好酸球性副鼻腔炎

Eosinophilic Sinusitis

好酸球性副鼻腔炎(Eosinophilic Sinusitis)|好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔の粘膜に好酸球という白血球が多数集まって炎症を起こす慢性副鼻腔炎の一病型です。成人に多く、両側の鼻茸(鼻ポリープ)、早期からの嗅覚障害、粘り気の強い鼻汁を特徴とし、気管支喘息を高率に合併します。手術後も再発しやすい難治性の病気で、日本では2015年に指定難病(告示番号306)に定められました。

好酸球性副鼻腔炎の要点

好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔粘膜に好酸球が多数浸潤し、2型炎症により両側の鼻茸、早期の嗅覚障害、粘稠な鼻汁をきたす慢性副鼻腔炎の一病型です。気管支喘息を合併しやすく術後も再発しやすいため、2015年に指定難病(告示番号306)となりました。

別名・略称好酸球性慢性副鼻腔炎、ECRS、eosinophilic chronic rhinosinusitis
分野眼・耳鼻咽喉疾患
遺伝形式単一遺伝子病ではない(診断に遺伝子検査は用いない)
好発年齢成人
主な症状両側の鼻茸、早期からの嗅覚障害、粘稠な鼻汁、気管支喘息の合併
主な検査鼻内視鏡、副鼻腔CT、末梢血好酸球、鼻茸などの病理組織検査
主な治療ステロイド薬、内視鏡下副鼻腔手術、生物学的製剤など
受診する主な診療科耳鼻咽喉科

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好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis:ECRS)は、慢性副鼻腔炎のうち、副鼻腔粘膜や鼻茸の組織に著明な好酸球浸潤を認める病型です。日本でかつて多かった「蓄膿症」は、細菌感染と好中球主体の炎症による非好酸球性副鼻腔炎で、マクロライド少量長期療法や手術がよく効きます。これに対し本症は、2型炎症(IL-4、IL-5、IL-13などのサイトカインが関与するアレルギー型の炎症)が中心です。両側性で篩骨洞(目と目の間の副鼻腔)に病変が強く、嗅覚障害が早期から目立ち、従来の治療では再発を繰り返しやすい点が特徴です。なお、既存の簡易解説には「遺伝子検査で診断する」との記載がありますが、本症は単一遺伝子病ではありません。診断に遺伝子検査は用いず、臨床所見と病理組織所見で診断します。

分類と歴史的経緯:日本では2000年代初頭に、マクロライド療法が効きにくく再発しやすい副鼻腔炎の一群が「好酸球性副鼻腔炎」として提唱されました。その後、全国多施設共同研究(JESREC Study)により、2015年に診断基準(JESRECスコア)と重症度分類が作られ、同年に指定難病となりました。重症度は、末梢血好酸球の増加、CTでの篩骨洞優位の陰影、気管支喘息の合併、アスピリン・NSAIDs(解熱鎮痛薬)不耐症の合併の組み合わせで、軽症・中等症・重症に分けます。重症になるほど術後再発率が高いことが示されています。国際的には「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)」の2型炎症優位の病型にほぼ相当します。アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息、AERD/N-ERD)に伴う副鼻腔炎は、その最重症型と位置づけられます。

好酸球性副鼻腔炎の疫学・患者数

慢性副鼻腔炎全体の中で好酸球性副鼻腔炎の占める割合は、近年増えているとされます。手術を受ける慢性副鼻腔炎のうち相当な割合を占めるという報告があります。指定難病の対象となる中等症以上の患者数は、国内で約2万人と推計されていますが、軽症例や未診断例を含めた実数はそれより多いと考えられます。発症は成人、特に中年期以降に多く、小児ではまれです。明確な性差は確立していません。喘息の発症と前後して、あるいは成人になってから喘息とともに発症する例が多くみられます。アスピリン喘息の患者さんでは、ほぼ全例に鼻茸を伴う副鼻腔炎の合併がみられるとされます。

好酸球性副鼻腔炎の原因・病態生理

病因は単一ではありません。体質的素因(アレルギー疾患や喘息のなりやすさに関わる多数の遺伝的要因)と、環境要因・粘膜バリアの破綻が組み合わさって発症すると考えられています。ただし、親から子へ明確に遺伝する遺伝形式や、原因となる特定の遺伝子は知られていません。病態の中心は2型炎症です。ウイルス、真菌、黄色ブドウ球菌由来のエンテロトキシン(スーパー抗原として働く)、大気汚染物質などの刺激が鼻・副鼻腔の上皮を傷つけると、上皮からTSLP、IL-33、IL-25といった「警報」サイトカインが放出されます。これが2型自然リンパ球(ILC2)やTh2細胞を活性化し、IL-5による好酸球の動員と生存の延長、IL-4/IL-13による粘液産生の増加・IgE産生・組織のリモデリングを引き起こします。鼻茸の組織内では局所的なIgE産生も報告されており、血清IgEが高くない患者さんもいます。

発症機序の詳細:組織に集まった好酸球は、顆粒蛋白(MBP、ECPなど)やロイコトリエンを放出して上皮を障害し、浮腫を強めます。また、DNAを網状に放出する好酸球細胞外トラップ(EETs)を作り、粘液を極めて粘稠にします。好酸球内のガレクチン-10が結晶化したシャルコー・ライデン結晶も、粘液の粘稠化と炎症の持続に関わるとされています。さらに2型炎症下では、線溶系(組織プラスミノーゲン活性化因子)が低下してフィブリンが沈着し、粘膜の浮腫性変化が鼻茸として固定化すると考えられています。嗅裂(においを感じる部位)周辺に病変ができやすく、粘膜浮腫による気流障害と嗅上皮への炎症により、早期から嗅覚が低下します。アスピリン・NSAIDs不耐症の患者さんでは、シクロオキシゲナーゼ(COX-1)が阻害されることでアラキドン酸代謝がシステイニルロイコトリエン産生へ偏ります。その結果、服薬後に激しい鼻症状や喘息発作が誘発され、副鼻腔炎も重症化しやすくなります。上気道と下気道は一つの連続した気道(one airway, one disease)であり、副鼻腔の炎症は喘息のコントロールにも影響します。

好酸球性副鼻腔炎の症状

  • 嗅覚障害: 最も特徴的な症状で、病初期から現れることが多く、においが分からなくなります。経口ステロイドで一時的に回復し、中止すると再び悪化することがよくあります。
  • 鼻閉(鼻づまり): 両側の鼻茸と粘膜の腫れにより、持続的な鼻づまりが起こります。口呼吸やいびきの原因になります。
  • 粘稠な鼻汁: 黄色〜褐色で、にかわ状・ゼリー状の非常に粘り気の強い鼻汁(好酸球性ムチン)が特徴で、かんでも出にくいことが多いです。
  • 後鼻漏: 粘稠な分泌物がのどに流れ落ち、咳払いや痰、のどの違和感の原因になります。
  • 鼻茸(鼻ポリープ): 両側の中鼻道や嗅裂に多発する、白く柔らかい浮腫状のポリープです。大きくなると鼻の入り口近くまで達することもあります。
  • 風味障害・味覚の低下: 嗅覚が低下するため、食べ物の風味が分からなくなり、「味がしない」と感じることがあります。
  • 頭重感・顔面の圧迫感: 額や目の間の重苦しさを訴えることがあります。ただし、細菌性副鼻腔炎に比べると、強い痛みは少ない傾向にあります。
  • 気管支喘息の症状: 咳、喘鳴、息苦しさなどです。成人発症の喘息を合併することが多く、副鼻腔炎が悪化すると喘息も悪化しやすくなります。
  • アスピリン・NSAIDs過敏症状: 解熱鎮痛薬を服用した後に、鼻水・鼻づまりの急な悪化や重い喘息発作が起こることがあり、命に関わる場合もあります。
  • 耳の症状(好酸球性中耳炎): 粘稠な耳漏、耳閉感、難聴が起こります。進行すると感音難聴や高度難聴に至ることもあります。
  • 睡眠障害・日中の疲労感: 鼻閉による睡眠の質の低下から、日中の眠気や集中力の低下が生じます。

好酸球性副鼻腔炎の経過と合併症

経過・自然歴:慢性に経過し、自然に治ることはまれです。初期には嗅覚低下と軽い鼻閉のみのこともありますが、次第に両側の鼻茸が増大し、篩骨洞を中心に副鼻腔全体へ陰影が広がります。内視鏡下鼻副鼻腔手術により症状は大きく改善しますが、好酸球性の炎症という体質的な病態は手術では取り除けません。そのため、術後に粘膜浮腫や鼻茸が再発することが少なくありません。JESRECの検討では、重症度が高いほど術後数年以内の再発率が高く、重症例では約半数前後が再発するとの報告があります。感冒(かぜ)をきっかけに急に悪化することがあり、悪化と改善を繰り返しながら長期に経過するのが一般的です。

合併症:最も重要な合併症は気管支喘息で、多くの患者さんに合併します。中でもアスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息)は重症化しやすく、注意が必要です。好酸球性中耳炎は難治性で、感音難聴が進行することがあり、早期の耳鼻科的管理が重要です。そのほか、好酸球性ムチンの貯留による副鼻腔の拡大・骨の菲薄化、まれに眼窩への圧迫による眼症状、細菌感染の重なりによる急性増悪があります。また、ステロイドを繰り返し使うことによる副作用(骨粗鬆症、糖尿病、白内障、緑内障、感染症、副腎機能抑制など)も、長期管理上の重要な問題です。血中好酸球が著明に増加し、しびれ・紫斑・発熱などが出現した場合は、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)への移行や合併に注意が必要です。

好酸球性副鼻腔炎の診断・診断基準

診断は、症状の問診(嗅覚障害、喘息やNSAIDs過敏の有無)、鼻内視鏡検査、副鼻腔CT、血液検査による末梢血好酸球比率の測定から始めます。これらを点数化したJESRECスコアが11点以上であれば本症を疑います。確定診断には、手術や生検で採取した鼻茸・副鼻腔粘膜の病理組織で、好酸球浸潤が基準以上であることの確認が必要です。そのうえで、末梢血好酸球、CT所見、喘息・NSAIDs不耐症の合併の有無から重症度を判定します。末梢血好酸球は経口ステロイドの使用で大きく低下するため、検査の時期や服薬状況を考慮して評価します。片側性の病変や出血・骨破壊を伴う場合は、腫瘍などとの鑑別を優先します。

  • JESRECスコア: 両側性(3点)、鼻茸あり(2点)、CTで篩骨洞優位の陰影(2点)、末梢血好酸球比率(2%超5%以下で4点、5%超10%以下で8点、10%超で10点)を合計します。11点以上で本症を疑う、簡便で日本の標準的な臨床スコアです。
  • 病理組織検査: 鼻茸または副鼻腔粘膜の組織で、400倍視野あたり好酸球70個以上(好酸球の多い部位3視野の平均)を認めれば確定診断となります。指定難病の申請に必須の所見です。
  • 鼻内視鏡検査: 両側の中鼻道・嗅裂に多発する浮腫状の鼻茸と、粘稠な分泌物を確認します。治療効果や術後再発の評価にも繰り返し用います。
  • 副鼻腔CT: 篩骨洞の陰影が上顎洞より優位であることが特徴で、嗅裂の閉塞もよくみられます。病変の範囲の評価(Lund-Mackayスコアなど)や手術計画に不可欠です。
  • 血液検査: 末梢血好酸球比率は診断・重症度判定の中心となる指標です。総IgE値や特異的IgE抗体も参考にします。好酸球が著しく高い場合は、EGPAなどの全身疾患を念頭に、ANCAなどの追加検査を検討します。
  • 嗅覚検査: 基準嗅覚検査(T&Tオルファクトメトリー)や静脈性嗅覚検査で、嗅覚障害の程度を客観的に評価します。治療効果の判定にも用います。
  • 呼吸機能検査・呼気NO(FeNO): 喘息の合併や下気道の2型炎症を評価します。未診断の喘息が見つかることもあるため、呼吸器内科との連携が重要です。
  • アスピリン・NSAIDs不耐症の評価: 主に過去に解熱鎮痛薬で喘息発作や鼻症状が誘発されたかどうかを問診で確認します。誘発試験は危険を伴うため、専門施設で慎重に適応を判断して行います。
  • 聴力検査・耳鏡検査: 好酸球性中耳炎の合併を評価します。膠状の耳漏や骨導閾値の上昇(感音難聴成分)に注意します。

好酸球性副鼻腔炎と鑑別すべき疾患

  • 非好酸球性慢性副鼻腔炎: 上顎洞優位の陰影、膿性鼻汁、組織での好中球主体の炎症が特徴で、マクロライド少量長期療法が有効なことが多いです。
  • アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎: 片側性のことが多く、CTで高吸収域を伴う陰影、ムチン内の真菌要素、真菌特異的IgEの上昇が手がかりになります。
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA): 喘息と副鼻腔炎に加え、著明な好酸球増多、多発単神経炎、紫斑、臓器障害を伴い、MPO-ANCA陽性例があります。
  • 鼻副鼻腔腫瘍(内反性乳頭腫・悪性腫瘍): 片側性の病変、血性鼻汁、骨破壊、顔面のしびれなどがあれば、生検で必ず除外します。
  • 歯性上顎洞炎: 片側の上顎洞に限局し、悪臭を伴う膿性鼻汁や原因となる歯の病変が手がかりになります。
  • 線毛機能不全症候群・嚢胞性線維症: 幼少期からの慢性の気道感染、気管支拡張、中耳炎、内臓逆位(カルタゲナー症候群)、汗中Cl濃度の上昇などで鑑別します。

好酸球性副鼻腔炎の治療

治療の目標は、鼻閉や嗅覚障害を改善して生活の質(QOL)を保ち、再発と喘息の増悪を防ぎ、全身ステロイドの使用量をできるだけ減らすことです。一般的には、鼻噴霧用ステロイドと鼻洗浄を基本とし、鼻茸が大きく症状が強い場合には内視鏡下鼻副鼻腔手術を行います。術後も局所治療を継続し、増悪時には短期間の経口ステロイドを用います。既存治療で十分な効果が得られない場合には、2型炎症を標的とする生物学的製剤が選択肢となります。喘息やNSAIDs不耐症を合併している場合は、耳鼻咽喉科と呼吸器内科が連携して上下気道を一体として管理することが重要です。治療法の選択は重症度、合併症、年齢、ステロイドの副作用リスク、費用負担などを総合して決めるため、主治医・専門医とよく相談してください。

  • 鼻噴霧用ステロイド: 局所の好酸球性炎症を抑える基本薬で、手術の前後を通じて長期に継続します。正しい噴霧方法(鼻中隔を避けて外側に向ける)を身につけることが効果を左右します。
  • 鼻洗浄(鼻うがい): 生理食塩水などで粘稠な分泌物や抗原、炎症性物質を洗い流します。特に術後は再発予防の要とされています。
  • 経口ステロイド(短期): 嗅覚障害や鼻茸に速やかな効果がありますが、中止後に再燃しやすいことが知られています。副作用を考慮し、増悪時や手術前後などに限って短期間使用するのが原則です。
  • 内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS): 鼻茸と病的粘膜を除去し、副鼻腔を広く開放して換気・排泄と局所薬の到達性を改善します。本症では、嗅裂を含めて病変のある副鼻腔を可能な範囲で十分に開放することが重視されます。
  • 生物学的製剤: 抗IL-4受容体α抗体のデュピルマブは、既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して国内で承認されており、鼻茸の縮小、嗅覚の改善、ステロイド使用量の減少が報告されています。そのほかの抗IL-5系製剤などは、喘息に対する適応や副鼻腔炎への承認状況が薬剤ごとに異なるため、専門医が投与の要件を確認したうえで判断します。
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬など: 特に喘息やNSAIDs不耐症の合併例で補助的に用いられます。抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎の合併がある場合に併用されます。
  • 合併する喘息の治療: 吸入ステロイドを中心とする喘息治療を呼吸器内科と連携して行います。副鼻腔炎の制御が喘息の安定につながることもあります。
  • 好酸球性中耳炎の治療: 耳漏の除去、ステロイド(トリアムシノロンなど)の鼓室内投与、全身治療の調整を行い、難聴の進行防止を図ります。
  • NSAIDs回避と薬剤管理: NSAIDs不耐症の患者さんは、市販薬や湿布・坐薬を含めて原因薬を避けます。鎮痛薬が必要な場合は、安全性の比較的高い薬剤を医師と相談して選びます。

好酸球性副鼻腔炎の予後・長期フォロー

本症そのものが生命に関わることは通常ありません。しかし、合併する重症喘息やNSAIDsによる誘発発作は、命に関わる可能性があります。慢性で再発しやすいため、嗅覚障害、鼻閉、睡眠障害などによるQOLの低下が長期に続くことが大きな問題です。においが分からないことは、食事の楽しみの喪失だけでなく、ガス漏れ・煙・腐敗した食品に気づけないなどの安全上のリスクにもつながります。手術、局所治療、生物学的製剤の組み合わせにより、多くの患者さんで症状のコントロールが得られるようになっています。一方で、軽症例は比較的経過が良く、重症例ほど再発率が高いとされます。

長期フォローアップ:症状が落ち着いても、定期的に鼻内視鏡で粘膜浮腫や鼻茸の再発を確認し、早めに治療を強化することが再手術の回避につながります。嗅覚検査、必要に応じたCT、血中好酸球の推移、喘息のコントロール状況、聴力を継続して評価します。経口ステロイドを繰り返し使用した方は、骨密度、血糖、眼圧、白内障などの副作用のチェックが重要です。生物学的製剤の使用中は、効果判定と継続・中止の判断を定期的に専門医と行います。

好酸球性副鼻腔炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、鼻噴霧薬と鼻洗浄を自己判断で中断せず、症状が軽いときも継続することが再発予防の基本です。かぜは急性増悪の大きなきっかけになるため、手洗い・うがい、適切な時期の予防接種、十分な睡眠を心がけます。喫煙や受動喫煙は粘膜の炎症を悪化させるため避けましょう。NSAIDs不耐症がある場合は、「お薬手帳」や携帯カードに記載し、歯科や他院の受診時、市販薬の購入時に必ず伝えてください。湿布や塗り薬、一部の食品添加物や香料で症状が出る方もいます。嗅覚が低下している場合は、ガス警報器・火災報知器の設置、食品の消費期限の確認など、安全面の工夫が役立ちます。本症は単一遺伝子病ではないため、通常は遺伝カウンセリングの対象とはなりません。ただし、喘息やアレルギー疾患の体質が家族にみられることはあるため、気になる症状があればご家族も医療機関に相談するとよいでしょう。

利用できる制度・相談窓口

好酸球性副鼻腔炎は指定難病(告示番号306)です。JESRECスコアと病理組織所見で確定診断され、重症度分類で中等症以上と判定された場合に、医療費助成の対象となります。軽症でも、医療費が一定額以上の月が年間に一定回数以上ある場合(軽症高額該当)には対象となることがあります。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県(指定都市)の窓口に行います。生物学的製剤など高額な治療では、医療保険の高額療養費制度との組み合わせで自己負担が軽減されます。好酸球性中耳炎などにより一定以上の聴力障害が残った場合は、身体障害者手帳(聴覚障害)の対象となることがあります。療養や就労に関する相談は、各都道府県の難病相談支援センター、病院の医療ソーシャルワーカー、保健所で受け付けています。制度の要件は改定されることがあるため、最新の情報は窓口で確認してください。

好酸球性副鼻腔炎に伴う心のケア・心理社会的支援

難病全般に共通して、長く続く症状や再発への不安、通院や治療費の負担、周囲に理解されにくいつらさから、抑うつ・不安・適応障害を生じることがあります。本症に特有の課題として、嗅覚・風味の喪失があります。外見からは分かりにくい一方で、食事の楽しみ、料理、家族との団らん、季節や思い出と結びついた香りの体験を失うことになり、喪失感や孤立感が強くなりやすいことが知られています。また、「手術しても再発する」という経験や、ステロイドの副作用への心配、喘息発作への恐怖も心理的負担になります。においが分からず体臭や料理の味付けに自信が持てない、職場で鼻をかむことや鼻声を気にするといった社会生活上の悩みも少なくありません。気分の落ち込み、不眠、興味の喪失が2週間以上続く場合は、遠慮なく主治医に伝えてください。必要に応じて心療内科・精神科、公認心理師、患者会などのサポートを利用することが大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

好酸球性副鼻腔炎の受診の目安

  • においが分からない状態が続く、両側の鼻づまりが治らない、粘り気の強い鼻汁が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。
  • 喘息がある方で鼻症状が悪化してきた場合や、治療中に鼻茸や嗅覚障害が再び悪化した場合は、早めに主治医に相談してください。
  • 解熱鎮痛薬を服用した後に、急な鼻づまり・鼻水、息苦しさ、喘鳴、顔面紅潮、じんましんが出た場合は、直ちに救急受診してください。
  • 会話ができないほどの息苦しさ、唇の色が悪い、吸入薬が効かない喘息発作の場合は、救急車の要請を含めて至急受診してください。
  • 片側だけの鼻づまりや血の混じった鼻汁、目の腫れ・視力低下・物が二重に見える、強い頭痛や高熱がある場合は、速やかに受診してください。
  • 耳だれ、耳のつまり感、聞こえにくさが出てきた場合は、難聴の進行を防ぐため早めに受診してください。

好酸球性副鼻腔炎についてのよくある質問

Q. 手術をすれば治りますか?

A. 手術で鼻茸を取り除き副鼻腔を開放すると、鼻づまりや嗅覚は大きく改善することが多いです。ただし、好酸球性の炎症という体質自体は残るため、再発することが少なくありません。術後も鼻噴霧薬や鼻洗浄を続け、定期的に診察を受けることが大切です。

Q. においは戻りますか?

A. 治療により回復することは多いものの、炎症が再燃すると再び低下しやすいのが本症の特徴です。罹病期間が長い場合などは、回復が不十分なこともあります。嗅覚の変化は病状の目安にもなるため、変化があれば主治医に伝えてください。

Q. 生物学的製剤は誰でも使えますか?

A. 国内では、既存の治療(手術や全身ステロイドなど)で十分な効果が得られない、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎などが対象とされています。投与には一定の要件があり、効果と費用負担を考慮して判断します。適応については専門医と相談してください。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 本症は特定の遺伝子異常によって起こる病気ではなく、親から子へ直接遺伝するものではありません。ただし、喘息やアレルギーになりやすい体質が家族内でみられることはあります。

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この記事について

最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。