高安動脈炎

Takayasu's Arteritis

高安動脈炎(Takayasu's Arteritis)|高安動脈炎は、大動脈とそこから枝分かれする太い動脈に原因不明の炎症が起こる大型血管炎です。日本では若い女性に多く、腕の脈が触れにくい、左右の血圧差、めまい、高血圧、心臓弁膜症などを生じます。治療で多くの方が日常生活を送れるようになりましたが、再燃しやすく、長く付き合う慢性疾患です。

高安動脈炎の要点

高安動脈炎は、大動脈とその主要な枝に原因不明の肉芽腫性炎症が起こり、血管の狭窄・閉塞や拡張(動脈瘤)を生じる大型血管炎です。若い女性に多く、発熱や倦怠感、腕の脈の減弱、左右の血圧差、めまい、高血圧などがみられ、日本では指定難病(告示番号40)です。

別名・略称大動脈炎症候群、脈なし病、高安病、TAK、Takayasu disease、Pulseless disease
分野免疫・膠原病・自己炎症
分類大型血管炎(Chapel Hill 2012)
好発日本では若い女性に多い
主な症状発熱・倦怠感、腕の脈が弱い、左右の血圧差、めまい、高血圧
主な検査血液検査(炎症反応)、CT・MRI・血管造影などの画像検査
主な治療副腎皮質ステロイドが中心。免疫抑制薬や生物学的製剤を併用することがある
受診する主な診療科リウマチ・膠原病内科、循環器内科

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高安動脈炎とは

高安動脈炎(Takayasu arteritis: TAK)は、大動脈、その主要分枝(腕頭動脈・総頸動脈・鎖骨下動脈・腎動脈など)、冠動脈、肺動脈に肉芽腫性の全層性動脈炎が起こる疾患です。炎症で血管壁が厚くなり、内腔の狭窄・閉塞を起こします。弾性線維が壊れると、逆に拡張・動脈瘤ができることもあります。病初期の発熱や倦怠感などの全身炎症と、後から現れる虚血症状・臓器障害の二つの顔を持つ点が特徴です。国際的な血管炎分類(Chapel Hill 2012)では、巨細胞性動脈炎とともに大型血管炎に分類されます。

1908年に眼科医の高安右人が、特徴的な眼底の血管吻合(花冠状吻合)を報告したことに名称が由来します。のちに上肢の脈が触れにくくなる病態と結びつき、かつては「脈なし病」「大動脈炎症候群」とも呼ばれました。病変部位による分類として、血管造影所見に基づく沼野分類(1996年)が広く使われます。I型は大動脈弓分枝のみ、IIa型は上行大動脈・弓部とその分枝、IIb型はIIa型に下行胸部大動脈を加えたもの、III型は下行胸部・腹部大動脈や腎動脈、IV型は腹部大動脈や腎動脈、V型は全大動脈に病変が及ぶものです。冠動脈病変はC(+)、肺動脈病変はP(+)と付記します。日本ではI型とV型が比較的多いとされます。日本では指定難病(告示番号40)に指定されています。

高安動脈炎の疫学・患者数

日本で医療費助成を受けている患者数は数千人規模(おおむね5,000〜6,000人程度)と報告されています。助成を受けていない軽症例を含めると、実際の患者数はさらに多いと考えられます。新規発症はまれで、年間発症率は人口100万人あたり数人程度と推定されます。女性が約8〜9割を占めます。発症は10〜30歳代に多く、20歳前後にピークがあります。近年は画像診断の進歩により、中高年での診断例や男性例も増えています。アジア、特に日本・中国・インドなどで多く、欧米では少ない傾向があります。日本人患者の一部(数%〜1割弱)には潰瘍性大腸炎の合併がみられます。

高安動脈炎の原因・病態生理

原因は解明されていません。遺伝的な素因に、感染などの環境因子が加わって、免疫が血管壁を攻撃するようになると考えられています。単一遺伝子による遺伝病ではなく、親から子へ一定の確率で遺伝する疾患ではありません。疾患感受性遺伝子としては、HLA-B*52:01との強い関連が日本人で繰り返し確認されています。HLA-B*52陽性例は炎症が強い、大動脈弁閉鎖不全を合併しやすいといった報告があります。ゲノムワイド関連解析では、IL-12/IL-23経路にかかわるIL12B領域などの関与も報告されています。潰瘍性大腸炎との合併が多いことも、共通する免疫学的背景を示唆しています。

病変は血管外膜側の栄養血管(vasa vasorum)周囲から始まると考えられています。樹状細胞が活性化し、CD4陽性T細胞(Th1・Th17)、CD8陽性T細胞、NK細胞、γδT細胞、マクロファージなどが外膜・中膜に浸潤して、肉芽腫や巨細胞を形成します。IFN-γ、TNF-α、IL-6、IL-17などのサイトカインが炎症を増幅し、IL-6は肝臓でのCRP産生や発熱・倦怠感の主な担い手になります。炎症が続くと、中膜の平滑筋や弾性板が破壊され、内膜は反応性に線維性肥厚を起こし、外膜は線維化します。内膜肥厚と線維化が優位なら狭窄・閉塞、弾性板破壊が優位なら拡張・瘤形成に向かいます。狭窄が徐々に進む間に側副血行路が発達するため、閉塞があっても症状が軽いことがあります。腎動脈狭窄や大動脈の狭窄・弾性低下は高血圧を、上行大動脈の拡張は大動脈弁閉鎖不全(AR)をもたらし、これらが長期予後を左右します。

高安動脈炎の症状

  • 発熱・全身倦怠感・体重減少: 病初期や再燃時にみられる非特異的な全身症状です。原因不明の発熱(不明熱)として長く診断がつかないこともあります。
  • 頸部痛(頸動脈痛): 炎症を起こした総頸動脈に沿って、首に痛みや圧痛が出ることがあります。かぜや甲状腺炎と誤られやすい症状です。
  • 上肢の脈拍減弱・消失、左右の血圧差: 鎖骨下動脈の狭窄により、片腕の脈が触れにくくなります。左右の上腕血圧に10mmHg以上の差が出ることがあり、健診で偶然見つかる契機にもなります。
  • 上肢の易疲労感・跛行: 腕を使い続けると、だるさや痛みが出ます。洗髪や物干しなど腕を上げる動作で目立ちます。
  • めまい・失神・頭痛: 頸動脈や椎骨動脈の狭窄、鎖骨下動脈盗血現象で脳血流が低下して起こります。上を向く動作で誘発されることがあります。
  • 視力障害: 一過性の視界の暗転や視力低下が起こることがあります。進行例では、眼底に特徴的な血管吻合(高安網膜症)がみられます。
  • 高血圧: 腎動脈狭窄や大動脈の狭窄によって生じます。若年者の高血圧では本症を疑う重要な手がかりです。脈の弱い腕で測ると低く出るため、見逃されることがあります。
  • 血管雑音: 頸部、鎖骨上窩、腹部などで聴診器により狭窄部の雑音が聴かれます。診断の重要な身体所見です。
  • 息切れ・動悸・胸痛: 大動脈弁閉鎖不全による心不全や、冠動脈入口部の狭窄による狭心症で起こります。肺動脈病変でも息切れが出ることがあります。
  • 下肢の跛行・腹痛: 腹部大動脈や腸骨動脈の病変では歩行時の脚の痛みが、腸間膜動脈の病変では食後の腹痛が出ることがあります。
  • 皮膚症状・関節痛: 結節性紅斑、壊疽性膿皮症、関節痛などを伴うことがあります。

高安動脈炎の経過と合併症

典型的には、発熱などの全身炎症が目立つ活動期が先行し、のちに血管の狭窄・拡張による虚血症状や臓器障害が前面に出る経過をたどります。ただし、診断時にすでに狭窄が完成している例や、明らかな全身症状がないまま進行する例も少なくありません。治療で炎症が鎮まっても、ステロイド減量中や中止後の再燃が多く、半数程度は経過中に再燃を経験するとの報告があります。また、CRPが正常でも画像上は血管炎が進行している場合があり、臨床的寛解と組織学的な活動性は必ずしも一致しません。いったん完成した狭窄や瘤は薬物療法では元に戻りにくいため、早期診断と炎症の持続的な抑制が重要です。

主な合併症は次の通りです。大動脈弁閉鎖不全とそれに伴う心不全、高血圧(腎血管性高血圧、大動脈縮窄様病変による)、脳梗塞・一過性脳虚血発作、大動脈瘤・解離・破裂、冠動脈狭窄による狭心症・心筋梗塞、肺動脈狭窄・肺高血圧、腎機能障害、高安網膜症による視力障害などです。また、治療薬に関連して、ステロイドによる骨粗鬆症・糖尿病・脂質異常症・感染症・白内障、免疫抑制薬による感染症や血球減少にも注意が必要です。長期罹病例では動脈硬化が加わり、心血管イベントのリスクが上がることも知られています。

高安動脈炎の診断・診断基準

診断に特異的な血液マーカーはありません。症状・身体所見と画像検査を組み合わせ、ほかの疾患を除外して総合的に判断します。まず問診と診察で、左右の脈・血圧差(四肢の血圧測定)と頸部・腹部の血管雑音を確認し、血液検査で炎症反応を評価します。次に、造影CT、MRI/MRA、超音波、FDG-PETなどで大動脈とその主要分枝の壁肥厚・狭窄・拡張の分布を調べます。日本の指定難病の診断基準では、画像で大動脈やその一次分枝に多発性またはびまん性の肥厚・狭窄・拡張性病変を認め、動脈硬化、炎症性腹部大動脈瘤、感染性動脈瘤、先天性血管異常、巨細胞性動脈炎などを除外することが中心となります。診断後は、心エコーや眼底検査などで合併症を評価し、治療方針を決めます。

  • 血液検査(CRP・赤沈など): 活動期にはCRP上昇、赤沈亢進、貧血、血小板増多、γグロブリン上昇などがみられます。ただし正常でも活動性を否定できず、IL-6阻害薬の使用中はCRPが上がりにくい点に注意が必要です。
  • 四肢血圧測定・身体診察: 左右上肢および上下肢の血圧差、脈拍の左右差、血管雑音を確認します。簡便ですが診断の出発点として非常に重要です。
  • 造影CT・CT血管造影: 大動脈と分枝の壁肥厚、狭窄、拡張、石灰化を全体的に評価できます。活動期には造影早期に内膜側が低吸収、外膜側が濃染する二重リング像がみられることがあります。
  • MRI・MR血管造影: 被ばくがなく、壁の肥厚・浮腫・造影効果と内腔の評価ができます。若年女性の繰り返しのフォローアップに適しています。
  • 頸動脈超音波検査: 総頸動脈のびまん性の全周性壁肥厚(マカロニサイン)が特徴的です。外来で繰り返し行える有用な検査です。
  • FDG-PET/CT: 血管壁へのFDG集積で、炎症の広がりと活動性を可視化します。日本では他の検査で病変の局在や活動性の判断がつかない場合などに、一定の条件下で保険適用があります。
  • 心エコー・心電図: 大動脈弁閉鎖不全、上行大動脈の拡張、心機能、肺高血圧を評価します。予後に直結するため、定期的に行います。
  • 眼底検査: 網膜血管の拡張、小血管瘤、花冠状吻合などの高安網膜症や高血圧性変化を評価します。
  • 分類基準(ACR 1990、ACR/EULAR 2022): 研究用の分類基準で、2022年基準では60歳以下と画像上の血管炎所見を必須とし、臨床・画像項目の点数で分類します。個々の患者の確定診断基準ではない点に留意します。

高安動脈炎と鑑別すべき疾患

  • 巨細胞性動脈炎: 50歳以上に多く、側頭動脈病変や頭痛、顎跛行、リウマチ性多発筋痛症を伴いやすい点で区別されますが、大型血管病変だけでは鑑別が難しいことがあります。
  • 動脈硬化症: 高齢、喫煙、糖尿病などの危険因子があり、分岐部の偏心性プラークや石灰化が主体で、全周性の均一な壁肥厚や炎症反応は乏しい点が異なります。
  • ベーチェット病(血管型): 口腔潰瘍、外陰部潰瘍、ぶどう膜炎などを伴い、動脈瘤や静脈血栓が目立つ点が鑑別点です。
  • IgG4関連疾患(大動脈周囲炎): 中高年男性に多く、血清IgG4高値や他臓器病変を伴い、主に腹部大動脈周囲の外膜側が肥厚します。
  • 感染性大動脈炎・梅毒性大動脈炎: 血液培養や梅毒血清反応で鑑別し、免疫抑制治療の前に必ず除外が必要です。
  • 遺伝性結合組織疾患・線維筋性異形成: マルファン症候群などは炎症所見を欠く大動脈拡張を示し、線維筋性異形成は腎動脈中遠位部の数珠状狭窄が特徴です。

高安動脈炎の治療

治療の目標は、血管の炎症を速やかに鎮めて新たな狭窄・拡張を防ぎ、再燃を抑えながらステロイドを可能な限り減量することです。あわせて、高血圧や心臓弁膜症などの合併症を管理し、臓器障害を防ぎます。活動期には、副腎皮質ステロイドを中心とした寛解導入療法を行います。再燃例やステロイド減量が難しい例では、生物学的製剤や免疫抑制薬を併用します。日本循環器学会などによる血管炎症候群の診療ガイドラインが診療の参考とされています。高度な狭窄や瘤、重い大動脈弁閉鎖不全には血行再建術や弁手術を検討しますが、原則として炎症が十分に落ち着いた時期に行うのが望ましいとされます。治療内容は病変の範囲、活動性、年齢、妊娠希望、合併症などで大きく変わるため、膠原病・リウマチ内科、循環器内科、心臓血管外科などが連携し、主治医とよく相談して決めることが大切です。

  • 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど): 寛解導入の基本薬です。目安として体重1kgあたり0.5〜1mg/日程度で開始し、数週間後から症状・炎症反応・画像を見ながら漸減します。減量中の再燃が多いため、減量は慎重に行います。
  • IL-6受容体阻害薬(トシリズマブ皮下注): 日本では2017年に、既存治療で効果不十分な高安動脈炎に承認されました。再燃抑制とステロイド減量効果が期待されます。使用中はCRPや発熱が出にくく、感染症や病勢の評価に注意が必要です。
  • 免疫抑制薬: メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シクロホスファミドなどが、ステロイド減量目的で用いられることがあります。本症に対しては適応外使用となる薬剤もあり、催奇形性を持つ薬剤もあるため、妊娠計画との調整が必要です。
  • TNF阻害薬など: インフリキシマブなどのTNF阻害薬が難治例に有効であったとの報告があります。ただし、日本での本症への適用状況は限られており、専門施設で個別に検討されます。
  • 抗血小板薬: 脳梗塞などの虚血性合併症の予防を目的に、低用量アスピリンなどが用いられることがあります。
  • 降圧療法・心不全治療: 腎血管性高血圧などに対して降圧薬を用います。血圧は狭窄のない肢で測定し、腎動脈狭窄がある場合は薬剤選択と腎機能に注意します。ARによる心不全には内科的治療を行います。
  • 血行再建術(バイパス術・血管内治療): 重い虚血症状、コントロール困難な腎血管性高血圧、脳虚血などに対して行います。カテーテルによる拡張術は再狭窄が比較的多く、病変によっては外科的バイパスが選ばれます。
  • 大動脈弁・大動脈手術: 高度の大動脈弁閉鎖不全や上行大動脈拡張に対して、弁置換術や基部置換術などを行います。術後は吻合部の仮性瘤や人工弁の離脱に注意が必要で、術前後の炎症制御が重要です。
  • 副作用予防と支持療法: ステロイド性骨粗鬆症の予防、ニューモシスチス肺炎の予防投与、ワクチン接種、血糖・脂質の管理などを、治療と並行して行います。

高安動脈炎の予後・長期フォロー

かつては予後不良の病気と考えられていましたが、診断技術と治療の進歩により、現在では多くの患者が長期にわたり社会生活を送れるようになっています。生命予後を左右するのは、主に大動脈弁閉鎖不全による心不全、重症高血圧、大動脈瘤の破裂・解離、脳血管障害、冠動脈病変などの合併症です。そのため、これらを早期に発見して適切に介入することが重要です。一方で、再燃しやすいことや長期のステロイド使用による副作用が、生活の質(QOL)に影響します。慢性的な倦怠感や上肢の疲れやすさが残る方もいます。

炎症が落ち着いた後も、生涯にわたる定期的なフォローアップが必要です。外来では、症状、四肢血圧、血管雑音、CRP・赤沈などを定期的に確認します。さらに、超音波、MRI/CT、心エコーなどで病変の進行、新たな瘤、弁膜症の悪化を評価します。IL-6阻害薬の使用中は血液検査で活動性を判断しにくいため、画像評価の重要性が増します。ステロイドや免疫抑制薬の副作用チェック(骨密度、血糖、眼科検診など)も欠かせません。長期罹患者では動脈硬化の危険因子を管理し、手術後は吻合部の異常の有無を継続して観察します。

高安動脈炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

血圧は、主治医から指示された狭窄のない腕または脚で測定します。家庭血圧を記録して受診時に持参すると、治療に役立ちます。禁煙、適正体重の維持、減塩、適度な運動で、動脈硬化の進行を抑えることが大切です。ステロイドや免疫抑制薬の使用中は、手洗い・うがい、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種(生ワクチンは原則避ける)で感染予防に努めます。自己判断で薬を中断すると、再燃や副腎不全の危険があります。妊娠・出産は、病状が安定していれば可能な場合が多いとされます。ただし、高血圧や大動脈弁閉鎖不全、使用中の薬剤(メトトレキサートやミコフェノール酸モフェチルなど)の影響があるため、妊娠を希望する段階で主治医に相談し、計画的に準備することが重要です。妊娠中は産科・内科が連携して管理します。本症は単純な遺伝病ではなく、子どもに発症する可能性は一般に低いと考えられていますが、不安があれば遺伝相談を受けることもできます。

利用できる制度・相談窓口

高安動脈炎は指定難病で、診断基準を満たし重症度分類で一定以上に該当する場合、または軽症でも医療費が一定額を超える月が続く場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請には難病指定医の臨床調査個人票が必要で、窓口は都道府県・指定都市の保健所などです。18歳未満(継続例は20歳未満)では小児慢性特定疾病の医療費助成の対象となることがあります。医療費が高額になる場合は高額療養費制度が、休職中は傷病手当金が利用できます。弁置換術後の心機能障害や、脳梗塞後の後遺症などがある場合は、身体障害者手帳や障害年金の対象となることがあります。40〜64歳で脳血管疾患による介護が必要になった場合は、介護保険の対象になり得ます。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、医療機関の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーター、患者会などがあります。

高安動脈炎に伴う心のケア・心理社会的支援

若くして診断されることが多いため、進学、就職、結婚、妊娠・出産といった人生の節目と治療の時期が重なりやすい病気です。これが大きな心理的負担になります。再燃への不安、外見からは理解されにくい倦怠感、ステロイドによる顔つきや体型の変化(満月様顔貌)、気分の変動や不眠も、抑うつや不安、適応障害の要因となり得ます。「将来、脳梗塞や心臓の病気が起こるのでは」という漠然とした恐れを抱え続ける方も少なくありません。こうした気持ちは決して特別なものではありません。気分の落ち込みや眠れない状態が続くときは、主治医に遠慮なく伝えてください。必要に応じて、心療内科・精神科、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーへの相談につなげてもらうことが大切です。同じ病気の人と体験を分かち合える患者会も支えになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

高安動脈炎の受診の目安

  • 突然の激しい胸痛や背部痛、冷や汗がある場合は、大動脈解離や心筋梗塞の可能性があるため、直ちに救急車を呼んでください。
  • 片側の手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、急に片目が見えなくなったなどの症状は、脳梗塞などの疑いがあり、すぐに救急受診が必要です。
  • 失神した、または安静時や横になったときにも息苦しさが続く場合は、速やかに受診してください。
  • ステロイドや免疫抑制薬・生物学的製剤の使用中に、発熱、咳、強いだるさが出た場合は、早めに主治医へ連絡してください。
  • 治療中に微熱、頸部痛、腕の疲れやすさの悪化、家庭血圧の上昇がみられる場合は、再燃の可能性があるため予定より早く受診を検討してください。
  • 若い方で左右の腕の血圧差や脈の弱さを指摘された、原因不明の発熱が続くといった場合は、内科(膠原病・リウマチ内科、循環器内科)を受診してください。

高安動脈炎についてのよくある質問

Q. 高安動脈炎は治る病気ですか?

A. 完全に治すことは現時点では難しいものの、治療で炎症を抑え、長期間安定した状態(寛解)を保つことは多くの方で可能です。ただし再燃することがあるため、症状がなくても定期的な通院と検査を続けることが大切です。

Q. ステロイドはいつまで飲む必要がありますか?

A. 病状によって異なり、少量を長く続ける方もいれば、中止できる方もいます。減量のペースは症状、血液検査、画像所見を見ながら主治医が判断します。自己判断で中止すると再燃や体調悪化の危険があるため、必ず相談してください。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 病状が安定していれば、妊娠・出産が可能な方は多いとされています。ただし、高血圧、心臓弁膜症、使用中の薬の影響を事前に調整する必要があります。妊娠を考えた時点で主治医に相談し、計画的に準備することが勧められます。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 特定の体質(HLA型など)が発症しやすさに関係していますが、親から子へ高い確率で受け継がれる遺伝病ではありません。子どもが発症する可能性は一般に低いと考えられています。心配な場合は主治医や遺伝カウンセリングで相談できます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。