もやもや病

Moyamoya Disease

もやもや病(Moyamoya Disease)|もやもや病は、脳を養う太い動脈(内頸動脈)の終末部が左右ともに、あるいは片側で徐々に細くなり、ついには詰まっていく原因不明の脳血管の病気です。不足した血流を補うために脳の深部に細い側副血管が発達し、脳血管撮影でそれが「もやもや」とした煙のように見えることから名付けられました。小児では一過性の手足の麻痺や脳梗塞、成人では脳出血をきっかけに見つかることが多く、適切な時期に診断し、必要に応じて血行再建術を行うことで予後の改善が期待できます。

もやもや病の要点

もやもや病は、内頸動脈終末部が両側または片側で徐々に狭窄・閉塞し、脳の深部に異常な側副血管(もやもや血管)が発達する原因不明の脳血管疾患で、国の指定難病です。小児では一過性の脱力や脳梗塞、成人では脳出血などで見つかることが多く、血行再建術で予後改善が期待されます。

別名・略称ウィリス動脈輪閉塞症、Willis動脈輪閉塞症、モヤモヤ病、spontaneous occlusion of the circle of Willis
分野神経・筋疾患
遺伝形式多くは孤発性(一部に家族例あり)
好発年齢5歳前後と30〜40代に二峰性のピーク
主な症状一過性の手足の麻痺、脳梗塞、脳出血、頭痛、てんかん
主な検査MRI・MRA、脳血管撮影
主な治療血行再建術(バイパス手術)、内科的管理
受診する主な診療科脳神経外科、神経内科、小児科

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もやもや病とは

もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、内頸動脈終末部を中心に、前大脳動脈・中大脳動脈の近位部に慢性進行性の狭窄・閉塞が生じ、その周囲に異常血管網(もやもや血管)が発達する疾患と定義されます。もやもや血管の正体は、拡張した穿通枝などからなる側副血行路です。原因となる基礎疾患がはっきりしないことが本症の条件で、動脈硬化、自己免疫疾患、髄膜炎、脳腫瘍、ダウン症候群、神経線維腫症1型、頭部外傷、頭部への放射線照射などに伴って同様の血管所見を示すものは「類もやもや病(もやもや症候群)」として区別されます。血管の壁に炎症や動脈硬化の粥腫はみられず、内膜の線維細胞性肥厚と、血管外径そのものが細くなる変化(陰性リモデリング)が特徴です。

1957年に日本で初めて報告され、1969年に鈴木二郎・高久晃らが脳血管撮影の所見から「もやもや病」と命名しました。日本人をはじめ東アジアに多いことから、国際的にも“Moyamoya disease”の名称が用いられています。病型は臨床症状によって、虚血型(一過性脳虚血発作型・脳梗塞型)、出血型、てんかん型、頭痛型、無症候型などに分けられます。血管撮影所見の進行度は鈴木分類(第1期:狭窄期から第6期:もやもや消失期まで)で表され、進行とともに内頸動脈系の血流は外頸動脈系からの側副血行に置き換わっていきます。以前は両側に病変があるものを確定例とし、片側例は「疑い例」とされていましたが、近年の診断基準改訂により片側例も本症に含められています。MRI・MRAの普及により、無症状のうちに見つかる例も増えています。

もやもや病の疫学・患者数

日本は世界で最も有病率が高い国のひとつです。国内の疫学調査では、有病率は人口10万人あたり数人〜10人程度、年間の新規発症は10万人あたり0.5〜1人前後と推定されています。既存の解説にある「100万人に1〜2人」は実態より少なく見積もられた数字であり、実際はそれより多いと考えられます。指定難病の医療受給者証の所持者は1万人を超えます。発症年齢には二つの山があり、5〜10歳前後の小児期と、30〜40歳代を中心とする成人期にピークがみられます。女性に多く、男女比はおおよそ1:1.8〜2程度とされます。家族内に複数の患者がいる家族性もやもや病は全体の約1割〜1割5分と報告されており、多くは家族歴のない孤発例です。小児では虚血症状で、成人では虚血症状に加えて頭蓋内出血で発症する割合が高い点が特徴です。近年は脳ドックなどで偶然見つかる無症候例も増えています。

もやもや病の原因・病態生理

根本的な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な要因が強く関わっています。2011年に日本の研究グループなどにより、17番染色体上のRNF213遺伝子が疾患感受性遺伝子として同定されました。なかでもp.R4810Kと呼ばれる特定のバリアントは、日本人患者の大多数(およそ7〜9割)にみられる一方、一般の日本人でも1〜2%程度が保有しています。保有者のうち実際に発症するのはごく一部であり、このバリアントは「なりやすさ」を高める因子であって、それだけで発症が決まるわけではありません。両方の対立遺伝子に持つホモ接合体では、発症が早く重症化しやすいとする報告があります。家族性の例では不完全浸透の常染色体顕性(優性)遺伝に近い形をとることがありますが、単純なメンデル遺伝ではありません。感染や炎症、免疫反応、血管新生にかかわる因子などの環境要因が、遺伝的素因に加わって発症にかかわるという「二段階(多因子)モデル」が有力と考えられています。

病理学的には、内頸動脈終末部の内膜に平滑筋細胞を主体とする線維細胞性の肥厚が起こり、内弾性板の蛇行や重複、中膜の菲薄化がみられます。さらに血管の外径そのものが縮小する陰性リモデリングが起こるため、動脈硬化による狭窄とは成り立ちが異なります。主幹動脈が細くなると脳の灌流圧が下がり、脳は血管を拡張させて血流を保とうとします(自動調節能)。予備能が限界に近づくと、酸素摂取率を高めてしのぐ「貧困灌流」の状態となり、わずかな負荷で虚血症状が現れます。小児で泣く、笛を吹く、熱い麺を冷まそうと息を吹きかけるといった過呼吸で症状が誘発されるのは、血中の二酸化炭素が低下して脳血管が収縮し、脳血流がさらに減るためです。代償として発達したもやもや血管は、拡張・菲薄化した穿通枝や脈絡叢の血管で、常に過剰な血流負荷にさらされています。そのため成人では、これらの血管の破綻や、側副血行路上にできた微小動脈瘤の破裂により脳出血・脳室内出血が起こります。特に後方の脈絡叢動脈を介した側副路(脈絡叢吻合)が発達していると、出血のリスクが高いことが知られています。

もやもや病の症状

  • 一過性脳虚血発作(TIA): 片側の手足の脱力やしびれ、言葉が出にくいといった症状が数分〜数十分続き、自然に消えます。小児では啼泣、吹奏楽器の演奏、運動、熱い食べ物を吹いて冷ますなどの過呼吸で誘発されやすいのが特徴で、左右の手足に交代して現れることもあります。
  • 脳梗塞: 虚血が持続すると脳梗塞となり、片麻痺、失語、視野障害などの後遺症を残すことがあります。小児の重症例や乳幼児発症例では、短期間に梗塞を繰り返すことがあります。
  • 頭蓋内出血: 主に成人にみられ、脳室内出血、視床・基底核の出血、くも膜下出血などとして突然の激しい頭痛、意識障害、麻痺で発症します。再出血を起こしやすく、生命予後や機能予後に大きく影響します。
  • 頭痛: 朝に強い頭痛や片頭痛に似た拍動性の頭痛が、小児・成人ともに比較的よくみられます。脳血流の低下や、拡張した側副血管(特に硬膜の血管)の関与が考えられています。
  • てんかん発作: 脳虚血や梗塞巣を背景に、けいれんや意識が途切れる発作が起こることがあります。とくに小児で多くみられます。
  • 不随意運動: まれに、手足が勝手に踊るように動く舞踏運動などが現れることがあります。基底核の血流低下が関係すると考えられています。
  • 知的・認知機能の低下: 小児では慢性的な脳血流不足により学習や発達に影響が出ることがあり、成人では注意力・遂行機能など高次脳機能の低下がみられることがあります。症状が目立たないまま進む場合もあるため、注意が必要です。
  • 視覚症状: 視野の一部が欠ける、一時的に見えにくくなるといった症状が、後頭葉の虚血によって起こることがあります。後大脳動脈まで病変が及ぶと出やすくなります。
  • 失神・意識障害: 広範な虚血や出血によって意識が低下することがあり、出血例では急速に昏睡に至る場合もあります。
  • 無症状: 脳ドックや頭痛の検査で偶然見つかり、自覚症状がない例も少なくありません。こうした無症候例でも、年間数%程度で脳卒中を起こすと報告されており、定期的な経過観察が勧められます。

もやもや病の経過と合併症

もやもや病の血管病変は多くの場合ゆっくり進行し、鈴木分類では内頸動脈終末部の狭窄から始まり、もやもや血管の出現・増勢を経て、最終的には内頸動脈系の血流が途絶え、外頸動脈系からの側副血行で脳が養われる段階に至ります。進行の速さには個人差が大きく、小児、特に乳幼児期の発症例は進行が速く、梗塞を起こしやすい傾向があります。成人でも病変が進行する例は少なくなく、初診時に片側のみだった病変が反対側に広がることもあります。虚血症状を繰り返す例や脳血流の予備能が低下している例では、脳梗塞を起こす危険が高くなります。出血型では再出血のリスクが高く、自然経過では年に数%から1割弱の再出血率と報告されています。無症候例も「安全な状態」とは限らず、経過中に虚血や出血を起こすことがあります。

合併症としては、脳梗塞・脳出血による運動麻痺、失語、視野障害、高次脳機能障害(記憶・注意・遂行機能の障害)、症候性てんかんなどが代表的です。小児では学習障害や知的発達への影響が問題となります。成人では、もやもや血管や側副血行路にできる脳動脈瘤、主幹動脈分岐部の動脈瘤の合併が知られています。また、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などの甲状腺疾患、1型糖尿病などを合併する例があるとされます。甲状腺機能亢進は脳血流動態に影響し、虚血症状を悪化させることがあるため注意が必要です。治療面では、血行再建術後の過灌流症候群や周術期の脳梗塞が重要な合併症です。

もやもや病の診断・診断基準

診断は、症状や偶然の画像所見をきっかけに、MRI・MRAで内頸動脈終末部とその周辺の狭窄・閉塞、および脳底部の異常血管網を確認することから始まります。厚生労働省研究班の診断基準では、脳血管撮影またはMRI・MRAで特徴的な所見を認め、動脈硬化や自己免疫疾患などの基礎疾患(類もやもや病)を除外することが求められます。MRAで十分な所見が得られれば、カテーテルによる脳血管撮影は必須ではありません。ただし手術を検討する場合や、側副血行路・動脈瘤の詳細な評価が必要な場合には脳血管撮影を行います。診断がついた後は、SPECTやPETで脳血流と予備能を評価し、虚血の重症度と出血のリスクを把握して治療方針を決めます。小児で過呼吸に伴う症状がある場合は、早めに専門施設を受診することが重要です。

  • 頭部MRI・MRA: MRAで内頸動脈終末部の狭窄・閉塞と、脳底部(大脳基底核周辺)の異常血管網を体への負担なく確認でき、診断の中心となる検査です。MRIでは梗塞巣、微小出血、拡張した穿通枝による基底核の点状の血管影(flow void)などがわかります。
  • FLAIR画像のivy sign: 脳表の軟膜側副血行の発達や血流の停滞を反映して、脳溝に沿ってツタが絡んだような高信号がみられることがあります。虚血の程度と関連するとされます。
  • 脳血管撮影(カテーテル検査): 狭窄・閉塞の部位、もやもや血管、外頸動脈系からの側副路、動脈瘤を最も詳しく評価でき、鈴木分類による病期判定に用いられます。バイパス術の計画には特に重要です。
  • 脳血流SPECT(安静時・負荷時): 安静時の脳血流と、血管拡張薬による負荷に対する反応(脳血管反応性)を測定し、血行力学的に虚血がどの程度深刻かを評価します。負荷に用いるアセタゾラミドについては、重症例での有害事象の報告を踏まえて適正使用の指針が示されており、適応を慎重に判断します。
  • PET検査: 脳血流量に加えて酸素摂取率を測定でき、貧困灌流の状態を直接評価できます。実施できる施設は限られています。
  • 血管壁MRI(高分解能MRI): 病変血管の外径の縮小や壁の性状を評価し、動脈硬化性狭窄や血管炎との鑑別に役立つことがあります。
  • 脳波: 小児で過呼吸を行ったあとにいったん消えた徐波が再び現れる「re-build-up現象」が特徴的とされます。ただし検査で発作を誘発する危険があるため、過呼吸負荷は慎重に判断します。
  • 血液検査・基礎疾患の評価: 甲状腺機能、自己抗体、脂質・血糖、凝固能などを調べ、類もやもや病の原因となる疾患や合併症を確認します。
  • 神経心理検査: 小児の発達検査や知能検査、成人の高次脳機能検査で、症状として目立たない認知機能への影響を評価し、治療効果の判定や学業・就労支援に活用します。

もやもや病と鑑別すべき疾患

  • 動脈硬化性頭蓋内動脈狭窄症: 中高年で高血圧・糖尿病・脂質異常症などの危険因子を持つ人に多く、血管壁MRIで偏心性のプラークがみられる点が鑑別に役立ちます。
  • 類もやもや病(もやもや症候群): ダウン症候群、神経線維腫症1型、放射線照射後、甲状腺疾患、自己免疫疾患などの基礎疾患に伴って同様の血管所見を示すもので、基礎疾患の有無で区別します。
  • 高安動脈炎・中枢神経系血管炎: 炎症反応の上昇や大動脈・頸部血管の病変、血管壁の造影増強などの炎症所見を伴う点が異なります。
  • MELASなどのミトコンドリア病: 脳卒中様発作を起こしますが、病変が血管の支配領域に一致しにくく、乳酸の上昇を伴い、主幹動脈の狭窄はみられません。
  • 抗リン脂質抗体症候群: 若年性脳梗塞の原因となりますが、血栓症の既往や抗リン脂質抗体陽性が特徴で、特有の血管網はみられません。
  • CADASILなど遺伝性脳小血管病: 大脳白質病変と多発ラクナ梗塞が主体で、主幹動脈の狭窄やもやもや血管を伴わない点で区別されます。

もやもや病の治療

治療の目標は、脳梗塞と脳出血の発症・再発を防ぎ、脳の機能を守ることです。もやもや病の血管狭窄そのものを元に戻す薬はまだなく、治療は(1)虚血や出血の急性期治療、(2)内科的管理、(3)外科的血行再建術、(4)リハビリテーションと生活支援、を組み合わせて行います。虚血症状を繰り返す例や、脳血流検査で予備能の低下が確認された例では、血行再建術(バイパス術)が脳卒中の予防に有効とされ、国内のガイドラインでも推奨されています。成人の出血型では、国内で行われた多施設共同研究(JAM Trial)で直接血行再建術が再出血を減らすことが示され、特に脳の後方部の出血例で効果が大きいと報告されています。無症候例や症状が軽い例では、脳血流の状態をみながら経過観察とすることも多く、方針は年齢、病型、脳血流、生活背景を踏まえて専門医と十分に話し合って決めます。

  • 直接血行再建術(浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術など): 頭皮の動脈(浅側頭動脈)を脳表の動脈に直接つなぎ、すぐに血流を増やす手術です。成人で多く行われ、効果が早く得られる一方、術後の過灌流症候群に注意が必要です。
  • 間接血行再建術(EDAS・EMS・EDAMSなど): 血流の豊富な頭皮の動脈、側頭筋、硬膜などを脳表に接するように置き、数か月かけて新しい血管が自然に生えてくるのを促す手術です。小児では間接術だけでも良好な側副血行が得られやすいとされます。
  • 複合血行再建術: 直接術と間接術を組み合わせ、早期の血流改善と長期的な側副血行の発達の両方を狙う方法で、多くの専門施設で選択されています。
  • 周術期管理: 手術前後は血圧を適切に保ち、脱水や過呼吸(低二酸化炭素血症)を避けることが重要です。小児では泣かせない工夫や鎮静も行われます。術後は過灌流症候群や虚血合併症を見逃さないよう厳重に観察します。
  • 抗血小板薬: 虚血型では、アスピリンやシロスタゾールなどの抗血小板薬が用いられることがあります。有効性の根拠はまだ十分とはいえず、出血型では出血リスクを考慮して慎重に判断します。抗凝固薬は一般的な標準治療ではありません。
  • 急性期治療: 脳梗塞では十分な補液と血圧管理、脳保護療法などを行い、出血では血圧管理、脳室ドレナージや血腫除去術を必要に応じて行います。血栓溶解療法の適応は、出血リスクを考慮して慎重に判断されます。
  • 抗てんかん発作薬・頭痛治療: てんかん発作には抗てんかん発作薬を用います。頭痛には鎮痛薬などで対処しますが、血管収縮作用をもつ片頭痛治療薬(トリプタンなど)は虚血を悪化させる懸念があるため、使用は主治医と相談します。
  • 危険因子と合併症の管理: 高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの管理と、甲状腺機能異常の治療を行います。これらは虚血や出血のリスクを下げるうえで欠かせません。
  • リハビリテーション・教育的支援: 麻痺や失語には理学療法・作業療法・言語聴覚療法を行い、高次脳機能障害には認知リハビリテーションを行います。小児では学校と連携した学習支援が重要です。

もやもや病の予後・長期フォロー

生命予後は、発症の型と重症度に大きく左右されます。小児の虚血型では、適切な時期に血行再建術を行うと一過性脳虚血発作の多くが減少・消失し、長期的な機能予後も良好な例が多いと報告されています。一方、乳幼児期の発症例や、診断時にすでに広い範囲の脳梗塞がある例では、運動障害や知的障害が残ることがあります。成人の出血型は、初回出血の重症度と再出血が予後を左右する最大の要因で、死亡や重い後遺症の原因となりえます。直接血行再建術により再出血のリスクを減らせることが示されています。生活の質(QOL)の面では、身体の麻痺だけでなく、外見からわかりにくい高次脳機能障害や慢性的な頭痛が、学業・就労・社会生活に影響することがあります。

もやもや病は手術の後も含めて、生涯にわたる経過観察が必要な病気です。定期的なMRI・MRAで病変の進行、反対側への進展、新たな梗塞や微小出血、動脈瘤の有無を確認し、必要に応じて脳血流検査を行います。手術後に側副血行が十分に発達しているかの評価も重要です。小児期に治療を受けた患者さんも、成人後に出血や虚血を起こすことがあるため、小児科・小児脳神経外科から成人の診療科への移行(トランジション)を途切れなく行うことが大切です。妊娠・出産を予定する場合は事前に主治医と相談し、妊娠中の血圧管理や分娩方法について産科と脳神経外科が連携して計画を立てます。

もやもや病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、脳の血流を急に低下させる状況を避けることが基本です。小児では、強く泣く、リコーダーなどの吹奏楽器、風船を膨らませる、熱い麺やスープを吹いて冷ますといった過呼吸につながる行動で発作が出やすいため、家族や学校に病気のことを伝えて理解を得ておくとよいでしょう。激しい運動や水泳の可否は、病状や手術の有無によって異なるため、主治医の指示に従います。夏場や発熱・下痢のときは脱水が虚血の引き金となるため、こまめに水分をとることが大切です。成人では、血圧管理、禁煙、節酒、睡眠不足や過労を避けることが出血・虚血の予防に役立ちます。服薬を自己判断で中止しないこと、ほかの医療機関を受診する際や歯科治療・全身麻酔の際には、もやもや病であることと服用中の薬を必ず伝えることも重要です。血行再建術を受けた人は、浅側頭動脈を圧迫しないよう、きつい帽子やヘルメット、眼鏡のつるなどに注意するよう指導されることがあります。家族性の例もあることから、血縁者の検査や将来の子どもへの影響が気になる場合は、遺伝カウンセリングを受けることができます。RNF213の遺伝子検査は研究目的などで行われることがありますが、結果の解釈は簡単ではないため、専門家と相談したうえで検討しましょう。

利用できる制度・相談窓口

もやもや病は指定難病(告示番号22)に指定されており、診断基準を満たし、重症度基準(modified Rankin Scaleなどによる評価)に該当する場合、または軽症であっても医療費が一定額を超える「軽症高額該当」の場合に、医療費助成を受けることができます。申請は難病指定医が作成した臨床調査個人票をもとに、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行います。18歳未満(継続する場合は20歳未満)では小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となり、成人期には指定難病制度への切り替えを行います。後遺症の程度に応じて、身体障害者手帳(肢体不自由、音声・言語機能障害など)、高次脳機能障害やてんかんでは精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の対象となる場合があります。20歳以降に日常生活や就労に支障がある場合は障害年金の請求を検討できます。また、脳血管疾患は介護保険の特定疾病に含まれるため、40〜64歳でも要介護認定を受ければ介護保険サービスを利用できる場合があります。障害のある子どもを養育する家庭では特別児童扶養手当、成人では障害者総合支援法に基づく福祉サービスも利用できます。各都道府県の難病相談支援センター、保健所の難病担当保健師、病院の医療ソーシャルワーカーが手続きや就労・就学の相談に応じています。患者会による情報交換や交流も心の支えになります。

もやもや病に伴う心のケア・心理社会的支援

もやもや病は、いつ脳卒中が起こるかわからないという不安を長く抱えやすい病気です。とくに小児の親は、子どもが泣くことや遊ぶことにまで神経をとがらせてしまい、育児の負担や罪悪感、家族内の緊張につながることがあります。子ども本人も、運動や音楽の授業を制限されることで疎外感を感じたり、手術の経験や入院が心の負担となったりすることがあります。成人では、突然の発症による仕事や家庭での役割の変化、外見からわかりにくい高次脳機能障害への周囲の無理解、妊娠・出産や遺伝に関する悩みなど、この病気に特有の心理社会的な課題があります。脳卒中後にはうつ状態や意欲の低下、適応障害が起こりやすく、これは本人の「気の持ちよう」ではなく、病気そのものの影響でもあります。眠れない、気分が沈む状態が続く、何事にも興味が持てないといった変化があれば、ひとりで抱え込まず主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士(公認心理師)、必要に応じて精神科・心療内科に相談してください。学校や職場と病状を共有し、合理的配慮を得ることも負担の軽減につながります。

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もやもや病の受診の目安

  • 片側の手足の脱力・しびれ、ろれつが回らない、言葉が出ないといった症状が現れたときは、短時間で治まっても速やかに医療機関を受診してください。
  • 突然の激しい頭痛、嘔吐、意識がもうろうとする、けいれんが起こったときは、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。
  • 子どもが泣いた後や笛を吹いた後、運動の後などに手足に力が入らなくなることを繰り返す場合は、小児科または脳神経外科を受診してください。
  • 診断後に発作の回数が増えた、新しい症状が出た、頭痛が強くなったときは、予定の受診日を待たずに主治医に連絡してください。
  • 血行再建術の後に強い頭痛、けいれん、麻痺、言葉の障害などが現れた場合は、過灌流症候群や虚血の可能性があるため、すぐに手術を受けた施設に連絡してください。
  • 血縁者にもやもや病の人がいて、頭痛や一過性の麻痺などの症状がある場合は、専門医に相談してください。

もやもや病についてのよくある質問

Q. もやもや病は遺伝しますか?

A. 約1割強に家族内発症がみられ、RNF213という遺伝子のバリアントが発症のなりやすさに関係しています。ただし、このバリアントを持っていても発症するのはごく一部であり、親が患者でも子どもが必ず発症するわけではありません。心配な場合は遺伝カウンセリングを受けることができます。

Q. 手術をすれば治りますか?

A. 血行再建術は、細くなった血管そのものを治すのではなく、別の経路から脳に血液を送って脳梗塞や再出血を防ぐ治療です。症状の改善や予防の効果が期待できますが、病気の進行を完全に止めるものではないため、手術後も定期的な検査が必要です。

Q. 無症状で見つかった場合も治療が必要ですか?

A. 無症状の場合は、脳血流検査などで状態を評価したうえで、経過観察とすることが多いです。ただし、経過中に脳卒中を起こすことがあるため、定期的な画像検査を続け、症状が出た場合はすぐに受診することが大切です。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 多くの患者さんが出産を経験しており、妊娠そのものが禁止されるわけではありません。妊娠中の血圧の管理や分娩時のいきみ・過呼吸への対策が重要になるため、妊娠前から主治医と相談し、脳神経外科と産科が連携できる施設で管理を受けることが勧められます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。