肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)

Pulmonary Alveolar Proteinosis

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)(Pulmonary Alveolar Proteinosis)|肺胞蛋白症は、肺の奥にある肺胞の中にサーファクタント(肺表面活性物質)と呼ばれる脂質と蛋白質の混合物が異常にたまり、酸素の取り込みが妨げられる希少な肺疾患です。成人では、GM-CSFという物質に対する自己抗体が原因の自己免疫性が大部分を占めます。乳幼児では、遺伝子変異による先天性のものがみられます。軽い息切れで済む人から在宅酸素療法や全肺洗浄が必要な人まで、重症度の幅が広い病気です。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の要点

肺胞蛋白症は、肺胞内にサーファクタント由来の脂質と蛋白質が異常にたまり、ガス交換が障害されて息切れや低酸素血症をきたす希少な肺疾患です。成人では抗GM-CSF自己抗体による自己免疫性が大半で、乳幼児では遺伝子変異による先天性があり、自己免疫性又は先天性が指定難病の対象です。

別名・略称PAP、aPAP、自己免疫性肺胞蛋白症、特発性肺胞蛋白症、先天性肺胞蛋白症、pulmonary alveolar proteinosis
分野呼吸器疾患
遺伝形式自己免疫性は遺伝性疾患ではない。先天性は遺伝子変異による
好発年齢自己免疫性は成人、先天性は乳幼児期に多い
主な症状労作時の息切れ、咳、低酸素血症
主な検査胸部CT、気管支肺胞洗浄、血清抗GM-CSF抗体測定
主な治療在宅酸素療法、全肺洗浄
受診する主な診療科呼吸器内科

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肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)とは

肺胞蛋白症(pulmonary alveolar proteinosis:PAP)は、肺胞腔内にPAS染色陽性の好酸性・顆粒状物質が貯留する病気です。この物質の主成分はサーファクタント由来のリン脂質と蛋白質で、ガス交換が障害されて低酸素血症や労作時呼吸困難が起こります。本来、サーファクタントはII型肺胞上皮細胞で産生され、肺胞の虚脱を防ぎます。余った分は、主に肺胞マクロファージによって取り込まれ分解されます。肺胞蛋白症は、この産生と除去(クリアランス)のバランスが崩れた状態と理解されています。なお、名前の似た「三頭酵素欠損症」は脂肪酸代謝異常症という全く別の疾患であり、肺胞蛋白症とは関係ありません。

病型は原因により大きく三つに分けられます。自己免疫性は、血中・肺内の抗GM-CSF自己抗体によってマクロファージの機能が低下するもので、全体の約9割を占めます。続発性は、骨髄異形成症候群などの血液疾患、粉じんの吸入、感染症、免疫抑制状態などに伴うものです。先天性・遺伝性には、サーファクタント関連遺伝子(SFTPB、SFTPC、ABCA3、NKX2-1など)の異常と、GM-CSF受容体遺伝子(CSF2RA、CSF2RB)の異常によるものがあります。1958年にRosenらが初めて記載しました。1990年代にGM-CSF欠損マウスで同様の病態が示され、1999年に日本の研究者らが患者血清中の抗GM-CSF抗体を報告したことで、自己免疫性の病態が明らかになりました。日本の指定難病(告示番号229)の対象は「自己免疫性又は先天性」で、続発性は対象外です。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の疫学・患者数

日本の全国調査では、自己免疫性肺胞蛋白症の有病率は人口100万人あたり数人程度(6人前後)と報告されています。国内の患者数は推計で千人前後とされ、日本は症例の集積と研究が世界的にも進んだ国です。診断時の年齢は中年(40〜60歳代)が中心ですが、若年者や高齢者にもみられます。男性にやや多い傾向があり、男性患者では喫煙歴のある人が多いとされます。粉じんの吸入歴を持つ人も一定数います。健康診断の胸部画像で偶然見つかり、症状がほとんどない患者も少なくありません。先天性はきわめてまれです。SFTPB異常などのサーファクタント産生障害は新生児期に重い呼吸不全で発症することが多く、GM-CSF受容体異常は乳幼児期から小児期に発症することが多いとされます。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の原因・病態生理

自己免疫性では、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)に対する中和自己抗体(IgG)が作られます。この抗体がGM-CSFの作用を遮断するため、肺胞マクロファージが十分に成熟・活性化できません。GM-CSFは、転写因子PU.1を介して、マクロファージの脂質分解・コレステロール排出・貪食機能を維持しています。この作用が失われると、マクロファージは脂質を処理しきれずに泡沫化し、サーファクタントが肺胞に蓄積します。好中球の機能も低下するため、日和見感染を起こしやすいことも特徴です。遺伝性(GM-CSF受容体異常)はCSF2RA(X染色体上の偽常染色体領域)またはCSF2RBの両アレル変異によるもので、自己抗体がなくても同じくマクロファージ機能不全をきたします。サーファクタント産生異常(SFTPBやABCA3の常染色体潜性遺伝、SFTPCの常染色体顕性遺伝または新生変異、NKX2-1など)では、異常なサーファクタントの産生や処理の障害が起こります。そのため肺胞蛋白症様の所見に加えて、間質性肺疾患の像を合併することが多いです。

発症機序をまとめると、まず肺胞内のサーファクタントの除去が遅れます。すると肺胞腔が乳白色の蛋白・脂質物質で満たされ、その部分の肺胞は換気されてもガス交換に寄与しない状態(シャント様の低酸素)になります。初期には肺の構造そのもの(肺胞壁)は比較的保たれます。このため、貯留物を物理的に取り除くか、マクロファージ機能を回復させれば、肺機能が改善しうるのが本疾患の重要な点です。自己抗体の濃度と重症度は必ずしも一致しないとされます。喫煙や粉じんの吸入は、マクロファージへの負荷を増やし、増悪因子となる可能性が指摘されています。長期経過例の一部では肺線維化が進み、非可逆的な呼吸機能障害を残すことがあります。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の症状

  • 労作時呼吸困難: 最も多い症状で、階段や坂道で息切れを自覚します。ゆっくり進むため、年齢や運動不足のせいと思われがちです。
  • 咳嗽(せき): 乾いた咳が多いですが、痰を伴うこともあります。長引く咳として受診のきっかけになります。
  • 喀痰: 白色で粘りのある痰や、時にゼリー状・塊状の痰が出ることがあります。
  • 無症状(検診発見): 日本では約3割が無症状で、健診の胸部X線やCTで偶然見つかります。
  • 倦怠感・易疲労感: 慢性的な低酸素状態により、疲れやすさや活動性の低下が生じます。
  • 体重減少: 呼吸に要するエネルギーの増加や食欲低下によって、体重が減ることがあります。
  • 発熱: 病気そのものによる発熱はまれです。発熱があるときは、ノカルジアや真菌などの二次感染を疑う必要があります。
  • チアノーゼ: 重症例では、唇や爪が紫色になる低酸素の徴候がみられます。
  • ばち指: 指先が太鼓のばち状に膨らむ所見で、頻度は高くありませんが、長期の低酸素で生じることがあります。
  • 画像に比べて軽い症状・聴診所見: CTで広範な陰影があっても、症状や聴診での異常音(捻髪音)が比較的軽いことが特徴とされます。
  • 乳幼児の多呼吸・哺乳不良(先天性): 先天性では、新生児期の呼吸窮迫、多呼吸、体重増加不良、成長障害などで発症します。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の経過と合併症

自己免疫性肺胞蛋白症の経過は多様で、おおむね次の三つに分かれます。(1)自然に軽快・寛解する群、(2)長期間ほぼ安定する群、(3)徐々に進行して呼吸不全に至る群です。日本の調査では、無治療でも一部の患者が改善することが報告されています。一方で、全肺洗浄を繰り返し必要とする人もいます。重症度は、症状の有無と動脈血酸素分圧(PaO2)に基づく重症度分類(DSS:disease severity score、1〜5度)で評価され、治療方針の目安になります。先天性のうちSFTPB欠損症などは新生児期から重篤で、肺移植がなければ生命予後は不良とされます。一方、GM-CSF受容体異常による遺伝性肺胞蛋白症は、自己免疫性に近い経過をとり、全肺洗浄が有効なことが多いとされます。

主な合併症は次のとおりです。感染症はマクロファージや好中球の機能低下によるもので、ノカルジア、アスペルギルス、クリプトコックス、抗酸菌(結核・非結核性抗酸菌)などの日和見感染が知られています。肺外(脳など)に広がることもあります。そのほか、肺線維症(長期経過例)、慢性呼吸不全、肺高血圧症、全肺洗浄に伴う合併症(低酸素、気胸、洗浄液の漏れなど)があります。経過中に血液疾患が見つかる場合は、続発性肺胞蛋白症の可能性を再評価する必要があります。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の診断・診断基準

診断は、①臨床症状と胸部画像で疑い、②気管支肺胞洗浄(BAL)や肺生検で肺胞内のPAS陽性物質を確認し、③血清抗GM-CSF抗体で病型を決める、という流れが基本です。日本の診断基準では、典型的な画像所見に加えて、BAL液の性状または病理所見で肺胞蛋白症と確認することが求められます。抗GM-CSF抗体が陽性であれば自己免疫性と判断します。抗体が陰性の場合は、骨髄異形成症候群などの血液疾患、粉じんの吸入、感染症、薬剤といった続発性の原因を調べます。小児や家族歴がある場合は遺伝子検査を検討します。重症度は、自覚症状とPaO2(安静時の動脈血ガス)で判定し、指定難病の申請にも用います。

  • 胸部高分解能CT(HRCT): すりガラス影に小葉間隔壁の肥厚が重なるcrazy-paving(メロンの皮様)パターンが特徴です。正常部分との境界がはっきりした地図状の分布を示し、胸膜直下が保たれる傾向があります。
  • 胸部X線: 両側肺門を中心に広がる浸潤影やすりガラス影がみられ、肺水腫に似ることがあります。ただし心拡大や胸水は通常ありません。
  • 気管支肺胞洗浄(BAL): 回収液は米のとぎ汁様の乳白色で、放置すると沈殿します。細胞診では、PAS陽性の無構造物質と泡沫状マクロファージが確認されます。
  • 経気管支肺生検・外科的肺生検/クライオ生検: 肺胞腔内をPAS陽性の顆粒状物質が満たし、肺胞壁は比較的保たれる所見で確定します。BALで診断できない場合や、他の疾患との区別が必要な場合に行います。
  • 血清抗GM-CSF抗体: 自己免疫性の診断に最も重要な検査で、陽性なら自己免疫性と判断できます。測定法や保険上の取り扱いは主治医に確認してください。
  • 血清マーカー(KL-6、SP-A、SP-D、CEA、LDH): これらは多くの場合上昇し、病勢や治療効果の目安として経過観察に使われます。ただし、いずれも本症だけに特有の値ではありません。
  • 動脈血ガス分析・パルスオキシメトリ: PaO2の低下と肺胞気・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の開大がみられ、重症度判定の基礎になります。
  • 呼吸機能検査: 肺拡散能(DLco)の低下が目立ち、拘束性換気障害を伴うことがあります。6分間歩行試験では労作時の酸素飽和度低下を評価します。
  • 遺伝子検査・血液学的検査: 小児例や抗体陰性例では、SFTPB、SFTPC、ABCA3、NKX2-1、CSF2RA/CSF2RBなどの遺伝子を調べます。成人で抗体陰性の場合は、骨髄検査などで続発性の原因を検索します。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)と鑑別すべき疾患

  • ニューモシスチス肺炎: crazy-pavingに似たすりガラス影を示しますが、免疫不全を背景に急速に進行し、β-Dグルカン上昇や病原体の検出で区別します。
  • 心原性肺水腫: 心拡大、胸水、BNP上昇を伴い、利尿薬で速やかに改善する点が異なります。
  • びまん性肺胞出血: 血痰、貧血の進行、BALの血性回収液(徐々に濃くなる)、血管炎関連抗体などで区別します。
  • 間質性肺炎(特発性間質性肺炎など): 網状影、牽引性気管支拡張、蜂巣肺などの線維化所見が主体で、BALが乳白色にならない点が異なります。
  • 浸潤性粘液性腺癌・リポイド肺炎: 浸潤性粘液性腺癌は限局性または多発性の陰影と細胞診で、リポイド肺炎は油性物質の吸引歴とCTでの脂肪濃度で区別します。
  • 続発性肺胞蛋白症: 抗GM-CSF抗体が陰性で、骨髄異形成症候群などの血液疾患、粉じんの吸入、リジン尿性蛋白不耐症などの基礎疾患を伴う点で区別します。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の治療

治療の目標は、肺胞内の貯留物を減らし、酸素化と症状を改善して、日常生活の質を保つことです。また、感染症などの合併症を防ぎます。自己免疫性では重症度に応じて治療を選ぶのが一般的です。無症状〜軽症(DSS 1〜2程度)では禁煙と経過観察が基本になります。症状やPaO2低下が進めば、GM-CSF吸入療法や区域洗浄を検討します。重症例では全身麻酔下の全肺洗浄が標準的な治療とされます。ステロイドは有効性が乏しく、感染リスクを高める可能性があるため、原則として推奨されていません。先天性では病型によって治療が大きく異なり、サーファクタント産生障害の重症例では肺移植が検討されます。どの治療が適しているかは、専門施設の呼吸器内科医とよく相談して決める必要があります。

  • 禁煙・粉じん曝露の回避: すべての患者に共通する基本の対策です。喫煙や職業性粉じんはマクロファージの負担を増やすため、やめる・避けることが勧められます。
  • 経過観察: 無症状または軽症で酸素化が保たれていれば、自然軽快もありうるため、画像・血液検査・呼吸機能で定期的に経過をみます。
  • 全肺洗浄(whole lung lavage): 全身麻酔下で分離肺換気を行い、片肺ずつ大量の生理食塩水を出し入れして貯留物を洗い流す治療です。長い歴史と確かな効果があり、中等症〜重症例の標準治療とされますが、経験のある施設で行う必要があります。
  • 区域洗浄(気管支鏡下肺洗浄): 気管支鏡を用いて区域ごとに洗浄する方法で、全身麻酔が難しい場合や比較的軽い場合に選択されることがあります。
  • GM-CSF吸入療法: 不足したGM-CSFの作用を補う吸入薬で、自己免疫性の酸素化改善を示した臨床試験があります。日本では2024年にサルグラモスチム吸入薬が自己免疫性肺胞蛋白症の治療薬として承認されました。適応や使い方は専門医の判断によります。
  • 酸素療法(在宅酸素療法): 低酸素血症が続く場合に、労作時や安静時に酸素を使用します。基準を満たせば保険診療で在宅酸素療法を受けられます。
  • 感染症の予防と治療: ノカルジア、真菌、抗酸菌などの日和見感染に注意し、発熱や陰影の変化があれば早めに検査と治療を行います。ワクチン接種は主治医と相談します。
  • その他の治療(研究段階を含む): 難治例では、リツキシマブや血漿交換などの報告がありますが、評価はまだ確立していません。遺伝性ではマクロファージ移植などの研究が進められています。
  • 肺移植: 先天性のサーファクタント産生障害や、各種治療に反応しない末期の呼吸不全で検討されます。移植後に再発した報告もあります。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の予後・長期フォロー

自己免疫性肺胞蛋白症の生命予後は、全肺洗浄などの治療の普及により、比較的良好とされています。死亡の多くは呼吸不全の進行や重い感染症によるものです。一方で、全肺洗浄を数カ月〜数年ごとに繰り返す必要がある患者や、在宅酸素療法が続く患者もいます。労作時の息切れによる就労・家事・余暇活動の制限は、QOLに大きく影響します。先天性では病型により予後が大きく異なります。SFTPB欠損症は乳児期に致死的になりやすく、ABCA3異常やSFTPC異常は重症度の幅が広いとされます。

長期フォローアップでは、自覚症状、SpO2(安静時・労作時)、動脈血ガス、呼吸機能(特にDLco)、KL-6・SP-D・CEAなどの血清マーカー、胸部CTを、数カ月ごとを目安に評価します。陰影の悪化や発熱があれば、病気の再燃なのか感染症なのかを見極めることが重要です。長い経過のなかで血液疾患が明らかになる場合もあるため、血球数の変化にも注意します。小児の先天性例では、成長・発達、栄養状態、肺高血圧の有無を含めて小児専門施設で管理し、成人期の診療科への移行も計画的に進めます。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

最も大切なのは完全な禁煙です。受動喫煙や、粉じん・有機溶剤・金属ヒュームなどを吸い込む作業もできるだけ避け、職場の配置などは産業医と相談するとよいでしょう。感染予防のために、手洗いやマスクを習慣にし、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて主治医と相談しましょう。土ぼこりやカビの多い環境(庭仕事、腐葉土の扱い、古い建物の解体など)では、真菌やノカルジアを吸い込まないよう注意が必要です。運動は息切れの程度に合わせて無理なく続け、呼吸リハビリテーションを取り入れることも勧められます。パルスオキシメータで日々のSpO2を記録しておくと、受診時の判断に役立ちます。飛行機での移動や高地への旅行では、低酸素が悪化する可能性があるため、事前に主治医に相談してください。自己免疫性は遺伝する病気ではありません。一方、先天性(遺伝性)の場合は、次のお子さんへの影響や家族の検査について、遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。

利用できる制度・相談窓口

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)は指定難病(告示番号229)です。診断基準を満たし、重症度分類で一定以上(III度以上とされる)の場合、または軽症でも高額な医療が続く場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、窓口は都道府県・指定都市(保健所など)です。18歳未満の先天性例では、小児慢性特定疾病医療費助成の対象となる場合があります。在宅酸素療法は医療保険の対象です。呼吸機能の障害が一定の程度に該当すれば、身体障害者手帳(呼吸器機能障害)の交付を受けられ、各種福祉サービスを利用できます。病状により就労や日常生活に支障がある場合は、障害年金の対象となりえます。医療費の負担が大きいときは、高額療養費制度も利用できます。各都道府県の難病相談支援センター、病院の医療ソーシャルワーカー、患者会、ハローワークの難病患者就職サポーターなども、相談窓口として活用できます。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)に伴う心のケア・心理社会的支援

希少な病気と診断されると、見通しが立たない不安を感じたり、「いつまた悪くなるのか」と気になり続けたりして、抑うつや適応障害につながることがあります。肺胞蛋白症では、息切れが周囲から見えにくく、「怠けている」と誤解されやすいことも負担になります。全肺洗浄を繰り返すことへの恐怖や、酸素ボンベを持ち歩くことへの抵抗感、就労継続の難しさ、喫煙歴に対する自責感なども、この病気に特有の悩みといえます。先天性のお子さんを持つ家族には、重い治療選択や遺伝についての葛藤も生じます。気持ちの落ち込みや眠れない状態が続くときは、一人で抱え込まないでください。主治医、看護師、医療ソーシャルワーカーに伝え、必要に応じて心療内科・精神科や公認心理師などの専門家に相談しましょう。患者会で同じ病気の人と体験を共有することも、孤立感を和らげる助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)の受診の目安

  • 階段や坂道での息切れが以前より明らかに強くなったとき、またはSpO2が普段より低い値で続くときは、早めに主治医を受診してください。
  • 38℃以上の発熱、膿のような痰、血痰、胸の痛みが出たときは、感染症の可能性があるため速やかに受診してください。
  • 安静にしていても息苦しい、会話がつらい、唇や爪が紫色になるといった状態は、救急受診の目安です。
  • 頭痛、意識の変化、けいれん、手足の麻痺などが出た場合は、脳への感染の可能性もあるため、ただちに救急受診してください。
  • 乳児の呼吸が速い、ミルクの飲みが悪く体重が増えない、呼吸のたびに胸がへこむ場合は、早急に小児科を受診してください。

肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)についてのよくある質問

Q. 肺胞蛋白症はがんや結核のようにうつる病気ですか?

A. 肺胞蛋白症は感染症ではなく、人にうつることはありません。悪性腫瘍でもありません。ただし合併した感染症(結核など)には、別に対応が必要な場合があります。

Q. 全肺洗浄とはどのような治療で、何回必要ですか?

A. 全身麻酔をかけ、片方の肺に生理食塩水を出し入れして、たまった物質を洗い流す治療です。1回で長く改善が続く人もいれば、数カ月〜数年ごとに繰り返す人もいます。必要な回数は人によって大きく異なります。

Q. ステロイドは効きますか?

A. 自己免疫の病気ですが、ステロイドの有効性は乏しく、感染症を起こしやすくする可能性があるため、一般的には使われません。治療法は専門医と相談して選びます。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 成人に多い自己免疫性は遺伝性の病気ではありません。先天性(遺伝性)の場合は遺伝形式が病型ごとに異なるため、遺伝カウンセリングで個別に説明を受けることが勧められます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。