全身性アミロイドーシス

Systemic Amyloidosis

全身性アミロイドーシス(Systemic Amyloidosis)|全身性アミロイドーシスは、本来は水に溶けて働くはずのタンパク質が異常な形に折りたたまれ、アミロイドと呼ばれる線維状の沈着物となって心臓・腎臓・神経・消化管などに蓄積し、臓器の働きを損なう病気の総称です。原因となるタンパク質によって病型が分かれ、中高年以降に多く発症します。心不全、ネフローゼ症候群、しびれや自律神経障害などを起こし、診断が遅れると命に関わることがあります。近年は病型ごとに有効な治療が登場しており、早期に発見し、病型を正確に決めることが予後を大きく左右します。

全身性アミロイドーシスの要点

全身性アミロイドーシスは、異常な構造に折りたたまれたタンパク質がアミロイド線維として心臓・腎臓・神経・消化管などに沈着し、臓器障害を起こす病気の総称です。心不全、ネフローゼ症候群、末梢神経障害や自律神経障害などがみられ、病型ごとに治療が異なる指定難病(告示番号28)です。

別名・略称アミロイドーシス、Amyloidosis
分野神経・筋疾患
主な病型AL、AA、遺伝性ATTR(ATTRv)、野生型ATTR(ATTRwt)、透析アミロイドーシス
好発年齢中高年以降に多い
主な症状心不全、ネフローゼ症候群、しびれ、自律神経障害、消化管症状など
遺伝形式遺伝性ATTR(ATTRv)は常染色体優性遺伝
主な検査組織生検(コンゴーレッド染色・偏光顕微鏡で緑色複屈折)と病型の確定診断

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全身性アミロイドーシスとは

アミロイドーシスとは、前駆体となる可溶性タンパク質が立体構造の異常(ミスフォールディング)を起こし、β(ベータ)シート構造が積み重なった幅約10nmの不溶性線維(アミロイド線維)として細胞の外に沈着し、臓器障害を起こす疾患群です。沈着が一つの臓器にとどまる限局性と、血液で運ばれた前駆体タンパク質が複数臓器に沈着する全身性に大別されます。全身性アミロイドーシスは指定難病(告示番号28)に定められています。アミロイドは組織をコンゴーレッドで染め、偏光顕微鏡で観察すると緑色に光る(アップルグリーン複屈折)のが特徴で、これが病理診断の基本です。沈着そのものによる組織の構造破壊に加え、線維ができる途中の小さな凝集体(オリゴマー)が細胞を直接傷つける作用も、臓器障害に関わると考えられています。

病型は前駆体タンパク質の種類で命名され、「A+タンパク質の略号」で表します。主な全身性病型は、(1)形質細胞が作る免疫グロブリン軽鎖によるALアミロイドーシス(重鎖によるAHを含む)、(2)慢性炎症で増える血清アミロイドA蛋白によるAAアミロイドーシス、(3)トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異による遺伝性ATTR(ATTRv)アミロイドーシス(旧称:家族性アミロイドポリニューロパチー)、(4)遺伝子変異のないTTRが加齢とともに沈着する野生型ATTR(ATTRwt)アミロイドーシス(旧称:老人性全身性アミロイドーシス)、(5)長期透析患者でβ2ミクログロブリンが沈着する透析アミロイドーシス(Aβ2M)です。このほか、アポリポタンパクやゲルゾリン、リゾチーム、フィブリノゲンなどによるまれな遺伝性病型もあります。「アミロイド」の名称は19世紀半ばにウィルヒョウがヨウ素反応でデンプン様に染まることから名付けたものです。日本では熊本県や長野県にATTRv(Val30Met変異)の集積地が知られ、研究が世界的に進められてきました。なお、病型によって治療が全く異なるため、「アミロイドがある」だけでなくどのタンパク質のアミロイドかを確定することが必須です。

全身性アミロイドーシスの疫学・患者数

全身性アミロイドーシスはまれな疾患ですが、近年は診断技術の向上により患者数が増えています。特に野生型ATTRアミロイドーシスは、主に70歳以上の男性に多く、高齢者の心不全や原因不明の心肥大の中に診断されていない例が相当数含まれると考えられています。ALアミロイドーシスは多くが50〜70歳代に発症し、やや男性に多いとされます。遺伝性ATTRアミロイドーシスは、日本の集積地では20〜40歳代の比較的若い年齢で発症する例が多い一方、集積地以外の家系では50歳以降の高齢発症も多く、家族歴がはっきりしない場合もあります。AAアミロイドーシスは関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に続発しますが、生物学的製剤などで炎症を十分に抑えられるようになり、新規発症は減少傾向にあるとされます。透析アミロイドーシスは透析歴の長い患者にみられ、透析技術の進歩により重症例は減ってきています。

全身性アミロイドーシスの原因・病態生理

病因は病型ごとに異なります。AL型では、骨髄の中の少数のクローン性形質細胞(多発性骨髄腫と同系統の細胞)が異常な軽鎖を作り続け、それがアミロイドになります。λ(ラムダ)型軽鎖がκ(カッパ)型より多いのが特徴で、多発性骨髄腫に合併することもあります。AA型は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、家族性地中海熱などの自己炎症性疾患、慢性感染症などで炎症が長く続き、肝臓で作られる血清アミロイドA(SAA)が高い状態が持続することで起こります。ATTR型のトランスサイレチンは主に肝臓で作られ、甲状腺ホルモンやレチノール結合蛋白を運ぶ4量体のタンパク質です。遺伝性ATTRはTTR遺伝子の変異による常染色体顕性(優性)遺伝で、100種類以上の変異が報告され、日本ではVal30Met変異が代表的です。ただし変異を持っていても発症しない人や発症年齢の差が大きいこと(浸透率の差)が知られています。野生型ATTRは遺伝子変異がなく、加齢に伴って正常TTRが不安定化して起こるため遺伝しません。

アミロイド形成の中心は、前駆体タンパク質が本来の構造を保てなくなる過程です。TTRでは、安定な4量体が単量体に解離することが律速段階とされ、単量体が誤った形に折りたたまれて凝集し、線維となります。変異TTRはこの解離が起こりやすく、野生型でも加齢で起こりやすくなります(この解離を防ぐのがTTR四量体安定化薬の作用点です)。AL型では異常軽鎖そのものの構造的不安定さが原因で、さらに軽鎖自体が心筋細胞に直接毒性を示すとされ、このため血中の異常軽鎖を減らすと、沈着量が変わらないうちから心機能の指標が改善することがあります。線維は血清アミロイドP成分やグリコサミノグリカンと結合して分解されにくくなり、組織に蓄積します。心臓では心筋の間に沈着して壁が厚く硬くなり(拘束性の拡張障害)、刺激伝導系が障害されて不整脈やブロックを生じます。腎臓では主に糸球体に沈着して大量の蛋白尿を起こし、神経では末梢神経や自律神経の線維が障害されます。どの臓器に沈着しやすいかは病型でおおよそ傾向があり、AL型は心臓・腎臓・肝臓・消化管・舌など多臓器、AA型は腎臓と消化管、ATTRwtは心臓と腱・靱帯、ATTRvは末梢・自律神経と心臓が主体です。

全身性アミロイドーシスの症状

  • 心不全症状(息切れ・むくみ・倦怠感): 心筋が厚く硬くなり拡張しにくくなるため、収縮力が保たれた心不全(HFpEF)の形をとることが多く、労作時息切れや下腿浮腫、易疲労が出ます。心臓病変は生命予後を最も左右する臓器障害です。
  • 不整脈・失神: 心房細動や房室ブロック、心室性不整脈を起こしやすく、めまいや失神の原因になります。心房細動がなくても心房内に血栓ができることがあります。
  • 蛋白尿・ネフローゼ症候群: AL型・AA型で多く、尿の泡立ち、全身のむくみ、低アルブミン血症がみられます。進行すると腎機能が低下し透析が必要になることがあります。
  • 末梢神経障害(しびれ・痛み): 足先から始まる左右対称のしびれ、じんじんする痛み、温度や痛みを感じにくくなる症状が特徴で、進行すると筋力低下や歩行障害をきたします。ATTRvで特に目立ち、AL型でもみられます。
  • 自律神経障害: 立ちくらみ(起立性低血圧)、下痢と便秘の繰り返し、排尿障害、発汗異常、勃起障害などが起こります。降圧薬が不要になるほど血圧が下がることが手がかりになる場合もあります。
  • 手根管症候群: 手首の靱帯へのアミロイド沈着により、親指から薬指のしびれが生じます。両側性の手根管症候群は野生型ATTRの心臓病変より数年先行することがあり、早期発見の重要な手がかりです。
  • 脊柱管狭窄症・腱断裂: 野生型ATTRでは腰部脊柱管狭窄症や上腕二頭筋腱の断裂などの骨・軟部組織病変が多いことが報告されています。
  • 巨舌・眼周囲の紫斑: AL型に比較的特徴的で、舌が大きくなり歯の跡がついたり、まぶたの周りに内出血(紫斑)が出やすくなったりします。
  • 消化器症状・体重減少: 消化管への沈着や自律神経障害により、食欲不振、下痢、便秘、吐き気、消化管出血、著しい体重減少がみられます。
  • 肝腫大: 肝臓への沈着で肝臓が腫れ、血液検査でALP(アルカリホスファターゼ)の上昇が目立つことがあります。
  • 眼の症状: 遺伝性ATTRでは硝子体混濁による視力低下や緑内障を起こすことがあり、定期的な眼科診察が必要です。

全身性アミロイドーシスの経過と合併症

経過は病型で大きく異なります。AL型は進行が速く、特に心臓病変を伴う場合は数か月単位で悪化することがあるため、診断後すみやかな治療開始が重要です。病期はメイヨークリニック病期分類(NT-proBNPまたはBNP、心筋トロポニン、遊離軽鎖の差dFLCを用いる)で評価され、病期が進むほど予後が不良です。野生型ATTRは手根管症候群や脊柱管狭窄症が先行し、数年かけて心不全や不整脈が進行するゆっくりとした経過が一般的です。遺伝性ATTRは足先の感覚障害から始まり、上肢・自律神経へと広がり、心臓・腎臓・眼にも病変が及びます。自然経過では発症から10年前後で重い障害に至るとされてきましたが、治療の進歩により経過は変わりつつあります。AA型は基礎疾患の炎症の強さに左右され、炎症を抑えれば進行が抑えられることが期待できます。

合併症として、心不全の悪化、致死的不整脈や突然死、高度房室ブロック、心内血栓による脳梗塞、腎不全、消化管出血・吸収不良による低栄養、起立性低血圧による転倒・骨折、褥瘡、感染症などがあります。AL型では出血傾向(血管壁の脆弱化や凝固因子の吸着による第X因子欠乏など)が生じることがあり、生検や手術の際に注意が必要です。心臓アミロイドーシスでは、一般的な心不全治療薬や一部の降圧薬で血圧低下や徐脈が起こりやすく、治療上の合併症にも配慮が求められます。

全身性アミロイドーシスの診断・診断基準

診断は、(1)症状や検査からアミロイドーシスを疑う、(2)組織生検でアミロイド沈着を証明する、(3)沈着しているタンパク質の種類(病型)を確定する、(4)病変の広がりと重症度を評価する、の4段階で進みます。原因不明の心肥大や拘束型の心不全、ネフローゼ症候群、両側手根管症候群、原因不明の末梢・自律神経障害、M蛋白(異常な免疫グロブリン)の検出などが疑うきっかけです。生検は、侵襲の少ない腹壁脂肪吸引や消化管・口唇唾液腺から行い、陰性でも疑いが強ければ腎臓や心筋の生検を検討します。特に重要なのは、心臓アミロイドーシスがAL型かATTR型かの区別で、治療薬が全く異なり、AL型は緊急性が高いため、M蛋白の検索を必ず並行して行います。高齢者ではALと関係のない意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)を合併していることもあり、病型確定は専門施設の判断が重要です。日本では指定難病の診断基準(難病情報センター掲載)に沿って判定されます。

  • 組織生検とコンゴーレッド染色: コンゴーレッド(またはダイレクトファストスカーレット)染色で赤橙色に染まり、偏光顕微鏡で緑色の複屈折を示せばアミロイド沈着と判定します。診断の必須条件です。
  • 免疫組織化学染色・質量分析による病型確定: 抗κ・λ軽鎖、抗TTR、抗AA、抗β2ミクログロブリン抗体などで沈着タンパクを同定します。判定が難しい例では、組織を質量分析で解析する方法が用いられ、専門施設に依頼されることがあります。
  • 血清・尿の免疫固定法と血清遊離軽鎖測定: M蛋白の有無とκ/λ比の異常を調べ、AL型の診断と治療効果判定(dFLC)に用います。AL型ではM蛋白量がごく少ないことが多く、通常の蛋白電気泳動だけでは見逃されるため感度の高い検査を組み合わせます。
  • 心臓バイオマーカー(NT-proBNP/BNP・心筋トロポニン): 心臓病変の有無と重症度を反映し、AL型の病期分類や予後予測、治療効果の判定に用いられます。
  • 心電図・心エコー: 心エコーで左室壁が厚いのに心電図では低電位を示す「乖離」や偽梗塞パターンが手がかりになります。心エコーのストレイン解析で心尖部が比較的保たれる所見(apical sparing)が特徴的とされます。
  • 心臓MRI: ガドリニウム造影でびまん性・心内膜下優位の遅延造影や細胞外容積(ECV)の著明な上昇がみられ、肥大型心筋症などとの鑑別に有用です。
  • 骨シンチグラフィ(99mTcピロリン酸など): 心臓への強い集積はATTR型心アミロイドーシスを強く示唆します。M蛋白が否定された場合には、心筋生検をせずにATTR型と診断できる場合があるとされます。
  • TTR遺伝子検査: ATTR型と分かった場合、遺伝性か野生型かを区別するために行います。結果は家族にも関わるため、遺伝カウンセリングを併せて実施することが望まれます。
  • 骨髄検査・臓器機能評価: AL型では骨髄中の形質細胞の割合を調べ、多発性骨髄腫の合併を評価します。尿蛋白定量、eGFR、ALP、神経伝導検査、自律神経機能検査などで臓器病変の広がりを評価します。

全身性アミロイドーシスと鑑別すべき疾患

  • 肥大型心筋症・高血圧性心疾患: いずれも心室壁が厚くなりますが、アミロイドーシスでは心電図の低電位、心臓MRIのびまん性遅延造影、骨シンチ集積などが区別の手がかりです。
  • ファブリー病などの蓄積性心筋症: 心肥大や腎障害を呈しますが、α-ガラクトシダーゼ活性低下や遺伝子検査で区別されます。
  • 多発性骨髄腫・POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群): M蛋白と多臓器障害を伴いますが、骨病変・高カルシウム血症の有無、VEGF高値や浮腫・皮膚変化などの特徴で鑑別し、アミロイドーシスとの合併もありえます。
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP): 神経伝導検査で脱髄型を示し免疫治療に反応する点が異なりますが、遺伝性ATTRがCIDPと誤診される例が報告されており注意が必要です。
  • 糖尿病性腎症・膜性腎症などのネフローゼ症候群: 蛋白尿の原因として頻度が高く、腎生検のコンゴーレッド染色で区別されます。
  • 糖尿病性神経障害: 感覚優位の多発神経障害で似ていますが、自律神経障害が強い場合や心病変・家族歴を伴う場合はアミロイドーシスを疑います。

全身性アミロイドーシスの治療

治療は、(1)アミロイドのもとになる前駆体タンパク質の産生や不安定化を抑える原因療法と、(2)障害された臓器の機能を支える支持療法の二本柱です。沈着したアミロイドを直接取り除く治療は現時点では確立しておらず(研究段階の抗体薬などはあります)、新たな沈着を止めて臓器の自己回復を待つことが基本になります。原因療法は病型ごとに全く異なるため、病型の確定が治療の前提です。AL型は血液内科、ATTR型は循環器内科・脳神経内科、AA型はリウマチ・膠原病内科などが中心となり、多診療科が連携して治療方針を決めます。インターネット上などには不正確な薬剤情報もあるため、治療薬の情報は主治医や公的機関の情報で確認しましょう。具体的な薬剤の選択は病型・臓器障害の程度・年齢・全身状態により異なるため、必ず主治医・専門医と相談してください。

  • AL型:抗形質細胞療法: 異常軽鎖を作る形質細胞を減らす治療で、ボルテゾミブ・シクロホスファミド・デキサメタゾンの併用に抗CD38抗体ダラツムマブを加えた療法が、新規診断例の標準的な選択肢の一つとされています。遊離軽鎖の低下(血液学的奏効)を指標に効果を判定し、深い奏効ほど臓器機能の改善が期待されます。
  • AL型:自家造血幹細胞移植併用大量メルファラン療法: 心機能・腎機能・全身状態の条件を満たす比較的若年の患者で検討される治療です。適応外の患者では治療関連死亡のリスクが高いため、専門施設で慎重に判断されます。
  • ATTR型:TTR四量体安定化薬: タファミジスはTTR四量体を安定化させて単量体への解離を抑える内服薬で、日本ではトランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型・遺伝性)と遺伝性ATTRのポリニューロパチーに用いられます。心アミロイドーシスへの処方は一定の要件を満たす施設で行われます。
  • ATTR型:TTR産生抑制薬(遺伝子サイレンシング薬): パチシランやブトリシランなどのRNA干渉薬は肝臓でのTTR産生を大きく減らし、遺伝性ATTRのポリニューロパチーに用いられています。心筋症に対する適応は国や時期によって異なり、最新の承認状況は主治医に確認が必要です。
  • 遺伝性ATTR:肝移植: 変異TTRの主な産生源である肝臓を置き換える治療で、薬物療法以前から行われてきました。早期例で有効とされますが、移植後も野生型TTRによる心臓病変などが進む例があり、薬物療法の普及で適応は限定的になっています。
  • AA型:基礎疾患の炎症の制御: 関節リウマチなどではトシリズマブなどの生物学的製剤、家族性地中海熱ではコルヒチンなどで炎症を抑え、血清アミロイドA(SAA)を正常化させることが目標です。感染症が原因なら感染の治療を行います。
  • 心臓病変の支持療法: 利尿薬による体液管理が中心で、β遮断薬・一部のカルシウム拮抗薬・ジゴキシンなどは血圧低下や徐脈、毒性が出やすく慎重な使用が必要です。心房細動では抗凝固療法、房室ブロックではペースメーカー、致死的不整脈では植込み型除細動器が検討されます。
  • 腎・神経・消化器の支持療法: ネフローゼに対する浮腫管理、腎不全に対する透析、神経障害性疼痛への薬物療法、起立性低血圧への弾性ストッキングや昇圧薬、下痢・便秘の対症療法、栄養療法を行います。
  • 透析アミロイドーシスの治療とリハビリテーション: 透析アミロイドーシスでは高性能透析膜やβ2ミクログロブリン吸着カラムの使用、手根管開放術などが行われます。全病型でリハビリテーションや転倒予防、装具の活用が生活機能維持に重要です。

全身性アミロイドーシスの予後・長期フォロー

予後は病型と、特に心臓病変の程度に強く左右されます。AL型は無治療では進行が速く、高度の心病変を伴う例では診断から短期間で亡くなることもありますが、ダラツムマブを含む治療や自家移植により血液学的に深い奏効が得られた患者では、長期生存が期待できるようになってきました。野生型ATTRは高齢発症で進行が比較的緩やかであり、TTR安定化薬により死亡や心血管入院が減ることが臨床試験で示されています。遺伝性ATTRは、かつては発症から10年前後で重い障害に至るとされていましたが、安定化薬やRNA干渉薬の登場で神経障害の進行抑制が期待できるようになりました。いずれの病型も、臓器障害が軽いうちに治療を始めたほうが効果が高く、早期診断がQOLと生命予後の改善につながります。

治療後も長期のフォローアップが欠かせません。AL型では遊離軽鎖・M蛋白による血液学的再発の監視と、NT-proBNP・トロポニン、尿蛋白、腎機能などの臓器指標を定期的に確認します。再発時には別の治療法が選択されます。ATTR型では心エコー・バイオマーカー・心電図(伝導障害の出現)、神経症状、眼科検査、腎機能を定期的に評価します。いずれも治療薬の副作用(感染症、末梢神経障害、ビタミンA低下など)の確認も必要で、主治医と相談しながら通院間隔を決めます。

全身性アミロイドーシスの日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

心臓病変がある場合は、塩分制限と毎日の体重測定が基本で、数日で2kg前後の増加やむくみの悪化は心不全悪化のサインです。水分制限の程度は病状により異なるため主治医の指示に従ってください。起立性低血圧があるときは、急に立ち上がらず段階的に姿勢を変える、脱水を避ける、入浴は長湯を避けるなどの工夫で転倒を防ぎます。感覚障害があると、やけどや足の傷に気づきにくいため、毎日足を観察し、合う靴を選び、湯たんぽなどの低温やけどに注意します。下痢や食欲不振で体重が減る場合は、栄養士と相談し少量頻回の食事や栄養補助食品を活用します。AL型の化学療法中は感染予防(手洗い、ワクチン接種の相談)が重要です。他院で処方される薬(降圧薬、抗不整脈薬など)は病状に影響することがあるので、必ずアミロイドーシスであることを伝えてください。遺伝性ATTRは常染色体顕性遺伝で、子どもが変異を受け継ぐ確率は2分の1です。血縁者の発症前遺伝学的検査には、知る権利と知らないでいる権利の両方への配慮が必要で、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けたうえで判断することが勧められます。野生型ATTR、AL型、AA型は原則として遺伝しません。

利用できる制度・相談窓口

全身性アミロイドーシスは指定難病であり、診断基準を満たし重症度分類で一定以上と判定された場合、または軽症でも医療費が一定額を超える月が続く場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請は住所地の都道府県・指定都市の窓口(多くは保健所)で行い、難病指定医の作成した臨床調査個人票が必要です。高額な薬剤を使う場合は、高額療養費制度との併用も確認しましょう。心機能や腎機能、肢体機能の障害の程度に応じて身体障害者手帳(心臓、じん臓、肢体不自由など)の対象となることがあり、日常生活や就労に支障がある場合は障害年金の対象となる可能性があります。指定難病の患者は障害者総合支援法による障害福祉サービスを利用できる場合があります。65歳以上では介護保険を利用でき(40〜64歳は特定疾病に該当する場合に限られます)、訪問看護やリハビリ、福祉用具の利用が可能です。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカー(医療相談室)があり、AL型では病院のがん相談支援センターで治療と仕事の両立について相談できる場合もあります。患者会も情報交換の場として役立ちます。

全身性アミロイドーシスに伴う心のケア・心理社会的支援

難病の診断は、病気の見通しの不確かさ、治療費、仕事や家庭での役割の変化などから、不安や抑うつ、適応障害を引き起こしやすい出来事です。全身性アミロイドーシスに特有の課題として、多くの患者さんが複数の診療科を受診した末にようやく診断にたどり着くため、それまでの時間への怒りや無力感を抱えやすいこと、AL型では血液がんに準じた化学療法を受けることへの戸惑い、ATTR型では高齢での心不全による活動制限、遺伝性ATTRでは自分の子どもや兄弟への遺伝の不安、家族の発症を見てきた経験による恐怖、結婚や出産に関する悩みなどが挙げられます。また、自律神経障害による下痢・失禁や勃起障害は人に相談しにくく、孤立感を深めることがあります。眠れない、気分の落ち込みが2週間以上続く、何も楽しめないといった状態があれば、遠慮せず主治医や看護師に伝えてください。必要に応じて精神科・心療内科、公認心理師などの専門職、遺伝カウンセラー、患者会につなぐことができます。家族介護者の負担にも目を向け、介護サービスやレスパイトを活用することが大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

全身性アミロイドーシスの受診の目安

  • 数日で体重が2kg前後増えた、足のむくみや息切れが強くなった、横になると息苦しいときは早めに受診してください。
  • 失神した、脈が極端に遅い・速い、胸の痛みや動悸が続くときは救急受診が必要です。
  • 急に片側の手足が動かない、言葉が出にくいなど脳梗塞を疑う症状が出たら、ただちに救急車を呼んでください。
  • 化学療法中に38℃以上の発熱、強い下痢や嘔吐で水分がとれない、黒い便や血便が出たときは速やかに連絡・受診してください。
  • 両手のしびれ(手根管症候群)や足先のしびれ、立ちくらみが続き、原因が分からないときは、アミロイドーシスの可能性も含めて相談してください。
  • 尿の泡立ちが増えた、尿量が急に減った、全身のむくみが出たときは受診してください。

全身性アミロイドーシスについてのよくある質問

Q. アミロイドーシスは遺伝しますか?

A. 遺伝するのは主に遺伝性ATTRアミロイドーシスなどの遺伝性病型で、常染色体顕性遺伝のため子どもへの遺伝の確率は2分の1です。AL型、AA型、野生型ATTR型は原則として遺伝しません。血縁者の検査を考える際は遺伝カウンセリングの利用をお勧めします。

Q. 一度沈着したアミロイドは消えますか?

A. 沈着したアミロイドを直接取り除く治療は現時点で確立していません。しかし原因療法で新たな沈着を止めると、時間をかけて臓器機能が改善する例があり、特にAL型では心臓や腎臓の指標が改善することがあります。早く治療を始めるほど回復の余地が大きいと考えられています。

Q. 手根管症候群の手術をした際にアミロイドが見つかったと言われました。どうすればよいですか?

A. 手根管の組織からATTR型アミロイドが見つかった場合、将来心臓病変が現れる可能性があると報告されています。症状がなくても、循環器内科で心電図・心エコー・バイオマーカーなどの評価を受け、定期的に経過をみることが勧められます。

Q. 心臓アミロイドーシスと言われましたが、AL型かATTR型かで何が違うのですか?

A. AL型は血液の形質細胞の病気が原因で進行が速く、化学療法などを急いで始める必要があります。ATTR型はトランスサイレチンが原因で比較的ゆっくり進み、TTR安定化薬などが用いられます。治療が全く異なるため、M蛋白の検査や生検で病型を確定することが重要です。

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この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。