VATER症候群
VACTERL Association
VATER症候群(VACTERL Association)|VATER症候群(VACTERL連合)は、脊椎・肛門直腸・心臓・気管食道・腎泌尿器・四肢のうち複数の部位に、先天異常が偶然以上の頻度で同時にみられる状態です。多くは出生前後に見つかり、新生児期から複数の手術と多診療科による管理が必要になります。一方で知的発達は保たれることが多く、適切な治療と長期フォローアップにより成人期を迎える患者が増えています。
VATER症候群の要点
VATER症候群(VACTERL連合)は、脊椎・肛門直腸・心臓・気管食道・腎泌尿器・四肢の先天異常のうち複数が偶然以上の頻度で同時に現れる状態です。新生児期から外科的治療を含む多診療科での管理が必要で、日本では指定難病(告示番号173)に指定されています。
| 別名・略称 | VACTERL連合、VACTERL症候群、VATER連合、VACTERL association、VATER association |
|---|---|
| 分野 | 染色体・先天異常症候群 |
| 診断の目安 | 6つの構成要素のうち3つ以上を有し、類似の他の遺伝性症候群・染色体異常を除外 |
| 発見時期 | 出生前後(新生児期)に見つかることが多い |
| 主な症状 | 脊椎異常、鎖肛などの肛門直腸奇形、気管食道瘻・食道閉鎖、心奇形、腎・泌尿器異常、橈骨・四肢異常 |
| 主な治療 | 奇形の種類に応じた外科的治療と長期フォローアップ |
| 受診する主な診療科 | 小児外科、新生児科・小児科、小児循環器科、泌尿器科、整形外科 |
| 難病指定 | 指定難病(告示番号173) |
VATER症候群とは
VATER症候群は、Vertebral(脊椎)、Anal(肛門直腸)、Tracheo-Esophageal(気管食道)、Renal/Radial(腎・橈骨)の頭文字に由来します。心臓(Cardiac)と四肢(Limb)を加えたVACTERL連合(VACTERL association)という呼称が国際的に広く使われています。「連合(association)」とは、単一の原因で説明できる「症候群」とは異なり、複数の奇形が統計的に偶然以上の頻度で同時に起こる組み合わせを指す概念です。臨床的には、6つの構成要素のうち少なくとも3つを有し、類似の奇形を示す他の遺伝性症候群や染色体異常を除外した場合に診断されるのが一般的です。研究者によっては、2つの構成要素に加えて関連所見を持つ例を含める考え方もあります。日本では指定難病(告示番号173)に指定されています。
1972〜1973年にQuanとSmithが「VATER association」として報告したのが始まりです。その後、心奇形と四肢奇形を加えたVACTERLという呼称に拡張されました。水頭症を伴う一群はVACTERL-Hと呼ばれ、ファンコニ貧血(FANCB遺伝子などの異常)の一部やX連鎖性の病型が含まれるため、別に扱うべき重要な亜群とされています。構成要素の組み合わせは患者ごとに大きく異なり、すべての要素をそろえる例はまれです。構成要素以外にも、単一臍帯動脈、外性器異常、肋骨異常、脊髄係留(テザードコード)、十二指腸閉鎖などの消化管閉鎖を伴うことがあります。
VATER症候群の疫学・患者数
海外の報告では、出生1万〜4万人に1人程度の頻度とされています。構成要素をどう定義するかによって、推計される数値は大きく変わります。日本での正確な患者数は明らかではありませんが、指定難病として医療費助成を受けている患者は限られた数にとどまります。多くは出生前または新生児期に発見されます。ただし、H型気管食道瘻や腎異常など一部の所見は、乳児期以降に見つかることもあります。多くは孤発例(家族内に同じ病気の人がいない例)で、同胞での再発率は低いとされています。性差についてはやや男児に多いとする報告があります。母体糖尿病は、VACTERL様の奇形の危険因子として報告されています。
VATER症候群の原因・病態生理
原因は多くの場合不明で、遺伝的要因と環境要因が関与する多因子性・異質性の高い病態と考えられています。単一の原因遺伝子は同定されていません。一部の症例では、次のような遺伝子や染色体領域の関与が報告されています。FOXF1を含む16q24.1領域の欠失(肺胞毛細血管異形成を伴うことがある)、ZIC3(X連鎖性、内臓錯位を伴う)、TRAP1、HOXD13などです。また、FANCBなどファンコニ貧血関連遺伝子の異常によるVACTERL-Hや、微細な染色体コピー数変異、ミトコンドリア機能異常の報告もあります。ただし、これらの多くは少数例での報告で、確立した原因遺伝子とは言えません。網羅的な遺伝学的解析を行っても、多くの症例で原因は特定できません。
障害を受ける臓器は、胎生3〜8週頃に形成される中胚葉由来の構造に集中しています。具体的には、体節(脊椎)、前腸の気管と食道への分離、総排泄腔の分割(直腸・肛門)、中腎・後腎(腎臓)、肢芽(橈側の骨格)、心臓流出路などです。このため、器官形成期の早い段階に共通の発生障害が起こると考えられています。動物実験では、ソニックヘッジホッグ(SHH)シグナル経路の障害で気管食道瘻、肛門直腸奇形、脊椎や四肢の異常が再現されることが知られ、病態との関連が想定されています。ただし、ヒトでの直接的な証明は限られています。
VATER症候群の症状
- 脊椎異常(V): 半椎、蝶形椎、椎体の癒合、肋骨の欠損や癒合などがみられ、成長とともに先天性側弯症や後弯症が進行することがあります。脊髄係留症候群を合併することもあります。
- 肛門直腸奇形(A): 鎖肛(肛門閉鎖)や、会陰・尿道・腟前庭などとの瘻孔がみられます。新生児期には排便がない、腹部が張る(腹部膨満)、尿に便が混じるといった症状で気づかれます。
- 先天性心疾患(C): 心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴症などがみられます。重症例では、生後早期にチアノーゼや心不全を起こします。
- 食道閉鎖・気管食道瘻(TE): 口から出る泡状の唾液の増加、哺乳時のむせやチアノーゼ、胃管が食道で止まって進まないことで気づかれます。病型は、上部食道が盲端で下部食道が気管とつながるGross C型が最も多いとされます。気管とのつながりのみで食道閉鎖のないH型瘻では、診断が遅れることがあります。
- 腎・泌尿器異常(R): 片側の腎臓の欠損(腎無形成)、低形成、異形成、馬蹄腎、水腎症、膀胱尿管逆流などがみられます。尿路感染症の反復や、将来の腎機能低下の原因になります。
- 四肢異常(L): 橈骨の欠損や低形成(内反手)、母指の低形成・欠損・多指など、腕の親指側(橈側列)の異常が特徴的です。下肢の異常はより少ないとされます。
- 呼吸器症状: 気管食道瘻による誤嚥性肺炎、気管軟化症による喘鳴、呼吸困難、反復性気管支炎を生じやすくなります。
- 哺乳・摂食障害と成長障害: 食道閉鎖術後の吻合部狭窄、胃食道逆流、食道の蠕動(ぜんどう)障害、心疾患などにより、体重増加不良をきたしやすくなります。
- 排便・排尿機能障害: 肛門直腸奇形の根治術後に、便秘や便失禁がみられることがあります。脊椎・脊髄の異常を伴う場合は、神経因性膀胱を合併することがあります。
- その他の随伴所見: 単一臍帯動脈、外性器異常(尿道下裂、停留精巣など)、十二指腸閉鎖などの消化管閉鎖、水頭症(VACTERL-H)を伴うことがあります。知的発達は通常保たれます。
VATER症候群の経過と合併症
本疾患は進行性の病気ではありません。経過と予後は、どの奇形がどの程度の重さで組み合わさっているかで決まります。新生児期には、食道閉鎖・気管食道瘻、肛門直腸奇形、重症心疾患への緊急対応が中心となり、この時期が最も生命の危険が高い時期です。乳幼児期以降は、段階的な根治手術(肛門形成、心臓手術、四肢の再建など)と、それぞれの術後管理が中心になります。成長期には側弯症の進行、腎機能、排便・排尿の自立が主な課題になります。成人期には、慢性腎臓病、呼吸器・消化管の後遺症、心疾患術後の遺残病変への対応が必要になることがあります。
主な合併症には、次のようなものがあります。<br>食道閉鎖術後:吻合部狭窄、縫合不全、瘻孔の再開通、胃食道逆流症、気管軟化症、反復性肺炎。長期的にはバレット食道などの食道粘膜変化も報告されています。<br>肛門直腸奇形術後:慢性便秘、便失禁。<br>腎・泌尿器:膀胱尿管逆流による腎瘢痕化、慢性腎臓病。<br>脊椎・脊髄:進行性側弯による呼吸機能低下、脊髄係留症候群による下肢の運動・感覚障害や膀胱直腸障害。<br>心疾患:術後の不整脈や遺残病変。<br>複数回の手術と長期入院は、発達や家族生活にも影響を与えます。
VATER症候群の診断・診断基準
出生前の胎児超音波で、羊水過多、胃泡(胃の中の空気)の欠如・小ささ、心奇形、椎体異常、腎異常、橈骨欠損、単一臍帯動脈などが見つかり、疑われることがあります。ただし、出生前に確定診断することは困難です。出生後は、一つの構成要素(例:食道閉鎖や鎖肛)が見つかった時点で、他の構成要素を系統的に検索することが診断の基本です。6つの構成要素のうち3つ以上が確認され、CHARGE症候群、22q11.2欠失症候群、ファンコニ貧血、18トリソミーなど、類似した奇形を示す疾患が除外できれば、臨床的にVATER症候群(VACTERL連合)と診断します。指定難病の申請では、厚生労働省が示す診断基準・重症度分類に沿って、指定医が臨床調査個人票を作成します。
- 胃管挿入と胸腹部X線: 胃管が上部食道で反転すれば食道閉鎖を示します。腸管にガスがあれば、下部食道と気管の間に瘻孔がある(C型など)と推定できます。同時に椎体や肋骨の異常も評価できます。
- 倒立位撮影・会陰部診察・会陰部超音波: 肛門直腸奇形の病型(高位・中間位・低位)と瘻孔の有無を評価し、人工肛門を先に造るか、直接根治術を行うかの判断に用います。
- 心エコー検査: 先天性心疾患の有無と種類を診断します。大動脈弓が右側にあるかどうかは食道閉鎖手術の進入側の決定に関わるため、術前に必ず確認します。
- 腹部・腎超音波、排尿時膀胱尿道造影: 腎無形成、水腎症、膀胱尿管逆流などを評価します。腎シンチグラフィで、左右それぞれの腎機能を評価することもあります。
- 脊椎X線・脊髄超音波/MRI: 椎体奇形を評価するとともに、脊髄係留や脊髄空洞などの脊髄病変の有無を確認します。乳児早期は脊髄超音波で、それ以降はMRIで評価します。
- 四肢X線: 橈骨や母指の形成不全の程度を分類し、整形外科・手外科での治療計画に用います。
- 染色体検査・マイクロアレイ解析: 染色体異常や微細欠失(22q11.2欠失、16q24.1欠失など)を除外または同定するために行います。
- 染色体脆弱性試験: 橈骨・母指の異常や水頭症、成長障害を伴う場合は、ファンコニ貧血を除外するため、マイトマイシンCなどを用いた染色体断裂試験が検討されます。ファンコニ貧血では、骨髄不全と悪性腫瘍への長期的な対策が必要になります。
- 臨床診断基準: 6つの構成要素のうち3つ以上を有し、他の疾患が除外されることが基本です。指定難病の認定には、診断基準に加えて重症度分類を満たす必要があります。
VATER症候群と鑑別すべき疾患
- CHARGE症候群: 眼のコロボーマ(虹彩などの欠損)、後鼻孔閉鎖、耳の形態異常や難聴、脳神経障害を伴う点で区別され、多くはCHD7遺伝子の変異が同定されます。
- 22q11.2欠失症候群: 円錐動脈幹異常などの心疾患、低カルシウム血症、免疫不全(胸腺の低形成)、口蓋の異常を伴い、FISH法やマイクロアレイで確定します。
- ファンコニ貧血: 橈側列の異常、皮膚の色素沈着、低身長などがみられ、染色体脆弱性試験が陽性になり、のちに骨髄不全を発症する点が重要な鑑別点です。
- 18トリソミー・13トリソミー: 重度の発達障害と特徴的な外表奇形を伴い、染色体検査で区別できます。
- タウンズ・ブロックス症候群: 肛門・母指・腎の異常が重なりますが、耳の形態異常や難聴を伴うことが多く、SALL1遺伝子の変異で確定します。
- ホルト・オーラム症候群: 上肢橈側の異常と心房中隔欠損などの心疾患を伴いますが、肛門・気管食道・腎の異常は通常みられず、TBX5遺伝子の変異で確定します。
VATER症候群の治療
原因そのものを治す治療はありません。個々の奇形に対する外科的治療と、その後の機能障害への長期的な管理が治療の中心です。生命に直結する問題から優先し、気道と呼吸の確保、食道閉鎖・気管食道瘻、腸閉塞を防ぐための肛門直腸奇形への対応、循環が不安定な心疾患を新生児期に治療します。その後は全身状態と成長を見ながら、段階的に根治手術を計画します。小児外科、新生児科、小児循環器科・心臓血管外科、小児泌尿器科・腎臓科、整形外科・手外科、脳神経外科、麻酔科、看護、栄養、リハビリテーション、医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療が不可欠です。手術の時期や方法は施設や病状によって異なるため、主治医・専門医と十分に相談して決めます。
- 食道閉鎖・気管食道瘻の手術: 新生児期に気管食道瘻を閉じ、食道の端と端をつなぐ手術(一期的吻合)を行います。上下の食道の間隔が長いlong gap例では、胃瘻を造設して成長を待つ、食道を伸ばす手技を行う、食道を再建するなどの段階的治療が選ばれます。胸腔鏡手術を行う施設もあります。
- 食道閉鎖術後の管理: 吻合部狭窄には内視鏡的バルーン拡張を行い、胃食道逆流には酸分泌抑制薬や噴門形成術を検討します。気管軟化症が重い場合は、外科的治療を要することがあります。
- 肛門直腸奇形の手術: 低位型では、新生児期に会陰部からの肛門形成術を直接行えることがあります。中間位・高位型では、まず人工肛門を造設し、乳児期に後方矢状切開直腸肛門形成術(PSARP)などの根治術を行い、その後に人工肛門を閉じるのが一般的です。
- 排便管理(ボウルマネジメント): 術後は肛門の拡張(ブジー)、緩下剤、浣腸や洗腸を組み合わせて、便秘や便失禁を管理します。就学前後に社会的な排便自立を目指します。
- 先天性心疾患の治療: 病型に応じて、経過観察、薬物治療、カテーテル治療、心臓手術を選びます。ほかの手術の麻酔リスクにも関わるため、手術の順序は関係各科で協議して決めます。
- 腎・泌尿器の管理: 膀胱尿管逆流には、予防的な抗菌薬投与や逆流防止術を検討します。神経因性膀胱には清潔間欠導尿を行い、腎機能と血圧を定期的に評価します。慢性腎臓病が進行した場合は、腎代替療法(透析・腎移植)が必要になることがあります。
- 脊椎・脊髄の治療: 側弯症は装具や定期的な画像評価で経過を観察し、進行例では成長を妨げにくい手術(成長温存手術)や矯正固定術を検討します。症状のある脊髄係留には係留解除術を行います。
- 上肢形成異常の治療: 橈側の内反手には、乳児期からのストレッチや装具療法、手関節の中心化術などを行います。母指の欠損や高度の低形成には、示指を母指に作り替える母指化術などで、つまみ動作の機能改善を図ります。
- 栄養・リハビリテーション・発達支援: 経管栄養や胃瘻を含む栄養管理、摂食嚥下訓練、理学療法・作業療法を行います。長期入院による発達の遅れには、療育的な支援を並行して行います。
VATER症候群の予後・長期フォロー
生命予後は、重症の心疾患、両側の腎異常、long gapの食道閉鎖、肺の合併症の有無に大きく左右されます。かつては新生児期の死亡率が高い疾患でしたが、新生児集中治療と小児外科・心臓外科の進歩で、多くの患者が乳児期を乗り越えられるようになりました。知的発達は通常正常で、就学・就労して自立した生活を送る成人も少なくありません。一方で、排便や排尿の問題、反復する呼吸器感染、側弯症、慢性腎臓病などがQOL(生活の質)に影響し、成人後も医療的ケアが続く例があります。
構成要素ごとに定期的なフォローアップが必要です。<br>・食道:嚥下障害、逆流、内視鏡による粘膜の評価<br>・呼吸器:肺機能、反復感染への対応<br>・腎臓:血圧、尿検査、腎機能、画像検査<br>・脊椎:側弯症の経過観察、とくに思春期の急速な成長期<br>・心臓:術後の遺残病変と不整脈<br>・排便・排尿:機能評価と自立支援<br>思春期以降は性機能・妊孕性(妊娠する力)の相談も課題となり、小児診療科から成人診療科への移行期医療を計画的に進めることが重要です。
VATER症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
食道閉鎖術後の子どもでは、食べ物をよく噛む、一口を小さくする、水分と一緒に食べる、肉などの塊になりやすい食品に注意するといった工夫で、食べ物のつかえを予防します。逆流対策として、食後すぐに横にならない習慣も役立ちます。排便管理は毎日の生活リズムの中に組み込み、学校とは、トイレの使用や着替え、洗腸の時間などについて事前に相談しておくと安心です。単腎や腎機能低下がある場合は、脱水を避け、腎臓に負担のかかる薬(一部の鎮痛薬など)の使用は主治医に確認します。また、強い衝撃を受けるコンタクトスポーツについては個別に相談します。予防接種は原則として通常どおり受けられますが、心疾患や免疫の状態によって主治医と調整します。再発率は一般に低いとされますが、家族の既往歴や遺伝学的検査の結果によって判断は変わるため、次の子どもを考える際は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。
利用できる制度・相談窓口
VATER症候群は指定難病であり、診断基準と重症度基準を満たせば、難病指定医の臨床調査個人票をもとに都道府県へ申請して医療費助成を受けられます。18歳未満では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となりうるため(本症候群そのもの、または先天性心疾患・肛門直腸奇形・腎疾患などの合併症として)、主治医と相談のうえ、より有利な制度を選びます。乳幼児医療費助成、自立支援医療(育成医療・更生医療)、高額療養費制度も利用できます。障害の程度に応じて、身体障害者手帳(心臓、腎臓、肢体不自由、ぼうこう・直腸機能障害など)の交付を受けられ、特別児童扶養手当や障害児福祉手当、成人後の障害年金の対象となる場合があります。医療的ケアが必要な子どもには、訪問看護、医療型短期入所、医療的ケア児支援センター、保育所・学校での看護師配置などの支援があります。相談窓口としては、病院の医療ソーシャルワーカー、保健所・保健センター、難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援員、患者・家族会などが利用できます。
VATER症候群に伴う心のケア・心理社会的支援
出生直後からの集中治療、度重なる手術と長期入院は、両親に強い不安、罪悪感、抑うつ、心的外傷後ストレス症状をもたらすことがあります。「妊娠中の何かが原因だったのでは」と自分を責める親も少なくありませんが、多くの場合、原因は特定できず、親の行動によるものではありません。きょうだいへの配慮や仕事との両立も、家族の大きな負担になります。子ども自身も成長するにつれて、手術の傷跡、人工肛門、排便の失敗、腕や手の形の違い、低身長などから、ボディイメージ(自分の体に対する印象)の悩み、いじめ、不登校、思春期の自己肯定感の低下を経験することがあります。気分の落ち込み、不眠、食欲不振、集団を避けるといったサインが続く場合は、主治医、看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、児童精神科などに早めに相談してください。患者・家族会での交流は、孤立感を和らげる助けになります。
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VATER症候群の受診の目安
- 哺乳のたびにむせる、口から泡状の唾液があふれる、哺乳中に顔色が悪くなる(チアノーゼ)場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 生後24〜48時間たっても胎便が出ない、腹部が張って緑色のものを吐くなど、腸閉塞が疑われる場合は救急受診が必要です。
- 呼吸が速い・苦しそう、唇が紫色、ぐったりして哺乳できないなど、心不全や呼吸不全が疑われる場合は救急受診してください。
- 高熱、尿の濁り、不機嫌など尿路感染症を疑う症状や、食べ物が食道につかえて唾液も飲み込めない場合は、早めに受診してください。
- 歩き方の変化、下肢のしびれや筋力低下、排尿・排便の状態の悪化、背中の変形が急に進む場合は、脊髄係留や側弯症の進行を疑い、主治医に相談してください。
VATER症候群についてのよくある質問
Q. 遺伝する病気ですか?次の子にも起こりますか?
A. 多くは家族内に同じ病気の人がいない孤発例で、同胞での再発率は低いとされています。ただし、ファンコニ貧血やX連鎖性の病型、染色体の微細な変化などが見つかった場合は、再発率が異なります。個別の評価には遺伝カウンセリングが役立ちます。
Q. 知能や発達に影響はありますか?
A. VATER症候群そのものでは、知的発達は通常保たれます。ただし、長期入院や重い合併症、水頭症などにより発達に遅れが生じることがあるため、療育や発達のフォローを受けることが大切です。
Q. 手術は何回くらい必要ですか?
A. 奇形の種類や重症度によって大きく異なります。新生児期の手術に加えて、人工肛門の閉鎖、心臓・泌尿器・四肢・脊椎の手術など、複数回が必要になることが多いです。全体の見通しは主治医チームと相談して確認してください。
Q. 大人になっても通院は必要ですか?
A. 腎機能、側弯症、食道や呼吸器の後遺症、心疾患の術後管理など、成人後も定期的な診察が必要になることが多いです。小児科から成人診療科への移行を、計画的に進めることが勧められます。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。