メチルマロン酸血症

Methylmalonic Acidemia

メチルマロン酸血症(Methylmalonic Acidemia)|メチルマロン酸血症は、アミノ酸や脂肪酸の分解途中でできるメチルマロン酸を処理できず、体内に有機酸がたまる先天代謝異常症(有機酸代謝異常症)です。多くは新生児期から乳児期に、哺乳不良・嘔吐・意識障害・高アンモニア血症などの急性代謝不全で発症します。生涯にわたる食事療法と体調不良時の早期対応が必要で、腎障害や神経障害などの長期合併症にも注意が要ります。

メチルマロン酸血症の要点

メチルマロン酸血症は、メチルマロニルCoAをスクシニルCoAに変える反応の障害でメチルマロン酸などの有機酸が体内にたまる、常染色体潜性遺伝の先天代謝異常症です。新生児期から乳児期に哺乳不良・嘔吐・意識障害・高アンモニア血症などで発症することが多く、指定難病(告示番号246)です。

別名・略称MMA、メチルマロン酸尿症、methylmalonic aciduria
分野代謝疾患
遺伝形式常染色体潜性(劣性)遺伝
好発年齢新生児期〜乳児期に発症することが多い
主な症状哺乳不良、嘔吐、意識障害、高アンモニア血症、代謝性アシドーシス
主な検査尿中有機酸分析、血中アシルカルニチン分析、遺伝子検査
主な治療食事療法、体調不良時の早期対応、ビタミンB12反応性の評価
受診する主な診療科小児科(小児代謝・遺伝診療)

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メチルマロン酸血症とは

メチルマロン酸血症(methylmalonic acidemia: MMA)は、ミトコンドリア内でメチルマロニルCoAをスクシニルCoAに変換する反応が障害される常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患です。この反応はメチルマロニルCoAムターゼが担い、補酵素としてビタミンB12(コバラミン)の活性型であるアデノシルコバラミンを必要とします。イソロイシン、バリン、メチオニン、スレオニンの4つのアミノ酸、奇数鎖脂肪酸、コレステロール側鎖、腸内細菌が産生するプロピオン酸は、プロピオニルCoAからメチルマロニルCoAを経て代謝されます。そのため、これらの処理が滞るとメチルマロン酸などの有機酸が血液や尿に大量にたまり、代謝性アシドーシスや多臓器障害を引き起こします。日本では指定難病(告示番号246)であり、小児慢性特定疾病の対象でもあります。

病型は大きく2つに分けられます。1つ目は酵素そのものの異常によるムターゼ欠損症(原因遺伝子MMUT、旧称MUT)で、残存活性がほとんどないmut0型と、一部活性が残るmut−型があります。2つ目は補酵素アデノシルコバラミンの合成・供給の異常で、cblA(MMAA)、cblB(MMAB)、一部のcblD(MMADHC)が含まれます。ほかに、メチルマロニルCoAエピメラーゼ欠損症(MCEE)では比較的軽症とされます。また、cblC(MMACHC)などのコバラミン代謝異常では、ホモシスチン尿症を合併するメチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症合併型となり、臨床的には別の病態として扱われることが多いです。SUCLA2やSUCLG1異常によるミトコンドリアDNA枯渇症候群でも、軽度のメチルマロン酸尿がみられます。本症は1960年代に初めて報告されました。その後、ビタミンB12への反応性の有無で予後が大きく異なることが明らかになり、反応性の評価は病型分類と治療方針の基本となっています。

メチルマロン酸血症の疫学・患者数

日本では、タンデムマス法による新生児マススクリーニングが2014年度までに全国で導入され、本症は一次対象疾患に含まれています。スクリーニングの成績から、日本での頻度は数万〜十数万出生に1人程度と推定されています。国内の患者数は数百人規模とみられますが、正確な数は明らかではありません。遺伝形式が常染色体潜性のため、性差はありません。発症時期は病型によって異なります。mut0型など重症型の多くは、生後数日以内に急性代謝不全で発症します。一方、残存活性のある病型やビタミンB12反応型では、乳幼児期以降に感染や飢餓をきっかけとして発症することがあります。症状が乏しく、学童期以降や成人期に診断される例も報告されています。スクリーニング導入後は、発症前や発症早期に診断される例が増えています。ただし、重症型ではスクリーニングの結果が出る前に発症することもあります。

メチルマロン酸血症の原因・病態生理

本症は常染色体潜性遺伝で、両親がともに保因者の場合、子が罹患する確率は1回の妊娠ごとに4分の1です。主な原因遺伝子は、ムターゼをコードするMMUTと、アデノシルコバラミンの合成や運搬に関わるMMAA(cblA)、MMAB(cblB)、MMADHC(cblD)です。MMUT異常によるムターゼ欠損症が最も多いとされます。cblA型の多くと、cblB型の一部はビタミンB12(ヒドロキソコバラミン)投与で代謝が改善し、B12反応型と呼ばれます。mut0型はB12に反応しません。一方、食事性のビタミンB12欠乏(母親のB12欠乏による乳児例、悪性貧血、胃切除後など)でもメチルマロン酸は上昇します。これは遺伝性の本症とは区別すべき後天性の病態です。

ムターゼ反応が止まると、上流のメチルマロニルCoAとプロピオニルCoAが蓄積します。そこからメチルマロン酸、メチルクエン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、プロピオニルカルニチン(C3)などが生じます。蓄積した有機酸は代謝性アシドーシスを起こすほか、次のような障害を引き起こします。①プロピオニルCoAがN-アセチルグルタミン酸合成酵素を阻害し、尿素サイクルが働かなくなって高アンモニア血症が起こる。②TCA回路への基質供給(アナプレロシス)が減り、ミトコンドリアのエネルギー産生が低下する。③糖新生が障害されて低血糖になる。④アシル基と結合してカルニチンが失われ、二次性カルニチン欠乏となる。⑤骨髄が抑制され、好中球減少・血小板減少・貧血が起こる。感染、発熱、嘔吐、絶食、手術などで体内の蛋白が分解される異化亢進の状態になると、内因性のアミノ酸が大量に代謝され、急性増悪につながります。淡蒼球など大脳基底核はエネルギー需要が高く、代謝不全時に障害を受けやすい部位です。腎では近位尿細管のミトコンドリア障害を背景に、慢性の尿細管間質性腎炎が進行すると考えられています。

メチルマロン酸血症の症状

  • 哺乳不良・嘔吐: 新生児期の初発症状として最も多くみられます。感染などをきっかけとする急性増悪でも、繰り返し起こります。
  • 意識障害・活気低下: 嗜眠からけいれん、昏睡へと急速に進むことがあります。高アンモニア血症やアシドーシスを示す重要なサインです。
  • 多呼吸(クスマウル呼吸): 代謝性アシドーシスを呼吸で代償しようとして起こる深く速い呼吸です。肺炎と誤認されることがあります。
  • 筋緊張低下: 乳児期のぐったりとした様子として現れます。運動発達の遅れにつながることがあります。
  • けいれん: 急性期の脳症や低血糖に伴って起こります。慢性期にてんかんが残る場合もあります。
  • 発達の遅れ・知的障害: 急性発作による脳障害が積み重なることで生じます。重症型では軽度から重度までさまざまな程度でみられます。
  • 不随意運動(ジストニアなど): 大脳基底核、特に淡蒼球の障害(代謝性脳卒中)によって急に出現することがあります。運動機能に後遺症を残します。
  • 成長障害・体重増加不良: 慢性的なアシドーシス、蛋白制限、食欲不振が重なって起こります。長期的な栄養評価が欠かせません。
  • 食欲不振・摂食困難: 蛋白を嫌う傾向や嘔吐しやすさがあり、経管栄養(胃管・胃瘻)が必要となる例も少なくありません。
  • 易感染性・血球減少: 急性期を中心に、好中球減少、血小板減少、貧血がみられます。感染症が重症化しやすくなります。
  • 腎機能低下: 学童期以降に慢性腎臓病が少しずつ進むことがあります。初期には自覚症状がほとんどありません。
  • 視力低下(視神経萎縮): 思春期以降に視神経の障害が報告されています。定期的な眼科評価が勧められます。

メチルマロン酸血症の経過と合併症

典型的な重症型では、生後数日の哺乳開始後に急性代謝不全を起こします。高アンモニア血症、ケトアシドーシス、低血糖を伴い、適切な治療がなければ命に関わります。急性期を乗り越えると、食事療法とL-カルニチンなどによる慢性期管理に移ります。しかし乳幼児期には、感冒や胃腸炎などをきっかけに代謝クリーゼ(急性増悪)を繰り返しやすい傾向があります。年齢とともに急性増悪の頻度は減ることが多い一方、腎障害や神経合併症などの慢性合併症が目立つようになります。B12反応型や残存活性のある病型では、急性増悪が少なく、比較的良好な経過をとる例が多いとされます。

主な合併症は次のとおりです。代謝性脳卒中は、急性増悪時やそのしばらく後に淡蒼球が両側性に障害されるもので、ジストニアなどの後遺症を残します。慢性腎臓病は尿細管間質性腎炎を背景とし、思春期〜成人期に末期腎不全に至る例もあります。このほか、急性膵炎(反復性のこともあります)、心筋症、QT延長などの不整脈、視神経萎縮、骨粗鬆症、成長障害、汎血球減少、てんかん、知的障害・発達障害が知られています。合併症の多くは代謝コントロールが良好でも出現しうるため、症状がなくても定期的な臓器評価が必要です。

メチルマロン酸血症の診断・診断基準

診断の入り口は2つあります。1つは新生児マススクリーニングで、ろ紙血のタンデムマス分析によりプロピオニルカルニチン(C3)の上昇とC3/C2比の上昇を確認します。もう1つは、急性症状のある児の一般検査で、アニオンギャップ増加型の代謝性アシドーシス、高アンモニア血症、ケトーシスなどを認めた場合です。いずれの場合も、次に尿有機酸分析(GC/MS)でメチルマロン酸の著明な増加を確認します。あわせて、血中総ホモシステインとビタミンB12値を測り、ホモシスチン尿症合併型や後天性B12欠乏を除外します。病型の確定には遺伝子解析を行い、必要に応じて培養皮膚線維芽細胞を用いた酵素活性測定や相補性試験も行います。ビタミンB12反応性試験の結果は、治療方針と予後の予測に直結します。日本では、日本先天代謝異常学会などの診療ガイドラインと指定難病の診断基準に基づいて診断します。急性期には確定診断を待たずに治療を始めることが原則です。

  • 一般血液検査(血液ガス・アンモニア・血糖など): アニオンギャップ増加型の代謝性アシドーシス、高アンモニア血症、低血糖、高乳酸血症、ケトーシスがみられます。急性期の重症度評価と治療開始の判断に必須です。
  • 新生児マススクリーニング(タンデムマス法): C3とC3/C2比の上昇で陽性となります。プロピオン酸血症や後天性B12欠乏も同じパターンを示すため、精密検査で区別します。
  • 尿有機酸分析(GC/MS): メチルマロン酸の著明な排泄増加に加え、メチルクエン酸や3-ヒドロキシプロピオン酸の増加を認めます。診断の中心となる検査です。
  • 血中アシルカルニチン・アミノ酸分析: C3の上昇と遊離カルニチンの低下(二次性カルニチン欠乏)を確認します。血漿グリシンが上昇することがあります。
  • 血中総ホモシステイン・ビタミンB12・葉酸: ホモシステインが上昇していればcblC型などの合併型を疑います。B12が低値なら母体由来を含む後天性欠乏を考えます。
  • ビタミンB12反応性試験: ヒドロキソコバラミンを投与し、尿・血中メチルマロン酸の低下をみます。反応型かどうかで治療と予後の見通しが変わります。
  • 遺伝子解析: MMUT、MMAA、MMAB、MMADHCなどの病的バリアントを同定して病型を確定します。家族の遺伝カウンセリングや出生前診断の検討にも役立ちます。
  • 酵素活性測定・相補性試験(培養線維芽細胞): ムターゼ活性やアデノシルコバラミン合成能を評価し、mut0型・mut−型・cbl群を区別します。実施できる施設は限られています。
  • 頭部MRI・腎機能・心臓・眼科評価: 淡蒼球病変や白質変化、eGFRやシスタチンCによる腎機能、心エコーや心電図、視神経を評価します。合併症の早期発見に用います。

メチルマロン酸血症と鑑別すべき疾患

  • プロピオン酸血症: 臨床像とC3上昇は共通ですが、尿中メチルマロン酸の増加がなく、メチルクエン酸と3-ヒドロキシプロピオン酸が中心となる点で区別します。
  • 後天性ビタミンB12欠乏(母体B12欠乏による乳児例を含む): 血清B12低値や母親の食事歴・既往があり、B12補充で速やかに改善する点で区別します。
  • メチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症合併型(cblC型など): 血中総ホモシステインの上昇を伴い、巨赤芽球性貧血、網膜症、神経症状がみられる点が異なります。
  • 尿素サイクル異常症: 高アンモニア血症は共通ですが、アシドーシスが目立たず、尿有機酸に特異的な異常がありません。血中アミノ酸と尿中オロト酸で区別します。
  • 複合カルボキシラーゼ欠損症・β-ケトチオラーゼ欠損症など他の有機酸代謝異常症: 尿有機酸とアシルカルニチンのパターンが異なり、疾患ごとに特徴的な代謝物で区別します。
  • 新生児敗血症・先天性心疾患などによる重症アシドーシス: 症状は似ていますが、特異的な有機酸の蓄積はなく、感染症検査や画像検査で区別します。

メチルマロン酸血症の治療

治療の目標は、①急性代謝不全を速やかに改善して脳障害を防ぐこと、②慢性期に有機酸の産生を抑えつつ正常な成長・発達に必要な栄養を確保すること、③長期合併症を早く見つけて対応することの3つです。急性期には、蛋白摂取の一時中止、十分なブドウ糖輸液による異化の抑制、L-カルニチン投与、アシドーシスの補正を行います。高アンモニア血症が重い場合は、血液浄化療法を迷わず検討します。慢性期には、自然蛋白の制限と前駆アミノ酸除去ミルクを組み合わせた食事療法を基本とし、L-カルニチンを投与します。B12反応型ではヒドロキソコバラミンを継続します。代謝コントロールが難しい例やクリーゼを繰り返す例では、肝移植が選択肢となります。どの治療を選ぶかは病型、重症度、合併症、家族の希望によって異なるため、先天代謝異常症の専門医と十分に相談して決めます。

  • 急性期管理(蛋白中止・高カロリー輸液): 自然蛋白を一時中止し、高濃度ブドウ糖(必要に応じてインスリン併用)と脂肪乳剤で十分なカロリーを補い、異化を止めます。長期間の蛋白中止は逆に異化を招くため、24〜48時間程度を目安に少量から再開するのが一般的です。
  • 血液浄化療法: 高度の高アンモニア血症や治療に反応しないアシドーシスでは、持続血液濾過透析などで有害物質を速やかに除去します。新生児にも対応できる集中治療施設での実施が望まれます。
  • カルグルミン酸: N-アセチルグルタミン酸の類似物質で、尿素サイクルを活性化してアンモニアを下げます。日本では有機酸代謝異常症に伴う高アンモニア血症に対して用いられています。
  • 食事療法(自然蛋白制限と特殊ミルク): イソロイシン、バリン、メチオニン、スレオニンを除去した特殊ミルクを併用し、自然蛋白を制限しながら必要な蛋白量とエネルギーを確保します。管理栄養士による継続的な調整が不可欠で、過度の制限は成長障害や必須アミノ酸欠乏を招きます。
  • L-カルニチン: 有機酸をアシルカルニチンとして尿中に排泄させるとともに、二次性カルニチン欠乏を補います。急性期・慢性期を通じて治療の柱となります。
  • ビタミンB12(ヒドロキソコバラミン): B12反応型では有機酸を大きく減らし、蛋白制限を緩められる場合があります。反応性は試験で個別に判断します。
  • 腸内細菌由来プロピオン酸の抑制・便通管理: メトロニダゾールの間欠投与などで、腸内細菌によるプロピオン酸の産生を減らす方法が用いられることがあります。便秘の予防も重要です。
  • 肝移植・腎移植: 肝移植は急性増悪の頻度を大きく減らし、食事制限を緩和できる可能性がありますが、根治ではありません。末期腎不全には腎移植や肝腎同時移植が検討されることがあります。
  • 合併症・発達への支援: 腎保護、てんかんやジストニアへの薬物療法、リハビリテーション、経管栄養、療育・特別支援教育などを多職種で行います。遺伝子治療やmRNA治療は研究段階です。

メチルマロン酸血症の予後・長期フォロー

予後は病型と発症時の状態によって大きく異なります。mut0型など重症のB12非反応型では、新生児期の急性代謝不全による死亡や神経学的後遺症のリスクが高いとされます。かつては予後不良の疾患でしたが、集中治療と食事療法の進歩により生存率は改善しています。一方、B12反応型や残存活性のある病型は、一般に神経発達や腎機能の予後が良好です。新生児マススクリーニングと発症前からの管理によって急性発作を減らせる可能性があります。ただし、知的障害、運動障害、慢性腎臓病は重症型の長期的な課題として残ります。成人まで成長する患者が増え、就学・就労・妊娠出産など、成人期の課題も注目されています。

長期フォローアップでは、成長(身長・体重・頭囲)、栄養状態(血漿アミノ酸、アルブミン、微量元素、骨密度)、代謝指標(血中・尿中メチルマロン酸、アシルカルニチン)を定期的に確認します。あわせて、腎機能(eGFR、シスタチンC、尿細管マーカー)、心機能(心エコー、心電図)、眼科(視神経)、膵酵素、発達・認知機能を評価します。肝移植後も腎障害や神経障害は起こりうるため、評価を続ける必要があります。小児科から成人診療科への移行期医療の体制づくりも重要で、成人期を見据えて早めに準備を始めることが勧められます。

メチルマロン酸血症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活で最も大切なのは、異化亢進を避けることと、体調不良時に早めに対応することです。長時間の絶食は避け、規則正しく食事をとります。発熱、嘔吐、下痢、食欲低下があるときは、主治医と事前に決めた「シックデイ対応」に従います。具体的には、蛋白を一時減らし、糖質を中心にエネルギーを補給します。経口摂取が難しければ、早めに医療機関を受診して輸液を受けます。病名、治療内容、緊急時の対応を記した緊急カード(エマージェンシーカード)を携帯し、かかりつけ以外の医療機関や救急隊、保育園・学校と共有しておくと安心です。予防接種は感染による急性増悪を防ぐうえで重要とされており、接種後の発熱への対応も含めて主治医と相談します。保育園・学校では、給食の調整、補食、体調変化への気づき、服薬への配慮について、事前に話し合っておきます。遺伝カウンセリングでは、次子の再発率(4分の1)、保因者診断、出生前診断の選択肢と限界などについて、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーから情報を得られます。きょうだい児も、未診断であれば検査を検討することがあります。

利用できる制度・相談窓口

メチルマロン酸血症は指定難病(告示番号246)であり、診断基準と重症度基準を満たせば難病医療費助成制度を利用できます。申請は住所地の都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行い、指定医による臨床調査個人票が必要です。18歳未満(継続の場合は20歳未満)は小児慢性特定疾病医療費助成の対象となり、自立支援事業による相談支援も受けられます。治療用の特殊ミルクは「特殊ミルク共同安全開発事業」などを通じて供給されており、入手方法は主治医に確認してください。障害の状態に応じて、身体障害者手帳(肢体不自由、腎臓機能障害など)、療育手帳、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、20歳以降の障害年金などの対象となることがあります。相談窓口としては、都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、病院の医療ソーシャルワーカー、移行期医療支援センター、先天代謝異常症の患者会・家族会があります。制度の詳細や要件は変更されることがあるため、最新情報は各窓口で確認してください。

メチルマロン酸血症に伴う心のケア・心理社会的支援

メチルマロン酸血症の子どもを育てる家族は、新生児期の突然の重症化と集中治療、厳密な食事管理、頻回の通院・入院、夜間の注入栄養、「いつ悪化するかわからない」という緊張感など、大きな負担を長期間抱えます。これにより、不安、抑うつ、睡眠不足、燃え尽きが生じやすくなります。母親の就労継続の難しさ、きょうだい児への気配り、遺伝性疾患であることへの罪悪感、肝移植など重大な治療選択の葛藤も、この疾患に特有の課題です。患者本人も、成長とともに食事制限による友人との違い、発達や学習の困難、思春期の自己管理の負担、将来の就労や妊娠への不安を抱えることがあります。こうした気持ちの揺れは自然な反応であり、一人で抱え込まないことが大切です。主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、保健師に気持ちを伝えてください。必要に応じて精神科・心療内科、レスパイトケア、患者会のピアサポートを利用することが勧められます。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

メチルマロン酸血症の受診の目安

  • 哺乳や食事がとれない、嘔吐を繰り返すときは、早めに主治医に連絡し受診してください。
  • いつもより眠りがちで反応が鈍い、ぐったりしている、呼吸が深く速いときは、すぐに救急受診してください。
  • けいれんが起きた、意識がもうろうとしている場合は、救急車を要請してください。
  • 発熱や下痢があり、シックデイ対応をしても半日程度で改善しないときは、受診して輸液の必要性を相談してください。
  • 急に手足の動きがおかしくなった、強い腹痛(背中に抜ける痛み)が出た場合は、代謝性脳卒中や膵炎の可能性があるため、速やかに受診してください。
  • 尿量の減少やむくみ、見えにくさなど新しい症状に気づいたら、定期受診を待たずに相談してください。

メチルマロン酸血症についてのよくある質問

Q. 新生児マススクリーニングで陽性と言われました。必ずこの病気ですか?

A. C3の上昇はプロピオン酸血症や母体由来のビタミンB12欠乏などでもみられ、偽陽性のこともあります。尿有機酸分析や血中ホモシステイン、B12の測定などの精密検査で診断を確定します。結果が出るまでの間も、哺乳不良や活気低下があればすぐに医療機関に連絡してください。

Q. 肝移植をすれば治りますか?

A. 肝移植によって急性増悪は大きく減り、食事制限を緩められることが多いと報告されています。ただし、腎臓や脳など肝臓以外でもメチルマロン酸は作られるため、腎障害や神経合併症のリスクは残り、根治ではありません。移植自体の合併症や免疫抑制薬の継続も含めて、専門施設で十分に相談することが大切です。

Q. 次の子どもも同じ病気になりますか?

A. 両親がともに保因者の場合、妊娠ごとに4分の1の確率で罹患児が生まれます。原因遺伝子が特定されていれば、保因者診断や出生前診断について相談できる場合があります。遺伝カウンセリングを受けて、正確な情報をもとに考えることをお勧めします。

Q. 保育園や学校に通えますか?運動はできますか?

A. 多くの場合、体調管理と周囲の理解があれば通園・通学は可能です。給食の調整、補食、体調不良時の連絡方法などを事前に取り決めておきます。運動も一般的には制限されませんが、長時間の空腹状態での激しい運動は避け、具体的な範囲は主治医と相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。