骨形成不全症

Osteogenesis Imperfecta

骨形成不全症(Osteogenesis Imperfecta)|骨形成不全症は、骨の主要な構成タンパク質であるI型コラーゲンの量的・質的な異常などにより骨がもろくなり、わずかな外力で骨折を繰り返す遺伝性の骨系統疾患です。胎児期に多発骨折をきたす重症型から、成人になって骨粗鬆症として気づかれる軽症型まで、重症度は非常に幅広いのが特徴です。骨だけでなく、青色強膜、歯の形成異常、難聴、関節の過可動性など全身の結合組織にも影響が及ぶことがあり、小児期から成人期まで多職種による継続的な診療が必要です。

骨形成不全症の要点

骨形成不全症は、I型コラーゲンの量的・質的異常などにより骨がもろくなり、わずかな外力で骨折を繰り返す遺伝性の骨系統疾患です。骨変形や低身長、青色強膜、歯の形成異常、難聴を伴うことがあり、重症度は幅広く、日本では指定難病(告示番号274)です。

別名・略称OI、Brittle bone disease
分野骨・関節・結合組織疾患
原因COL1A1・COL1A2など、I型コラーゲンに関わる遺伝子の病的バリアント
遺伝形式常染色体顕性(優性)が多いが、常染色体潜性(劣性)の病型もある
主な症状易骨折性、骨変形、低身長、青色強膜、歯の形成異常、難聴
主な検査単純X線検査、遺伝学的検査
主な治療ビスホスホネート製剤、整形外科的治療、リハビリテーション
受診する主な診療科整形外科、小児科

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骨形成不全症とは

骨形成不全症(Osteogenesis Imperfecta:OI)は、骨の脆弱性による易骨折性と骨変形を主な特徴とする先天性の疾患群です。骨の基質(骨の「鉄筋」にあたる部分)の約90%はI型コラーゲンで占められています。その遺伝子(COL1A1、COL1A2)の病的バリアントによって、正常なコラーゲンの産生量が減る、あるいは構造の異常なコラーゲンがつくられることが主な原因です。本症は多因子性の疾患ではなく、単一遺伝子の異常による遺伝性疾患です。免疫異常や環境要因が原因となる疾患ではありません。また、骨そのものの病気であり、画像診断の中心はCT・MRIではなく単純X線検査です。日本では指定難病(告示番号274)に指定されています。

病型分類としては、1979年にSillenceらが臨床像と遺伝形式に基づいて提唱した分類が現在も基本として用いられています。I型は最も頻度が高い軽症型で、骨変形は少なく青色強膜を伴い、身長はほぼ正常かやや低めです。II型は周産期致死型で、胎内・出生時から多数の骨折と肋骨の変形による呼吸不全をきたします。III型は進行性変形型で、骨折を繰り返すうちに四肢・脊柱の変形が進行し、著しい低身長を呈します。IV型はI型とIII型の中間の中等症型です。その後、骨折部に過剰な仮骨形成を生じ前腕骨間膜が石灰化するV型(IFITM5遺伝子)が加えられました。2000年代以降、コラーゲンの修飾・折りたたみ・分泌や骨芽細胞の分化に関わる多数の原因遺伝子が同定され、遺伝子別にVI型以降の番号が付けられてきましたが、病型番号が増えすぎて臨床的に使いにくいことから、近年の国際的な骨系統疾患分類では臨床的重症度に基づく1〜5型の分類と原因遺伝子を併記する方式が推奨されています。

骨形成不全症の疫学・患者数

発生頻度は海外の報告で出生およそ1万5千〜2万人に1人程度とされ、日本でも同程度と考えられています。国内の患者数は数千人規模と推定されていますが、軽症例は骨折を繰り返していても診断されずにいることがあり、実際の患者数はより多い可能性があります。性差はなく、人種・地域による大きな差も知られていません。発症(診断)時期は病型により大きく異なり、II型や重症のIII型では胎児超音波検査や出生時に診断されることが多い一方、I型では歩行開始後の幼児期〜学童期に軽微な外傷での骨折を繰り返して気づかれることが多く、成人になってから若年性骨粗鬆症や難聴を契機に診断される例もあります。病型別にはI型が最も多く、全体の半数前後を占めるとされます。骨折頻度は小児期に高く、思春期以降は性ホルモンの作用もあって減少する傾向がありますが、女性では閉経後、男女とも高齢期に再び増加します。

骨形成不全症の原因・病態生理

全体の約85〜90%は、I型コラーゲンをコードするCOL1A1(17番染色体)またはCOL1A2(7番染色体)の病的バリアントによる常染色体顕性(優性)遺伝です。親から受け継ぐ場合のほか、両親に異常がなく患者さんで新たに生じた新生変異(de novo)によることも多く、特に重症型ではその割合が高いとされます。残りの約10〜15%には、コラーゲンの翻訳後修飾(CRTAP、P3H1、PPIBなど)、折りたたみや細胞内輸送(SERPINH1、FKBP10など)、骨の石灰化(SERPINF1など)、骨芽細胞の分化・機能(SP7、WNT1、CREB3L1など)に関わる遺伝子の異常が関与し、多くは常染色体潜性(劣性)遺伝を示します。また、IFITM5による常染色体顕性のV型や、ごくまれにX連鎖性の病型も報告されています。なお、親が軽症であったり、親の生殖細胞にのみ変異が存在する「性腺モザイク」のために、両親とも無症状でも同胞に再発することがあります。

発症機序は、大きく量的異常と質的異常に分けて理解されます。I型コラーゲンは、2本のα1鎖(COL1A1由来)と1本のα2鎖(COL1A2由来)が三重らせん構造を形成した分子です。COL1A1の片方のアレルが機能しなくなる変異(ナンセンス変異やフレームシフト変異など)では、構造は正常なコラーゲンの量が約半分に減少し(ハプロ不全)、多くは軽症のI型となります。一方、三重らせんの形成に必須なグリシン残基が別のアミノ酸に置き換わるミスセンス変異などでは、異常なα鎖が正常な鎖と組み合わさってらせんの形成を妨げ(ドミナントネガティブ効果)、コラーゲンの過剰修飾、細胞内での滞留による小胞体ストレス、骨基質の石灰化異常などをきたして、II〜IV型の中等症〜重症となりやすいとされます。変異の種類や位置によって重症度が異なるため、同じ遺伝子の異常でも臨床像は多様です。その結果、骨は骨量が少ないだけでなく、皮質骨が薄く、骨基質の質(微細構造・石灰化の均一性)そのものが劣るため、強度が著しく低下します。I型コラーゲンは強膜、象牙質、皮膚、靱帯、腱、血管壁、中耳の耳小骨などにも含まれるため、骨以外の症状も生じます。

骨形成不全症の症状

  • 易骨折性(繰り返す骨折): 転倒や抱き上げなど通常は骨折しない程度の軽微な外力で、長管骨(大腿骨・脛骨・上腕骨など)や肋骨、椎体に骨折を繰り返します。重症型では胎内や分娩時にすでに多発骨折を認めます。
  • 四肢の骨変形: 骨折後の変形治癒や骨の柔らかさにより、大腿骨・脛骨の弯曲(弓状変形)などが生じ、歩行障害の原因になります。III型では変形が進行性です。
  • 低身長: 骨の変形、骨折、脊柱の変形、成長板の障害により身長が伸びにくく、III型では成人身長が著しく低くなります。I型では正常か軽度の低下にとどまることが多いとされます。
  • 青色強膜: 白目(強膜)が薄く、下の脈絡膜が透けて青〜灰色に見えます。I型で目立ちやすい一方、病型によっては認めない、あるいは年齢とともに目立たなくなります。
  • 象牙質形成不全(歯の異常): 歯が半透明で灰色〜褐色を帯び、すり減りやすく欠けやすい状態です。乳歯で目立つことが多く、歯科での定期的な管理が必要です。
  • 難聴: 思春期〜成人期以降に、耳小骨の異常による伝音難聴や混合性難聴が進行することがあります。成人患者の約半数前後に何らかの難聴が生じるとする報告があります。
  • 関節の過可動性・靱帯の弛緩: 関節が柔らかく過伸展しやすく、扁平足や関節の不安定性、捻挫しやすさの原因となります。
  • 脊柱変形(側弯・後弯): 椎体の圧迫骨折や骨の脆弱性により側弯症や後弯症が生じ、重症例では呼吸機能の低下につながります。
  • 頭蓋の異常・頭蓋底陥入: 乳児期に大泉門の閉鎖遅延や頭蓋骨内の多数の小さな骨片(ウォルム骨)を認めることがあります。頭蓋底が上方に押し上げられる頭蓋底陥入症は、頭痛や脳幹・脊髄の圧迫症状の原因となりえます。
  • 骨痛・慢性疼痛: 骨折に伴う急性の痛みのほか、微小骨折や変形、筋骨格系への負担による慢性的な痛みを訴える方が少なくありません。
  • 易出血性・皮膚の脆弱性: 血管壁や皮膚の結合組織の脆弱性により、あざができやすい、鼻出血が起こりやすいといった症状がみられることがあります。
  • 多汗・暑がり、筋力低下: 理由は十分解明されていませんが、多汗や暑さに弱い傾向、筋力や持久力の低下がしばしばみられ、易疲労感の一因となります。

骨形成不全症の経過と合併症

経過は病型によって大きく異なります。II型では胸郭の低形成と肋骨骨折による呼吸不全のため、多くが周産期〜乳児期早期に死亡しますが、近年は呼吸管理の進歩により長期生存する例もあります。III型では乳幼児期から骨折を繰り返し、成長とともに四肢・脊柱の変形が進行して、多くは車椅子を用いた生活となります。IV型は歩行可能なことが多いものの、補助具を要する場合もあります。I型は乳幼児期〜学童期に骨折が多く、思春期以降は骨折頻度が減少する傾向があります。ただし、成人期には骨量減少が続き、女性では妊娠・授乳期や閉経後、男女とも中高年以降に骨折が再び増加します。また、成人期には難聴、慢性疼痛、変形性関節症などの問題が前面に出てくることがあります。小児期にビスホスホネート製剤による治療や整形外科的治療を受けることで、骨折頻度の減少や運動機能の向上が期待できるようになっています。

合併症として最も重要なのは呼吸器合併症です。胸郭変形や側弯による拘束性換気障害、肺炎は重症型における主要な死因とされます。頭蓋底陥入症は特にIII・IV型で生じやすく、進行すると頭痛、嚥下障害、下位脳神経症状、四肢麻痺、水頭症などをきたすため、画像による経過観察が推奨されます。心血管系では、成人期に大動脈弁・僧帽弁の閉鎖不全や大動脈基部の拡張がみられることがあると報告されています。その他、進行性難聴、歯の破折・咬合異常、腎結石や高カルシウム尿症、慢性疼痛、関節症、便秘、重症型での睡眠時無呼吸などが知られています。また、麻酔時には頸部後屈による骨折、体位変換・血圧測定時の骨折、悪性高熱症に類似した高体温などへの配慮が必要とされます。

骨形成不全症の診断・診断基準

診断は、易骨折性を中心とした臨床症状、家族歴、単純X線所見を総合して行い、必要に応じて遺伝学的検査で原因遺伝子を確認します。乳幼児の繰り返す骨折では、虐待(身体的虐待)との鑑別が臨床上きわめて重要であり、安易に虐待と判断することも、逆に虐待を見逃すことも避けなければなりません。青色強膜、歯の異常、難聴、家族歴、X線での骨減少やウォルム骨などは骨形成不全症を支持する所見です。一方、くる病や低ホスファターゼ症など代謝性骨疾患を除外するため、血液・尿検査を行います。重症型では胎児超音波で四肢の短縮・弯曲や骨折を指摘されて出生前に疑われることもあります。指定難病の申請にあたっては、厚生労働省が定める診断基準と重症度分類(運動機能や骨折頻度などに基づく)に沿って、難病指定医が臨床調査個人票を作成します。

  • 病歴・家族歴・身体所見: 骨折の回数・受傷機転・部位、家族の骨折歴や難聴の有無、青色強膜、象牙質形成不全、関節過可動性、身長・四肢の変形などを確認します。軽微な外力での繰り返す骨折が最も重要な手がかりです。
  • 単純X線検査(全身骨サーベイ): 全身の骨量減少、長管骨の皮質の菲薄化・細さ・弯曲、新旧の骨折、椎体の扁平化・圧迫骨折、頭蓋のウォルム骨などを評価します。III型では成長板付近の「ポップコーン様石灰化」、V型では過形成仮骨や前腕骨間膜の石灰化が特徴的です。
  • 骨密度測定(DXA法): 腰椎・全身の骨密度を測定し、多くの患者で低値を示します。小児では年齢・性別の標準値に基づくZスコアで評価し、治療効果の判定にも用いますが、骨密度が正常でも本症を否定することはできません。
  • 血液・尿生化学検査: 血清カルシウム、リン、アルカリホスファターゼ(ALP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、25-水酸化ビタミンDなどは通常基準範囲内で、骨代謝マーカーは骨折後などに上昇することがあります。ALP低値は低ホスファターゼ症、リン低値やALP高値はくる病を示唆し、鑑別に重要です。
  • 遺伝学的検査: COL1A1/COL1A2をはじめとする関連遺伝子を解析し、病的バリアントを同定します。確定診断、病型・遺伝形式の推定、遺伝カウンセリングに有用であり、保険診療で実施可能な場合もあるため、遺伝カウンセリング体制のある施設での実施が望まれます。
  • 胎児超音波検査: 重症型では妊娠中期以降に四肢長管骨の短縮・弯曲・骨折、頭蓋の石灰化不良、胸郭の低形成などが認められることがあります。致死性の他の骨系統疾患との鑑別が必要です。
  • 聴力検査: 小児期から定期的に聴力を評価し、伝音・感音・混合性難聴の有無と進行を確認します。早期発見により補聴器などの対応が可能になります。
  • 脊椎・頭蓋頸椎移行部の画像検査: 脊柱側弯・後弯の評価にX線を、頭蓋底陥入症や脊髄圧迫が疑われる場合にCTやMRIを用います。神経症状の有無にかかわらず、重症例では定期的なスクリーニングが勧められています。
  • 歯科診察・呼吸機能検査・心エコー: 象牙質形成不全や咬合異常は歯科で評価します。胸郭変形や側弯がある例では呼吸機能検査、成人では弁膜症や大動脈基部拡張の評価のための心エコーが行われることがあります。

骨形成不全症と鑑別すべき疾患

  • 身体的虐待による骨折: 骨幹端の角骨折、後部肋骨骨折、受傷機転と合わない骨折、他の外傷所見などが手がかりとなり、青色強膜・家族歴・全身の骨減少などの有無を含めて慎重に評価します。
  • 低ホスファターゼ症: 易骨折性や骨変形を示しますが、血清ALPの持続的低値と乳歯の早期脱落が特徴で、ALPL遺伝子の異常によります。
  • くる病・骨軟化症(ビタミンD欠乏、ビタミンD抵抗性など): 骨変形をきたしますが、低リン血症やALP高値、成長板の杯状変形・毛羽立ちといった特徴的なX線所見で区別されます。
  • 特発性若年性骨粗鬆症: 思春期前に骨折・骨痛で発症する一過性の骨粗鬆症で、家族歴や青色強膜・歯の異常を伴わず、思春期以降に自然軽快する傾向があります。
  • 骨粗鬆症偽神経膠腫症候群・他の続発性骨粗鬆症: LRP5遺伝子異常による前者は視力障害を伴い、ステロイド使用、慢性疾患、不動などによる続発性骨粗鬆症は基礎疾患や病歴で区別します。
  • 致死性骨系統疾患(タナトフォリック骨異形成症など): 胎児期の四肢短縮・胸郭低形成で鑑別が問題となり、骨折の有無、長管骨や椎体の形態、遺伝学的検査で区別します。

骨形成不全症の治療

現時点で原因を根本的に治す治療法は確立されていません。治療の目標は、骨折の予防と頻度の減少、骨変形の予防・矯正、疼痛の軽減、運動機能と自立度の最大化、合併症の早期発見・管理であり、小児科(内分泌・骨代謝)、整形外科、リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、歯科、遺伝診療部門などによる多職種チームでの包括的な診療が基本となります。中等症〜重症の小児では骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤)による薬物療法、変形や骨折に対しては髄内釘などによる外科治療、そして骨を守りながら筋力と運動機能を育てるリハビリテーションの三本柱を組み合わせます。軽症例では生活指導と経過観察が中心となることもあります。治療方針は重症度、年齢、骨折歴、成長の状態などにより個別に決定されるため、主治医・専門医とよく相談することが大切です。

  • ビスホスホネート製剤(パミドロン酸の点滴静注など): 破骨細胞による骨吸収を抑え、骨密度を増加させて骨折頻度や骨痛の軽減、運動機能の改善が期待されます。日本ではパミドロン酸二ナトリウムが骨形成不全症に対して承認されており、周期的な点滴静注が小児の中等症〜重症例で広く行われています。
  • ビスホスホネート療法の注意点: 初回投与時の発熱・筋肉痛などの急性期反応、低カルシウム血症に注意が必要で、骨切り術後の骨癒合遅延なども報告されています。経口薬や他の注射薬の使用、投与期間・終了時期は専門医が個別に判断します。
  • その他の薬物療法と研究段階の治療: 成人では骨粗鬆症治療薬が用いられることがありますが、本症での有効性・安全性の根拠は限られます。小児での抗RANKL抗体(デノスマブ)は中止後の高カルシウム血症などが報告されており慎重な判断が必要で、抗スクレロスチン抗体などの新規治療は臨床試験の段階です。
  • カルシウム・ビタミンDの充足と栄養管理: 年齢に応じたカルシウム・ビタミンDの摂取と適切な栄養状態の維持は骨の健康の基盤であり、薬物療法の前提ともなります。過剰摂取は高カルシウム尿症や腎結石の原因となりうるため、検査値を確認しながら調整します。
  • 整形外科的治療(髄内釘固定・骨切り術): 繰り返す骨折や進行する長管骨の弯曲に対し、骨切りで矯正したうえで骨の中に金属の釘(髄内釘)を挿入して補強します。成長に合わせて伸長する伸縮式髄内釘が小児で用いられ、骨折予防や歩行獲得に寄与します。
  • 脊椎・頭蓋頸椎移行部の外科治療: 進行した側弯症に対する脊椎固定術や、症状を伴う頭蓋底陥入症に対する減圧・固定術が検討されます。骨の脆弱性のため手術は難易度が高く、経験のある施設での評価が望まれます。
  • リハビリテーション・補装具: 骨折リスクに配慮しながら、水中運動、筋力・持久力訓練、姿勢保持、歩行訓練などにより運動機能と自立度を高めます。下肢装具、歩行器、車椅子、住環境の整備も重要です。
  • 骨折時の管理: 副木・ギプスによる固定は骨癒合に必要な期間にとどめ、長期の固定による骨量・筋力低下を避けるため、早期からの可動・荷重を目指すのが一般的です。疼痛管理も十分に行います。
  • 難聴・歯科・その他の合併症への対応: 難聴には補聴器のほか、伝音難聴ではアブミ骨手術などが検討されます。象牙質形成不全には歯冠修復などの歯科治療、呼吸障害には呼吸リハビリテーションや換気補助などで対応します。

骨形成不全症の予後・長期フォロー

生命予後は病型によって大きく異なります。I型では一般とほぼ同等の寿命が期待でき、多くの方が就学・就労し、社会生活を送っています。IV型も比較的良好です。III型では呼吸器合併症などにより生命予後が短縮する傾向が報告されていますが、呼吸管理や整形外科的治療、薬物療法の進歩により改善しつつあります。II型は依然として周産期の死亡率が高い病型です。QOLの面では、骨折そのものよりも、移動能力の制限、慢性疼痛、難聴、疲労感、外見上の違いなどが生活に影響することが多く、医学的治療に加えて、教育・就労・住環境・心理面を含めた包括的な支援が予後を左右します。適切な診療を受けることで、重症例であっても車椅子などを活用しながら自立した生活を送る方は少なくありません。

本症は生涯にわたる管理が必要な疾患です。小児期には骨折歴、身長・成長、骨密度、X線、骨代謝マーカー、運動機能を定期的に評価し、薬物療法の効果と副作用を確認します。脊柱変形や頭蓋底陥入症のスクリーニング、聴力検査、歯科健診も欠かせません。小児期に治療を受けていた方も、成人期の診療科への移行(トランジション)を計画的に進め、成人期以降も骨密度、骨折、難聴、心血管系(弁膜症・大動脈基部拡張)、呼吸機能、腎結石などを定期的に評価することが推奨されます。女性では妊娠・出産に際して、骨盤の変形や骨折リスク、分娩方法、出生児の遺伝についての事前相談が重要です。閉経後や高齢期の骨折予防にも引き続き注意が必要です。

骨形成不全症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、骨折を恐れて動かないことがかえって骨や筋肉を弱くするため、安全に配慮しながら体を動かすことが大切です。水泳・水中運動は骨への負担が少なく推奨されることが多い一方、接触の多いスポーツや転倒リスクの高い活動は主治医と相談して判断します。住環境では段差の解消、手すり、滑りにくい床材などで転倒を防ぎます。乳幼児では、抱き上げる際に脇の下だけを持たず、頭と臀部を支える、おむつ交換時に足首を持って持ち上げないなど、骨折しにくい扱い方を家族が身につけることが重要です。骨折時に備えて、診断名・骨折歴・治療内容をまとめた情報カードを携帯し、救急時や初めての医療機関で提示できるようにしておくと役立ちます。保育所・学校とは事前に情報を共有し、体育や行事への参加方法、移動の配慮、緊急時の対応を話し合っておきましょう。食事ではカルシウム、ビタミンD、たんぱく質を十分にとり、適度な日光浴も心がけます。歯の定期健診、聴力のチェックも忘れずに行います。遺伝については、病型や原因遺伝子によって次の子どもや子孫への遺伝の可能性が異なり、両親が無症状でも同胞に再発することがあります。妊娠・出産を考える際や家族の検査を検討する際には、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。

利用できる制度・相談窓口

骨形成不全症は指定難病(274)であり、診断基準を満たし、重症度分類で一定以上の重症度に該当する場合(または軽症でも高額な医療が継続する場合)は、医療費助成を受けることができます。申請は難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)の方は小児慢性特定疾病(骨系統疾患)の医療費助成の対象となりえます。運動機能障害や聴覚障害の程度に応じて身体障害者手帳が交付され、補装具(装具・車椅子など)や日常生活用具の給付、税制上の優遇などが受けられます。手術などには自立支援医療(育成医療・更生医療)が利用できる場合があります。子どもの障害の程度によっては特別児童扶養手当や障害児福祉手当、成人では障害の状態に応じて障害年金や障害福祉サービスの対象となることがあります。相談窓口としては、医療機関の医療ソーシャルワーカー、市区町村の障害福祉担当窓口、各都道府県の難病相談支援センター、小児慢性特定疾病の自立支援事業などがあり、患者・家族会では同じ病気をもつ人の経験や生活上の工夫を知ることができます。制度の対象や内容は個々の状況や自治体によって異なるため、詳細は各窓口にご確認ください。

骨形成不全症に伴う心のケア・心理社会的支援

慢性疾患や難病とともに生きることは、本人と家族に大きな心理的負担をもたらし、抑うつ、不安、適応障害などが生じることがあります。骨形成不全症に特有の課題としては、いつ骨折するかわからないという予期不安、繰り返す骨折の痛みと治療・入院による生活や学業の中断、運動や遊びへの参加制限による孤立感、低身長や骨変形・車椅子使用など外見の違いに関する悩み、進学・就職・恋愛・結婚・妊娠に関する不安などが挙げられます。乳幼児期に原因不明の骨折で受診した際、虐待を疑われた経験が家族の深い心の傷となっていることもあります。親は「自分のせいでは」という罪責感や、骨折させまいとする過保護と子どもの自立との間の葛藤を抱えやすく、きょうだいへの配慮も必要です。成人期には慢性疼痛や難聴の進行が心理的負担を増すこともあります。気分の落ち込み、眠れない、意欲が湧かない、不安が強いといった状態が続く場合は、ひとりで抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、公認心理師、精神科・心療内科などに相談してください。患者会や同じ立場の人との交流(ピアサポート)も、孤立を防ぎ前向きに生活するための大きな支えになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

骨形成不全症の受診の目安

  • 軽い転倒や外力の後に、強い痛み、腫れ、変形、手足を動かさない・使おうとしない様子がみられる場合は、骨折の可能性があるため速やかに受診してください。
  • 強い頭痛、首の痛み、手足のしびれや力の入りにくさ、飲み込みにくさ、ふらつきなどが出現した場合は、頭蓋底陥入症などの神経圧迫の可能性があり、早急な受診が必要です。
  • 呼吸が苦しい、息切れが強い、発熱を伴う咳が続く場合、特に胸郭や脊柱の変形がある方は早めに受診し、呼吸困難が強ければ救急受診してください。
  • 聞こえにくさや耳鳴りに気づいた場合は、耳鼻咽喉科で聴力の評価を受けてください。
  • 小さな子どもが繰り返し骨折する、白目が青く見える、家族に骨折を繰り返す人や若くして難聴になった人がいる場合は、小児科や整形外科に相談してください。
  • ビスホスホネート製剤の点滴後に、高熱が続く、手足や口のまわりのしびれ・けいれんなど低カルシウム血症を疑う症状が出た場合は、治療を受けている医療機関に連絡してください。

骨形成不全症についてのよくある質問

Q. 骨形成不全症は治りますか?

A. 現時点で根本的に治す治療法はありませんが、ビスホスホネート製剤などの薬物療法、髄内釘などの外科治療、リハビリテーションを組み合わせることで、骨折の頻度を減らし、運動機能や生活の質を高めることが期待できます。また、多くの病型で思春期以降は骨折が減る傾向があります。新しい治療法の研究も進められています。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 最も多い常染色体顕性(優性)遺伝の病型では、患者さんの子どもが同じ病気をもつ確率は1/2とされますが、同じ家系内でも重症度は異なることがあります。潜性(劣性)遺伝の病型や新生変異の場合など、原因によって遺伝の仕方は異なるため、臨床遺伝専門医などによる遺伝カウンセリングで個別に相談することをお勧めします。

Q. 運動はしないほうがよいのでしょうか?

A. 骨や筋肉を丈夫に保つためには、安全に配慮した運動がむしろ大切です。水泳・水中運動などの骨への負担が少ない運動が勧められることが多い一方、激しい接触を伴うスポーツは避けたほうがよい場合があります。病型や骨の状態によって適切な運動は異なるため、主治医やリハビリテーション専門職と相談してください。

Q. 大人になってから診断されることもありますか?

A. 軽症のI型では、子どもの頃の骨折が「骨折しやすい体質」と考えられて診断されず、成人後に骨粗鬆症や難聴、子どもの診断をきっかけに診断されることがあります。成人でも骨密度、難聴、歯、心血管系などの評価と骨折予防のための管理が役立つため、心当たりがあれば専門医に相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。