カナバン病

Canavan Disease

カナバン病(Canavan Disease)|カナバン病は、ASPA遺伝子の異常によって脳内にN-アセチルアスパラギン酸(NAA)が蓄積し、大脳白質が海綿状に変性する常染色体潜性(劣性)遺伝の白質ジストロフィーです。多くは生後数か月の乳児期に、筋緊張低下、頸定の遅れ、頭囲拡大(大頭症)で気づかれます。その後、精神運動発達の停滞・退行、痙性、視力障害、てんかん発作が進行します。根治療法は確立していませんが、栄養・呼吸・けいれん・姿勢の管理など多職種による包括的な支援によって、本人の苦痛を和らげ、家族とともに過ごす生活の質を支えることができます。

カナバン病の要点

カナバン病は、ASPA遺伝子の異常でアスパルトアシラーゼが欠損し、脳にN-アセチルアスパラギン酸が蓄積して大脳白質が海綿状に変性する常染色体潜性の白質ジストロフィーです。乳児期に筋緊張低下や大頭症、発達の停滞・退行がみられ、指定難病(告示番号307)に指定されています。

別名・略称海綿状白質ジストロフィー、Canavan–van Bogaert–Bertrand病、アスパルトアシラーゼ欠損症、ASPA欠損症、海綿状変性症(Canavan型)、Canavan disease、spongy degeneration of the brain
分野神経・筋疾患
遺伝形式常染色体潜性(劣性)遺伝(ASPA遺伝子の両アレル変異)
好発年齢多くは生後数か月の乳児期(軽症型もある)
主な症状筋緊張低下、頸定の遅れ、大頭症、発達の停滞・退行、痙性、視力障害、てんかん発作
主な検査尿中NAAの著明な増加、MRSでのNAAピーク上昇、頭部MRI、ASPA遺伝子検査
主な治療根治療法は未確立。栄養・呼吸・けいれん・姿勢の管理など多職種による支援
指定難病告示番号307

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カナバン病とは

カナバン病(Canavan disease、海綿状白質ジストロフィー、Canavan–van Bogaert–Bertrand病とも呼ばれる)は、オリゴデンドロサイトに発現する酵素アスパルトアシラーゼ(aspartoacylase)の欠損によって起こる遺伝性の神経代謝疾患です。この酵素はNAAを酢酸とアスパラギン酸に分解します。酵素が欠けると脳内・体液中にNAAがたまり、大脳白質に空胞(海綿状変性)とミエリン(髄鞘)の形成・維持障害が生じます。大頭症を伴う乳児期発症の進行性白質脳症が典型像で、尿中NAAの著明な増加と、MRスペクトロスコピー(MRS)でのNAAピーク上昇が診断の決め手になります。なお、本症を「多因子性」や「免疫系の異常が関与する病気」とする説明が見られることがありますが、これは誤りです。本症は単一遺伝子(ASPA)の両アレル変異による疾患で、免疫機序は病因に関与しません。日本では指定難病(告示番号307)に指定されています。

病型は臨床的に大きく二つに分けられます。一つは新生児・乳児型(典型例、重症型)で、生後3〜6か月頃までに発症し、頸定の獲得すら困難なことが多く、患者の大部分を占めます。もう一つは軽症型(若年型、mild/juvenile form)で、発達の遅れや言語の遅れが比較的軽く、退行がはっきりしない、あるいは緩徐です。MRIでも白質病変が限局的(基底核や一部の白質に限られる等)にとどまります。軽症型は残存酵素活性をもつ変異(複合ヘテロ接合など)と関連するとされ、尿中NAAの上昇も軽度な傾向があります。歴史的には、1931年にCanavanが海綿状変性を示す乳児例を病理学的に報告しました。1949年にvan BogaertとBertrandが独立した疾患単位として整理し、1988年にMatalonらがアスパルトアシラーゼ欠損とNAA尿症を明らかにして、生化学的に診断できるようになりました。

カナバン病の疫学・患者数

カナバン病は世界的にもまれな疾患です。アシュケナージ系ユダヤ人集団で頻度が高く、保因者頻度は数十人に1人程度と報告されています。同集団では少数の創始者変異(p.Glu285Ala、p.Tyr231Ter)が大部分を占め、保因者スクリーニングの対象にもなっています。非ユダヤ系集団では変異が多様で、欧州系ではp.Ala305Gluなどが知られます。日本人での報告は極めて少なく、国内の患者数は数人〜十数人程度の規模と推定されています。正確な有病率は明らかではありません。ただし、白質脳症として診断がついていない例が存在する可能性も指摘されています。常染色体潜性遺伝のため性差はありません。発症は典型例で生後数か月、軽症型では乳幼児期以降に発達の遅れとして気づかれることが多いとされます。

カナバン病の原因・病態生理

原因遺伝子は17番染色体短腕に位置するASPAで、アスパルトアシラーゼをコードしています。遺伝形式は常染色体潜性(劣性)遺伝です。両親がそれぞれ1つずつ変異をもつ保因者(通常は無症状)である場合、子が発症する確率は妊娠ごとに25%、保因者となる確率は50%です。ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライス変異、欠失など多様な変異が報告されています。重症度は残存酵素活性とある程度相関すると考えられていますが、遺伝子型だけで臨床経過を正確に予測することはできません。

NAAは神経細胞(ニューロン)のミトコンドリアで、アスパラギン酸とアセチルCoAから酵素NAT8Lによって合成され、脳内では非常に高濃度に存在する物質です。ニューロンから放出されたNAAはオリゴデンドロサイトに取り込まれ、アスパルトアシラーゼによって酢酸とアスパラギン酸に分解されます。生じた酢酸は、髄鞘を構成する脂質(ミエリン脂質)の合成材料として利用されると考えられています。本症では分解が止まるため、次の二つの機序が組み合わさって病態を形成すると考えられています。①髄鞘形成に必要な酢酸の供給不足によるミエリン形成・維持の障害。②NAAが浸透圧調整物質(オスモライト)として働くことによる細胞内外の水分貯留(浸透圧性浮腫)と、オリゴデンドロサイト・アストロサイトの障害。病理学的には、皮質下U線維を含む大脳白質、淡蒼球、視床、小脳などに髄鞘内の空胞形成(海綿状変性)がみられ、アストロサイトの腫大や異常なミトコンドリアも報告されています。脳重量の増加と大頭症は、この水分貯留と空胞化を反映します。なお、動物モデルではNAA合成酵素(NAT8L)を同時に欠損させると病変が軽減することが報告されており、NAAの蓄積そのものが病態の中心であるとする考え方が支持されています。

カナバン病の症状

  • 筋緊張低下(フロッピーインファント): 乳児期早期に体がやわらかく、抱き上げたときの頭の保持が困難です。初期症状として最も気づかれやすいものの一つです。
  • 頸定の遅れ・発達の停滞: 首のすわり、寝返り、お座りなどの運動発達が遅れるか、獲得できません。いったん獲得した能力が失われる(退行する)こともあります。
  • 大頭症(頭囲拡大): 生後半年前後から頭囲が標準を超えて大きくなります。白質の浮腫・空胞化を反映する特徴的な所見です。
  • 痙性・筋固縮: 病初期の筋緊張低下に続いて、年齢とともに四肢の突っ張り(痙性)や反り返り(後弓反張様姿勢)が目立つようになります。関節拘縮につながります。
  • 視覚障害(視神経萎縮): 視線が合わない、追視しないといった症状がみられ、眼振を伴うこともあります。進行すると視神経萎縮により高度の視力障害をきたします。
  • てんかん発作: 乳児期後半以降に、全般発作や焦点発作などさまざまな型のけいれんが出現することがあります。抗てんかん薬による管理が必要になります。
  • 哺乳・嚥下障害: 吸啜・嚥下の協調が障害され、哺乳不良、むせ、体重増加不良がみられます。誤嚥性肺炎の原因にもなります。
  • 易刺激性・睡眠障害: 不機嫌、啼泣が続く、睡眠リズムが整わないといった症状があり、家族の負担の大きな要因になります。
  • 胃食道逆流: 筋緊張の異常や臥位の多い生活に伴って起こりやすく、嘔吐、不機嫌、誤嚥の原因になります。
  • 知的障害・言語発達の遅れ: 典型例では重度の精神運動発達遅滞を示します。軽症型では言語の遅れや軽度〜中等度の知的障害が主体のこともあります。

カナバン病の経過と合併症

典型的な乳児型では、生後2〜4か月頃までは大きな異常に気づかれないことが多いです。その後、筋緊張低下と頸定の遅れが明らかになり、生後半年前後から大頭症が目立ってきます。1歳前後以降は発達の停滞・退行が進み、筋緊張低下から痙性優位へと移行します。視神経萎縮による視覚障害、てんかん、嚥下障害が加わり、多くの子どもは座位保持や有意語の獲得に至りません。進行の速さには個人差があり、一定期間症状が比較的安定する時期もあります。一方、軽症型は発達の遅れが比較的軽く、歩行や会話を獲得する例も報告されています。白質病変も限局的で、経過が緩やかなことが特徴です。ただし症例数が少なく、長期予後の全体像はまだ十分にわかっていません。

主な合併症には次のようなものがあります。誤嚥性肺炎・呼吸器感染症(最も重要な生命予後規定因子)、胃食道逆流と栄養障害、難治性てんかん、関節拘縮・股関節脱臼・側弯、骨粗鬆症と骨折、便秘、睡眠時の上気道閉塞・中枢性低換気、体温調節障害などです。病状が進むと、気道分泌物の排出が困難になって喀痰吸引が必要になります。経管栄養、在宅酸素、場合によっては気管切開や人工呼吸管理など、いわゆる医療的ケアが必要となることがあります。

カナバン病の診断・診断基準

診断の出発点は、乳児期の筋緊張低下・発達遅滞に大頭症を伴う臨床像です。脳MRIで皮質下U線維を含むびまん性・対称性の白質病変を認めた場合に、本症を強く疑います。次に、尿の有機酸分析(GC-MS)でNAAの著明な増加を確認し、MRSでのNAAピーク上昇を参考にします。最終的にはASPA遺伝子の両アレル病的変異の同定によって確定します。ほとんどの白質疾患ではNAAが低下するため、「白質病変があるのにNAAが上昇している」という所見は本症の際立った特徴です。指定難病の申請では、厚生労働省研究班の診断基準(臨床症状・画像・生化学検査・遺伝学的検査の組み合わせ)に基づいて、専門医が臨床調査個人票を作成します。類似の大頭症性白質脳症(アレキサンダー病など)との鑑別が重要なため、小児神経専門医や先天代謝異常症の専門施設での評価が推奨されます。

  • 尿中有機酸分析(GC-MS): 尿中NAAが正常の数十倍以上に著明に増加し、最も感度の高いスクリーニング・診断検査です。軽症型では上昇が軽度のことがあります。
  • 脳MRI: T2強調画像・FLAIRで、皮質下U線維を早期から含むびまん性・対称性の白質高信号を示します。淡蒼球や視床、小脳白質も侵されやすく、尾状核・被殻は比較的保たれる傾向があります。拡散強調画像で拡散制限を伴うことがあります。
  • MRスペクトロスコピー(MRS): NAAピークの著明な上昇(NAA/クレアチン比の増加)を示し、非侵襲的に本症を強く示唆する所見です。他の多くの白質脳症ではNAAが低下するため、鑑別に有用です。
  • ASPA遺伝子解析: 両アレルに病的変異を同定することで確定診断となります。家系内の保因者診断や将来の出生前・着床前診断の前提にもなります。
  • 血漿・髄液NAA測定: NAAの上昇を認めますが、測定できる施設は限られ、尿検査の補助的な位置づけです。
  • アスパルトアシラーゼ酵素活性: 培養皮膚線維芽細胞で活性低下を確認できますが、正常者との重なりや手技上の制約があり、現在は遺伝子解析が主流です。
  • 頭囲・発達評価、眼科診察: 頭囲曲線による大頭症の確認、発達検査、眼底検査による視神経萎縮の評価は、診断の補助と経過観察に欠かせません。
  • 脳波: てんかん性異常や背景活動の徐波化を評価します。発作の有無と治療方針の判断に用います。

カナバン病と鑑別すべき疾患

  • アレキサンダー病: 同じく大頭症を伴う乳児期発症の白質脳症ですが、前頭部優位の白質病変、脳室周囲の縁取り、造影増強がみられ、尿中NAAの増加はなく、GFAP遺伝子変異で確定します。
  • 皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症(MLC): 大頭症とびまん性白質病変を示しますが、側頭葉前部などの皮質下嚢胞が特徴で、臨床経過が緩徐であり、NAAは上昇しません。
  • GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病など): 乳児期の退行・大頭症・聴覚過敏を示しますが、眼底の桜実紅斑やヘキソサミニダーゼ活性低下で鑑別します。
  • グルタル酸血症1型: 大頭症と発達異常を示しますが、前頭側頭部のくも膜下腔拡大、急性脳症後の線条体病変、尿中グルタル酸・3-ヒドロキシグルタル酸の上昇で区別します。
  • クラッベ病・異染性白質ジストロフィー: 乳児期の退行と白質病変を示しますが、通常大頭症はなく、末梢神経障害、髄液蛋白上昇、各酵素活性の低下で鑑別します。
  • ペリツェウス・メルツバッハー病などの先天性大脳白質形成不全症: 眼振を伴う髄鞘形成不全ですが、MRIは海綿状変性ではなく低髄鞘化パターンを示し、NAAの増加はありません。

カナバン病の治療

現時点でカナバン病を根本的に治す治療法、あるいは進行を確実に止める治療法は確立していません。治療の基本は症状と合併症に対する対症療法と、苦痛の軽減・生活の質の維持を目標とした包括的ケアです。主に担う職種は、小児神経科医、小児科医、リハビリテーション科医、整形外科医、眼科医、栄養士、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、訪問看護師、医療ソーシャルワーカーなどです。病状の進行に伴い、栄養経路や呼吸サポートの選択など、家族が重い意思決定に向き合う場面が生じます。そのため、早い段階から主治医と目標を共有し、緩和ケアの視点も取り入れたアドバンス・ケア・プランニングを行うことが大切です。海外では遺伝子治療などの臨床研究が進んでいますが、いずれも研究段階であり、国内で承認された疾患特異的治療はありません。個々の治療の適否は必ず主治医・専門医と相談してください。

  • 抗てんかん薬による発作管理: 発作型や脳波所見に応じて抗てんかん薬を選択・調整します。発作の頻度を減らし、重積を防ぐことが目標です。発作時の対応(頓用薬の使い方)も家族と共有します。
  • 栄養管理・経管栄養・胃瘻: 嚥下評価に基づいて食形態を調整します。誤嚥や体重増加不良が問題となる場合は経鼻胃管や胃瘻による栄養を検討し、胃食道逆流が強い場合には噴門形成術を併せて考慮することがあります。
  • 胃食道逆流・便秘の治療: 酸分泌抑制薬、体位の工夫、緩下薬などで、不快感や誤嚥のリスクを軽減します。
  • 痙性・筋緊張の管理: 筋弛緩薬の内服、ボツリヌス毒素療法、ポジショニングや装具を組み合わせ、痛みや拘縮を予防します。適応や効果は個別に評価します。
  • リハビリテーション(PT/OT/ST): 関節可動域の維持、姿勢保持、座位保持装置や車椅子の調整、摂食嚥下訓練、コミュニケーション支援を行い、快適な生活を支えます。
  • 呼吸ケア: 排痰補助、吸引、体位ドレナージ、感染予防のための予防接種を行います。必要に応じて在宅酸素や非侵襲的換気を導入し、病状によっては気管切開を検討します。
  • 整形外科的管理: 股関節脱臼や側弯の定期評価を行います。骨粗鬆症・骨折予防として、栄養・ビタミンD・荷重の工夫などを行います。
  • 睡眠・易刺激性への対応: 生活リズムの調整を基本とし、必要に応じて薬物療法を検討します。本人の苦痛と家族の睡眠不足の双方に配慮します。
  • 研究段階の治療: 海外ではAAVベクターによるASPA遺伝子補充療法の臨床試験が行われています。過去には酢酸補充(三酢酸グリセロール等)やリチウムによるNAA低下を狙った試みも報告されています。いずれも有効性・安全性は確立しておらず、標準治療ではありません。

カナバン病の予後・長期フォロー

典型的な乳児型の予後は不良で、重度の神経障害が進行します。かつては多くが乳幼児期〜10歳前後までに亡くなるとされていました。現在は栄養・呼吸管理の進歩により、10代あるいはそれ以降まで生存する例も報告されています。主な死因は誤嚥性肺炎などの呼吸器合併症です。軽症型は生命予後が比較的良好で、学童期以降も生活を送る例があります。ただし報告数が限られるため、個々の予後を一律に述べることはできません。いずれの病型でも、苦痛の少ない日常、家族との時間、子どもらしい体験を大切にするという視点で、生活の質を支えることが医療の重要な目標です。

長期フォローアップでは、成長(体重・頭囲)と栄養状態、てんかんのコントロール、嚥下機能と誤嚥の有無、呼吸状態(睡眠時を含む)、側弯・股関節、骨密度、視覚・聴覚、歯科口腔ケアを定期的に評価します。病状の変化に応じて医療的ケアの内容を見直し、在宅医療・訪問看護・訪問リハビリテーション・レスパイト施設と連携します。そのうえで、急変時の対応や延命処置の希望についても、家族の気持ちの変化に合わせて繰り返し話し合っていくことが勧められます。

カナバン病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、誤嚥と感染の予防が最も重要です。食事の姿勢、とろみの調整、食後しばらく上体を起こしておくこと、口腔ケアを習慣にしてください。また、主治医と相談のうえ定期予防接種やインフルエンザワクチンなどを接種しましょう。体位変換やクッションを使ったポジショニングは、褥瘡・拘縮・呼吸状態の悪化予防に役立ちます。体温調節が苦手なことがあるため、室温や衣服をこまめに調整します。発作時の対応手順(時間の計測、頓用薬、救急要請の基準)を家族や支援者で共有しておくと安心です。遺伝面では、両親が保因者である場合、次の妊娠でも25%の確率で同じ病気の子が生まれます。また、きょうだいや血縁者が保因者である可能性もあります。家族の病的変異が判明していれば、出生前診断や着床前遺伝学的検査が技術的に可能な場合がありますが、その選択には医学的・倫理的・制度的な検討が必要です。臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受け、十分な情報のもとで家族が判断できるよう支援を受けてください。きょうだい児の心のケアにも配慮が必要です。

利用できる制度・相談窓口

カナバン病は指定難病(告示番号307)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、都道府県・指定都市に申請することで難病医療費助成制度により医療費の自己負担が軽減されます(指定医による臨床調査個人票が必要)。18歳未満(継続の場合は20歳未満)の小児では小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があるため、対象疾病名や申請先を主治医や自治体窓口で確認してください。両制度の併用はできないため、どちらを利用するかは窓口で相談します。このほか、次のような支援を利用できる可能性があります。障害の状態に応じた身体障害者手帳・療育手帳の取得。特別児童扶養手当・障害児福祉手当(20歳以上では特別障害者手当、障害基礎年金)。障害者総合支援法・児童福祉法に基づく補装具・日常生活用具の給付、居宅介護、短期入所(レスパイト)、児童発達支援・放課後等デイサービス、訪問看護。いずれも所得制限や障害程度などの要件があります。相談窓口としては、病院の医療ソーシャルワーカー、市区町村の障害福祉・子育て支援担当課、保健所、都道府県の難病相談支援センター、医療的ケア児支援センター、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の相談員などがあります。また、難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センターのウェブサイトで最新の制度情報を確認できます。

カナバン病に伴う心のケア・心理社会的支援

乳児期に進行性の難病と診断されることは、家族にとって非常に大きな衝撃です。「もっと早く気づけたのでは」という自責感、遺伝性疾患であることへの罪悪感、将来への不安、期待していた子育てを失う喪失感(予期悲嘆)が生じることは自然な反応です。ただし、長く続く場合には抑うつ、不安障害、適応障害に至ることもあります。昼夜を問わないケア、発作や誤嚥への緊張、睡眠不足は、心身の疲弊を招きます。夫婦間の意見の違い、きょうだい児への関わりの不足、仕事との両立も心理社会的な負担になります。本症は国内では非常にまれなため、同じ病気の家族と出会いにくく、孤立感を抱きやすいことも特有の課題です。気持ちを一人で抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、公認心理師・臨床心理士に相談してください。レスパイトを利用して休息を取ることは「子どもを見捨てる」ことではなく、ケアを続けるために必要なことです。白質ジストロフィーや医療的ケア児の家族会、ピアサポートにつながることも助けになります。死別の後も、グリーフケアを受けられる場があります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

カナバン病の受診の目安

  • 乳児で首のすわりが遅い、体がやわらかい、頭囲が急に大きくなるなどに気づいたら、小児科を受診してください。
  • けいれんが5分以上続く、意識が戻らないまま繰り返す、呼吸が弱い・顔色が悪い場合は、ためらわず救急車を要請してください。
  • 発熱に加えて呼吸が速い、ゼーゼーする、痰が増えて酸素飽和度が下がる場合は、誤嚥性肺炎の可能性があるため早めに受診してください。
  • 哺乳量や経管栄養が入らない、嘔吐を繰り返す、尿量が減って脱水が疑われる場合は、当日中に主治医へ連絡してください。
  • 発作の回数や型が変わった、急に眠ってばかりいる、反応が乏しくなったなど、普段と明らかに違う様子がある場合は受診してください。
  • 強い不機嫌や痛がる様子が続く場合は、骨折、股関節脱臼、胃食道逆流などの可能性があるため相談してください。

カナバン病についてのよくある質問

Q. カナバン病は治りますか?

A. 現時点で根本的に治す治療法は確立していません。けいれん、栄養、呼吸、筋緊張などの症状に対する治療とリハビリテーションで、苦痛を減らし生活の質を保つことが中心になります。海外では遺伝子治療の臨床研究が進められていますが、まだ研究段階です。

Q. 両親とも健康なのに、なぜ子どもが発症したのですか?

A. カナバン病は常染色体潜性遺伝で、両親はそれぞれ変異を一つずつもつ保因者であることがほとんどです。保因者は通常症状がなく、自分では気づくことができません。誰の責任でもなく、偶然に両親から変異を受け継いだ結果です。

Q. 次の子どもも同じ病気になりますか?

A. 両親が保因者の場合、妊娠ごとに25%の確率で発症します。お子さんの遺伝子変異がわかっていれば、出生前診断などの選択肢について情報を得ることができます。まずは遺伝カウンセリングを受けて、十分に話し合うことをお勧めします。

Q. 医療費の助成は受けられますか?

A. カナバン病は指定難病のため、基準を満たせば難病医療費助成の対象になります。お子さんの場合は小児慢性特定疾病の制度が利用できることもあります。手帳や手当、福祉サービスも含めて、医療ソーシャルワーカーや自治体窓口に相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。