修正大血管転位症

Congenitally Corrected Transposition of the Great Arteries (CCTGA)

修正大血管転位症(Congenitally Corrected Transposition of the Great Arteries (CCTGA))|修正大血管転位症(CCTGA)は、心房と心室のつながり、心室と大血管のつながりの両方が入れ替わっている先天性心疾患です。血液は肺と全身を正しい順序で流れるため「修正」と呼ばれますが、本来は肺へ血液を送るための右心室が全身へ血液を送り続ける構造になっています。そのため、合併する心奇形がなく小児期を元気に過ごした人でも、成人期以降に心不全、三尖弁逆流、房室ブロックなどが現れやすく、生涯にわたる専門的な管理が必要です。

修正大血管転位症の要点

修正大血管転位症は、心房と心室、心室と大血管の接続がともに入れ替わる(二重不一致)先天性心疾患で、右心室が全身へ血液を送ります。心室中隔欠損や肺動脈狭窄の合併で症状は異なり、単独でも成人期に心不全、三尖弁逆流、房室ブロックが起こりやすい指定難病です。

別名・略称先天性修正大血管転位症、修正大血管転位、二重不一致、房室不一致・心室大血管不一致、CCTGA、ccTGA、L-TGA、congenitally corrected transposition
分野循環器・先天性心疾患
指定難病告示番号208
本態房室不一致と心室大血管不一致の二重不一致(右心室が体心室)
主な症状心不全、三尖弁逆流、房室ブロック(合併症によりチアノーゼなども)
主な検査心エコー、心電図、心臓MRI・CT、心臓カテーテル検査
主な治療心不全などの内科的管理、ペースメーカー、手術(機能的修復・ダブルスイッチ手術など)
受診する主な診療科小児循環器科、循環器内科(成人先天性心疾患)、心臓血管外科

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修正大血管転位症とは

修正大血管転位症は、房室不一致(atrioventricular discordance)と心室大血管不一致(ventriculoarterial discordance)が同時に存在する「二重不一致(double discordance)」を本態とする先天性心疾患です。全身から戻った静脈血は右心房に入り、僧帽弁を通って解剖学的左心室へ流れ、そこから肺動脈を経て肺へ送られます。肺で酸素化された血液は左心房に戻り、三尖弁を通って解剖学的右心室へ流れ、大動脈から全身へ送り出されます。血液の流れる順序は正常と同じなので、他の心奇形がなければチアノーゼは生じません。ただし、体循環を担う心室(体心室)が形態学的右心室で、その房室弁が三尖弁である点が、正常心とも、新生児期に重いチアノーゼを起こす完全大血管転位症とも根本的に異なります。

心臓の位置関係は分節的アプローチ(Van Praaghの表記)で記載されます。多くは内臓心房正位(situs solitus)で心室がl-ループ、大動脈が肺動脈の左前方に位置する{S,L,L}型で、内臓心房逆位に伴う{I,D,D}型は少数です。心臓が右胸心や中位心をとることも珍しくありません。単独の修正大血管転位症は少なく、大部分に心室中隔欠損、肺動脈狭窄(肺動脈弁下・弁狭窄)、三尖弁の形態異常(エプスタイン様奇形を含む)、房室伝導障害のいずれかを伴います。どの病変をどの程度合併するかで、発見時期、症状、治療方針が大きく変わります。19世紀に病理学的に記載されて以降、外科治療は心室中隔欠損閉鎖などを行う「機能的修復(従来型修復)」から始まりました。その後、左心室を体心室とする「解剖学的修復(ダブルスイッチ手術など)」が開発され、現在も適応や長期成績について検討が続いています。日本では指定難病(告示番号208)に指定されています。

修正大血管転位症の疫学・患者数

修正大血管転位症はまれな疾患で、先天性心疾患全体の約0.5〜1%程度とされます。出生数に対しては数万人に1人程度と報告されています。明らかな性差はないか、やや男性に多いとする報告があります。発見時期は合併病変によって大きく異なります。心室中隔欠損や肺動脈狭窄を伴う例では、心雑音、チアノーゼ、心不全症状から新生児期・乳児期に診断されることが多くなります。一方、単独型や合併病変が軽い例では長く無症状で経過します。そのため、学校心臓検診の心電図異常、成人の健康診断、房室ブロックや心不全の精査をきっかけに見つかることや、高齢になって初めて偶然見つかることもあります。日本の正確な患者数は把握されていません。ただし小児期の手術成績が向上したことで、成人先天性心疾患として診療を受ける患者は増えていると考えられます。

修正大血管転位症の原因・病態生理

原因の多くは不明で、ほとんどは家族歴のない孤発例です。胎生期の心臓形成に関わる遺伝要因と環境要因が組み合わさる多因子的な発生と考えられています。完全大血管転位症や内臓錯位症候群(ヘテロタキシー)と同じ家系に発生した報告があり、左右軸の決定(laterality)に関わる遺伝子の異常が一部の症例で関与する可能性が指摘されています。ただし、この疾患に特異的な単一の原因遺伝子は確立していません。同胞や子どもに先天性心疾患が発生する確率は一般集団よりやや高いとされ、心疾患の種類は修正大血管転位症に限りません。

発生学的には、原始心筒が胎生初期に右方へ曲がる正常の「d-ループ」ではなく、左方へ曲がる「l-ループ」を形成することで、形態学的右心室が左側に、形態学的左心室が右側に配置されます。これに円錐動脈幹(流出路)の回転・中隔形成の異常が重なり、大動脈が右心室から、肺動脈が左心室から起始します。その結果、房室弁は心室とともに入れ替わり、体心室側の房室弁は三尖弁になります。刺激伝導系も通常と異なり、房室結節は前方に偏って位置し、ヒス束は長く、肺動脈弁輪の前方を走ります。この構造は加齢や手術で傷つきやすく、先天性・後天性の房室ブロックが起こりやすい解剖学的基盤になっています。体心室である右心室は、冠動脈が1本(解剖学的右冠動脈)からしか血流を受けず、肥大した心筋に対して血液供給が相対的に不足しがちです。さらに三尖弁は僧帽弁と比べて高い圧に耐えにくい構造です。これらが長期の圧負荷と組み合わさり、右心室の拡大と収縮力の低下、三尖弁輪の拡大による逆流の悪化、さらなる右心室負荷という悪循環が生じると考えられています。

修正大血管転位症の症状

  • 無症状(偶然発見): 合併病変がない、または軽い場合は小児期から成人期まで無症状のことが多いです。検診の心電図異常、胸部X線の心陰影異常、心雑音などをきっかけに見つかります。
  • 心雑音: 心室中隔欠損、肺動脈狭窄、三尖弁逆流などによる雑音が聴かれ、乳児期の診断の手がかりになります。
  • チアノーゼ: 心室中隔欠損に高度の肺動脈狭窄や肺動脈閉鎖を伴うと、静脈血が大動脈へ流れ込み、口唇や爪が紫色になります。単独型では通常みられません。
  • 多呼吸・哺乳不良・体重増加不良: 大きな心室中隔欠損で肺動脈狭窄がない場合、肺血流が増えて乳児期に心不全症状を起こします。
  • 易疲労感・運動時の息切れ: 体心室である右心室の機能低下や三尖弁逆流の進行に伴い、運動耐容能が徐々に低下します。本人が気づきにくいこともあります。
  • 浮腫・腹部膨満・体重増加: 心不全が進むと、下腿のむくみ、肝臓の腫れ、胸水・腹水による体重増加がみられます。
  • 夜間の呼吸困難・起座呼吸: 体心室側房室弁である三尖弁の逆流が高度になると、肺うっ血を起こし、横になると息苦しくなります。
  • 徐脈・めまい・失神: 房室ブロックが年に約1〜2%の頻度で新たに生じると報告されており、完全房室ブロックでは強いめまいや失神を起こすことがあります。
  • 動悸(頻脈性不整脈): エプスタイン様三尖弁に伴う副伝導路(WPW症候群)による発作性上室頻拍、成人期の心房粗動・心房細動などが起こります。
  • 胸部不快感: 肥大した右心室への冠血流不足が背景にあるとされ、労作時の胸部不快感として自覚されることがあります。
  • 突然死・心室性不整脈: 右心室機能が高度に低下した例では、心室頻拍などによる突然死のリスクがあると報告されています。

修正大血管転位症の経過と合併症

自然経過は合併病変で大きく異なります。心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴う例、肺血流が多い例、高度の三尖弁異形成を伴う例は乳幼児期に治療が必要になります。単独型では長く良好に経過することがありますが、年齢とともに右心室機能低下と三尖弁逆流が進行しやすいです。国際的な多施設研究では、45歳までに合併病変を伴う例の約3分の2、合併病変のない例でも約4分の1が心不全を示したと報告されています。一方で、70歳代以降まで大きな問題なく過ごした例も報告されており、個人差が非常に大きい疾患です。房室伝導障害は生まれつき完全房室ブロックで見つかる例もあれば、成長後に新たに出現する例もあり、生涯を通じて注意が必要です。

主な合併症は次の通りです。(1)体心室(右心室)機能不全と心不全。(2)三尖弁逆流:最も重要な予後因子の一つで、逆流が右心室機能低下を招き、その機能低下がさらに逆流を悪化させる関係にあります。(3)房室ブロック:自然発生のほか、心室中隔欠損閉鎖などの手術後にも起こりえます。(4)ペースメーカー植込み後の心機能低下:右心室への単独ペーシングで心室の収縮がずれ(dyssynchrony)、三尖弁逆流や心不全が悪化することがあります。(5)上室性・心室性不整脈。(6)感染性心内膜炎。(7)手術関連の遠隔期合併症:導管の狭窄、人工弁機能不全、ダブルスイッチ術後の心房内経路(バッフル)狭窄や大動脈弁逆流、新たな左心室機能低下など。(8)妊娠に伴う心不全・不整脈の悪化。

修正大血管転位症の診断・診断基準

診断の要点は、心エコー図で房室不一致と心室大血管不一致を確認することと、合併病変、右心室機能、三尖弁逆流、伝導障害を総合的に評価することです。胎児心エコーで出生前に診断される例も増えています。出生後は聴診所見、心電図、胸部X線から疑い、心エコー図で確定します。成人では心臓MRIやCTで心室容積・機能や冠動脈を詳しく評価します。手術を検討する際は、心臓カテーテル検査で血行動態を確認します。指定難病の申請では、学会の診断基準に沿って画像所見から病型を確定し、重症度(心不全の程度、不整脈、チアノーゼ、手術の要否など)を判定します。成人期以降は、成人先天性心疾患を専門とする施設での評価が推奨されます。

  • 心エコー図検査(経胸壁・経食道・胎児): 中心となる検査です。心室の形態(右心室の調節帯や肉柱、三尖弁が心尖寄りに付着する所見)、房室・心室大血管の接続、大動脈と肺動脈が並行して走る所見を確認し、心室中隔欠損、肺動脈狭窄、三尖弁の形態と逆流の重症度、右心室機能を評価します。
  • 心電図: 心室中隔の興奮が右から左へ向かうため、右側胸部誘導(V1など)や下壁誘導にQ波が出て、左側胸部誘導(V5・V6)のQ波が欠如するのが特徴です。PR延長から完全房室ブロックまでの伝導障害や、WPWパターンの有無も確認します。
  • ホルター心電図・運動負荷心電図: 間欠的な房室ブロック、徐脈、上室性・心室性不整脈を検出します。運動時に心拍数が適切に上がるかどうかの評価にも用います。
  • 胸部X線: 上行大動脈が左側に位置するため、心陰影の左上縁がまっすぐになる所見が典型的です。右胸心・中位心の有無、心拡大、肺血流量の増減、肺うっ血を評価します。
  • 心臓MRI: 右心室の容積と駆出率を最も再現性よく定量できる検査で、経時的な機能評価や手術時期の判断に重要です。遅延造影による心筋線維化の評価にも用いられます(ペースメーカー植込み例では適合性の確認が必要です)。
  • 心臓CT: 冠動脈の起始・走行、大血管や導管の解剖、ペースメーカー植込み例の形態評価に有用です。手術計画にも用いられます。
  • 心臓カテーテル検査: 心室・肺動脈圧、肺血管抵抗、短絡量などを測定し、手術適応やダブルスイッチ手術前の左心室の圧耐容性を評価します。心室造影や冠動脈造影も行います。
  • 心肺運動負荷試験: 最大酸素摂取量などで客観的に運動耐容能を測定します。自覚症状が乏しい人の機能低下を早期にとらえたり、介入時期を判断したりする補助になります。
  • 血液検査(BNP・NT-proBNP等): 心不全の程度や経過の指標として用います。チアノーゼ例では赤血球増多や鉄欠乏も評価します。

修正大血管転位症と鑑別すべき疾患

  • 完全大血管転位症: 房室接続は一致しており心室大血管のみ不一致のため、新生児期から高度のチアノーゼを示す点で異なります。
  • 両大血管右室起始症: 両大血管が主に右心室から起始する病態で、心室と大血管の接続関係を心エコー・CTで詳しく評価して区別します。
  • エプスタイン病: 三尖弁の下方偏位という点は共通しますが、房室・心室大血管の接続は正常で、三尖弁が肺循環側にある点で異なります。
  • 単心室症(機能的単心室): 心室の一方が著しく低形成な場合は二心室修復が困難になり、修正大血管転位症との境界や治療方針の判断が問題になります。
  • 内臓錯位症候群(多脾症候群・無脾症候群): 心房の左右性が不明瞭で、腹部臓器の配置異常や体静脈・肺静脈の還流異常を伴う点で区別します。
  • 孤立性先天性完全房室ブロック・後天性房室ブロック: 母体の抗SS-A抗体などに関連する房室ブロックとは、心エコーで心内構造が正常であることで区別します。

修正大血管転位症の治療

治療方針は、合併病変の種類と重症度、年齢、右心室と三尖弁の状態、伝導障害の有無によって個別に決めます。基本は、(1)乳幼児期の血行動態の安定化(肺血流の調節など)、(2)根治的な修復手術(機能的修復か解剖学的修復か、二心室修復が難しい場合はフォンタン型手術)、(3)生涯にわたる右心室機能・三尖弁・調律の管理です。単独型で無症状なら、定期的な経過観察が中心になります。ただし三尖弁逆流は右心室機能が大きく低下する前に手術する方が成績がよいとされ、「症状が出る前の適切な時期」に介入を検討することが重要です。体心室が右心室である場合に一般的な心不全治療薬がどこまで有効かは、十分なエビデンスが確立していません。どの治療を選ぶかは、成人先天性心疾患・小児循環器・心臓外科の専門医と十分に相談して決める必要があります。

  • 経過観察と定期評価: 単独型や軽症例では、心エコー、心電図、ホルター心電図、必要に応じて心臓MRIや運動負荷試験を定期的に行います。三尖弁逆流、右心室機能、伝導障害の変化を早期にとらえることが目的です。
  • 薬物治療: 心不全症状に対して利尿薬を用い、ACE阻害薬・ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などを個別に検討します。これらは体心室右心室への有効性のエビデンスが限られているため、主治医が慎重に判断します。心房細動などがあれば抗凝固療法を行います。
  • 姑息手術(肺動脈絞扼術・体肺動脈短絡術): 肺血流が多すぎる乳児には肺動脈絞扼術、肺血流が少なくチアノーゼが強い場合には短絡術を行います。肺動脈絞扼術は、ダブルスイッチ手術に向けて左心室に圧負荷をかけて鍛える「左室トレーニング」の目的でも用いられます。
  • 機能的(従来型)修復: 心室中隔欠損閉鎖、左心室から肺動脈への導管による肺動脈狭窄の解除、三尖弁の形成・置換などを行い、右心室を体心室のまま残す方法です。手術は比較的単純ですが、遠隔期の右心室機能低下や三尖弁逆流が課題とされます。
  • 解剖学的修復(ダブルスイッチ手術): 心房位転換術(セニング手術・マスタード手術)と動脈スイッチ手術、または心室内で血流路を作るラステリ型手術を組み合わせ、左心室を体心室にする方法です。手術侵襲が大きく、左心室の準備状態や遠隔期合併症を踏まえた施設ごとの判断が必要です。
  • 三尖弁置換術: 高度の三尖弁逆流に対し、右心室の駆出率が大きく低下する前に弁置換を行うと成績がよいと報告されています。形態異常のため弁形成より置換が選ばれることが多いです。
  • ペースメーカー・心臓再同期療法(CRT): 症状のある房室ブロックや高度徐脈ではペースメーカーを植え込みます。右心室単独ペーシングで心機能が悪化する場合や心機能低下例では、両心室ペーシング(CRT)を検討します。
  • カテーテルアブレーション・植込み型除細動器(ICD): 副伝導路による頻拍や心房粗動にはアブレーションを行います。致死性心室性不整脈のリスクが高い例では、ICDを個別に検討します。
  • 心臓移植・補助人工心臓: 内科・外科治療で改善しない末期心不全では、心臓移植や植込み型補助人工心臓が検討されます。体心室右心室への適応経験は蓄積されつつあります。

修正大血管転位症の予後・長期フォロー

予後は合併病変、行われた手術、右心室・三尖弁の状態に大きく左右されます。乳幼児期の手術成績は向上し、多くの患者が成人期に達します。しかし右心室機能の低下と三尖弁逆流は年齢とともに進みやすく、中年期以降の心不全が生命予後と生活の質を左右する最大の要因です。予後不良と関連する因子としては、高度の三尖弁逆流、右心室駆出率の低下、心房性不整脈、完全房室ブロックとペーシング依存などが報告されています。逆に、三尖弁の問題が軽く右心室機能が保たれていれば、高齢まで日常生活を送れる人もいます。ダブルスイッチ手術後は左心室が体心室となる利点が期待されますが、遠隔期の左心室機能低下、心房内経路(バッフル)の問題、不整脈、大動脈弁逆流などが報告されており、長期成績は現在も評価が続いています。

手術の有無にかかわらず生涯の定期フォローアップが必要です。小児期は小児循環器医、成人期は成人先天性心疾患の専門外来へと、移行期医療を通して切れ目なく診療を受けることが重要です。一般的には年1回程度(病状により頻度を増やす)、心エコー、心電図、ホルター心電図を行い、数年ごとに心臓MRIや心肺運動負荷試験で右心室容積・機能と運動耐容能を数値で追跡します。ペースメーカー植込み例では、デバイスの定期チェックと心機能への影響評価を行います。症状がなくても検査値の悪化を根拠に治療を検討する場面があるため、受診が途切れないようにすることが大切です。

修正大血管転位症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

運動については、右心室機能、三尖弁逆流、不整脈、ペースメーカーの有無に応じて、主治医が許容範囲を個別に判断します。日本では学校生活管理指導表に基づいて運動区分が決められます。無症状で機能が保たれていれば、多くの日常活動や適度な運動が可能です。一方、強い等尺性運動(重量挙げなど)や競技スポーツは事前に相談が必要です。感染性心内膜炎の予防には、日頃の歯磨きと定期的な歯科受診が基本です。人工弁、導管、チアノーゼ残存など高リスクの人では、歯科処置前の抗菌薬予防投与が推奨されるため、歯科医に病名と手術歴を伝えましょう。ピアスや刺青は感染リスクがあるため慎重に考えてください。ペースメーカー装着者は、電磁干渉への注意事項(IH機器、携帯電話、MRI検査時の確認など)を守る必要があります。妊娠・出産は右心室機能が保たれていれば可能なことが多い一方、妊娠中に三尖弁逆流や心不全、不整脈が悪化することがあります。妊娠を考えた段階で循環器医・産科医に相談し、妊娠前に心機能を評価すること(プレコンセプションカウンセリング)が勧められます。抗凝固薬(ワルファリン等)など妊娠中に注意が必要な薬もあります。子どもに先天性心疾患が生じる確率は一般よりやや高いとされるため、希望に応じて遺伝カウンセリングや胎児心エコーを利用できます。喫煙は心血管負担を増やすため避け、過度の飲酒、脱水、肥満にも注意しましょう。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種も主治医と相談してください。

利用できる制度・相談窓口

修正大血管転位症は指定難病(告示番号208)で、重症度基準を満たす場合、または軽症でも医療費が一定額を超える場合(軽症高額該当)は、難病医療費助成制度により自己負担上限額が設定されます。申請には難病指定医による臨床調査個人票が必要で、窓口はお住まいの都道府県・指定都市の保健所などです。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象になりえます。成人移行時に指定難病の申請へ切り替えることを早めに準備しましょう。手術などの医療費には、自立支援医療(育成医療・更生医療)が使える場合があります。心機能の障害の程度により身体障害者手帳(心臓機能障害)の交付対象となり、ペースメーカー植込み者も等級認定の対象になりえます。日常生活や就労に支障がある場合は障害年金、20歳未満の児では特別児童扶養手当や障害児福祉手当が該当することもあります。ほかに高額療養費制度も利用できます。相談窓口としては、病院の医療ソーシャルワーカー、各都道府県の難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援事業、移行期医療支援センター、先天性心疾患の患者・家族会などがあります。制度の要件は改定されることがあるため、最新情報は自治体窓口で確認してください。

修正大血管転位症に伴う心のケア・心理社会的支援

先天性心疾患とともに生きることは、長期にわたる心理的負担を伴います。乳幼児期に手術を受けた子どもの保護者は、病気を「自分のせい」と感じたり、再手術への不安を抱えたりしがちです。本人は成長とともに運動制限、通院、手術痕、友人との違いなどに悩むことがあります。この疾患に特有なのは、小児期に元気でも成人期に心機能低下が始まりうるという見通しの不確かさです。成人になってから初めて診断される人もおり、突然「生まれつきの心臓病」と告げられる衝撃は小さくありません。進学、就職、結婚、妊娠・出産、生命保険への加入などの人生の節目で不安が強まることがあり、成人先天性心疾患の患者には抑うつや不安障害、適応障害が一般より多いと報告されています。ペースメーカーやICDの植込み、作動への不安も心理的負担になります。気分の落ち込み、不眠、強い不安が続くときは一人で抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカーに伝え、必要に応じて心療内科・精神科や臨床心理士の支援を受けてください。家族や同じ病気の患者会とのつながりも大きな支えになります。移行期には、本人が自分の病名、手術歴、内服薬を説明できるよう少しずつ準備することが、自立と安心感につながります。

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修正大血管転位症の受診の目安

  • 失神、意識が遠のく、急に脈が極端に遅くなったり速くなったりした場合は、直ちに救急受診してください(房室ブロックや重い不整脈の可能性があります)。
  • 安静時や横になったときの息苦しさ、急な体重増加やむくみの悪化、尿量の減少がある場合は、早めに(症状が強ければ救急で)受診してください。
  • 動悸が持続する、胸痛や胸部圧迫感がある、ICDが作動した場合は、速やかに医療機関に連絡してください。
  • 原因不明の発熱が数日以上続く場合、特に歯科処置後や人工弁・導管がある人は、感染性心内膜炎を考えて受診してください。
  • 以前より階段や坂で息が切れる、疲れやすいなど運動能力の低下を感じたら、次の定期受診を待たずに相談してください。
  • 妊娠がわかったとき、または妊娠を希望するときは、できるだけ早く循環器医に相談してください。

修正大血管転位症についてのよくある質問

Q. 「修正」されているなら、治療は必要ないのですか?

A. 血液の流れる順序は正常と同じですが、全身へ血液を送る心室が本来は肺用の右心室であるため、年齢とともに右心室機能の低下や三尖弁逆流、房室ブロックが起こりやすくなります。症状がなくても専門医による生涯の定期検査が必要で、適切な時期に治療を検討します。

Q. 大人になってから診断されました。今後どうなりますか?

A. 成人期に初めて見つかる人は、合併病変が軽いことが多く、良好に経過する人もいます。ただし右心室機能と三尖弁逆流の状態が今後を左右するため、成人先天性心疾患の専門施設で心エコーや心臓MRIによる評価を受け、経過観察の方針を相談してください。

Q. ペースメーカーが必要と言われました。心臓に悪影響はありますか?

A. 房室ブロックによる徐脈や失神を防ぐためにペースメーカーは重要です。一方で、右心室への単独ペーシングで心機能や三尖弁逆流が悪化することが報告されています。そのため、両心室ペーシング(心臓再同期療法)などの方法も含め、専門医と相談しながら選択します。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 右心室機能が保たれ、重い三尖弁逆流や不整脈がなければ、妊娠・出産できる人は少なくありません。ただし妊娠中に心不全や不整脈が悪化することがあるため、妊娠前に心機能を評価し、循環器医と産科医が連携できる施設で管理を受けることが勧められます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。