巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)

Giant Lymphatic Malformations (Cervicofacial Lesions)

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)(Giant Lymphatic Malformations (Cervicofacial Lesions))|巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)は、胎生期にリンパ管がうまく形成されずに生じる先天性の脈管奇形(リンパ管奇形、かつて「リンパ管腫」と呼ばれたもの)のうち、頚部や顔面に大きく広がる病変を指す指定難病です。多くは出生前から乳幼児期に見つかり、気道の圧迫による呼吸障害、哺乳・摂食障害、顔貌の変形、感染や出血による急な腫れなどを通じて、生命と生活の質の両方に長く影響します。悪性腫瘍ではありませんが自然に治ることはまれで、硬化療法、手術、シロリムスによる薬物療法などを組み合わせた長期的な集学的診療が必要です。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の要点

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)は、胎生期のリンパ管の形成異常により頚部や顔面に大きな嚢胞状の病変が広がる先天性の脈管奇形で、指定難病です。悪性腫瘍ではありませんが、気道圧迫による呼吸障害、哺乳・摂食障害、顔貌変形、感染や出血による急な腫れなどを起こし、長期的な治療を要します。

別名・略称リンパ管腫、嚢胞性ヒグローマ、リンパ管奇形、LM、cystic hygroma、lymphangioma
分野皮膚疾患
遺伝形式多くは遺伝せず、体細胞の遺伝子変異による局所的な発生異常と考えられている
好発年齢出生前から乳幼児期に見つかることが多い
主な症状頚部・顔面の腫れ、気道圧迫による呼吸障害、哺乳・摂食障害、顔貌の変形、感染や出血による急な腫大
主な検査超音波検査、MRI
主な治療硬化療法、手術、シロリムスによる薬物療法を組み合わせる
受診する主な診療科小児外科、形成外科、耳鼻咽喉科など

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)とは

リンパ管奇形(lymphatic malformation:LM)は、リンパ管の発生異常により、拡張したリンパ管や大小の嚢胞(のうほう)が集まってできる病変です。内部はリンパ液で満たされ、壁はリンパ管内皮細胞で覆われています。以前は「リンパ管腫」「嚢胞性ヒグローマ」と呼ばれましたが、細胞が増え続ける腫瘍ではなく先天的な脈管の形成異常(奇形)であるため、現在の国際分類ではリンパ管奇形という名称が推奨されています。全身のどこにでも生じますが、頭頚部に多くみられます。なかでも頚部・顔面・口腔・舌などに大きく広がり、気道・摂食・発声・視機能・整容面に重い障害を起こしうるものが「巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)」として指定難病(告示番号278)に指定されています。既存の簡易解説には「免疫系の異常や代謝異常が関与」「多因子性」とありましたが、これは正確ではありません。本症は後述するように、主に体細胞遺伝子変異による局所的な発生異常と理解されています。

分類は、国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)の分類が国際的に用いられています。リンパ管奇形は、通常型(嚢胞性)リンパ管奇形と、全身性リンパ管異常症(リンパ管腫症)、ゴーハム病、中枢伝導性リンパ管異常などに分けられます。全身性リンパ管異常症とゴーハム病は、日本では別の指定難病「リンパ管腫症/ゴーハム病」として扱われます。通常型はさらに、嚢胞の大きさでマクロシスティック型(大嚢胞型)、ミクロシスティック型(小嚢胞型)、両者が混じる混合型に分けられます。この分類は治療への反応を予測するうえで重要です。頚部顔面病変の広がりは、舌骨より上か下か、片側か両側かで病期を分けるde Serres分類などで評価されることがあります。舌骨より上で両側に及ぶ病変ほど、気道管理が難しく合併症も多いとされます。日本では、厚生労働科学研究班などにより診断基準・重症度分類と、血管腫・血管奇形・リンパ管奇形の診療ガイドラインが整備されています。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の疫学・患者数

リンパ管奇形全体の頻度は、海外の報告で出生数千人に1人程度とされています。そのうち半数以上が頭頚部に生じるといわれます。約半数は出生時に気づかれ、大部分は2歳ごろまでに見つかります。近年は妊婦健診の超音波検査や胎児MRIで、出生前に診断される例が増えています。明らかな性差や人種差はないとされます。指定難病の要件を満たす「巨大」な頚部顔面病変はその一部で、国内の患者数は限られます。正確な数は、指定難病の受給者証交付件数などの公的統計で確認する必要があります。成人になってから、感染や出血による急な腫れをきっかけに初めて見つかる例もあります。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の原因・病態生理

本症は遺伝する病気ではなく、受精後の発生過程で一部の細胞に生じた体細胞モザイク変異が主な原因と考えられています。病変組織、とくにリンパ管内皮細胞からは、PIK3CA遺伝子の活性化型変異が高い頻度で検出されると報告されています。PIK3CAはPI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)の触媒サブユニットをコードする遺伝子です。変異は、乳がんなどでもみられる「ホットスポット」と呼ばれる特定の部位に多くみられます。この変異は病変部の一部の細胞にだけ存在し、血液など全身の細胞には通常存在しません。そのため親から子へ遺伝するものではなく、きょうだいが同じ病気になる可能性も一般に低いとされます。同じPIK3CA変異は、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群などの過成長を伴う疾患群(PIK3CA関連過成長スペクトラム:PROS)とも共通しており、病態が連続していると理解されています。

発症の仕組みは次のように考えられています。PIK3CAの活性化変異によって、PI3K-AKT-mTOR経路が持続的にオンの状態になります。その結果、リンパ管内皮細胞の増殖・生存・管腔形成の調節が乱れ、正常なリンパ流路とつながらない、あるいはつながりの悪い拡張したリンパ管腔や嚢胞が形成されます。内部にはリンパ液がたまり、周囲の組織が線維化したり炎症を起こしたりします。上気道感染などをきっかけに病変内で炎症が起こると、リンパ液の産生が増え、嚢胞が急に膨らみます。嚢胞内の細い血管が破れると出血が起こり、急に大きくなることもあります。これが急性増大の典型的な機序です。病変が顎骨などに接していると、骨の過成長(下顎の過成長、開咬など)を伴うことがあります。これには局所の血流・リンパ流の変化や、PI3K経路の活性化そのものが関わっていると考えられています。mTOR阻害薬(シロリムス)やPI3Kα阻害薬が治療標的として注目されているのは、この経路の異常が病態の中心にあるためです。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の症状

  • 頚部・顔面の軟らかい腫瘤: 多くは痛みのない、軟らかく弾力のある腫れとして気づかれます。皮膚の色は正常か、やや青みを帯びます。大嚢胞型では光を当てると透けて見えることがあります。
  • 急な腫れ(急性増大): かぜなどの感染や病変内の出血をきっかけに、数時間〜数日で急に大きく硬くなり、痛みや赤み、発熱を伴うことがあります。
  • 呼吸障害・気道狭窄: 咽頭・喉頭・口腔底・縦隔に及ぶ病変は気道を圧迫し、喘鳴、陥没呼吸、呼吸困難を起こします。新生児では命に関わることがあります。
  • 睡眠時無呼吸・いびき: 舌や咽頭の病変により、睡眠中に気道が狭くなり、いびきや無呼吸、日中の眠気、成長への影響がみられることがあります。
  • 哺乳障害・摂食嚥下障害: 口腔・舌・咽頭の病変により、哺乳や咀嚼、嚥下が難しくなり、体重増加不良や経管栄養が必要になることがあります。
  • 巨舌・口腔内病変: 舌に病変があると舌が大きくなり、口が閉じにくくなります。表面に小さな水疱状の粒が多数でき、そこからリンパ液がしみ出たり(リンパ漏)、出血したりします。
  • 皮膚・粘膜の小水疱とリンパ漏: 小嚢胞型では皮膚や粘膜の表面に透明〜赤黒い小さな水疱が集まって現れ、破れるとリンパ液や血液が漏れ、感染の入り口になります。
  • 顔面骨の変形・咬合異常: 下顎の過成長、開咬、下顎前突、歯並びの乱れなどがみられ、咀嚼や発音、整容面に影響します。
  • 構音障害・発声の問題: 舌・口唇・咽頭の病変や気管切開により、言葉の発達や発音がさまたげられることがあります。
  • 眼窩病変による眼症状: 眼窩に病変があると眼球突出、眼瞼下垂、視力低下、弱視、複視をきたすことがあります。急な出血で視神経が圧迫されることもあります。
  • 整容上の問題・顔貌の変形: 顔面・頚部の左右差や変形は外見に大きく影響し、心理社会的な負担の原因となります。
  • 疼痛・圧迫感: 普段は痛みが少ないものの、感染・出血時や病変が大きい場合には痛みや張った感じが生じます。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の経過と合併症

リンパ管奇形は、乳児血管腫のように自然に縮小・消失することはまれです。体の成長にほぼ比例して大きくなるのが一般的です。ただし、感染や出血のたびに一時的に大きくなり、その後に一部が線維化して縮むこともあり、経過は波を描きます。大嚢胞型では、まれに自然に縮小した報告もあります。一方、小嚢胞型や混合型の広範な病変は治療に抵抗しやすく、生涯にわたり症状が続くことが多いとされます。新生児期・乳児期は気道閉塞のリスクが最も高い時期です。幼児期以降は、感染による急性増大の繰り返し、摂食・言語発達の問題、顎顔面の変形が中心となります。思春期以降は、ホルモン変化や外傷をきっかけに増大することがあると報告されています。

主な合併症は次のとおりです。①病変内感染(蜂窩織炎):上気道炎や歯の感染に続いて起こりやすく、重症化すると敗血症や気道閉塞につながります。②病変内出血による急性増大。③気道狭窄:気管切開や長期の人工呼吸管理が必要になることがあります。④摂食障害と栄養不良。⑤リンパ漏と、それに伴う皮膚・粘膜の感染。⑥下顎骨の過成長や咬合不全、う蝕・歯周病。⑦眼窩病変による弱視・視力障害。⑧縦隔に及んだ場合の乳び胸・心膜液貯留。治療に伴う合併症もあります。手術では顔面神経・舌下神経・迷走神経などの損傷、術後のリンパ漏や再発、硬化療法では一時的な腫れの増強による気道狭窄、薬物療法では口内炎や感染症などが挙げられます。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の診断・診断基準

診断は、特徴的な臨床所見と画像検査を組み合わせて行います。必要に応じて、穿刺液の性状、病理組織、遺伝子解析で裏付けます。出生前に胎児超音波・胎児MRIで頚部の嚢胞性病変が見つかることも多く、気道閉塞が予想される場合は、周産期センターで分娩方法と出生直後の気道確保を計画します。出生後は、まず超音波検査で嚢胞性病変であることと血流が乏しいことを確認します。次にMRIで病変の広がり、嚢胞の大きさ(大嚢胞型・小嚢胞型)、気道・神経・血管・眼窩・縦隔との関係を評価します。静脈奇形、乳児血管腫、悪性腫瘍など、見た目が似た疾患との鑑別が重要です。指定難病としての認定には、難病情報センターに掲載されている診断基準(リンパ管奇形であることの確認と、頚部顔面の巨大病変であること)と重症度分類を満たすことが必要で、難病指定医が臨床調査個人票を作成します。

  • 超音波検査(ドプラ法を含む): 内部が液体の多房性の嚢胞として描出され、隔壁にわずかな血流がある以外は血流が乏しいのが特徴です。体への負担が少なく、硬化療法の穿刺ガイドにも用いられます。
  • MRI: T2強調画像で強い高信号を示す多房性病変として描出されます。出血を伴うと液面形成(fluid-fluid level)がみられます。造影では隔壁のみが染まり、静脈奇形との鑑別や広がりの評価に最も有用です。
  • CT: 気道狭窄の程度、骨変形、縦隔への進展の評価や、緊急時の迅速な評価に用いられます。被ばくを考慮し、小児では必要な場合に限ります。
  • 胎児超音波・胎児MRI: 出生前に頚部の嚢胞性病変と気道との関係を評価し、EXIT(胎盤循環を保ったまま気道を確保する分娩法)などの周産期管理の必要性を判断します。
  • 穿刺液検査: 淡黄色〜乳白色、出血後は血性の液体が得られます。リンパ球が主体であることがリンパ液の裏付けになります。硬化療法の際に同時に行われることが多いです。
  • 病理組織検査・免疫染色: 不規則に拡張した脈管腔の内皮が、D2-40(ポドプラニン)、PROX1、LYVE-1などのリンパ管内皮マーカーで陽性になることで確定します。手術や生検の検体で行います。
  • 遺伝子解析(病変組織): 病変組織からPIK3CA遺伝子の体細胞変異が検出されることがあります。変異の割合が低いため高感度の解析が必要で、現時点では研究目的や限られた施設での実施が中心です。
  • 血液検査: 本症に特有のマーカーはありません。感染時の炎症反応の評価のほか、Dダイマーなど凝固系の検査が静脈奇形との鑑別の参考になることがあります。
  • 機能評価(内視鏡・睡眠検査・視機能など): 喉頭ファイバーによる気道評価、睡眠ポリグラフ検査、嚥下評価、眼科検査、歯科・咬合評価を行い、重症度と治療の優先順位を判断します。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)と鑑別すべき疾患

  • 静脈奇形: 圧迫で縮み、体位や泣くことで膨らみます。MRIでは病変全体が徐々に造影され、静脈石がみられる点で区別します。
  • 乳児血管腫: 生後まもなく急速に増大した後に自然退縮する腫瘍性病変で、超音波で豊富な血流がみられる点が異なります。
  • カポジ型血管内皮腫・房状血管腫: 硬い紫斑状の腫瘤で、カサバッハ・メリット現象(著しい血小板減少)を伴うことがある点が鑑別の要点です。
  • 奇形腫・横紋筋肉腫などの腫瘍: 充実成分や石灰化、造影される実質部分の有無を画像で確認し、疑わしい場合は生検で除外します。
  • 側頚嚢胞(鰓性嚢胞)・正中頚嚢胞・ガマ腫: いずれも単房性で、発生部位が特徴的です。多房性で広範囲に広がるリンパ管奇形とは画像所見で区別します。
  • 頚部リンパ節炎・膿瘍: 急性増大したリンパ管奇形の感染と似ますが、もともと腫瘤があったかどうかや、画像でみられる多房性嚢胞の背景によって区別します。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の治療

治療の目標は、病変を完全に取り除くことよりも、気道・摂食・発声・視機能などの機能を守り、合併症を防ぎ、整容面と生活の質を改善することです。良性疾患であるため、治療による後遺症とのバランスを常に考えます。小児外科、形成外科、耳鼻咽喉科・頭頚部外科、放射線科(IVR)、小児科、麻酔科、歯科口腔外科、眼科、リハビリテーション、看護・心理などが連携する多職種チームで方針を決めます。大まかな流れは次のとおりです。①気道閉塞の危険があれば、まず気道確保を最優先します。②大嚢胞型が中心であれば、硬化療法が第一選択となることが多いです。③小嚢胞型や広範な混合型、治療抵抗例ではシロリムスによる薬物療法を検討します。④限局した病変や、機能・整容上の問題が残る場合に外科的切除や形成手術を組み合わせます。治療の選択は、病型・部位・年齢・症状によって大きく異なります。具体的な方針は、経験のある専門施設の主治医とよく相談して決めることが大切です。

  • 気道確保(気管挿管・気管切開・EXIT): 出生前から気道閉塞が予想される場合は、EXITなどで出生直後に気道を確保します。慢性的な気道狭窄には気管切開を行い、病変が縮小すれば閉鎖を目指します。
  • 硬化療法(OK-432など): 嚢胞内に薬剤を注入して炎症と線維化を起こし、嚢胞を縮小させます。日本ではOK-432(ピシバニール)がリンパ管腫に保険適用されており、とくに大嚢胞型で高い効果が報告されています。ブレオマイシン、無水エタノール、ドキシサイクリンなどが施設判断で用いられることもあります。治療後は一時的に腫れが強まるため、気道周囲の病変では入院管理が必要です。
  • シロリムス(mTOR阻害薬): PI3K-AKT-mTOR経路を抑え、病変の縮小、リンパ漏・出血・感染の頻度の減少が期待されます。日本では難治性リンパ管疾患に対して保険適用があります。口内炎、感染症、脂質異常症などの副作用があるため、血中濃度を測りながら長期に管理し、生ワクチンの接種時期などにも注意が必要です。
  • 外科的切除: 限局した病変、硬化療法や薬物療法の効果が乏しい病変、整容・機能改善が必要な場合に行います。重要な神経・血管を巻き込むことが多いため、完全切除にこだわらず、機能を温存した部分切除が選ばれることもあります。
  • 局所治療(レーザー・焼灼など): 舌や口腔粘膜・皮膚表面の小水疱からのリンパ漏や出血に対し、レーザー、ラジオ波焼灼、部分切除などが行われることがあります。
  • 感染・急性増大時の治療: 病変内感染には抗菌薬を速やかに投与し、炎症や痛みには対症療法を行います。気道が圧迫されている場合は入院のうえ呼吸を管理します。ステロイドの併用は症例に応じて判断されます。
  • 顎顔面・歯科矯正治療と形成手術: 成長に伴う下顎の過成長や咬合異常に対しては、矯正歯科治療や顎矯正手術、顔貌の再建手術を時期をみて行います。
  • 栄養・摂食嚥下・言語リハビリテーション: 経管栄養や胃瘻による栄養管理、摂食嚥下訓練、言語聴覚士による構音・言語発達の支援で、成長発達を支えます。
  • 開発中・研究段階の治療: PI3Kα阻害薬(アルペリシブ)が海外でPIK3CA関連過成長スペクトラムに使用されていますが、日本では本症に対する承認はありません。漢方薬などの報告もありますが、科学的根拠は限られます。臨床試験への参加は主治医と相談してください。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の予後・長期フォロー

本症は悪性化しない良性の病変です。ただし、新生児期・乳児期の気道閉塞や、重い感染は生命に関わることがあります。周産期管理や気道管理、硬化療法・薬物療法の進歩により救命率は向上していると考えられますが、舌骨より上で両側に及ぶ広範な病変(de Serres分類の高い病期)では、長期の気管切開や経管栄養が必要になる例もあります。大嚢胞型の限局病変は、硬化療法や手術で良好な機能・整容結果が得られることが多いです。一方、小嚢胞型の広範病変は完全な治癒が難しく、「病気とうまく付き合いながら、症状をコントロールしていく」慢性疾患としての側面が強くなります。生活の質には、外見の変化、言語・摂食機能、繰り返す入院が大きく影響します。

治療で縮小した後も、再増大や再発、感染による急性増大が起こりうるため、成人期まで長期のフォローアップが必要です。定期的な診察と、超音波・MRIによる病変の評価のほか、成長に伴う顎顔面の変形、歯科(う蝕・歯周病・咬合)、視機能、睡眠時無呼吸、言語・学習面の発達を多職種で確認します。シロリムスを使用している場合は、血中濃度、血液検査(血球・脂質・肝腎機能など)、感染症に注意します。中止後に再増大する例も報告されているため、継続・減量・中止は慎重に判断されます。小児期から成人期への移行期医療として、小児科・小児外科から成人診療科への引き継ぎを計画的に進めることも重要です。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

感染が急性増大の最も多いきっかけになるため、手洗い・うがい、口腔ケア(歯みがき、定期的な歯科受診によるう蝕・歯周病の予防)が大切です。かぜをひいた後に病変が腫れたり赤くなったりしたら、早めに受診しましょう。顔や首への強い打撲は出血の原因となるため、接触の多いスポーツなどは主治医と相談のうえで行います。気管切開をしている場合は、家族が吸引やカニューレ管理、緊急時の対応を習得し、保育園・学校と情報を共有します。予防接種は感染予防のため基本的に受けることが勧められますが、シロリムス内服中は生ワクチンの扱いに注意が必要なので、主治医に確認してください。本症は病変部の細胞に限られた体細胞変異によるもので、一般に遺伝性はなく、次の子どもが同じ病気になる確率も通常は低いと考えられています。それでも、次の妊娠への不安などがあれば、遺伝カウンセリングや主治医に相談するとよいでしょう。旅行や引っ越しの際は、病名、治療内容、気道の状態、緊急時の連絡先を記した書類を携帯すると安心です。

利用できる制度・相談窓口

本症は指定難病(告示番号278)であり、診断基準を満たし、かつ重症度分類で一定以上と判定された場合(または軽症でも医療費が高額な場合の特例に該当する場合)、医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病の医療費助成の対象となる場合があります。どちらが有利かは窓口や主治医に確認しましょう。気管切開や、そしゃく・音声言語機能、視覚などに永続的な障害がある場合は、身体障害者手帳の対象となることがあります。障害の程度に応じて特別児童扶養手当や障害児福祉手当、成人後は障害年金を受けられる可能性もあります。指定難病は障害者総合支援法の対象疾病であるため、手帳がなくても障害福祉サービスを利用できる場合があります。小児の手術などには自立支援医療(育成医療)が使える場合もあります。各都道府県の難病相談支援センター、医療機関の医療ソーシャルワーカー、保健師、患者会などが、制度の利用や療養生活の相談窓口になります。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)に伴う心のケア・心理社会的支援

顔や首という目立つ部位の病気であることから、本人も家族も大きな心理的負担を抱えやすくなります。出生前に診断された場合は、妊娠中から強い不安を感じるご家族も少なくありません。出生直後の集中治療や気管切開、繰り返す入院、先の見えない長期治療は、親の抑うつや不安、育児疲れ、きょうだいへの影響を生むことがあります。本人は、成長とともに外見の違いを意識するようになり、他人の視線やいじめ、自己肯定感の低下、対人不安、進学・就職・恋愛に関する悩みを抱えることがあります。言葉の不明瞭さや気管切開も、コミュニケーションや社会参加の壁になりえます。これらは自然な反応ですが、気分の落ち込みや不眠、登校・登園しぶり、引きこもりが続くときは、抑うつ状態や適応障害のサインかもしれません。主治医、看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、学校の先生やスクールカウンセラーに早めに相談してください。同じ病気の患者・家族と交流することも、孤立を防ぐ大きな助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)の受診の目安

  • 息苦しさ、ゼーゼーという呼吸音(喘鳴)、陥没呼吸、唇の色が悪い、横になると苦しがるなどの症状があれば、ためらわず救急車を呼ぶか救急外来を受診してください。
  • 病変が急に大きく硬くなった、赤く熱をもって痛む、発熱を伴う場合は、感染や出血の可能性があるため、当日中に主治医または救急外来を受診してください。
  • ミルクや食事、つばが飲み込めない、よだれが急に増えた場合は、早めに受診してください。
  • 目の周りの病変が腫れて目が開かない、見えにくい、目が飛び出してきた場合は、すぐに受診してください。
  • 口の中や皮膚の病変からの出血が止まらない、リンパ液の漏れが増えた場合は、主治医に相談してください。
  • シロリムス内服中に、高熱、強い口内炎、咳や息切れなどがみられる場合は、早めに主治医へ連絡してください。

巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)についてのよくある質問

Q. リンパ管奇形はがんになりますか?

A. リンパ管奇形は悪性腫瘍ではなく、がんに変わることは基本的にないと考えられています。ただし、巨大な頚部顔面病変では、気道の圧迫や感染などにより命に関わることがあるため、専門施設での継続的な管理が大切です。

Q. 自然に治ることはありますか?

A. 乳児血管腫と違い、リンパ管奇形が自然に消えることはまれです。大嚢胞型では自然に縮小した報告もありますが、多くは治療が必要になります。治療の要否や時期は、症状や病型に応じて主治医と相談して決めます。

Q. 子どもや次のきょうだいに遺伝しますか?

A. 本症は、発生の途中で病変部の一部の細胞に起きた遺伝子変化(体細胞変異)によるもので、一般に親から子へ遺伝する病気ではありません。心配な場合は、遺伝カウンセリングで詳しく相談することができます。

Q. シロリムスはずっと飲み続ける必要がありますか?

A. シロリムスは病変の縮小や症状の改善が期待できる一方、中止後に再び大きくなる例も報告されています。投与期間や減量・中止のタイミングは、効果と副作用、成長の状況をみながら、主治医と相談して個別に判断します。

この記事をシェア

この解説を、難病を知らない誰かに届けてください。

XでシェアLINEで送るFacebookはてブ

関連記事(関連する指定難病)

同じ分野(皮膚疾患)の指定難病

皮膚疾患の指定難病を一覧で見る / 指定難病リスト(全341疾患)

この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。