遺伝性自己炎症疾患

Hereditary Autoinflammatory Diseases

遺伝性自己炎症疾患(Hereditary Autoinflammatory Diseases)|遺伝性自己炎症疾患は、生まれつきの遺伝子変異によって自然免疫が過剰に働き、感染症や自己免疫とは異なる仕組みで発熱や全身の炎症を繰り返す病気の総称です。多くは乳幼児期から小児期に発症し、皮膚・関節・消化管・神経・血管など多くの臓器が障害されることがあります。日本の指定難病制度では、家族性地中海熱やクリオピリン関連周期熱症候群などが個別の病名で指定されています。それ以外の稀な疾患群が、告示番号325「遺伝性自己炎症疾患」として扱われています。

遺伝性自己炎症疾患の要点

遺伝性自己炎症疾患は、単一遺伝子の変異により自然免疫が過剰に働き、感染や自己免疫とは異なる仕組みで発熱や皮疹、関節炎などの全身の炎症を繰り返す病気の総称です。多くは乳幼児期から小児期に発症し、家族性地中海熱などは個別に指定され、告示番号325はそれ以外の稀な疾患を扱う指定難病です。

別名・略称自己炎症疾患、自己炎症性疾患、単一遺伝子性自己炎症疾患、遺伝性自己炎症症候群、monogenic autoinflammatory disease、hereditary autoinflammatory disorders
分野免疫・膠原病・自己炎症
指定難病告示番号325(家族性地中海熱やCAPSなどは別の告示番号で個別に指定)
遺伝形式疾患により異なる(常染色体顕性・潜性など)
好発年齢多くは乳幼児期から小児期
主な症状繰り返す発熱、皮疹、関節炎、漿膜炎、眼炎など
主な検査遺伝学的検査、CRPなどの炎症反応の評価
受診する主な診療科小児科、リウマチ・膠原病内科

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遺伝性自己炎症疾患とは

自己炎症疾患(autoinflammatory disease)は、1999年にTNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)の原因遺伝子が同定された際に提唱された概念です。自然免疫系(好中球・単球/マクロファージ、インフラマソーム、サイトカイン経路など)の異常な活性化によって炎症が起こる疾患を指します。自己免疫疾患とは異なり、高力価の自己抗体や抗原特異的T細胞の関与は原則として主体ではありません。明らかな誘因がないか、寒冷・疲労・ワクチン接種・軽い感染などのわずかな刺激で、発熱・皮疹・漿膜炎・関節炎・眼炎などが起こります。発作性に起こる型と持続性に続く型があります。そのうち単一遺伝子の変異で発症するものを、遺伝性自己炎症疾患と呼びます。

代表的な疾患には、家族性地中海熱(FMF、MEFV)、TRAPS(TNFRSF1A)、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS、NLRP3)、高IgD症候群/メバロン酸キナーゼ欠損症(HIDS/MKD、MVK)、中條・西村症候群(PSMB8)、PAPA症候群(PSTPIP1)、ブラウ症候群(NOD2)などがあります。日本ではこれらがそれぞれ独立した指定難病です。告示番号325「遺伝性自己炎症疾患」には、それ以外の稀な疾患が含まれます。指定当初の対象はNLRC4異常症、ADA2欠損症(DADA2)、エカルディ・グティエール症候群(AGS)で、その後A20ハプロ不全症(HA20)なども対象に加えられたとされます。対象疾患は改訂されることがあるため、最新の告示や難病情報センターの情報を確認してください。なお、既存解説で挙げられていたPFAPA症候群は、小児に多い周期性発熱症候群です。単一遺伝子疾患とは確立しておらず、遺伝性自己炎症疾患には通常含めません。病態からの分類としては、インフラマソーム病(IL-1β/IL-18過剰)、Ⅰ型インターフェロン異常症、NF-κB経路の異常症(リレオパチー)、蛋白分解・代謝の異常に伴うものなどが用いられます。

遺伝性自己炎症疾患の疫学・患者数

遺伝性自己炎症疾患は全体として稀な疾患群です。日本で最も多いのは家族性地中海熱で、診断例は増えています。軽症例や非典型例が多く、診断されていない患者も相当数いると考えられています。告示番号325に含まれるNLRC4異常症、ADA2欠損症、AGS、HA20などは国内の診断例が限られる極めて稀な疾患で、正確な有病率は明らかではありません。多くは新生児期〜小児期に発症しますが、ADA2欠損症やHA20のように症状の幅が広い疾患では、成人になって初めて診断されることもあります。遺伝形式は疾患ごとに異なります。常染色体顕性(優性)遺伝(NLRC4異常症、HA20、CAPS、TRAPSなど)では性差は目立ちません。常染色体潜性(劣性)遺伝(ADA2欠損症、AGSの多く、HIDS/MKDなど)では、両親が無症状の保因者であることが一般的です。孤発例では新生(de novo)変異や、体細胞モザイク変異による発症も報告されています。

遺伝性自己炎症疾患の原因・病態生理

病因は、自然免疫に関わる遺伝子の機能獲得型変異(過剰に働く変異)、または機能喪失型変異(働きを失う変異)です。主な病態は次の4つに分けられます。<br>(1)インフラマソーム病:NLRP3やNLRC4、MEFV(パイリン)の異常で、細胞内の炎症センサー複合体であるインフラマソームが過剰に活性化します。カスパーゼ1を介してIL-1βとIL-18が多量に放出され、ガスダーミンDによるピロトーシス(炎症性細胞死)も起こります。NLRC4異常症では特にIL-18が著しく高く、マクロファージ活性化症候群(MAS)を起こしやすいのが特徴です。<br>(2)Ⅰ型インターフェロン異常症:AGSでは、TREX1、RNASEH2A/B/C、SAMHD1、ADAR、IFIH1などの変異により、細胞内の自己核酸の分解・修飾が障害されたり、核酸センサーが過剰に働いたりします。その結果、ウイルス感染時のようにⅠ型インターフェロンが持続的に産生されます。<br>(3)NF-κB経路の異常:HA20では、炎症を抑える脱ユビキチン化酵素A20(TNFAIP3)が片方のアレルの変異で不足し、NF-κBの活性化を止められなくなります。<br>(4)その他:ADA2欠損症では、ADA2遺伝子(旧称CECR1)の両アレル変異でアデノシンデアミナーゼ2の活性が失われます。マクロファージの分化が炎症性(M1型)に偏り、血管内皮が障害され、TNF-αを中心とする炎症が起こると考えられています。

発症の詳しい仕組みは疾患によって異なり、症状の特徴に直結しています。IL-1β優位の疾患では、発熱・好中球増多・急性期蛋白(CRP、血清アミロイドA:SAA)の上昇が目立ちます。SAAが長期間高いままだと、組織にAA型アミロイドとして沈着します。IL-18優位のNLRC4異常症では、新生児期の重い腸炎、寒冷蕁麻疹、反復するMASが特徴で、血清IL-18が非常に高い値を示します。Ⅰ型インターフェロンが過剰になるAGSでは、神経系に慢性炎症と微小血管障害が起こります。そのため大脳白質病変、基底核などの頭蓋内石灰化、小頭症が生じ、先天性ウイルス感染症に似た症状を示します。末梢の小血管障害は凍瘡(しもやけ)様の皮疹として現れます。ADA2欠損症では中小動脈の血管炎が起こり、結節性多発動脈炎に似た症状や若年性のラクナ梗塞を生じます。加えて、B細胞の障害による低ガンマグロブリン血症、赤芽球癆などの血球減少といった免疫不全・骨髄不全の側面もあります。HA20は口腔・外陰部潰瘍やぶどう膜炎などベーチェット病に似た症状を示し、自己抗体陽性や自己免疫疾患を合併することもあります。このため「自己抗体は常に陰性」とは言い切れず、自然免疫と獲得免疫の境界にある疾患も存在します。

遺伝性自己炎症疾患の症状

  • 反復性・持続性の発熱: 疾患により、半日〜3日程度の短い発作(FMF)、1〜2週以上続く発作(TRAPS)、ほぼ毎日続く微熱〜高熱(CAPS重症型、NLRC4異常症)などパターンが異なります。発熱の間隔や持続時間の記録が診断の手がかりになります。
  • 皮疹: 蕁麻疹様皮疹(CAPS、NLRC4異常症)、移動性の紅斑(TRAPS)、丹毒様紅斑(FMF)、凍瘡様皮疹(AGS、中條・西村症候群)、網状皮斑・リベド(ADA2欠損症)、結節性紅斑や毛嚢炎様皮疹(HA20)など、疾患ごとに特徴があります。
  • 寒冷誘発症状: NLRC4異常症やCAPS軽症型では、寒冷にさらされると数時間以内に皮疹・発熱・関節痛が出ることがあります。
  • 消化管症状・腸炎: 漿膜炎による腹痛(FMF、TRAPS)のほか、NLRC4異常症では新生児期の重い腸炎、HA20では腸管潰瘍がみられることがあります。
  • 漿膜炎・関節炎: 胸膜炎や心膜炎による胸痛、単関節炎〜多関節炎が起こります。関節の変形や拘縮を残すこともあります。
  • 口腔・外陰部潰瘍: HA20で特に目立ちます。ベーチェット病と区別しにくいほど似た症状を示すことがあります。
  • 眼症状: 結膜炎、ぶどう膜炎、乳頭浮腫などが起こります。ぶどう膜炎は視力障害につながるため、眼科での定期的な診察が必要です。
  • 脳卒中・中枢神経症状: ADA2欠損症では小児期から若年期にラクナ梗塞や脳出血を繰り返すことがあります。CAPS重症型では慢性無菌性髄膜炎や頭痛がみられます。
  • 神経発達の障害(AGS): 乳児期に易刺激性、哺乳不良、発達の停滞や退行、痙性、ジストニアなどが現れます。重い神経学的後遺症を残すことが多くあります。
  • 感音難聴: CAPS重症型(マックル・ウェルズ症候群、NOMID/CINCA)で進行性の感音難聴がみられます。早期治療で進行を抑えられる可能性があります。
  • 血球減少・免疫不全: ADA2欠損症では赤芽球癆、好中球減少、低ガンマグロブリン血症などを伴うことがあります。反復する感染症が受診のきっかけになることもあります。
  • マクロファージ活性化症候群(MAS): NLRC4異常症などで、持続する高熱、肝脾腫、血球減少、フェリチンの著しい上昇、凝固異常を伴う重い病態です。緊急の治療が必要です。

遺伝性自己炎症疾患の経過と合併症

経過は「発作型」と「持続炎症型」に大きく分けられます。発作型では、発作の間は症状がほとんどなく、検査値も正常に戻ることが多いのが特徴です。ただし、発作がない時期にもSAAなどが軽度に高いままのことがあります。持続炎症型(CAPS重症型、NLRC4異常症の一部、AGSなど)では慢性の炎症が続き、成長障害、臓器障害、神経障害が少しずつ進行します。AGSでは、典型例は新生児期〜乳児期早期に亜急性の脳症で発症します。数か月の進行期を経て、神経症状は固定した後遺症として残ることが多いとされます。ADA2欠損症は重症度の幅が大きく、同じ変異を持つ家族の中でも、血管炎型・血液型・無症状と症状が大きく異なることがあります。症状が年齢とともに変化することや、感染・ワクチン接種・ストレスで悪化することも、多くの疾患に共通してみられます。

重要な合併症には次のようなものがあります。<br>(1)AA型アミロイドーシス:長期間コントロールされない炎症でSAAが沈着し、蛋白尿から腎不全に至ることがあります。消化管や心臓に沈着することもあります。<br>(2)マクロファージ活性化症候群<br>(3)脳血管障害(ADA2欠損症)<br>(4)難聴・視力障害<br>(5)成長障害・骨格変形<br>(6)治療に伴う合併症:長期のステロイドによる骨粗鬆症・成長抑制・感染症、生物学的製剤による感染リスクなど。<br>HA20では自己免疫性甲状腺炎やループス様の病態など、自己免疫疾患の合併も報告されています。ADA2欠損症では、重い血球減少が造血幹細胞移植を検討するきっかけになります。

遺伝性自己炎症疾患の診断・診断基準

診断は、詳しい病歴聴取から始まります。具体的には、発熱の周期・持続時間・誘因、発症年齢、皮疹・漿膜炎・関節・眼・神経の症状、家族歴(血族婚の有無を含む)です。そのうえで、感染症・悪性腫瘍・自己免疫疾患・他の膠原病を除外することが基本となります。炎症発作のときと発作がない時期の両方で、CRPやSAAを測定し、炎症の推移を把握します。疾患を絞り込んだら、疾患ごとの特徴的な検査を行います。NLRC4異常症では血清IL-18、AGSではインターフェロン・シグネチャーや髄液検査、ADA2欠損症では血漿ADA2活性などです。最終的には遺伝子検査で確定します。日本では自己炎症疾患の遺伝子検査の一部が保険診療で行えるようになっており、専門施設や研究班を通じて解析を依頼できます。ただし、意義不明の変異(VUS)や片方のアレルだけの変異が見つかることも多く、結果の解釈には専門医の判断が欠かせません。遺伝子変異が見つからなくても、臨床像から診断や治療を進める場合があります。指定難病の申請では、厚生労働省研究班が作成した疾患ごとの診断基準と重症度分類を用います。

  • 炎症マーカー(CRP・SAA・赤沈・白血球数): 発作時に著しく上昇し、発作の間には正常化するかどうかで発作型と持続型を区別します。SAAはアミロイドーシスのリスク評価と治療効果の判定にも重要です。
  • フェリチン・血清IL-18: NLRC4異常症では血清IL-18が著しく高く、診断の重要な手がかりになります。フェリチンの急上昇、血小板減少、フィブリノゲン低下はMASを疑う所見です。
  • インターフェロン・シグネチャー: 末梢血でⅠ型インターフェロンによって誘導される遺伝子の発現を測定します。AGSなどのインターフェロン異常症で高値を示します。研究施設で測定されることが多い検査です。
  • 血漿ADA2活性測定: ADA2欠損症では活性が著しく低下します。意義不明の変異の評価や、遺伝子検査で変異が見つからない例の診断補助になります。
  • 遺伝子検査(パネル・エクソーム解析): NLRC4、ADA2、TREX1、RNASEH2群、SAMHD1、ADAR、IFIH1、TNFAIP3のほか、MEFV、NLRP3、TNFRSF1A、MVKなどを網羅的に解析します。体細胞モザイクは通常の検査で見逃されることがあり、深いシーケンス解析が必要な場合があります。
  • 頭部画像検査(CT・MRI): AGSでは基底核や白質の石灰化と白質病変、ADA2欠損症ではラクナ梗塞や出血の評価に用います。石灰化の検出にはCTが有用です。
  • 髄液検査: AGSでは髄液のリンパ球増多やインターフェロンαの上昇がみられます。CAPS重症型では無菌性髄膜炎の所見を示します。
  • 血管・臓器評価(血管造影、生検、尿検査): ADA2欠損症では皮膚・筋生検や血管造影で、中小動脈の血管炎や微小動脈瘤を確認することがあります。尿蛋白の測定と腎生検は、アミロイドーシスの評価に用います。
  • 免疫学的検査: 免疫グロブリン値や自己抗体を測定し、免疫不全の合併(ADA2欠損症)や自己免疫の合併(HA20)を評価します。

遺伝性自己炎症疾患と鑑別すべき疾患

  • 感染症(敗血症、先天性ウイルス感染症など): 反復する発熱ではまず感染症の除外が必須です。AGSは先天性サイトメガロウイルス感染症などのTORCH症候群と画像所見が似ているため、ウイルス学的検査で区別します。
  • 全身型若年性特発性関節炎・成人発症スチル病: 弛張熱、サーモンピンク疹、関節炎、MASを起こす点でNLRC4異常症と似ていますが、単一遺伝子の変異がなく、家族歴や新生児期の発症は通常みられません。
  • ベーチェット病: HA20は口腔・外陰部潰瘍やぶどう膜炎を共通して示しますが、発症が若く家族内で発症すること、自己免疫を合併することがHA20を疑う手がかりになります。
  • 結節性多発動脈炎・その他の血管炎: 小児期・若年期の発症、ラクナ梗塞、血球減少や低ガンマグロブリン血症の合併がある場合は、ADA2欠損症を考えて血漿ADA2活性を測定します。
  • 他の遺伝性自己炎症疾患(FMF、CAPS、TRAPS、HIDSなど): 発熱の持続時間、誘因、皮疹の性状、尿中メバロン酸などの特徴的な検査を総合し、最終的には遺伝子解析で区別します。
  • 悪性腫瘍・血液疾患: 持続する発熱と血球減少がある場合は、白血病・リンパ腫・骨髄異形成症候群などを骨髄検査などで除外します。

遺伝性自己炎症疾患の治療

治療の目標は、炎症発作をなくし、発作の間の潜在的な炎症(CRP・SAA)も正常化することです。それによってアミロイドーシス、臓器障害、成長障害、神経障害を防ぎ、生活の質(QOL)を保つことを目指します。治療は疾患ごとに主役となる経路に合わせて選びます。IL-1β優位の疾患ではIL-1阻害、TNF優位の疾患(ADA2欠損症など)ではTNF阻害、インターフェロン優位の疾患ではJAK阻害が検討されます。家族性地中海熱ではコルヒチンが第一選択です。日本ではIL-1阻害薬のうちカナキヌマブが、CAPS、TRAPS、HIDS/MKD、コルヒチンで効果不十分な家族性地中海熱に承認されています。一方、アナキンラは国内では承認されていない点に注意が必要です。告示番号325に含まれる疾患では、病気に対して承認された薬剤がほとんどありません。そのため、専門施設が既存薬の適応外使用や臨床研究の枠組みで治療を行うことが多いのが現状です。治療は小児リウマチ・膠原病・神経・血液などの専門医が連携して決めます。個別の治療方針は必ず主治医と相談してください。

  • TNF阻害薬(ADA2欠損症など): ADA2欠損症の血管炎と脳梗塞の予防に有効であると多数報告されており、中心的な治療と位置づけられています。HA20やTRAPSの一部でも用いられることがあります。
  • IL-1阻害薬: カナキヌマブはCAPSやTRAPSなどで承認されています。NLRC4異常症などインフラマソームが関わる病態では、専門医の判断で検討されることがあります。NLRC4異常症ではIL-18の過剰が残る場合があり、IL-18を標的とする治療は研究段階です。
  • JAK阻害薬: AGSなどのⅠ型インターフェロン異常症で、インターフェロンのシグナルを抑える目的で使用した報告があります。神経症状への効果は限定的とされ、日本ではこれらの疾患に対して承認されていません。
  • コルヒチン: 家族性地中海熱の第一選択薬で、発作とアミロイドーシスの予防に有効です。HA20などベーチェット病に似た病態で併用されることもあります。
  • 副腎皮質ステロイド・NSAIDs: 急性発作やMASの初期治療として用いられます。長期使用では成長障害や骨粗鬆症などの副作用が問題となるため、維持療法としては生物学的製剤などに置き換えることが目標になります。
  • マクロファージ活性化症候群の治療: ステロイドパルス療法、シクロスポリン、IL-1阻害などを組み合わせた集中治療が行われます。早期の発見と対応が予後を左右します。
  • 造血幹細胞移植: ADA2欠損症で、重い骨髄不全や治療に反応しない病態がある場合に検討され、血管炎と血液症状の両方が改善した報告があります。移植に伴うリスクとの比較検討が必要です。
  • 免疫グロブリン補充・感染対策: ADA2欠損症などで低ガンマグロブリン血症や感染の反復がある場合に行います。生物学的製剤の使用中は、予防接種の計画(生ワクチンは原則として避ける)や結核のスクリーニングも重要です。
  • リハビリテーション・療育・補聴: AGSや脳卒中後の運動障害、発達障害には、理学療法・作業療法・言語療法と療育支援を行います。難聴には補聴器や人工内耳を用います。

遺伝性自己炎症疾患の予後・長期フォロー

予後は疾患と重症度によって大きく異なります。ADA2欠損症はTNF阻害薬の導入で脳卒中が大きく減ったと報告されており、早期に診断して治療を始めれば良好な経過が期待できます。CAPSなどIL-1が関わる疾患でも、生物学的製剤の登場で炎症のコントロールと臓器障害の予防が可能になりました。一方、AGSは乳児期の脳症によって重い神経学的後遺症を残すことが多く、根本的な治療はまだ確立していません。生命予後は呼吸器感染などの合併症に左右されます。NLRC4異常症では、乳児期のMASや腸炎が生命に関わることがある一方、年齢とともに症状が軽くなる例もあるとされます。どの疾患でも、炎症を長期間放置しないことがアミロイドーシスや臓器障害の予防につながり、長期予後の鍵になります。

長期フォローアップでは、定期的にCRP・SAAを測定し、発作の記録をとって潜在的な炎症がないか確認します。あわせて、尿蛋白(アミロイドーシスの早期発見)、成長・発達、聴力・眼科の検査を行います。ADA2欠損症では頭部MRIと血球数、AGSでは神経発達と嚥下・呼吸機能を評価します。治療の副作用として、感染症、肝機能、脂質、骨密度も確認します。小児期に発症する疾患が多いため、思春期以降には小児科から成人診療科への移行(トランジション)を計画的に進めることが重要です。妊娠・出産を希望する場合は、薬剤の継続や中止、遺伝の問題について事前に相談します。

遺伝性自己炎症疾患の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

発熱日誌をつけ、発作の日付、持続時間、症状、誘因(寒冷、疲労、感染、月経、ストレス、ワクチン接種など)、服薬状況を記録しましょう。診断と治療効果の判定に大いに役立ちます。寒冷で悪化する病型では、防寒や冷房への対策が有効です。生物学的製剤やステロイドの使用中は感染症にかかりやすくなるため、手洗い、不活化ワクチンの計画的な接種、発熱時の早めの受診を心がけます。生ワクチンの接種は主治医と相談してください。自己注射の手技、薬の保管、旅行時の携帯方法についても指導を受けておきましょう。学校や職場には病気の性質(感染する病気ではないこと、発作時の対応)を伝え、必要な配慮を相談しておくと安心です。遺伝性疾患であるため、きょうだいや子どもへの遺伝の可能性、保因者診断、出生前の相談などは、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングで相談できます。家族内でも症状の重さに差があるため、無症状の家族が検査を受けるかどうかは、十分な説明を受けたうえで判断することが大切です。

利用できる制度・相談窓口

告示番号325「遺伝性自己炎症疾患」は指定難病の医療費助成の対象です。診断基準を満たし、重症度分類で一定以上と判定された場合(または軽症でも高額な医療が継続する場合)に、自己負担上限額が設定されます。申請には難病指定医の臨床調査個人票が必要で、窓口はお住まいの都道府県・指定都市の保健所などです。18歳未満(継続する場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があります。指定難病の患者は障害者総合支援法による障害福祉サービスの対象にもなります。難聴、肢体不自由、腎機能障害などの後遺症がある場合は、身体障害者手帳の取得も検討できます。日常生活や就労に支障があれば、障害年金(子どもの場合は特別児童扶養手当など)の対象となることがあります。生物学的製剤は高額なため、高額療養費制度もあわせて活用しましょう。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、医療機関の医療ソーシャルワーカー、厚生労働省研究班や難病情報センターの情報、患者会などがあります。

遺伝性自己炎症疾患に伴う心のケア・心理社会的支援

いつ起こるかわからない発作を繰り返すことや、長年診断がつかずに受診を繰り返した経験は、患者・家族に強い不安や無力感をもたらします。抑うつ、不安障害、適応障害につながることもあります。遺伝性疾患であるため、親が「自分のせいで遺伝させた」という罪悪感を抱いたり、家族内で遺伝情報を共有するかどうか悩んだりすることも少なくありません。患者数が極めて少ないため、同じ病気の仲間や情報が見つからない孤立感もこの疾患に特有の課題です。小児では、欠席の多さによる学業の遅れや友人関係への影響、注射への恐怖、外見の変化(皮疹や成長障害)に悩むことがあります。AGSのように重い障害を伴う場合は、家族の介護負担や、きょうだいへの配慮も大きな課題です。気分の落ち込み、不眠、意欲の低下が続くときは、ためらわずに主治医、心理職、精神科・児童精神科、医療ソーシャルワーカーに相談してください。心のケアは治療の一部です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

遺伝性自己炎症疾患の受診の目安

  • 原因不明の発熱が周期的に繰り返し、皮疹・腹痛・関節痛・眼の充血などを伴う場合は、小児科・リウマチ膠原病内科を受診しましょう。
  • 高熱が続き、ぐったりする、出血しやすい、意識がおかしいなどの症状があれば、マクロファージ活性化症候群の可能性があるため、救急受診してください。
  • 突然の手足の麻痺、ろれつが回らない、激しい頭痛、けいれんが起きたときは、脳卒中などの可能性があるため、直ちに救急要請してください。
  • 生物学的製剤やステロイドの使用中に発熱や咳、息苦しさが出た場合は、重い感染症の可能性があるため、早めに主治医に連絡し受診してください。
  • むくみ、尿の泡立ち、尿量の減少に気づいたときは、腎障害やアミロイドーシスの確認のため受診しましょう。
  • 乳児で哺乳不良、ひどい不機嫌、発達の停滞や退行がみられる場合は、速やかに小児科を受診してください。

遺伝性自己炎症疾患についてのよくある質問

Q. 自己炎症疾患と自己免疫疾患は何が違うのですか?

A. 自己免疫疾患は、獲得免疫(T細胞・B細胞)が自分の体を攻撃し、自己抗体などが関わる病気です。自己炎症疾患は、自然免疫の炎症の仕組みそのものが過剰に働く病気です。ただしHA20のように両方の性質を持つ疾患もあり、境界ははっきりしない部分もあります。

Q. 遺伝子検査で変異が見つからなければ、この病気ではないのですか?

A. 必ずしもそうではありません。体細胞モザイクや未知の原因遺伝子のために、通常の検査では見つからないことがあります。逆に、病気との関係が不明な変異が見つかることもあるため、症状と合わせて専門医が総合的に判断します。

Q. 子どもや兄弟にも遺伝しますか?

A. 遺伝形式によって異なります。常染色体顕性遺伝では、子どもが変異を受け継ぐ確率は50%です。常染色体潜性遺伝では、両親とも保因者の場合、きょうだいが両方のアレルに変異を受け継いで発症する確率は25%です(保因者となる確率は50%)。ただし、同じ変異でも症状の出方には個人差が大きいです。遺伝カウンセリングで具体的に相談することをお勧めします。

Q. 治療は一生続ける必要がありますか?

A. 多くの疾患は遺伝的な体質によるため、炎症を抑える治療を長く続けることが基本になります。一方、年齢とともに症状が軽くなる例や、薬の量を減らせる例もあります。自己判断で中止せず、検査値や症状を見ながら主治医と相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。