高チロシン血症2型
Tyrosinemia Type 2
高チロシン血症2型(Tyrosinemia Type 2)|高チロシン血症2型は、肝臓の酵素チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)が生まれつき働かないため、アミノ酸の一つであるチロシンが血液中に著しく蓄積する先天代謝異常症です。眼(角膜炎)・皮膚(手のひら・足の裏の痛みを伴う角化)・中枢神経(知的発達の遅れ)の3つが主な症状で、別名リッチナー・ハンハート症候群(眼皮膚型チロシン血症)とも呼ばれます。肝臓や腎臓は障害されにくく、早く診断してフェニルアラニン・チロシン制限食を始めれば、眼や皮膚の症状は改善が期待できます。
高チロシン血症2型の要点
高チロシン血症2型は、肝臓の酵素TATが先天的に働かず血中チロシンが著しく上昇する常染色体潜性(劣性)遺伝の代謝異常症です。主症状は角膜炎、手のひら・足の裏の有痛性角化、知的発達の遅れで、フェニルアラニン・チロシン制限食により眼・皮膚症状の改善が期待でき、日本では指定難病の対象です。
| 別名・略称 | リッチナー・ハンハート症候群、眼皮膚型チロシン血症、チロシンアミノトランスフェラーゼ欠損症、TAT欠損症、チロシン血症2型、Richner-Hanhart syndrome、oculocutaneous tyrosinemia、tyrosinemia type II |
|---|---|
| 分野 | 代謝疾患 |
| 遺伝形式 | 常染色体潜性(劣性)遺伝(TAT遺伝子、16番染色体長腕) |
| 原因 | 肝臓の酵素チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の欠損 |
| 主な症状 | 偽樹枝状角膜炎などの眼症状、有痛性の掌蹠角化症、知的障害 |
| 主な検査 | 血中チロシン値の測定、TAT遺伝子検査 |
| 主な治療 | フェニルアラニン・チロシン制限食 |
| 受診する主な診療科 | 小児科(代謝)、眼科、皮膚科 |
高チロシン血症2型とは
高チロシン血症2型(tyrosinemia type II)は、チロシン分解経路の最初の段階を担う肝細胞質の酵素、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)が欠損する常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患です。チロシンは食事中のたんぱく質に含まれ、体内でもフェニルアラニンから作られます。TATはチロシンを4-ヒドロキシフェニルピルビン酸に変換しますが、この反応が進まないため、血中チロシンが著しく上昇します。高濃度のチロシンが角膜や皮膚の細胞内で結晶化し、炎症を起こすと考えられています。その結果、偽樹枝状角膜炎などの眼症状、有痛性の掌蹠角化症、知的障害を組み合わせて生じます。一方、1型と異なり肝不全・腎尿細管障害・肝細胞癌は起こさないとされ、この点が臨床上の大きな違いです。
高チロシン血症は、障害される酵素により1型・2型・3型に分類されます。1型はフマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(FAH)欠損で、肝・腎障害が中心の重症型です。2型はTAT欠損で、眼・皮膚・神経症状が特徴です。3型は4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPD)欠損で、主に神経症状を示します。2型の眼・皮膚症状の組み合わせは、1930年代以降リッチナー(Richner)とハンハート(Hanhart)により記載され、のちに肝TAT活性の欠損が原因と判明しました。現在、原因遺伝子は16番染色体長腕に位置するTAT遺伝子とされています。日本では高チロシン血症2型は指定難病の対象疾患で、小児慢性特定疾病(先天性代謝異常/アミノ酸代謝異常症)の対象でもあります。
高チロシン血症2型の疫学・患者数
世界的にもきわめてまれな疾患で、有病率は25万人に1人未満と推定されています。報告の多くは、血族婚の多い地域や特定の集団(地中海沿岸、中東など)に集中しています。日本での報告は数例から十数例程度の症例報告にとどまり、正確な患者数は把握されていません。ただし、眼症状がヘルペス性角膜炎と、皮膚症状が他の角化症と誤診され、診断に至っていない例があると考えられています。発症年齢には幅があります。眼症状は生後数か月以内の乳児期に始まることが多く、皮膚症状は歩行開始後の1歳以降に目立つことが多いとされます。一方、成人になって初めて診断される例もあります。遺伝形式は常染色体潜性であるため、性差はありません。日本の新生児マススクリーニング(タンデムマス法)では、高チロシン血症2型は一次対象疾患ではありません。ただし、血中チロシン高値として偶然見つかる可能性はあります。
高チロシン血症2型の原因・病態生理
本症は常染色体潜性遺伝の病気です。両親から受け継いだ2つのTAT遺伝子の両方に病的バリアントがあると発症します。両親はふつう保因者で、症状はありません。保因者同士の子どもが発症する確率は、1回の妊娠ごとに25%です。TAT遺伝子にはミスセンス、ナンセンス、スプライス異常、欠失など多様なバリアントが報告されており、多くは家系ごとに異なります。遺伝子型と、症状の重さや知的障害の有無との明確な対応は確立していません。本症は代謝の異常による疾患です。免疫や自己免疫の異常、生活習慣などの環境要因によって起こるものではありません。
TATは肝細胞質でチロシンのアミノ基を2-オキソグルタル酸に転移させ、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸を生成します(補酵素はピリドキサールリン酸)。TATが欠損すると血中チロシンが著しく上昇し、典型例では1,200 µmol/L(約22 mg/dL)を超えます(正常はおおむね100 µmol/L前後以下)。チロシンは水に溶けにくいアミノ酸のため、角膜上皮や表皮の細胞内で針状結晶として析出します。これがリソソームの破綻や炎症反応を引き起こし、角膜上皮のびらん・潰瘍や表皮の過角化をもたらすと考えられています。手のひらや足の裏など機械的刺激の多い部位に病変が出やすいのは、このためと推測されています。一部のチロシンはミトコンドリアのアミノトランスフェラーゼなど別の経路で代謝されます。そのため尿中には4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-ヒドロキシフェニル乳酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、N-アセチルチロシンなどが増えます。知的障害の機序は十分に解明されていませんが、高チロシン状態が脳の神経伝達物質の代謝や発達に影響する可能性が指摘されています。
高チロシン血症2型の症状
- 羞明(まぶしさ)・流涙: 多くは乳児期から現れ、光を嫌って目を閉じる、涙が多いといった様子が見られます。初発症状となることが多く、両眼性が典型です。
- 結膜充血・眼痛: 角膜上皮の障害による強い目の痛みと充血を伴います。乳児では不機嫌や目をこする動作として気づかれます。
- 偽樹枝状角膜炎: 角膜に樹枝状の上皮病変が見られ、単純ヘルペス角膜炎と誤診されやすい特徴的な所見です。抗ウイルス薬が効かない両眼性の角膜炎では本症を疑う手がかりになります。
- 角膜混濁・角膜瘢痕: 治療しないと角膜潰瘍や血管侵入、混濁を生じます。視力低下や弱視、まれに眼振につながることがあります。
- 有痛性掌蹠角化症: 手のひらや足の裏、特に体重のかかる部位に、境界のはっきりした黄色調の厚い角化局面ができます。強い痛みを伴うのが特徴です。
- 水疱・びらん・亀裂: 角化病変に水疱やびらん、ひび割れを伴うことがあり、痛みが強まります。歩行困難の原因となることがあります。
- 歩行・把持の障害: 足底の痛みのためにつま先歩きや歩行拒否、手の痛みのために物をつかみたがらない行動が見られることがあります。
- 知的障害・発達遅滞: 患者の一部に軽度から重度の知的障害が見られます。有無や程度には個人差が大きく、全く伴わない例もあります。
- 行動・神経症状: 多動、自傷行為、微細運動の障害、言語の遅れ、まれにけいれんなどの報告があります。
高チロシン血症2型の経過と合併症
自然経過では、乳児期に眼症状、幼児期以降に皮膚症状が現れることが多いです。ただし、眼症状だけ、皮膚症状だけの例や、成人まで診断されない軽症例もあります。皮膚・眼症状は高チロシン血症の程度とよく相関し、たんぱく質の摂取量が多い時期に悪化しやすいとされます。食事療法で血中チロシンを下げると、角膜病変は数日から数週間で、皮膚病変も数週間から数か月で改善することが多いと報告されています。一方、すでに生じた角膜瘢痕や知的障害は回復しにくいため、早期診断が重要です。肝・腎障害は伴わないため生命予後は良好ですが、食事療法をやめるとチロシンが再上昇し、症状が再発します。
主な合併症は、角膜瘢痕による視力障害や弱視、二次的な細菌感染による角膜潰瘍の悪化、掌蹠病変の慢性疼痛と歩行障害、知的障害に伴う学習・社会適応の困難などです。治療面では、フェニルアラニンとチロシンを過度に制限すると、成長障害、皮膚炎、体重増加不良などの必須アミノ酸欠乏症状を起こすことがあります。治療による栄養障害にも注意が必要です。女性患者が妊娠する場合は、母体の高チロシン血症が胎児の発育や神経発達に影響した可能性を示す報告があります。妊娠前からの代謝管理が課題となります。
高チロシン血症2型の診断・診断基準
診断の出発点は、抗ウイルス薬が効かない両眼性の角膜炎や痛みを伴う掌蹠角化から本症を疑うことです。眼科医や皮膚科医が最初に診ることが多いため、診療科をまたいだ気づきが重要になります。疑った場合は、まず血漿アミノ酸分析で著しい高チロシン血症を確認し、尿中有機酸分析でチロシン代謝物の増加を調べます。次に、1型(サクシニルアセトンの増加、肝・腎障害)や一過性新生児高チロシン血症、肝疾患などの二次性高チロシン血症を除外します。最終的にはTAT遺伝子の両アレルの病的バリアントで確定します。指定難病の申請では、学会等が示す診断基準に沿って、臨床症状、生化学所見、遺伝子解析などを総合して判断されます。日本先天代謝異常学会などの専門医や、先天代謝異常症を扱う施設への紹介が推奨されます。
- 血漿アミノ酸分析: チロシンの著しい上昇(典型的には1,200 µmol/L超)が中心的な所見です。フェニルアラニンは通常正常から軽度上昇にとどまります。3型や二次性の高チロシン血症より高値となる傾向があります。
- 尿中有機酸分析(GC/MS): 4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-ヒドロキシフェニル乳酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、N-アセチルチロシンなどの排泄増加が見られます。
- サクシニルアセトン測定: 血液・尿中のサクシニルアセトンは陰性です。陽性であれば1型を強く示唆するため、鑑別に必須の検査です。
- 肝機能・腎機能・凝固検査: 本症では通常正常範囲です。肝・腎障害やαフェトプロテイン上昇があれば、1型や肝疾患による二次性高チロシン血症を考えます。
- 細隙灯顕微鏡検査(眼科): 両眼の偽樹枝状角膜上皮病変、角膜びらん・潰瘍、混濁などを評価します。ヘルペス角膜炎との鑑別や治療効果の判定にも用います。
- 皮膚所見・皮膚生検: 掌蹠の限局性過角化が特徴で、組織では過角化や表皮細胞の変化が見られます。他の遺伝性掌蹠角化症との鑑別が必要です。
- TAT遺伝子解析: 両アレルに病的バリアントを確認できれば確定診断となります。家族の保因者診断や遺伝カウンセリングにも役立ちます。
- 発達・知能評価: 診断時と経過中に発達検査や知能検査を行い、療育や教育的支援の必要性を判断します。
高チロシン血症2型と鑑別すべき疾患
- 高チロシン血症1型: サクシニルアセトン陽性で、肝不全・腎尿細管障害(ファンコニ症候群)・肝細胞癌リスクを伴う点で区別されます。
- 高チロシン血症3型: 血中チロシンの上昇は2型より軽いことが多く、眼・皮膚症状は通常見られず、神経症状が中心です。
- 一過性新生児高チロシン血症・シトリン欠損症(NICCD): 新生児期・乳児期の一過性のチロシン上昇で、前者は自然に正常化し、後者は胆汁うっ滞やシトルリン・ガラクトースの上昇などを伴います。
- 肝疾患などによる二次性高チロシン血症: 重症肝障害ではチロシンのほかメチオニンなどの上昇と肝機能異常を伴い、原疾患の評価で区別します。
- 単純ヘルペス角膜炎: 通常は片眼性で抗ウイルス薬に反応しますが、本症の角膜炎は両眼性で抗ウイルス薬に反応せず、高チロシン血症を伴います。
- 遺伝性掌蹠角化症・先天性魚鱗癬など: 血中チロシンが正常で、角化の分布や遺伝形式、関連遺伝子が異なります。
高チロシン血症2型の治療
治療の基本は、フェニルアラニンとチロシンを制限する食事療法によって血中チロシンを下げることです。根本的に酵素を補う治療は現時点で確立していません。血中チロシンの目標は、眼・皮膚症状が出ない範囲として一般に500 µmol/L未満程度とされることが多いです。実際の目標値は年齢や症状に応じて専門医が個別に設定します。食事療法は乳児期から生涯にわたる継続が原則です。同時に、成長に必要なたんぱく質・エネルギー・必須アミノ酸は十分に確保しなければなりません。そのため、小児科(先天代謝異常症専門医)、管理栄養士、眼科、皮膚科、発達支援の専門職によるチーム医療が望まれます。なお、1型の治療薬ニチシノンはチロシン分解経路をさらに下流で阻害し、血中チロシンを上昇させるため、本症には用いません。
- フェニルアラニン・チロシン制限食: 肉・魚・卵・乳製品・大豆製品など高たんぱく食品を制限し、許容量内で自然たんぱくを摂ります。症状改善の中心となる治療です。
- 治療用特殊ミルク・アミノ酸製剤: フェニルアラニンとチロシンを除去したアミノ酸混合物(特殊ミルク等)で、不足するたんぱく質を補います。日本では特殊ミルク共同安全開発事業などを通じて供給される製品があり、主治医を通じて入手します。
- 低たんぱく特殊食品の活用: 低たんぱく米・パン・麺などを用いて、エネルギーを確保しつつたんぱく質摂取を調整します。食生活の幅を広げる助けになります。
- 定期的な血中アミノ酸モニタリング: 血漿チロシンとフェニルアラニンを定期的に測定し、食事内容を調整します。フェニルアラニンが低くなりすぎて欠乏症状を起こさないよう注意します。
- 眼科的治療: 人工涙液や角膜保護などの対症療法と、二次感染への対応を行います。根本的な改善には血中チロシンの低下が必要です。
- 皮膚科的治療: 尿素製剤やサリチル酸ワセリンなどの角質軟化剤、保湿、靴の工夫で痛みを和らげます。食事療法で改善しない場合は他疾患の合併も検討します。
- 発達支援・療育: 知的障害や発達の遅れがある場合は、早期から療育、言語訓練、作業療法、特別支援教育などにつなげます。
- 妊娠時の代謝管理: 女性患者は妊娠を計画する段階から専門医と連携し、厳格な食事管理で血中チロシンを適正に保つことが勧められます。
高チロシン血症2型の予後・長期フォロー
肝・腎障害を伴わないため、本症の生命予後は一般に良好と考えられています。眼・皮膚症状は、食事療法により血中チロシンを適切に管理できれば多くの例で改善し、再発も予防できます。一方、診断が遅れた場合は、角膜瘢痕による視力障害や知的障害が後遺症として残ることがあります。QOLの鍵は、早期診断と食事療法の継続にあります。発症早期から治療を受けた例では神経学的予後が良好であった報告もありますが、知的障害と血中チロシン値・治療開始時期との関係は完全には解明されていません。
長期フォローアップでは、年齢に応じた間隔で血漿アミノ酸の測定、身長・体重など成長の評価、栄養評価(必須アミノ酸、たんぱく栄養状態、微量栄養素など)を行います。あわせて、眼科での細隙灯顕微鏡検査、皮膚の診察、発達・知能評価を定期的に受けることが推奨されます。思春期には食事療法が緩みやすく、症状が再燃することがあるため注意が必要です。成人期には小児科から成人診療科への移行(トランジション)が課題となります。本人が自分の病気と食事管理を理解し、自己管理できるよう段階的に支援することが大切です。女性では妊娠・出産を見据えた管理計画も必要です。
高チロシン血症2型の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、主治医や管理栄養士の指示に沿ってたんぱく質摂取量を守り、特殊ミルクやアミノ酸製剤をきちんと飲み続けることが最も重要です。発熱や感染症で体のたんぱく質が分解される時期、成長期、食事内容が変わりやすい行事や旅行の際は、チロシン値が変動しやすくなります。こうした時期は特に注意し、困ったときは早めに相談してください。保育園・幼稚園・学校には病気と食事制限について伝え、給食の対応(除去や代替食)について相談しておくと安心です。目のまぶしさにはサングラスや帽子、足底の痛みにはクッション性の高い靴や中敷きが役立ちます。本症は常染色体潜性遺伝のため、きょうだいも同じ病気をもつ可能性があります。症状がなくても、血中アミノ酸の検査を受けることが勧められます。次の子どもを考える際や、患者本人が将来家庭を持つ際には、遺伝カウンセリング(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー)を利用し、再発率や出生前の選択肢について正確な情報を得るとよいでしょう。
利用できる制度・相談窓口
高チロシン血症2型は指定難病の対象で、診断基準と重症度基準を満たす場合、難病指定医の診断書(臨床調査個人票)をもとに都道府県・指定都市へ申請すると、医療費助成(自己負担上限額の設定)を受けられます。重症度基準を満たさなくても、医療費が一定以上かかる場合は軽症高額該当として対象となることがあります。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)は小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となり、多くの場合こちらを利用します。日常生活用具の給付や自立支援事業も利用できます。治療用特殊ミルクの入手方法は主治医に相談してください。知的障害がある場合は療育手帳、視覚障害がある場合は身体障害者手帳の対象となる可能性があります。障害の程度に応じて特別児童扶養手当や障害児福祉手当、20歳以降は障害年金(知的障害や視覚障害による)を受けられる場合もあります。相談窓口としては、都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカー、日本先天代謝異常学会関連の専門施設、難病情報センターなどがあります。先天代謝異常症の患者・家族会も情報交換の場として役立ちます。
高チロシン血症2型に伴う心のケア・心理社会的支援
生涯続く食事制限は、患者本人と家族に大きな心理的負担をもたらします。親は、毎日の食事計算や特殊ミルクの準備、検査値の変動への不安、子どもが周囲と同じものを食べられないことへの葛藤を抱えやすいものです。抑うつや不安、疲弊につながることもあります。本人は成長とともに、給食や外食、友人との食事で『自分だけ違う』と感じることが増えます。思春期には食事療法への反発や隠れ食いが見られ、自己肯定感の低下や適応障害を来すことがあります。本症はまれな疾患のため、周囲の理解を得にくく、診断がつくまでに眼科・皮膚科を転々とした経験から医療不信を抱く家族もいます。知的障害を伴う場合は、学業や就労の悩みも加わります。こうした気持ちは決して特別なことではありません。主治医、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、患者・家族会などに早めに相談することが大切です。気分の落ち込みや不眠、食事への強いストレスが続く場合は、心療内科・精神科や児童精神科の支援を受けることも検討してください。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
高チロシン血症2型の受診の目安
- 乳児が光を極端にまぶしがる、涙や目やにが多い、両目が赤いといった状態が続く場合は、早めに眼科を受診してください。
- ヘルペス性角膜炎などとして治療しても改善しない両眼の角膜炎がある場合は、血中アミノ酸の検査について主治医に相談してください。
- 手のひらや足の裏に痛みを伴う厚い角化ができ、歩くのを嫌がるようになった場合は受診してください。
- 治療中に目の痛み・充血や皮膚症状が再び出てきた場合は、チロシン値上昇の可能性があるため、早めに主治医に連絡してください。
- 発熱や嘔吐で特殊ミルクや食事がとれない、ぐったりしている、けいれんがあるなどの場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 発達の遅れや言葉の遅れ、行動面の変化が気になる場合は、定期受診を待たずに相談してください。
高チロシン血症2型についてのよくある質問
Q. 高チロシン血症1型と2型は同じ病気ですか?
A. どちらも血中チロシンが上がりますが、原因となる酵素が異なる別の病気です。1型は肝不全や腎障害、肝がんのリスクがあり、ニチシノンという薬を用います。2型は眼・皮膚・神経の症状が中心で、主に食事療法で治療します。
Q. 食事療法は一生続ける必要がありますか?
A. 現時点では、成人後も含めて継続が原則とされています。中断するとチロシンが再び上昇し、目や皮膚の症状が再発することが知られています。制限の程度は年齢や状態に応じて調整されるため、主治医や管理栄養士と相談しながら続けてください。
Q. 目の症状は治りますか?
A. 血中チロシンが下がると、角膜炎は比較的速やかに改善することが多いとされます。ただし、長く続いた炎症で角膜に濁りや瘢痕が残ると、視力に影響が残る場合があります。早期に診断して治療を始めることが大切です。
Q. きょうだいや次の子どもにも遺伝しますか?
A. 常染色体潜性遺伝のため、両親が保因者の場合、子どもが発症する確率は妊娠ごとに25%です。きょうだいは症状がなくても検査を受けることが勧められます。詳しくは遺伝カウンセリングで相談できます。
関連記事(関連する指定難病)
同じ分野(代謝疾患)の指定難病
この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。