シトリン欠損症
Citrin Deficiency
シトリン欠損症(Citrin Deficiency)|シトリン欠損症は、肝臓のミトコンドリアにある輸送体「シトリン」が生まれつき働かないことで起こる、常染色体潜性(劣性)遺伝の先天代謝異常症です。新生児期の胆汁うっ滞(NICCD)、小児期の成長障害や脂質異常、成人期の高アンモニア血症による脳症(CTLN2)と、年齢ごとに異なる形で現れます。日本を含む東アジアに比較的多く、早期に診断して適切な食事管理を続けることが重症化の予防につながります。
シトリン欠損症の要点
シトリン欠損症は、肝臓のミトコンドリアの輸送体シトリン(SLC25A13遺伝子)が働かない常染色体潜性遺伝の先天代謝異常症で、指定難病です。新生児期の胆汁うっ滞(NICCD)、小児期の成長障害や脂質異常、成人期の高アンモニア血症による脳症(CTLN2)と、年齢で異なる症状が現れます。
| 別名・略称 | CTLN2、NICCD、FTTDCD、成人発症II型シトルリン血症、新生児肝内胆汁うっ滞症 |
|---|---|
| 分野 | 代謝疾患 |
| 遺伝形式 | 常染色体潜性(劣性)遺伝 |
| 原因遺伝子 | SLC25A13 |
| 好発年齢 | 新生児期から成人期まで(病型で異なる) |
| 主な症状 | 乳児期の黄疸・肝機能障害、成長障害、脂質異常、低血糖、成人期の高アンモニア血症と脳症 |
| 主な検査 | 血液検査(アミノ酸分析など)、SLC25A13遺伝子検査 |
| 主な治療 | 早期診断と適切な食事管理 |
シトリン欠損症とは
シトリンは、ミトコンドリア内膜にあるアスパラギン酸・グルタミン酸キャリアの肝臓型(AGC2)です。原因遺伝子はSLC25A13で、主に肝臓で働きます。役割は、ミトコンドリア内で作られたアスパラギン酸を細胞質へ運び出し、代わりにグルタミン酸とプロトンを取り込むことです。この輸送はリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルの中心的な一段階にあたります。このシャトルは、細胞質で生じたNADH(還元力)をミトコンドリアへ受け渡す主要な経路です。そのため、シトリンが欠けると尿素回路、糖新生、解糖、脂肪合成など肝臓の代謝に広く影響が及びます。症状の重さは同じ遺伝子型でも個人差が大きく、食事内容や飲酒、感染症、手術、薬剤などの環境因子が発症に強く関わる点が特徴です。
病型は年齢に応じて大きく三つに分けられます。新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)は、乳児期の黄疸や肝機能障害、高ガラクトース血症などを特徴とします。シトリン欠損による成長障害・脂質異常症(FTTDCD)は、幼児期から思春期にみられる体重増加不良、易疲労、脂質異常、低血糖などです。成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)は、主に成人期に起こる高アンモニア血症と脳症を特徴とします。症状のほとんど目立たない時期は「適応・代償期」と呼ばれますが、まったく異常がないとは限りません。歴史的には、CTLN2は日本で古くから記載されてきました。肝臓のアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)活性が肝臓に限って低下する「II型シトルリン血症」として知られていました。1999年に原因遺伝子SLC25A13が同定され、さらにNICCDやFTTDCDも同じ遺伝子異常によることが明らかになり、一連の疾患スペクトラムとして「シトリン欠損症」と総称されるようになりました。
シトリン欠損症の疫学・患者数
日本人の保因者頻度は約65人に1人と報告され、ここから病的バリアントを2つもつ人はおよそ1万7千〜2万人に1人程度と推定されています。中国南部、台湾、韓国などの東アジアでも保因者が比較的多いことが知られています。一方で、近年は欧米、中東、南アジアなど東アジア以外の患者報告も増えています。遺伝子上はシトリン欠損であっても、生涯CTLN2を発症しない人が多数いると考えられています。推定される遺伝子型保有者の数に比べると、実際に診断される患者は少数です。NICCDは生後数か月以内に見つかることが多く、新生児マススクリーニングで高ガラクトース血症や高メチオニン血症、高フェニルアラニン血症などを契機に発見されることがあります。CTLN2の発症年齢は10代から高齢期まで幅広く、多くは20〜50歳代です。CTLN2は男性に多いと報告されていますが、遺伝形式は常染色体潜性であり、遺伝子型としての頻度に男女差はないと考えられます。日本人では c.851_854del と c.1177+1G>A(IVS11+1G>A)が頻度の高い病的バリアントとして知られており、ほかにも多くのバリアントが報告されています。
シトリン欠損症の原因・病態生理
シトリン欠損症は常染色体潜性遺伝形式をとります。両親がともに保因者(病的バリアントを1つもつ人。通常は無症状)の場合、子どもが罹患する確率は1回の妊娠ごとに4分の1です。シトリンは主に肝臓に発現しています。脳や筋肉など他の組織では、類似のキャリア「アララー(AGC1)」が働いています。このため、障害の中心は肝臓の代謝です。脳症は、肝臓の代謝破綻によって生じる高アンモニア血症などによる二次的な障害と考えられています。免疫学的な機序は関与しません。
発症機序の要点は二つあります。第一は細胞質へのアスパラギン酸供給不足です。尿素回路では、細胞質のASSがシトルリンとアスパラギン酸を結合させます。アスパラギン酸が足りないとこの反応が滞り、シトルリンが蓄積してアンモニアの処理が低下します。CTLN2では肝臓のASSタンパク量そのものの低下も報告されています。第二は細胞質NADH/NAD+比の上昇です。リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルが働かないと、解糖で生じたNADHがうまく再酸化されません。その結果、解糖系の流れが滞り、乳酸からの糖新生が妨げられます。過剰なNADHはグリセロール-3-リン酸の産生を通じて中性脂肪の合成を促し、肥満がなくても脂肪肝を起こしやすくなります。ガラクトース代謝の酵素の一部もNAD+を必要とするため、乳児では高ガラクトース血症が起こります。糖質(特にショ糖、果糖、アルコール、グリセロール)を多くとると細胞質NADHがさらに増え、肝細胞のエネルギー不足と代謝破綻が悪化します。患者が糖質を嫌い、タンパク質や脂質を好む独特の食嗜好は、こうした代謝上の不利を避けるための自然な適応と考えられています。中鎖脂肪酸(MCT)はミトコンドリアで直接β酸化されてエネルギー源となるため、このシャトル障害を迂回できる栄養素として注目されています。
シトリン欠損症の症状
- 新生児・乳児期の遷延性黄疸: 直接ビリルビン優位の黄疸が長引きます。灰白色便を伴うこともあり、胆道閉鎖症との鑑別が必要です。
- 肝腫大・脂肪肝: 乳児期には胆汁うっ滞と脂肪沈着による肝腫大を認めます。成人では非肥満にもかかわらず脂肪肝を示すことが少なくありません。
- 低出生体重・体重増加不良: NICCDでは子宮内発育不全を伴うことがあります。幼児期以降も体重が増えにくい「成長障害」がみられることがあります。
- 凝固障害・出血傾向: 胆汁うっ滞によるビタミンK吸収障害や肝機能低下から、出血しやすくなることがあります。まれに頭蓋内出血の報告もあります。
- 低血糖: 糖新生の障害により、乳児期や空腹時、体調不良時に低血糖を起こすことがあります。
- 特徴的な食嗜好: 幼児期から米飯、パン、甘い物を嫌い、肉、魚、卵、豆類、乳製品、ナッツなどを好む傾向が多くの患者でみられます。無理に糖質を食べさせると体調を崩すことがあります。
- 易疲労感・倦怠感: 小児期から疲れやすさ、腹痛、食欲低下などの不定な症状を訴えることがあります。
- 脂質異常症: FTTDCDでは高コレステロール血症や高中性脂肪血症を示すことがあります。
- 意識障害・夜間せん妄: CTLN2では、夜間に悪化しやすい見当識障害、異常行動、興奮、傾眠から昏睡までが反復します。精神疾患と誤診されることがあります。
- けいれん・羽ばたき振戦: 高アンモニア血症に伴い、けいれん発作や羽ばたき振戦、構音障害がみられることがあります。
- 膵炎: 小児期から成人期にかけて急性・慢性膵炎を合併することが報告されています。
- 肝細胞がん: 成人例では、肝硬変を伴わなくても肝細胞がんを発症した報告があります。長期的な画像検査による観察が必要です。
シトリン欠損症の経過と合併症
典型的な自然歴は次のとおりです。乳児期にNICCDを経過し、多くは生後1歳頃までに黄疸や検査値異常が自然に、あるいは治療により改善します。その後、比較的安定した「適応・代償期」に入ります。この時期は、本人が食嗜好によって糖質を避け、代謝の破綻を補っていると考えられています。ただし一部では、易疲労、成長障害、低血糖、脂質異常(FTTDCD)が現れます。成人期以降、一部の人がCTLN2を発症します。飲酒、糖質の多い食事への変化、感染、手術、薬剤(高濃度糖液やグリセロール含有製剤の投与など)が発症や増悪の誘因となることがあります。NICCDの段階でまれに肝不全が進行し、肝移植が必要になることがあります。また、NICCDを経ずに成人期にCTLN2で初めて診断される例も少なくありません。
合併症には次のようなものがあります。乳児期には、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)欠乏、ビタミンK欠乏性出血、くる病傾向、肝線維化がみられることがあります。小児から成人では、脂肪肝、膵炎、高脂血症、低血糖、成長障害が問題となります。CTLN2では高アンモニア血症の反復により脳浮腫を来し、適切に治療されないと死亡や不可逆的な神経後遺症に至る危険があります。また、肝細胞がんの発症、脂肪肝炎から肝線維化への進行も報告されています。高アンモニア性脳症の発作中に、通常の脳浮腫治療として用いられるグリセロール製剤や高濃度糖液を投与すると、病態が悪化しうることが知られています。誤った治療そのものが重大な合併症につながる点に注意が必要です。
シトリン欠損症の診断・診断基準
診断は年齢に応じた臨床像の把握から始まります。乳児では、遷延性黄疸、新生児マススクリーニング陽性(ガラクトース、メチオニン、フェニルアラニン、シトルリンなどの高値)、肝機能異常が手がかりになります。小児では成長障害、特徴的な食嗜好、脂質異常、低血糖が疑いのきっかけとなります。成人では、原因不明の高アンモニア血症、意識障害、非肥満の脂肪肝、膵炎などから本症を疑います。血漿アミノ酸分析、生化学検査、PSTIなどのバイオマーカーで可能性を絞り込みます。最終的にはSLC25A13遺伝子検査で両アレルに病的バリアントを確認して確定します。バリアントが1つしか見つからない場合は、大きな欠失などを検出する追加解析や、専門施設でのタンパク解析などが検討されることがあります。診断は日本先天代謝異常学会などが作成した診断基準・診療ガイドラインに沿って行われ、指定難病の申請にもこの基準が用いられます。
- 血漿アミノ酸分析: シトルリンの上昇が中心的な所見で、CTLN2ではアルギニンも相対的に高値を示し、スレオニン/セリン比の上昇も特徴とされます。NICCDではメチオニン、チロシン、フェニルアラニン、スレオニンなどの上昇を伴うことがあります。
- 血中アンモニア: CTLN2の発作時には高値となります。食後や夜間に上昇しやすく、平常時は正常範囲のこともあるため、症状のある時の測定が重要です。
- 肝機能・胆汁うっ滞マーカー: NICCDでは直接ビリルビン、総胆汁酸、γ-GTP、AFPの上昇、低タンパク血症、凝固能低下を認めます。
- 血中ガラクトース・新生児マススクリーニング: NICCDでは高ガラクトース血症や高メチオニン血症などでマススクリーニング陽性となることがあります。ただし、スクリーニングですべての患者が見つかるわけではありません。
- 血清PSTI(膵分泌性トリプシンインヒビター): CTLN2で上昇することが知られ、診断の補助や病勢評価に用いられることがあります。
- 脂質・血糖・乳酸の評価: FTTDCDでは脂質異常や低血糖がみられることがあり、ケトン体や乳酸と併せて代謝状態を評価します。
- 腹部超音波・CT・MRI: 脂肪肝、肝腫大、肝線維化、膵炎、肝腫瘍の有無を評価します。成人では肝細胞がんのスクリーニングも兼ねます。
- 頭部MRI・脳波: 高アンモニア性脳症では脳浮腫や皮質・基底核などの信号変化、脳波の徐波化を認めることがあります。重症度評価と他疾患の除外に用います。
- SLC25A13遺伝子検査: 両アレルの病的バリアントの同定により確定診断となります。保険診療の対象となる遺伝学的検査として実施可能な場合があり、遺伝カウンセリングとセットで行うことが望まれます。
シトリン欠損症と鑑別すべき疾患
- 胆道閉鎖症: 灰白色便を伴う乳児黄疸として重要で、本症に特徴的なアミノ酸・ガラクトース異常を欠きます。画像検査や胆道造影で胆道の閉塞が確認される点で区別します。
- ガラクトース血症(GALT欠損症など): 高ガラクトース血症と肝障害を共通にもちますが、赤血球のGALT酵素活性低下と原因遺伝子によって鑑別します。
- 他の乳児胆汁うっ滞症(アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症など): 特徴的な顔貌・心血管異常やγ-GTPの値のパターン、各原因遺伝子の解析によって区別します。
- 古典型シトルリン血症(I型)・他の尿素サイクル異常症: ASS1遺伝子異常によるI型シトルリン血症は、全身のASS活性が低下し著明なシトルリン高値を示します。OTC欠損症などでは尿中オロト酸やアミノ酸パターンが異なります。
- 肝硬変などによる肝性脳症: 慢性肝疾患の既往や門脈圧亢進所見があり、シトルリン上昇やスレオニン/セリン比上昇など本症に特徴的なアミノ酸パターンを欠きます。
- 精神疾患・てんかん・脳炎: 反復する異常行動や意識障害の原因として、成人でも血中アンモニアとアミノ酸の測定で代謝性の原因を除外することが重要です。
シトリン欠損症の治療
治療の基本は、シトリン欠損に伴う肝臓のエネルギー不足とNADH過剰を避ける食事療法です。具体的には、糖質を控えめにし、タンパク質と脂質を十分にとる食事が基本となります。ここで最も注意すべき点があります。ほかの尿素サイクル異常症の標準治療であるタンパク質制限や高カロリー糖質輸液は、本症では病態を悪化させうるということです。乳児期のNICCDでは、栄養と胆汁うっ滞への対策を行います。小児期は成長と食嗜好を尊重した栄養管理を行います。成人のCTLN2では、急性期の高アンモニア血症への救命治療に加え、再発予防の食事療法、アルギニンなどの薬物療法を行い、必要に応じて肝移植を検討します。治療の内容は年齢、病型、重症度によって異なります。先天代謝異常症の専門医や管理栄養士と相談しながら個別に決めることが大切です。
- 食事療法(低糖質・高タンパク・高脂質): 患者本人の食嗜好を尊重し、糖質(特にショ糖・果糖などの単純糖)を控えめにして、タンパク質と脂質の比率を高めます。PFC比の目安はガイドラインや専門施設で示されていますが、個別に調整するため主治医・管理栄養士と相談します。
- NICCDの栄養管理: 乳糖除去ミルクやMCT強化ミルクの使用が検討されます。母乳を続けるかどうかは状態に応じて医師と相談します。
- 脂溶性ビタミン補充・ウルソデオキシコール酸: 胆汁うっ滞のある乳児では、ビタミンA・D・E・Kを補充して欠乏症や出血を予防します。胆汁の流れを改善する目的でウルソデオキシコール酸が用いられることがあります。
- 中鎖脂肪酸(MCT)の活用: MCTはシャトル障害を迂回して肝臓のエネルギー源になると考えられています。NICCDだけでなく、成人の高アンモニア血症や脂肪肝への有効性も報告されています。
- アルギニン製剤: 尿素回路の働きを補い、アンモニアを下げる目的で、CTLN2を中心に用いられます。
- ピルビン酸ナトリウム: 細胞質のNADH過剰を是正する目的で研究的に用いられてきた治療で、有効性の検証が進められている段階です。
- CTLN2急性期治療: 高アンモニア血症に対しては、アルギニン投与、アンモニア除去薬、血液浄化療法(血液透析など)を状況に応じて行います。グリセロール製剤や高濃度糖液の投与は悪化要因となりうるため避けることが重要です。
- 肝移植: CTLN2で発作を繰り返す例や、NICCDで肝不全に進行した例では肝移植が考慮されます。移植後は高アンモニア血症が消失し、良好な経過が報告されています。
- 飲酒・誘因の回避: アルコール、糖質の多い飲料や菓子類の大量摂取、過度の空腹、感染時の対応の遅れを避けることは、再発予防の重要な柱です。
シトリン欠損症の予後・長期フォロー
NICCDの多くは1歳頃までに改善し、その後の発達もおおむね良好です。ただし、ごく一部は肝不全に進行して肝移植を要します。FTTDCDは、適切な栄養管理によって成長や体調の改善が期待できます。CTLN2は、未治療のまま高アンモニア血症を繰り返すと、脳浮腫により生命にかかわります。一方で、早期診断、適切な食事療法、薬物療法、そして必要に応じた肝移植によって、予後は大きく改善しています。脳症による障害が固定する前に治療を始めることが、神経学的予後を左右します。一度でも症状が出た人では、生涯にわたる食事管理と体調管理がQOL維持の鍵になります。
長期フォローアップでは、定期的に次の項目を確認します。成長・体重、血漿アミノ酸、アンモニア、肝機能、脂質、血糖、PSTI、腹部超音波による脂肪肝や肝腫瘍の評価です。成人では肝細胞がんや膵炎のリスクを意識した経過観察が必要です。NICCDが軽快した子どもも、思春期・成人期の食生活の変化や飲酒開始が転機になりうるため、小児科から成人診療科へのスムーズな移行(トランジション)が重要です。手術や入院、妊娠・出産の際には、本症の診断名と輸液上の注意点を医療者に伝えることが望まれます。
シトリン欠損症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、本人の「糖質を好まない」という嗜好を否定せず、無理に米飯や甘い物を食べさせないことが大切です。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品、ナッツなどで十分なタンパク質と脂質をとり、空腹の時間を長く空けすぎないようにします。学校給食や外食では、量の調整や主食の減量について事前に学校や栄養士と相談しておくと安心です。飲酒は発症の誘因となりうるため、成人後の飲酒については主治医とよく相談してください。発熱、嘔吐、食欲低下のときは早めに受診し、医療機関では「シトリン欠損症であり、高濃度糖液やグリセロール製剤に注意が必要」と伝えます。疾患名と注意事項を記した緊急時カードや診療情報提供書を携帯すると役立ちます。常染色体潜性遺伝のため、きょうだいも同じ遺伝子型をもつ可能性があります。家族の検査や次子の妊娠については、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。
利用できる制度・相談窓口
シトリン欠損症は指定難病(告示番号318)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、難病法に基づく特定医療費(指定難病)の助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に提出します。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となりうるほか、特別児童扶養手当などの制度が利用できる場合があります。指定難病は障害者総合支援法の対象疾病であり、障害福祉サービスを利用できる場合があります。CTLN2による神経後遺症などで日常生活や就労に支障がある場合は、障害者手帳や障害年金の対象となる可能性があります。相談窓口として、難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、小児慢性特定疾病の自立支援事業などがあります。疾患情報は難病情報センターや患者会からも得られます。
シトリン欠損症に伴う心のケア・心理社会的支援
慢性的な難病を抱えることは、本人や家族に抑うつ、不安、適応障害などの心理的負担をもたらすことがあります。本症に特有の課題もあります。乳児期の黄疸や入院を経験した保護者は、軽快後も「いつ悪くなるか」という不安を抱えやすいものです。また、子どもの偏食が周囲から「好き嫌い」「しつけの問題」と誤解され、親が責められたり、本人が給食や会食で疎外感を感じたりすることがあります。成人期には、飲み会や食事の場での配慮の求めにくさ、発症への不安、CTLN2の精神症状が精神疾患と誤解された経験によるつらさなどが生じえます。こうした悩みは決して珍しいものではありません。主治医、管理栄養士、心理職、医療ソーシャルワーカー、患者会などに早めに相談し、学校や職場に疾患を理解してもらうための説明書面を用意することも助けになります。気分の落ち込みや不眠が続く場合は、心療内科・精神科への相談もためらわないでください。
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シトリン欠損症の受診の目安
- 乳児の黄疸が生後2週間を過ぎても続く、または便の色が白っぽい・薄い場合は、早めに小児科を受診してください。
- 意識がぼんやりする、つじつまの合わない言動や夜間の興奮・せん妄がみられる場合は、高アンモニア血症の可能性があるため救急受診してください。
- けいれんが起きた、または呼びかけへの反応が悪い場合は、ただちに救急車を要請してください。
- 発熱・嘔吐・下痢で食事がとれない状態が続く場合は、代謝が悪化する前に主治医へ連絡してください。
- 強い腹痛(特に上腹部から背中への痛み)がある場合は、膵炎の可能性があるため受診してください。
- 体重が増えない、疲れやすい、極端な食の偏りが気になる場合は、小児科や代謝専門医に相談してください。
シトリン欠損症についてのよくある質問
Q. 子どもがご飯や甘い物を嫌がり、肉や卵ばかり食べます。直したほうがよいですか?
A. シトリン欠損症では、糖質を避ける食嗜好は体を守るための自然な適応と考えられています。無理に矯正すると体調を崩すことがあります。栄養バランスの取り方は、主治医や管理栄養士と相談しながら調整してください。
Q. 乳児期のNICCDが治れば、もう心配ありませんか?
A. 多くの場合、乳児期の症状は改善し、その後は元気に過ごせます。ただし体質そのものは続くため、思春期以降の食生活や飲酒によって成長障害や成人期の症状が現れることがあります。定期的な受診と、成人診療科への引き継ぎを続けることが大切です。
Q. お酒は飲んでもよいですか?
A. アルコールは細胞質のNADHを増やし、CTLN2の誘因になりうると考えられています。飲酒の可否や量については自己判断せず、主治医と相談してください。
Q. 他の病院で点滴や手術を受けるときに気をつけることはありますか?
A. 高濃度のブドウ糖液やグリセロールを含む製剤が病状を悪化させる可能性があるため、病名と注意点を必ず医療者に伝えてください。緊急時カードや主治医の紹介状を携帯しておくと安心です。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。