両大血管右室起始症
Double Outlet Right Ventricle
両大血管右室起始症(Double Outlet Right Ventricle)|両大血管右室起始症(DORV)は、本来は左心室から出るはずの大動脈と、右心室から出る肺動脈の両方が主に右心室から起始する先天性心疾患です。心室中隔欠損の位置や肺動脈狭窄の有無によって、チアノーゼ型から心不全型までさまざまな病態をとります。多くは新生児期から乳児期に手術が必要で、手術後も生涯にわたる専門的な経過観察が必要です。
両大血管右室起始症の要点
両大血管右室起始症(DORV)は、大動脈と肺動脈の両方が主に右心室から起始する先天性心疾患で、ほぼ全例で心室中隔欠損を伴います。病型によりチアノーゼや心不全症状がみられ、多くは新生児期から乳児期に手術が必要で、術後も生涯の経過観察を要する指定難病です。
| 別名・略称 | DORV、右室両大血管起始症、両大血管右室起始、Double outlet of right ventricle |
|---|---|
| 分野 | 循環器・先天性心疾患 |
| 発症時期 | 先天性(出生時から存在し、多くは新生児期〜乳児期に診断) |
| 主な症状 | チアノーゼ、多呼吸、哺乳不良などの心不全症状(病型により異なる) |
| 主な検査 | 心エコー検査、心臓カテーテル検査、CT・MRI |
| 主な治療 | 外科手術(病型に応じた心内修復術や姑息術など) |
| 経過観察 | 術後も生涯にわたる専門的な経過観察が必要 |
| 受診する主な診療科 | 小児循環器科、心臓血管外科 |
両大血管右室起始症とは
両大血管右室起始症は、大動脈と肺動脈の両方が完全に、または大部分が形態学的右心室から起始する心室大血管関係の異常で、円錐動脈幹異常(conotruncal anomaly)の一つです。一般的な定義として、一方の大血管が完全に右室から起始し、もう一方の大血管も50%以上が右室に騎乗している場合をDORVとする「50%ルール」が広く用いられています。歴史的には、大動脈弁と僧帽弁の間の線維性連続が失われ、両大血管の下に筋性の円錐(conus)を持つこと(両側円錐)が特徴とされました。ただし例外も多く、現在は心室と大血管の位置関係を中心に定義されています。左心室の血液の出口は通常、心室中隔欠損(VSD)しかありません。そのため、VSDはほぼ全例に存在し、生存に不可欠な通路となります。VSDを欠く例(心室中隔が閉じている例)は極めてまれです。
病型は、VSDと大血管との位置関係によって主に4つに分けられます。①大動脈弁下VSD型、②肺動脈弁下VSD型(Taussig-Bing奇形)、③両大血管下VSD型(doubly committed)、④遠隔型VSD型(noncommitted/remote)です。臨床的には、血行動態に基づいて次のように整理されることも多くあります。VSD型は肺動脈狭窄がなく、大動脈弁下VSDをもち、大きなVSDと同様の肺血流増加を示します。ファロー型は大動脈弁下VSDに肺動脈狭窄を伴い、ファロー四徴症に似ます。大血管転位型は肺動脈弁下VSDをもち、完全大血管転位症に似ます。これらに遠隔VSD型を加えて分類します。このほか、房室中隔欠損、僧帽弁閉鎖や左室低形成、内臓錯位症候群(無脾症・多脾症)を伴う複雑型もあります。複雑型は二心室修復が難しく、単心室としての治療方針がとられることがあります。この病名は1957年にWithamが提唱したとされます。それに先立つ1949年にTaussigとBingが報告した肺動脈弁下VSD型は、現在もTaussig-Bing奇形と呼ばれています。
両大血管右室起始症の疫学・患者数
DORVは先天性心疾患全体の約1〜2%を占めるとされます。出生1万人あたりおよそ1〜2人程度という報告が多く、日本の出生数から推計すると、年間に数十〜100例余りが新たに診断されると考えられます。指定難病としての受給者数は年度によって変動し、成人に達した患者も増えています。正確な総患者数は明らかではありませんが、国内には数千人規模の患者がいると推定されます。性差については大きな偏りはないとする報告が多いです。胎児心エコーの普及により、出生前に診断される例が増えています。染色体異常(18トリソミー、13トリソミー、22q11.2欠失症候群など)や内臓錯位症候群を合併する割合は、他の多くの先天性心疾患より比較的高いとされます。
両大血管右室起始症の原因・病態生理
多くは単一の原因によるものではなく、遺伝的素因と環境要因が関与する多因子性と考えられています。染色体異常としては18トリソミー、13トリソミー、22q11.2欠失症候群との関連が知られています。また、無脾症候群・多脾症候群などの内臓錯位症候群(左右軸決定の異常)に合併することも多くあります。心臓の発生にかかわる転写因子などの単一遺伝子の変異が一部で報告されていますが、日常診療で原因遺伝子が特定される例は限られます。環境要因としては、母体の糖尿病(血糖管理不良)などが先天性心疾患全般のリスクを高めることが知られています。同胞での再発率は一般集団より高いとされますが、具体的な数値は家族歴や合併症候群の有無によって異なります。このため、個別の遺伝カウンセリングが勧められます。
胎生期の心臓は1本の管(心筒)から始まります。ループを形成したのち、流出路(円錐部・動脈幹)がらせん状に分割され、大動脈と肺動脈になります。正常では、大動脈弁下の円錐が吸収・短縮されることで大動脈が左室側へ移動し、僧帽弁と線維性に連続します。DORVではこの流出路の回転と大動脈弁下円錐の吸収が不十分なため、両大血管が右室に残ると考えられています。心臓神経堤細胞や二次心臓領域(second heart field)の発生異常が関与するとされます。血行動態は、VSDと大血管の位置関係および肺動脈狭窄の有無で決まります。大動脈弁下VSDで肺動脈狭窄がなければ、左室血は主に大動脈へ流れます。肺血流は増加して心不全となりますが、チアノーゼは軽度です。肺動脈狭窄があれば肺血流が減少し、ファロー四徴症に似たチアノーゼが前面に出ます。肺動脈弁下VSD(Taussig-Bing)では、酸素の多い左室血が肺動脈へ、酸素の少ない体静脈血が大動脈へ流れやすくなります。その結果、完全大血管転位症に似た強いチアノーゼと肺血流増加を示し、大動脈縮窄・大動脈弓離断を合併しやすいことも特徴です。
両大血管右室起始症の症状
- チアノーゼ: 唇や爪床が紫色になる症状です。肺動脈狭窄を伴うファロー型や、Taussig-Bing型で目立ちます。肺血流の多いVSD型では軽度のこともあります。
- 多呼吸・陥没呼吸: 肺血流の増加や肺うっ血により呼吸が速くなり、肋骨の間がへこむ呼吸がみられます。生後数週以降、肺血管抵抗が下がるにつれて目立つようになります。
- 哺乳不良・体重増加不良: 授乳に時間がかかり、途中で休んだり汗をかいたりします。その結果、体重が増えにくくなります。心不全型の代表的な症状です。
- 多汗: 交感神経の緊張により、授乳時や睡眠時に頭部を中心として汗を多くかきます。
- 心雑音: VSDや肺動脈狭窄によって収縮期雑音が聴取されます。健診で気づかれることがありますが、雑音の強さと重症度は必ずしも一致しません。
- 低酸素発作(無酸素発作): ファロー型では、啼泣や排便を契機にチアノーゼが急に強まり、ぐったりすることがあります。緊急の対応が必要です。
- 肝腫大・浮腫: 心不全が進むと肝臓が腫れ、まぶたなどがむくむことがあります。
- 繰り返す呼吸器感染: 肺血流が多いと気道感染が重症化しやすく、RSウイルスなどで入院を要することがあります。
- ショック・下肢の脈拍減弱: 大動脈縮窄や大動脈弓離断を合併している場合は、動脈管が閉じると急速に循環不全に陥ります。大腿動脈の拍動が弱くなります。
- ばち指・多血症: チアノーゼが長く続くと指先が太鼓のばち状になります。赤血球が増えて血液が濃くなり、血栓のリスクが生じます。
- 易疲労性・運動耐容能低下: 術後の遠隔期でも、遺残病変や心機能の低下によって疲れやすさや息切れが出ることがあります。
両大血管右室起始症の経過と合併症
自然経過は病型によって大きく異なります。VSD型では、生後1〜3か月ごろから肺血流増加による心不全が顕在化します。無治療では早期に肺高血圧と肺血管の不可逆的な変化(肺血管閉塞性病変)が進行し、手術ができなくなるおそれがあります。Taussig-Bing型ではさらに早く肺血管病変が進むとされ、新生児期から乳児早期の手術が一般的です。ファロー型は、肺動脈狭窄の程度に応じてチアノーゼが徐々に強くなります。肺動脈閉鎖や高度狭窄では動脈管に依存するため、出生直後から治療が必要です。治療をしない場合、多くの病型で乳幼児期の死亡率は高いとされますが、手術成績の向上によって大部分の患者が成人期に達するようになりました。
合併症には、心不全、肺高血圧、低酸素発作、感染性心内膜炎、チアノーゼに伴う多血症・血栓症・脳膿瘍、成長障害があります。術後の遠隔期には次のような問題が起こりえます。心内導管(トンネル)による左室流出路狭窄や大動脈弁下狭窄、右室流出路狭窄・肺動脈弁逆流、右室−肺動脈導管(conduit)の狭窄・石灰化、大動脈弁逆流、動脈スイッチ術後の新大動脈基部拡大・冠動脈狭窄、房室ブロック、心房性・心室性不整脈、遺残短絡、心機能低下です。単心室循環(Fontan手術)に至った例では、蛋白漏出性胃腸症、Fontan関連肝疾患、血栓塞栓症、チアノーゼの再燃などが長期的な課題となります。
両大血管右室起始症の診断・診断基準
診断は、心雑音、チアノーゼ、多呼吸、低い経皮酸素飽和度(新生児のパルスオキシメトリ)などを契機に始まります。近年は妊娠中の胎児心エコーで疑われる例が増えています。まず心エコー検査で、両大血管が右室から起始していることを確認します。あわせてVSDの位置と大きさ、肺動脈・大動脈弁下の狭窄、房室弁の構造、大動脈弓の異常を評価します。手術方法の選択には三次元的な解剖の把握が不可欠で、特に「VSDから大動脈(または肺動脈)へ心内トンネルを作れるか」が重要です。そのため、造影CT、心臓MRI、心臓カテーテル検査を組み合わせます。指定難病の申請では、学会等が作成した診断基準に基づき、画像検査で両大血管が右室から起始することを確認し、重症度分類を満たすかどうかを評価します。また、合併する染色体異常や他臓器の異常も検索します。
- 胎児心エコー: 四腔断面や流出路断面の異常から出生前に疑われます。出生後すぐの治療体制が整った施設での分娩計画に役立ちます。
- 経胸壁心エコー(ドプラ法を含む): 確定診断の中心となる検査です。両大血管の起始、VSDの位置と大血管との距離、肺動脈狭窄・大動脈縮窄、房室弁の腱索付着の位置などを評価します。
- パルスオキシメトリ・血液ガス: 酸素飽和度の低下の程度を評価します。上肢と下肢の差は動脈管を介した血流や大動脈弓病変の手がかりになります。
- 胸部X線: 心拡大、肺血流の増減(肺血管陰影)、肺うっ血を評価します。病型推定の補助になりますが、特異的な所見はありません。
- 心電図: 右室肥大や右軸偏位を示すことが多く、房室中隔欠損合併では左軸偏位を示します。術後は房室ブロックや不整脈の評価にも用います。
- 心臓造影CT: 大血管の空間的な位置関係、冠動脈の走行、大動脈弓・肺動脈の形態を三次元で評価できます。手術計画や3Dモデルの作成に有用です。
- 心臓MRI: 心室容積や駆出率、弁逆流量、肺血流比を放射線被ばくなしに定量できます。術後の遠隔期評価で特に重要です。
- 心臓カテーテル検査: 肺動脈圧、肺血管抵抗、肺体血流比、各部位の酸素飽和度を測定します。手術適応(特に肺血管病変の有無やFontan適応)の判断に用います。必要に応じてバルーン心房中隔裂開術などの治療も同時に行います。
- 染色体・遺伝学的検査: 心外の合併奇形や特徴的な所見がある場合、22q11.2欠失などの検索を検討します。全身管理と家族への説明に役立ちます。
両大血管右室起始症と鑑別すべき疾患
- 心室中隔欠損症(大きな欠損): 大動脈が主に左室から起始し、大動脈弁と僧帽弁の線維性連続が保たれている点で区別されます。
- ファロー四徴症: 大動脈の右室への騎乗が50%未満であることが一般的で、騎乗の程度や大動脈弁下円錐の有無からDORVファロー型と区別します。
- 完全大血管転位症(VSD合併): 肺動脈が主に左室から起始する点で、Taussig-Bing型DORVと区別します。両者は連続的な病態で、判断が難しい例もあります。
- 総動脈幹遺残症: 心臓から出る大血管が1本の共通動脈幹で、そこから肺動脈が分岐する点が異なります。
- 単心室症・左心低形成を伴う複雑心奇形: 機能的に有効な心室が一つかどうかを評価します。二心室修復か単心室修復かの方針決定に直結します。
- 両大血管左室起始症: 両大血管が左室から起始する、さらにまれな疾患です。画像で心室形態を同定して区別します。
両大血管右室起始症の治療
DORVの根本的な治療は手術です。治療のゴールは、可能であれば左室を大動脈に、右室を肺動脈につなぐ二心室修復(biventricular repair)です。これが困難な場合は、Fontan型手術を目指す単心室修復を選びます。術式は、VSDの位置、大血管との距離、肺動脈狭窄の有無、房室弁の腱索の付着、冠動脈の走行、心室の大きさなどを総合して決めます。施設や症例によって判断が分かれることもあります。新生児期・乳児期には、まず状態を安定させるために薬物療法やカテーテル治療を行います。根治手術までの期間が必要な場合は姑息手術(肺動脈絞扼術、体肺動脈短絡術など)を行い、その後に根治手術を行う段階的な戦略をとることがあります。手術の時期や方法は、小児循環器医と心臓血管外科医が個々の解剖に基づいて判断します。家族は主治医から十分な説明を受け、疑問点を相談することが大切です。
- 内科的管理(新生児・乳児期): 肺血流増加型では、利尿薬などで心不全を管理し、栄養を強化します。動脈管依存性の病型では、プロスタグランジンE1製剤の持続投与で動脈管を開存させ、手術まで循環を維持します。
- 姑息手術(肺動脈絞扼術・体肺動脈短絡術): 肺血流が過剰な場合は肺動脈絞扼術で肺を保護します。肺血流が不足する場合はBlalock-Taussig短絡術などで肺血流を確保し、根治手術に適した時期や体格まで待ちます。
- 心内修復術(心室内血流転換術、IVR): 大動脈弁下VSD型や両大血管下VSD型で行われます。パッチでVSDから大動脈へ心内トンネルを作り、左室血を大動脈へ導く代表的な二心室修復です。必要に応じてVSDの拡大も行います。
- ファロー型の修復: 心内トンネルによる左室−大動脈の接続に加え、右室流出路の筋切除やパッチ拡大で肺動脈狭窄を解除します。ファロー四徴症の根治手術に準じた方法です。
- 動脈スイッチ手術+VSD閉鎖: Taussig-Bing型で行われます。VSDを肺動脈側に閉じたうえで大動脈と肺動脈を入れ替え、冠動脈を移植します。大動脈縮窄・弓離断を合併する場合は、同時または段階的に弓再建を行います。
- Rastelli手術・REV手術・Nikaidoh手術など: 大血管転位型に肺動脈狭窄を伴う場合などに選択されます。左室血を心内トンネルで大動脈へ導き、右室と肺動脈を導管などで再建します。どの術式を選ぶかは解剖学的条件と施設の方針によります。
- 単心室修復(Glenn手術・Fontan手術): 遠隔型VSDで心内トンネルが作れない場合や、心室・房室弁の低形成、内臓錯位症候群などを伴う場合に選択されます。段階的に大静脈血を直接肺動脈へ流す循環を完成させます。
- 遠隔期の再手術・カテーテル治療: 導管の交換、流出路狭窄の解除、弁置換、肺動脈分枝狭窄へのバルーン拡張・ステント留置などを行います。経皮的肺動脈弁留置術の適応が検討される場合もあります。
- 不整脈治療: 術後の房室ブロックにはペースメーカーを植え込みます。頻脈性不整脈には薬物療法、カテーテルアブレーション、植込み型除細動器などを状態に応じて検討します。
両大血管右室起始症の予後・長期フォロー
外科治療と周術期管理の進歩により、DORVの手術成績は大きく改善しました。大動脈弁下VSD型やファロー型など、比較的単純な解剖で二心室修復が可能な例では、手術死亡率は低く、多くの患者が成人期に達します。一方、Taussig-Bing型で大動脈弓病変を伴う例、遠隔型VSD、房室弁の異常、内臓錯位症候群、染色体異常を伴う例では、手術リスクや再手術の頻度が高くなります。手術死亡率は病型や合併病変によって大きく異なるため、一律の数値で示すことはできません。多くの患者は学校生活や就労が可能ですが、運動耐容能は健常者よりやや低いことが多く、単心室循環の場合は特に生活上の配慮が必要になることがあります。
DORVは手術で「治癒」する病気ではありません。術後も生涯にわたる定期的な循環器フォローアップが必要です。小児期は小児循環器科で、成人期以降は成人先天性心疾患(ACHD)の専門外来へ計画的に移行することが望まれます。心エコー、心電図、ホルター心電図、運動負荷試験、心臓MRIなどで、次の点を定期的に評価します。左室・右室流出路の狭窄、導管の機能、大動脈弁逆流、大動脈基部の拡大、心機能、不整脈です。必要に応じて再手術やカテーテル治療の時期を判断します。Fontan循環の患者では、肝臓(エコー、エラストグラフィ、腫瘍マーカーなど)や蛋白漏出の評価も含めた多臓器のフォローが重要です。思春期に通院が途切れて遠隔期合併症が見逃されることが問題となっているため、本人が病気を理解し、自ら受診を継続できるよう支援する移行期医療が重視されています。
両大血管右室起始症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、主治医から示された運動制限の範囲(学校生活管理指導表など)を守りつつ、可能な範囲で体を動かすことが大切です。適度な運動は体力と心理面の健康に良いとされますが、遺残病変や不整脈の程度によっては、競技スポーツや強い等尺性運動を控えるよう指示されることがあります。感染性心内膜炎の予防のため、虫歯や歯周病を防ぐ口腔ケアと定期的な歯科受診が重要です。抜歯などの処置の前には、抗菌薬予防投与の必要性を主治医・歯科医と確認してください。乳幼児期の予防接種は、手術日程と調整しながら原則として計画的に行います。肺血流の多い時期などには、RSウイルス感染予防の抗体製剤の適応が検討されることがあります。チアノーゼが残る場合は脱水を避け、高地や長時間の飛行機移動では事前に相談しましょう。成人女性では、妊娠・出産が心臓に大きな負担となる場合があるため、妊娠前に循環器医・産科医による評価を受けることが推奨されます。避妊法の選択(血栓リスクなど)も相談が必要です。次子の再発リスクや合併する症候群については、遺伝カウンセリングを受けることで正確な情報を得られます。抗凝固薬・抗血小板薬を内服している場合は、出血症状や併用薬に注意します。
利用できる制度・相談窓口
両大血管右室起始症は国の指定難病の対象疾患です。診断基準と重症度分類を満たす場合、難病指定医の診断書をもとに都道府県・指定都市に申請すると、医療費の自己負担上限額が所得に応じて設定される医療費助成を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象となります。小児期はこちらを利用し、成人期に指定難病へ切り替えることが一般的です。手術などに対しては、自立支援医療(育成医療・更生医療)が利用できる場合があります。心機能の障害の程度に応じて身体障害者手帳(心臓機能障害)が交付されることがあり、税の控除や交通機関の割引などのサービスにつながります。小児では特別児童扶養手当・障害児福祉手当、成人では一定の障害状態にある場合に障害年金の対象となりうるため、自治体窓口や年金事務所で確認してください。相談窓口としては、病院の医療ソーシャルワーカー、保健所、都道府県の難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援事業があります。また、移行期医療支援センター(設置されている地域)、先天性心疾患の患者会・家族会も情報交換や支援の場となります。就労については、ハローワークの難病患者就職サポーターに相談できます。
両大血管右室起始症に伴う心のケア・心理社会的支援
先天性心疾患をもつ子どもの家族は、出生前・出生直後の診断、新生児期の大手術、長い入院、繰り返す手術といった大きな出来事に直面します。そのため、親に不安、抑うつ、心的外傷後ストレス症状、睡眠障害がみられることが少なくありません。きょうだいへの配慮が不足しがちになることや、仕事との両立も負担になります。患者本人にとっては、幼少期の入院・手術体験、運動制限による友人関係の悩み、手術痕へのコンプレックス、学業や就職への不安、思春期の通院・服薬への反発などが課題になります。さらに、成人期には再手術の可能性、妊娠・出産、保険加入、将来の見通しへの不安が加わります。成人先天性心疾患の患者では、不安障害やうつ病の頻度が一般より高いという報告もあります。また、複雑な心疾患や長期の入院に関連して、発達や学習面の支援が必要になる場合もあります。気分の落ち込み、強い不安、眠れない状態が続くときは一人で抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、心理職、精神科・心療内科に相談してください。同じ病気をもつ人や家族とつながることも、孤立感を和らげる助けになります。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
両大血管右室起始症の受診の目安
- チアノーゼが急に強くなる、ぐったりして反応が鈍い、意識がもうろうとする場合は、すぐに救急受診(119番)してください。
- 呼吸が非常に速い・苦しそう、授乳や食事がほとんどとれない、尿量が明らかに少ない場合は、速やかに受診してください。
- 動悸、脈が極端に速い・遅い・不規則、失神やめまいがある場合は、不整脈の可能性があるため早急に受診してください。
- 原因不明の発熱が続く場合(特に歯科処置後や術後)は、感染性心内膜炎の可能性があるため、早めに主治医に連絡してください。
- むくみの増加、急な体重増加、息切れや疲れやすさの悪化を感じたら、次の定期受診を待たずに相談してください。
- 妊娠を希望する場合、または妊娠が判明した場合は、できるだけ早く循環器医と産科医に相談してください。
両大血管右室起始症についてのよくある質問
Q. 手術をすれば完全に治りますか?
A. 手術によって血液の流れは大きく改善し、多くの方が通常に近い生活を送れるようになります。ただし、心内トンネルや導管、弁などに年月とともに問題が生じることがあり、再手術やカテーテル治療が必要になる場合があります。症状がなくても、成人後も含めて定期的な専門外来の受診を続けることが大切です。
Q. どの手術方法になるかはどう決まりますか?
A. 心室中隔欠損の位置、大血管との距離、肺動脈狭窄や大動脈弓の異常、冠動脈や房室弁の構造、心室の大きさなどを、心エコーやCTで詳しく調べて決めます。同じ病名でも術式は大きく異なり、施設によって考え方が分かれることもあります。疑問があれば、主治医に遠慮なく質問してください。
Q. 次の子どもにも同じ病気が起こりますか?
A. 多くは多因子性で、同胞での再発率は一般集団より高いものの、大部分のきょうだいは心疾患をもたずに生まれます。染色体異常や症候群が関係している場合は、リスクの考え方が異なります。遺伝カウンセリングで個別に相談することをお勧めします。次の妊娠では胎児心エコーによる確認も検討されます。
Q. 運動や部活動はできますか?
A. 術後の状態が良好であれば、多くの運動が可能です。ただし、遺残病変、不整脈、心機能の状態によっては制限が必要になります。学校生活管理指導表などで主治医が許容範囲を示しますので、それに沿って参加し、体調の変化があれば相談してください。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。