進行性白質脳症

Progressive Leukoencephalopathy

進行性白質脳症(Progressive Leukoencephalopathy)|進行性白質脳症は、脳の神経線維の通り道である大脳白質が遺伝的な原因で徐々に障害される病気の総称です。主に乳幼児期から小児期に発症しますが、思春期や成人で発症する例もあります。歩行のふらつき、手足のつっぱり、てんかん発作などが現れ、発熱や頭部の打撲をきっかけに急に悪化することがあるため、生活全体での配慮が必要になります。

進行性白質脳症の要点

進行性白質脳症は、大脳白質が遺伝的な原因で徐々に障害される病気の総称で、白質消失病や皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症が代表です。主に乳幼児期から小児期に発症し、歩行のふらつきや手足のつっぱり、てんかん発作などがみられ、日本の指定難病(告示番号308)に指定されています。

別名・略称白質消失病、VWM、CACH、皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症、MLC、卵巣機能障害を伴う進行性白質脳症
分野神経・筋疾患
原因・遺伝形式単一遺伝子の変異による遺伝性疾患(病型により遺伝形式が異なる)
好発年齢主に乳幼児期〜小児期(思春期・成人発症もある)
主な症状歩行のふらつき、手足のつっぱり、てんかん発作
主な検査頭部MRI、遺伝子検査
主な治療根本的な治療法はなく、対症療法とリハビリが中心。発熱や頭部打撲への注意が必要
受診する主な診療科小児神経科、神経内科

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進行性白質脳症とは

進行性白質脳症は、日本の指定難病(告示番号308)として定められた疾患群で、白質消失病(vanishing white matter disease:VWM)と皮質下嚢胞をもつ大頭型白質脳症(megalencephalic leukoencephalopathy with subcortical cysts:MLC)が代表です。白質消失病のうち、女性で卵巣機能不全を伴う病型は「卵巣機能障害を伴う進行性白質脳症(ovarioleukodystrophy)」と呼ばれます。いずれもミエリン(髄鞘)を作る細胞そのものの先天的な異常ではなく、ミエリンを支えるアストロサイト(星状膠細胞)の機能異常が中心にあると考えられており、「アストロサイトパチー」とも呼ばれる白質脳症です。なお、「免疫系の過剰反応」が主な原因と説明されることがありますが、これは誤りです。本疾患は基本的に単一遺伝子の変異による遺伝性疾患です。また、名称が似ている進行性多巣性白質脳症(PML)はJCウイルス感染による別の病気で、本疾患とは無関係です。

白質脳症は1990年代以降のMRIの普及により、画像パターンで分類されるようになりました。白質消失病は、オランダのvan der Knaapらや米国のSchiffmannらによって1990年代に報告されました。当初は「中枢神経系の低髄鞘化を伴う小児期失調症(CACH)」などとも呼ばれ、のちに翻訳開始因子eIF2Bの遺伝子異常が原因と分かりました。MLCは1995年にvan der Knaapらが報告し、頭囲が大きい割に症状の進行が緩やかであることが特徴です。原因遺伝子によって、MLC1型(古典型)とGLIALCAM(HEPACAM)関連型に分けられます。GLIALCAM関連型には、劣性遺伝で古典型と同様に経過する型と、優性遺伝で乳児期の画像異常が年齢とともに改善しうる型(いわゆる改善型)があります。白質消失病は発症年齢で重症度が大きく異なり、胎児期・新生児期発症型、乳児期・小児期発症型、思春期・成人発症型の連続したスペクトラムとして理解されています。

進行性白質脳症の疫学・患者数

いずれの病型もきわめてまれで、日本国内の患者数は数十人から多くても百人程度と推定されます。ただし、成人発症例や軽症例が見逃されている可能性があるため、正確な数は分かっていません。海外では、白質消失病は小児の遺伝性白質脳症のなかで比較的頻度の高いものの一つとされます。MLCは、インドの特定の集団や、近親婚の多い地域で集積が報告されています。白質消失病は乳幼児期の発症が最も多いものの、成人期、特に女性で認知機能低下や精神症状、卵巣機能不全として見つかる例もあります。MLCは生後1年以内の頭囲拡大で気づかれることが多い疾患です。遺伝形式が常染色体性のため、明らかな性差はないとされますが、卵巣機能障害は当然女性にのみみられます。

進行性白質脳症の原因・病態生理

白質消失病は常染色体潜性(劣性)遺伝で、翻訳開始因子eIF2Bを構成する5つのサブユニットの遺伝子(EIF2B1〜EIF2B5)のいずれかに、両親から受け継いだ変異をもつことで発症します。このうちEIF2B5の変異が最も多いとされます。eIF2Bは、細胞が蛋白質を作り始める際に必要なeIF2を活性化する酵素です。細胞がストレスを受けたときに蛋白合成を一時的に抑える「統合的ストレス応答(ISR)」の調節にも関わっています。MLCは、アストロサイトの足突起(血管や脳脊髄液との境界面)に多く存在するMLC1蛋白の遺伝子変異(常染色体潜性)、あるいはその結合相手であるGlialCAMの遺伝子(GLIALCAM、別名HEPACAM)の変異で起こります。GLIALCAMの変異は、潜性遺伝の場合と顕性(優性)遺伝の場合があります。MLC1、GlialCAM、クロライドチャネルClC-2などは複合体を作り、アストロサイトの細胞容積の調節やイオン・水の恒常性維持に関わると考えられています。

白質消失病では、eIF2Bの活性低下によってアストロサイトとオリゴデンドロサイトのストレス応答が持続的・過剰に働きます。その結果、アストロサイトの成熟障害や形態異常が起こり、白質を維持する機能が損なわれると考えられています。病理では、白質が軟らかく崩れて嚢胞状に「消失」し、泡沫状のオリゴデンドロサイトの増加と、反応性アストログリオーシスが乏しいことが特徴とされます。発熱、軽い頭部外傷、強い恐怖体験などのストレスで急激に悪化するのは、すでに不安定なストレス応答系がさらに負荷を受けるためと説明されています。卵巣機能不全も、同じ分子機序が卵巣でも働くためと考えられています。MLCでは、アストロサイトが周囲の浸透圧変化に応じて容積を調整する機能(調節性容積減少)が障害されます。その結果、髄鞘の外層に液体がたまって空胞化し、白質が腫れて大頭症になると考えられています。MLCで脱髄そのものは比較的軽く、軸索も長く保たれるため、画像所見の派手さに比べて症状がゆっくり進む理由と考えられます。

進行性白質脳症の症状

  • 小脳性運動失調: 歩行時のふらつきや手の震え、バランスの悪さが目立ち、白質消失病とMLCの双方で中心となる症状です。転びやすさから気づかれることが多くあります。
  • 痙性(手足のつっぱり): 錐体路が障害されるため、下肢を中心に筋緊張が高まり、反射の亢進や尖足歩行がみられます。進行すると歩行が困難になります。
  • ストレス誘発性の急性増悪: 白質消失病の特徴で、発熱を伴う感染症、軽い頭部打撲、強い驚きなどの後に、意識障害、急な運動機能低下、けいれんが起こることがあります。完全には回復しないことが多いとされます。
  • 大頭症: MLCでは生後1年以内に頭囲が急速に大きくなり、その後は拡大の速度が落ちて大きいまま推移するのが典型です。
  • てんかん発作: 焦点発作や全般発作がみられ、MLCでは比較的多く、白質消失病では急性増悪時に起こりやすいとされます。
  • 運動発達の遅れ・退行: 乳幼児期発症例では、獲得していた歩行や座位が失われることがあり、発症が早いほど進行が速い傾向があります。
  • 認知機能・知的機能の障害: MLCでは運動症状に比べて知的機能が比較的保たれる例が多く、白質消失病では病期の進行とともに低下することがあります。成人例では遂行機能の障害や記憶障害で気づかれることがあります。
  • 精神症状・行動変化: 成人発症の白質消失病では、抑うつ、情緒不安定、性格変化などの精神症状が初発症状となることがあります。
  • 構音障害・嚥下障害: 病気の進行により話しにくさやむせ込みが生じ、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
  • 視神経萎縮・視力障害: 白質消失病では視神経萎縮が報告されており、視力低下として現れることがあります。
  • 卵巣機能不全: 女性の白質消失病患者では、無月経や思春期発来の遅れなど原発性または早発性の卵巣機能不全を伴うことがあります。神経症状に先行する場合もあります。

進行性白質脳症の経過と合併症

白質消失病は、比較的安定した時期と、感染や外傷を契機とした急性増悪とを繰り返しながら、階段状に悪化していくのが典型です。安定期にも緩やかな悪化が続くとされます。胎児期から乳児早期に発症する重症型では、数か月から数年で生命に関わることがあります。これに対して、小児期発症型では数年から十数年の経過をとります。思春期・成人発症型では進行がよりゆっくりで、長期間自立した生活を送る例もあります。MLC1型・潜性GLIALCAM型では、乳児期の大頭症に続いて歩行開始の遅れや軽い失調がみられます。多くの場合、歩行は一度獲得されますが、10代から20代以降にゆっくりと失調・痙性が進み、車椅子が必要になる例も少なくありません。進行速度は個人差が大きいことが知られています。顕性GLIALCAM型(改善型)では、乳児期の大頭症や画像異常が年齢とともに改善し、神経学的にも正常または軽症で経過することがあります。

主な合併症には、てんかん発作の重積、嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎・低栄養、痙性に伴う関節拘縮・股関節脱臼・側弯症、転倒による骨折や頭部外傷があります。頭部外傷は、白質消失病でもMLCでも症状悪化の契機になりうるため特に注意が必要です。長期臥床に伴う褥瘡や呼吸器感染症、膀胱直腸障害、睡眠障害もみられます。白質消失病の女性では卵巣機能不全によるエストロゲン欠乏が続くため、骨粗鬆症などへの配慮も重要です。精神症状や認知機能低下は、就学・就労・家族関係にも影響します。

進行性白質脳症の診断・診断基準

診断は、①臨床症状(運動失調、痙性、大頭症、発熱などで誘発される増悪の有無、卵巣機能不全など)、②頭部MRIの特徴的パターン、③遺伝子検査による病的バリアントの確認、の3つを組み合わせて行います。白質脳症の診断では、まず頭部MRIで白質病変の分布や性状(びまん性か、前頭部優位か、嚢胞を伴うか、FLAIRで脳脊髄液に近い低信号を示すか)を評価して病型を絞り込み、そのうえで候補遺伝子の解析や、複数の白質脳症関連遺伝子をまとめて調べるパネル解析・網羅的解析を行う流れが一般的です。副腎白質ジストロフィーやライソゾーム病など、治療法が存在する代謝性白質脳症を血液・尿検査で除外することも重要です。指定難病の申請では、所定の診断基準に沿って専門医が臨床調査個人票を作成し、重症度分類(神経疾患で用いられる機能評価尺度など)により助成の対象となるかが判定されます。

  • 頭部MRI(白質消失病の所見): T2強調像で大脳白質がびまん性に高信号を示し、FLAIR像では病変部が脳脊髄液と同程度の低信号となります。これは白質が嚢胞状に崩れて液体に置き換わることを反映しています。残存組織が放射状の線状構造として見えることも特徴です。
  • 頭部MRI(MLCの所見): 大脳白質がびまん性に腫大して異常信号を示し、前側頭葉や前頭頭頂部の皮質下に嚢胞がみられるのが特徴です。脳の腫れが目立つ割に症状が軽いことが多くあります。
  • MRスペクトロスコピー(MRS): 白質消失病では、病変部の代謝物信号が全般に低下し、脳脊髄液に近いパターンを示すことがあります。病変の質的評価の補助として用いられます。
  • 遺伝子検査: 白質消失病ではEIF2B1〜EIF2B5、MLCではMLC1・GLIALCAM(HEPACAM)の病的バリアントを確認し、確定診断とします。潜性遺伝の場合は、2つのアレルの両方に変異があることを確認します。
  • 頭囲測定・発達評価: MLCでは頭囲曲線の経時的な評価が重要です。発達・運動機能の評価は、病期の把握や支援計画の基盤になります。
  • 脳波検査: てんかん性異常の有無を評価し、抗てんかん薬の選択や効果判定に用います。急性増悪時の意識障害の評価にも有用です。
  • 卵巣機能検査: 女性の白質消失病患者では、FSH・LH高値、エストラジオール低値などで卵巣機能不全を評価します。原因不明の早発卵巣不全と白質病変がある場合に、診断の手がかりとなることがあります。
  • 代謝性白質脳症の除外検査: 極長鎖脂肪酸(副腎白質ジストロフィー)、ライソゾーム酵素活性(異染性白質ジストロフィー、クラッベ病など)、尿中有機酸(カナバン病のN-アセチルアスパラギン酸)などを測定し、他の白質脳症を除外します。
  • 脳脊髄液検査: 細胞数や蛋白は通常大きな異常を示しません。炎症性・感染性疾患の除外に役立ち、白質消失病では脳脊髄液中のある種の糖蛋白の低下が報告されていますが、一般診療で用いられる検査ではありません。

進行性白質脳症と鑑別すべき疾患

  • アレキサンダー病: 大頭症と白質病変を示しますが、前頭部優位の白質異常や脳室周囲の縁取り、脳幹病変、造影効果がみられ、GFAP遺伝子変異で確定します。
  • カナバン病: 大頭症と白質病変を示しますが、皮質下U線維が早期から障害され、尿中N-アセチルアスパラギン酸が著明に増加します(ASPA遺伝子)。
  • 副腎白質ジストロフィー: 後頭頂葉優位の白質病変と造影効果を示し、血中極長鎖脂肪酸の上昇で鑑別します。早期であれば造血幹細胞移植などの治療選択肢があるため、見逃さないことが重要です。
  • ライソゾーム病(異染性白質ジストロフィー・クラッベ病など): 対称性白質病変を示しますが、酵素活性の低下や末梢神経障害の合併で区別します。
  • 先天性大脳白質形成不全症(ペリツェウス・メルツバッハー病など): 乳児期からの眼振や髄鞘化の欠如が主体で、白質の嚢胞化や脳の腫大はみられません。
  • 進行性多巣性白質脳症・多発性硬化症: 免疫不全を背景とするJCウイルス感染、あるいは自己免疫性脱髄による多巣性・非対称性病変で、遺伝性のびまん性対称性病変とは画像分布と背景疾患が異なります。

進行性白質脳症の治療

現時点で、進行性白質脳症の原因そのものを治す治療法は確立していません。治療の柱は、①症状を悪化させる誘因を避ける予防的管理、②てんかん・痙性・嚥下障害などへの対症療法、③リハビリテーションと生活支援による機能・QOLの維持、です。特に白質消失病では、発熱や頭部外傷による急性増悪が長期的な機能低下に直結するため、感染予防と速やかな解熱が重要です。転倒・頭部打撲の防止も、白質消失病・MLCに共通する大切な対策です。小児神経科・脳神経内科を中心に、リハビリテーション科、整形外科、婦人科・内分泌科、栄養・摂食嚥下チーム、医療ソーシャルワーカーなどが連携する多職種診療が望まれます。具体的な治療内容は、病型や病期、年齢によって異なるため、主治医・専門医とよく相談して決めてください。

  • 増悪誘因の予防(感染・外傷・ストレス対策): 手洗いなどの感染予防、主治医と相談したうえでの予防接種、発熱時の早めの解熱、転倒・頭部打撲の防止(必要に応じた保護帽の使用など)が基本です。白質消失病では、全身麻酔や手術の際にも事前に医療者と情報を共有しておくことが望ましいとされます。
  • 抗てんかん薬: 発作型に応じて抗てんかん薬を選択します。けいれん重積に備え、救急時の対応手順を主治医と事前に決めておくことが推奨されます。
  • 痙縮治療: 内服の抗痙縮薬、ボツリヌス毒素の局所注射、装具療法などで筋緊張を和らげ、拘縮や疼痛を予防します。適応は個別に判断されます。
  • リハビリテーション: 理学療法・作業療法・言語聴覚療法で、関節可動域の維持、姿勢管理、移動手段の確保、コミュニケーション支援を行います。歩行器や車椅子などの福祉用具の導入も含まれます。
  • 摂食嚥下・栄養管理: 嚥下評価に基づいて食形態を調整し、誤嚥や低栄養が問題になる場合には経管栄養や胃瘻を検討します。
  • 整形外科的管理: 側弯症、股関節脱臼、足部変形に対して、装具や必要に応じた手術を検討します。骨密度の評価も行います。
  • 卵巣機能不全へのホルモン補充: 女性の白質消失病患者では、婦人科・内分泌科と連携し、二次性徴の誘導や骨の健康維持を目的としたホルモン補充療法を検討します。
  • 精神症状・認知機能障害への対応: 成人例の抑うつや行動変化には、精神科と連携して薬物療法や心理社会的支援を行います。
  • 研究段階の治療: 白質消失病では、統合的ストレス応答を調節する薬剤が動物実験で有望な結果を示し、一部は臨床試験が行われていると報告されています。ただし、有効性はまだ確立していません。最新の情報は専門医に確認してください。

進行性白質脳症の予後・長期フォロー

予後は病型と発症年齢によって大きく異なります。白質消失病では、発症が早いほど進行が速く重症となる傾向が明確です。胎児期・新生児期発症例の予後は厳しい一方、成人発症例では長年にわたり比較的保たれた機能で生活できる場合もあります。急性増悪をどれだけ予防できるかが、長期の機能維持に影響すると考えられています。MLC1型・潜性GLIALCAM型では、運動機能はゆっくり低下しますが、知的機能が比較的保たれることが多く、成人期まで生存する例が一般的です。顕性GLIALCAM型(改善型)は良好な経過をとることがあります。終末期には嚥下障害や呼吸器感染症が生命予後に関わるため、栄養・呼吸管理と、本人・家族の意向を尊重した意思決定支援が重要です。

長期フォローアップでは、定期的な神経学的診察、運動機能・認知機能の評価、てんかんのコントロール、嚥下・栄養状態、側弯や関節拘縮のチェックを行います。必要に応じて頭部MRIで経過を確認します。白質消失病の女性では、卵巣機能と骨密度の評価を継続します。小児期に発症した患者さんでは、成人診療科への移行期医療を計画的に進めることが大切です。新たな治療法の臨床研究の情報を得るためにも、専門施設とのつながりを保つことが勧められます。

進行性白質脳症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、まず感染症と頭部外傷を避ける工夫が大切です。家族を含めた手洗いや流行期の人混み回避、発熱時の早めの受診と解熱、転倒しにくい住環境(段差解消、手すり、床材の工夫)、必要に応じた保護帽や車椅子の利用などが勧められます。激しい接触スポーツは主治医と相談のうえで判断してください。白質消失病では、強い驚きや心理的ストレスも増悪の契機となりうると報告されているため、生活のリズムを整えることも重要です。学校や職場には病気の特性を伝え、発熱時や転倒時の対応を共有しておくと安心です。救急受診時に役立つよう、病名、主治医の連絡先、注意点をまとめたカードを携帯するのもよい方法です。本疾患は多くが常染色体潜性遺伝のため、両親が保因者である場合、きょうだいが発症する確率は理論上1/4です。顕性遺伝の病型では、子に伝わる確率が1/2となります。次子の計画、血縁者の検査、出生前診断などについては、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受け、十分な情報をもとに考えることをお勧めします。

利用できる制度・相談窓口

進行性白質脳症は指定難病(告示番号308)です。診断基準を満たし、重症度分類で一定以上と判定された場合(または軽症でも医療費が高額となる場合)には、医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(多くは保健所)へ行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があるため、主治医や自治体に確認してください。障害の程度に応じて、身体障害者手帳(肢体不自由など)や療育手帳の取得、障害福祉サービス(居宅介護、短期入所、補装具・日常生活用具の給付など)の利用が可能です。児童であれば、特別児童扶養手当や障害児福祉手当などの手当、成人であれば障害基礎年金・障害厚生年金(20歳前に初診日がある場合の障害基礎年金を含む)の対象となりえます。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、移行期医療支援センターなどがあります。患者会や家族会の情報も、これらの窓口で得られることがあります。

進行性白質脳症に伴う心のケア・心理社会的支援

進行性で根本治療が確立していない病気と向き合うことは、本人・家族にとって大きな心理的負担になります。診断直後のショックや悲嘆、将来への不安、抑うつ、適応障害などが生じることは珍しくありません。本疾患に特有の課題としては、まず、発熱や軽い打撲で急に悪化するかもしれないという持続的な緊張感があり、家族が過度に警戒して疲弊したり、子どもの活動を制限しすぎたりしやすい点が挙げられます。また、MLCでは知的機能が比較的保たれる一方で運動機能が低下していくため、本人が自分の変化を自覚して苦しむことがあります。成人発症の白質消失病では、精神症状そのものが病気の一部として現れることもあり、性格の変化と誤解されやすい点にも注意が必要です。女性では、卵巣機能不全による妊孕性の問題が心理的な負担となる場合があります。さらに、遺伝性疾患であることから、親の自責感やきょうだいへの影響、家族内での情報共有の難しさも生じます。こうした気持ちは自然な反応であり、一人で抱え込まず、主治医、看護師、臨床心理士、精神科医、遺伝カウンセラー、患者・家族会などに早めに相談してください。きょうだい児への支援や、介護者のためのレスパイト(短期入所など)の活用も大切です。

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進行性白質脳症の受診の目安

  • 38℃以上の発熱が出た場合は、早めに主治医へ連絡し、解熱や感染症への対応を相談してください(白質消失病では特に重要です)。
  • けいれんが5分以上続く、または意識が戻らないうちに発作を繰り返す場合は、直ちに救急車を呼んでください。
  • 頭を打った後に、意識がぼんやりする、嘔吐を繰り返す、手足の動きが急に悪くなった場合は、すぐに救急受診してください。
  • 発熱や外傷の後に、歩けなくなる、座れなくなるなど急な機能低下がみられた場合は、速やかに受診してください。
  • 食事中のむせ込みが増えた、体重が減ってきた、発熱を伴う咳がある場合は、誤嚥性肺炎の可能性があるため受診してください。
  • 乳児の頭囲が急に大きくなる、ふらつきや発達の遅れが気になる場合は、小児科・小児神経科に相談してください。

進行性白質脳症についてのよくある質問

Q. 進行性多巣性白質脳症(PML)と同じ病気ですか?

A. いいえ、別の病気です。PMLは免疫力が低下した人にJCウイルスが感染して起こる病気ですが、進行性白質脳症は遺伝子の変異によって起こる遺伝性の白質脳症です。人から人へ感染することはありません。

Q. 風邪をひいたら悪化するのですか?

A. 白質消失病では、発熱を伴う感染症や軽い頭部外傷の後に、症状が急に悪化することが知られています。そのため、感染予防と早めの解熱、転倒防止が重要です。予防接種については、主治医とよく相談してください。

Q. 治す方法はありますか?

A. 現時点では根本的な治療法は確立しておらず、悪化の予防、てんかんや痙性への治療、リハビリテーションなどが中心です。白質消失病では、病気の仕組みに働きかける薬の研究が進められていますが、効果はまだ確立していません。最新情報は専門医に確認してください。

Q. 次に生まれる子どもも同じ病気になりますか?

A. 多くの病型は常染色体潜性遺伝で、両親がともに保因者の場合、子どもが発症する確率は理論上1/4です。病型によって遺伝形式が異なるため、遺伝カウンセリングで詳しく相談することをお勧めします。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。