モワット・ウィルソン症候群
Mowat-Wilson Syndrome
モワット・ウィルソン症候群(Mowat-Wilson Syndrome)|モワット・ウィルソン症候群(Mowat-Wilson syndrome:MWS)は、2番染色体上のZEB2遺伝子の片側アレルの機能喪失によって起こる先天異常症候群です。特徴的な顔立ち、中等度〜重度の知的障害、てんかん、ヒルシュスプルング病、先天性心疾患などが組み合わさって現れます。症状は乳児期から多くの臓器に及ぶため、小児科を中心に複数の診療科が連携して生涯にわたり支援します。
モワット・ウィルソン症候群の要点
モワット・ウィルソン症候群は、ZEB2遺伝子の片側アレルの機能喪失により生じる常染色体顕性遺伝の先天異常症候群です。特徴的な顔貌、中等度〜重度の知的障害、てんかん、ヒルシュスプルング病、先天性心疾患などがみられ、日本では指定難病(告示番号178)に指定されています。
| 別名・略称 | Mowat-Wilson症候群、モワット-ウィルソン症候群、MWS |
|---|---|
| 分野 | 染色体・先天異常症候群 |
| 原因遺伝子 | 2番染色体上のZEB2遺伝子(ZFHX1B、SIP1) |
| 遺伝形式 | 常染色体顕性(優性)遺伝 |
| 好発年齢 | 乳児期から症状が現れ、生涯にわたり支援が必要 |
| 主な症状 | 特徴的顔貌、知的障害、てんかん、ヒルシュスプルング病、先天性心疾患、脳梁の異常など |
| 主な検査 | ZEB2遺伝子の遺伝学的検査(病的バリアントや欠失の検出) |
| 受診する主な診療科 | 小児科を中心に、複数の診療科が連携 |
モワット・ウィルソン症候群とは
MWSは、転写因子ZEB2(別名ZFHX1B、SIP1)をコードする遺伝子のヘテロ接合性病的バリアント、またはこの遺伝子を含む領域の欠失によって起こる常染色体顕性(優性)遺伝性の疾患です。ほぼ全例で知的障害と特徴的顔貌がみられます。これに加えて、ヒルシュスプルング病(腸管無神経節症)、先天性心疾患、脳梁の欠損・低形成などの脳形態異常、てんかん、泌尿生殖器の異常、眼の異常、小頭症などが、さまざまな組み合わせで現れます。日本では指定難病(告示番号178)に指定されており、多臓器にまたがる先天異常症候群として位置づけられています。
本症候群は1998年、オーストラリアの臨床遺伝医MowatとWilsonらが、ヒルシュスプルング病・小頭症・知的障害・特徴的顔貌を併せ持つ患者群として報告しました。2001年には、日本(若松ら)とヨーロッパの研究グループがほぼ同時期に、原因遺伝子としてZEB2を特定しました。当初はヒルシュスプルング病を伴う症候群とみなされていました。しかし遺伝子診断が広がった結果、ヒルシュスプルング病を伴わない例も多いことがわかり、現在は顔貌と神経発達の特徴が診断の中心とされています。病型分類は確立していません。遺伝子の変化の種類については、大部分を占めるナンセンス変異・フレームシフト変異・遺伝子全体の欠失と、まれなミスセンス変異などとで、臨床像の幅が異なることが報告されています。
モワット・ウィルソン症候群の疫学・患者数
海外では出生5万〜7万人に1人程度と推定されていますが、軽症例や未診断例があるため実際の頻度は不明です。日本でも遺伝学的検査の普及に伴って診断例が増えていますが、正確な患者数ははっきりしていません。性差は基本的にないとされます。ただし尿道下裂や停留精巣などの外性器異常を伴う男児が早期に医療機関を受診しやすいことから、診断時期に差が出る可能性が指摘されています。症状は出生時から存在し、新生児期の腸閉塞(ヒルシュスプルング病)や心疾患をきっかけに見つかる例と、乳幼児期の発達の遅れやてんかんをきっかけに見つかる例があります。大部分は両親に同じ変化がない新生(de novo)変異による孤発例です。
モワット・ウィルソン症候群の原因・病態生理
ZEB2は2番染色体長腕(2q22.3)に位置します。ZEB2は2つのジンクフィンガー領域とホメオドメイン様領域をもつ転写抑制因子で、DNA上のE-box様配列に結合します。またSMADタンパク質と相互作用し、TGF-β/BMPシグナルによる遺伝子発現を調節します。MWSでは片方のアレルの機能が失われ、遺伝子産物の量が足りなくなること(ハプロ不全)が主な発症機序と考えられています。主な変化はナンセンス変異、フレームシフト変異、遺伝子全体または部分の欠失で、比較的まれにミスセンス変異やスプライス異常があります。親からの遺伝はきわめてまれです。ただし親の生殖細胞系列モザイクによる同胞例が報告されているため、次子の再発リスクはゼロではありません。
ZEB2は胎生期に広く発現し、神経堤細胞の上皮間葉転換と移動、大脳皮質や海馬の形成、脳梁を作る神経線維の形成、オリゴデンドロサイトの分化と髄鞘形成、心臓・大血管の流出路の形成などに関わります。腸管神経節細胞は迷走神経領域の神経堤細胞が腸管に沿って移動して作られます。ZEB2が不足すると、この移動や分化が損なわれ、遠位の腸管に神経節細胞が欠如します(ヒルシュスプルング病)。神経堤細胞は心臓の流出路や顔面の骨格の形成にも関わるため、心疾患や特徴的顔貌も同じ仕組みで説明されます。中枢神経系では、皮質の神経回路の形成や髄鞘形成の異常が、知的障害、言語表出の高度な障害、てんかん、脳梁低形成につながると考えられています。重症度の個人差には、変異の種類やほかの遺伝的・環境的要因が影響すると推定されています。
モワット・ウィルソン症候群の症状
- 特徴的顔貌: 眼間開離、内側が濃く広がる眉、深くくぼんだ眼、幅広い鼻根と丸い鼻尖、突出した鼻柱、尖った細い顎、口を開けた笑顔などが特徴です。最もわかりやすい所見は、中央がくぼみ上向きに反った耳たぶです。顔立ちは年齢とともに変化し、成人では顔が長くなり顎が目立つ傾向があります。身長はむしろ低身長傾向を示すことがあります。
- 知的障害・発達遅滞: ほぼ全例にみられ、多くは中等度〜重度です。とくに言葉の表出が強く障害され、有意語がないか、ごく少数にとどまる例が多い一方、言葉の理解や身振り・サインによるやりとりは比較的保たれることがあります。
- 運動発達の遅れ・筋緊張低下: 乳児期は筋緊張が低く、独歩の獲得は平均して幼児期後半以降と遅れ、歩けるようにならない例もあります。歩行は足を広げた不安定な歩き方になりやすいです。
- てんかん: 約7〜8割に発症し、多くは幼児期に始まります。焦点発作、非定型欠神発作、強直間代発作など発作型は多様で、睡眠中に脳波異常が増える例もあります。
- ヒルシュスプルング病・慢性便秘: 約4〜5割に腸管無神経節症を伴い、新生児期の胎便排泄遅延や腹部膨満で見つかります。ヒルシュスプルング病がなくても、重い慢性便秘が多くみられます。
- 先天性心疾患: 約半数にみられ、動脈管開存、心室・心房中隔欠損、肺動脈弁狭窄や肺動脈の異常、大動脈縮窄、ファロー四徴などが報告されています。
- 脳の形態異常: 脳梁の欠損・低形成が約半数に認められます。そのほか、海馬の形態異常、脳室拡大、白質容積の減少などがみられることがあります。
- 小頭症・成長障害: 小頭症の頻度は高く、出生時は正常でも成長とともに目立つことがあります。低身長や体重増加不良を伴う例もあります。
- 泌尿生殖器の異常: 男児では尿道下裂、停留精巣が多く、膀胱尿管逆流や水腎症などの尿路異常も報告されています。
- 眼の異常: 斜視が多く、ほかに屈折異常、小眼球、虹彩や網膜の欠損(コロボーマ)、視神経の異常などがみられることがあります。
- 行動特性: よく笑う朗らかな気質が特徴的です。物を口に入れる・噛む行動、手の常同運動、睡眠障害、多動傾向などを伴うことがあります。
- その他: 歯の萌出や配列の異常、胸郭や脊柱の変形(側弯)、扁平足、体温調節の不安定さ、反復性の中耳炎などが報告されています。
モワット・ウィルソン症候群の経過と合併症
本症候群は進行性の変性疾患ではなく、ゆっくりとでも発達は続きます。新生児期〜乳児期は、ヒルシュスプルング病や心疾患への外科的対応、哺乳障害や体重増加不良が主な課題です。幼児期には発達の遅れが明らかになり、てんかんの発症もこの時期に集中します。学童期以降はてんかんが落ち着く例もある一方、便秘、側弯、睡眠や行動の問題が前面に出ることがあります。成人期に達する人も多く、30〜40歳代の成人例も報告されています。ただし成人期の自然歴の情報はまだ限られており、知見が集積されている段階です。
重要な合併症の一つは、ヒルシュスプルング病に伴う腸炎(ヒルシュスプルング病関連腸炎)です。根治手術の前後を問わず起こり、発熱、腹部膨満、悪臭のある爆発的な下痢を特徴とし、重症化すると敗血症やショックに至ることがあります。そのほか、心疾患による心不全や術後の不整脈、てんかん重積、誤嚥性肺炎、尿路感染症、側弯の進行による呼吸機能低下などが問題になります。言葉で痛みや不調を訴えにくいため、腸閉塞、骨折、歯痛などの発見が遅れやすい点にも注意が必要です。
モワット・ウィルソン症候群の診断・診断基準
診断は、特徴的顔貌(とくに耳たぶの形、眉、鼻、顎)と、重い知的障害・言語の表出障害・てんかん・ヒルシュスプルング病・先天性心疾患・脳梁低形成などの組み合わせから臨床的に疑うことから始まります。乳児期は顔貌の特徴がはっきりしないため、ヒルシュスプルング病や心疾患を持つ児に発達の遅れや小頭症が加わった場合には、本症候群を念頭に置くことが大切です。確定診断はZEB2遺伝子の遺伝学的検査で行います。指定難病の診断基準(難病情報センターに掲載)も、主要症状とZEB2の病的バリアントの確認を柱としています。診断がついた後は、合併しやすい臓器の異常を網羅的に評価します。遺伝学的検査の保険適用の範囲は改定されることがあるため、実施施設や遺伝診療部門に確認してください。
- ZEB2遺伝子解析(シーケンス解析): サンガー法や次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル、エクソーム解析でZEB2の病的バリアントを検出します。大部分の患者はこの方法で診断されます。
- 欠失・重複の解析(MLPA法、マイクロアレイ染色体検査など): シーケンス解析で見つからない遺伝子全体または部分の欠失を検出します。大きな欠失では周辺の遺伝子も失われ、より重い症状を伴うことがあります。
- 注腸造影・直腸粘膜生検: 注腸造影で腸管口径の変化(狭い部分と拡張部の境界)を確認し、直腸粘膜生検でアセチルコリンエステラーゼ染色の陽性線維や神経節細胞の欠如を確認して、ヒルシュスプルング病を診断します。病変の範囲は手術方針に関わります。
- 心臓超音波検査: 診断時に全例で行うことが推奨されます。中隔欠損、動脈管開存、肺動脈・大動脈の異常の有無を評価します。
- 頭部MRI: 脳梁の欠損・低形成、海馬の形態異常、脳室拡大、髄鞘化の遅れなどを評価します。てんかんや発達評価の参考になります。
- 脳波検査: てんかん性放電の有無や、睡眠中の脳波異常の増加を確認します。発作が疑われるエピソードとの対応を確かめ、治療効果の判定にも用います。
- 腹部・泌尿器超音波検査、排尿時膀胱尿道造影: 水腎症や膀胱尿管逆流などの尿路異常を評価し、尿路感染の予防や治療方針の判断に用います。
- 眼科・耳鼻科・歯科評価: 斜視、屈折異常、眼底の異常、聴力、歯の問題を早期に見つけ、視覚・聴覚の補助や処置につなげます。
- 発達・成長評価: 発達検査、身長・体重・頭囲の推移を定期的に評価し、療育や栄養管理の計画に役立てます。
モワット・ウィルソン症候群と鑑別すべき疾患
- アンジェルマン症候群: 笑顔の多さ、重い言語障害、てんかん、小頭症が共通しますが、顔貌の違い、ヒルシュスプルング病や心疾患が少ないこと、15番染色体のメチル化異常やUBE3Aの異常の確認で区別します。
- ピット・ホプキンス症候群: 重い知的障害と特徴的顔貌が似ていますが、過呼吸発作が特徴で、TCF4の異常で区別します。
- 非症候群性ヒルシュスプルング病: RETなどの関連遺伝子の異常によるもので、重い知的障害や特徴的顔貌、小頭症を伴わない点で区別します。
- 22q11.2欠失症候群: 心疾患と発達の遅れが共通しますが、口蓋の異常、低カルシウム血症、免疫の異常などの所見と、22q11.2欠失の確認で区別します。
- CHARGE症候群: コロボーマ、心疾患、外性器低形成が重なりますが、後鼻孔閉鎖、特徴的な耳介の形、半規管の形成異常、CHD7の異常で区別します。
- Goldberg-Shprintzen症候群: ヒルシュスプルング病、小頭症、知的障害を伴う類縁疾患で、KIF1BPの異常で区別します。
モワット・ウィルソン症候群の治療
現時点では、ZEB2の機能不足そのものを補う根本的な治療法は確立していません。治療の中心は、合併症の早期発見と臓器ごとの治療、発達支援、生活の質の向上です。小児科(神経・遺伝)を中心に、小児外科、循環器科、泌尿器科、眼科、整形外科、歯科、リハビリテーション、看護、療育・教育、福祉が連携する多職種チームによる管理が望まれます。発作型、手術の適応や時期、薬の選択は一人ひとり異なるため、主治医・専門医と十分に相談して決めてください。
- ヒルシュスプルング病の外科治療と腸炎管理: 病変の範囲に応じて、人工肛門の造設や経肛門的プルスルー法などの根治術が行われます。術後も腸炎の予防と早期治療(洗腸、抗菌薬など)、排便管理を続けます。
- 慢性便秘の管理: ヒルシュスプルング病の有無にかかわらず、浸透圧性下剤などの内服、浣腸、食事・水分の工夫を組み合わせ、便が詰まる状態を予防します。
- 先天性心疾患の治療: 病型と重症度に応じて、内科的管理、カテーテル治療、外科手術を選びます。術後は長期的な循環器フォローが必要です。
- てんかんの薬物療法: 発作型と脳波所見に応じて抗てんかん薬を選びます。バルプロ酸などが有効であったとする報告がありますが、効果には個人差があります。難治例では複数の薬の併用や、専門施設での治療の検討が行われます。
- 発達支援・リハビリテーション: 理学療法、作業療法、言語聴覚療法を早期から行います。言葉の表出が難しいことが多いため、絵カード、サイン、コミュニケーション機器などの拡大・代替コミュニケーション(AAC)の導入が勧められます。
- 泌尿生殖器の治療: 停留精巣は適切な時期に精巣固定術を検討し、尿道下裂は形成手術を行います。膀胱尿管逆流は予防的抗菌薬や手術を選択肢とします。
- 睡眠・行動への支援: 睡眠環境の調整や行動療法的な支援を基本とし、必要に応じて薬物療法を検討します。口に物を入れる行動などには、安全な環境づくりで対応します。
- 眼科・歯科・整形外科的管理: 斜視や屈折異常に対する眼鏡・手術、定期的な歯科管理、側弯や足部変形に対する装具・手術などを、成長に合わせて行います。
- 遺伝カウンセリング: 診断の意味、再発率、同胞や将来の家族計画について、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが情報提供と心理的支援を行います。
モワット・ウィルソン症候群の予後・長期フォロー
生命予後は、合併する心疾患やヒルシュスプルング病の重症度、腸炎や重いてんかんの管理に大きく左右されます。乳幼児期にこれらの合併症で亡くなる例も報告されていますが、近年は外科治療と全身管理の進歩により、成人期まで生活する人が増えています。知的障害は生涯続き、多くの人は日常生活に何らかの介助を必要とします。一方で、人と関わることを好む朗らかな気質を持つ人が多く、適切な支援のもとで、身振りやAACを使ったコミュニケーション、集団生活、余暇活動を楽しむことができます。
長期フォローアップでは、成長・栄養、てんかん、排便、心機能、腎・尿路、視力・聴力、歯、側弯を定期的に評価します。思春期以降は、側弯の進行、体重の管理、思春期の身体変化への対応、精神・行動面の変化に注意が必要です。小児科から成人診療科への移行(トランジション)は早めに計画し、診療情報や緊急時対応をまとめたサマリーを家族と共有しておくと役立ちます。
モワット・ウィルソン症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、排便の状態(回数、性状、お腹の張り)の記録が腸炎や腸閉塞の早期発見に役立ちます。てんかん発作は、動画記録と発作時の対応手順を家族・園・学校で共有しておきましょう。言葉で痛みを訴えにくいため、機嫌、食欲、睡眠、表情の変化を不調のサインとして捉えることが大切です。誤飲・誤嚥や転倒の防止、口腔ケア、規則正しい睡眠リズムも重要です。予防接種は、原則として主治医と相談しながら標準的な計画で進めます。遺伝については、ほとんどが新生変異で両親に責任はありません。ただし親の生殖細胞系列モザイクの可能性があるため、次子を考える際は遺伝カウンセリングで具体的なリスクや選択肢を相談することをお勧めします。患者本人が子をもつ場合、理論上の伝達確率は50%です。
利用できる制度・相談窓口
モワット・ウィルソン症候群は指定難病であり、診断基準と重症度基準を満たす場合には医療費助成を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病(染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群の一つ)として医療費助成を受けられる可能性があります。障害の程度に応じて、療育手帳、身体障害者手帳(心臓、肢体、ぼうこう・直腸の障害など)、特別児童扶養手当、障害児福祉手当が利用できる場合があります。成人後は、障害基礎年金や障害福祉サービス(居宅介護、短期入所、生活介護、グループホームなど)の対象になり得ます。児童発達支援、放課後等デイサービス、特別支援教育も活用できます。相談窓口としては、市区町村の福祉・保健担当課、保健所、難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援員、医療機関の医療ソーシャルワーカーがあり、患者家族会などのつながりも情報源になります。申請要件や制度の内容は変わることがあるため、最新の情報を窓口で確認してください。
モワット・ウィルソン症候群に伴う心のケア・心理社会的支援
診断を受けた直後の家族は、驚き、悲しみ、自責感、将来への不安を強く感じることが多く、手術や入院が続く乳児期には心身ともに疲れ果てやすくなります。重い言語障害があるため子どもの気持ちが読み取りにくいことや、夜間の睡眠障害、発作への緊張が続くことは、介護者の慢性的な睡眠不足や抑うつ・不安・適応障害の原因になり得ます。きょうだいも寂しさや我慢を抱えやすいため、配慮が必要です。一方で、本症候群の子どもの笑顔や人なつっこさは家族の大きな支えになることも多く、小さな成長を共有できる場が重要です。つらさが続くとき、眠れない・食べられない・気力がわかないといった状態が2週間以上続くときは、主治医、看護師、臨床心理士、精神科・心療内科、保健師に早めに相談してください。短期入所やレスパイトの利用は、家族が健康を保つための正当な手段です。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
モワット・ウィルソン症候群の受診の目安
- 発熱、腹部膨満、嘔吐、悪臭を伴う爆発的な下痢がみられる場合は、腸炎の可能性があるため直ちに受診してください。
- 数日以上排便がなくお腹が張っている、緑色の嘔吐がある場合は、腸閉塞の可能性があるため救急受診してください。
- けいれんが5分以上続く、意識が戻らないうちに発作を繰り返す場合は、救急要請を検討してください。
- 顔色が悪い、呼吸が苦しそう、哺乳量や尿量が明らかに減った場合は、心不全や脱水の可能性があるため早めに受診してください。
- 発熱を繰り返す、尿の臭いや色が変わった場合は、尿路感染の可能性があるため受診してください。
- できていたことができなくなる、発作の型や回数が変わった場合は、主治医に相談してください。
モワット・ウィルソン症候群についてのよくある質問
Q. 親の遺伝が原因ですか?次の子にも起こりますか?
A. 大部分は受精前後に偶然生じた新生変異で、両親の体質や妊娠中の行動が原因ではありません。ただし、親の生殖細胞にだけ変異がある「モザイク」により同胞が発症した報告があるため、リスクはゼロではありません。詳しくは遺伝カウンセリングで相談してください。
Q. 話せるようになりますか?
A. 多くの場合、話し言葉の獲得は限られますが、理解力は表出より保たれていることが少なくありません。サイン、絵カード、タブレット型のコミュニケーション機器などを早期から使うことで、意思疎通の幅を広げられます。
Q. ヒルシュスプルング病がなければ、お腹の心配はいりませんか?
A. ヒルシュスプルング病がなくても、重い便秘を伴うことが多いため、排便管理は継続的に必要です。腹部の張りや排便状況の変化があれば、主治医に相談してください。
Q. 大人になってからはどのような支援がありますか?
A. 指定難病の医療費助成、障害基礎年金、障害福祉サービス(生活介護、グループホーム、短期入所など)が利用できる可能性があります。成人診療科への移行や、福祉サービスの手続きは早めに準備を始めることが勧められます。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。