類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)
Bullous Pemphigoid (Including Acquired Epidermolysis Bullosa)
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)(Bullous Pemphigoid (Including Acquired Epidermolysis Bullosa))|類天疱瘡は、皮膚の表皮と真皮をつなぐ「基底膜部」の蛋白に対して自己抗体ができ、かゆみの強い紅斑と緊満性の水疱が多発する自己免疫性水疱症です。主に高齢者に発症し、日本で最も患者数の多い自己免疫性水疱症とされます。強いかゆみや皮膚のびらんで生活の質(QOL)が下がり、治療に伴う感染症や持病の悪化も問題になるため、皮膚科専門医による診断と長期的な管理が大切です。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の要点
類天疱瘡は、表皮と真皮をつなぐ基底膜部の蛋白に対する自己抗体により、表皮の下に水疱ができる自己免疫性水疱症で、主に高齢者に発症します。かゆみの強い紅斑と緊満性の水疱が多発してびらんを生じ、粘膜病型や後天性表皮水疱症を含む疾患群として指定難病に位置づけられています。
| 別名・略称 | 水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、後天性表皮水疱症、BP、MMP、EBA、Pemphigoid |
|---|---|
| 分野 | 皮膚疾患 |
| 好発年齢 | 主に高齢者(水疱性類天疱瘡) |
| 主な症状 | かゆみの強い紅斑、緊満性の水疱、びらん |
| 主な検査 | 皮膚生検(病理組織・蛍光抗体法)、血清中の自己抗体の測定 |
| 主な治療 | 副腎皮質ステロイドを中心とした薬物治療 |
| 受診する主な診療科 | 皮膚科 |
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)とは
類天疱瘡は、基底膜部の構成蛋白に対する自己抗体(主にIgG)によって表皮と真皮が離れ、表皮の下に水疱ができる疾患群の総称です。表皮細胞どうしの接着が壊れて表皮の中に水疱ができる天疱瘡とは、水疱のできる深さが異なります。そのため類天疱瘡の水疱は天井(水疱の屋根)が厚く、張りがあって破れにくいのが特徴です。指定難病「類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)」には、代表病型の水疱性類天疱瘡に加え、粘膜を主に侵す粘膜類天疱瘡、Ⅶ型コラーゲンに対する自己抗体による後天性表皮水疱症などが含まれます。
病型は、標的となる抗原と、障害を受ける部位によって分けられます。水疱性類天疱瘡は、ヘミデスモソームを構成するBP180(ⅩⅦ型コラーゲン)とBP230が主な標的です。粘膜類天疱瘡では、BP180、ラミニン332、α6β4インテグリンなどが標的となり、口腔・眼・咽喉頭・食道・外陰部などの粘膜に病変が出て、治った後に瘢痕(はんこん)を残しやすい点が重要です。後天性表皮水疱症は、真皮側の係留線維をつくるⅦ型コラーゲンが標的です。外力を受けやすい部位に水疱・瘢痕・稗粒腫(はいりゅうしゅ)を残す「古典型(機械的水疱型)」と、水疱性類天疱瘡に似た「炎症型」があります。このほか関連する病型として、妊娠中に発症する妊娠性類天疱瘡、IgA抗体による線状IgA水疱性皮膚症、ラミニンγ1(p200)を標的とする抗ラミニンγ1類天疱瘡などが知られています。歴史的には1950年代に、組織学的に天疱瘡と区別される疾患として「類天疱瘡」の概念が確立しました。その後、蛍光抗体法と分子生物学の進歩によって標的抗原が次々に明らかにされてきました。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の疫学・患者数
水疱性類天疱瘡は自己免疫性水疱症のなかで最も多い病型で、多くは70歳代以降に発症します。高齢になるほど発症率が上がるとされます。欧州の疫学研究では年間発症率が人口100万人あたり数例から数十例と報告され、高齢化に伴って増加傾向にあるとされます。性差ははっきりしないか、報告によってわずかな女性優位がみられる程度です。日本では指定難病の医療費助成を受けている人だけで数千人規模ですが、軽症で助成対象とならない人も多いため、実際の患者数はこれより多いと考えられます。近年は、糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬や、がん治療に使う免疫チェックポイント阻害薬に関連した発症の報告が増えています。また、認知症・パーキンソン病・脳血管障害などの神経疾患をもつ人で発症が多いことも知られています。粘膜類天疱瘡と後天性表皮水疱症はさらに頻度の低い病型で、中高年に多いものの若年者や小児にも起こり得ます。小児の水疱性類天疱瘡はまれです。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の原因・病態生理
類天疱瘡は遺伝性疾患ではなく、後天性の自己免疫疾患です。表皮基底細胞は、ヘミデスモソームという接着装置によって基底膜につなぎ留められています。BP180は細胞膜を貫通する蛋白で、細胞外にあるNC16A領域が水疱性類天疱瘡の主な抗原部位です。BP230は細胞内の裏打ち蛋白です。後天性表皮水疱症では、真皮側で基底膜と真皮をつなぐ係留線維の主成分であるⅦ型コラーゲン(主にNC1領域)に抗体が結合します。なぜ自己寛容が破綻するのかは十分に解明されていませんが、いくつかの要因が重なると考えられています。具体的には、加齢に伴う免疫制御の変化、HLAなどの遺伝的素因、薬剤、神経組織にも存在するBP180・BP230の関与(神経疾患との関連の説明として提唱されています)、紫外線・外傷・放射線などによる抗原の露出です。DPP-4阻害薬関連の類天疱瘡では、炎症が比較的軽く、NC16A以外の部位を認識する抗体がみられることがあると報告されています。日本人では特定のHLA型との関連も指摘されています。
水疱ができる仕組みは次のように考えられています。IgG自己抗体が基底膜部に結合すると補体が活性化され、肥満細胞の脱顆粒が起こります。これにより好酸球や好中球が集まり、これらの細胞が放出するプロテアーゼ(好中球エラスターゼ、MMP-9など)が基底膜部の蛋白を分解して、表皮と真皮が分離します。補体を介さず、抗体の結合によってBP180が細胞内に取り込まれて減少し、接着力が弱まる機序も示されています。さらに、多くの患者でBP180に対するIgE抗体が検出され、好酸球増多や強いかゆみ、蕁麻疹のような紅斑との関連が注目されています。病変が水疱になる前に、かゆみを伴う紅斑・膨疹・湿疹様の皮疹だけが続く時期(前駆期・非水疱期)があるのは、こうした炎症反応が先に起こるためと考えられます。後天性表皮水疱症や粘膜類天疱瘡では分離の起こる位置が深く、組織の修復過程で線維化が起こりやすいため、瘢痕や癒着を残すのが特徴です。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の症状
- 緊満性水疱: 正常に見える皮膚や紅斑の上に、張りのある数mm〜数cmの水疱が多発します。天疱瘡より破れにくく、内容は透明から血性です。
- 浮腫性紅斑・蕁麻疹様皮疹: 水疱の周囲や水疱ができる前に、盛り上がった紅斑や環状の紅斑がみられます。水疱を伴わない時期が数週〜数か月続くこともあります。
- 強いかゆみ: 多くの患者さんが強いかゆみを訴え、不眠やかき壊しの原因になります。高齢者では、かゆみだけが先に出る非水疱型もあります。
- びらん・痂皮: 水疱が破れるとびらん(ただれ)となり、浸出液や痛みを伴います。治るとかさぶたになり、一時的な色素沈着を残すことがあります。
- 好発部位: 四肢の屈側、腋窩、鼠径部、下腹部、大腿内側に多く、全身に広がることもあります。
- 口腔粘膜病変: 水疱性類天疱瘡でも一部の患者に口の中のびらんがみられます。粘膜類天疱瘡では歯肉の発赤・びらん(剥離性歯肉炎)や頬粘膜のびらんが主な症状となり、食事の痛みを生じます。
- 眼病変: 粘膜類天疱瘡では、結膜の充血、異物感、ドライアイに始まり、瞼球癒着や睫毛乱生、角膜の混濁へ進むことがあります。重症例では視力障害や失明に至るおそれがあります。
- 咽喉頭・食道病変: 粘膜類天疱瘡では、声がれ、飲み込みにくさ、呼吸時の喘鳴が出ることがあります。喉頭の瘢痕狭窄は気道閉塞の危険があります。
- 外陰部・肛門部の病変: びらんによる排尿時痛や性交痛を生じ、粘膜類天疱瘡では癒着や狭窄を残すことがあります。
- 瘢痕・稗粒腫・爪の変化: 後天性表皮水疱症では、手足の甲・肘・膝など摩擦を受けやすい部位に水疱を繰り返します。治った後に萎縮性瘢痕や白い小さな粒(稗粒腫)、爪の変形・脱落を残すことがあります。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の経過と合併症
水疱性類天疱瘡は、かゆみや紅斑の前駆期を経て水疱期に入ることが多く、治療しないと数か月〜数年にわたって寛解と増悪を繰り返します。自然に軽快する例もありますが、高齢者では広範囲のびらんによる体力の消耗や感染が問題になります。適切な治療で多くは新たな水疱が出なくなり(病勢制御)、ステロイドなどを減らしていけます。ただし、減量中や中止後の再発は少なくありません。再発は治療開始から1年以内に多いとされ、広い範囲の病変、高い抗体価、認知症の合併などが再発の危険因子として報告されています。DPP-4阻害薬関連の例では、薬剤の中止によって軽快しやすい場合があります。粘膜類天疱瘡は慢性に進行しやすく、炎症が落ち着いても瘢痕による後遺症が残り得るため、早期からの治療強化が検討されます。後天性表皮水疱症も慢性で、治療抵抗性の例が少なくありません。
合併症には、病気そのものによるものと治療によるものがあります。病気によるものとしては、びらんへの細菌感染(蜂窩織炎、敗血症)、脱水、低蛋白血症、粘膜病変による栄養障害、眼の瘢痕による視力低下、喉頭・食道の狭窄があります。治療によるものとしては、ステロイドや免疫抑制薬による感染症(肺炎、ニューモシスチス肺炎、帯状疱疹、B型肝炎の再活性化など)、糖尿病の悪化、骨粗鬆症・骨折、筋力低下、消化性潰瘍、高血圧、白内障・緑内障、せん妄が重要です。背景疾患として、神経疾患のほか、後天性表皮水疱症では炎症性腸疾患(特にクローン病)との関連が知られています。抗ラミニン332型の粘膜類天疱瘡では悪性腫瘍の合併が多いとの報告があるため、がんの検索が勧められます。水疱性類天疱瘡と悪性腫瘍の関連については結論が出ていませんが、年齢に応じたがん検診は大切です。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の診断・診断基準
診断では、臨床症状、病理組織所見、免疫学的所見の三本柱を組み合わせます。まず皮膚科医が、緊満性水疱・紅斑・かゆみの分布や粘膜病変の有無を診察します。そのうえで、新しい水疱の辺縁から病理組織検査用の生検を、水疱周囲の病変のない皮膚(または粘膜)から直接蛍光抗体法用の生検を行います。あわせて血液検査で、BP180・BP230・Ⅶ型コラーゲンなどに対する抗体を測定します。日本皮膚科学会の診療ガイドラインと指定難病の診断基準も、これらの所見を組み合わせて診断する考え方に基づいています。さらに病型(水疱性/粘膜/後天性表皮水疱症)を判別し、病変の範囲をBPDAI(Bullous Pemphigoid Disease Area Index)などで点数化して重症度を評価します。重症度は治療方針の決定と医療費助成の申請に用いられます。薬剤歴(特にDPP-4阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、利尿薬など)、神経疾患や炎症性腸疾患の有無、悪性腫瘍のスクリーニング、治療前の感染症・合併症の評価も欠かせません。
- 病理組織検査(HE染色): 表皮の下で水疱ができ(表皮下水疱)、真皮浅層に好酸球を主体とした炎症細胞が集まるのが典型的です。後天性表皮水疱症や粘膜類天疱瘡では、炎症が乏しいことや瘢痕がみられることがあります。
- 直接蛍光抗体法(DIF): 病変周囲の皮膚で、基底膜部にIgGとC3が線状に沈着していることを確認します。診断の要となる最も感度の高い検査です。沈着の微細な形(n字状かu字状か)から、類天疱瘡型か後天性表皮水疱症型かを推定できる場合があります。
- 間接蛍光抗体法(IIF): 患者さんの血清中にある基底膜部に対する抗体を検出します。皮膚を1M食塩水で処理して人工的に分離させた皮膚(食塩水剥離皮膚)を使うと、抗体が表皮側に結合すればBP180・BP230型、真皮側に結合すればⅦ型コラーゲン・ラミニン332・ラミニンγ1型と区別できます。
- 抗BP180抗体(ELISA/CLEIA): BP180のNC16A領域に対するIgG抗体を測定します。陽性率が高く、抗体価は病勢と相関しやすいため、治療効果の判定や再発の予測にも使われます。DPP-4阻害薬関連例などでは陰性となることがあり、全長BP180を用いた測定が参考になる場合があります。
- 抗BP230抗体・抗Ⅶ型コラーゲン抗体: 抗BP230抗体は抗BP180抗体が陰性の例で診断の助けになります。抗Ⅶ型コラーゲン抗体は後天性表皮水疱症の診断に役立ちます。
- その他の抗原の解析(免疫ブロット法など): ラミニン332やラミニンγ1などに対する抗体は一般検査では測定できないことが多く、専門施設や研究機関での解析が必要になる場合があります。
- 血液一般・生化学検査: 末梢血の好酸球増多や血清IgE値の上昇がしばしばみられます。治療前には、血糖、肝・腎機能、肝炎ウイルス、結核などの感染症の評価を行います。
- 重症度評価(BPDAI): 皮膚のびらん・水疱、紅斑・膨疹、粘膜病変をそれぞれ点数化し、重症度を判定します。治療効果の追跡や医療費助成の申請に使われます。
- 眼科・耳鼻咽喉科・消化器内視鏡検査: 粘膜類天疱瘡や粘膜症状のある例では、結膜の瘢痕、喉頭・食道の病変と狭窄の有無を各科で評価します。早期の発見が後遺症の予防につながります。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)と鑑別すべき疾患
- 天疱瘡: 表皮の中に弛緩した破れやすい水疱やびらんができ、DIFでは表皮細胞の間に網目状のIgG沈着がみられ、抗デスモグレイン抗体が陽性となる点で区別します。
- 先天性(遺伝性)表皮水疱症: 出生時や幼少期から外力による水疱を繰り返し、家族歴や遺伝子検査、自己抗体が陰性であることで後天性表皮水疱症と区別します。
- スティーヴンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症: 発熱を伴って急速に進む粘膜障害と表皮の壊死が特徴で、原因薬剤の内服歴があり、DIFで線状沈着がみられない点で区別します。
- 線状IgA水疱性皮膚症・疱疹状皮膚炎: DIFで基底膜部にIgAが沈着するか、真皮乳頭にIgAが顆粒状に沈着するかで区別します。
- 湿疹・痒疹・蕁麻疹・虫刺症・薬疹: 水疱のない前駆期の類天疱瘡はこれらとよく似るため、高齢者の治りにくいかゆみや紅斑ではDIFや抗体検査で確認することが重要です。
- 水疱性エリテマトーデス・ポルフィリン症: 全身症状、抗核抗体、日光への曝露との関係、ポルフィリン代謝の検査などから区別します。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の治療
治療の目標は、新しい水疱を止めて既存の病変を治し(病勢制御)、その後は副作用を最小限に抑えながら治療を減らして寛解を維持することです。患者さんの多くは高齢で合併症を抱えているため、重症度だけでなく、年齢、全身状態、糖尿病・骨粗鬆症・感染症の危険、認知機能、外用を手伝う人がいるかどうかを含めて治療を選びます。一般に、軽症ではステロイド外用やテトラサイクリン系抗菌薬とニコチン酸アミドの併用などを、中等症〜重症では経口ステロイドを中心に検討します。治療抵抗例やステロイドを減らせない例では、免疫抑制薬、免疫グロブリン大量静注療法、血漿交換療法などを組み合わせます。DPP-4阻害薬などの関連が疑われる薬剤については、主治医(処方医)と相談のうえ中止や変更を検討します。粘膜類天疱瘡で眼・喉頭・食道に病変がある場合や後天性表皮水疱症では、より早い段階から強い治療を検討することがあります。具体的な治療内容は病型や個々の状態で大きく異なるため、必ず皮膚科専門医と相談して決めてください。
- ステロイド外用療法: 最強クラスのステロイド外用薬を病変部や全身に塗る方法で、軽症〜中等症で有効性が示されています。全身投与より副作用が少ない一方、広い範囲に塗る負担や皮膚の萎縮・感染に注意が必要です。
- テトラサイクリン系抗菌薬とニコチン酸アミドの併用: 抗炎症作用を期待して、ミノサイクリンやドキシサイクリンにニコチン酸アミドを併用する治療で、軽症例やステロイドを使いにくい例で選ばれることがあります。効果が出るまでに時間がかかります。
- 経口ステロイド(プレドニゾロン): 中等症〜重症の基本治療で、体重あたり0.5〜1mg/日程度から開始することが多く、病勢が制御されたら数か月〜年単位で慎重に減量します。高齢者では副作用を考慮して少なめの量が選ばれることもあります。
- 免疫抑制薬: ステロイドを減らすため、または効果を補うために、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、メトトレキサートなどが併用されることがあります。保険適用の範囲や骨髄抑制・腎障害などの副作用を踏まえて選択します。
- 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG): ステロイドで十分な効果が得られない水疱性類天疱瘡に対して、国内で保険適用があります。5日間連続で点滴する方法が一般的で、感染症のリスクを高めにくい点が利点です。
- 血漿交換療法: 血液中の自己抗体を除去する治療で、重症例や治療抵抗例に、ステロイドなどと組み合わせて行われます。実施できる施設は限られます。
- 抗体医薬などの新規治療: 難治例に対しては、海外を中心に抗CD20抗体(リツキシマブ)やIL-4/IL-13経路・IgEを標的とする抗体医薬の報告や承認があります。国内での保険適用は薬剤ごとに異なるため、専門医への確認が必要です。
- 誘因薬剤の見直し: DPP-4阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などとの関連が疑われる場合は、原疾患の治療とのバランスを考え、処方医と協力して中止・変更を検討します。自己判断での中止は避けます。
- 局所ケアと合併症予防: 大きな水疱は清潔な針で内容液を抜いて屋根を残し、びらんは洗浄して非固着性のガーゼなどで保護します。ステロイド使用中は、骨粗鬆症の予防薬、胃粘膜保護薬、ニューモシスチス肺炎の予防、血糖管理、感染症対策を並行して行います。粘膜病変には眼科・歯科・耳鼻咽喉科と連携して対応します。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の予後・長期フォロー
水疱性類天疱瘡は、治療によって多くの患者さんで病勢を制御でき、数年の経過で治療を終えられる人もいます。一方、再発は少なくなく、維持療法が長く続くこともあります。生命予後は、病気そのものより、高齢であること、合併する神経疾患や心血管疾患、全身状態の低下、治療に伴う感染症の影響を大きく受けます。欧州の報告では診断後1年以内の死亡率が一般人口より高いとされており、治療の強さと副作用のバランスをとることが予後の改善に重要です。粘膜類天疱瘡では、生命予後よりも視力障害、嚥下障害、気道狭窄といった機能的な後遺症がQOLを左右します。後天性表皮水疱症は慢性に経過し、手指の拘縮や爪の喪失などを残すことがあります。強いかゆみ、外見の変化、通院・外用の負担は、本人と家族の生活の質に大きく影響します。
長期のフォローアップでは、皮膚と粘膜の症状、BP180抗体価などの推移、ステロイドの減量状況を定期的に確認します。抗体価の再上昇や新たなかゆみ・紅斑は再発の兆しのことがあるため、早めの受診が勧められます。ステロイドを長く使う場合は、骨密度、血糖、血圧、眼圧・白内障、感染症の有無などを定期的に検査します。粘膜類天疱瘡では、炎症が落ち着いてからも眼科で瘢痕の進行をチェックすることが重要です。治療を終えた後も、一定期間は再発がないか経過をみます。かかりつけ医、皮膚科専門医、眼科、歯科、介護スタッフが情報を共有すると、安全な長期管理につながります。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
皮膚への摩擦や圧迫は水疱を誘発するため、柔らかく締め付けの少ない衣類を選び、移動・入浴・介助の際に皮膚を強くこすらないよう注意します。入浴やシャワーで皮膚を清潔に保ち、低刺激の洗浄剤を泡立ててやさしく洗い、こすらずに押さえるように水分を拭き取ります。かき壊しを防ぐため爪を短く切り、保湿や冷却でかゆみを和らげます。外用薬は量と範囲を指示どおりに守ることが効果につながるため、高齢の患者さんでは家族や訪問看護の協力が大きな支えになります。口腔病変がある場合は、柔らかい歯ブラシで口の中を清潔に保ち、刺激の強い食べ物を避けます。歯科での定期的なケアも有用です。眼の異物感・充血、声がれ、飲み込みにくさが出たら早めに伝えてください。ステロイド服用中は、手洗い・うがい、ワクチン接種(生ワクチンは原則避けるため主治医に確認)、転倒予防、バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、薬を自己判断で中断しないようにします。他の病院を受診する際や新しい薬(特に糖尿病薬)を始める際は、類天疱瘡であることを伝えましょう。本症は遺伝性疾患ではなく、人にうつることもありません。家族に同じ病気が遺伝するという心配は基本的に不要です。
利用できる制度・相談窓口
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)は指定難病(告示番号162)です。診断基準を満たし、BPDAIなどによる重症度が一定以上(中等症以上など)の場合に、医療費助成の対象となります。重症度を満たさなくても、高額な医療が継続している場合は「軽症高額該当」として対象になることがあります。申請には難病指定医が作成する臨床調査個人票(診断書)が必要で、窓口は住所地の都道府県・指定都市の担当課や保健所です。受給者証が交付されると、指定医療機関での自己負担割合が軽減され、所得に応じた月額上限が設けられます。患者さんの多くは高齢者のため、介護保険(65歳以上の第1号被保険者)による訪問看護や訪問介護、福祉用具の利用で、外用処置や入浴を支援できます。高額療養費制度も併用できます。粘膜類天疱瘡などによる視力障害が残った場合は身体障害者手帳(視覚障害)、就労世代で日常生活や仕事に大きな支障がある場合は障害年金の対象となる可能性があります。各都道府県の難病相談支援センター、医療機関の医療ソーシャルワーカー、地域包括支援センターなどが相談窓口となります。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)に伴う心のケア・心理社会的支援
類天疱瘡は、眠れないほどの強いかゆみ、見た目の変化、繰り返す再発、毎日の外用処置、長期にわたるステロイド治療など、心身に大きな負担をもたらします。不眠や気分の落ち込み、不安、イライラが続き、抑うつ状態や適応障害につながることもあります。ステロイド自体も、不眠、気分の高揚や落ち込み、せん妄などの精神症状を起こすことがあります。高齢の患者さんでは、入院や活動量の低下をきっかけに認知機能や意欲が低下することもあり、介護する家族の疲労も無視できません。「皮膚がうつるのでは」という周囲の誤解からくる孤立感、粘膜病変による食事・会話の困難、視力低下への不安など、この病気ならではの悩みもあります。つらさを我慢せず、主治医、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、必要に応じて心療内科や精神科に相談してください。かゆみの治療や睡眠の改善が気持ちの安定につながることも多く、家族も一人で抱え込まずに介護サービスや相談窓口を活用することが大切です。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)の受診の目安
- 高齢者で、治りにくい強いかゆみや、蕁麻疹・湿疹のような紅斑が数週間以上続く場合は、皮膚科を受診してください。
- 張りのある水疱が体のあちこちに次々とできる場合は、早めに皮膚科専門医を受診してください。
- 治療中に38℃以上の発熱、悪寒、びらん部の赤み・腫れ・痛み・膿が増える場合は、感染症の可能性があるため速やかに受診してください。
- 息苦しさ、ゼーゼーする呼吸、急な声がれ、飲み込めない状態がある場合は、気道や食道の病変の可能性があるため救急受診を検討してください。
- 眼の充血・痛み・異物感が続く場合や、見えにくさがある場合は、早めに眼科を受診してください。
- ステロイド服用中に強い倦怠感、のどの渇き・多尿、黒い便、急な腰や背中の痛み、混乱などが現れた場合は、主治医に連絡してください。
類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)についてのよくある質問
Q. 類天疱瘡は人にうつったり、子どもに遺伝したりしますか?
A. 類天疱瘡は自分の免疫が皮膚を攻撃して起こる自己免疫疾患で、感染症ではないため人にうつることはありません。遺伝性の病気でもないため、家族が同じ病気になる心配は基本的に不要です。
Q. 糖尿病の薬が原因になることがあると聞きました。すぐにやめるべきですか?
A. DPP-4阻害薬という種類の糖尿病薬との関連が報告されており、関連が疑われる場合は中止や他の薬への変更が検討されます。ただし、自己判断で中止すると血糖が悪化するおそれがあるため、必ず皮膚科と糖尿病の主治医に相談してください。
Q. ステロイドはずっと飲み続けなければいけませんか?
A. 多くの場合、病状が落ち着いたら数か月〜年単位で少しずつ減らし、最終的に中止できる人もいます。急にやめると再発や副腎機能の低下を起こすことがあるため、減量は医師の指示どおりに進めることが大切です。
Q. 水疱ができたら自分でつぶしてもよいですか?
A. 大きな水疱は、清潔な針で内容液を抜き、屋根の皮膚を残して保護材で覆う方法が一般的です。皮膚を剥がすと感染や痛みの原因になります。処置の方法は医師や看護師に確認し、不安な場合は受診時に処置してもらいましょう。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。