片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群

Hemiconvulsion-Hemiplegia-Epilepsy Syndrome

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群(Hemiconvulsion-Hemiplegia-Epilepsy Syndrome)|片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群(HHE症候群)は、主に4歳未満、特に乳幼児期に、多くは発熱を伴って長く続く片側のけいれん(片側性けいれん重積)が起こり、その直後から反対側の手足の麻痺(片麻痺)が残り、数か月〜数年後に焦点てんかんを発症する症候群です。けいれん重積による脳の傷害が一側の大脳半球に強く生じ、その後の半球萎縮が運動・認知・行動に長く影響します。日本では指定難病(告示番号149)に指定されています。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の要点

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群(HHE症候群)は、乳幼児期に発熱を伴う長い片側けいれんが起こり、その直後から反対側の片麻痺が残り、後に焦点てんかんを発症する症候群です。一側の大脳半球の傷害と萎縮が背景にあり、日本では指定難病(告示番号149)に指定されています。

別名・略称HHE症候群、HHE syndrome、Hemiconvulsion-Hemiplegia-Epilepsy、片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群
分野小児神経・てんかん
好発年齢主に4歳未満の乳幼児期
主な症状片側性けいれん重積、対側の片麻痺、のちの焦点てんかん
片麻痺の特徴トッド麻痺と異なり1週間以上続き、多くは永続する
主な検査頭部MRI(半球萎縮の評価)、脳波
受診する主な診療科小児神経科、神経内科、てんかん専門外来
指定難病告示番号149

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片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群とは

HHE症候群は、①片側性けいれん重積(Hemiconvulsion)、②その直後に生じる対側の片麻痺(Hemiplegia)、③一定の潜伏期を経て出現する焦点てんかん(Epilepsy)の3つの段階を特徴とします。片麻痺は、けいれん後に一時的に生じて24〜48時間程度で消える「トッド麻痺」とは異なり、少なくとも1週間以上続きます。多くは程度の差はあれ永続します。本症は「けいれん後しばらくしてから片麻痺が徐々に出現する」「進行性の神経疾患」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。典型例では、けいれん重積の直後から片麻痺がみられます。本症は変性疾患のように持続的に進行するのではなく、急性期の脳傷害の後遺症として成立します。慢性期の画像でみられる半球萎縮は、急性期の傷害に続く二次的変化と理解されています。

本症は1950年代後半から1960年頃に、フランスのGastautらによってまとまった症候群として報告されました。その後、明らかな原因を特定できない「特発性(idiopathic)HHE」と、頭部外傷・脳血管障害・中枢神経感染症・皮質形成異常などの基礎疾患を伴う「症候性(symptomatic)HHE」に分ける考え方が提唱されています。てんかん発作に至らず片側けいれんと片麻痺のみで経過するものは「片側痙攣・片麻痺症候群(HH症候群)」と呼ばれます。国際抗てんかん連盟(ILAE)の分類では、HHEは特定の電気臨床症候群というより、片側性けいれん重積に続発する構造的病因による焦点てんかんの一型として扱われる傾向にあります。日本では、発熱に伴う長いけいれんの数日後に二度目のけいれんと拡散低下を示す「けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)」が多く、その片側型が本症の急性期像と重なるという見解も報告されています。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の疫学・患者数

HHE症候群はまれな疾患で、日本の正確な患者数は十分に把握されていません。数百人規模と推定されることがありますが、確定的な全国統計はありません。けいれん重積に対する救急治療が普及した結果、先進国では1970年代以降に発生頻度が大きく減ったとされています。発症年齢は大部分が4歳未満で、とくに生後6か月〜2歳前後に多くみられます。年長児での発症はまれです。明らかな性差は確立していません。きっかけとして最も多いのは発熱を伴う感染症で、病原体は特定されないことも少なくありません。てんかん(第3段階)は片側性けいれん重積から多くは1〜3年以内に出現しますが、数か月から十数年後まで幅があります。てんかんを発症しないHH症候群の割合や長期予後の数値は報告によって異なります。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の原因・病態生理

本症の中心にあるのは、長く続く片側性けいれん(典型的には数十分〜数時間以上)そのものによる脳の傷害です。発熱は神経細胞の興奮性を高めます。また、乳幼児の未熟な脳は、けいれんを起こしやすく止まりにくい性質をもちます。重積が続くと、グルタミン酸による興奮毒性、細胞内カルシウムの過剰流入、エネルギー需要と供給の不均衡、ミトコンドリア機能障害などが起こり、細胞性浮腫(細胞毒性浮腫)と神経細胞死に至ります。サイトカインなどによる神経炎症や血液脳関門の破綻も、病態を増幅すると考えられています。ただし、ラスムッセン脳炎のような持続的な自己免疫性脳炎とは区別されます。「感染後の自己免疫反応が主因」とする説明もみられますが、現時点では確立していません。素因として、ナトリウムチャネル遺伝子SCN1Aの病的バリアントをもつ例(ドラベ症候群など)や、血栓傾向をもつ例が報告されています。一部では、先天的な皮質形成異常など、もともとの構造的異常が見つかります。多くの例は散発性で、単一遺伝子による遺伝性疾患ではありません。

けいれんが片側にとどまる理由と、傷害が一側半球に偏る理由は完全には解明されていません。けいれん発射が一側の大脳半球で持続すると、その半球で代謝亢進と脳血流の需給不均衡が起こり、大脳皮質と皮質下白質に広く細胞性浮腫が生じます。MRIの拡散強調像(DWI)では、発症から数日以内に一側半球に広く高信号(拡散低下)がみられ、海馬や視床が含まれることもあります。その後数週間から数か月で浮腫は消え、傷害を受けた半球は萎縮します(半球萎縮)。萎縮した半球ではてんかん原性(発作を生み出す性質)をもつ神経回路が形成され、潜伏期を経て焦点てんかんが発症します。海馬が傷害された例では海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかんに類似した病像を、皮質の広い傷害では多焦点性・半球性のてんかんを呈しやすいとされます。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の症状

  • 片側性けいれん重積: 多くは発熱時に、顔面・上下肢の片側に間代性(リズミカルにがくがくする)けいれんが起こり、30分以上、時に数時間持続します。意識障害を伴い、途中で左右が入れ替わったり全身に広がったりすることもあります。
  • 急性期の意識障害: 重積後も意識の回復が遅れ、ぼんやりした状態や傾眠が続くことがあります。急性脳症や脳炎との区別が必要になります。
  • 対側の片麻痺: けいれんの直後から、けいれんした側と同じ側(傷害半球の反対側)の手足が動かなくなります。急性期には弛緩性で、徐々に痙性麻痺へ移行します。
  • 痙縮・拘縮と巧緻運動障害: 慢性期には上肢優位の痙性片麻痺となり、手指の細かな動きが特に障害されます。尖足や関節の拘縮、患側肢の成長の遅れ(長さ・太さの左右差)がみられることがあります。
  • 顔面麻痺・構音障害: 顔面の下半分の筋力低下や、言葉の不明瞭さを伴うことがあります。優位半球(多くは左)が傷害された場合には言語発達の遅れがみられることがあります。
  • 視野障害(同名半盲): 後頭葉まで傷害が及ぶと、両眼とも同じ側の視野が欠けることがあります。幼児では本人が訴えにくいため、見落としに注意が必要です。
  • 焦点てんかん発作: 潜伏期の後、意識が保たれる、または意識が減損する焦点発作で発症し、両側性強直間代発作に移行することもあります。側頭葉起源の発作が多いとされ、薬剤抵抗性となる例が少なくありません。
  • てんかん重積・発作群発: 慢性期にも発作が群発したり重積化したりすることがあり、救急対応が必要です。
  • 知的障害・発達の遅れ: 傷害の範囲、てんかんのコントロール状況、発症年齢などにより、軽度から重度まで幅広い知的障害がみられます。
  • 行動・情緒の問題: 注意欠如・多動、衝動性、自閉スペクトラム症的特性、情緒不安定などを伴うことがあり、学校・家庭生活に影響します。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の経過と合併症

経過は大きく3期に分けられます。①急性期では、発熱などを契機に片側性けいれん重積が起こり、直後から対側片麻痺と意識障害がみられます。MRIで一側半球の拡散低下を確認できる時期です。②亜急性期〜潜伏期では、片麻痺は数週間から数か月で部分的に改善することが多いものの、程度の差はあれ後遺症として残ります。画像では浮腫が消えて半球萎縮が完成していきます。この時期には発作のない期間が続くことが多く、その長さは多くの例で1〜3年以内ですが、個人差があります。③慢性期(てんかん期)では、焦点てんかんが発症し、しばしば薬剤抵抗性となります。てんかんを発症しない場合はHH症候群として経過します。急性期に重積を早く止められたかどうかが、傷害の広がりとその後の経過に関係すると考えられています。

合併症として、急性期には呼吸抑制・誤嚥性肺炎、循環の変動、脳浮腫に伴う頭蓋内圧亢進、抗けいれん薬や鎮静薬の副作用があります。慢性期には、痙縮による関節拘縮・側弯・股関節の問題、患側肢の成長障害、知的障害、言語障害、行動障害が問題となります。難治てんかんに伴う転倒・外傷、抗てんかん薬の長期服用による眠気・食欲や体重の変化・骨密度低下・肝機能異常なども起こりえます。まれではあるものの、てんかんに関連した突然死(SUDEP)のリスクにも留意します。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の診断・診断基準

診断は、特徴的な臨床経過(乳幼児期の片側性けいれん重積→直後からの対側片麻痺→潜伏期を経た焦点てんかん)と、急性期の一側半球の拡散低下から慢性期の半球萎縮へ至る画像変化を確認することが基本です。日本の指定難病の診断基準も、臨床経過、画像所見、脳波所見を組み合わせ、類似疾患を除外する枠組みで作られています。急性期は救命と重積の停止が最優先で、同時に脳炎・髄膜炎、脳血管障害、代謝性疾患などの治療可能な原因を除外するために、血液・髄液検査、画像検査、脳波検査を進めます。慢性期には、てんかん焦点の評価、外科治療の適応判断、発達評価が中心になります。症候性HHEでは基礎疾患の同定も重要です。

  • 臨床経過の確認: 4歳未満での片側性けいれん重積と、その後1週間以上続く対側片麻痺の存在が中核所見です。その後に焦点てんかんを発症すればHHEと判断し、てんかんがなければHH症候群とします。
  • 頭部MRI(急性期): 発症後数日以内に、拡散強調像で一側半球の皮質・皮質下白質に広い拡散低下(高信号)を認めます。T2強調像/FLAIRでは腫脹と高信号がみられ、海馬・視床が含まれることもあります。主要動脈の支配域に一致しない点が脳梗塞との鑑別に役立ちます。
  • 頭部MRI(慢性期): 数週間から数か月で傷害半球が萎縮し、脳溝・脳室の拡大や白質容量の減少、海馬硬化がみられます。てんかん外科を検討する際の重要な評価項目です。
  • MRA・血管評価: 動脈閉塞、もやもや病、血管奇形などの脳血管障害を除外するために行います。
  • 脳波検査: 急性期には傷害側に高振幅徐波や律動的発作発射がみられ、持続脳波モニタリングは非けいれん性重積の把握に有用です。慢性期には患側の背景活動の低振幅化・徐波化と、焦点性てんかん性放電が記録されます。
  • 髄液検査・感染症検査: 細胞数・蛋白・糖、単純ヘルペスウイルスなどのPCRで、中枢神経感染症(脳炎・髄膜炎)を除外します。本症では髄液所見は正常か軽度の異常にとどまることが多く、ウイルスの検出は本症の診断根拠ではなく鑑別のための検査です。
  • 血液・代謝・凝固検査: 電解質、血糖、乳酸、アンモニア、肝・腎機能、凝固能などで、代謝異常や全身状態を評価します。必要に応じて血栓傾向の評価も行います。
  • 遺伝学的検査: 発作の経過や家族歴からドラベ症候群などが疑われる場合に、SCN1Aなどの検査を検討します。結果は治療薬の選択に影響することがあるため、遺伝カウンセリングと併せて行います。
  • 慢性期の焦点評価・発達評価: ビデオ脳波、FDG-PET、SPECT、神経心理検査などで焦点の局在と機能を評価し、外科適応を判断します。発達検査・知能検査は療育や就学支援の計画に用います。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群と鑑別すべき疾患

  • トッド麻痺: けいれん後の一過性麻痺で、通常24〜48時間以内に回復し、画像上の広範な半球傷害を伴わない点で区別されます。
  • 小児の脳梗塞・もやもや病: けいれんを伴うことがありますが、病変が血管支配域に一致し、MRAで血管の狭窄・閉塞を認める点が異なります。
  • ラスムッセン脳炎: 一側半球の萎縮と片麻痺を呈しますが、数か月〜数年かけて進行し、持続性部分てんかんを伴う慢性炎症性疾患である点が、単回の重積で成立するHHEと異なります。
  • 単純ヘルペス脳炎などの急性脳炎: 発熱・けいれん・局所症状を示しますが、髄液の細胞増多やウイルスPCR陽性、側頭葉優位の病変で区別され、疑われた時点で抗ウイルス薬を早期に開始します。
  • スタージ・ウェーバー症候群: 顔面のポートワイン母斑と軟膜血管腫を伴い、造影MRIでの軟膜増強や皮質石灰化によって区別されます。
  • けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD): 二相性のけいれんと遅れて出現する皮質下白質の拡散低下(bright tree appearance)を特徴とし、片側型ではHHEの急性期と重なるため、経過と画像を総合して判断します。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の治療

治療は急性期と慢性期で目標が異なります。急性期は、片側性けいれん重積を可能な限り早く止め、脳傷害の拡大を防ぐことが最も重要です。救急外来や集中治療室で、呼吸・循環の管理と並行して、日本の小児けいれん重積治療ガイドラインに沿った段階的な薬物治療を行います。脳炎が否定できない段階では抗ウイルス薬の投与も考慮します。急性脳症に準じた治療(ステロイドパルス療法、体温管理など)が行われることもありますが、本症に対する有効性を示す確立した根拠は限られています。慢性期は、てんかん発作の抑制、片麻痺に対するリハビリテーション、知的・行動面の支援を多職種で行います。薬剤抵抗性てんかんでは早期に専門施設でてんかん外科の適応を評価することが大切です。具体的な治療選択は病状により異なるため、主治医・専門医とよく相談してください。

  • けいれん重積の初期治療: ベンゾジアゼピン系薬(ジアゼパム、ミダゾラムなど)の静注・口腔内/鼻腔投与などで速やかな停止を図ります。止まらない場合はホスフェニトイン、フェノバルビタール、レベチラセタムなどを用い、難治例では持続静注麻酔薬による治療を集中治療下で行います。
  • 全身管理・脳保護: 気道確保、人工呼吸、循環管理、体温・血糖・電解質の是正、脳浮腫対策を行います。持続脳波モニタリングで、症状が目立たない非けいれん性の発作活動も管理します。
  • 急性期の補助的治療: 脳炎・急性脳症との区別が難しい段階では、抗ウイルス薬やステロイドパルス療法、免疫グロブリン療法、体温管理療法などが選択されることがあります。いずれも本症での有効性は確立しておらず、施設の方針と病状に応じて個別に判断されます。
  • 抗てんかん薬による長期治療: 焦点てんかんに対し、カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、ラコサミド、ペランパネル、トピラマートなどから、年齢・副作用・併存症を考慮して選択します。SCN1A関連が疑われる場合は、ナトリウムチャネル遮断薬で悪化することがあるため注意が必要です。
  • てんかん外科(半球離断術など): 薬剤抵抗性で、すでに高度な片麻痺がある場合には、機能的半球切除術(半球離断術)によって高い発作消失率が報告されており、早期の適応評価が推奨されています。海馬硬化が主な焦点の場合は側頭葉切除術が検討され、外科適応のない場合には迷走神経刺激療法や脳梁離断術などが選択肢となります。
  • 食事療法: 薬剤抵抗性の場合、ケトン食療法や修正アトキンス食などが専門施設で検討されることがあります。
  • リハビリテーション: 理学療法・作業療法・言語聴覚療法により、運動機能、手の使用、日常生活動作、摂食・コミュニケーションの向上を図ります。装具療法や、症例により健側上肢を制限して患側の使用を促す訓練(CI療法)も行われます。
  • 痙縮の治療: ストレッチ・装具に加え、ボツリヌス療法、内服の抗痙縮薬、整形外科的手術などが、年齢と症状に応じて検討されます。
  • 発達・行動面の支援: 療育、特別支援教育、ADHDなどの併存症に対する薬物療法・環境調整を、小児神経科、児童精神科、学校と連携して行います。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の予後・長期フォロー

生命予後は急性期の重症度に左右されますが、現在の救急・集中治療下では、急性期を乗り越えた多くの患者が成人期まで生活しています。一方、片麻痺は大半で何らかの程度残り、特に手指の巧緻運動障害が長く続きます。てんかんは薬剤抵抗性となる割合が高いとされますが、半球離断術や側頭葉切除術によって発作が消失し、発達・行動面が改善する例も報告されています。知的予後は、傷害半球の範囲と左右(言語優位半球かどうか)、てんかんのコントロール状況などに影響され、通常学級で学ぶ人から重度の知的障害を伴う人まで幅があります。脳の可塑性が高い幼児期に適切なリハビリテーションと発作管理を行うことが、QOLの向上につながると考えられています。

長期フォローアップでは、小児神経科・てんかん専門医による発作・薬物の管理(副作用や血中濃度、肝機能・血球数・骨代謝の確認)、定期的な脳波と必要に応じた画像検査を行います。リハビリテーション科・整形外科による痙縮・拘縮・側弯・脚長差の評価、発達・知能検査による教育的支援の見直しも欠かせません。思春期以降は、自動車運転免許、就労、妊娠・出産時の抗てんかん薬の扱いなどの課題が生じるため、小児科から成人診療科への移行(トランジション)を計画的に進めることが大切です。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、処方通りの規則的な服薬、十分な睡眠、発熱時の早めの対応が発作予防の基本です。家族は発作時の対応(安全確保、横向きに寝かせる、時間を計る、口に物を入れない)を知っておき、主治医から坐薬・口腔用液などの頓用薬が処方されていれば、使用の目安を確認しておきましょう。入浴は一人にさせない、シャワーを中心にする、水泳は監視下で行う、高所を避けるなど、発作時の事故を防ぐ工夫が役立ちます。片麻痺に対しては、家庭でのストレッチや遊びの中で患側の手足を使う工夫、適切な装具・靴の選択が大切です。保育園・幼稚園・学校には病状と発作時の対応を書面で共有し、体育や行事への参加方法を相談しておきます。予防接種は、発熱による発作の可能性も含めて主治医と相談のうえ、原則として計画的に受けることが勧められます。本症は多くが遺伝しない散発例ですが、SCN1Aなどの遺伝子変化が見つかった場合や家族歴がある場合は、遺伝カウンセリングで次子への影響などを相談できます。

利用できる制度・相談窓口

本症は指定難病(告示番号149)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、または軽症でも高額な医療が続く場合(軽症高額該当)には、難病指定医の診断書(臨床調査個人票)をもとに都道府県等へ申請し、医療費助成を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象となる場合があり、どちらを利用するかは医療機関や保健所で相談できます。片麻痺の程度に応じて身体障害者手帳(肢体不自由)、知的障害がある場合は療育手帳、てんかんや精神症状については精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療(精神通院医療)の対象となりえます。子どもでは特別児童扶養手当・障害児福祉手当、障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)、補装具費・日常生活用具の給付、成人後は20歳前傷病による障害基礎年金や障害福祉サービスなどがあります。相談窓口として、主治医・医療ソーシャルワーカー、保健所、市区町村の障害福祉担当窓口、難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援員、てんかんに関する患者・家族会や地域のてんかん支援拠点病院などが利用できます。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群に伴う心のケア・心理社会的支援

元気だった子どもが一度の長いけいれんを境に麻痺とてんかんを抱えることになるため、家族には強い衝撃、自責感(「もっと早く受診していれば」など)、将来への不安が生じやすく、抑うつや不安障害、適応障害につながることがあります。急性期の集中治療の経験がトラウマ的な記憶として残る場合もあります。その後も、いつ起こるかわからない発作への緊張、通院・リハビリ・療育の負担、きょうだいへの配慮、仕事との両立が長期にわたり続きます。本人は成長とともに、麻痺による運動面の制限、学習の困難、発作への不安、周囲との違いに悩み、自己肯定感の低下や不登校、思春期の情緒の問題を抱えることがあります。てんかん自体や一部の抗てんかん薬が気分や行動に影響することもあります。つらさを一人で抱えず、主治医、心理士、医療ソーシャルワーカー、患者・家族会などに早めに相談することが大切です。必要に応じて児童精神科や心療内科の支援を受けることも、本人と家族の生活の質を守ることにつながります。

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片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群の受診の目安

  • けいれんが5分以上続く場合、または意識が戻らないまま発作を繰り返す場合は、ためらわず救急車を要請してください。
  • 発熱時のけいれんが体の片側だけに起こった場合や、けいれん後に手足の片側が動かない・顔がゆがむ状態が続く場合は、短時間で止まっても速やかに救急受診してください。
  • けいれん後に意識の回復が遅い、呼びかけへの反応が乏しい、呼吸が苦しそう、顔色が悪い場合は救急受診が必要です。
  • 診断後に、発作の回数が増えた、発作の型が変わった、群発するようになった場合は、早めに主治医に連絡してください。
  • 薬の飲み忘れや嘔吐で服薬できない場合、発疹・発熱・強い眠気・ふらつきなど薬の副作用が疑われる場合は、主治医に相談してください。
  • 麻痺側の関節が硬くなってきた、歩き方が変わった、学習や行動面で困りごとが増えた場合も、定期受診を待たずに相談してください。

片側痙攣・片麻痺・てんかん症候群についてのよくある質問

Q. 熱性けいれんを起こしたら、HHE症候群になるのでしょうか?

A. 熱性けいれんの大多数は短時間で止まる単純型で、HHE症候群に進むことは極めてまれです。本症は片側の長い重積発作の後に生じるものであり、けいれんが長引くときに早く治療を受けることが最大の予防策と考えられています。

Q. 片麻痺は治りますか?

A. 急性期から数か月の間に一定の回復がみられることが多いものの、多くの場合、手指の細かい動きなどに何らかの障害が残ります。幼児期の脳には可塑性があるため、継続的なリハビリテーションで日常生活動作を大きく改善できる可能性があります。

Q. 薬で発作が止まらない場合、手術は受けられますか?

A. 傷害された半球が発作の起源で、すでに片麻痺がある場合には、半球離断術や側頭葉切除術によって発作が消失する例が多く報告されています。手術の適応や時期、得られる効果とリスクは個々に異なるため、てんかん外科を行う専門施設で詳しい評価を受け、主治医と相談してください。

Q. きょうだいや将来生まれる子どもにも起こりますか?

A. 本症の多くは遺伝しない散発例で、家族内で繰り返し起こることは通常まれです。ただし、SCN1Aなど発作を起こしやすくする遺伝的要因が見つかった場合は、遺伝カウンセリングで個別のリスクを相談することができます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。