ベスレムミオパチー

Bethlem Myopathy

ベスレムミオパチー(Bethlem Myopathy)|ベスレムミオパチーは、筋肉や腱などを支える細胞外基質の成分であるコラーゲンVIの遺伝子変異によって起こる遺伝性の筋疾患です。関節拘縮(関節が硬くなり伸びにくくなること)と、体幹に近い筋肉のゆっくり進行する筋力低下が主な特徴です。小児期から成人期まで幅広い年齢で症状が現れ、多くの方は長く歩行と日常生活を保てますが、中年以降に歩行補助具や呼吸ケアが必要になることがあります。

ベスレムミオパチーの要点

ベスレムミオパチーは、コラーゲンVI遺伝子(COL6A1・COL6A2・COL6A3)の変異で起こる遺伝性の筋疾患で、指定難病です。体幹に近い筋肉のゆっくり進行する筋力低下と手指・肘・足首などの関節拘縮が特徴で、小児期から成人期にかけて症状が現れます。

別名・略称ベスレム型ミオパチー、コラーゲンVI関連ミオパチー、COL6関連筋疾患、COL6-RD
分野神経・筋疾患
原因遺伝子COL6A1、COL6A2、COL6A3(コラーゲンVI)
遺伝形式多くは常染色体顕性(優性)遺伝
好発年齢小児期から成人期まで幅広い
主な症状近位筋・体幹筋の緩徐進行性の筋力低下、手指・肘・足首の関節拘縮、皮膚所見(毛孔性角化症、ケロイドなど)
主な検査遺伝学的検査、筋生検、血清CK、筋画像検査
主な治療根本治療はなく、リハビリテーション、拘縮対策、呼吸ケアなど対症的な管理

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ベスレムミオパチーとは

ベスレムミオパチーは、コラーゲンVIをつくる遺伝子(COL6A1、COL6A2、COL6A3)の病的変異によるコラーゲンVI関連ミオパチー(COL6関連筋疾患)のうち、比較的軽症の病型です。四肢近位筋と体幹筋のゆっくり進行する筋力低下に、手指の屈筋(指を曲げる筋肉)、肘、足関節(アキレス腱)などの関節拘縮が加わります。毛孔性角化症、ケロイドや萎縮性瘢痕といった皮膚所見がみられることもあり、筋肉だけでなく結合組織全体の病気という側面をもちます。なお、筋肉の強直(こわばり)という表現が筋強直症(ミオトニー)のような筋の弛緩障害を指すのであれば、本症の特徴ではありません。動きにくさの主な原因は、関節や腱の拘縮によるものです。また、顔面筋の筋力低下は通常目立ちません。

本症は1976年、オランダの神経内科医ベスレム(Bethlem)とファン・ワインハールデン(van Wijngaarden)が、常染色体顕性(優性)遺伝を示す良性ミオパチーの家系として報告しました。1990年代にコラーゲンVI遺伝子との関連が明らかになり、その後、重症型であるウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー(ウルリッヒ病)も同じ遺伝子群の異常で起こることがわかりました。現在では、重症のウルリッヒ病から軽症のベスレムミオパチーまでを連続した疾患スペクトラムとしてとらえ、その間に位置する中間型も知られています。また、COL12A1(コラーゲンXII)の変異でベスレムミオパチーに似た病像を示す例も報告されています。日本ではベスレムミオパチーは指定難病(告示番号31)に指定されており、ウルリッヒ病とは別の疾患として扱われています。

ベスレムミオパチーの疫学・患者数

非常にまれな疾患で、日本国内の正確な患者数は把握されていません。英国北部の調査では、ベスレムミオパチーの有病率は人口10万人あたり1人未満と報告されています。ただし軽症例は診断に至っていない可能性があり、実際の患者数はこれより多いと考えられています。性差は明らかではありません。発症年齢の幅は広く、新生児期の筋緊張低下、先天性斜頸、胎動の減少で気づかれる例もあります。幼児期の運動発達の遅れ(走るのが遅い、転びやすい)や、学童期以降の拘縮で気づかれることも多く、成人になって初めて筋力低下を自覚する例もあります。同じ家系の中でも重症度や発症年齢にかなりの差がみられるのが特徴です。

ベスレムミオパチーの原因・病態生理

コラーゲンVIは、α1・α2・α3の3本の鎖(それぞれCOL6A1、COL6A2、COL6A3遺伝子がコード)からなる細胞外基質タンパク質です。細胞内で単量体、二量体、四量体の順に組み上がった後、細胞外に分泌され、数珠状のミクロフィブリルを形成します。骨格筋では、主に筋線維そのものではなく筋内膜の間質線維芽細胞が産生します。コラーゲンVIは筋線維の基底膜のすぐ外側に分布し、基底膜(コラーゲンIV、パールカン等)と周囲の間質をつなぐ役割を担っています。ベスレムミオパチーの多くは常染色体顕性遺伝で、両親の一方から受け継いだ変異で発症しますが、新生(de novo)変異による孤発例もあります。また、両親から一つずつ変異を受け継ぐ常染色体潜性(劣性)遺伝の例も報告されています。顕性型の典型例は、三重らせん領域のN末端寄りにある「グリシン-X-Y」の繰り返しのうち、グリシンが別のアミノ酸に置き換わるミスセンス変異や、エクソンの読み飛ばし(スキッピング)を生じるスプライス変異です。

こうした変異をもつ鎖は、正常な鎖とともに組み上がって異常な四量体をつくり、ミクロフィブリル形成を妨げます(優性阻害効果)。それでも一定量の機能的なコラーゲンVIは残るため、ほぼ完全に欠損するウルリッヒ病の重症例よりも症状は軽くなります。コラーゲンVIが不足したり質的に異常になったりすると、筋線維と細胞外基質の機械的な結合が弱まり、筋線維が収縮や伸張のストレスを受けやすくなります。動物モデルや患者細胞の研究では、ミトコンドリア透過性遷移孔の異常な開口によるミトコンドリア機能障害、オートファジー(細胞内の不要物を分解・再利用するしくみ)の障害、アポトーシス(細胞死)の亢進が筋変性に関わることが示されています。腱や関節包などの結合組織でもコラーゲンVIは重要な構成成分であり、その異常が筋線維の変化とは別に拘縮の形成に関わると考えられています。皮膚の瘢痕形成異常も、真皮の細胞外基質の異常を反映しているとされます。

ベスレムミオパチーの症状

  • 近位筋優位の筋力低下: 大腿・殿部・肩周囲などの筋力が低下し、階段昇降、しゃがみ立ち、腕を上げる動作が難しくなります。屈筋より伸展筋が弱くなりやすい傾向があるとされます。
  • 手指屈筋の拘縮: 第2〜5指の長い屈筋が短縮し、手首を反らすと指が伸ばしきれなくなります。両手のひらを合わせて指を伸ばす「合掌位」が取りにくくなることが特徴的な所見です。
  • 肘関節の拘縮: 肘が完全に伸びなくなる屈曲拘縮が高い頻度でみられ、本症を疑う重要な手がかりになります。
  • 足関節(アキレス腱)の拘縮: アキレス腱が短縮してかかとが床につきにくくなり、つま先歩きや転倒の原因になります。幼児期から目立つこともあります。
  • その他の関節拘縮・脊柱の硬さ: 手関節、膝、肩、頸部・脊柱の可動域が制限されることがあります。年齢とともに拘縮が増えたり強くなったりする傾向があります。
  • 遠位関節の過伸展(関節弛緩): 特に小児期に、指などの関節が柔らかく反りすぎることがあり、拘縮と柔らかさが同じ人に共存することもあります。
  • 運動発達の遅れ・易疲労: 小児期には歩き始めの遅れ、走るのが遅い、転びやすいといった形で現れることがあります。成人では疲れやすさや持久力の低下として自覚されます。
  • 皮膚の所見: 上腕や大腿の毛孔性角化症、ケロイドや幅の広い萎縮性瘢痕、手のひらのビロード様の柔らかい皮膚がみられることがあります。
  • 呼吸機能の低下: ウルリッヒ病ほど頻度は高くありませんが、一部では横隔膜や呼吸筋の筋力低下により拘束性換気障害や夜間の低換気が生じます。多くは自覚症状に乏しいまま進みます。
  • 筋肉痛・関節周囲の痛み: 拘縮した関節や筋肉への負担から、運動後の痛みや慢性的な違和感を訴えることがあります。
  • 新生児期の症状: 一部の例では、出生前の胎動減少、新生児期の筋緊張低下、先天性斜頸、先天性の関節拘縮がみられます。

ベスレムミオパチーの経過と合併症

経過は一般にゆっくりで、数十年単位で進みます。小児期には筋力低下が軽く、拘縮の方が目立つことが多いとされます。一時的に症状が落ち着いたように見える時期を経て、成人期以降に筋力低下がゆるやかに進み、40〜50歳代以降に屋外移動で杖、歩行器、車いすなどが必要になる方が一定の割合でいると報告されています。ただし個人差が大きく、高齢まで自力歩行を保つ方も少なくありません。拘縮は成長期や活動量の低下に伴って悪化しやすいため、早い時期からストレッチなどで対策することが重要です。重症度はウルリッヒ病との中間型まで連続しており、幼少期から筋力低下が強い例では、より慎重な経過観察が必要です。

主な合併症は呼吸機能障害で、肺活量(%FVC)が少しずつ低下し、睡眠中の低換気から朝の頭痛、日中の眠気、繰り返す肺炎につながることがあります。進み方は筋力低下の程度と必ずしも比例しないため、歩けていても定期的な評価が必要です。一方、心筋症や伝導障害といった心臓の病気は通常みられないとされ、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィーなどとの鑑別点になります。そのほか、拘縮や筋力低下による転倒・骨折、側弯症、手術創のケロイドや傷の治りにくさ、活動量低下に伴う体重増加、慢性的な痛みが問題になることがあります。

ベスレムミオパチーの診断・診断基準

診断は、関節拘縮と近位筋優位の筋力低下という臨床像から本症を疑うところから始まります。特に肘、手指屈筋、アキレス腱の拘縮と、皮膚所見の有無を確認します。家族歴の聴取も重要です。血液検査や筋電図でほかの神経・筋疾患を除外し、筋MRI(またはCT)で特徴的な筋障害のパターンを確認します。必要に応じて筋生検や培養皮膚線維芽細胞でコラーゲンVIを評価し、最終的にはCOL6A1/COL6A2/COL6A3の遺伝子解析で確定します。指定難病の申請には、厚生労働省の診断基準に基づき、臨床症状、検査所見、遺伝学的検査、鑑別診断を総合して判定した臨床調査個人票が必要です。遺伝学的検査を行う際は、結果の意味や家族への影響について、事前に遺伝カウンセリングを受けることが望まれます。

  • 血清CK(クレアチンキナーゼ): 正常から軽度上昇(多くは正常上限の数倍以内)にとどまることが多く、著しい高値は他の筋ジストロフィーなどを示唆します。CKが正常でも本症は否定できません。
  • 筋電図・神経伝導検査: 筋原性変化(低振幅・短持続の運動単位電位など)を示すことが多いです。神経伝導は正常で、神経原性疾患の除外に役立ちます。
  • 骨格筋MRI: 大腿の外側広筋で筋の外周部が侵され中心部が保たれる「outside-in」パターンや、大腿直筋中央部の帯状の信号変化(central shadow)が特徴的とされます。下腿でもヒラメ筋・腓腹筋の周辺部に変化がみられることがあり、診断の手がかりとして重要です。
  • 筋生検(病理・免疫染色): 筋線維の大小不同など非特異的な筋原性変化を示し、壊死・再生は軽いことが多いです。ベスレムミオパチーではコラーゲンVIの染色が正常に近いこともあるため、基底膜マーカー(コラーゲンIVやパールカン)との二重染色で、筋鞘膜上のコラーゲンVIの減少を評価します。
  • 培養皮膚線維芽細胞の解析: 皮膚生検で得た線維芽細胞を培養し、コラーゲンVIの分泌やミクロフィブリル形成の異常を評価します。筋生検で異常がはっきりしない例で有用ですが、実施できる施設は限られます。
  • 遺伝学的検査: COL6A1・COL6A2・COL6A3の解析(遺伝子パネル検査などを含む)で病的変異を同定すれば確定診断となります。変異の意義が不明な場合は、家族の解析や機能解析を組み合わせて解釈します。
  • 呼吸機能検査: 努力性肺活量(座位・臥位)、咳の強さの指標である咳のピークフロー、必要に応じて夜間の酸素飽和度や二酸化炭素濃度を測り、呼吸筋の筋力低下を早めに把握します。
  • 心電図・心エコー: 本症では通常心臓病変はみられませんが、心合併症の多い鑑別疾患を除外するため、診断時に評価することが勧められます。
  • 指定難病の診断基準・重症度分類: 厚生労働省が定める診断基準により「確実」などの判定を行い、日常生活の障害の程度などを用いた重症度分類で医療費助成の対象かどうかを判断します。

ベスレムミオパチーと鑑別すべき疾患

  • ウルリッヒ病(ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー): 同じコラーゲンVI遺伝子の異常による重症型で、乳児期からの強い筋力低下、遠位関節の著しい弛緩、早期の歩行喪失や呼吸不全がみられる点で区別されます。
  • エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー: 肘・アキレス腱・頸部の拘縮が共通しますが、心伝導障害・不整脈・心筋症を高い頻度で伴う点と、原因遺伝子(EMD、LMNAなど)が異なる点で鑑別します。
  • 肢帯型筋ジストロフィー: 近位筋優位の筋力低下は共通しますが、早期からの拘縮は目立たないことが多く、CKが著しく高い病型が多い点や筋MRIのパターンで区別します。
  • 強直性脊椎(rigid spine)症候群などの先天性ミオパチー: SEPN1関連ミオパチーなどでも脊柱の硬さや拘縮がみられますが、早期からの呼吸障害の強さ、筋病理所見、遺伝子検査で区別します。
  • エーラス・ダンロス症候群(筋拘縮型・ミオパチー型を含む): 関節の過伸展や皮膚・瘢痕の異常が共通し、COL12A1関連疾患などと重なりますが、皮膚の過伸展性や血管・内臓の脆弱性などの全身所見と遺伝子検査で区別します。
  • ポンペ病(成人型糖原病II型)・炎症性筋疾患: 近位筋の筋力低下が共通しますが、ポンペ病は酸性α-グルコシダーゼ活性の低下と早期の横隔膜障害、多発性筋炎・皮膚筋炎は自己抗体や筋病理の炎症所見で鑑別します。

ベスレムミオパチーの治療

現在、ベスレムミオパチーの根本的な治療法(原因遺伝子の異常を治す治療)は確立していません。治療の中心は、拘縮の予防と改善、筋力と運動機能の維持、呼吸機能の監視と支援、そして生活の質(QOL)を高めるための多職種によるケアです。脳神経内科または小児神経科を中心に、リハビリテーション科、整形外科、呼吸器内科、皮膚科、遺伝診療部門などが連携して長く見守ることが望まれます。研究段階では、ミトコンドリア機能障害やオートファジー障害を標的とする薬剤、変異をもつ側の遺伝子だけの働きを抑える治療(アレル特異的サイレンシング)などが検討されています。いずれも一般診療として確立したものではなく、臨床試験への参加を含めて主治医・専門医とよく相談することが大切です。

  • ストレッチ・関節可動域訓練: 手指屈筋、肘、アキレス腱などを毎日ゆっくり伸ばし、拘縮の進行を抑えます。理学療法士・作業療法士の指導のもとで自宅プログラムを継続することが基本です。
  • 適度な運動療法: 水中運動や軽い有酸素運動、低負荷の筋力訓練は機能維持に役立つと考えられています。強い痛みや翌日まで残る疲労を生じるほどの過負荷は避け、主治医やセラピストと強度を調整します。
  • 装具療法: 夜間に足関節を固定する装具(ナイトスプリント)や手指・手関節のスプリントで、筋や腱の短縮を防ぎます。歩行時には短下肢装具などで安定性を補うことがあります。
  • 整形外科的治療: 保存療法で改善しない高度のアキレス腱拘縮などには、腱延長術が検討されることがあります。術後に再び拘縮が起こることや、ケロイド・瘢痕形成のリスクを含めて、慎重に適応を判断します。
  • 呼吸管理: 定期的な肺機能評価を行い、夜間低換気が明らかになれば非侵襲的陽圧換気(NPPV)を導入します。痰を出しにくい場合は、徒手的な咳介助や機械による咳介助を用いることがあります。
  • 感染予防: インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種を主治医と相談して受けることが勧められます。呼吸器感染は早めに治療します。
  • 作業療法・福祉用具: 手指拘縮に合わせた自助具、住宅改修、杖・歩行器・車いすの活用により、日常生活と社会参加を支えます。
  • 疼痛管理: 筋・関節の痛みには、物理療法、姿勢や動作の工夫、必要に応じて鎮痛薬を用います。慢性化した痛みは多職種で評価します。
  • 皮膚・創傷ケア: ケロイドや幅の広い瘢痕ができやすい傾向があるため、手術や外傷の際は事前に医療者へ伝え、必要に応じて皮膚科と連携します。

ベスレムミオパチーの予後・長期フォロー

生命予後は一般に良好で、多くの方が成人期を通じて就学、就労、家庭生活を営んでいます。一方で、筋力低下と拘縮はゆっくりと進むため、中年期以降に移動能力が低下し、一部の方は屋外で車いすを使うようになります。生命予後とQOLに最も影響するのは呼吸機能で、夜間低換気に気づかずにいると呼吸不全や重い肺炎につながるおそれがあります。適切な時期にNPPVなどを導入すれば、良好な経過が期待できます。心臓病変は通常みられないため、心臓が予後を左右することは少ないと考えられています。

長期フォローアップでは、筋力と運動機能の評価、関節可動域の測定、側弯の有無の確認を定期的に行います。肺活量の測定は少なくとも年1回程度を目安とし、低下傾向や症状があれば睡眠時の呼吸評価を追加します。成長期の小児は拘縮が進みやすいため、より頻回に診察することがあります。小児科から成人診療科への移行(トランジション)を計画的に進め、リハビリテーションの継続、装具の更新、就学・就労環境の調整を、ライフステージに合わせて見直していくことが大切です。全身麻酔を伴う手術の前には、呼吸機能や挿管時の開口・頸部可動域の制限について、麻酔科とあらかじめ情報を共有しておくと安全です。

ベスレムミオパチーの日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

毎日のストレッチを習慣にし、長時間同じ姿勢を続けないよう心がけましょう。転倒予防のため、段差の解消、手すりの設置、滑りにくい靴の選択などで住環境を整えます。体重が増えすぎると筋肉と関節への負担が増すため、バランスのよい食事と、無理のない範囲での活動を続けることが大切です。疲れは翌日に持ち越さない程度にとどめ、体調に合わせて活動量を調整します。風邪をひいたときに息苦しさや痰の出しにくさがあれば早めに受診してください。手術や歯科治療、出産の予定があるときは、病名と呼吸機能について関係する医療者に伝えましょう。妊娠・出産は多くの場合可能と考えられますが、呼吸機能や拘縮の程度に応じて産科・麻酔科と事前に計画を立てることが勧められます。遺伝については、常染色体顕性遺伝の場合、子どもが変異を受け継ぐ確率は一般に50%です。ただし同じ変異でも重症度には大きな幅があります。潜性遺伝や新生変異の場合は考え方が異なるため、家族の検査や将来の妊娠については、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを利用することが大切です。

利用できる制度・相談窓口

ベスレムミオパチーは指定難病の対象疾患です。診断基準を満たし、重症度分類で一定以上と判定された場合、または軽症でも医療費が高額な状態が続く場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、窓口はお住まいの都道府県・指定都市の保健所などです。18歳未満のお子さん(18歳到達時点で対象となっており、引き続き治療が必要な場合は20歳未満まで)は、小児慢性特定疾病の対象となることがあるため、主治医に確認してください。筋力低下や拘縮で日常生活に支障がある場合は、身体障害者手帳(肢体不自由・呼吸器機能障害)の対象となることがあり、補装具費の支給や障害福祉サービスを利用できます。障害の程度によっては障害年金を受給できる可能性もあります。介護保険サービスは65歳以上であれば原因を問わず利用できますが、40歳以上65歳未満の方は介護保険の特定疾病(16疾病)が原因の場合に限られます。本症はこの特定疾病に含まれていないため、この年代では主に障害福祉サービスなどを活用することになります。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、筋疾患の患者会などがあり、制度の利用方法や就労の相談に応じています。

ベスレムミオパチーに伴う心のケア・心理社会的支援

長い年月をかけてゆっくり進む病気と向き合うことは、本人と家族にとって大きな心理的負担になります。診断を受けた直後の戸惑いや不安、将来の歩行や仕事への心配、できていたことが少しずつ難しくなる喪失感から、抑うつや不安障害、適応障害が生じることがあります。ベスレムミオパチーは外見上わかりにくい軽症期が長いため、「疲れやすさ」や「動作の遅さ」を周囲に理解されにくく、学校や職場で孤立感を抱えやすいという特有の課題があります。また、遺伝性疾患であることから、子どもに病気を伝えることへの罪悪感、きょうだいや親族への説明、結婚や妊娠に関する悩みも生じやすいとされます。気分の落ち込みや眠れない日が2週間以上続く、何事にも興味がわかない、といった状態があれば、主治医に伝えたり、心療内科・精神科、公認心理師などの専門家に相談したりしてください。患者会や同じ病気をもつ人との交流も、孤立感をやわらげ、実際的な工夫を得る助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

ベスレムミオパチーの受診の目安

  • 朝起きたときの頭痛、日中の強い眠気、夜中に何度も目が覚めるなど、夜間低換気を疑う症状が出てきたときは、早めに主治医を受診してください。
  • 風邪の後に息苦しさが増す、痰がうまく出せない、発熱が続くときは、肺炎の可能性があるため速やかに受診してください。
  • 安静にしていても息が苦しい、唇や顔色が悪い、意識がもうろうとするときは、救急受診(119番通報)をためらわないでください。
  • 転倒して強い痛みや腫れがあり、体重をかけられないときは、骨折の可能性があるため受診してください。
  • 数か月の間に歩行や階段昇降が明らかに難しくなった、関節の拘縮が急に強くなったと感じるときは、予定より早く受診して評価を受けてください。
  • 気分の落ち込みが続く、眠れない、生活への意欲がわかない状態が長引くときも、相談を先延ばしにしないでください。

ベスレムミオパチーについてのよくある質問

Q. 筋ジストロフィーとは違う病気ですか?

A. ベスレムミオパチーは、コラーゲンVIの異常による筋疾患のうち軽症の病型で、広い意味では筋ジストロフィーの仲間として扱われることもあります。重症型のウルリッヒ病と同じ原因遺伝子群による連続した疾患群と考えられており、日本の指定難病制度ではそれぞれ別の疾患として扱われています。

Q. 運動はしてもよいのでしょうか?

A. 適度な運動やストレッチは、筋力と関節の柔らかさを保つうえで役立つと考えられています。ただし、強い痛みや翌日まで残る疲労を生じるほどの運動は避けるべきとされます。自分に合った運動の種類と強さを、主治医や理学療法士と相談して決めましょう。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 多くは常染色体顕性遺伝で、その場合、子どもに変異が受け継がれる確率は一般に50%です。ただし同じ変異でも症状の重さには大きな個人差があります。潜性遺伝の家系もあるため、具体的な見通しは遺伝カウンセリングで確認することをお勧めします。

Q. 心臓の検査は必要ですか?

A. ベスレムミオパチーでは通常、心臓の病気はみられないとされています。それでも、心臓に合併症の多い似た病気と区別するため、診断時に心電図や心エコーを行うことがあります。その後の検査の頻度は主治医と相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。