高チロシン血症3型
Tyrosinemia Type 3
高チロシン血症3型(Tyrosinemia Type 3)|高チロシン血症3型は、アミノ酸の一種であるチロシンを分解する酵素「4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPD)」が生まれつき働きにくいために、血液中のチロシンが高くなる常染色体潜性(劣性)遺伝の先天代謝異常症です。世界でも報告が限られる極めてまれな病気で、乳幼児期に見つかることが多く、無症状のこともあれば、知的障害やけいれん、運動失調などの神経症状を伴うこともあります。1型のような重い肝障害・腎障害は通常みられず、食事療法を中心とした長期の管理と発達のフォローが診療の柱になります。
高チロシン血症3型の要点
高チロシン血症3型は、チロシン分解酵素HPDの働きが生まれつき低下し、血中チロシンが高くなる常染色体潜性遺伝の先天代謝異常症です。無症状から知的障害・けいれん・運動失調まで幅があり、1型のような重い肝障害は通常みられず、指定難病(告示番号243)に指定されています。
| 別名・略称 | チロシン血症3型、HPD欠損症、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ欠損症、Tyrosinemia type III、HPD deficiency |
|---|---|
| 分野 | 代謝疾患 |
| 遺伝形式 | 常染色体潜性(劣性)遺伝(HPD遺伝子の変異) |
| 好発年齢 | 乳幼児期に見つかることが多い |
| 主な症状 | 無症状のこともあり、知的障害・けいれん・運動失調などの神経症状を伴うことがある |
| 主な検査 | 血中チロシン高値、尿中の4-ヒドロキシフェニルピルビン酸・4-ヒドロキシフェニル乳酸・4-ヒドロキシフェニル酢酸の大量排泄 |
| 主な治療 | 食事療法を中心とした長期管理と発達のフォロー |
| 公的制度 | 指定難病(告示番号243) |
高チロシン血症3型とは
高チロシン血症3型(tyrosinemia type III、HPD欠損症)は、チロシン分解経路の第2段階を担うHPDの活性低下により、血中チロシンの持続的な上昇と、尿中への4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-ヒドロキシフェニル乳酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸の大量排泄を特徴とする疾患です。チロシンは食事中のたんぱく質に含まれるほか、体内でフェニルアラニンからも作られ、通常は肝臓で段階的に分解されてエネルギー源などに利用されます。本症ではこの分解が途中で滞るため、上流にあるチロシンとその代謝物が蓄積します。日本では指定難病(告示番号243)に指定されており、日本先天代謝異常学会などによる診断基準・診療指針に基づいて診療が行われます。
高チロシン血症は障害される酵素によって3つの病型に分類されます。1型は経路の最終段階のフマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(FAH)欠損で、スクシニルアセトンが蓄積し重篤な肝不全・腎尿細管障害・肝細胞癌を来します。2型(Richner-Hanhart症候群)は第1段階のチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)欠損で、血中チロシンが非常に高値となり、角膜炎などの眼症状と手掌・足底の有痛性角化を特徴とします。3型は第2段階のHPD欠損で、1970年代に初めて報告され、その後HPD遺伝子の変異が確認されました。なお、同じHPD遺伝子の特定の変異で常染色体顕性(優性)遺伝を示す「ホーキンシン尿症」という別の病態があり、本症とは区別されます。また1型の治療薬ニチシノンはHPDを阻害する薬剤であるため、ニチシノン内服中の患者さんでは生化学的に3型と類似した状態が生じることが知られています。
高チロシン血症3型の疫学・患者数
高チロシン血症3型は極めてまれな疾患で、世界的にも報告例は数十例規模にとどまるとされ、正確な有病率はわかっていません。日本国内の患者数も非常に少なく、確立した統計はありません。新生児マススクリーニングや、けいれん・発達の遅れなどの精査の過程で血中チロシン高値が見つかり診断されることが多く、発見時期は新生児期から乳幼児期が中心ですが、症状が乏しい場合は年長になってから、あるいは家族の検査を契機に見つかることもあります。常染色体潜性遺伝のため男女差はないと考えられます。軽症例や無症状例は見逃されている可能性があり、実際の頻度は報告より高いかもしれないと推測されています。
高チロシン血症3型の原因・病態生理
原因は、第12番染色体長腕(12q24領域)に位置するHPD遺伝子の両アレルの病的バリアントです。父母がそれぞれ1つずつ変異をもつ保因者で、両方から変異を受け継いだ場合に発症します(常染色体潜性遺伝)。保因者である両親は通常無症状です。HPDは主に肝臓と腎臓に発現する鉄依存性の酵素で、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸をホモゲンチジン酸に変換します。この反応には補因子としてアスコルビン酸(ビタミンC)が関与するとされます。本症は単一遺伝子の異常によって起こる先天代謝異常症であり、免疫学的な機序や環境要因、複数の要因が組み合わさって起こる多因子性の疾患ではありません。
HPD活性が低下すると、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸が蓄積し、これがチロシンアミノトランスフェラーゼの逆反応や代謝経路の停滞を介してチロシン自体の上昇につながります。過剰な4-ヒドロキシフェニルピルビン酸は4-ヒドロキシフェニル乳酸や4-ヒドロキシフェニル酢酸に変換されて尿中に排泄されます。血中チロシンは2型ほど極端な高値にはならないことが多く、また1型のような毒性代謝物(スクシニルアセトン、フマリルアセト酢酸)は生じないため、肝・腎障害は通常起こりません。一方、一部の患者さんにみられる知的障害やけいれん、運動失調などの神経症状の機序は十分に解明されていません。高チロシン状態が脳内の神経伝達物質合成やアミノ酸の脳内移行(大型中性アミノ酸トランスポーターでの競合)に影響する可能性などが推測されていますが、血中チロシン値と神経症状の重さが必ずしも相関しないこと、無症状の患者さんも存在することから、検出バイアス(神経症状のある児が精査され診断される)も含めて解釈には注意が必要とされます。血中チロシンが著しく高い場合には、2型と同様に角膜へのチロシン結晶沈着による眼症状が理論的に起こりうるため、濃度管理の意義があります。
高チロシン血症3型の症状
- 無症状(検査値異常のみ): 新生児マススクリーニングや家族検査で発見され、臨床症状を示さない例も少なくありません。症状がなくても発達の経過観察は必要です。
- 知的障害・発達の遅れ: 報告例の一部で軽度から中等度の知的障害や言語発達の遅れがみられます。早期診断・管理との関連は症例数が少なく明確ではありません。
- けいれん(てんかん発作): 乳幼児期にけいれんを契機に診断される例が報告されています。抗てんかん薬による治療が必要になる場合があります。
- 運動失調・間欠的なふらつき: 歩行の不安定さや協調運動の障害が報告されており、発熱などを契機に一時的に悪化する例もあるとされます。
- 行動・注意の問題: 多動、注意の持続困難、こだわりなどの行動上の特徴が一部で指摘されています。発達特性として評価・支援を受けることが望まれます。
- 筋緊張の異常: 筋緊張低下などの神経学的所見を伴うことがあります。運動発達の遅れとして気づかれることがあります。
- 眼症状(まれ): 血中チロシンが著しく高い場合に、角膜混濁・羞明・流涙など2型様の症状が生じる可能性があり、本症での報告は限られます。目の痛みや充血が続く場合は眼科評価が必要です。
- 尿のにおいや色の変化は通常目立たない: 尿中に芳香族有機酸が大量に排泄されますが、一般に肉眼的な特徴は乏しく、尿検査で初めて判明することがほとんどです。
- 肝・腎・皮膚症状は通常なし: 1型のような肝腫大・黄疸・出血傾向・くる病、2型のような手足の有痛性角化は原則としてみられず、これらがあれば他の病型や疾患を考えます。
高チロシン血症3型の経過と合併症
本症の自然歴は症例数が少ないため十分に確立していません。生化学的異常(血中チロシン高値、尿中4-ヒドロキシフェニル化合物の排泄増加)は生涯持続しますが、肝硬変や肝細胞癌への進展、腎不全といった進行性の臓器障害は報告上ほとんどなく、生命予後は一般に良好と考えられています。神経症状は乳幼児期から明らかになることが多く、症状が年齢とともに急速に進行する変性疾患型の経過ではないとされます。一方で、感染症や長期の絶食などで体のたんぱく分解(異化)が進むと血中チロシンがさらに上昇しうるため、体調不良時の管理が重要です。無症状例が成人まで問題なく経過した報告もあり、重症度の幅は大きいと考えられます。
合併症として注意すべきは、知的障害や学習障害、てんかん、運動失調などの神経発達面の問題です。また、極端な高チロシン状態が続くと角膜病変の懸念があります。治療面では、過度なたんぱく制限によりフェニルアラニンが不足すると、成長障害、皮膚炎、体重増加不良、神経発達への悪影響が起こりえます。妊娠に関しては、母体の高チロシン血症が胎児に与える影響についてはデータが乏しく、フェニルケトン尿症の母性PKUのような明確な知見は確立していないため、妊娠を希望する女性患者さんは事前に専門医と相談することが勧められます。
高チロシン血症3型の診断・診断基準
診断は、①血中チロシン高値の確認、②尿中有機酸分析での4-ヒドロキシフェニルピルビン酸・4-ヒドロキシフェニル乳酸・4-ヒドロキシフェニル酢酸の排泄増加、③スクシニルアセトン陰性と肝・腎機能が保たれていることによる1型の除外、④眼・皮膚症状の有無などによる2型との区別、⑤一過性高チロシン血症や肝疾患など二次性要因の除外、を順に進め、最終的にHPD遺伝子の両アレル病的バリアントの同定で確定するのが一般的な流れです。新生児期にはビタミンC不足や未熟性による一過性新生児高チロシン血症の方がはるかに頻度が高いため、時間をおいて再検査し、持続性かどうかを確認することが重要です。指定難病の申請では、日本先天代謝異常学会などが作成した診断基準に沿って、生化学所見と遺伝子解析所見を中心に判定されます。
- 新生児マススクリーニング: ろ紙血のアミノ酸分析でチロシン高値として指摘される場合があります。ただし陽性の多くは一過性高チロシン血症や他疾患によるもので、精密検査での確認が必須です。
- 血漿アミノ酸分析: 血中チロシンが持続的に中等度〜高度に上昇します(報告例では数百〜1000 μmol/L超)。フェニルアラニンは通常正常で、他のアミノ酸の異常が目立たないことも肝疾患との区別に役立ちます。
- 尿中有機酸分析(GC/MS): 4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-ヒドロキシフェニル乳酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸の著明な排泄増加が特徴です。2型でも同様の所見がみられるため、単独では病型確定できません。
- スクシニルアセトン測定: 血中・尿中スクシニルアセトンが検出されないことを確認し、1型を除外します。1型の見逃しは重大な結果につながるため必須の検査です。
- 肝機能・腎機能・凝固検査: AST・ALT、ビリルビン、PT、α-フェトプロテイン、尿細管機能(リン、糖、アミノ酸尿)などが本症では通常正常で、1型や肝不全による二次性高チロシン血症との鑑別に用います。
- HPD遺伝子解析: 両アレルに病的バリアントを同定することで確定診断となります。両親の保因者確認や将来の遺伝カウンセリングにも有用です。
- 眼科的診察(細隙灯顕微鏡): 角膜病変の有無を確認し、2型との鑑別と高チロシン血症による合併症の評価に用います。
- 神経学的評価(脳波・頭部MRI・発達検査): けいれんや発達の遅れがある場合に実施し、合併症の程度把握や他の神経疾患の除外に役立ちます。本症に特異的な画像所見は知られていません。
高チロシン血症3型と鑑別すべき疾患
- 一過性新生児高チロシン血症: 早産児や高たんぱく授乳児でHPDの未熟性・ビタミンC不足により生じ、たんぱく調整やビタミンC投与で数週〜数か月以内に正常化する点で区別されます。
- 高チロシン血症1型: スクシニルアセトン陽性、肝機能障害・凝固異常・腎尿細管障害を伴う点で本症と明確に異なり、ニチシノンによる早期治療が必要です。
- 高チロシン血症2型: 血中チロシンがより高値になりやすく、角膜炎や手掌・足底の有痛性角化を伴い、TAT遺伝子の変異で確定します。
- シトリン欠損症(NICCD)・肝疾患による二次性高チロシン血症: 胆汁うっ滞、シトルリン・メチオニンなど複数アミノ酸の上昇、肝機能異常を伴う点で鑑別されます。
- ホーキンシン尿症: 同じHPD遺伝子の顕性遺伝変異による病態で、乳児期の一過性の代謝性アシドーシスや成長障害、尿中ホーキンシン検出が特徴です。
- ニチシノン内服や甲状腺機能亢進症などに伴う高チロシン血症: 薬剤歴や全身疾患の有無を確認し、二次的な上昇を除外します。
高チロシン血症3型の治療
根本的に酵素欠損を治す治療は現時点ではなく、治療の中心はチロシンとその前駆体であるフェニルアラニンの摂取を調整する食事療法です。血中チロシンを一定範囲に保ちつつ、成長・発達に必要なたんぱく質と栄養を確保することが目標になります。ただし本症の神経症状に対する食事療法の有効性を示す質の高い研究は乏しく、無症状例にどの程度厳格な制限が必要かについても専門家の間で見解が一定していません。そのため、血中チロシン値、年齢、症状、生活状況を踏まえ、先天代謝異常症の専門医と管理栄養士が個別に方針を決めます。一般には、2型と同様に血中チロシンを概ね500 μmol/L程度未満に保つことを目安とする考え方が紹介されていますが、目標値は施設や個々の状況により異なります。1型の治療薬ニチシノンはHPDをさらに阻害しチロシンを上昇させるため、本症には用いられません。
- フェニルアラニン・チロシン制限食: 肉・魚・卵・乳製品など高たんぱく食品の量を調整し、自然たんぱく摂取量を年齢・体重に応じて設定します。制限の程度は血中チロシン値を見ながら調整します。
- 特殊ミルク・治療用アミノ酸製剤: フェニルアラニン・チロシンを除去したミルクやアミノ酸混合物で、制限で不足するたんぱく質・必須アミノ酸を補います。乳児期の主要な栄養源となることがあります。
- 十分なエネルギー摂取: エネルギー不足は体たんぱくの分解を招きチロシンを上昇させるため、低たんぱく食品や炭水化物・脂質で必要量を確保します。
- 定期的な血中アミノ酸モニタリング: 血中チロシンとフェニルアラニンを定期的に測定し、チロシン高値だけでなくフェニルアラニン欠乏が起きていないかも確認します。
- ビタミンC投与(症例に応じて): HPDの補因子に関わるため試みられることがありますが、本症での有効性は確立しておらず、使用は主治医の判断によります。
- けいれんへの対症療法: てんかん発作がある場合は、発作型に応じた抗てんかん薬で治療します。代謝管理と並行して小児神経科医が関与します。
- 発達支援・療育: 発達の遅れや行動上の課題に対して、言語療法・作業療法・理学療法、特別支援教育などを早期から活用します。
- シックデイ対応: 発熱・嘔吐などで食事がとれないときは、糖質による十分なエネルギー補給を行い、経口摂取困難なら点滴を検討します。事前に対応方法を主治医と決めておくと安心です。
高チロシン血症3型の予後・長期フォロー
本症は進行性の肝・腎障害を伴わないため、生命予後は一般に良好と考えられています。予後とQOLに最も影響するのは神経発達面の問題で、無症状のまま成長する人がいる一方、知的障害やてんかんが長く課題となる人もいます。早期に診断され管理を受けた例で神経学的に良好な経過をたどった報告はあるものの、早期治療がどの程度予後を改善するかを示す十分なデータはまだありません。適切な栄養管理のもとで、多くの患者さんは家庭・学校・社会生活を送ることが可能です。
長期フォローアップでは、血中アミノ酸値、身長・体重などの成長、栄養状態(たんぱく質、鉄、亜鉛、ビタミンなど)、発達・知能検査、必要に応じて脳波や眼科検査を定期的に評価します。乳児期は頻回に、成長とともに間隔を空けていくのが一般的です。思春期以降は食事療法の継続が難しくなりやすいため、本人が病気を理解し自己管理できるよう段階的に支援します。小児科から成人診療科への移行(トランジション)も課題で、成人期の診療体制を早めに相談しておくことが大切です。食事制限を緩和・中止するかどうかは、症状や検査値を踏まえて主治医と慎重に検討します。
高チロシン血症3型の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、主治医・管理栄養士と決めたたんぱく質の量を守り、特殊ミルクやアミノ酸製剤を指示どおりに摂ることが基本です。食品のたんぱく質量を把握するために食品成分表や計量器を活用し、外食や給食は事前に学校・園と情報共有して対応を相談します。発熱や胃腸炎などの体調不良時は早めにエネルギー補給を行い、食事がとれない状態が続く場合は受診してください。予防接種は通常どおり受けることが勧められます。本症は常染色体潜性遺伝のため、両親が保因者の場合、次の子どもが同じ病気になる確率は各妊娠ごとに25%です。きょうだいの検査、出生前・着床前の選択肢、患者さん本人が将来子どもをもつ場合のリスクなどについては、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。
利用できる制度・相談窓口
高チロシン血症3型は指定難病であり、診断基準と重症度基準を満たすなどの要件に該当すれば、難病指定医の臨床調査個人票をもとに都道府県等へ申請することで医療費助成(自己負担上限額の設定)を受けられます。18歳未満(継続の場合20歳未満)では小児慢性特定疾病(先天性代謝異常)の医療費助成の対象となり得て、自立支援事業による相談支援も利用できます。特殊ミルクは「特殊ミルク共同安全開発事業」などを通じて供給される場合があるため、主治医に確認してください。知的障害などがある場合は療育手帳、特別児童扶養手当、障害児通所支援、特別支援教育などが、成人後に日常生活や就労に支障がある場合は障害年金や障害福祉サービスが検討対象となります。相談窓口としては、主治医・病院の医療ソーシャルワーカー、都道府県の難病相談支援センター、保健所、小児慢性特定疾病の自立支援員、先天代謝異常症の患者会などがあります。
高チロシン血症3型に伴う心のケア・心理社会的支援
まれな遺伝性疾患と診断されると、ご家族は「情報が少ない」「将来どうなるかわからない」という不安や、遺伝に関する自責感を抱きやすくなります。毎日の食事計算や特殊ミルクの準備、頻回の通院・採血は養育者の大きな負担となり、育児疲れや抑うつ、不安障害につながることもあります。本症は無症状例から神経症状を伴う例まで幅があるため、「どこまで制限すべきか」という迷いも特有の心理的負担です。子ども本人も、成長とともに友人と違う食事をすることへの戸惑いや疎外感、思春期の反発による食事療法の中断などに直面しえます。発達の遅れを伴う場合には、きょうだいへの配慮も含めた家族全体の支援が必要です。気持ちの落ち込み、眠れない、強い不安が続くといった状態は我慢せず、主治医や臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、精神科・心療内科に相談してください。患者会などで同じ立場の家族とつながることも孤立感の軽減に役立ちます。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
高チロシン血症3型の受診の目安
- けいれん発作が起きた場合、特に5分以上続く、意識が戻らない、繰り返す場合は救急受診(119番)してください。
- 発熱・嘔吐・下痢などで食事や水分がとれない状態が半日以上続く場合は、早めに主治医に連絡・受診してください。
- ふらつきや歩行の不安定さ、ぼんやりしている、反応が鈍いなど、普段と違う神経症状が出た場合は受診してください。
- 目の痛み・充血・まぶしがる・涙が止まらないなどの症状が続く場合は、眼科を含めて受診してください。
- 体重が増えない、成長が止まった、発達の遅れや後退が気になる場合は、定期受診を待たずに相談してください。
- 新生児マススクリーニングで再検査や精密検査の連絡があった場合は、指示に従い速やかに医療機関を受診してください。
高チロシン血症3型についてのよくある質問
Q. 高チロシン血症3型は1型のように肝臓が悪くなりますか?
A. 3型では1型でみられる毒性物質(スクシニルアセトン)が生じないため、肝不全や肝細胞癌、腎障害は通常起こらないとされています。ただし診断時には1型でないことを確実に確認する必要があり、定期的な診察と検査は継続します。
Q. 症状がなくても食事制限は必要ですか?
A. 無症状例での食事制限の必要性や適切な程度については、症例が少なく明確な結論が出ていません。血中チロシン値や年齢、発達の状況を踏まえて、主治医と相談しながら方針を決めることが大切です。
Q. 一生治療が続くのですか?
A. 生化学的な異常は生涯続きますが、制限の程度は年齢や状態によって見直されることがあります。自己判断で中止せず、検査結果をもとに主治医と継続・緩和を検討してください。
Q. 次の子どもにも同じ病気が出ますか?
A. 両親がともに保因者の場合、子どもが発症する確率は妊娠ごとに25%、保因者となる確率は50%です。家族計画や検査の選択肢については遺伝カウンセリングで詳しく相談できます。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。