弾性線維性仮性黄色腫

Pseudoxanthoma Elasticum

弾性線維性仮性黄色腫(Pseudoxanthoma Elasticum)|弾性線維性仮性黄色腫(Pseudoxanthoma Elasticum:PXE)は、皮膚・眼(網膜)・中型動脈の弾性線維に、カルシウムが本来沈着しない場所で沈着する「異所性石灰化」が少しずつ進む遺伝性疾患です。主に思春期から若年成人期に、首などの皮膚の黄色い小丘疹で気づかれます。生命予後は多くの場合保たれますが、網膜の脈絡膜新生血管による中心視力の低下と末梢動脈の狭窄が生活の質を大きく左右します。日本では指定難病に指定されています。

弾性線維性仮性黄色腫の要点

弾性線維性仮性黄色腫(PXE)は、ABCC6遺伝子の変異により皮膚・網膜・中型動脈などの弾性線維に異所性石灰化が進む遺伝性疾患です。思春期ごろから首などの皮膚に黄色い丘疹が現れ、網膜の脈絡膜新生血管による中心視力低下や末梢動脈の狭窄を伴うことがあり、指定難病です。

別名・略称PXE、弾力線維性仮性黄色腫、Grönblad–Strandberg症候群
分野皮膚疾患
遺伝形式常染色体潜性(劣性)遺伝(ABCC6遺伝子の両アレルに病的変異)
好発年齢主に思春期から若年成人期に気づかれる
主な症状首などの皮膚の黄色い丘疹、網膜の血管条紋と脈絡膜新生血管による視力低下、末梢動脈の狭窄
主な検査皮膚生検、眼底検査、ABCC6遺伝子検査
主な治療脈絡膜新生血管には抗VEGF療法など、症状に応じた対症的管理
受診する主な診療科皮膚科、眼科

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

弾性線維性仮性黄色腫とは

PXEは、ABCC6遺伝子の両アレルに病的変異がある常染色体潜性(劣性)遺伝疾患です。弾性線維が断片化し、石灰化することが基本病変です。病名に「黄色腫」とありますが、脂質が沈着する黄色腫(xanthoma)とは別の病気です。黄色い丘疹が黄色腫に似ていることから「仮性」黄色腫と名付けられました。かつては皮膚や結合組織そのものの病気と考えられていましたが、現在は肝臓で起こる代謝異常が全身の異所性石灰化を招く「代謝性疾患」と理解されています。主な障害部位は、皮膚、網膜のブルッフ膜、中型動脈の内弾性板と中膜、消化管粘膜下の血管です。

歴史的には、19世紀末から20世紀初頭にかけて皮膚病変が記載されました。その後、網膜の血管条紋(angioid streaks)との合併が報告され(Grönblad–Strandberg症候群とも呼ばれました)、全身疾患として認識されるようになりました。2000年に原因遺伝子ABCC6が同定され、優性型と劣性型に分ける旧来の分類は否定されています。現在は、ABCC6変異による古典的PXEと、それに似た所見を示す「PXE様疾患」に分けて考えます。PXE様疾患には、GGCX変異による皮膚弛緩と凝固因子異常を伴う病型や、ENPP1変異(全身性乳児動脈石灰化症GACIと連続する病態)によるものがあります。さらに、D-ペニシラミン長期投与やβサラセミアなどに伴う後天性・続発性のPXE様変化も区別されます。日本では日本皮膚科学会を中心に診断基準と診療ガイドラインが整備されています。

弾性線維性仮性黄色腫の疫学・患者数

海外の推計では、有病率はおよそ2万5千〜10万人に1人とされます。報告によって幅があり、軽症例や未診断例が多いと考えられています。日本の正確な患者数は明らかではありません。指定難病の医療受給者証を持つ人は、推定患者数の一部にとどまるとみられます。皮膚症状は小児期後半から思春期・20代に気づかれることが多く、診断は20〜30代、ときに眼症状が出てからの40代以降になることもあります。報告例では女性がやや多いとされますが、外見上の皮膚変化で女性の受診が多いことによる偏りとの指摘があり、遺伝形式からは男女差はないと考えられます。日本人患者では比較的頻度の高いABCC6変異が報告されていますが、変異の種類は数百にのぼります。遺伝型と症状の重さの明確な対応は確立していません。

弾性線維性仮性黄色腫の原因・病態生理

原因遺伝子ABCC6は16番染色体短腕(16p13.1)にあり、ABCトランスポーターの一種であるMRP6をコードします。MRP6は主に肝細胞の血管側(基底側)の細胞膜にあり、皮膚や眼にはほとんど発現しません。MRP6の働きで肝細胞からATPが血中へ放出され、細胞外酵素ENPP1によって無機ピロリン酸(PPi)に変換されます。PPiは、リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)の結晶ができて成長するのを抑える、生体内の重要な石灰化阻害因子です。PXEでは血漿PPi濃度が健常者の数割程度に低下しており、これが全身の軟部組織の異所性石灰化の主な原因と考えられています。既存の解説にある「弾性線維の形成に必要な物質の輸送障害」という説明は正確ではありません。弾性線維がつくられた後に、石灰化を抑える仕組みが全身で弱くなることが本質です。

石灰化はまず弾性線維の中心部に生じます。弾性線維は断片化し、凝集し、鉱物が沈着して弾力を失います。真皮中層の弾性線維が石灰化すると、皮膚の黄色丘疹や弛緩・しわが生じます。網膜では、脈絡膜と網膜色素上皮の間にあるブルッフ膜が石灰化して脆くなります。そこに亀裂が入ったものが血管条紋です。亀裂を通って脈絡膜から新生血管が伸びると、出血や瘢痕によって黄斑が障害されます。動脈では内弾性板と中膜が石灰化し、四肢の中型動脈が狭くなったり閉塞したりします。消化管では粘膜下血管が脆くなり、出血しやすくなります。PPi低下以外の要因として、組織中の石灰化促進因子と抑制因子(マトリックスGlaタンパク、フェチュインAなど)の不均衡、酸化ストレスの関与も研究されています。ただし同じ変異でも症状の重さに大きな個人差があり、修飾遺伝子や生活習慣(喫煙など)の影響が推測されています。

弾性線維性仮性黄色腫の症状

  • 黄色丘疹・敷石状局面: 頸部の側面と後面、腋窩、肘窩、鼠径部、膝窩などの屈側に、黄色〜皮膚色の1〜数mmの丘疹ができます。融合すると「敷石状」「羽をむしった鶏皮様」と表現される局面になります。多くは自覚症状がなく、最初の手がかりになります。
  • 皮膚の弛緩・しわ: 進行すると、頸部や腋窩などの皮膚がたるみ、垂れ下がったり深いしわになったりします。整容面の悩みの原因になります。
  • 粘膜病変: 下口唇の内側などの口腔粘膜、まれに膣や直腸の粘膜に、黄色調の小丘疹がみられることがあります。
  • 橙皮状眼底(peau d'orange): 網膜中間周辺部にみられるオレンジの皮のような細かな斑状所見で、血管条紋より早く現れることが多いです。視力への影響はありませんが、診断的価値が高い所見です。
  • 網膜血管条紋: 視神経乳頭の周りから放射状に伸びる、褐色〜灰色の線状所見です。ブルッフ膜の亀裂に相当し、多くの患者で成人期までに認められます。
  • 脈絡膜新生血管による視力低下: 血管条紋から新生血管が生じて黄斑に及ぶと、ものがゆがんで見える(変視症)、中心が見えにくい(中心暗点)、急な視力低下が起こります。PXEで最も重い機能障害の原因です。
  • 間欠性跛行・末梢動脈疾患: 下肢の中型動脈が石灰化して狭くなり、歩くとふくらはぎが痛み、休むと治まる症状が出ます。比較的若い年齢でも起こりえます。四肢の脈が弱くなることもあります。
  • 冠動脈疾患・狭心症: 冠動脈の狭窄による胸痛が起こることがありますが、頻度はかつて考えられていたほど高くないとされます。それでも喫煙などの危険因子が重なると重要な合併症になります。
  • 脳血管障害: 小血管病変による脳梗塞(ラクナ梗塞など)や一過性脳虚血発作の報告があります。頭部MRIで無症候性の白質病変がみつかることもあります。
  • 消化管出血: 主に胃からの出血で、吐血や黒色便として現れます。若年成人や妊娠中にもみられ、NSAIDsや抗血栓薬の使用で起こりやすくなるとされます。
  • 高血圧: 腎動脈などの石灰化に関連した高血圧が若年から生じることがあります。動脈病変や眼の出血のリスクを高めます。
  • 腎・その他の石灰化: 腎結石や腎石灰化、乳房や精巣(微小石灰化)、肝臓・脾臓の微小石灰化が画像検査でみつかることがあります。

弾性線維性仮性黄色腫の経過と合併症

PXEはゆっくり進行する慢性疾患です。典型的には、10代前後に皮膚の黄色丘疹が現れ、10〜20代に橙皮状眼底と血管条紋がみつかります。30〜50代になると、脈絡膜新生血管による中心視力の低下や下肢の動脈病変が問題になりやすくなります。皮膚病変は年齢とともに範囲が広がり、たるみも目立ちますが、それ自体が命に関わることはありません。眼の病変は、無症状の血管条紋の段階から、新生血管、出血、黄斑の瘢痕・萎縮へと進みます。治療しなければ、中年期以降に両眼の中心視力が大きく低下し、読み書きや運転など日常生活に大きな支障が出る程度(いわゆる社会的失明)に至ることがあります。ただし周辺視野は比較的保たれ、完全に光を感じなくなることはまれです。症状の出方には大きな個人差があり、皮膚症状が軽く眼症状で初めて診断される人もいます。

主な合併症は以下のとおりです。①眼:脈絡膜新生血管、網膜下出血、黄斑萎縮。軽い頭部や眼の打撲でブルッフ膜が裂けて出血することがあります。②血管:四肢の末梢動脈疾患(重症例では安静時痛や潰瘍)、冠動脈疾患、ラクナ梗塞などの脳血管障害、腎血管性を含む高血圧。僧帽弁逸脱などの弁膜所見の報告もあります。③消化管:胃を中心とする出血。貧血や輸血が必要になる例があります。④その他:腎結石・腎石灰化。妊娠・出産はおおむね可能とされますが、消化管出血などへの注意が必要です。全体として、心血管死や突然死の危険が極めて高い病気ではありません。重い障害の主な原因は視機能障害と末梢動脈疾患です。

弾性線維性仮性黄色腫の診断・診断基準

診断のきっかけは、皮膚科での頸部・屈側の黄色丘疹、または眼科での血管条紋の発見が大半です。皮膚所見があれば皮膚生検で弾性線維の断片化と石灰化を確認し、眼科で眼底検査を行います。眼所見が先にみつかった場合は、皮膚の診察と、必要に応じて特徴的な部位がなくても瘢痕部などの生検を検討します。日本の指定難病の診断基準では、①特徴的な皮膚病変、②皮膚病理所見(弾性線維の変性・石灰化)、③眼所見(血管条紋または橙皮状眼底)、④ABCC6遺伝子の病的変異などの組み合わせで「確実」「疑い」を判定します。ABCC6遺伝子検査は確定診断、PXE様疾患との区別、家族への遺伝カウンセリングに役立ちます。診断がついたら、眼科、循環器・血管外科、消化器などによる全身の評価と、定期的なフォローアップの計画を立てます。

  • 皮膚生検(病理組織): HE染色で真皮中層に断片化・凝集した好塩基性の弾性線維がみられます。弾性線維染色(Elastica van Gieson染色など)で断片化を、von Kossa染色やアリザリンレッド染色で石灰沈着を確認します。診断の柱となる検査です。
  • 眼底検査・眼底写真: 橙皮状眼底、血管条紋、彗星様病変(comet tail lesion)、新生血管・出血の有無を評価します。散瞳しての詳しい観察が勧められます。
  • 光干渉断層計(OCT)・OCTアンギオグラフィ: ブルッフ膜の断裂、網膜下液、脈絡膜新生血管を非侵襲的に検出します。抗VEGF治療を行うかどうかの判断と効果判定に欠かせません。
  • 蛍光眼底造影・眼底自発蛍光: フルオレセインやインドシアニングリーンによる造影で新生血管の活動性や範囲を評価します。自発蛍光で網膜色素上皮の障害範囲を把握します。
  • ABCC6遺伝子検査: 両アレルの病的変異を確認すれば分子遺伝学的に確定します。変異が1つしかみつからない場合は、欠失・重複の解析や、GGCX・ENPP1などの関連遺伝子を検討します。結果の解釈と家族への説明は遺伝カウンセリングと合わせて行います。
  • 足関節上腕血圧比(ABI)・血管エコー: 下肢動脈の狭窄・閉塞をスクリーニングします。動脈壁が石灰化しているとABIが偽って正常〜高値になることがあるため、足趾上腕血圧比(TBI)やエコーで補います。
  • CT・単純X線(石灰化評価): 四肢動脈や冠動脈の石灰化、腎石灰化などを評価します。研究では下肢動脈の石灰化量が病勢の指標として用いられています。
  • 心電図・心エコー・必要に応じた負荷検査: 虚血性心疾患や弁膜所見を評価します。胸部症状があれば冠動脈CTや負荷検査を検討します。
  • 血液・便検査、上部消化管内視鏡: 貧血、腎機能、脂質・血糖などの危険因子、便潜血を確認します。消化管出血が疑われれば内視鏡で出血源を評価します。

弾性線維性仮性黄色腫と鑑別すべき疾患

  • 日光弾性線維症(光線性弾性線維症): 高齢者の日光にさらされる部位に生じ、屈側中心ではなく、組織で石灰化を伴わない点で区別します。
  • PXE様疾患(GGCX変異・ENPP1変異など): GGCX型は全身の広い皮膚弛緩とビタミンK依存性凝固因子の低下を伴い、ENPP1型は乳児期の動脈石灰化歴などで区別し、最終的には遺伝子検査で鑑別します。
  • 後天性・続発性PXE様変化: D-ペニシラミン長期投与、βサラセミアや鎌状赤血球症、硝石などへの曝露、多産の腹部に生じる穿孔性石灰化弾性線維症などがあり、病歴と分布で区別します。
  • 皮膚弛緩症(cutis laxa): 全身の皮膚が早い時期からたるみますが、黄色丘疹や弾性線維の石灰化、血管条紋はみられません。
  • エーラス・ダンロス症候群/マルファン症候群: 皮膚の過伸展、関節の過可動、大動脈拡張、水晶体偏位などが主体で、PXEに特徴的な黄色丘疹や組織の石灰化はみられません。
  • 血管条紋をきたす他疾患(骨パジェット病など): 血管条紋はPXE以外に骨パジェット病や異常ヘモグロビン症でも生じるため、皮膚所見と全身評価で区別します。

弾性線維性仮性黄色腫の治療

現時点で、ABCC6異常そのものを治す根本治療や、石灰化を確実に止める治療は確立していません。治療の中心は、①視機能を守る眼科治療、②動脈硬化の危険因子の管理と末梢動脈疾患への対応、③消化管出血の予防と治療、④皮膚の整容的対応、⑤石灰化の進行を抑える治療の研究段階での検討、の5つです。既存の解説にある「抗血小板薬による予防」は、PXEでは消化管出血や網膜出血を増やすおそれがあるため、一律の予防投与は勧められません。症状のある動脈疾患など明確な適応がある場合に、出血リスクと比べたうえで主治医が判断します。ピロリン酸やマグネシウムの補充も研究段階で、有効性は確立していません。サプリメントを自己判断で使うのは避け、皮膚科・眼科・循環器科などが連携し、主治医と相談しながら個別に方針を決めます。

  • 抗VEGF薬の硝子体内注射: 血管条紋に伴う脈絡膜新生血管に対する現在の標準的な治療です。早期に治療を始めるほど視力を保ちやすいとされます。再発が多いため、OCTで経過を見ながら注射を繰り返すことが一般的です。
  • 眼の定期検査とアムスラーチャートによる自己チェック: 症状がなくても定期的に眼科でOCTなどの検査を受けます。自宅では片目ずつアムスラーチャートでゆがみを確認し、異常があれば早く受診することが視力を守る鍵になります。
  • 心血管危険因子の管理: 禁煙を最も重視し、血圧、脂質、血糖、体重を適切に管理して、動脈病変の進行を抑えます。降圧薬やスタチンなどは一般的な適応に沿って使われます。
  • 末梢動脈疾患への対応: 歩行を中心とした運動療法が基本です。症状に応じて薬物療法を行い、重症例では血管内治療やバイパス手術を検討します。抗血小板薬は出血リスクを考えて慎重に判断されます。
  • 消化管出血への対応と予防: NSAIDsなどの胃粘膜を傷める薬はできるだけ避けます。出血時は内視鏡による止血が基本で、必要に応じて胃酸を抑える薬の使用が検討されます。
  • 整容的外科治療: 頸部などのたるんだ皮膚に対して、切除・縫縮などの形成外科手術が行われることがあります。PXEの皮膚は傷の治りが比較的保たれるとされます。
  • 石灰化抑制を目指す治療(研究段階): ビスホスホネート製剤エチドロネートが下肢動脈の石灰化進行を抑えたとする海外の臨床試験報告があります。ピロリン酸の経口補充やマグネシウム補充も研究されていますが、いずれも確立した治療ではありません。
  • 多職種による包括的支援: 視覚障害が進んだ場合のロービジョンケア(拡大読書器、遮光眼鏡などの補助具、生活訓練)、遺伝カウンセリング、心理的支援を組み合わせます。

弾性線維性仮性黄色腫の予後・長期フォロー

多くの患者の生命予後は一般の人と大きくは変わらないと考えられています。既存の解説にある「30〜40代での心筋梗塞・脳卒中による死亡の危険が著しく高い」という表現は、最近の研究からみて誇張です。ただし末梢動脈疾患は一般より若い年齢で多いとされます。喫煙、高血圧、脂質異常症が重なると心血管イベントの危険は高まります。生活の質に最も影響するのは中心視力の低下です。抗VEGF療法が普及してから視力の予後は改善していますが、新生血管は再発しやすく、長期的には黄斑の萎縮が進むこともあります。皮膚症状は命には関わりませんが、外見の変化として心理的負担になることがあります。

診断後は、生涯にわたる多臓器のフォローアップが必要です。目安として、眼科は少なくとも年1回、新生血管の既往があれば数か月ごとに受診し、OCTで確認します。循環器・血管の評価として、血圧、ABI、脂質・血糖を定期的に確認し、症状があれば画像検査を行います。貧血の有無は血液検査で確認します。皮膚科は診断と経過観察、病理の確認を担います。遺伝子診断を受けた患者では、兄弟姉妹に症状がなくても、早めの眼科検査や皮膚の診察を検討する価値があります。研究段階の治療については、臨床試験の情報を主治医と共有しておくとよいでしょう。

弾性線維性仮性黄色腫の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

禁煙は最も重要なセルフケアです。受動喫煙もできるだけ避けます。適度な有酸素運動(ウォーキングなど)は血管の健康に役立ちます。一方、ボクシング、ラグビー、格闘技など頭部や眼に強い衝撃を受けやすいスポーツは、網膜出血の危険があるため控えるか、保護具を使うことが勧められます。市販の痛み止め(NSAIDs)やアスピリンは消化管出血の原因になりうるため、自己判断で常用せず医師・薬剤師に相談してください。カルシウムやビタミンD、ピロリン酸、マグネシウムなどのサプリメントを過剰にとることは、効果も安全性も確立していません。偏りのない通常の食事を基本とします。妊娠を希望する場合は、事前に主治医・産科医と相談します。遺伝については、両親はふつう保因者で、兄弟姉妹が同じ病気である確率は25%です。患者の子どもは原則として保因者となり、配偶者も保因者でない限り発症しません。家族の検査や将来の妊娠については、臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。

利用できる制度・相談窓口

弾性線維性仮性黄色腫は指定難病で、診断基準を満たし重症度分類で一定以上と認められた場合、または軽症でも医療費が高額になる場合(軽症高額該当)は、医療費助成の対象になります。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、窓口は住所地の都道府県・指定都市(保健所など)です。指定難病は障害者総合支援法の対象でもあり、障害者手帳がなくても必要に応じて福祉サービスを利用できる場合があります。視力障害が一定以上になれば身体障害者手帳(視覚障害)の対象となり、補装具や日常生活用具(拡大読書器など)の給付を受けられます。また初診日や保険の加入状況などの要件を満たせば、障害年金の対象となる可能性があります。40〜64歳で脳血管疾患などの介護保険の特定疾病を合併した場合は、介護保険サービスを利用できることがあります。医療費の自己負担は高額療養費制度も併用できます。相談先として、各都道府県の難病相談支援センター、医療機関の医療ソーシャルワーカー、視覚障害についてはロービジョン外来や視覚障害者支援施設があります。患者会の情報も参考になります。

弾性線維性仮性黄色腫に伴う心のケア・心理社会的支援

難病の診断や先の見えない慢性の経過は、不安、抑うつ、適応障害の原因になりえます。PXEに特有の負担として、まず思春期・若年期に目立つ首の皮膚の外見変化への悩みがあり、人目を避けたり自己評価が下がったりすることがあります。また、いつ視力が落ちるかわからない不安や、繰り返す硝子体注射への恐怖、運転・仕事・育児への影響の心配もよく聞かれます。遺伝性疾患であることから、兄弟姉妹への伝え方や結婚・妊娠についての葛藤、家族内の罪悪感が生じることもあります。眠れない、気分の落ち込みが2週間以上続く、外出や仕事を避けるようになったといった変化があれば、我慢せずに主治医に伝えてください。心療内科・精神科、臨床心理士・公認心理師、遺伝カウンセラー、患者会などに相談することが大切です。視機能が低下しても、ロービジョンケアや支援制度によってできることは多くあります。早めに情報を得ることが安心につながります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

弾性線維性仮性黄色腫の受診の目安

  • ものがゆがんで見える、視野の中心が暗い・欠けるなど、急な見え方の変化があれば、数日以内ではなくできるだけ早く眼科を受診してください。
  • 吐血、黒いタール状の便、強いふらつきや動悸など消化管出血を疑う症状があれば救急受診してください。
  • 胸の痛みや圧迫感が続く場合、片側の手足の麻痺、言葉のもつれ、顔のゆがみなど脳卒中を疑う症状がある場合は、ためらわず救急車を要請してください。
  • 歩くと脚が痛み休むと治まる、足先が冷たい、傷が治りにくいといった症状があれば、主治医または血管外科を受診してください。
  • 頸部や腋窩に黄色い小さなぶつぶつやたるみがあり、家族にPXEの人がいる場合は、皮膚科と眼科で検査を受けてください。

弾性線維性仮性黄色腫についてのよくある質問

Q. 皮膚のぶつぶつは治りますか?

A. 黄色丘疹や皮膚のたるみを消す薬は現時点ではありません。たるみが気になる場合は、形成外科で切除などの手術を検討できることがあります。皮膚の症状そのものが命に関わることはありません。

Q. 失明してしまうのでしょうか?

A. 中年期以降に中心視力が低下する人は少なくありませんが、周辺の視野は比較的保たれ、全盲になることはまれです。抗VEGF療法によって視力を保てる例が増えており、ゆがみなどの異常に早く気づいて受診することが最も大切です。

Q. アスピリンなどを飲んで予防したほうがよいですか?

A. PXEでは胃や網膜の出血を増やすおそれがあるため、症状がないうちから一律に予防として飲むことは勧められていません。動脈疾患などではっきりした適応がある場合に、主治医が出血リスクと比べて判断します。自己判断で始めたりやめたりしないでください。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 常染色体潜性遺伝のため、配偶者が保因者でなければ、子どもは保因者になっても通常は発症しません。兄弟姉妹は25%の確率で発症している可能性があります。詳しくは遺伝カウンセリングで相談できます。

この記事をシェア

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

関連記事(関連する指定難病)

同じ分野(皮膚疾患)の指定難病

皮膚疾患の指定難病を一覧で見る / 指定難病リスト(全341疾患)

この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。