徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症
Epileptic Encephalopathy with Continuous Spike-and-Wave During Sleep (CSWS)
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症(Epileptic Encephalopathy with Continuous Spike-and-Wave During Sleep (CSWS))|徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症(CSWS/ECSWS)は、主に幼児期〜学童期の子どもに起こる年齢依存性のてんかん性脳症です。ノンレム睡眠中に脳波上の棘徐波(てんかん性放電)がほぼ途切れなく続く「睡眠時の電気的てんかん重積状態(ESES)」を特徴とします。この状態が続く間に、言語・認知・行動・運動の機能が低下(退行)するため、早く気づいて治療を始めることが大切です。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の要点
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症は、主に幼児期〜学童期に発症し、ノンレム睡眠中に棘徐波がほぼ持続する脳波所見(ESES)を特徴とするてんかん性脳症です。てんかん発作に加え言語・認知・行動の退行がみられ、指定難病(告示番号154)に指定されています。
| 別名・略称 | CSWS、ESES、ECSWS、D/EE-SWAS、睡眠時棘徐波活性化を伴う(発達性)てんかん性脳症、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん、睡眠時電気的てんかん重積状態 |
|---|---|
| 分野 | 小児神経・てんかん |
| 好発年齢 | 主に幼児期〜学童期 |
| 主な症状 | てんかん発作、言語・認知・行動・運動の退行 |
| 主な検査 | 睡眠脳波(ノンレム睡眠中の持続性棘徐波) |
| 病型 | 特発性(素因性)群と症候性(構造的)群に大別 |
| 指定難病 | 告示番号154 |
| 受診する主な診療科 | 小児神経科 |
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症とは
本疾患は、てんかん発作、神経心理学的退行、睡眠時に著明に増強する持続性棘徐波の3つを中核とする電気臨床症候群です。てんかん性脳症とは、てんかん性の異常放電そのものが、もとの病気だけでは説明できない程度の認知・行動障害を引き起こす状態を指します。本疾患はその代表例です。睡眠中、特に徐波睡眠(ノンレム睡眠)の大部分を棘徐波が占める脳波所見はESES(electrical status epilepticus during slow sleep)と呼ばれます。ESESという用語は脳波所見、CSWSという用語は臨床症候群を指して使い分けられることがあります。発作の頻度や重さよりも、睡眠時放電が持続する期間と、それに並行して進む高次脳機能障害が問題となる点が特徴です。わが国では指定難病(告示番号154)に指定されています。
歴史的には、1971年にPatry、Lyagoubi、Tassinariらが「睡眠時に誘発される亜臨床的電気的てんかん重積」として報告したのが始まりです。1989年の国際抗てんかん連盟(ILAE)分類では「徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん」として位置づけられました。2022年のILAE症候群分類では、睡眠時棘徐波活性化を伴う(発達性)てんかん性脳症(D/EE-SWAS)という名称に整理されています。言語の聴覚性失認(言葉が音として聞こえても意味がわからない状態)を主症状とするランドウ・クレフナー症候群(LKS)は、同じスペクトラムの一亜型とみなされています。また、もともと発達に問題のない「特発性(素因性)」群と、脳形成異常や周産期脳障害など構造的病変を背景にもつ「症候性(構造的)」群に大別されます。中心・側頭部棘波を示す自然終息性てんかん(旧称:良性ローランドてんかん)や非定型良性部分てんかんから移行する例も知られています。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の疫学・患者数
まれな疾患で、専門施設の報告では小児てんかん全体の1%未満(0.2〜0.5%程度とする報告が多い)とされています。ただし、終夜睡眠脳波を記録しないと診断できないため、見逃されている例も少なくないと考えられています。日本国内の正確な患者数は把握されておらず、指定難病の受給者数などから少なくとも数百人規模と推定されますが、確定的な統計はありません。最初のてんかん発作は2〜5歳頃に多く、ESESの存在が明らかになるのは発作出現から1〜2年後、おおむね4〜8歳頃が典型的です。ESESは思春期(10代前半〜半ば)までに自然に消失する年齢依存性の経過をたどります。性差はわずかに男児に多いとする報告があります。地域・人種による明らかな差は知られていません。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の原因・病態生理
病因は多様で、大きく構造的病因と遺伝的素因に分けられますが、原因が特定できない例も多くみられます。構造的病因としては、多小脳回などの皮質形成異常、周産期の脳障害(特に視床の損傷)、脳室周囲白質軟化症、水頭症とそのシャント術後などが報告されています。とくに乳幼児期早期の視床病変とESESの関連は、繰り返し指摘されています。遺伝的要因では、NMDA型グルタミン酸受容体のサブユニットをコードするGRIN2Aの病的バリアントが、LKSを含む「てんかん—失語スペクトラム」の一部で見つかることがよく知られています。そのほか、GRIN2Bなど複数の遺伝子異常や、染色体の微細な欠失・重複が報告されています。ただし、いずれも個々の頻度は低く、本症の主要な原因遺伝子として確立したものはGRIN2A以外に多くありません。多くは家族に同じ病気のない孤発例で、遺伝形式は原因によって異なります。GRIN2A関連では常染色体顕性(優性)遺伝を示す家系もありますが、浸透率は不完全です。
発症機序としては、視床—皮質回路の異常が中心的役割を果たすと考えられています。ノンレム睡眠中は、視床と大脳皮質の同期的な活動から睡眠紡錘波や徐波が生じます。この回路の興奮性・抑制性のバランスが崩れると、焦点性のてんかん性放電が両側に広がり、持続性棘徐波になると推定されています。さらに有力なのが、睡眠の「シナプス恒常性仮説」に基づく説明です。健常者の脳は、日中の学習で強まったシナプス結合を徐波睡眠中に整理(ダウンスケーリング)し、記憶の固定と翌日の学習能力の回復を図っています。ESESではこの過程が棘徐波によって妨げられ、本来起こるはずの徐波の夜間減衰がみられないことが報告されています。その結果、日中に獲得した知識や技能が定着せず、新しい学習も困難になると考えられています。また、障害される機能は放電の焦点の部位と対応する傾向があります。前頭部優位では注意・遂行機能・行動の問題、側頭部優位では言語障害(LKS型)が目立ちます。発症年齢と脳の発達段階もこの年齢依存性に関わっていると推測されています。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の症状
- てんかん発作(焦点発作): 片側の顔面や手足がピクつく焦点運動発作や片側間代発作が多く、睡眠中に起こりやすいのが特徴です。ESESが出現する前は発作がまれで、軽症のてんかんと考えられていることもあります。
- 全般発作・非定型欠神発作: ESESの時期には、意識がぼんやりする非定型欠神発作や全般性強直間代発作が増えることがあります。一方、強直発作は通常みられず、レノックス・ガストー症候群との鑑別点になります。
- 陰性ミオクローヌス・脱力発作: 筋緊張が一瞬抜けて、物を落としたり、膝が折れて転倒したりします。手を前に伸ばしたときに細かく途切れる「羽ばたき様」の動きとして観察されることもあります。
- 認知機能の退行: それまでできていた学習や理解の力が低下し、全般的な知的能力の低下や記憶・学習の障害が生じます。数か月単位で進むことが多く、成績低下で気づかれることもあります。
- 言語障害(失語・聴覚性失認): 語彙が減る、言葉が出にくい、話を聞き取って理解できない、といった症状がみられます。側頭部優位の放電では聴覚性失認が前景に立ち、難聴と誤解されることがあります。
- 注意・遂行機能障害: 集中が続かない、計画を立てて物事を進められない、切り替えが難しいなど、前頭葉機能の障害が目立つことがあります。
- 行動・情緒の問題: 多動・衝動性、易刺激性、攻撃性、情緒不安定などが急に強くなり、注意欠如・多動症(ADHD)様の状態を呈します。対人関係の後退から自閉スペクトラム症様にみえる場合もあり、まれに精神病様症状の報告もあります。
- 運動機能の障害: 失調(ふらつき)、動作がぎこちなくなる失行、手先の不器用さの悪化、筋力低下様の症状がみられることがあります。陰性ミオクローヌスが運動障害として現れることもあります。
- 既存の神経症状の悪化: 脳性麻痺などの構造的病変をもつ子どもでは、もともとある片麻痺や発達の遅れが、ESESの時期に一段と悪化することがあります。
- 睡眠の質の低下と日中の疲れやすさ: 睡眠の構造が乱れるため、朝起きにくい、日中に疲れやすい、ぼんやりしているといった様子がみられることがあります。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の経過と合併症
経過は一般に3つの時期に分けて理解されます。第1期(ESES出現前)には、まれな夜間焦点発作などがみられますが、発達はおおむね保たれています。第2期(ESES期)には、発作の増加や新しい発作型の出現とともに睡眠時の持続性棘徐波が明らかになり、認知・言語・行動の退行が進みます。この時期は数か月から数年続きます。第3期(寛解期)には、思春期頃までにESESと発作が自然に、または治療によって消失していきます。ただし、脳波が改善しても神経心理学的障害は部分的にしか回復しないことが多く、ESESの持続期間が長いほど後遺症が重くなる傾向が示されています。症候性群は特発性群に比べて退行前の発達障害が大きく、予後も厳しい傾向があります。なお、退行は必ずしも直線的に進むわけではなく、放電の増減に応じて症状が変動することもあります。
合併症としては、残存する知的障害、限局性学習症(読み書き・計算の障害)、言語障害、ADHD様症状、自閉スペクトラム症様の社会性障害が長期的な課題になります。発作に伴う転倒による外傷、まれにけいれん重積があります。抗てんかん薬やステロイドなどの治療による副作用(眠気、肝障害、体重変化、高血圧、易感染性、骨粗鬆症など)にも注意が必要です。また、学業不振や行動の問題から、不登校、自己評価の低下、二次的な抑うつ・不安を生じることもあります。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の診断・診断基準
診断の出発点は、てんかんをもつ子ども、あるいは原因のはっきりしない学習・言語・行動の後退がみられる子どもで、本症を疑って睡眠脳波を記録することです。覚醒時の脳波だけでは異常が軽くみえるため、自然睡眠を含む長時間ビデオ脳波、または終夜脳波で、ノンレム睡眠中の棘徐波の出現率を評価します。それに加えて、神経心理学的検査で退行を客観的に示し、MRIや遺伝学的検査で背景となる病因を検索し、類似の病態を除外して総合的に診断します。指定難病としての認定は、厚生労働省の診断基準(臨床症状、脳波所見、鑑別診断などの組み合わせ)に基づき、小児神経専門医・てんかん専門医などの難病指定医が行います。
- 睡眠脳波・長時間ビデオ脳波: ノンレム睡眠中に、両側性(またはびまん性)の棘徐波が持続的に出現し、睡眠の大部分を占めることを確認します。診断の中核となる検査です。
- 棘徐波指数(SWI)の算出: ノンレム睡眠時間のうち棘徐波が占める割合を数値化します。古典的には85%以上が基準とされてきましたが、近年は50%程度以上でも臨床像が合えば本症スペクトラムとみなす立場があります。治療効果を判定する指標としても用いられます。
- 覚醒時脳波: 覚醒時は焦点性(前頭・中心・側頭部など)の棘波がみられる程度のことが多く、睡眠時の著しい増強との対比が特徴的です。覚醒時の焦点部位は、障害される機能を推定する手がかりになります。
- 神経心理学的評価: WISCなどの知能検査、言語検査、注意・遂行機能検査、行動評価尺度などで、発症前や前回の検査結果と比べた退行を客観的に評価します。経時的に繰り返すことで治療効果の判定にも用います。
- 頭部MRI: 多小脳回などの皮質形成異常、視床病変、周産期脳障害、水頭症などの構造的病因を検索します。外科治療の適応を検討するうえでも重要です。
- 聴力検査: 言葉の理解が低下した場合は、純音聴力検査や聴性脳幹反応などで末梢性の難聴を除外します。LKS型の聴覚性失認を見極めるために必要です。
- 遺伝学的検査: GRIN2Aなどのてんかん関連遺伝子や、染色体微細構造異常の検索が考慮されます。実施の可否や保険適用は検査内容によって異なるため、遺伝カウンセリングを含めて専門施設で相談します。
- 血液・代謝・免疫学的検査: 退行をきたす代謝性・変性疾患や自己免疫性脳炎などを鑑別するため、必要に応じて血液・髄液検査を行います。
- 厚生労働省 指定難病診断基準: てんかん発作、神経心理学的退行、睡眠時持続性棘徐波という特徴的な脳波所見を組み合わせ、鑑別疾患を除外したうえで診断します。医療費助成の申請には、難病指定医が記載する臨床調査個人票が必要です。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症と鑑別すべき疾患
- ランドウ・クレフナー症候群: 同じスペクトラムに属し、聴覚性失認・失語が前景に立ち、発作が少ないかない例も多い点が特徴で、側頭部優位の放電を示します。
- レノックス・ガストー症候群: 強直発作が中核で、覚醒時の遅棘徐波や睡眠時の速律動を示す点で本症と異なります。
- 中心・側頭部棘波を示す自然終息性てんかん: 睡眠時に棘波は増えますが、持続的な棘徐波には至らず、明らかな神経心理学的退行を伴わない点で区別されます(ただし本症への移行例があります)。
- 自閉スペクトラム症・ADHDなどの神経発達症: 退行や行動変化が似ることがありますが、本症では睡眠脳波で持続性棘徐波を認め、発症前の発達が保たれていたことが多い点が鑑別点です。
- 神経変性疾患・代謝疾患(神経セロイドリポフスチン症など): 進行性に退行し、視力障害、MRIでの萎縮、特異的な酵素・遺伝子検査の異常を示し、年齢とともに自然に軽快することはありません。
- 自己免疫性脳炎: 亜急性の精神・行動変化、不随意運動、髄液異常、神経抗体陽性などがみられ、睡眠時に限局した持続性放電パターンは典型的ではありません。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の治療
治療の目標は、発作を抑えることだけではありません。睡眠時の持続性棘徐波をできるだけ早く、できるだけ大きく減らし、神経心理学的機能を守り回復させることが主な目標です。ESESの持続期間が後遺症に関係すると考えられているため、診断後は脳波と神経心理学的評価で効果を定期的に確認しながら、効果が不十分なら速やかに次の治療段階へ進む考え方が一般的です。確立した国際的な標準アルゴリズムはまだありません。通常は抗てんかん薬(バルプロ酸、ベンゾジアゼピン系、エトスクシミド、レベチラセタムなど)から始め、抵抗性ならステロイド療法、さらに免疫グロブリン療法、ケトン食療法、外科治療を検討する流れが多く報告されています。一方、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールなどは、本症やその前段階のてんかんで脳波所見を悪化させうるとの報告があるため、使用には注意が払われます。治療法の選択は年齢、病因、副作用リスクによって異なるため、小児神経・てんかん専門医と十分に相談してください。
- バルプロ酸: 広い発作型に有効で、本症の初期治療として広く用いられます。ベンゾジアゼピン系薬などと併用されることも多く、肝機能、血小板、体重などのモニタリングが必要です。
- ベンゾジアゼピン系薬(クロバザム、ジアゼパムなど): 睡眠時放電の抑制効果が報告されており、就寝前の高用量ジアゼパム短期療法などの使い方もあります。眠気、ふらつき、耐性(効果の減弱)に注意します。
- エトスクシミド・レベチラセタムなど: エトスクシミドは陰性ミオクローヌスや非定型欠神を伴う例で、レベチラセタムは併用薬として、有効例の報告があります。効果には個人差があり、行動面の副作用(易刺激性など)に留意します。
- 副腎皮質ステロイド療法: プレドニゾロンなどの経口療法やメチルプレドニゾロンパルス療法は、抗てんかん薬抵抗例で脳波と神経心理学的機能の改善が報告されている重要な選択肢です。ACTH療法も選択肢として報告されていますが、本症での使用は適応外となる場合があります。いずれも高血圧、感染症、高血糖、行動変化などの副作用管理が必要で、減量中の再燃もあります。
- 免疫グロブリン静注療法(IVIG): ステロイドが使えない、または無効な例で有効例の報告がありますが、エビデンスは限られます。保険適用の範囲を含め、専門施設で検討されます。
- ケトン食療法(修正アトキンス食を含む): 薬剤抵抗例で放電の減少が報告されている食事療法です。栄養士を含むチームによる導入と管理が必要です。
- 外科治療: 片側の広範な構造的病変(周産期脳障害、皮質形成異常など)が原因の場合は、半球離断術や焦点切除術で放電と認知機能の改善が期待できることがあります。LKSでは軟膜下皮質多切術が行われた歴史もあります。適応判断はてんかん外科施設で行います。
- リハビリテーション・療育: 言語聴覚療法、作業療法、心理的支援を並行して行います。聴覚性失認がある場合は、手話、文字、視覚支援などの代替コミュニケーション手段を早くから導入すると有用です。
- 教育的支援: 神経心理学的評価に基づいて、通級指導、特別支援学級、個別の教育支援計画などの合理的配慮を学校と連携して調整し、学習機会の損失をできるだけ少なくします。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の予後・長期フォロー
生命予後はおおむね良好で、てんかん発作とESESは思春期頃までにほとんどの例で消失します。成人期まで頻回な発作が続くことはまれです。一方、機能予後は一様ではありません。言語・認知・行動の障害がある程度回復する例が多いものの、発症前の水準まで回復するのは一部にとどまり、学習障害、知的障害、注意・行動の問題などの後遺症が残ることが少なくないと報告されています。予後に影響する因子として、ESESの持続期間(長いほど不良)、発症年齢(低いほど不良とされる)、構造的病因の有無、治療への反応性が挙げられています。早期に診断し、放電を早く抑えることが、後遺症を軽くするうえで重要と考えられています。
長期フォローアップでは、治療中は数か月ごとの睡眠脳波と神経心理学的検査で、放電と機能の推移を追跡します。治療反応がみられた後も再燃がありうるため、ESESが消失した後もしばらくは定期的な脳波評価を続けます。抗てんかん薬の減量・中止は、脳波と臨床経過をみながら慎重に判断します。思春期以降は、残存する認知・行動上の課題への教育的・職業的支援、心理的支援、小児科から成人診療科への移行(トランジション)が重要です。成人期にてんかん診療と発達障害への支援をどう引き継ぐかを、早めに主治医と相談しておくとよいでしょう。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
睡眠中の放電が病態の中心であるため、規則正しい生活リズムと十分な睡眠を確保することが基本です。睡眠不足や不規則な生活は発作を誘発しやすくなります。服薬は自己判断で中断・減量せず、飲み忘れを防ぐ工夫(一包化、服薬カレンダーなど)をしましょう。ステロイド療法中は感染予防や血圧・体重の管理、予防接種のタイミングについて主治医と相談します。転倒発作がある場合は、ヘルメットの着用や家具の角の保護を検討します。入浴、水泳、高所での活動は、見守り体制を発作の状況に合わせて調整します。また、学校とは、病気の特性(日中の発作は目立たなくても学習・行動に影響すること)や発作時の対応、服薬、配慮事項を共有し、成績や行動の変化を早めに把握できる体制をつくることが大切です。言葉や学習の後退に気づいたら、記録(いつ頃から、どのような変化か、動画など)を残して受診時に伝えると、評価に役立ちます。遺伝的要因が疑われる場合や、きょうだい・次子への影響が心配な場合は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることができます。
利用できる制度・相談窓口
本疾患は指定難病(告示番号154)で、診断基準を満たし、重症度分類で一定以上の重症度に該当する場合、または軽症でも医療費が一定額を超える場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)では、小児慢性特定疾病医療費助成の対象にもなり得ます。どちらの制度を利用するかや移行の時期は、主治医や窓口に相談してください。そのほか、通院医療費の自己負担を軽減する自立支援医療(精神通院医療)、精神障害者保健福祉手帳(てんかん・発達障害)、知的障害がある場合の療育手帳、運動障害の程度に応じた身体障害者手帳が利用できることがあります。経済的支援としては特別児童扶養手当や障害児福祉手当、20歳以降は障害の状態に応じて障害基礎年金(20歳前傷病)の対象となる可能性があります。福祉サービスとしては、児童発達支援、放課後等デイサービスなど障害児通所支援を利用できます。教育面では特別支援教育(通級指導、特別支援学級・学校)を利用できます。相談窓口には、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、てんかん診療拠点機関、発達障害者支援センター、患者・家族会(公益社団法人日本てんかん協会など)があります。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症に伴う心のケア・心理社会的支援
慢性の病気をもつ子どもと家族は、長い治療経過や将来への不安から、抑うつ、不安、適応障害などの心理的負担を抱えやすくなります。本疾患に特有の難しさは、それまで普通にできていたことが失われていくという体験にあります。子ども本人は、話がわからない、勉強についていけない、友達とうまくいかないといった変化に戸惑い、自信を失ったり、いらいらや反抗として表したりすることがあります。保護者は、発作が少ないのに学習や行動が後退していく理由がわかりにくく、育て方やしつけの問題と誤解されて傷つくことも少なくありません。ステロイドによる気分や行動の変化、きょうだいへの影響、治療選択の迷いも負担になります。こうした悩みは珍しいものではありません。主治医、看護師、臨床心理士(公認心理師)、医療ソーシャルワーカー、学校のスクールカウンセラーなどに早めに相談してください。患者・家族会で同じ経験をもつ人と交流することも助けになります。保護者自身の睡眠や休息を確保し、レスパイト(一時的な預かり)サービスを活用することも大切です。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症の受診の目安
- てんかんの診断を受けている子どもに、言葉の減少、話の理解の低下、成績の急な低下、行動の急変がみられたら、早めに主治医を受診し、睡眠脳波の検査について相談してください。
- けいれん発作が5分以上続く場合、または意識が戻らないまま発作を繰り返す場合は、救急車を呼んでください。
- 転倒を伴う発作が増えた、頭を強く打った、あるいはぼんやりした状態が長く続く場合は、速やかに受診してください。
- ステロイド治療中に発熱、強い頭痛、嘔吐、著しい気分変化、血圧上昇などがみられた場合は、早めに主治医に連絡してください。
- 新しい薬を始めた後に、発作の増加や行動の悪化がみられた場合は、自己判断で中止せず、すぐに主治医に相談してください。
徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症についてのよくある質問
Q. 発作がほとんどないのに、なぜ治療が必要なのですか?
A. この病気では、目に見える発作よりも、睡眠中に続く脳波の異常が言葉や学習の力に影響すると考えられています。放電が長く続くほど後遺症が残りやすいとされるため、脳波の改善を目標にした治療が検討されます。
Q. 大人になっても続く病気ですか?
A. 睡眠中の持続性棘徐波と発作は、多くの場合、思春期頃までに消失します。ただし、学習や言語、行動面の課題が残ることがあるため、成人期にも見据えた支援が大切です。
Q. 失われた言葉や学力は回復しますか?
A. 脳波が改善すると、ある程度回復する例が多いとされます。一方で、どこまで回復するかは個人差が大きく、異常が続いた期間や原因によって異なります。早期の治療とリハビリ・教育的支援の継続が、回復を支える鍵になります。
Q. 遺伝する病気ですか?
A. 多くは家族に同じ病気のない孤発例ですが、GRIN2Aなどの遺伝子の変化が見つかる例もあり、その場合は家族内で受け継がれる可能性があります。気になる場合は、遺伝カウンセリングで個別に相談できます。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。