原発性側索硬化症

Primary Lateral Sclerosis, PLS

原発性側索硬化症(Primary Lateral Sclerosis, PLS)|原発性側索硬化症(PLS)は、大脳から脊髄へ運動の指令を伝える上位運動ニューロンだけがゆっくり変性していく、まれな神経変性疾患です。主に40〜60歳代の成人に発症し、両脚のつっぱり(痙縮)による歩行障害から始まることが多く、のちに腕や、話す・飲み込む機能に広がることがあります。筋萎縮性側索硬化症(ALS)と似ていますが、進行ははるかに緩やかで、生命予後は比較的保たれることが多い疾患です。

原発性側索硬化症の要点

原発性側索硬化症(PLS)は、大脳から脊髄へ指令を伝える上位運動ニューロンだけがゆっくり変性する、まれな神経変性疾患です。両脚のつっぱり(痙縮)による歩行障害で始まることが多く、のちに腕や話す・飲み込む機能に広がることがあり、指定難病に指定されています。

別名・略称PLS
分野神経・筋疾患
好発年齢主に40〜60歳代の成人
主な症状痙縮、腱反射亢進、病的反射、歩行障害、偽性球麻痺
ALSとの違い筋萎縮や線維束性収縮は通常みられず、進行は緩やか
主な検査神経学的診察、MRI、筋電図(他疾患やALSとの鑑別)
主な治療痙縮に対する薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法
受診する主な診療科神経内科

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原発性側索硬化症とは

運動ニューロンには2種類あります。1つは、大脳皮質の一次運動野(中心前回)から脊髄・脳幹へ軸索を伸ばす上位運動ニューロンです。もう1つは、脊髄前角・脳神経運動核から筋肉へ線維を送る下位運動ニューロンです。PLSでは上位運動ニューロン(皮質脊髄路・皮質延髄路)が選択的に障害され、下位運動ニューロンは臨床的にほぼ保たれます。このため、腱反射亢進、病的反射(バビンスキー徴候など)、痙縮、偽性球麻痺といった上位運動ニューロン徴候が中心となります。ALSで目立つ筋萎縮や線維束性収縮(筋肉のピクピクした動き)は、通常みられません。日本では指定難病(告示番号4)に指定されています。なお、PLSの主症状は、筋肉が持続的に硬くつっぱる痙縮です。発作的に起こる「けいれん」とは異なります。ALSでよくみられる筋けいれん(こむら返り)は、PLSでは目立たないことが多い点にも注意が必要です。

PLSは1870年代にシャルコーやエルプらによって記載されましたが、剖検で確認された純粋例が少なく、独立した疾患単位かどうか長く議論されてきました。現在は、運動ニューロン疾患(MND)の一つで、ALSと連続するスペクトラムの一端と考えられています。経過中に下位運動ニューロン徴候が出現してALSへ移行する例があるため、発症早期には診断を確定できません。1992年のPringleらの診断基準では発症から3年以上の経過が求められ、2020年の国際コンセンサス基準(Turnerら)では、25歳以上で発症し、上位運動ニューロン徴候のみの状態が発症から2〜4年なら「probable PLS」、4年以上続けば「definite PLS」とされています。発症部位により、下肢発症型(最多)、球(延髄)発症型、上肢発症型、片側優位に進行する型(ミルズ型)などに分けられます。小児期に発症する若年性PLSは別の遺伝性疾患として区別されます。

原発性側索硬化症の疫学・患者数

PLSは運動ニューロン疾患全体の数%(おおむね1〜5%程度)を占めるにすぎない、非常にまれな疾患とされます。有病率は人口10万人あたり1人に満たないとする報告が多く、日本の患者数も少数です。ALSと区別されないまま「上位運動ニューロン優位型ALS」や「痙性対麻痺」として扱われている例もあるとみられ、正確な頻度は分かっていません。発症年齢は平均50歳前後で、ALSよりやや若い傾向があるとされます。性差は報告によってまちまちで、明らかな差はないか、男性にやや多いとする報告があります。大部分は孤発性(家族内に同じ病気の人がいない)です。

原発性側索硬化症の原因・病態生理

成人発症のPLSの原因は解明されていません。ほとんどが孤発性で、明確な遺伝形式は確認されていません。ALSや前頭側頭型認知症の原因として知られるC9orf72遺伝子の異常伸長などが、PLSの臨床像を示す患者でまれに見つかったとする報告はありますが、一般的ではありません。一方、乳幼児期〜小児期に発症する若年性PLSは、ALS2遺伝子(alsinをコードする)の変異による常染色体劣性遺伝性疾患として知られ、成人のPLSとは別に扱われます。感染症や自己免疫といった特定の環境因子が原因であるという確立した証拠はありません。

病理学的には、一次運動野の大型錐体細胞(ベッツ細胞)が選択的に失われ、運動野の皮質が萎縮し、皮質脊髄路・皮質延髄路の軸索が変性します。剖検例の多くでは、ALSや前頭側頭葉変性症と同じく、TDP-43という蛋白質の異常凝集(封入体)が運動野などに認められ、PLSがTDP-43が関わる疾患スペクトラム(ALS—FTLD)に属することを示唆しています。一部の例ではタウ蛋白の蓄積が主体であったとの報告もあり、病理学的には均一ではない可能性があります。脊髄前角細胞は比較的保たれますが、軽い変化がみられることもあり、ALSとの境界が連続的であることを裏付けています。上位運動ニューロンが障害されると、脊髄反射に対する抑制が外れ、筋緊張の亢進(痙縮)、反射亢進、病的反射が現れます。脳幹へ向かう皮質延髄路が両側性に障害されると、構音・嚥下の障害や感情の抑制障害(偽性球麻痺)が生じます。

原発性側索硬化症の症状

  • 下肢の痙縮・歩行障害: 最も多い初発症状で、脚のつっぱりやこわばりにより足が前に出にくく、つまずきやすくなります。はさみ脚歩行や、つま先を引きずる歩き方がみられます。
  • 筋力低下: 筋力低下は痙縮に比べて軽いことが多いですが、動作が遅くぎこちなくなり、疲れやすくなります。筋萎縮はALSと異なり目立ちません。
  • 腱反射亢進・病的反射: 膝や足首の腱反射が強く出て、足クローヌスやバビンスキー徴候、ホフマン徴候などがみられます。診察で上位運動ニューロン障害を示す重要な所見です。
  • 上肢の巧緻運動障害: 病気が腕に広がると、ボタンかけや書字などの細かい動作が難しくなります。片側から始まり、同側の上下肢へ進む例もあります。
  • 構音障害(痙性): 舌や口の動きが硬くなり、ゆっくりで力の入った、聞き取りにくい話し方になります。球発症型では初発症状となります。
  • 嚥下障害: 飲み込みのタイミングがずれ、むせやすくなります。進行例では誤嚥性肺炎や栄養低下の原因となります。
  • 情動調節障害(仮性球麻痺性情動): 悲しくも楽しくもないのに泣いたり笑ったりが止まらなくなる症状で、病的泣き・病的笑いとも呼ばれます。本人の性格や気持ちの問題ではなく、脳の抑制回路の障害によるものです。
  • 排尿障害: 尿意切迫感や頻尿など、過活動膀胱の症状がみられることがあります。
  • バランス障害・転倒: 痙縮とバランス反応の低下により転びやすくなり、骨折などのけがにつながります。
  • 筋のこわばりによる痛み・疲労: 痙縮に伴う筋肉の張りや痛み、夜間の筋のつっぱり、全身の疲労感がQOLを下げる原因となります。
  • 軽度の認知・行動の変化: 多くの患者では認知機能は保たれますが、注意や遂行機能に軽い低下がみられることがあると報告されています。明らかな認知症は少数です。

原発性側索硬化症の経過と合併症

PLSは数年から数十年かけて非常にゆっくり進行します。典型的には、片側または両側の下肢の痙縮から始まり、数年の経過で上肢、さらに球症状(構音・嚥下障害)へと上行性に広がります。症状が一定の水準で長期間ほぼ横ばいになる時期をもつ人もいます。多くの患者は発症後も長い年月、杖や歩行器を使いながら歩行を維持しますが、進行例では車いすが必要になります。重要な点として、発症から数年以内に筋萎縮や線維束性収縮、針筋電図での脱神経所見が出現し、ALS(上位運動ニューロン優位型ALS)へ移行する例があります。発症から4年を過ぎても上位運動ニューロン徴候のみの場合、その後ALSへ移行する可能性は低くなるとされます。

主な合併症は、転倒による骨折・頭部外傷、嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎・窒息・低栄養、構音障害によるコミュニケーション障害、長期の痙縮による関節拘縮や疼痛、運動量の低下による体重増加や骨粗鬆症、排尿障害による尿路感染症などです。抑うつ・不安もしばしば合併します。ALSと異なり呼吸筋麻痺による呼吸不全はまれですが、高度の球症状や誤嚥を伴う場合には呼吸機能の評価が必要です。

原発性側索硬化症の診断・診断基準

PLSには、それだけで診断を確定できる検査はありません。診断は、①上位運動ニューロン徴候が緩徐に進行していることを臨床的に確認し、②下位運動ニューロン障害がないことを電気生理学的に確かめ、③同じような症状を起こす治療可能な疾患や遺伝性疾患を検査で除外する、という3段階で進めます。さらに、ALSへの移行の有無を見極めるため、一定期間の経過観察が欠かせません。日本の指定難病の診断基準も、成人発症で緩徐進行性の上位運動ニューロン障害であること、下位運動ニューロン徴候がないこと、類似疾患が除外されることを要件としています。診断には神経内科専門医による評価が必要で、とくに初期には「PLSの疑い」として定期的に再評価が行われます。

  • 神経学的診察: 痙縮、腱反射亢進、病的反射、偽性球麻痺などの上位運動ニューロン徴候の分布と進行を評価し、筋萎縮・線維束性収縮・感覚障害がないことを確認します。
  • 針筋電図: 最も重要な検査の一つで、ALSを示す活動性脱神経所見(線維自発電位・陽性鋭波)や慢性神経原性変化が広くみられないことを確かめます。国際基準では、ごく限られた筋の軽微な所見は許容されています。
  • 神経伝導検査: 末梢神経障害や運動ニューロパチーを除外するために行います。上位運動ニューロン障害を直接確認する検査ではなく、PLSでは通常は正常です。
  • 脳・脊髄MRI: 頸椎症性脊髄症などの圧迫病変、多発性硬化症、腫瘍、脊髄の血管病変などの除外が主目的です。PLSでは中心前回の萎縮や、T2*強調像・磁化率強調像で運動野皮質が低信号になる所見(motor band sign)、皮質脊髄路の信号変化がみられることがあります。
  • 経頭蓋磁気刺激検査(TMS): 大脳運動野を磁気で刺激し、中枢運動伝導時間の延長や誘発電位の消失から上位運動ニューロン障害を客観的に裏付けます。実施できる施設は限られます。
  • 血液検査: ビタミンB12・銅欠乏、甲状腺・副甲状腺機能異常、梅毒、HIV、HTLV-1抗体などを調べ、痙性麻痺をきたす治療可能な疾患を除外します。男性では副腎脊髄ニューロパチーを除外するため極長鎖脂肪酸の測定も考慮されます。
  • 髄液検査: オリゴクローナルバンドやIgG指数、細胞数などから多発性硬化症や炎症性・感染性脊髄症を除外します。HTLV-1関連脊髄症が疑われる場合は髄液中の抗体も調べます。
  • 遺伝学的検査: 家族歴がある場合や若年発症、緩徐な対称性の痙性対麻痺のみの場合には、遺伝性痙性対麻痺などの鑑別のため検討されます。実施は遺伝カウンセリング体制のもとで行われます。
  • 診断基準(国際コンセンサス基準・指定難病基準): 2020年の国際基準では、25歳以上発症、上位運動ニューロン徴候のみが2〜4年でprobable、4年以上でdefiniteとされます。医療費助成の申請には日本の指定難病診断基準に基づく臨床調査個人票が必要です。

原発性側索硬化症と鑑別すべき疾患

  • 筋萎縮性側索硬化症(上位運動ニューロン優位型): 初期はPLSと区別が難しく、経過中の筋萎縮・線維束性収縮や針筋電図での脱神経所見の出現によって鑑別します。
  • 遺伝性痙性対麻痺: 家族歴を持つことが多く、下肢に限局した対称性の痙縮が長期間続き、上肢・球症状が乏しい点や遺伝学的検査で鑑別します。
  • 頸椎症性脊髄症・後縦靱帯骨化症などの圧迫性脊髄症: MRIで脊髄圧迫を認め、感覚障害や頸部痛を伴うことが多く、手術で改善しうる点が重要です。
  • 多発性硬化症(一次性進行型): MRIでの脳・脊髄の脱髄病変、髄液オリゴクローナルバンド、感覚障害や視覚障害の有無で鑑別します。
  • HTLV-1関連脊髄症(HAM): 血清・髄液のHTLV-1抗体陽性、排尿障害や感覚障害が目立つ点で鑑別します。
  • 副腎脊髄ニューロパチー・ビタミンB12/銅欠乏性脊髄症: 極長鎖脂肪酸の上昇やビタミン・銅の欠乏、後索障害(振動覚・位置覚低下)を伴う点で鑑別し、後者は補充で改善が期待できます。

原発性側索硬化症の治療

現時点で、PLSの進行を止めたり遅らせたりすることが証明された治療はありません。ALSに用いられる薬剤についても、PLSで有効性が確立されたものはなく、保険適用もALSに限られています。このため治療の中心は、痙縮・痛み・構音嚥下障害・情動調節障害・排尿障害などの症状を和らげ、歩行や日常生活動作をできるだけ長く保つ対症療法とリハビリテーションです。痙縮は歩行を支える役割も担っており、薬で筋緊張を下げすぎるとかえって脚の踏ん張りが効かなくなり歩きにくくなることがあるため、効果と副作用を見ながら慎重に調整します。神経内科医、リハビリテーション科医、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、看護師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどによる多職種チームでの長期的な支援が理想的です。具体的な治療の選択は、主治医・専門医とよく相談して決めてください。

  • リハビリテーション(理学療法・作業療法): ストレッチや関節可動域訓練で痙縮と拘縮を防ぎ、筋力・バランス・歩行の訓練を行います。住環境の調整や自助具の活用など、生活に合わせた工夫も重要です。
  • 内服の抗痙縮薬: バクロフェン、チザニジン、ダントロレン、エペリゾンなどが痙縮の軽減に用いられます。眠気、脱力感、肝機能障害などの副作用に注意しながら少量から調整します。
  • ボツリヌス療法: 痙縮の強い筋肉に局所的に注射して筋緊張を和らげる治療で、日本では上肢・下肢の痙縮に対して保険適用があります。効果は数か月持続し、リハビリと組み合わせることで効果が高まります。
  • 髄腔内バクロフェン療法(ITB療法): 内服で十分な効果が得られない重度の痙縮に対し、ポンプを体内に埋め込み脊髄周囲へバクロフェンを持続投与する治療です。適応は専門施設で慎重に判断されます。
  • 装具・歩行補助具: 短下肢装具(AFO)、杖、歩行器、車いすなどを症状に応じて使い分け、転倒予防と移動能力の維持を図ります。
  • 言語聴覚療法・嚥下リハビリテーション: 発声・構音訓練、食形態の調整(とろみ付けなど)、安全な食べ方の指導を行います。会話が難しくなった場合は文字盤や意思伝達装置などのコミュニケーション支援を検討します。
  • 栄養管理と胃ろう: 嚥下障害が進み栄養や水分が十分にとれない、または誤嚥を繰り返す場合には、胃ろう造設による経管栄養が選択肢となります。
  • 情動調節障害・抑うつへの薬物療法: 病的泣き・笑いや抑うつに対して、一部の抗うつ薬が用いられることがあります。使用は症状の程度や副作用を考慮して主治医が判断します。
  • 排尿障害・疼痛への対症療法: 過活動膀胱には抗コリン薬やβ3作動薬などが、痙縮に伴う痛みには鎮痛薬などが検討されます。

原発性側索硬化症の予後・長期フォロー

PLSの生命予後は、ALSと比べて明らかに良好です。発症後10年以上、時には数十年にわたり生活される方も多く、寿命への影響は比較的少ないとする報告が多くあります。ただし、機能面では緩やかに障害が進み、長期的には歩行に補助具や車いすが必要になる方が少なくありません。球症状が強い場合には、誤嚥性肺炎や栄養障害が予後やQOLに影響します。また、初期にPLSと考えられていても、経過中にALSへ移行した場合は、ALSとしての予後や治療方針の見直しが必要になります。上位運動ニューロン徴候のみの状態が長く続くほど、ALSへ移行する可能性は低くなると考えられています。

長期フォローアップでは、神経内科専門医による定期的な診察で症状の広がりや進行速度を評価し、必要に応じて針筋電図を再検査してALSへの移行がないかを確認します。歩行・上肢機能・構音嚥下機能を定期的に評価し、抗痙縮薬やボツリヌス療法、装具、リハビリ内容を見直します。体重や栄養状態、嚥下機能の評価(嚥下造影・嚥下内視鏡検査など)、骨密度、排尿状態、気分の変化なども確認します。進行に応じて、将来の療養場所や医療処置についての希望を家族や医療者と話し合っておくこと(アドバンス・ケア・プランニング)も大切です。

原発性側索硬化症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、転倒予防が最も重要です。手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材や履き慣れた靴の使用、夜間照明などで住環境を整えましょう。毎日のストレッチは痙縮や拘縮の予防に役立ちます。無理のない範囲で運動習慣を続け、過度な疲労は避けるようにします。寒さや体調不良、便秘、膀胱炎、痛みなどは痙縮を悪化させることがあるので、体調管理も意識しましょう。むせが増えてきたら、食事の姿勢、一口量、とろみの利用など言語聴覚士の指導を受け、口腔ケアを丁寧に行うことで誤嚥性肺炎の予防につなげます。仕事は、通勤や作業内容の調整、在宅勤務の活用などで続けている方も多く、職場や産業医への相談も有効です。成人発症のPLSのほとんどは遺伝しないと考えられていますが、家族に同じような症状の方がいる場合や遺伝について不安がある場合には、遺伝カウンセリングを受けることができます。家族は介護を一人で抱え込まず、訪問看護やヘルパー、レスパイトなどを活用しましょう。

利用できる制度・相談窓口

原発性側索硬化症は指定難病(告示番号4)であり、診断基準を満たし、重症度基準(日常生活の障害の程度などで判定)に該当する場合には、医療費助成を受けられます。重症度基準に該当しない軽症の方でも、医療費が一定額を超える月が年間に一定回数以上ある場合には「軽症高額該当」として対象になることがあります。申請は、指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(多くは保健所)で行います。歩行や上肢の障害、言語・嚥下の障害の程度に応じて身体障害者手帳の交付を受けると、補装具の給付や各種割引・税制優遇などを利用できます。指定難病の患者は障害者総合支援法のサービス(居宅介護、日常生活用具の給付など)の対象にもなります。65歳以上の方は介護保険の要介護認定を受けて介護サービスを利用できます。40〜64歳の方の場合、PLSは介護保険の16特定疾病に含まれていないため、原則として介護保険ではなく障害福祉サービスを利用することになります(詳細は市区町村で確認してください)。仕事や日常生活に著しい制限がある場合は障害年金の対象となる可能性があります。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の難病担当保健師、病院の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあります。

原発性側索硬化症に伴う心のケア・心理社会的支援

難病の診断を受けることは、大きな心理的負担になります。PLSに特有の悩みとして、まず「診断のあいまいさ」があります。発症初期には確定診断に数年を要し、ALSへの移行の可能性を説明されることで、強い不安を抱えたまま過ごす方が少なくありません。また、ALSと比較されることが多いため、情報収集の過程でALSの厳しい予後に関する情報に触れ、必要以上に悲観してしまうこともあります。進行は緩やかでも長期にわたり少しずつ機能を失っていく経験は、喪失感や抑うつ、将来への不安、仕事や家庭での役割の変化に伴う適応障害につながることがあります。構音障害や病的泣き・笑いは人との交流をためらわせ、社会的孤立の原因にもなりえます。病的泣き・笑いは病気の症状であり、周囲がそれを理解することが本人の安心につながります。気分の落ち込み、眠れない、意欲がわかないといった状態が続く場合は、我慢せずに主治医に伝え、必要に応じて心療内科・精神科、臨床心理士などの支援を受けてください。患者会や難病相談支援センターで同じ病気の方と交流することも、孤立感の軽減に役立ちます。介護する家族の心身の負担にも目を向け、家族自身も相談できる場を持つことが大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

原発性側索硬化症の受診の目安

  • 脚のつっぱりや歩きにくさ、つまずきやすさが数か月以上かけて少しずつ悪化している場合は、神経内科を受診してください。
  • PLSと診断されている方で、筋肉のやせや筋肉のピクピクした動き(線維束性収縮)が新たに出てきた場合は、早めに主治医に相談してください。
  • 食事や水分でむせることが増えた、体重が減ってきた場合は、嚥下評価や栄養管理のために受診してください。
  • 発熱、咳、痰の増加、息苦しさがある場合は誤嚥性肺炎の可能性があるため、速やかに受診してください。
  • 食べ物を喉に詰まらせて呼吸ができない、意識がおかしいなどの場合は、ためらわずに救急要請してください。
  • 転倒して強い痛みがある、頭を打って様子がおかしい場合は、骨折や頭部外傷の可能性があるため救急受診してください。

原発性側索硬化症についてのよくある質問

Q. PLSはALSになってしまうのですか?

A. 一部の方は、発症から数年以内に下位運動ニューロンの症状が現れてALSへ移行することがあります。ただし、上位運動ニューロンの症状だけの状態が4年以上続く場合、その後にALSへ移行する可能性は低くなるとされています。定期的な診察と筋電図検査で経過を確認していきます。

Q. 寿命は短くなりますか?

A. PLSはALSと比べて進行が非常に緩やかで、10年以上、時には数十年にわたって生活されている方が多くいます。生命予後への影響は比較的少ないとされますが、嚥下障害による誤嚥性肺炎などには注意が必要です。個々の見通しについては主治医と相談してください。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 成人で発症するPLSのほとんどは孤発性で、遺伝する可能性は低いと考えられています。ただし、家族に同様の症状の方がいる場合は遺伝性痙性対麻痺などの可能性も考える必要があるため、遺伝カウンセリングの利用をお勧めします。

Q. 運動は続けたほうがよいですか?

A. ストレッチや無理のない範囲の運動は、痙縮や関節の拘縮を防ぎ、体力や気分の維持にも役立ちます。一方で疲れすぎや転倒には注意が必要です。理学療法士と相談し、ご自身の状態に合った運動の内容と量を決めることが大切です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。