ポルフィリン症

Porphyria

ポルフィリン症(Porphyria)|ポルフィリン症は、赤血球の酸素運搬や肝臓の解毒酵素に欠かせない「ヘム」をつくる過程の酵素がうまく働かず、ポルフィリンやその前駆物質が体内にたまることで起こる代謝疾患の総称です。病型によって、激しい腹痛や神経・精神症状が発作的に起こる急性型と、日光に当たると皮膚に痛みや水疱が生じる皮膚型に大きく分かれます。どちらも、薬剤・飲酒・絶食・日光などの誘因を避けることが日常生活の重要な柱になります。日本では指定難病(告示番号254)に指定されています。

ポルフィリン症の要点

ポルフィリン症は、ヘム合成に関わる酵素の異常でポルフィリンやその前駆物質が体内にたまる代謝疾患の総称です。激しい腹痛や神経・精神症状が発作的に起こる急性型と、日光で皮膚に痛みや水疱が生じる皮膚型があり、薬剤・飲酒・絶食・日光などの誘因回避が重要な指定難病(告示番号254)です。

別名・略称ポルフィリア、Porphyria
分野代謝疾患
病態ヘム生合成経路の酵素異常により、ALA・PBG・ポルフィリンが蓄積
遺伝形式病型により異なる(常染色体顕性が多いが、潜性やX連鎖の病型もある)
主な症状急性型は腹痛・神経精神症状、皮膚型は日光による痛み・水疱
主な検査尿中ALA・PBG、血液・尿・便のポルフィリン分析、遺伝学的検査
主な治療誘因の回避、急性発作にはヘミン製剤など、皮膚型は遮光
指定難病告示番号254

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ポルフィリン症とは

ポルフィリン症(porphyria)は、ヘム生合成経路を構成する8つの酵素のいずれかの活性が低下または亢進し、経路の中間代謝物であるδ-アミノレブリン酸(ALA)、ポルフォビリノーゲン(PBG)、各種ポルフィリンが組織や血液に過剰に蓄積する疾患群です。ヘムは主に骨髄の赤芽球(ヘモグロビン用)と肝細胞(シトクロムP450などのヘム蛋白用)で合成されます。そのため、異常がどちらの臓器で主に表れるかによって臨床像が大きく異なります。本症は免疫の異常による病気ではなく、本質は酵素異常による代謝疾患です。急性型は発作を繰り返す経過をとるのが典型的で、一律に進行性というわけではありません。また、診断の中心は尿・便・血液の生化学検査と遺伝子検査であり、画像検査は補助的な位置づけです。

分類には、蓄積が主に起こる臓器による「肝性」と「骨髄性(赤芽球性)」の区分と、症状による「急性(神経内臓型)」と「皮膚型」の区分が併用されます。急性肝性ポルフィリン症(AHP)には、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、異型ポルフィリン症(VP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、ALA脱水酵素欠損性ポルフィリン症(ADP)の4病型があります。このうちVPとHCPは皮膚症状も伴いえます。皮膚型には、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)、肝骨髄性ポルフィリン症(HEP)、骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)、X連鎖優性プロトポルフィリン症(XLP)、先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP、ギュンター病)があります。19世紀末にポルフィリン尿と光線過敏の関連が記載されて以降、20世紀を通じて各酵素欠損が順次同定されてきました。近年は、ヘミン製剤に加え、肝臓のALA合成酵素1(ALAS1)を標的とする核酸医薬が登場し、急性型の治療は大きく変わりつつあります。

ポルフィリン症の疫学・患者数

国内の正確な患者数は把握されていません。国内報告例の集積では、EPP、AIP、PCTが大部分を占めるとされます。世界的にはPCTが最も多い病型とされ、急性肝性ポルフィリン症で症状を呈する患者は欧州で人口100万人あたり数人程度と推定されています。一方、ゲノムデータベースの解析では、AIPの原因となるHMBS遺伝子の病的バリアント保有者は1,000〜2,000人に1人程度存在する可能性が示されています。つまり、保因者の大多数は生涯発症しない低浸透率の疾患です。急性型は思春期以降、特に20〜40歳代の女性に発作が多く、性ホルモン(黄体期のプロゲステロン)の影響が考えられています。小児期発症はまれです。EPPは乳幼児期から小児期に光線過敏で気づかれることが多く、性差は目立ちません。日本人では、EPPの発症に関わるFECH遺伝子の低発現型多型の頻度が欧米より高いことが報告されています。PCTは中年以降の発症が多く、飲酒、C型肝炎ウイルス感染、鉄過剰などの後天的因子と強く関連します。CEPやHEP、ADPは国内外ともに極めてまれです。

ポルフィリン症の原因・病態生理

ヘム合成は、グリシンとスクシニルCoAからALAをつくる反応(ALA合成酵素、肝ではALAS1、赤芽球ではALAS2)に始まります。その後、ALA脱水酵素(ALAD)、ヒドロキシメチルビラン合成酵素(HMBS、別名PBG脱アミノ酵素)、ウロポルフィリノーゲンIII合成酵素(UROS)、ウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素(UROD)、コプロポルフィリノーゲン酸化酵素(CPOX)、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(PPOX)、フェロケラターゼ(FECH)が順に働きます。病型と遺伝形式の対応は次のとおりです。AIPはHMBS、HCPはCPOX、VPはPPOXのヘテロ接合性バリアントによる常染色体顕性(優性)遺伝です。ADPはALAD、CEPはUROSの両アレル変異による常染色体潜性(劣性)遺伝です。EPPはFECHの機能喪失型変異と、もう一方のアレルの低発現型多型(または変異)の組み合わせで発症するのが一般的です。XLPはALAS2の機能獲得型変異によります。PCTの多くは遺伝的素因のない散発型(1型)で、UROD変異を伴う家族型(2型)もあります。HEPはURODの両アレル変異で起こります。

急性型では、薬剤(バルビツール酸系、一部の抗てんかん薬、サルファ剤、黄体ホルモン製剤など)、飲酒、絶食や過度のカロリー制限、喫煙、感染症、手術、精神的ストレスなどが誘因となります。これらによって肝のヘム需要が増したり、ヘムによる負のフィードバックが弱まったりすると、ALAS1が強く誘導されます。下流の酵素活性が半分程度しかないため処理が追いつかず、ALAとPBGが大量に蓄積します。特にALAには神経毒性があると考えられています。その結果、自律神経障害(腹痛、便秘、頻脈、高血圧)、末梢運動神経障害、中枢神経症状(けいれん、意識障害、精神症状)が引き起こされます。低ナトリウム血症は、抗利尿ホルモン不適合分泌(SIADH)や嘔吐による喪失で生じます。皮膚型で蓄積するポルフィリンは、約400nm付近(ソーレー帯)の可視光を強く吸収して活性酸素を生じ、真皮の血管や組織を傷害します。水溶性のウロポルフィリンなどが主体のPCTやCEPでは、水疱、皮膚脆弱性、瘢痕が中心になります。脂溶性のプロトポルフィリンが蓄積するEPPでは、外見上の変化が乏しい一方で強い灼熱痛が中心になります。プロトポルフィリンは胆汁から排泄されるため、過剰になると胆石や肝障害の原因となります。

ポルフィリン症の症状

  • 激しい腹痛(急性型): 部位がはっきりしない強い腹痛が数日続くことが多く、腹部の圧痛や腹膜刺激症状は乏しいのが特徴です。急性腹症として開腹手術を受けた既往をもつ例もあります。
  • 悪心・嘔吐・便秘: 自律神経障害による腸管運動低下で起こります。嘔吐による脱水や低ナトリウム血症を助長します。
  • 頻脈・高血圧: 交感神経の過緊張による症状で、発作の活動性の指標にもなります。
  • 赤褐色〜暗赤色尿: PBGやポルフィリンを多く含む尿は、排尿後に光や空気にさらされると色が濃くなることがあります。急性型の発作時やCEPの乳児のおむつで気づかれます。
  • 精神症状・意識障害: 不安、不眠、興奮、幻覚、せん妄などがみられ、精神疾患と誤認されることがあります。
  • けいれん発作: 低ナトリウム血症やALAの神経毒性によって起こります。抗てんかん薬の多くが発作を悪化させうるため、薬剤の選択に注意が必要です。
  • 末梢運動神経障害(筋力低下): 軸索障害が主体で、上肢や近位筋から始まる筋力低下が多いとされます。重症例では呼吸筋麻痺に至ることがあります。
  • 手足や背部の痛み・しびれ: 四肢、腰背部、胸部などの神経障害性の痛みです。発作間欠期にも慢性疼痛として残ることがあります。
  • 日光曝露時の灼熱痛(EPP/XLP): 日光(窓ガラス越しの可視光を含む)に当たって数分〜数十分で、ヒリヒリ・焼けるような強い痛みが生じます。浮腫や紅斑を伴いますが、外見上の所見が軽く周囲に理解されにくい特徴があります。
  • 水疱・皮膚脆弱性(PCT/VP/HCP/CEP): 手背や顔など露光部に水疱やびらんが生じ、軽い外力でも皮膚が剥けます。治癒後に瘢痕や稗粒腫(小さな白い粒)を残します。
  • 多毛・色素沈着: PCTやCEPでは、顔面(特に頬やこめかみ)の多毛や色素沈着、皮膚の硬化がみられることがあります。
  • 赤色歯・溶血性貧血(CEP): 歯にポルフィリンが沈着し、紫外線ランプで赤く蛍光を発します。溶血による貧血や脾腫を伴い、重症例では指趾や鼻の変形・欠損に至ります。

ポルフィリン症の経過と合併症

急性型は、発作のない時期(間欠期)と急性発作を繰り返すのが典型です。生涯に1〜数回の発作で終わる人がいる一方、月経周期に一致して年に何度も発作を繰り返す「再発型」の人もいます。発作は数日〜2週間程度続くことが多いものの、診断が遅れて誘因となる薬剤が使われ続けると、神経障害が進行して四肢麻痺や呼吸不全に至る危険があります。運動麻痺は回復に数か月〜年単位を要し、後遺症が残ることもあります。皮膚型のEPPは幼少期から生涯にわたり光線過敏が続きます。PCTは誘因(飲酒、C型肝炎、鉄過剰、エストロゲンなど)を除去し治療すると、多くは寛解に至ります。CEPは出生時〜乳児期に発症し、未治療では皮膚の瘢痕化と変形が進行します。

急性型の長期合併症として、慢性高血圧、慢性腎臓病、慢性的な神経障害性疼痛が知られています。さらに、肝細胞癌のリスクが一般より高いことが報告されており、肝硬変がなくても発生しうる点に注意が必要です。発作中は重度の低ナトリウム血症によるけいれんや、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)がみられることもあります。EPPでは、ごく一部(数%程度とされる)にプロトポルフィリンの蓄積による肝障害が起こり、急速に肝不全へ進行することがあります。胆石、軽度の小細胞性貧血、日光回避に伴うビタミンD欠乏も起こりえます。PCTでは糖尿病、肝線維化・肝硬変、肝細胞癌との関連が指摘されています。CEPでは溶血性貧血、脾腫、眼病変(角膜瘢痕など)、骨粗鬆症が問題になります。

ポルフィリン症の診断・診断基準

診断の出発点は、ポルフィリン症を疑うことです。急性型では、原因のはっきりしない強い腹痛が繰り返される場合が手がかりになります。特に若年女性で、頻脈・高血圧・低ナトリウム血症・精神症状・筋力低下・赤褐色尿を伴うときは、まず発作時の随時尿でPBGとALAを測定します(クレアチニン補正)。PBGが著明に増加していれば急性肝性ポルフィリン症の可能性が高く、結果を待たずに治療を始めることも検討されます。病型(AIP、VP、HCP)の鑑別には、尿・便・血漿中のポルフィリン分画、血漿蛍光スペクトル、赤血球酵素活性を組み合わせ、最終的に遺伝子検査で確定します。皮膚型では、症状(即時型の疼痛か、水疱・脆弱性か)に応じて、赤血球中プロトポルフィリンや尿・便ポルフィリンを測定します。間欠期や治療後には値が正常近くまで下がることがあり、特に急性型では検体採取のタイミングが重要です。指定難病の申請には、難病指定医が診断基準と重症度基準に沿って作成した臨床調査個人票が必要です。

  • 尿中PBG・ALA定量: 急性肝性ポルフィリン症のスクリーニングで最も重要な検査です。発作時には基準値の数倍〜数十倍に上昇します。ALAのみが上昇しPBGが正常の場合は、鉛中毒、高チロシン血症1型、ADPを考えます。
  • 尿中ポルフィリン分画: PCTではウロポルフィリンと7カルボキシルポルフィリンが優位に増加し、CEPではI型異性体が著増します。ポルフィリン尿は肝疾患などでも非特異的に上昇するため、単独での診断には注意が必要です。
  • 便中ポルフィリン分画: HCPではコプロポルフィリンIIIが、VPではプロトポルフィリンとコプロポルフィリンが増加し、両者の区別に役立ちます。PCTではイソコプロポルフィリンの検出が特徴的とされます。
  • 血漿蛍光スペクトル: VPでは約626nm付近に特徴的な発光ピークを示し、簡便な鑑別法として用いられます。皮膚型のスクリーニングにも有用です。
  • 赤血球プロトポルフィリン測定: EPPでは亜鉛非結合型(フリー)プロトポルフィリンが著増します。XLPでは亜鉛結合型の割合が比較的高いことが鑑別点です。鉄欠乏や鉛中毒では亜鉛プロトポルフィリンが主に上昇します。
  • 赤血球HMBS活性など酵素活性測定: AIPでは多くの場合、赤血球HMBS活性が正常の約半分に低下します。ただし、肝のみで発現が低下する変異型では正常値を示すことがあります。
  • 遺伝子検査: HMBS、PPOX、CPOX、FECH、UROD、UROS、ALAS2などの病的バリアントを同定し、病型を確定します。発端者で変異が判明すれば、血縁者の保因者診断と発症予防に活用できます。
  • 一般血液・生化学検査、肝機能・画像: 発作時の低ナトリウム血症や肝機能を評価します。腹部画像は他の急性腹症の除外と、長期的な肝細胞癌スクリーニングに用います。EPPでは肝機能やビタミンDの定期的な評価が重要です。
  • 神経学的評価(神経伝導検査、頭部MRI): 運動優位の軸索性ニューロパチーや、PRESなどの中枢病変を評価します。重症度の判定と経過観察に用います。

ポルフィリン症と鑑別すべき疾患

  • 急性腹症(虫垂炎、腸閉塞、胆石・膵炎など): 腹膜刺激症状や画像上の器質的異常があれば外科疾患を考えますが、所見に乏しい激痛が反復する場合は尿PBGを確認します。
  • 鉛中毒: 腹痛、貧血、ニューロパチーをきたし尿ALAが上昇しますが、PBGは正常かわずかな上昇にとどまり、血中鉛濃度が高値を示します。
  • ギラン・バレー症候群などの急性ニューロパチー: 急性の運動麻痺は共通しますが、ポルフィリン症では先行する腹痛、自律神経症状、低ナトリウム血症、尿PBG上昇を伴う点が異なります。
  • 高チロシン血症1型: 蓄積するスクシニルアセトンがALADを阻害して急性ポルフィリン症様の神経発作を起こしますが、乳幼児期の肝障害と尿中スクシニルアセトン検出で区別します。
  • 全身性エリテマトーデス・多形日光疹など光線過敏症: 光線過敏や露光部の皮疹は共通しますが、自己抗体や皮膚病理で区別し、ポルフィリン値は正常です。
  • 偽ポルフィリン症・表皮水疱症・類天疱瘡: PCTに似た水疱・脆弱性を示しますが、偽ポルフィリン症(NSAIDsなどの薬剤や透析に関連)ではポルフィリン値が正常で、自己免疫性水疱症は蛍光抗体法で鑑別します。

ポルフィリン症の治療

治療の基本は、病型に応じて、①誘因の回避と除去、②急性発作の速やかな抑制、③長期的な発作・症状の予防と合併症管理、の3本柱で考えます。急性発作は生命に関わることがあるため、原則として入院し、疑わしい薬剤をただちに中止して、ヘミン投与や糖質補給、対症療法を行います。発作を繰り返す例では、ALAS1を抑制する核酸医薬による予防投与が選択肢になりました。皮膚型では遮光が基本で、PCTでは瀉血などで寛解をめざし、EPPでは肝合併症の監視が重要です。治療薬の選択には専門的判断を要するため、薬剤の安全性情報(海外のポルフィリン症薬剤データベースなど)を参照しながら、主治医や専門医と相談して方針を決めることが大切です。

  • 誘因の除去と安全な薬剤選択: 発作を誘発しうる薬剤、飲酒、喫煙、絶食をやめます。鎮痛にはモルヒネなどのオピオイド、制吐には比較的安全とされる薬剤を選びます。新たな処方を受ける際は、毎回ポルフィリン症であることを伝えます。
  • ヘミン製剤(ヘミン点滴静注): 急性発作の中心的な治療です。ヘムを補ってALAS1を抑え、ALA・PBGの産生を速やかに減らします。神経障害が進行する前の早期投与が重要で、通常は数日間連日投与します。静脈炎予防のための投与経路の配慮が必要です。
  • ブドウ糖負荷(糖質補給): 糖質はALAS1の誘導を抑制する作用があり、軽症発作やヘミン投与までのつなぎとして高濃度ブドウ糖の点滴や経口補給を行います。低ナトリウム血症を悪化させないよう、輸液組成に注意します。
  • 対症療法・全身管理: 頻脈・高血圧にはβ遮断薬、けいれんには比較的安全とされる薬剤(ガバペンチン、レベチラセタムなど)を用います。低ナトリウム血症は急速補正を避けて慎重に補正し、呼吸筋麻痺に備えて呼吸機能を監視し、必要時は人工呼吸管理を行います。
  • ギボシラン(ALAS1を標的とするsiRNA製剤): 肝臓のALAS1のmRNAを分解し、ALA・PBGの産生を持続的に抑えます。国内でも急性肝性ポルフィリン症に承認され、発作を繰り返す例の予防治療として月1回の皮下注射で用います。肝機能・腎機能・ホモシステインなどの定期的な監視が必要です。
  • 月経関連発作へのホルモン調整: 黄体期に一致して発作を繰り返す女性では、専門医の判断によりGnRHアナログで排卵を抑制する方法が検討されることがあります。黄体ホルモン製剤を含む避妊薬は誘因になりうるため、使用には注意が必要です。
  • 肝移植: 既存治療で制御できない重症再発性の急性型や、EPPに伴う肝不全で検討されます。EPPでは移植後も骨髄でプロトポルフィリンが産生され続けるため、移植肝の再障害に注意が必要で、骨髄移植との組み合わせが検討された報告もあります。
  • PCTの治療(瀉血・低用量抗マラリア薬・原因疾患の治療): 定期的な瀉血で肝の鉄を減らすか、低用量のヒドロキシクロロキンなどで肝のポルフィリンを排泄させます(国内では適応外使用となる点に留意)。C型肝炎の抗ウイルス治療、断酒、エストロゲン中止も寛解に重要です。
  • EPP・CEPの皮膚症状への対応: 可視光まで遮る衣類・帽子・手袋、窓用遮光フィルムなどによる徹底した遮光が基本です。EPPには海外でαメラノサイト刺激ホルモン類似体(アファメラノチド)が承認されていますが、国内での使用可否は専門医に確認が必要です。重症CEPでは造血幹細胞移植が根治的治療として行われることがあります。

ポルフィリン症の予後・長期フォロー

急性型の生命予後は、診断と治療の進歩により大きく改善しています。早期に診断され、誘因を避けてヘミンなどで適切に治療されれば、多くの患者さんは通常に近い生活を送れます。一方、診断の遅れや誘発薬の継続投与により呼吸筋麻痺や重度の低ナトリウム血症をきたした場合は、致死的になったり、長期の後遺症が残ったりすることがあります。再発型では、頻回の入院、慢性疼痛、就労・就学の中断などQOLへの影響が大きいとされますが、ギボシランの登場によって発作頻度の大幅な減少が期待できるようになりました。EPPは生命予後が比較的良好ですが、日光を避けざるを得ないことによる生活上の制約がQOLを大きく損ないます。また、少数例で生じる肝障害が予後を左右します。PCTは治療反応性が良好で、寛解後も誘因の管理が再燃予防に重要です。

長期フォローアップでは、急性型の場合、血圧と腎機能の定期的な評価、尿PBG・ALAの推移の確認を行います。肝細胞癌のスクリーニングとして、一般に中年期以降は半年〜1年ごとの腹部超音波などが推奨されています。ヘミンを頻回に投与している例では、鉄過剰や静脈アクセスの問題にも注意します。EPPでは、肝機能、赤血球プロトポルフィリン値、ビタミンD、貧血、胆石の評価を定期的に行います。PCTでは寛解の維持、肝線維化、糖尿病、肝細胞癌の評価を行います。いずれの病型でも、血縁者の保因者診断と、妊娠・手術・新規薬剤使用時の事前相談が長期管理の要点です。

ポルフィリン症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

急性型では、規則正しい食事で十分な糖質を確保し、極端なダイエットや長時間の絶食を避けることが大切です。飲酒と喫煙は控え、感染症の早期治療、睡眠と休養、ストレスへの対処を心がけます。処方薬だけでなく、市販薬、サプリメント、漢方薬、歯科や美容で使う薬剤にも誘因となるものがあります。そのため、診断名と注意事項を記した患者カードを携帯し、受診のたびに伝えることが勧められます。手術や出産の際は、麻酔科・産科と事前に連携します。皮膚型では、紫外線だけでなく可視光の遮蔽が必要です。一般的な日焼け止めの効果は限られるため、遮光性の衣類、窓用フィルム、活動時間の工夫などを組み合わせます。EPPでは日光回避によるビタミンD不足に注意します。遺伝性の病型では、血縁者が無症状のまま保因者である可能性があります。保因者と分かれば誘発薬を避けることで発作を予防できるため、遺伝カウンセリングを受けたうえで家族の検査を検討する意義があります。妊娠・出産の計画も、主治医や遺伝カウンセラーと相談しましょう。

利用できる制度・相談窓口

ポルフィリン症は指定難病(告示番号254)です。診断基準を満たし、重症度基準に該当する場合(または軽症でも高額な医療の継続が必要な場合)は、難病医療費助成制度により医療費の自己負担上限額が所得に応じて設定されます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があります。そのほかにも、高額療養費制度が利用できます。神経障害の後遺症などで日常生活や就労に支障がある場合は、身体障害者手帳や障害年金の対象となりうるほか、障害者総合支援法による福祉サービスも難病患者が対象に含まれます。各都道府県の難病相談支援センター、難病情報センター、医療機関の医療ソーシャルワーカー、患者会などで、制度利用や就労・就学の相談ができます。

ポルフィリン症に伴う心のケア・心理社会的支援

急性型の患者さんは、診断がつくまでに「原因不明の腹痛」「心因性」「精神疾患」とみなされた経験をもつことが少なくありません。こうした経験から、医療への不信感や、いつ発作が来るか分からない予期不安を抱えやすくなります。発作時の精神症状が疾患そのものによるものであることを、本人・家族・医療者が理解することが重要です。EPPでは、強い痛みがあるのに外見上の所見が乏しいため、周囲に信じてもらえない苦痛があります。子どもの頃から屋外活動を制限されることで、学校行事や友人関係からの孤立、自己肯定感の低下が生じることもあります。遺伝性疾患であることへの罪悪感や、家族への告知、結婚・妊娠への不安も心理社会的課題になります。慢性疾患に伴う抑うつ、不安障害、適応障害は珍しいものではありません。気分の落ち込み、不眠、意欲低下が続くときは、主治医に相談し、必要に応じて心療内科・精神科、臨床心理士、患者会の支援を活用してください。向精神薬の中にも注意が必要なものがあるため、処方を受ける際は必ずポルフィリン症であることを伝えましょう。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

ポルフィリン症の受診の目安

  • これまでにない強い腹痛が続き、嘔吐、便秘、動悸を伴うときは、早めに受診してください。
  • 手足の力が入りにくい、呼吸が苦しい、けいれん、意識がもうろうとするなどの症状が出たら、ただちに救急受診してください。
  • 尿が赤褐色〜暗赤色になり、時間がたつとさらに濃くなるときは、可能であればその尿を持参して受診してください。
  • ポルフィリン症と診断されている人が、新しい薬を飲み始めた後や、絶食・飲酒・感染症の後に発作の前兆を感じたときは、すぐに主治医に連絡してください。
  • 子どもが日光に当たるとすぐに痛がって泣く、手足が腫れる、外に出たがらないといった様子が続くときは、皮膚科や小児科で相談してください。
  • EPPの人に黄疸、強い倦怠感、腹痛、尿の濃染がみられるときは、肝障害の可能性があるため速やかに受診してください。

ポルフィリン症についてのよくある質問

Q. 遺伝子に変異があると必ず発症しますか?

A. 急性肝性ポルフィリン症の多くは常染色体顕性遺伝ですが浸透率が低く、変異を持っていても生涯発作を起こさない人が大多数です。ただし、誘因となる薬剤や絶食などで発症することがあるため、保因者と分かった場合は注意点を知って生活することが予防につながります。

Q. 飲んではいけない薬はどうやって確認すればよいですか?

A. 薬剤の安全性は、ポルフィリン症の専門機関が公開しているデータベースなどで確認できますが、判断が難しいものも含まれます。自己判断はせず、処方医・薬剤師に必ずポルフィリン症であることを伝え、主治医と相談して選んでください。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 多くの患者さんが妊娠・出産を経験していますが、妊娠中のホルモン変化やつわりによる食事不足で発作が起こることがあります。計画段階から主治医・産科・麻酔科と連携し、安全な薬剤や栄養管理について相談しておくことが大切です。

Q. EPPの痛みは日焼け止めで防げますか?

A. EPPの原因となるのは主に可視光(青紫色の光)のため、一般的な紫外線対策用の日焼け止めでは十分に防げないことが多いです。遮光性の高い衣類、帽子、手袋、窓の遮光フィルムなどを組み合わせ、具体的な方法は皮膚科の専門医に相談してください。

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この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。