膿疱性乾癬

Generalized Pustular Psoriasis, GPP

膿疱性乾癬(Generalized Pustular Psoriasis, GPP)|膿疱性乾癬(汎発型、GPP)は、発熱や全身のだるさとともに、赤くなった皮膚に細菌のいない(無菌性の)膿疱が急に多発する、まれで重い炎症性皮膚疾患です。乳幼児から高齢者まで発症し、発作(フレア)のたびに脱水、感染症、臓器障害などで入院治療が必要になることがあります。日本では指定難病(告示番号37)に指定されています。近年、IL-36という炎症物質の経路が病気の中心であることがわかり、治療の選択肢が広がっています。

膿疱性乾癬の要点

膿疱性乾癬(汎発型)は、発熱などの全身症状とともに、赤くなった皮膚に細菌のいない無菌性の膿疱が急に多発する、まれで重い炎症性皮膚疾患です。IL-36経路を中心とした自然免疫の過剰な活性化が関与し、発作を繰り返すことがあり、日本では指定難病(告示番号37)です。

別名・略称汎発型膿疱性乾癬、汎発性膿疱性乾癬、GPP
分野皮膚疾患
好発年齢乳幼児から高齢者まで幅広く発症
主な症状発熱、悪寒、全身倦怠感、皮膚の赤みと無菌性膿疱の多発
遺伝多くは単一遺伝性ではないが、IL36RN遺伝子変異が関与する例がある
主な検査血液検査(炎症反応・白血球数など)、皮膚生検
主な治療内服薬(レチノイド・シクロスポリンなど)、生物学的製剤、顆粒球・単球吸着除去療法など
受診する主な診療科皮膚科

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膿疱性乾癬とは

膿疱性乾癬(汎発型)は、全身または広い範囲の潮紅(赤み)した皮膚に、好中球が集まってできた無菌性膿疱が多発し、ときに融合して「膿海(のうかい)」と呼ばれる膿の湖のような状態になる疾患です。発熱、悪寒、全身倦怠感、関節痛などの全身症状を伴い、発作を繰り返すのが特徴です。名前に「乾癬」とありますが、ふつうの乾癬(尋常性乾癬)が重くなった病気というだけではありません。尋常性乾癬の既往がない人にも起こり、遺伝的な背景や免疫の仕組みにも違いがあることがわかっています。現在は、自然免疫系の過剰な活性化が中心となる自己炎症性の要素が強い病気と考えられています。古い説明では「自己免疫が皮膚を攻撃する」とされることがありますが、それだけでは病態を十分に表していません。

病型としては、急激に発症し高熱を伴う古典的なツンブッシュ(von Zumbusch)型が代表的です。ほかに、環状の紅斑の辺縁に膿疱が並ぶ環状型、妊娠中に発症する疱疹状膿痂疹(妊娠関連の膿疱性乾癬)、乳児・小児に発症する型などがあります。また、尋常性乾癬の経過中に膿疱化するタイプと、尋常性乾癬の先行がなく最初から膿疱で発症するタイプにも分けられます。手のひら・足の裏に限局する掌蹠膿疱症や、指先に限局する稽留性肢端皮膚炎(アロポー)は限局型の膿疱性疾患で、汎発型とは区別して扱われます。ただし、これらから汎発型へ移行する例もあります。日本では日本皮膚科学会が中心となって診断基準と重症度分類、診療ガイドラインが整備されています。指定難病の医療費助成は、この重症度分類に基づいて判定されます。

膿疱性乾癬の疫学・患者数

膿疱性乾癬(汎発型)は乾癬全体のごく一部を占めるまれな病型で、日本では指定難病の医療受給者証を持つ患者数は2千人前後と報告されています。軽症で申請していない人も含めると、実際の患者数はこれより多い可能性があります。発症年齢は幅広く、乳幼児期・小児期に始まる例と、成人期(中高年を含む)に始まる例の二つの山があるとされます。性差は大きくなく、ほぼ同程度と考えられています。疫学研究からは、欧米に比べて日本を含む東アジアで報告が比較的多い傾向がうかがわれます。日本人では、尋常性乾癬が先行しない例の一部に、後述するIL36RN遺伝子の変異が高い頻度で見つかることが知られています。妊娠を契機に発症・悪化する女性例もあり、周産期医療との連携が必要になる場面があります。

膿疱性乾癬の原因・病態生理

発症の中心にあるのは、皮膚の自然免疫を担うサイトカインの一つであるIL-36の経路の過剰な活性化です。IL-36は表皮の角化細胞から産生され、角化細胞自身や樹状細胞に働きかけて、好中球を呼び寄せるケモカイン(CXCL1、CXCL8=IL-8など)や、IL-1、IL-17、TNF-αなどの炎症性サイトカインを誘導します。遺伝的要因としては、IL-36受容体の働きを抑えるIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失型変異が最もよく知られています。これは主に常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、「DITRA(IL-36受容体拮抗因子欠損症)」とも呼ばれます。日本人では尋常性乾癬の先行しないGPPでこの変異の頻度が高いと報告されています。ほかにも、NF-κB経路を活性化させるCARD14遺伝子の変異や、AP1S3、MPO、SERPINA3などの遺伝子の関与が報告されています。ただし、遺伝子変異が見つからない患者も多く、単一の遺伝子だけで説明できる病気ではありません。家族内発症はまれで、変異があっても必ず発症するわけではありません。

発症・再燃には、体質に何らかの「引き金」が加わることが多いとされます。代表的な誘因は次のとおりです。<br>・上気道炎などの感染症<br>・妊娠<br>・月経<br>・低カルシウム血症<br>・精神的・身体的ストレス<br>・副腎皮質ステロイドの全身投与の急な減量・中止<br>・一部の薬剤<br>引き金が加わると、角化細胞で活性型IL-36が増え、ケモカインを介して好中球が表皮に大量に流れ込みます。好中球は表皮上層の角層の直下に集まり、海綿状の膿疱(Kogoj海綿状膿疱)や角層下膿疱を形成します。好中球が放出するプロテアーゼはIL-36をさらに活性化させるため、炎症が自己増幅するループが生じます。全身では炎症性サイトカインが血中に増え、発熱、白血球増多、CRP上昇が起こります。さらに血管の透過性が高まることで、浮腫、低アルブミン血症、脱水、循環不全へと進むことがあります。

膿疱性乾癬の症状

  • 無菌性膿疱の多発: 潮紅した皮膚に直径数mm程度の黄白色の膿疱が急速に多発します。膿疱の中から細菌は検出されないのが原則です。
  • 膿海の形成: 膿疱が互いに融合し、膿の湖のような広い病変(膿海)をつくることがあります。破れるとびらんや痂皮になります。
  • 広範な潮紅・紅皮症: 皮膚が全身性に赤くなり、ほぼ全身が赤くなる紅皮症の状態に至ることもあります。灼熱感やヒリヒリした痛みを伴います。
  • 発熱・悪寒: 膿疱の出現と前後して38〜40℃前後の高熱や悪寒戦慄が見られることが多いです。膿疱が波状に新生するのに合わせて発熱を繰り返します。
  • 全身倦怠感・食欲低下: 強い炎症によって倦怠感や食欲不振が生じ、日常生活が困難になります。高齢者では全身状態が急速に悪化することがあります。
  • 浮腫: 血管透過性の亢進や低アルブミン血症のため、手足やまぶたなどがむくみます。重症例では体液バランスの管理が必要です。
  • 皮膚の痛み・灼熱感・かゆみ: 膿疱・紅斑部には痛みや焼けるような感覚が強く、かゆみを伴うこともあります。衣類との摩擦や歩行がつらくなります。
  • 鱗屑・落屑: 膿疱が乾くと痂皮や膜状の落屑となってはがれ落ちます。尋常性乾癬が先行する例では、銀白色の鱗屑を伴う紅斑もみられます。
  • 関節症状: 関節の痛みや腫れ(乾癬性関節炎)を伴うことがあり、指趾の関節や脊椎・仙腸関節などに起こります。放置すると関節変形につながることがあります。
  • 爪の変化: 爪の点状陥凹、混濁、爪甲剥離のほか、爪の下や周囲に膿疱ができることがあります。
  • 口腔・眼の症状: 舌に地図状の模様(地図状舌・溝状舌)が見られることがあります。また、結膜炎、角膜炎、ぶどう膜炎などの眼の炎症を合併することがあります。
  • 脱水・体重減少: 皮膚からの水分・蛋白の喪失と発熱により、脱水や体重減少が起こります。乳幼児や高齢者では特に注意が必要です。

膿疱性乾癬の経過と合併症

経過は個人差が大きいものの、多くは急性の発作(フレア)と比較的落ち着いた時期を繰り返す慢性・再発性の経過をとります。発作時には数日のうちに膿疱が全身へ拡大し、膿疱の新生が波状に続きます。適切な治療で数週間程度かけて鎮静化し、落屑を経て紅斑が引いていきます。発作の間欠期には皮膚がほぼ正常になる人もいます。一方で、尋常性乾癬の皮疹が残る人や、局所的な膿疱が持続する人もいます。発作の頻度は年に数回から数年に1回まで様々です。誘因を契機に再燃することが多く、とくに妊娠のたびに悪化する例や、ステロイド内服の減量時に再燃する例が知られています。小児発症例でも成人まで再発を繰り返すことがあります。

合併症は、急性期の全身性合併症と、慢性期の合併症に分けて考えます。急性期には次のようなものがあります。<br>・脱水、電解質異常(とくに低カルシウム血症)、低アルブミン血症<br>・皮膚のバリア破綻による細菌感染、敗血症<br>・急性腎障害<br>・肝機能障害(好中球性胆管炎による胆汁うっ滞を含む)<br>・毛細血管漏出症候群や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)<br>・高齢者や心疾患のある人での心不全<br>これらは生命に関わることがあります。慢性期には次のような問題が生じます。<br>・乾癬性関節炎による関節破壊<br>・ぶどう膜炎などの眼合併症<br>・長期の慢性炎症による続発性(AA)アミロイドーシス<br>・肥満、糖尿病、脂質異常症、心血管疾患などの乾癬に関連する併存症<br>・治療薬(免疫抑制薬、レチノイド等)の副作用

膿疱性乾癬の診断・診断基準

診断は、特徴的な臨床像(全身症状を伴う潮紅皮膚上の無菌性膿疱の多発)と、皮膚生検による病理組織所見を組み合わせて行います。日本の診断基準(指定難病の基準)では、主要項目として次の4点が挙げられています。<br>①発熱あるいは全身倦怠感などの全身症状<br>②全身または広範囲の潮紅皮膚面に無菌性膿疱が多発し、ときに融合して膿海を形成する<br>③病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明する<br>④以上の臨床的・組織学的所見を繰り返し生じる(初発の場合は臨床経過から判断する)<br>4項目すべてを満たすものが確実例、②と③を満たすものが疑い例とされます。あわせて血液検査で炎症の程度や臓器障害を評価し、感染症や薬疹などの類似疾患を除外します。重症度は、皮膚症状(紅斑、膿疱を伴う紅斑、浮腫の面積)と全身症状・検査所見(発熱、白血球数、CRP、血清アルブミン)を点数化して、軽症・中等症・重症に分類します。この重症度が治療方針や医療費助成の判定に用いられます。

  • 皮膚の視診・臨床評価: 潮紅の範囲、膿疱の分布と融合、浮腫の有無を評価します。尋常性乾癬の既往、誘因(感染、妊娠、薬剤、ステロイドの減量)も詳しく確認します。
  • 皮膚生検(病理組織検査): 表皮上層にKogoj海綿状膿疱や好中球性の角層下膿疱がみられることが診断の要です。乾癬様の表皮肥厚を伴うこともあります。
  • 膿疱内容の細菌・真菌検査: 膿疱の内容を培養・鏡検し、細菌や真菌が検出されない(無菌性である)ことを確認して、感染症を除外します。
  • 血液検査(炎症マーカー): 白血球増多(核の左方移動)、CRP上昇、赤沈亢進が典型的です。IgGやIgAが上昇することもあります。
  • 血液生化学検査: 低蛋白・低アルブミン血症、低カルシウム血症、腎機能・肝機能障害(胆道系酵素の上昇を含む)の有無を確認し、全身管理の指標とします。
  • 血液培養など感染症評価: 高熱時には敗血症の合併を見逃さないよう血液培養を行います。治療で免疫抑制薬や生物学的製剤を使う前には、結核やB型肝炎などのスクリーニングも行います。
  • 重症度分類: 皮膚症状スコアと全身症状・検査所見のスコアの合計で、軽症・中等症・重症を判定します。治療強度の決定と医療費助成の判定に用いられます。
  • 遺伝子検査(IL36RNなど): 尋常性乾癬の先行がない例や小児発症例などでは、研究・専門施設でIL36RN遺伝子などの解析が検討されることがあります。結果は病態の理解に役立ちますが、診断に必須ではありません。
  • 関節・眼の評価: 関節痛がある場合は画像検査などで乾癬性関節炎を評価します。眼の症状がある場合は眼科でぶどう膜炎などを確認します。

膿疱性乾癬と鑑別すべき疾患

  • 急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP): 主に薬剤内服後、数日以内に間擦部などから小膿疱が急速に多発する薬疹です。原因薬剤を中止すると比較的速やかに改善し、通常は繰り返さない点がGPPと異なります。
  • 角層下膿疱症(Sneddon-Wilkinson病): 体幹や間擦部に環状・弧状の膿疱が慢性的に生じますが、全身症状は乏しいことが多く、GPPのような高熱や強い炎症反応は通常みられません。
  • IgA天疱瘡: 膿疱を形成する自己免疫性水疱症の一種です。蛍光抗体法で表皮細胞間にIgAの沈着を認めることで鑑別します。
  • 細菌性膿痂疹・ブドウ球菌感染症: 膿疱内容から細菌が検出されることでGPPと区別されます。抗菌薬で改善することも鑑別の手がかりになります。
  • 皮膚カンジダ症: 間擦部の紅斑と衛星状の小膿疱が特徴です。直接鏡検で真菌を確認できる点で区別します。
  • スティーヴンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症: 発熱と広範な皮膚障害を伴う重症薬疹です。粘膜のびらんや表皮の壊死・剥離が主体で、膿疱は主体ではありません。

膿疱性乾癬の治療

治療の基本は、①急性期の全身管理と炎症の速やかな鎮静化、②再燃予防のための維持療法の二本立てです。発作時、とくに中等症以上では入院が原則です。補液、電解質(カルシウムなど)・栄養・体温の管理、感染対策を行いながら、全身療法を開始します。全身療法の選択には次のような要素が関わります。<br>・重症度、年齢<br>・妊娠の有無や希望<br>・肝・腎機能、感染症の既往、併存症<br>・これまでの治療への反応<br>エトレチナート、シクロスポリン、メトトレキサートなどの内服薬に加え、近年は複数の生物学的製剤がGPPに対して国内で承認されています。IL-36受容体を標的とする抗体薬も登場しました。副腎皮質ステロイドの全身投与は、減量時の反跳(リバウンド)による悪化が知られているため、一般には慎重に扱われます。ただし、妊娠時や重篤な全身症状がある場合など、状況によって選択されることがあります。治療は日本皮膚科学会のガイドラインなどを参考に、皮膚科専門医が中心となって個別に判断します。薬の選択や変更については、必ず主治医とよく相談してください。

  • 急性期の全身管理(支持療法): 入院のうえで補液、電解質(特に低カルシウム血症)の補正、蛋白・栄養の補給、解熱、皮膚の清潔保持を行います。敗血症や心不全、呼吸不全の徴候があれば集中治療を含めて対応します。
  • エトレチナート(内服レチノイド): 国内で長く使われてきたGPPの代表的な治療薬で、膿疱の新生を抑える効果が期待されます。強い催奇形性があり、服用中だけでなく中止後も長期間の避妊が必要(女性では特に長期)です。小児では骨への影響にも配慮します。
  • シクロスポリン: T細胞の働きを抑える免疫抑制薬で、比較的速やかな効果が期待されます。腎機能障害や高血圧に注意し、血中濃度をモニタリングしながら使用します。
  • メトトレキサート: 維持療法などに用いられる薬で、葉酸の併用や、肝機能・骨髄抑制・間質性肺炎の監視が必要です。妊娠中は禁忌です。
  • 生物学的製剤(TNF・IL-17・IL-23などを標的とするもの): TNF-α、IL-17、IL-23などを阻害する複数の抗体製剤が、国内でGPPに対する適応を有しています。急性期と維持期の両方で用いられます。投与前には結核やB型肝炎などの感染症スクリーニングが必須です。
  • 抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ): 病態の中心であるIL-36の経路を直接阻害する抗体薬で、GPPの急性発作に対して国内で承認されています。点滴により膿疱が速やかに消退することが臨床試験で示されています。使用法や再燃予防への位置づけについては専門医と相談します。
  • 顆粒球・単球吸着除去療法(GMA): 血液を体外に循環させ、活性化した好中球や単球を吸着・除去する治療で、国内でGPPに対して保険適用があります。薬剤が使いにくい場合や妊娠中などの選択肢の一つとなります。
  • 副腎皮質ステロイド全身投与: 急速な鎮静化が得られる反面、減量・中止時に再燃・悪化しやすいことが知られています。そのため一般には第一選択とせず、妊娠時や重篤例など限られた状況で慎重に使用されます。
  • 外用療法・光線療法・スキンケア: 急性期を過ぎた後や残存病変には、ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、保湿剤、ナローバンドUVBなどの光線療法を組み合わせることがあります。急性期の強い炎症時は、光線療法は通常避けられます。

膿疱性乾癬の予後・長期フォロー

かつては重症発作により命を落とす例も少なくない病気でした。現在では、全身管理の進歩と有効な全身療法・生物学的製剤の普及により、生命予後は大きく改善しています。それでも、高齢者や心・腎・肝疾患などの併存症がある人の重症発作では、敗血症や循環・呼吸不全などにより命に関わることがあると報告されています。発作初期の迅速な受診と入院治療が重要です。生活の質(QOL)の面では、次のような負担が大きく、仕事・学業・家庭生活に影響が及びやすい病気です。<br>・繰り返す発作と入院<br>・皮膚の痛みと外見の変化<br>・関節症状<br>・治療薬の副作用への不安<br>・医療費<br>一方、維持療法が奏効すれば長期間発作のない状態を保てる人も増えています。

長期的には、皮膚科での定期受診に加えて次の点を継続的にフォローします。<br>・乾癬性関節炎、眼の炎症、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などの心血管リスク<br>・腎機能、肝機能、アミロイドーシスの徴候<br>・薬剤の副作用:シクロスポリンでは腎機能・血圧、メトトレキサートでは肝・肺・血球、エトレチナートでは脂質・肝機能・骨、生物学的製剤では感染症<br>小児発症例では、成長・発達への影響と、成人診療科への移行(トランジション)を計画的に進めます。妊娠を考える女性は、使用中の薬剤の催奇形性や妊娠中の再燃リスクがあるため、妊娠を計画する段階から皮膚科と産科の双方に相談することが勧められます。

膿疱性乾癬の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、発作の誘因をできるだけ避けることが大切です。かぜなどの感染症を予防し、手洗いやうがいを心がけましょう。予防接種は主治医と相談して受けてください。生物学的製剤や免疫抑制薬の使用中は、生ワクチンが原則として使用できないなどの制約があります。ほかの病気で治療を受ける際や、ステロイドの内服・注射を受ける際は、膿疱性乾癬であることを必ず伝えてください。自己判断で薬を急に中止することは避けましょう。スキンケアの基本は次のとおりです。<br>・入浴やシャワーで皮膚を清潔に保つ<br>・刺激の少ない保湿剤で乾燥を防ぐ<br>・摩擦の少ない衣類を選ぶ<br>喫煙は乾癬や膿疱性疾患を悪化させる要因とされるため、禁煙が勧められます。肥満の是正、節酒、十分な睡眠、ストレスへの対処も大切です。エトレチナートを服用中・服用後の人は、指示された期間の避妊を守り、その期間は献血もできません。遺伝については、IL36RN変異によるものは主に常染色体潜性(劣性)遺伝です。親子間でそのまま受け継がれることは多くなく、家族内発症もまれとされます。家族計画などで心配がある場合は、遺伝カウンセリングを行う医療機関(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー)に相談できます。

利用できる制度・相談窓口

膿疱性乾癬(汎発型)は指定難病(告示番号37)です。診断基準を満たし、重症度分類で中等症以上と判定された場合などに、難病指定医の診断書(臨床調査個人票)をもとに医療費助成を受けられます。軽症であっても、医療費が高額な状態が続く場合には、「軽症高額該当」として助成対象となる仕組みがあります。申請窓口は、お住まいの都道府県・指定都市の保健所や難病担当窓口です。生物学的製剤など高額な治療では、医療保険の高額療養費制度との併用も確認しておくとよいでしょう。18歳未満(継続の場合は20歳未満)の小児では、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となりうるため、主治医や自治体に確認してください。関節症状や皮膚症状で日常生活・就労に長期的な支障がある場合は、程度によって障害年金の対象となる可能性があります。身体障害者手帳には皮膚の障害という区分はありませんが、関節の機能障害が残った場合には肢体不自由として対象となる可能性があります。年金事務所や市区町村の窓口に相談できます。各都道府県の難病相談支援センターでは、療養・就労・制度に関する相談を受け付けています。乾癬の患者会では、同じ病気の人との情報交換が可能です。病院の医療ソーシャルワーカーも制度利用の相談に応じてくれます。

膿疱性乾癬に伴う心のケア・心理社会的支援

膿疱性乾癬は、いつ起こるかわからない発作と入院を繰り返すため、先の見通しが立てにくい病気です。そのため、強い不安や抑うつ、適応障害が生じやすいことが知られています。この病気に特有の心理社会的な負担には次のようなものがあります。<br>・目に見える皮膚の変化や落屑による外見の悩み<br>・「うつるのでは」という周囲の誤解や偏見<br>・入浴施設やプールの利用、人前で肌を見せることへのためらい<br>・発作による欠勤・欠席で就労や学業を続けにくいこと<br>・妊娠・出産をめぐる迷い<br>・皮膚の痛みやかゆみによる睡眠障害<br>膿疱性乾癬は感染症ではなく、人にうつることはありません。家族や職場・学校にこのことを正しく伝えることも、本人を支える大切な一歩です。気分の落ち込みが続く、眠れない、何事にも興味が持てないといった状態があれば、我慢せず主治医に伝えてください。必要に応じて心療内科・精神科、公認心理師などの専門家に相談することが勧められます。患者会や難病相談支援センターで同じ立場の人と話すことが、孤立感の軽減につながることもあります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

膿疱性乾癬の受診の目安

  • 赤くなった皮膚に小さな膿疱が急に広がり始めたときは、早めに皮膚科を受診してください。
  • 38℃以上の発熱、悪寒、強いだるさを伴って膿疱が増えている場合は、当日中の受診を検討してください。
  • 水分が取れない、尿が極端に少ない、ふらつく、息苦しい、意識がぼんやりする、むくみが急に強くなった場合は、救急受診してください。
  • 妊娠中に膿疱を伴う発疹や発熱が出た場合は、速やかに産科と皮膚科に連絡してください。
  • 治療中に高熱、咳、息切れなどの感染症を疑う症状や、目の充血・痛み・見えにくさが出た場合は、早めに主治医へ相談してください。
  • 関節の腫れや痛み、朝のこわばりが続く場合は、関節炎の評価を受けるために主治医に伝えてください。

膿疱性乾癬についてのよくある質問

Q. 膿疱性乾癬は人にうつりますか?

A. うつりません。膿疱の中身は細菌ではなく、体の免疫細胞(好中球)が集まったもので、無菌性です。家族や周囲の人が接触しても感染することはありません。

Q. ふつうの乾癬(尋常性乾癬)とはどう違うのですか?

A. 尋常性乾癬は銀白色の鱗屑を伴う紅斑が主体で、全身症状はまれです。膿疱性乾癬(汎発型)は発熱などの全身症状とともに無菌性膿疱が広範囲に出る病気で、IL-36という炎症経路が強く関わっています。尋常性乾癬から移行する例もあれば、尋常性乾癬なしで発症する例もあります。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 関連遺伝子として知られるIL36RNの変異は主に常染色体潜性(劣性)遺伝で、親から子へそのまま病気が受け継がれることは多くありません。家族内発症もまれとされます。心配な場合は遺伝カウンセリングで個別に相談できます。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 多くの方が妊娠・出産を経験していますが、妊娠を契機に悪化することがあり、使用中の薬によっては妊娠前から中止や長期の避妊が必要です(特にエトレチナート)。妊娠を考えた段階で、皮膚科と産科の主治医に相談し、計画的に準備することが大切です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。