一次性膜性増殖性糸球体腎炎

Primary Membranoproliferative Glomerulonephritis

一次性膜性増殖性糸球体腎炎(Primary Membranoproliferative Glomerulonephritis)|一次性膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)は、腎臓の糸球体にメサンギウム細胞の増殖と糸球体基底膜の二重化が起こる慢性糸球体腎炎の一型で、明らかな基礎疾患がないものを指します。小児から若年成人に多く、日本では学校検尿で偶然見つかることもあります。血尿・蛋白尿やネフローゼ症候群で発症し、低補体血症を伴うことが多く、治療が奏効しない場合は長い経過のなかで腎不全へ進行することがあります。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の要点

一次性膜性増殖性糸球体腎炎は、糸球体にメサンギウム細胞の増殖と基底膜の二重化がみられ、C型肝炎や膠原病などの基礎疾患が見つからない慢性糸球体腎炎です。血尿・蛋白尿やネフローゼ症候群で発症し低補体血症を伴うことが多く、進行すると腎不全に至ることがあり、日本では指定難病(告示番号223)です。

別名・略称膜性増殖性糸球体腎炎、特発性膜性増殖性糸球体腎炎、MPGN、メサンギウム毛細血管性糸球体腎炎、membranoproliferative glomerulonephritis、mesangiocapillary glomerulonephritis
分野腎・泌尿器疾患
好発年齢小児から若年成人に多い
主な症状血尿、蛋白尿、ネフローゼ症候群
主な検査尿検査、血清補体(低補体血症)、腎生検
診断の特徴基底膜の二重化(tram-track像)、二次性の原因を除外
受診する主な診療科腎臓内科、小児腎臓科
指定難病告示番号223

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一次性膜性増殖性糸球体腎炎とは

膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis: MPGN)は、腎生検の光学顕微鏡所見による病理学的な概念です。糸球体の分葉化(lobulation)、メサンギウム細胞と基質の増加、毛細血管内細胞増多がみられます。さらにメサンギウムが毛細血管壁へ入り込み(メサンギウム間入)、基底膜が新たに作られることで、銀染色で基底膜の二重化(double contour、tram-track像)が観察されます。MPGNパターンは、C型肝炎ウイルス感染、クリオグロブリン血症、全身性エリテマトーデス、単クローン性免疫グロブリン血症、慢性の血栓性微小血管症など、多くの疾患で二次的に生じます。こうした原因を除外しても基礎疾患が見つからないものを「一次性(特発性)」MPGNと呼び、日本では指定難病(告示番号223)に定められています。

従来は電子顕微鏡で見た沈着物(デポジット)の位置により分類されていました。内皮下沈着を主体とするI型、基底膜内に高電子密度の沈着物が帯状にみられるII型(dense deposit disease: DDD)、内皮下に加えて上皮下にも沈着がみられるIII型(Burkholder型、Strife-Anders型)です。2010年代以降は、蛍光抗体法所見と病因に基づく分類が主流となりました。免疫グロブリンと補体がともに沈着する免疫複合体型MPGNと、免疫グロブリンの沈着がほとんどなくC3が優位に沈着するC3腎症(C3 glomerulopathy)に大別されます。C3腎症はさらにDDDとC3腎炎(C3GN)に分けられます。C3腎症は必ずしもMPGNパターンをとらず、メサンギウム増殖性などの像を示すこともあります。日本の難病制度でも、C3腎症は本疾患群と密接に関連する病態として扱われています。分類の詳細や認定の範囲は、最新の診断基準で確認が必要です。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の疫学・患者数

MPGNは腎生検で診断される糸球体疾患のなかで数%程度を占める比較的まれな疾患です。衛生環境の改善や二次性病因(特にC型肝炎)の診断が進んだことで、一次性MPGNの頻度は先進国で減少傾向にあるとされています。発症は小児期(学童期)から若年成人に多く、性差は大きくないと考えられています。日本では学校検尿のシステムが整っているため、症状のない血尿・蛋白尿の段階で発見される小児例が少なくありません。成人では、一見一次性に見えても、精査で単クローン性免疫グロブリン血症やC型肝炎など二次性の原因が見つかる割合が高くなります。そのため、高齢になるほど「一次性」と判断するには慎重な除外が必要です。DDDは特にまれで、多くは小児・若年者に発症します。正確な国内患者数は、指定難病の受給者数などから推計されるものの、確定した疫学データは限られています。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の原因・病態生理

病態の中心は補体系の異常な活性化です。免疫複合体型MPGNでは、何らかの抗原と抗体からなる免疫複合体が糸球体の内皮下やメサンギウムに沈着します。そこで主に古典経路を介して補体が活性化され、炎症細胞の浸潤や増殖性変化が起こります。一次性例では原因となる抗原が特定できないことがほとんどです。一方、C3腎症では、補体第二経路(代替経路)の制御が破綻し、液相や糸球体局所でC3の分解産物が持続的に生じて沈着します。破綻の原因として、C3転換酵素(C3bBb)を安定化させる自己抗体であるC3腎炎因子(C3 nephritic factor: C3NeF)、補体制御因子H(factor H)に対する自己抗体、補体関連遺伝子の変異などが報告されています。補体関連遺伝子にはCFH、CFI、CD46(MCP)、C3、CFB、CFHR群などがあります。多くは孤発例ですが、補体遺伝子の異常を背景とする家族内発症の報告もあり、単一の遺伝形式で説明できる疾患ではありません。

発症機序の流れは次のとおりです。まず、糸球体に沈着した免疫複合体やC3分解産物が補体の活性化を引き起こします。その結果、アナフィラトキシン(C3a、C5a)や膜侵襲複合体(C5b-9)が産生され、内皮細胞が障害されます。続いて単球・マクロファージなどの炎症細胞が浸潤し、メサンギウム細胞が増殖します。障害された内皮の下へメサンギウム細胞の突起が入り込み(メサンギウム間入)、その内側に新たな基底膜が形成されることで、基底膜の二重化が生じます。毛細血管の内腔は狭くなり、糸球体の濾過機能が低下します。基底膜の透過性も変化するため、蛋白尿や血尿が出現します。炎症が長期化すると、糸球体硬化、半月体形成、尿細管萎縮、間質線維化が進み、不可逆的な腎機能低下に至ります。DDDでは補体第二経路の全身的な活性化を反映して、網膜のドルーゼン(黄白色の沈着物)や後天性部分型脂肪萎縮症を合併することがあります。このことから、腎臓に限らない全身性の補体異常症としての側面があると考えられています。上気道感染などを契機に発症・増悪する例があることも知られています。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の症状

  • 無症候性血尿・蛋白尿: 自覚症状がなく、学校検尿や健康診断で尿潜血・尿蛋白を指摘されて見つかる経過は、日本の小児例で特に多くみられます。
  • 肉眼的血尿: かぜなどの上気道感染をきっかけに、コーラ色や紅茶色の尿が出ることがあります。
  • ネフローゼ症候群: 大量の蛋白尿と低アルブミン血症をきたし、全体の数割がネフローゼ症候群の形で発症するとされます。
  • 浮腫(むくみ): まぶた、下肢、顔面のむくみや体重増加として現れます。高度になると胸水や腹水を伴うこともあります。
  • 急性腎炎症候群: 血尿、蛋白尿、高血圧、浮腫、尿量減少が急に現れ、溶連菌感染後急性糸球体腎炎とよく似た経過をとることがあります。
  • 高血圧: 発症時から高血圧を伴うことが多く、頭痛を自覚する場合もあります。高血圧そのものが腎障害の進行を早めます。
  • 腎機能低下: 血清クレアチニンが上昇し、進行すると倦怠感、食欲不振、悪心、かゆみなどの尿毒症症状が現れます。
  • 急速な腎機能悪化: 半月体形成を伴う場合には、数週から数か月で腎機能が急激に悪化する急速進行性糸球体腎炎の経過をとることがあります。
  • 貧血・全身倦怠感: 腎機能の低下に伴う腎性貧血などにより、疲れやすさや息切れを感じることがあります。
  • 網膜ドルーゼン(主にDDD): 網膜に黄白色の沈着物がみられることがあります。多くは無症状ですが、長期的には視力に影響する可能性が指摘されています。
  • 部分型脂肪萎縮(主にDDD): 顔面や上半身の皮下脂肪が減少する後天性部分型脂肪萎縮症を合併することがあり、C3NeFとの関連が知られています。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の経過と合併症

経過には大きな個人差があります。尿所見異常のみで長く安定する例、治療によって寛解する例、再燃を繰り返しながらゆっくり腎機能が低下する例、急速に腎不全に至る例まであります。腎予後が悪くなる因子としては、ネフローゼ域の持続性蛋白尿、診断時の腎機能低下、高血圧、腎生検での半月体形成・間質線維化・糸球体硬化が一般に挙げられます。成人の一次性MPGNでは、治療を行わない場合に約10年で相当数が末期腎不全に至るとする欧米の報告があります。一方、日本の小児例では、早期発見と副腎皮質ステロイド治療により比較的良好な腎予後が報告されています。C3腎症のうちDDDは進行しやすい傾向があるとされます。低補体血症が持続するかどうかも、疾患活動性の目安のひとつになります。

合併症として、ネフローゼ症候群に伴う血栓症(深部静脈血栓症、腎静脈血栓症など)、脂質異常症、感染症への易感染性があります。慢性腎臓病(CKD)の進行に伴っては、腎性貧血、骨・ミネラル代謝異常、高カリウム血症、代謝性アシドーシス、心血管疾患リスクの上昇がみられます。小児では、病気そのものやステロイド治療による成長障害が問題になることがあります。治療に関連する合併症には、ステロイドによる感染症・骨粗鬆症・糖尿病・白内障・緑内障・肥満、免疫抑制薬による感染症や骨髄抑制などがあります。末期腎不全に至って腎移植を受けた場合、移植腎に本疾患が再発することがあり、特にDDDとC3腎炎では再発率が高いとされています。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の診断・診断基準

診断は、持続する血尿・蛋白尿や低補体血症などの臨床所見をきっかけに腎生検を行い、病理所見でMPGNパターン(またはC3腎症の所見)を確認することから始まります。そのうえで、二次性MPGNの原因を系統的に除外して「一次性」と判断します。除外すべき原因は、感染症(C型・B型肝炎ウイルス、慢性細菌感染など)、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群など)、クリオグロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン血症(MGRS)、血栓性微小血管症、悪性腫瘍などです。特に成人では、血清・尿の免疫固定法や遊離軽鎖測定による単クローン性蛋白の検索が欠かせません。C3腎症が疑われる場合は、補体第二経路の評価(C3NeF、抗H因子抗体、補体関連遺伝子解析など)が病態の理解や治療選択の参考になります。ただし、これらの検査は実施できる施設が限られ、研究機関に依頼する場合もあります。最終的な診断と指定難病の認定は、厚生労働省が定める診断基準に基づき、腎臓専門医が総合的に判断します。

  • 尿検査: 尿潜血、変形赤血球、赤血球円柱、尿蛋白を確認します。尿蛋白/クレアチニン比や1日尿蛋白量で蛋白尿の程度を評価し、疾患活動性と治療効果の指標とします。
  • 血清補体価(C3、C4、CH50): C3の低下が高頻度にみられます。C4も低下していれば古典経路の関与(免疫複合体型)を、C4が正常でC3のみ持続的に低下していれば第二経路の異常(C3腎症など)を示唆します。
  • 腎機能・血液生化学検査: 血清クレアチニン、eGFR、アルブミン、脂質、電解質などを測定します。腎障害の重症度とネフローゼ症候群の有無を評価します。
  • 腎生検(光学顕微鏡): 糸球体の分葉化、メサンギウム増殖、毛細血管内細胞増多、PAM染色での基底膜二重化を確認します。半月体や間質線維化の程度は予後の推定に役立ちます。
  • 腎生検(蛍光抗体法): 免疫グロブリンとC3がともに沈着していれば免疫複合体型、C3が免疫グロブリンより明らかに優位であればC3腎症と分類します。現在の病型分類の要となる検査です。
  • 腎生検(電子顕微鏡): 沈着物の位置(内皮下、上皮下、基底膜内)を確認します。基底膜内の帯状の高電子密度沈着物はDDDに特徴的な所見です。
  • 二次性病因の検索: HCV抗体・HCV-RNA、HBs抗原、クリオグロブリン、抗核抗体・抗dsDNA抗体、リウマトイド因子などを調べます。血清・尿の免疫固定法と血清遊離軽鎖で、単クローン性免疫グロブリンの有無も確認します。
  • 補体第二経路の詳細検査: C3NeF、抗H因子抗体、補体関連遺伝子変異などを調べます。C3腎症の病態評価や移植前の再発リスク評価に用いられますが、実施施設は限られます。
  • 眼科検査: DDDが疑われる場合や診断された場合には、眼底検査で網膜ドルーゼンの有無を確認し、経過を観察します。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎と鑑別すべき疾患

  • 溶連菌感染後急性糸球体腎炎(感染後糸球体腎炎): 感染後腎炎では低下したC3が通常8週程度で正常化するため、低補体血症が持続する場合はMPGNやC3腎症を疑い、腎生検を検討します。
  • ループス腎炎: 全身症状、抗核抗体・抗dsDNA抗体陽性、蛍光抗体法で多種の免疫グロブリンと補体が沈着するフルハウスパターンを示す点で区別します。
  • C型肝炎ウイルス関連腎症・クリオグロブリン血症性糸球体腎炎: HCV感染、クリオグロブリン陽性、紫斑・関節痛・末梢神経障害などの全身症状の有無で鑑別し、HCVが原因であれば抗ウイルス療法が治療の中心となります。
  • 単クローン性免疫グロブリン関連腎症(MGRS): 蛍光抗体法でκまたはλの一方の軽鎖のみが沈着していることや、血中・尿中の単クローン性蛋白によって区別し、血液内科的治療が必要になります。
  • IgA腎症・紫斑病性腎炎: 蛍光抗体法でIgAがメサンギウム優位に沈着する点で区別しますが、まれにMPGN様の組織像を示すことがあります。
  • 血栓性微小血管症(非典型溶血性尿毒症症候群など)の慢性期: 免疫グロブリンや補体の沈着が乏しい基底膜二重化に加え、溶血性貧血・血小板減少の既往があるかどうかで鑑別します。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の治療

治療の基本は、①二次性の原因があればその治療を最優先すること、②すべての患者に腎保護のための支持療法を行うこと、③蛋白尿の程度、腎機能、腎生検の活動性病変に応じて免疫抑制療法を追加すること、の3点です。国際的なガイドライン(KDIGO)でも、軽度の蛋白尿で腎機能が保たれている例では支持療法が中心とされています。ネフローゼ域の蛋白尿や腎機能低下を伴う例では、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の使用が検討されます。日本の小児では、ステロイドパルス療法や長期の隔日投与プレドニゾロンなどによる治療経験が蓄積されています。成人の一次性MPGN(特にC3腎症)に対する免疫抑制療法の有効性については、質の高いエビデンスが十分とはいえません。補体を標的とする新しい薬剤の開発も進んでおり、海外では一部承認が始まっています。ただし、国内での承認状況や保険適用は薬剤ごとに異なり、変化もしています。治療は病型、年齢、重症度、合併症を踏まえて個別に決める必要があるため、腎臓専門医と十分に相談してください。

  • レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬: ACE阻害薬やARBで血圧を管理し、蛋白尿を減らします。病型を問わず腎保護療法の基本となり、妊娠を希望する場合は事前に主治医と調整が必要です。
  • SGLT2阻害薬などのCKD治療: 蛋白尿を伴うCKDに対して腎保護効果が示されている薬剤で、腎機能や病状に応じて併用が検討されます。本疾患に特化した有効性の検証は限られています。
  • 副腎皮質ステロイド: ネフローゼ症候群、腎機能低下、活動性の高い病理所見がある場合に用いられます。小児ではメチルプレドニゾロンパルス療法や隔日投与の長期プレドニゾロン療法の経験があり、副作用の監視を併せて行います。
  • ミコフェノール酸モフェチル(MMF): 海外ではC3腎症や免疫複合体型MPGNに対し、ステロイドとの併用で有効性を示唆する報告があり、選択肢として挙げられています。国内での保険適用の範囲については主治医に確認が必要です。
  • その他の免疫抑制療法: 半月体形成を伴い急速に進行する例などでは、シクロホスファミドやリツキシマブ、血漿交換などが検討されることがあります。いずれも専門施設での慎重な判断が必要です。
  • 補体を標的とする治療: 抗C5抗体(エクリズマブなど)は一部のC3腎症で有効例が報告されていますが、効果は一定しません。補体B因子阻害薬やC3阻害薬は海外で承認が進んでおり、国内での位置づけは今後の動向を注視する段階です。
  • 食事療法・生活管理: 減塩(一般に1日6g未満が目安)や、腎機能に応じた適正なたんぱく質・カリウム摂取を行います。肥満の是正と禁煙も腎保護に重要で、小児では成長に必要な栄養を確保しながら進めます。
  • 合併症の管理: 浮腫に対する利尿薬、脂質異常症の治療、ネフローゼ時の血栓予防、腎性貧血や骨・ミネラル代謝異常の治療を行います。ステロイド使用時には骨粗鬆症予防や感染予防も行います。
  • 腎代替療法(透析・腎移植): 末期腎不全では血液透析、腹膜透析、腎移植を選択します。移植後の再発リスク(特にDDDとC3腎炎で高い)については、移植前に専門施設で評価と説明を受けることが大切です。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の予後・長期フォロー

予後は病型、発症年齢、診断時の腎機能、蛋白尿の程度によって大きく異なります。日本の小児例では、学校検尿による早期発見とステロイド治療により、長期的に腎機能が保たれる割合が比較的高いと報告されています。一方、成人例やネフローゼ症候群が持続する例、半月体や間質線維化が目立つ例では、腎不全に進行するリスクが高くなります。生命予後そのものは、腎代替療法の進歩によって大きく改善しています。ただし、CKDに伴う心血管疾患や、長期の免疫抑制療法による感染症・骨粗鬆症などが、QOLや生命予後に影響します。適切な管理を続ければ、多くの患者さんは就学・就労・社会生活を続けることが可能です。

寛解が得られても再燃することがあるため、長期のフォローアップが欠かせません。定期的に尿蛋白・尿潜血、血清クレアチニン・eGFR、血清補体価、血圧を確認し、治療薬の副作用も監視します。小児では成長・発達や思春期の評価を行い、成人診療科へ円滑に移行(トランジション)できるよう準備を進めます。DDDでは眼底検査も定期的に行います。妊娠・出産を考える年代では、病状が安定している時期を選ぶこと、妊娠中に使えない薬剤の調整、妊娠高血圧症候群のリスク評価などを、腎臓内科と産科が連携して計画的に進めることが重要です。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、減塩を中心とした食事管理、適正体重の維持、禁煙、規則正しい睡眠が腎臓を守る基本です。家庭で血圧を測定し、記録を受診時に持参すると治療の調整に役立ちます。運動は、病状が安定していれば過度に制限する必要はないとされています。学校生活では、学校生活管理指導表を用いて主治医が運動の可否を指示します。ステロイドや免疫抑制薬を使用している間は感染症にかかりやすくなるため、手洗い・うがい、人混みでのマスク着用、予防接種の計画(生ワクチンは使用中の薬剤によって接種できない場合がある)を主治医と相談してください。市販の鎮痛薬(NSAIDs)やサプリメント、造影剤の一部は腎臓に負担をかけることがあるため、使用前に医師・薬剤師に確認しましょう。本疾患の多くは遺伝性ではありませんが、補体関連遺伝子の変異が見つかった場合や家族内発症がある場合には、遺伝カウンセリングを受けることで、家族の検査や腎移植ドナーの選定に関する正確な情報が得られます。

利用できる制度・相談窓口

一次性膜性増殖性糸球体腎炎は指定難病(告示番号223)です。診断基準と重症度基準を満たす場合、または軽症でも高額な医療が継続する場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に提出します。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成(慢性腎疾患群)の対象となる場合があり、自立支援事業も利用できます。腎機能障害が一定以上に進んだ場合は身体障害者手帳(腎臓機能障害)の交付対象となり、透析導入時には自立支援医療(更生医療・育成医療)や、特定疾病療養受療証(人工透析を要する慢性腎不全)による自己負担軽減を利用できます。病状により日常生活や就労に支障がある場合は、障害年金の対象となることがあります。そのほか、高額療養費制度も利用できます。相談窓口としては、病院の医療ソーシャルワーカー、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあります。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎に伴う心のケア・心理社会的支援

慢性腎疾患は症状が乏しい時期が長い一方で、検査値の変動や「いつか透析になるのでは」という将来への不安を常に抱えやすい病気です。そのため、不安障害、抑うつ、適応障害が生じることが少なくありません。ステロイドは気分の変動や不眠、顔の丸み(満月様顔貌)や体重増加などの外見の変化を引き起こすことがあり、特に思春期の患者さんでは自己イメージや友人関係、学校生活に影響することがあります。食事や運動の制限、頻回の通院、進学・就職・結婚・妊娠といったライフイベントとの両立も、心理的な負担になりえます。保護者が自分を責めたり、きょうだいへの配慮に悩んだりすることもあります。気分の落ち込み、眠れない、服薬が続けられないといった状態が続くときは、一人で抱え込まずに主治医や看護師、臨床心理士、精神科・心療内科、患者会などに相談してください。気持ちを言葉にして共有することは、治療を継続する力にもつながります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎の受診の目安

  • 尿が赤色・コーラ色になった、または泡立ちが強く消えにくいときは、早めに受診してください。
  • まぶたや足のむくみ、短期間での体重増加、尿量の明らかな減少がみられるときは、速やかに受診してください。
  • 強い頭痛や息苦しさ、横になれないほどの呼吸困難、胸痛があるときは、救急受診を検討してください。
  • 免疫抑制療法中に38℃以上の発熱、咳、排尿時痛などの感染症状が出たときは、早めに主治医へ連絡してください。
  • 片足の急な腫れや痛み、突然の息切れ(血栓症の可能性)があるときは、直ちに医療機関を受診してください。
  • 学校検尿や健康診断で血尿・蛋白尿を指摘されたときは、症状がなくても腎臓専門医の受診をおすすめします。

一次性膜性増殖性糸球体腎炎についてのよくある質問

Q. 膜性増殖性糸球体腎炎は治りますか?

A. 完全に治癒すると言い切れる病気ではありませんが、治療によって尿所見が改善し、長期間安定する方も少なくありません。特に日本の小児例では、早期発見と治療で良好な経過をたどる例が多く報告されています。再燃することもあるため、症状がなくても定期的な通院を続けることが大切です。

Q. 遺伝する病気ですか?子どもに影響はありますか?

A. 多くは遺伝性ではない孤発例です。ただし、C3腎症の一部では補体に関わる遺伝子の変異が関与していることがあります。家族に同様の腎臓病がある場合や遺伝子変異が見つかった場合は、遺伝カウンセリングで具体的なリスクを相談できます。

Q. 補体(C3)が低いと言われました。どういう意味ですか?

A. 補体は免疫の働きを担うたんぱく質で、本疾患では腎臓で補体が過剰に使われたり制御がうまくいかなかったりするため、血液中のC3が低下することがあります。C3の値は病気の活動性の目安のひとつになりますが、それだけで病状が決まるわけではないため、尿所見や腎機能と合わせて総合的に判断します。

Q. 透析になった場合、腎移植はできますか?

A. 腎移植は選択肢のひとつで、実際に移植を受けて社会復帰している方もいます。ただし、移植した腎臓に病気が再発することがあり、特にDDDやC3腎炎では再発率が高いとされています。移植前に専門施設で病型や補体異常を評価し、再発リスクについて十分な説明を受けることが重要です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。