症度が軽減し、生活の質が改善する例は少なくありません。
合併症として最も問題となるのは、転倒による外傷(頭部外傷、顔面裂傷、歯牙損傷、骨折)です。そのほか、次のような合併症があります。<br>・けいれん性・非けいれん性てんかん重積状態<br>・発作中や嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎<br>・てんかんに関連した突然死(SUDEP)<br>・抗てんかん薬の副作用:眠気、ふらつき、食欲・体重の変化、肝機能障害、血液異常、皮疹など。多剤併用で増えやすい傾向があります<br>・ケトン食療法に伴う腎結石、骨密度の低下<br>・長期臥床・運動制限に伴う側弯、骨粗鬆症<br>・行動障害や精神症状<br>こうした合併症は、本人の生活の質と家族の介護負担を大きく左右します。
レノックス・ガストー症候群の診断・診断基準
診断の基本は、発作の詳しい病歴(家族が撮影した発作の動画は非常に有用です)と、覚醒時および睡眠時の脳波検査です。強直発作を含む複数の発作型があり、脳波で遅棘徐波複合と睡眠中の全般性突発性速波活動が確認されれば、LGSが強く疑われます。強直発作は睡眠中に起こりやすく軽微なことも多いため、ビデオ脳波同時記録による確認が推奨されます。診断がついた後(あるいは並行して)、原因検索としてMRIなどの画像検査、遺伝学的検査、代謝検査を行います。これらは治療方針(外科治療の適応、特定の原因に応じた治療)や遺伝カウンセリングにつながります。指定難病の申請には、難病指定医による診断と、所定の基準(主要症状、脳波所見、重症度)を満たすことが必要です。
- 覚醒時脳波: 背景活動の徐波化と、びまん性の遅棘徐波複合(おおむね1.5〜2.5Hz)を認めます。前頭部で優位なことが多く、LGSの診断の柱となる所見です。
- 睡眠時脳波: ノンレム睡眠中に、10Hz以上の全般性突発性速波活動(GPFA)が反復して出現します。強直発作の脳波相関として診断的価値が高い所見です。
- 長時間ビデオ脳波同時記録: 夜間の軽微な強直発作や非けいれん性重積を、発作症状と脳波変化の対応から確認できます。発作型の正確な把握や、外科治療の評価にも用いられます。
- 頭部MRI: 皮質形成異常、結節性硬化症の皮質結節、周産期脳障害、脳炎後の変化などの構造的原因を検索します。焦点性病変が見つかれば切除術の適応検討につながります。
- 機能画像(FDG-PET、SPECTなど): MRIで明らかでない局所の機能異常を検出し、外科治療の候補例で焦点の推定に用いられることがあります。
- 遺伝学的検査: 染色体マイクロアレイ検査、てんかん関連遺伝子パネル、エクソーム解析などで原因を検索します。結果は予後の推定、治療選択、家族への遺伝カウンセリングに役立ちます。検査の適応と保険適用は主治医と相談が必要です。
- 血液・尿・髄液の代謝検査: アミノ酸・有機酸分析、乳酸・ピルビン酸、髄液糖などにより、治療可能な先天代謝異常(GLUT1欠損症など)の見逃しを防ぎます。
- 発達・心理評価: 発達検査・知能検査や行動評価により、知的障害や行動特性を把握します。療育・教育的支援や福祉制度の利用の根拠となります。
- 診断基準(ILAE分類、指定難病の診断基準): ILAE 2022年分類では、強直発作を含む複数の発作型、遅棘徐波、GPFA、18歳未満での発症などが要件とされます。指定難病の申請では、国の定める診断基準と重症度基準に基づいて判定されます。
レノックス・ガストー症候群と鑑別すべき疾患
- ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(ドーゼ症候群): 脱力・ミオクロニー脱力発作が主体です。発症前の発達は正常のことが多く、強直発作やGPFAは乏しい傾向があり、LGSより予後が比較的良好な例が多い点で区別されます。
- ドラベ症候群: 乳児期の発熱に誘発される長いけいれんで始まり、SCN1A変異を伴うことが多い点で鑑別します。LGSでは発作を悪化させにくい薬剤でも、ドラベ症候群では悪化させる場合があり、鑑別は重要です。
- 睡眠時持続性棘徐波を示すてんかん性脳症(CSWS): 睡眠中に棘徐波がほぼ持続的に出現し、認知・言語の退行を伴います。強直発作やGPFAを主徴としない点が異なります。
- ミオクロニー欠神てんかん: 律動的なミオクロニーを伴う欠神発作が中心で、脳波は3Hz前後の規則的な棘徐波を示す点で鑑別します。
- 非定型良性部分てんかん(偽性LGS): 脱力や非定型欠神様の発作を呈しますが、強直発作を欠き、焦点性の中心・側頭部棘波を背景に持つ点で鑑別します。
- 進行性ミオクローヌスてんかん: ミオクローヌスと進行性の神経退行を特徴とし、代謝・遺伝学的検査や経過で区別します。
レノックス・ガストー症候群の治療
LGSは発作が完全に止まることが少ない難治てんかんです。そのため治療目標は「発作ゼロ」に固執するよりも、けがにつながる転倒発作や重積を減らし、副作用を抑えながら生活の質と発達を最大限に保つことに置かれます。<br>・薬物療法:バルプロ酸を基本に、効果と副作用を見ながら追加薬を組み合わせます。多剤併用による眠気や行動の悪化には注意が必要です。<br>・非薬物療法:薬物で十分な効果が得られない場合は、ケトン食療法、迷走神経刺激療法、脳梁離断術などを早めに検討します。<br>・原因に応じた治療:焦点性病変があれば切除外科、特定の代謝異常には特異的治療を検討します。<br>・注意すべき薬剤:カルバマゼピンなど一部の薬剤は非定型欠神や脱力発作を悪化させうるとされます。ベンゾジアゼピン系薬の静脈投与が強直発作重積を誘発した報告もあり、慎重な使用が求められます。<br>治療はてんかん専門医を中心に、小児科・脳神経外科・栄養・リハビリ・福祉などの多職種で行われます。具体的な薬剤選択は個々の状態により異なるため、主治医と十分に相談してください。
- バルプロ酸: 幅広い発作型に効果が期待され、多くの場合、第一選択として用いられます。肝機能障害、膵炎、血小板減少、体重増加などに注意します。妊娠可能年齢の女性では催奇形性への配慮も必要です。
- ルフィナミド・ラモトリギンなどの併用薬: ルフィナミドは国内でLGSの強直・脱力発作に対する併用療法として承認されています。ラモトリギンもLGSに用いられ、重篤な皮疹を避けるため少量から緩徐に増量します。
- クロバザム・トピラマートなどその他の抗てんかん薬: クロバザム、トピラマート、ゾニサミド、レベチラセタム、ペランパネルなどが状態に応じて併用されます。それぞれ眠気、食欲低下、発汗減少、行動変化などの副作用に注意が必要です。
- 新しい治療薬: フェンフルラミンやカンナビジオールは、海外の臨床試験でLGSの転倒発作を減らす効果が報告されています。国内での承認・適応状況は変化しているため、利用の可否は専門医に確認してください。
- 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)・ステロイド: 発作が急増した時期や重積傾向のある時期に、短期的に用いられることがあります。感染症、高血圧、電解質異常などの副作用管理が必要です。
- ケトン食療法(修正アトキンス食を含む): 高脂肪・低糖質の食事で脳のエネルギー代謝を変化させ、発作を減らす治療です。転倒発作に有効な例が報告されています。医師・管理栄養士の指導下で、低血糖、便秘、腎結石、成長などを監視しながら行います。
- 脳梁離断術: 左右の大脳半球をつなぐ脳梁を切断し、発作の両側への広がりを抑えます。とくに脱力・強直による転倒発作の軽減が期待される緩和的手術です。
- 迷走神経刺激療法(VNS): 胸部に埋め込んだ刺激装置で左迷走神経を定期的に刺激する緩和的治療です。薬剤抵抗性てんかんに対して国内でも保険適用があり、発作頻度の減少が期待されます。
- 切除外科・リハビリテーション・療育: MRI等で焦点性病変が明確な場合は、病変切除で発作が大きく改善する可能性があります。並行して、理学・作業・言語療法、療育、特別支援教育による発達支援を行います。
レノックス・ガストー症候群の予後・長期フォロー
LGSの多くは成人期まで発作が持続します。発作が長期に消失する例は少数とされます。知的障害は大部分の患者にみられ、中等度〜重度で生活全般に支援を要する例が多数を占めます。一般に予後が比較的悪いとされるのは、次のような場合です。<br>・発症年齢が低い<br>・ウエスト症候群からの移行例<br>・明らかな脳の構造異常がある<br>・発作頻度が高い<br>一方、発症前の発達が正常だった例では、比較的良好な経過をとる場合もあります。生命予後は一般人口より悪く、主な要因として重積状態、外傷、誤嚥性肺炎、SUDEPが挙げられます。ただし適切な治療と安全対策、合併症管理によって、多くの患者が家族や地域とともに長い年月を過ごしています。
長期フォローアップでは、定期的な診察と脳波で発作型や脳波の変化を把握し、薬剤を見直します。重複する薬や効果の乏しい薬は整理し、副作用が少なくなるよう調整します。血液検査や薬物血中濃度の測定、成長・栄養・骨の健康の評価、行動・精神面の評価も欠かせません。思春期以降は、小児科から成人診療科(脳神経内科・精神科・てんかんセンターなど)への移行期医療が重要な課題です。治療歴や発作の特徴をまとめた情報提供書を用意し、計画的に移行を進めることが勧められます。成人期には、生活の場(在宅、グループホーム、入所施設)に応じた医療と福祉の連携が必要になります。
レノックス・ガストー症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
転倒発作によるけがを防ぐ対策が最優先です。<br>・保護帽(ヘッドギア)の着用<br>・家具の角へのクッション材の設置、床材の工夫<br>・入浴時の見守りやシャワー浴の活用<br>・プールなど水辺での一対一の監視<br>・夜間の見守り:強直発作は睡眠中に多いため、必要に応じて見守り機器の利用を検討します<br>また、規則正しい睡眠、決められた時間・量での服薬、発熱や睡眠不足など発作の誘因への注意も大切です。発作の様子を動画で記録したり、発作日誌をつけたりすると、診察時の大きな助けになります。重積時の救急薬(坐薬や口腔内投与製剤など)の使い方は、主治医と事前に確認し、学校・園・事業所とも共有しておきましょう。<br>遺伝的原因が見つかった場合や次子を考える場合は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。多くは新生突然変異ですが、原因によって再発率の考え方が異なります。きょうだいへの配慮や、家族が休息をとるためのレスパイトの活用も重要です。
利用できる制度・相談窓口
主に利用できる制度は次のとおりです。<br>・指定難病の医療費助成:LGSは指定難病(告示番号144)で、診断基準と重症度基準を満たせば、所得に応じた自己負担上限額の範囲で医療費の助成を受けられます。<br>・小児慢性特定疾病医療費助成:18歳未満(継続の場合は20歳未満)では対象となりえます。<br>・自立支援医療(精神通院医療):てんかんの通院医療費の自己負担軽減に利用できます。<br>・障害者手帳:知的障害があれば療育手帳、てんかんによる生活の制限に応じて精神障害者保健福祉手帳、運動障害があれば身体障害者手帳の対象となることがあります。<br>・手当・年金:特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当、20歳以降の障害基礎年金(20歳前傷病による障害基礎年金を含む)など。<br>・障害福祉サービス:障害者総合支援法・児童福祉法に基づく児童発達支援、放課後等デイサービス、短期入所(レスパイト)、居宅介護、生活介護、医療的ケア児支援などがあります。<br>相談窓口としては、市区町村の障害福祉・保健担当窓口、保健所、都道府県の難病相談支援センター、医療的ケア児支援センター、てんかん支援拠点病院、医療機関の医療ソーシャルワーカーがあります。患者・家族会として、公益社団法人日本てんかん協会(波の会)なども情報交換の場となります。
レノックス・ガストー症候群に伴う心のケア・心理社会的支援
LGSは、本人と家族の双方に長期の心理的負担をもたらします。<br>・家族の負担:いつ起こるかわからない転倒発作や夜間の発作のため、家族は常に気を張った状態が続きます。慢性的な睡眠不足、不安、抑うつ、燃え尽き(バーンアウト)に陥りやすくなります。診断時には、発達の見通しについて強い喪失感や罪責感を抱くことも少なくありません。<br>・きょうだい・社会生活:きょうだいが寂しさや我慢を抱える、親が就労を続けにくい、周囲の理解が得られず孤立するといった、本疾患に特有の心理社会的課題があります。<br>・本人の負担:不安、易刺激性、行動上の困難を抱えることがあり、それが発作や薬の副作用と関連している場合もあります。<br>つらさは我慢せず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士・公認心理師、精神科医に相談してください。家族会で同じ立場の人とつながることや、レスパイトサービスで休息をとることも、長く介護を続けるための大切な手段です。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
レノックス・ガストー症候群の受診の目安
- けいれん発作が5分以上続く、または意識が戻らないまま発作を繰り返す場合は、処方された救急薬を使用したうえで救急車を呼んでください。
- 転倒で頭を強く打った後に嘔吐、強い眠気、意識の変化、手足の動きの左右差がある場合は、すぐに救急受診してください。
- 発作後に呼吸が苦しそう、顔色が悪い、むせ込みの後に発熱や咳が続くなど、誤嚥性肺炎が疑われる場合は速やかに受診してください。
- 普段より反応が鈍い、ふらつく、よだれが多いなど「いつもと違う状態」が長く続く場合は、非けいれん性重積の可能性があるため早めに主治医に連絡してください。
- 発作の回数や型が明らかに変わった、または新しい薬の開始後に皮疹・発熱・強い眠気・行動の変化が出た場合は、早めに受診してください。
レノックス・ガストー症候群についてのよくある質問
Q. レノックス・ガストー症候群は治りますか?
A. 現在の医療では、発作が完全に消失する例は多くありません。しかし薬物療法、ケトン食療法、外科治療などを組み合わせることで、転倒発作や重積を減らし、生活の質を改善できる例は少なくありません。治療の目標は主治医と相談しながら、現実的に設定していくことが大切です。
Q. 遺伝する病気ですか?次の子どもにも起こりますか?
A. LGSは多様な原因による症候群で、周産期の脳障害など遺伝と関係のない原因も多くあります。遺伝子の変化が原因の場合も多くは新生突然変異で、両親から受け継いだものではないとされます。ただし原因によって再発率の考え方が異なるため、遺伝カウンセリングで個別に相談することをお勧めします。
Q. ヘッドギアは必ず必要ですか?
A. 脱力発作などで突然倒れる発作がある場合、頭部や顔のけがを防ぐ効果が期待できるため、多くの専門医が着用を勧めています。発作の型や頻度、本人の受け入れやすさに合わせて、形状や着用する場面を主治医やリハビリスタッフと相談するとよいでしょう。
Q. 大人になったらどの病院に通えばよいですか?
A. 思春期以降は、小児科から脳神経内科、精神科、てんかんセンターなど成人期の診療科へ移行することが一般的です。治療歴や発作の特徴をまとめた紹介状を準備し、てんかん支援拠点病院や主治医と相談しながら、計画的に移行先を探すことが勧められます。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。