シュワルツ・ヤンペル症候群

Schwarz-Jampel syndrome

シュワルツ・ヤンペル症候群(Schwarz-Jampel syndrome)|シュワルツ・ヤンペル症候群(Schwarz-Jampel syndrome:SJS)は、筋肉がこわばって緩みにくくなる症状(ミオトニア様の持続的筋活動)、骨や軟骨の発育異常(骨軟骨異形成)、瞼裂が狭く口をすぼめたような特徴的な顔つきの3つを中心とする、まれな常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患です。多くは乳幼児期に気づかれ、低身長、関節の拘縮、歩行や運動のぎこちなさなどが一生続きます。日常生活、進学、就労など、ライフステージ全体にわたる支援が必要です。

シュワルツ・ヤンペル症候群の要点

シュワルツ・ヤンペル症候群は、HSPG2遺伝子の異常により生じるまれな常染色体潜性遺伝の疾患で、筋肉のこわばり(持続的筋活動)、骨軟骨の発育異常、眼瞼裂狭小や口をすぼめた顔つきが特徴です。低身長や関節拘縮を伴い、日本では指定難病の対象です。

別名・略称軟骨異栄養性筋強直症、chondrodystrophic myotonia、Schwartz-Jampel syndrome、SJS
分野神経・筋疾患
遺伝形式常染色体潜性(劣性)遺伝(HSPG2遺伝子)
好発年齢多くは乳幼児期に気づかれる
主な症状筋のこわばり、低身長、関節拘縮、眼瞼裂狭小、口すぼめ顔貌
主な検査筋電図、骨格のX線検査、HSPG2遺伝子検査
主な治療根治療法はなく、症状に応じた対症療法とリハビリテーション
受診する主な診療科小児科、神経内科、整形外科、遺伝診療部門

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シュワルツ・ヤンペル症候群とは

シュワルツ・ヤンペル症候群は、1962年にSchwarzとJampelが、眼瞼裂狭小と骨格異常、筋の持続的収縮をもつ同胞例を報告したことから名付けられました。「軟骨異栄養性筋強直症(chondrodystrophic myotonia)」とも呼ばれます。中核となる特徴は次の3つです。①骨格筋が収縮した後に弛緩しにくく、安静時にも筋活動が続く神経筋症状。②脊椎、骨盤、長管骨の骨端・骨幹端の異形成による骨格異常(低身長、関節拘縮、側弯など)。③眼瞼裂狭小、口すぼめ、仮面様顔貌といった顔面の特徴。既存の簡易解説では「眼球運動障害」が主症状とされていましたが、これは誤りです。眼の所見の中心は、まぶたの開きが狭い(眼瞼裂狭小)こととまぶたのけいれん様収縮で、眼球そのものの運動障害(外眼筋麻痺)は本症の典型像ではありません。

歴史的には、幼児期に明らかになる古典型を1A型、出生時から重症の新生児型を1B型、骨の彎曲や新生児期の呼吸・嚥下障害、自律神経障害を伴い致死的経過をとりやすい型を2型と分けていました。その後、2型はLIFR遺伝子の異常による別の疾患「スチューヴェ・ヴィーデマン症候群(Stüve-Wiedemann syndrome)」と同一であることが明らかになりました。このため現在は、HSPG2遺伝子の異常によるものを狭義のシュワルツ・ヤンペル症候群(1型)とするのが一般的です。同じHSPG2遺伝子の機能がほぼ完全に失われると、新生児期に致死的となる分節異常性骨異形成症(シルバーマン・ハンドメーカー型)を発症します。このことから、両者は同じ遺伝子による疾患スペクトラムの軽症側と重症側にあたると考えられています。日本では指定難病の対象疾患に含まれています。

シュワルツ・ヤンペル症候群の疫学・患者数

世界的に極めてまれな疾患で、報告は国際的にも百数十例程度にとどまるとされます。正確な有病率はわかっていません。日本でも患者数は非常に少なく、指定難病の受給者数も少数にとどまると考えられます。血族婚の多い地域や集団で報告が多い傾向があり、常染色体潜性遺伝であることと矛盾しません。性差はないとされます。多くは出生時から乳幼児期(おおむね3歳まで)に、表情の乏しさ、眼瞼裂狭小、筋のこわばり、歩き方の異常、関節の動きの制限などで気づかれます。軽症例では学童期以降に診断されることもあります。まれな疾患であるため、診断までに時間がかかったり、他の筋疾患や骨系統疾患と診断されていたりする例もあると考えられます。

シュワルツ・ヤンペル症候群の原因・病態生理

原因は、1番染色体短腕(1p36)にあるHSPG2遺伝子の両アレル(父由来と母由来の両方)の病的バリアントです。HSPG2はパールカン(perlecan)というヘパラン硫酸プロテオグリカンをコードしています。パールカンは、筋線維や血管、軟骨など全身の基底膜と細胞外マトリックスに豊富に存在する巨大な分子です。遺伝形式は常染色体潜性(劣性)遺伝で、両親はそれぞれ1つずつ変異をもつ保因者(通常は無症状)です。シュワルツ・ヤンペル症候群では、ミスセンス変異やスプライス異常など、パールカンが量的に減ったり機能が部分的に残ったりする変異が多いとされます。一方、機能がほぼ完全に失われる変異では、より重症の分節異常性骨異形成症になると考えられています。既存解説にあったHSPB1遺伝子は、遺伝性運動ニューロパチーなどに関わる別の遺伝子であり、本症の原因ではありません。

神経筋症状のしくみとしては、神経筋接合部での役割が重要と考えられています。神経終末から放出されたアセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼは、コラーゲン様尾部(ColQ)を介してシナプス間隙の基底膜に固定されています。パールカンはこの固定の足場の一つです。パールカンが欠乏した動物モデルでは、終板のアセチルコリンエステラーゼが減少していることが示されています。その結果、アセチルコリンの作用が長引き、筋や神経末梢の興奮性が高まり、反復性の放電や持続的な筋活動が生じると考えられています。ただし、末梢神経終末の過剰興奮性や筋膜自体の性質の変化も関与するとの報告があり、詳しいしくみはまだ完全にはわかっていません。骨格の異常は、パールカンが軟骨の成長板で軟骨細胞の増殖・分化や成長因子のシグナル調節に関わることから、その機能低下による軟骨内骨化の障害で説明されています。顔面の特徴(眼瞼裂狭小、口すぼめ、顎の小ささ)は、表情筋の持続的な収縮と、顔面骨格の発育の変化が合わさって生じると考えられています。

シュワルツ・ヤンペル症候群の症状

  • ミオトニア様の筋のこわばり: 筋を収縮させた後に力が抜けにくく、手を握った後に開きにくい、動き始めがぎこちないなどの症状が出ます。寒さや緊張で強まることがあり、安静時にも持続的な筋活動がみられることが特徴です。
  • 眼瞼裂狭小・眼瞼けいれん様収縮: まぶたの開きが狭く、目が細く見えます。眼輪筋の持続的な収縮により、まぶたが閉じ気味になりやすく、視野が狭くなることがあります。
  • 仮面様顔貌・口すぼめ: 表情筋がこわばるため表情が乏しく見え、口をすぼめたような口元(すぼめ口)や小さな下顎が目立ちます。本人の感情が周囲に伝わりにくい原因にもなります。
  • 低身長・骨軟骨異形成: 脊椎の扁平化や、骨端・骨幹端の異形成により、体幹を中心とした低身長になります。骨盤や股関節の形成異常(臼蓋形成不全、内反股など)を伴うことが多いです。
  • 関節拘縮・可動域制限: 股関節、膝、肘、手指などの関節が曲がったまま伸びにくくなり、しゃがみ込みや細かい手作業が難しくなることがあります。
  • 歩行障害: 股関節の異常と筋のこわばりが重なり、動揺性歩行や屈曲位での歩行、転びやすさがみられます。年齢とともに歩行の持久力が問題になることがあります。
  • 脊柱変形・胸郭変形: 側弯や後弯、鳩胸などの胸郭の変形がみられることがあり、重症例では呼吸機能に影響します。
  • 筋肥大: 持続的な筋活動のため、太ももなどの筋がむしろ発達して見えることがあります。ただし筋力は必ずしも強くありません。
  • 高い声・発声と嚥下の問題: 喉頭周囲や口腔の筋のこわばりにより、甲高い声、話しにくさ、乳児期の哺乳困難やむせがみられることがあります。
  • 眼科的合併症: 近視、白内障、小角膜、睫毛重生(まつげが二列に生える)などが報告されています。視機能の定期的な評価が必要です。
  • その他の特徴: 耳介低位、小さい顎、臍ヘルニアや鼠径ヘルニア、小さい精巣などが報告されています。知的発達はおおむね正常な例が多いものの、一部に遅れを伴う例もあります。

シュワルツ・ヤンペル症候群の経過と合併症

症状は出生時から乳児期に始まり、幼児期から学童期にかけて、筋のこわばり、関節拘縮、骨格変形が目立ってくることが多いとされます。成長期には骨格の変形や関節拘縮が進むことがあります。一方、筋症状は思春期以降に比較的安定する例も報告されています。筋ジストロフィーのように筋が壊れて筋力低下が着実に進む疾患ではなく、生涯にわたって症状が持続しながらも、生命予後は比較的保たれる経過が一般的です。重症度には個人差が大きく、新生児期から哺乳や呼吸に支障があり集中治療を要する例から、成人期まで比較的自立して生活できる例まであります。新生児期から重い呼吸障害、骨の彎曲、体温調節異常などを示す場合は、別疾患であるスチューヴェ・ヴィーデマン症候群なども考慮する必要があります。

主な合併症として、次のようなものがあります。全身麻酔時の悪性高熱症様反応や、筋のこわばり・小さな顎・開口制限による挿管困難が報告されており、麻酔管理では特に注意が必要です。そのほか、股関節の亜脱臼・早期の変形性関節症、側弯の進行、胸郭変形による拘束性換気障害、睡眠時の呼吸障害、誤嚥性肺炎、近視や白内障による視力低下、眼瞼裂狭小による視野の制限・弱視があります。乳幼児期の哺乳障害や体重増加不良も問題になります。慢性的な関節痛や筋のこわばりによる疲れやすさ、活動の制限は、成人期のQOLに影響します。

シュワルツ・ヤンペル症候群の診断・診断基準

診断は、①特徴的な顔貌(眼瞼裂狭小、口すぼめ、仮面様顔貌)、②ミオトニア様の筋症状、③骨格異常の3つがそろうことから疑います。これに、針筋電図による持続的な異常放電の確認、全身骨X線による骨軟骨異形成の評価を組み合わせ、最終的には遺伝学的検査でHSPG2遺伝子の両アレルの病的バリアントを確認すると確定します。指定難病としての認定は、厚生労働省が定める診断基準と重症度分類に基づいて行われます。申請には指定医による臨床調査個人票の作成が必要です。まれな疾患であるため、小児神経科、整形外科、臨床遺伝科などの専門医が連携して評価することが望まれます。

  • 臨床所見の評価: 顔貌、筋のこわばり(握った手を開くのが遅れるなど)、関節可動域、歩き方、身長・体格を系統的に評価します。叩打ミオトニア(筋を叩くと収縮が続く現象)は目立たないこともあります。
  • 針筋電図: 安静時にも持続する反復性の放電、複合反復放電、ミオトニア様の放電が記録されます。古典的ミオトニアに特有の漸増・漸減する音(いわゆる急降下爆撃音)が典型的でない点は、ほかのミオトニー疾患との鑑別の参考になります。
  • 神経伝導検査: 神経の伝導速度は通常は正常です。神経を1回刺激したときに複数の反応(反復性の複合筋活動電位)が出るかどうかの評価が、神経筋接合部の異常を考える手がかりになることがあります。
  • 全身骨X線検査: 椎体の扁平化、骨端・骨幹端の異形成、臼蓋形成不全、内反股、側弯などを確認し、骨系統疾患としての特徴を評価します。
  • 血液検査(CK等): 血清CK(クレアチンキナーゼ)は正常か軽度上昇にとどまることが多く、高度の上昇があれば筋ジストロフィーなどほかの筋疾患を考えるきっかけになります。
  • 筋生検: 筋線維の大きさのばらつきなど、特異的でない軽い筋原性変化を示すことが多く、診断を確定する検査ではありません。現在は遺伝学的検査が優先されることが多いです。
  • 遺伝学的検査(HSPG2): HSPG2遺伝子の両アレルの病的バリアントの同定が確定診断になります。遺伝子が大きく変異の種類も多様なため、パネル解析や網羅的解析が用いられます。結果の解釈と家族への影響については、遺伝カウンセリングを併せて行います。
  • 眼科検査: 眼瞼裂の幅、視力、屈折(近視)、白内障、睫毛重生、角膜の大きさを評価し、弱視予防の必要性を判断します。
  • 呼吸・嚥下・睡眠の評価: 呼吸機能検査、睡眠時の呼吸評価、嚥下造影などで、合併症の有無と重症度を確認します。

シュワルツ・ヤンペル症候群と鑑別すべき疾患

  • 非ジストロフィー性ミオトニー症候群(先天性ミオトニーなど): 筋のこわばりは共通しますが、骨軟骨異形成や特徴的な顔貌を伴わず、原因はCLCN1やSCN4Aといったイオンチャネル遺伝子です。
  • 筋強直性ジストロフィー(先天型を含む): 常染色体顕性(優性)遺伝で、筋萎縮・筋力低下、白内障、心伝導障害、内分泌異常など多くの臓器に症状が出ます。先天型では乳児期の筋緊張低下が目立ち、骨軟骨異形成はみられません。
  • アイザックス症候群(末梢神経過興奮): 持続的な筋活動は似ていますが、多くは後天性・自己免疫性で、成人に多く、骨格異常や顔貌の特徴はありません。
  • スチューヴェ・ヴィーデマン症候群: LIFR遺伝子の異常によるもので、新生児期の呼吸・嚥下障害、長管骨の彎曲、体温調節障害などの自律神経症状を伴い、早期に致死的になりやすい点が異なります。
  • フリーマン・シェルドン症候群(遠位関節拘縮症): 口すぼめや手指の拘縮は似ていますが、筋電図で持続的なミオトニア様放電がみられず、MYH3遺伝子などが原因です。
  • 先天性筋無力症候群(終板アセチルコリンエステラーゼ欠損など): 筋電図での反復性反応という点で共通しますが、疲れやすさ(易疲労性)と筋力低下が主体で、骨軟骨異形成はありません。

シュワルツ・ヤンペル症候群の治療

現時点で、HSPG2遺伝子の異常そのものを治す根本的な治療はありません。治療は、①筋のこわばりを和らげる薬物療法、②関節拘縮や骨格変形に対する整形外科的治療とリハビリテーション、③眼・呼吸・嚥下などの合併症への対策、④麻酔時の安全確保、を組み合わせる対症療法が中心です。どの薬も本症に対して承認された適応はなく、使用経験の報告にもとづく選択となります。そのため、効果と副作用を主治医とよく相談したうえで判断することが大切です。小児神経科、整形外科、眼科、リハビリテーション科、麻酔科、耳鼻咽喉科、臨床遺伝科などによる多職種の連携が望まれます。

  • 筋のこわばりへの薬物療法: カルバマゼピンやメキシレチンなど、筋や神経の膜の興奮性を抑えるナトリウムチャネル遮断作用のある薬で、こわばりが和らいだという報告があります。いずれも本症への承認適応はなく、薬疹や心電図異常などの副作用を確認しながら、専門医の判断で慎重に用いられます。
  • ボツリヌス毒素注射: 眼瞼けいれん様の収縮や眼瞼裂狭小に対し、眼輪筋への局所注射で症状が軽くなった報告があります。効果は一時的なため、反復投与が必要になります。
  • 眼瞼・眼科的治療: 視野を妨げるほどの眼瞼裂狭小には眼瞼形成術が検討されます。近視の矯正、弱視訓練、白内障手術など、視機能を守る治療を行います。
  • 整形外科的治療: 股関節の形成不全や拘縮、側弯、足の変形に対し、装具療法、腱延長術、骨切り術、脊柱の手術などが検討されます。手術の時期は、成長や麻酔のリスクとあわせて判断します。
  • リハビリテーション: ストレッチ、関節可動域訓練、温熱、歩行訓練、作業療法で、拘縮の進行予防と日常生活動作の維持を図ります。寒冷を避けた環境で継続することが重要です。
  • 言語聴覚療法・摂食嚥下支援: 話しにくさや哺乳・嚥下の困難に対し、構音訓練、食形態の調整、姿勢の工夫などを行い、誤嚥性肺炎を予防します。
  • 麻酔時の安全管理: 悪性高熱症様反応や挿管困難のおそれがあるため、事前に麻酔科へ診断名を伝えます。脱分極性筋弛緩薬や揮発性吸入麻酔薬を避けるなどの配慮と、気道確保の準備を含む計画的な管理が推奨されます。
  • 呼吸管理: 胸郭の変形や睡眠時の呼吸障害が強い場合には、呼吸リハビリテーションや非侵襲的陽圧換気を検討し、感染症の予防(予防接種など)も行います。

シュワルツ・ヤンペル症候群の予後・長期フォロー

HSPG2遺伝子の異常による古典的なシュワルツ・ヤンペル症候群では、生命予後は比較的良好で、成人期まで生活している方も多く報告されています。一方、新生児期から呼吸や哺乳の障害が強い重症例では、乳児期の管理が予後を左右します。早期に致死的となる例の多くは、スチューヴェ・ヴィーデマン症候群など別の疾患であった可能性も指摘されています。QOLに大きく影響するのは、低身長、関節拘縮、股関節の障害による移動能力の制限、視機能の問題、慢性的な痛みや疲れやすさです。知的発達はおおむね保たれる例が多いため、適切な支援があれば教育や就労の機会を広げることができます。

長期のフォローアップでは、小児期は身長・体重と栄養、発達、哺乳・嚥下、視力と屈折、股関節と脊柱の状態を定期的に評価します。成長期には側弯や股関節の変化を画像で追います。成人期は、変形性関節症、慢性疼痛、呼吸機能、睡眠時の呼吸障害、移動手段や住環境の調整が主な課題です。手術や歯科処置で麻酔を受ける可能性はどの年代にもあります。かかりつけ医と専門医療機関が情報を共有しておくことが重要です。小児科から成人診療科への移行(トランジション)も、計画的に準備することが望まれます。

シュワルツ・ヤンペル症候群の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

筋のこわばりは寒さ、緊張、急な動き出しで強まりやすいため、保温を心がけ、動作の前に軽いストレッチやウォームアップを行うと動きやすくなることがあります。関節拘縮の予防には、毎日のストレッチと、無理のない範囲での水中運動などが有用です。ただし、関節に強い負担のかかる運動や転倒の危険が高い活動は、主治医やリハビリ担当者と相談してください。学校では、体育や移動、書字・作業の時間、座席や階段への配慮について、個別の支援計画を立ててもらうと安心です。歯科治療や手術の際には、必ず診断名と麻酔のリスクを伝えてください。診断名・麻酔上の注意・主治医の連絡先を書いたカード(緊急時連絡カード)を携帯することが勧められます。遺伝については、常染色体潜性遺伝のため、両親がともに保因者である場合、次の子が発症する確率は1/4とされます。患者本人の子どもが発症する確率は、配偶者が保因者でなければ通常は低くなります。家族計画、きょうだいの保因者検査、出生前診断の可否などは、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングで、十分な情報をもとに考えることが大切です。

利用できる制度・相談窓口

シュワルツ・ヤンペル症候群は指定難病の対象で、診断基準を満たし、重症度分類で一定以上と判定された場合などに、医療費助成(自己負担上限額の設定)を受けられます。申請は、指定医の作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成の対象となる場合があるため、最新の対象疾病一覧を主治医や自治体窓口で確認してください。そのほか、症状の程度に応じて、身体障害者手帳(肢体不自由、視覚障害など)、補装具・日常生活用具の給付、障害福祉サービス、特別児童扶養手当・障害児福祉手当、20歳以降の障害年金などが利用できる可能性があります。相談窓口としては、難病相談支援センター、保健所の難病担当保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、難病情報センターのウェブサイト、患者会・家族会が利用できます。就労については、ハローワークの難病患者就職サポーターも利用できます。

シュワルツ・ヤンペル症候群に伴う心のケア・心理社会的支援

難病を抱えて生きることは、身体症状だけでなく、心にも大きな負担をもたらします。抑うつ、不安、将来への悲観、適応障害などは決して珍しいことではありません。この疾患に特有の課題として、表情筋がこわばるため感情が顔に表れにくく、周囲から「無表情」「不機嫌」と誤解されやすいことがあります。これが友人関係や学校・職場でのコミュニケーションの悩みにつながることがあります。低身長や体型、顔貌の違いに対するいじめや、外見に関する自己イメージの悩みが思春期に強まることもあります。また、まれな病気のため同じ病気の人と出会いにくく、孤立感を抱きやすい点も特徴です。保護者は、遺伝性疾患であることへの罪責感、きょうだい児への配慮、介護負担を抱えやすいとされます。眠れない、楽しめない、登校・出勤がつらいといった状態が続くときは、一人で抱え込まず、主治医、心理職、スクールカウンセラー、精神科・心療内科、難病相談支援センターに相談してください。周囲に病気の特徴を説明する資料を主治医と一緒に用意しておくことも、誤解を減らす助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

シュワルツ・ヤンペル症候群の受診の目安

  • 乳児の哺乳がうまくいかない、むせが多い、体重が増えないときは、早めに受診してください。
  • 呼吸が苦しそう、いびきや睡眠中の無呼吸が目立つ、肺炎を繰り返すときは受診してください。
  • 手術や麻酔の後に高熱、筋の強いこわばり、濃い色の尿がみられたときは、悪性高熱症などの可能性があるため直ちに救急受診してください。
  • 股関節や膝の痛みが増す、歩ける距離が急に短くなった、背中の曲がりが目立ってきたときは、整形外科で評価を受けてください。
  • 見えにくさ、まぶたが開きにくくなった、目の濁りに気づいたときは、眼科を受診してください。
  • 新しい薬を始めた後に発疹、動悸、ふらつきなどが出たときは、服用を自己判断で続けず主治医に連絡してください。

シュワルツ・ヤンペル症候群についてのよくある質問

Q. この病気は目が動かなくなる病気ですか?

A. いいえ、眼球を動かす筋の麻痺は本症の典型的な症状ではありません。目に関する主な特徴は、まぶたの開きが狭いこと(眼瞼裂狭小)と、まぶたが縮こまるような持続的な収縮です。近視や白内障を伴うこともあるため、定期的な眼科受診が勧められます。

Q. 筋ジストロフィーのように筋力がどんどん落ちていくのでしょうか?

A. 本症は筋がこわばる性質が中心で、筋ジストロフィーのように筋が壊れて筋力低下が着実に進む疾患ではないとされます。成長期に関節拘縮や骨格変形が進むことはありますが、思春期以降は症状が比較的安定する例も報告されています。経過には個人差が大きいため、主治医と定期的に評価を続けることが大切です。

Q. 手術や歯の治療で気をつけることはありますか?

A. 全身麻酔で悪性高熱症に似た反応や挿管困難が起こりうると報告されているため、必ず事前に診断名を伝え、麻酔科医と相談してください。局所麻酔での歯科治療でも、開口制限などへの配慮が必要になることがあります。診断名と注意点を書いたカードを持ち歩くと安心です。

Q. 次の子どもにも遺伝しますか?

A. 常染色体潜性遺伝のため、両親がともに保因者であれば、子どもが発症する確率は妊娠ごとに1/4とされます。正確なリスクの評価や検査の選択肢は家族ごとに異なります。臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。