眼皮膚白皮症
Oculocutaneous Albinism
眼皮膚白皮症(Oculocutaneous Albinism)|眼皮膚白皮症(Oculocutaneous Albinism:OCA)は、メラニン色素を作るしくみが生まれつき障害され、皮膚・毛髪・眼の色素が少なくなる遺伝性疾患です。多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、乳児期から低視力・眼振・まぶしさと、紫外線に対する皮膚の弱さ(日焼け・皮膚がんの起こりやすさ)が生涯の課題になります。一部の病型では出血傾向や肺・腸・免疫の異常を伴い、全身管理が必要です。日本では指定難病(告示番号164)に指定されています。
眼皮膚白皮症の要点
眼皮膚白皮症は、メラニンを作る過程の先天的な異常により、皮膚・毛髪・眼の色素が少なくなる遺伝性疾患です。乳児期からの低視力・眼振・まぶしさや紫外線に弱い皮膚が主な症状で、多くは常染色体潜性遺伝を示し、指定難病(告示番号164)に指定されています。
| 別名・略称 | 白皮症、アルビノ、先天性白皮症、OCA、albinism |
|---|---|
| 分野 | 皮膚疾患 |
| 遺伝形式 | 多くは常染色体潜性(劣性)遺伝 |
| 発症時期 | 生まれつき(乳児期から眼症状が目立つ) |
| 主な症状 | 皮膚・毛髪・眼の色素低下、低視力、眼振、まぶしさ、紫外線に弱い皮膚 |
| 病型 | 非症候型(OCA1〜8など)と症候型(ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群など) |
| 主な検査 | 眼・皮膚・毛髪の所見の評価、遺伝子検査(遺伝子に基づく病型分類) |
| 受診する主な診療科 | 眼科、皮膚科、小児科 |
眼皮膚白皮症とは
眼皮膚白皮症は、メラノサイト(色素細胞)の数は保たれているものの、その中にあるメラノソームでメラニンを作る・ためる・運ぶ過程に先天的な異常があり、皮膚・毛髪・眼の色素が全身性に低下する疾患群の総称です。皮膚・毛髪の色素低下に加え、眼の色素低下と網膜・視路の発生異常による視機能障害を伴うことが定義上の要点です。主に眼の症状が目立ち皮膚の色素低下が軽い眼白皮症(ocular albinism)とは区別されます。また、色素の低下は全身に一様に起こり、尋常性白斑やまだら症のように斑状・限局性に色が抜ける病気とは異なります。皮膚の色素量は病型や人種背景によって幅があり、日本人では一見して色白程度にしか見えない軽症例もあるため、眼の所見が診断の手がかりになることも少なくありません。
病型は、色素異常が主に皮膚・毛髪・眼にとどまる非症候型と、他臓器の障害を伴う症候型に大別されます。非症候型は原因遺伝子によりOCA1(TYR)、OCA2(OCA2)、OCA3(TYRP1)、OCA4(SLC45A2)に分類され、その後OCA5(第4番染色体上の座位)、OCA6(SLC24A5)、OCA7(LRMDA)、OCA8(DCT)などが追加されています。OCA1はさらに、チロシナーゼ活性がほぼ完全に失われ生涯メラニンを作れないOCA1Aと、活性が一部残り成長とともに色素が少し増えるOCA1B(体温の低い四肢でのみ色素が出る温度感受性型を含む)に分けられます。症候型には、血小板の異常による出血傾向や肺線維症・肉芽腫性腸炎を伴うヘルマンスキー・パドラック症候群(HPS)、易感染性や血球貪食性リンパ組織球症を起こしうるチェディアック・東症候群、グリセリ症候群などがあります。かつては毛球を用いたチロシナーゼ活性試験で陽性・陰性に分ける分類が用いられましたが、現在は遺伝子に基づく分類が標準です。
眼皮膚白皮症の疫学・患者数
眼皮膚白皮症全体の頻度は世界的に一般人口の約1万7千〜2万人に1人程度と推定されてきましたが、地域差が大きく、アフリカ諸地域ではOCA2が多く、より高頻度であることが知られています。日本の患者数は数千人規模と推定されますが、軽症例が診断されていない可能性もあり、正確な数は明らかではありません。国内の遺伝子解析の報告では、OCA1が最も多く、次いでOCA4が多く、OCA2やヘルマンスキー・パドラック症候群(主にHPS1)がこれに続くとされ、OCA4が比較的多い点は欧米と異なる日本人の特徴とされています。OCA3は日本ではまれです。先天性疾患であり、皮膚・毛髪の色の薄さや、生後数か月以内に気づかれる眼振・視線の合いにくさから乳児期に診断されることが多く、軽症型では学童期以降に視力の問題から見つかることもあります。常染色体潜性遺伝のため性差は基本的にありません(X連鎖性の眼白皮症は男性に多い点で異なります)。
眼皮膚白皮症の原因・病態生理
非症候型の眼皮膚白皮症は常染色体潜性遺伝形式をとり、両親から1つずつ受け継いだ同じ遺伝子の2つのコピーの両方に病的変異があると発症します。両親は通常は保因者で症状がなく、保因者同士の子が発症する確率は1/4です。OCA1の原因であるTYR遺伝子はメラニン合成の律速酵素チロシナーゼをコードし、チロシンからドーパ、ドーパキノンへの酸化反応を担います。OCA2の原因であるOCA2遺伝子(従来P遺伝子と呼ばれた)はメラノソーム膜のタンパクで、メラノソーム内のpHやイオン環境を調節し、チロシナーゼが働きやすい状態を保つと考えられています。OCA3のTYRP1はメラニン合成後半の酵素関連タンパク、OCA4のSLC45A2はメラノソームの輸送体で、pHの調節などに関与するとされます。なお、15番染色体の欠失によるプラダー・ウィリ症候群やアンジェルマン症候群でOCA2遺伝子を含む領域が失われると、色素が薄くなることがあります。症候型のヘルマンスキー・パドラック症候群は、メラノソームや血小板の濃染顆粒、肺胞上皮のラメラ体などの細胞内小器官の形成・輸送に関わる複数のHPS関連遺伝子の異常で起こり、チェディアック・東症候群はLYST遺伝子の異常によりリソソーム関連小器官の大きさや輸送が障害されます。
眼の症状の中心は、色素そのものの不足よりも、発生期の網膜と視路の形成異常にあります。胎生期の網膜色素上皮のメラニン(あるいはその合成過程の中間産物)は、網膜中心部の発生や、視神経線維が視交叉で左右どちらへ進むかの決定に関与すると考えられています。白皮症ではこのしくみが乱れ、①網膜の中心で最も細かいものを見る部位である中心窩が十分に形成されない中心窩低形成、②本来は同側へ向かうべき耳側網膜の線維の多くが視交叉で反対側へ交叉してしまう視神経線維の交叉異常(misrouting)が生じます。中心窩低形成は低視力の主因となり、交叉異常は両眼視・立体視の障害や斜視、眼振の背景になります。さらに虹彩や網膜色素上皮の色素が乏しいため、虹彩を光が透過し眼内で光が散乱し、強いまぶしさ(羞明)が生じます。皮膚では、メラニンが紫外線を吸収・散乱してDNA損傷を防ぐ役割を担えないため、紫外線によるDNA損傷が蓄積しやすく、日光角化症や有棘細胞癌・基底細胞癌などの皮膚がんが若年から生じやすくなります。メラノサイト自体は存在するため、色素の乏しい悪性黒色腫(無色素性黒色腫)が起こることもあり、見逃しに注意が必要です。
眼皮膚白皮症の症状
- 皮膚・毛髪の色素低下: 皮膚は白色〜淡いピンク色、毛髪は白色〜黄色・淡褐色を呈します。OCA1Aでは生涯ほぼ白色のままですが、OCA1BやOCA2・OCA4では成長とともに毛髪が黄色〜茶色に色づくことがあります。
- 日光過敏・日焼けしやすさ: 短時間の日光でも赤くなりやすく、ほとんど黒く日焼けしません。日焼けの反復はしみ、そばかす状の色素斑、皮膚の老化を早めます。
- 日光角化症・皮膚がん: 紫外線の当たる顔・耳・首・手背などに、若年から日光角化症や有棘細胞癌、基底細胞癌が生じやすくなります。色素の少ない悪性黒色腫が赤い斑やしこりとして現れることもあります。
- 低視力: 主に中心窩低形成によるもので、矯正視力は病型や個人差により幅があり、およそ0.1前後から0.5程度にとどまることが多いとされます。生まれつきの見え方のため本人が自覚しにくく、多くは乳幼児期から変化は少なく、進行性ではありません。
- 眼振: 生後数か月以内に、主に水平方向の振り子様の目の揺れが現れることが多く、見ようとしたり緊張したりすると強くなる傾向があります。眼振が弱まる視線の向き(静止位)を利用するため、顔を回したり傾けたりする頭位異常がみられることがあります。
- 羞明(まぶしさ): 虹彩と網膜の色素が少なく光が眼内に入り込み散乱するため、屋外や明るい照明下で強いまぶしさを感じ、目を細める・見えにくくなるなどの影響が出ます。
- 屈折異常: 強い遠視・近視や乱視を伴うことが多く、適切な眼鏡で視力が一定程度改善する場合があります。弱視予防のためにも早期の屈折評価が重要です。
- 斜視・立体視の低下: 視神経線維の交叉異常により両眼を協調させる働きが弱く、斜視の合併が多く、立体視は低下または欠如します。
- 虹彩・眼底の色素低下: 虹彩は淡青色〜灰色・淡褐色で、細隙灯で光を当てると虹彩が透けて見えます(虹彩透光性)。眼底は色素が少なく脈絡膜の血管が透見されます。
- 出血傾向(症候型): ヘルマンスキー・パドラック症候群では血小板の機能異常のため、あざができやすい、鼻出血・歯肉出血、月経過多、抜歯や手術後の止血困難がみられます。
- 肺線維症・肉芽腫性腸炎(症候型): ヘルマンスキー・パドラック症候群の一部の型(HPS1など)では、成人期に進行性の肺線維症による息切れや、クローン病に似た腸炎による腹痛・下痢・血便が起こることがあります。
- 易感染性・神経症状(症候型): チェディアック・東症候群では細菌感染を繰り返しやすく、血球貪食性リンパ組織球症(加速期)を起こすことがあり、年長になると末梢神経障害などの神経症状が現れることがあります。
眼皮膚白皮症の経過と合併症
非症候型の眼皮膚白皮症は、生まれつきの状態がそのまま続く非進行性の疾患であり、視力は乳幼児期の視覚発達とともにある程度向上し、学童期以降はおおむね安定します。眼振は乳児期に目立ち、成長とともに軽くなる例も多いとされます。毛髪や皮膚の色は病型により経過が異なり、OCA1Aでは変化が乏しい一方、OCA1B・OCA2・OCA4では小児期から思春期にかけて色素がやや増えることがあります。一方、皮膚は紫外線曝露の累積によって年齢とともに障害が進むため、成人期以降は日光角化症や皮膚がんのリスクが高まります。紫外線が強く防護が難しい地域では若年での皮膚がん発症が問題になることが知られており、日本でも生涯にわたる紫外線対策が重要です。
合併症としては、まず紫外線に関連する皮膚の病変(日光皮膚炎、日光黒子、日光角化症、有棘細胞癌、基底細胞癌、まれに無色素性黒色腫)が挙げられます。眼では、未矯正の屈折異常や斜視に伴う弱視、頭位異常による首や肩の負担、羞明による屋外活動の制限が生じえます。症候型では予後を左右する全身合併症が問題になり、ヘルマンスキー・パドラック症候群では手術・抜歯・分娩時の出血、成人期の肺線維症(呼吸不全に至ることがある)、肉芽腫性腸炎が、チェディアック・東症候群では重症感染症や血球貪食性リンパ組織球症が重要です。このため、白皮症と診断された時点で症候型の可能性を必ず検討します。
眼皮膚白皮症の診断・診断基準
診断は、①皮膚・毛髪・虹彩の全身性の色素低下、②眼振・低視力・羞明・虹彩透光性・眼底の色素低下・中心窩低形成といった特徴的な眼所見の組み合わせから臨床的に疑い、眼科での詳細な評価で白皮症に特有の眼所見を確認する流れが基本です。病型の確定には原因遺伝子の解析が有用で、遺伝カウンセリングや家族への説明の根拠になります。同時に、出血傾向・反復感染・呼吸器や消化器の症状の有無を問診し、症候型(ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群など)を見逃さないことが重要です。日本では指定難病の診断基準と重症度分類が定められており、医療費助成の申請には難病指定医による臨床調査個人票の作成が必要です。乳児期には小児科・眼科・皮膚科が連携して評価することが望まれます。
- 臨床所見(皮膚・毛髪・虹彩): 出生時からの全身性の皮膚・毛髪の色素低下と虹彩の色の薄さを確認します。日本人では軽症型が単なる色白と区別しにくいことがあり、家族と比べた色調や毛髪の色の変化も参考にします。
- 細隙灯顕微鏡検査(虹彩透光性): 虹彩に光を当てると色素の乏しい部分を光が透過して赤く透けて見え、白皮症を強く示唆する所見です。軽症例では程度が軽いため丁寧な観察が必要です。
- 眼底検査: 網膜色素上皮の色素が乏しく脈絡膜血管が透見され、黄斑部の輪状反射や中心窩の窪みがはっきりしないことが観察されます。
- 光干渉断層計(OCT): 中心窩の窪みの欠如や網膜内層の残存など中心窩低形成を断層像で客観的に評価でき、その程度は視力予後の推定に役立つとされます。乳幼児では手持ち型OCTを用いる施設もあります。
- 視覚誘発電位(VEP): 片眼ずつ刺激した際に左右の大脳半球の反応に非対称(交叉性非対称)がみられれば、視神経線維の交叉異常を示し、白皮症の診断を支持します。
- 視力・屈折・眼位・眼球運動検査: 年齢に応じた方法で視力、調節麻痺下の屈折、斜視、眼振の性状や静止位を評価し、眼鏡処方やロービジョンケアの計画に用います。
- 遺伝学的検査: TYR、OCA2、TYRP1、SLC45A2やHPS関連遺伝子などを解析して病型を確定します。変異が同定されない例もあり、実施施設は限られるため、遺伝カウンセリングと合わせて専門施設で行います。
- 出血傾向・血小板の評価: 出血症状があればヘルマンスキー・パドラック症候群を疑い、凝固検査・血小板機能検査を行い、電子顕微鏡で血小板濃染顆粒の欠如を確認する方法もあります。手術前の評価としても重要です。
- 末梢血塗抹標本: 白血球などに巨大な顆粒がみられればチェディアック・東症候群を示唆し、反復感染がある場合などに確認します。
眼皮膚白皮症と鑑別すべき疾患
- 眼白皮症(主にX連鎖性、GPR143関連): 眼振・中心窩低形成・交叉異常など眼所見は類似しますが、皮膚・毛髪の色素低下は軽微で、主に男性に発症し、母親の眼底に色素のまだら模様がみられることがあります。
- ヘルマンスキー・パドラック症候群・チェディアック・東症候群: 白皮症の症候型であり、出血傾向・肺線維症・腸炎・反復感染などの全身症状の有無で非症候型と区別し、予後や管理が大きく異なります。
- 無虹彩症など他の先天性眼疾患: 眼振や中心窩低形成を共通に示しますが、無虹彩症では虹彩の欠損が主体で皮膚・毛髪の色素は正常であり、PAX6遺伝子異常が多いことで区別します。
- 尋常性白斑・まだら症(ピエバルディズム)・ワールデンブルグ症候群: 色素脱失が斑状・限局性で、白斑は後天性、まだら症やワールデンブルグ症候群は額の白斑や白い前髪が特徴で、後者は難聴を伴うことがある点で全身性の白皮症と異なります。
- フェニルケトン尿症など代謝疾患: 未治療例で皮膚・毛髪の色が薄くなりますが、新生児マススクリーニングでの高フェニルアラニン血症や発達の問題を伴い、白皮症に特有の眼所見はみられません。
- プラダー・ウィリ症候群・アンジェルマン症候群: 15番染色体欠失型で色素が薄くなることがありますが、筋緊張低下や発達・行動の特徴を伴い、染色体・メチル化解析で区別します。
眼皮膚白皮症の治療
現時点で失われた色素合成を回復させ、中心窩低形成や交叉異常を治す根本的な治療法は確立していません。治療の目標は、①残された視機能を最大限に生かし、小児期の視覚発達を支えること、②紫外線から皮膚と眼を守り皮膚がんを予防・早期発見すること、③症候型では出血・肺・腸・感染などの全身合併症を管理することです。眼科(小児眼科・ロービジョン外来)、皮膚科、小児科を中心に、必要に応じて血液内科・呼吸器内科・消化器内科、遺伝診療部門、視覚支援学校や教育・福祉機関が連携します。個々の治療法の適応や時期は病型・年齢・生活状況で異なるため、主治医や専門医と相談しながら決めることが大切です。
- 屈折矯正(眼鏡・コンタクトレンズ): 乳幼児期から調節麻痺下の屈折検査に基づき眼鏡を処方し、網膜に鮮明な像を結ばせることで視力の発達を促し弱視を防ぎます。矯正効果には限界がありますが、多くの例で見え方の改善が期待できます。
- 遮光眼鏡・羞明対策: まぶしさを和らげるため、短波長光を抑える遮光眼鏡や色付きレンズ、つばの広い帽子を用います。遮光眼鏡は条件を満たせば補装具の支給対象となる場合があります。
- ロービジョンケア・視覚リハビリテーション: 単眼鏡・拡大鏡・拡大読書器、タブレットの拡大機能などを年齢や用途に合わせて選び、学習や就労での見え方を工夫します。早期から療育・教育と連携することが重要です。
- 弱視・斜視の治療: 左右の視力差がある場合などは健眼遮閉などの弱視治療を検討し、斜視が整容面や頭位に影響する場合は手術が検討されることがあります。
- 眼振・頭位異常への対応: 強い頭位異常がある場合は、静止位を正面に移すための眼筋手術(ケステンバウム法など)が選択肢になることがあります。眼振に対する薬物療法の報告もありますが、効果や適応は限られ確立した治療ではありません。
- 紫外線防護: 日焼け止め(SPF・PAの高いものを十分量、こまめに塗り直す)、長袖・UVカット衣料、帽子、日傘、外出時間の工夫を乳児期から生活習慣として継続することが、皮膚がん予防の基本です。
- 定期的な皮膚科診察と皮膚病変の治療: ダーモスコピーなどを用いて日光角化症や皮膚がんを早期に発見し、日光角化症には液体窒素療法や外用薬、皮膚がんには外科的切除などを病変に応じて行います。
- 症候型の全身管理: ヘルマンスキー・パドラック症候群では手術・抜歯前の止血対策(デスモプレシンや血小板輸血など)、抗血小板作用のある薬の回避、肺線維症や腸炎の専門的管理を行い、チェディアック・東症候群では感染管理や造血幹細胞移植が検討されます。
- 研究段階の治療: 残存チロシナーゼ活性を高める目的でニチシノン(チロシン血症の治療薬)をOCA1Bに用いた臨床研究などが海外で行われましたが、明らかな視機能の改善は示されておらず、現時点で確立した治療ではありません。遺伝子治療なども研究段階です。
眼皮膚白皮症の予後・長期フォロー
非症候型の眼皮膚白皮症では、生命予後は一般人口と大きく変わらないと考えられています。ただし紫外線防護が不十分な環境では皮膚がんが若年から生じ、進行すると生命予後に影響しうるため、紫外線対策と定期検診の継続が長期予後を左右します。視機能は進行性に悪化することは通常なく、多くの方が眼鏡やロービジョン機器、環境調整を活用して普通学校や大学で学び、さまざまな職業に就いています。一方で、矯正視力によっては自動車運転免許の取得基準を満たせない場合があり、進路や生活設計に影響することがあります。症候型では予後が全身合併症に左右され、ヘルマンスキー・パドラック症候群の一部の型では成人期の肺線維症が、チェディアック・東症候群では感染症や血球貪食性リンパ組織球症が生命予後に関わります。
長期フォローアップとしては、小児期は視覚発達に合わせて眼科で屈折・視力・斜視・弱視の評価を定期的に行い、眼鏡やロービジョン機器を見直します。皮膚については、年齢とともに紫外線の累積障害が増えるため、成人期以降は特に定期的な皮膚科受診と自己チェックを続け、新しくできたしこり・治りにくい傷・変化する斑を早めに評価してもらいます。症候型では、出血リスクを各診療科や歯科と共有し、呼吸機能検査や胸部CTによる肺病変の評価、消化器症状の確認を定期的に行います。成人期への移行に際しては、小児科から成人診療科へ切れ目なく引き継ぐ移行期医療の視点も重要です。
眼皮膚白皮症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
紫外線対策は乳児期から家族ぐるみで習慣化することが大切です。紫外線の強い時間帯(日中)の屋外活動を工夫し、曇りの日や冬、雪・水面からの照り返しにも注意します。日焼け止めは顔・耳・首・手の甲など露出部に十分量を塗り、汗や水遊びの後は塗り直します。学校には、体育や屋外行事での帽子・長袖・日焼け止めの使用、座席を黒板の近くにする、拡大教科書や拡大コピー、タブレット使用、照明やまぶしさへの配慮などを具体的に伝えると支援を受けやすくなります。眼振のある方は顔を傾けたり近づけて見ることが見やすい姿勢であることが多く、無理に矯正させないことも大切です。症候型(ヘルマンスキー・パドラック症候群など)の場合は、アスピリンや一部の鎮痛薬など血小板の働きを弱める薬を避け、手術・抜歯・出産の際は必ず病名を伝え、喫煙は肺病変の観点から避けるべきとされます。遺伝については、両親が保因者である場合、次の子が発症する確率は1/4であり、病型によっては遺伝学的検査で家族の状況を確認できることがあります。きょうだいや本人の将来の家族計画を含め、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを利用することが勧められます。
利用できる制度・相談窓口
眼皮膚白皮症は指定難病(告示番号164)であり、診断基準を満たし重症度分類で一定以上と判定された場合、または軽症でも高額な医療費が継続する場合(軽症高額該当)に、医療費助成(特定医療費)を受けられます。申請は難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)へ行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで延長可)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象疾病にも含まれ、自己負担の軽減や自立支援事業を利用できます。視力・視野が基準に該当すれば身体障害者手帳(視覚障害)を取得でき、遮光眼鏡・矯正眼鏡・拡大読書器などの補装具や日常生活用具の給付、税の控除、交通機関の割引などが受けられる場合があります。障害の程度により、20歳以上では障害年金、20歳未満の子を養育する保護者には特別児童扶養手当の対象となることがあります。教育面では弱視特別支援学級・通級指導教室や視覚特別支援学校(盲学校)の教育相談が利用でき、拡大教科書の提供も受けられます。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、視覚障害者情報提供施設、医療機関の医療ソーシャルワーカー、患者・家族会などがあります。
眼皮膚白皮症に伴う心のケア・心理社会的支援
眼皮膚白皮症では、生まれつきの見えにくさに加えて、外見の違いが周囲に気づかれやすいことが心理社会的な負担になりやすい特徴があります。幼少期から学童期には、髪や肌の色をからかわれる、じろじろ見られる、髪を染めるよう求められるといった体験や、黒板が見えにくい・まぶしくて屋外活動に参加しにくいことからくる孤立感が生じることがあります。思春期・青年期には容姿へのこだわり、運転免許や進路・就職に関する不安、恋愛や結婚・遺伝に関する悩みが加わり、抑うつや不安、適応障害につながる場合もあります。親もまた、診断時の衝撃や遺伝に関する自責感、将来への不安を抱えやすいことが知られています。こうした気持ちは決して特別なものではなく、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、心理職、学校の担任や養護教諭、スクールカウンセラーに早めに相談することが大切です。同じ病気の人や家族と交流できる患者会は、具体的な生活の工夫を知り、孤立感を和らげる場として役立ちます。気分の落ち込み、眠れない、学校や職場に行けないといった状態が続く場合は、心療内科・精神科や児童精神科の受診も検討してください。
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眼皮膚白皮症の受診の目安
- 新しくできたしこりや盛り上がり、かさぶたを繰り返して治らない傷、急に大きくなったり色や形が変わる斑点があるときは、早めに皮膚科を受診してください。
- 強い日焼けで水ぶくれが広範囲にできた、発熱や強い痛みを伴うときは、速やかに医療機関を受診してください。
- 見え方が急に悪くなった、物が二重に見える、目の痛みや充血が続くなど、これまでと異なる眼の症状が出たときは眼科を受診してください。
- 鼻血や歯ぐきからの出血が止まりにくい、あざが増える、月経量が極端に多いなど出血傾向がある場合は、症候型の可能性を含めて主治医に相談してください。
- 息切れや咳が続く、腹痛・下痢・血便が続く、発熱や感染を繰り返すときは早めに受診し、大量出血や呼吸が苦しいときは救急受診してください。
- 気分の落ち込みや不安が強く日常生活に支障が出ているとき、学校や職場での困りごとが続くときは、主治医や相談窓口に早めに相談してください。
眼皮膚白皮症についてのよくある質問
Q. 視力は成長とともに悪くなっていきますか?
A. 非症候型の眼皮膚白皮症の視力障害は、中心窩低形成など生まれつきの構造によるもので、通常は進行しません。乳幼児期の視覚発達に伴い視力はある程度向上し、学童期以降はおおむね安定します。弱視を防ぐためにも、早期からの眼鏡装用と定期的な眼科受診が大切です。
Q. 眼鏡やコンタクトで視力は正常になりますか?
A. 屈折異常を矯正することで見え方が改善することは多いですが、中心窩低形成による低視力は眼鏡では完全には補えません。そのため、拡大鏡や単眼鏡、タブレットなどのロービジョン機器や環境の工夫を組み合わせて、生活や学習の困りごとを減らしていきます。
Q. 次に生まれる子どもも同じ病気になりますか?
A. 多くの病型は常染色体潜性遺伝で、両親が保因者の場合、子ども1人ごとに発症する確率は1/4、保因者になる確率は1/2です。病型や家族の状況により異なるため、遺伝学的検査の可否も含めて遺伝カウンセリングで詳しく相談することをお勧めします。
Q. 色素を増やす薬や根本的な治療はありますか?
A. 現時点で色素を回復させたり視力を正常化したりする確立した治療はありません。海外ではOCA1Bの一部を対象にニチシノンを用いた臨床研究などが行われましたが、視機能の明らかな改善は示されておらず、研究段階です。最新の情報は主治医や専門医に確認してください。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。