巨細胞性動脈炎

Giant Cell Arteritis, GCA

巨細胞性動脈炎(Giant Cell Arteritis, GCA)|巨細胞性動脈炎(GCA)は、主に50歳以上の人に起こり、大動脈とその主要な分枝(特に頭部・頸部の動脈)に肉芽腫性の炎症を生じる大型血管炎です。新たに始まった頭痛、こめかみの圧痛、噛むと顎が疲れて痛む症状(顎跛行)、発熱や体重減少などがみられます。突然の視力低下・失明や脳梗塞を起こすことがあるため、疑った時点で速やかに治療を始めることが重要な、日本の指定難病(告示番号41)です。

巨細胞性動脈炎の要点

巨細胞性動脈炎は、主に50歳以上に発症し、大動脈とその主要な分枝(特に頭部・頸部の動脈)に肉芽腫性の炎症を起こす原因不明の大型血管炎です。新たな頭痛、こめかみの圧痛、顎跛行、発熱などがみられ、失明や脳梗塞を防ぐため早期治療が重要な日本の指定難病(告示番号41)です。

別名・略称側頭動脈炎、頭蓋動脈炎、ホートン病、Horton病、GCA、temporal arteritis、cranial arteritis
分野免疫・膠原病・自己炎症
分類大型血管炎(改訂Chapel Hill分類)。原因不明
好発年齢主に50歳以上
主な症状新たな頭痛、こめかみの圧痛、顎跛行、発熱、体重減少、視力低下
主な検査血液検査(炎症反応)、側頭動脈生検、超音波・MRI・PET-CTなどの画像検査
主な治療副腎皮質ステロイドが中心。症例により免疫抑制療法を併用
受診する主な診療科リウマチ・膠原病内科、眼科、神経内科

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巨細胞性動脈炎とは

巨細胞性動脈炎は、大動脈とその主要分枝に起こる原因不明の肉芽腫性血管炎です。2012年の改訂Chapel Hill分類では、高安動脈炎とともに「大型血管炎」に分類されています。浅側頭動脈、眼動脈、後毛様体動脈、椎骨動脈など外頸動脈・内頸動脈系の分枝がよく侵されます。一方、大動脈弓とその分枝(鎖骨下動脈・腋窩動脈)や胸部大動脈に病変が及ぶ例も少なくありません。病理学的には、動脈壁の全層に単核球(T細胞・マクロファージ)が浸潤し、内弾性板の断裂と、その近傍の多核巨細胞を伴う肉芽腫形成が特徴です。ただし巨細胞は生検組織の約半数でしか確認されず、巨細胞がないことで診断は否定できません。内膜が強く増殖して血管内腔が狭窄・閉塞すると、その先の臓器が虚血に陥ります。これが失明や脳梗塞の主な機序です。

病型は臨床的に大きく三つに分けて理解されます。①頭痛・顎跛行・視力障害など頭部の動脈症状が中心の「頭蓋型(cranial GCA)」、②大動脈やその分枝の病変が主体で頭部症状に乏しい「大型血管型(large-vessel GCA)」、③両者の混合型です。大型血管型は不明熱や上肢の跛行、左右の血圧差で見つかることがあり、側頭動脈生検では陰性になりやすい点に注意が必要です。また、肩・腰帯部の痛みと朝のこわばりを特徴とするリウマチ性多発筋痛症(PMR)とは密接に関連し、同じ疾患スペクトラムの一部と考えられています。歴史的には1890年にHutchinsonが報告し、1932年にHortonらが「側頭動脈炎(temporal arteritis)」として病理像を記載しました。しかし側頭動脈以外にも病変が及ぶことから、現在は「巨細胞性動脈炎」の名称が用いられています。日本では2015年の難病法施行により指定難病となりました。

巨細胞性動脈炎の疫学・患者数

GCAは北欧や北米の白人に多い疾患で、50歳以上の人口10万人あたりの年間発症率は欧米で概ね10〜20人以上と報告されています。日本を含む東アジアでは頻度が著しく低く、過去の全国疫学調査では国内患者数は数百〜千人規模と推計されました。ただし近年は、超音波・CT・PET-CTの普及や疾患認知の向上により、診断される患者が増えている可能性が指摘されています。発症はほぼ全例が50歳以上で、70歳代が中心です。50歳未満の発症は極めてまれで、その場合は高安動脈炎など他疾患を先に考えます。女性は男性の約2〜3倍多いとされます。国内の報告では欧米に比べて顎跛行や視力障害の頻度がやや低い一方、大型血管病変を伴う例が比較的多い可能性も示唆されています。人種差の詳細はなお研究段階です。

巨細胞性動脈炎の原因・病態生理

GCAの原因は明らかになっていません。主要な危険因子は加齢で、免疫機能の加齢変化(免疫老化)と血管壁の構造変化が関与すると考えられています。遺伝的素因としては、HLAクラスII遺伝子、特にHLA-DRB1*04系アレルとの関連が欧米で繰り返し報告されています。ただし単一遺伝子病ではなく、親から子へ遺伝する疾患ではありません。地域や季節による発症の集積から、感染症などの環境因子が引き金となる可能性も議論されてきましたが、特定の病原体は確立していません。

発症機序は次のように考えられています。まず、正常な中〜大型動脈の外膜にある樹状細胞が、Toll様受容体などを介して何らかの刺激で活性化されます。続いて、外膜の栄養血管(vasa vasorum)から流入したCD4陽性T細胞を活性化します。T細胞はIFN-γを産生するTh1系と、IL-17を産生するTh17系に分化します。前者は慢性化・持続する血管炎に、後者はステロイドに比較的よく反応する急性期の全身炎症に関わるとされます。マクロファージはIL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインを放出し、発熱・倦怠感・CRP上昇などの全身症状をもたらします。また、メタロプロテアーゼ(MMP)や活性酸素によって中膜平滑筋と内弾性板を破壊し、これが動脈瘤形成の基盤となります。一方、PDGFやVEGFなどの増殖因子は筋線維芽細胞の遊走・増殖を促し、内膜肥厚と内腔狭窄を起こします。多核巨細胞はマクロファージが融合して形成され、内弾性板近傍に集まります。近年は、免疫チェックポイント分子PD-1/PD-L1による抑制系が血管壁局所で十分に働かないことも、病態に関与すると報告されています。IL-6がこの病態の中心的なサイトカインであることが、IL-6受容体阻害薬が有効である根拠になっています。

巨細胞性動脈炎の症状

  • 新たに始まった頭痛: 約2/3にみられる最も多い症状で、こめかみ(側頭部)を中心に持続的でうずくような痛みが典型です。後頭部や頭全体の痛みのこともあり、「これまで経験したことのない頭痛」が手がかりになります。
  • 頭皮の圧痛・側頭動脈の異常: 髪をとかす、枕に頭をつけるといった動作で頭皮が痛みます。側頭動脈が硬く索状に触れ、拍動が弱まったり圧痛を伴ったりすることがあります。
  • 顎跛行(咀嚼時の顎の痛み): 噛み続けると顎の筋肉が虚血になり、痛みやだるさが出て、休むと改善します。GCAに比較的特異性の高い症状です。舌の痛み(舌跛行)や、まれに舌・頭皮の壊死を生じることもあります。
  • 視力障害・失明: 多くは後毛様体動脈の閉塞による動脈炎性前部虚血性視神経症(AAION)が原因で、突然の無痛性の視力低下や視野欠損を起こします。いったん失われた視力は回復しにくく、治療前に片眼に起これば、短期間で反対眼にも及ぶ危険があります。
  • 一過性黒内障: 片眼が数秒〜数分間見えなくなり、その後回復する発作で、永続的な失明の前触れとなりうる重要な警告症状です。
  • 複視: 眼球を動かす神経や筋の虚血により、物が二重に見えることがあります。視力障害の前兆として出現することがあります。
  • リウマチ性多発筋痛症の症状: 両肩・頸部・腰臀部の痛みと、朝の強いこわばりが約40〜50%に合併します。寝返りや起き上がり、腕を挙げる動作が困難になります。
  • 全身症状(発熱・体重減少・倦怠感): 微熱〜高熱、食欲低下、体重減少、寝汗がみられます。高齢者の不明熱の原因として重要で、特に大型血管型では頭部症状がなくこれだけのこともあります。
  • 上肢の跛行・脈の左右差: 鎖骨下動脈や腋窩動脈が狭窄すると、腕を使ったときのだるさやしびれ、橈骨動脈の脈拍の減弱、左右の血圧差が生じます。
  • 脳虚血症状: 椎骨脳底動脈系が侵されることが多く、めまい、ふらつき、構音障害、半身の麻痺など、脳梗塞・一過性脳虚血発作の症状を呈することがあります。
  • 乾性咳嗽・咽頭痛: まれに、原因のはっきりしない乾いた咳や喉の痛みが初発症状となることがあります。動脈炎による症状と考えられています。

巨細胞性動脈炎の経過と合併症

GCAは数週〜数か月かけて亜急性に発症することが多く、頭痛や全身症状が先行し、その後に虚血症状が加わるのが典型的な経過です。無治療のまま進行すると視力障害の危険が高まります。過去の報告では、治療導入前後に永続的な視力障害を残す患者が1〜2割程度あったとされます。治療によって炎症は通常速やかに鎮静化します。しかし、ステロイドを減量していく過程で40〜50%程度が再燃するとされ、特に治療開始後1〜2年以内に多くみられます。再燃は頭痛の再出現やPMR症状、CRP上昇として現れることが多く、新たな失明はまれとされます。多くの患者は数年の経過で治療を終了できますが、一部は長期の低用量治療を必要とします。

合併症として最も重大なのは失明と脳梗塞で、いずれも主に発症早期に起こります。長期的には、炎症で中膜が脆弱化することにより、胸部大動脈瘤・大動脈解離の危険が一般人口より高くなります。これは診断から数年以上経ってから明らかになることもあります。大動脈弁輪拡張に伴う大動脈弁閉鎖不全や、上肢動脈の狭窄・閉塞も生じえます。加えて、高用量・長期のステロイド治療に伴う合併症は臨床上大きな問題です。具体的には、骨粗鬆症と椎体骨折、糖尿病の発症・悪化、高血圧、白内障・緑内障、感染症(ニューモシスチス肺炎、帯状疱疹など)、筋力低下、不眠や気分変動などで、高齢の患者ではQOLや予後に直結します。

巨細胞性動脈炎の診断・診断基準

50歳以上の人に新たな頭痛、顎跛行、視力異常、PMR症状、原因不明の炎症反応上昇がみられた場合はGCAを疑います。視力障害など虚血症状があるときは、診断確定を待たずにステロイドを開始することが原則です。そのうえで、なるべく早期(目安として治療開始後1〜2週間以内)に側頭動脈生検や画像検査を行います。ステロイド開始後も一定期間は、生検で病理所見を得られる可能性があります。診断は、臨床症状、炎症マーカー、病理所見、画像所見を総合して行います。日本では厚生労働省研究班による診断基準に基づいて指定難病の認定が行われます。国際的には2022年のACR/EULAR分類基準が用いられています。この分類基準は「50歳以上」を前提に、肩・頸部のこわばり、突然の視力低下、顎・舌跛行、新たな側頭部頭痛、頭皮圧痛、側頭動脈の異常、炎症反応高値、生検または超音波の陽性所見、腋窩動脈病変、大動脈のPET集積などを点数化するものです。感染症、悪性腫瘍、他の血管炎の除外も欠かせません。

  • 血液検査(炎症マーカー): 赤沈(ESR)の著明な亢進(しばしば50mm/時以上)とCRP上昇がほぼ全例でみられ、正常値であればGCAの可能性は低くなります。正球性貧血や血小板増多を伴うこともあります。GCAに特異的な自己抗体はありません。
  • 側頭動脈の身体診察: 側頭動脈の索状肥厚、結節、圧痛、拍動低下を確認します。あわせて両上肢の血圧差、脈拍の左右差、頸部・鎖骨上の血管雑音を確認し、大型血管病変の手がかりとします。
  • 側頭動脈生検: 診断の基本となる病理検査で、全層性の単核球浸潤、内弾性板の断裂、巨細胞を含む肉芽腫を確認します。病変は飛び飛びに存在する(skip lesion)ため、1.5〜2cm程度以上の長さを採取することが推奨されます。陰性でもGCAを否定できません。
  • 血管超音波検査: 側頭動脈や腋窩動脈の壁が低エコー性に均一に肥厚する「halo sign」や、圧迫しても壁が見える「compression sign」が特徴です。非侵襲的で、習熟した施設では生検に代わる初期検査として位置づけられています。
  • FDG-PET/CT: 大動脈やその分枝に沿ったFDGの線状集積で、大型血管型の病変分布と活動性を評価します。不明熱の原因検索にも有用で、大型血管炎の診断目的では一定の条件下で保険診療として実施されます。ステロイド開始後は感度が低下します。
  • 造影CT・MRI/MRアンギオグラフィ: 大動脈壁の肥厚・造影効果、狭窄・閉塞・拡張の有無を評価します。高解像度MRIでは頭皮動脈の壁の炎症を描出できます。大動脈瘤の長期フォローアップにも用います。
  • 眼科的検査: 視神経乳頭の蒼白浮腫(AAION)や網膜中心動脈閉塞の有無を眼底検査で確認し、視力・視野を評価します。眼症状があれば緊急で眼科と連携します。
  • ACR/EULAR 2022分類基準・指定難病診断基準: 臨床・検査・画像・病理所見を点数化または組み合わせて評価する基準です。研究や医療費助成の認定に用いますが、個々の患者の診断は専門医が総合的に判断します。

巨細胞性動脈炎と鑑別すべき疾患

  • 高安動脈炎: 同じ大型血管炎ですが、主に50歳未満(特に若年女性)に発症し、HLA-B*52との関連や大動脈弓分枝・腹部大動脈の病変分布が鑑別の参考になります。
  • リウマチ性多発筋痛症(単独): 肩・腰帯部痛と炎症反応上昇は共通しますが、頭部症状・視力障害・大型血管病変を欠きます。PMR患者の一部には潜在的なGCAが併存するため、画像検索を考慮します。
  • 非動脈炎性前部虚血性視神経症: 動脈硬化危険因子を背景に起こる視神経虚血で、炎症反応の上昇や頭痛・顎跛行を伴わない点がAAIONとの主な鑑別点です。
  • ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症など): 側頭動脈に病変が及ぶことがあり、ANCA陽性、腎・肺・末梢神経病変、生検での小血管炎やフィブリノイド壊死が鑑別に役立ちます。
  • IgG4関連疾患・感染性大動脈炎: 大動脈炎を呈する疾患として、血清IgG4高値や他臓器病変の有無、血液培養・梅毒検査などで鑑別します。
  • 片頭痛・三叉神経痛・帯状疱疹など他の頭痛疾患: 高齢での新規発症、炎症反応上昇、顎跛行、頭皮圧痛を伴う場合はGCAを優先して考えます。

巨細胞性動脈炎の治療

治療の目標は、①失明・脳梗塞などの虚血性合併症を防ぐこと、②血管炎を寛解させて再燃を防ぐこと、③大動脈病変の進行を抑えること、④ステロイドの副作用を最小限にすることです。グルココルチコイド(ステロイド)が治療の中心です。視力障害など切迫した症状がある場合は、生検の結果を待たずに直ちに開始します。寛解導入後は数週ごとに少しずつ減量し、再燃の有無を症状とCRP・ESRで確認しながら調整します。再燃例や、ステロイドの副作用リスクが高い例では、IL-6受容体阻害薬トシリズマブの併用が選択肢となります。高齢患者が多いため、骨粗鬆症・感染症・糖尿病などへの予防的な配慮を最初から並行して行います。具体的な薬剤や用量は、病状や合併症に応じて主治医・専門医と相談して決定します。

  • 経口グルココルチコイド(プレドニゾロン): 体重あたり0.5〜1mg/日程度(一般に40〜60mg/日)で開始し、症状と炎症反応の改善を確認しながら数か月〜1年以上かけて漸減するのが一般的です。急な中止は再燃や副腎不全を招くため避けます。
  • ステロイドパルス療法: 急な視力低下や一過性黒内障など視力を失う危険が切迫した場合に、メチルプレドニゾロンの大量点滴(例えば3日間)が検討されることがあります。視機能の保護を最優先した緊急治療です。
  • トシリズマブ(IL-6受容体阻害薬): 国際共同試験(GiACTA試験)でステロイド減量と寛解維持への有効性が示され、日本でも巨細胞性動脈炎に対して承認されている皮下注射製剤です。CRPが上がりにくくなるため、感染症や再燃の評価には症状と画像を重視します。
  • メトトレキサートなど従来型免疫抑制薬: ステロイドの減量を補助する目的で海外では用いられることがありますが、効果は限定的とされ、日本ではGCAに対して保険適用外である点に留意が必要です。
  • 新規分子標的薬(研究段階・海外の動向): JAK阻害薬など他の分子標的薬についても臨床試験で有効性が報告されており、今後の治療選択肢として注目されています。国内での使用可否は主治医に確認が必要です。
  • 抗血小板療法(低用量アスピリン): 低用量アスピリンは血小板の働きを抑える抗血小板薬で、抗凝固薬とは異なります。GCAの虚血合併症の予防として一律に推奨されてはいません。心血管疾患の既往などがある場合に、出血リスクとのバランスを考えて個別に判断されます。
  • 骨粗鬆症予防: 長期ステロイド使用による骨折を防ぐため、骨密度評価のうえでビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症治療薬、カルシウム・ビタミンDの補充を検討します。
  • 感染症予防と合併症管理: 高用量ステロイド中はST合剤などによるニューモシスチス肺炎予防、胃粘膜保護、血糖・血圧の管理、ワクチン接種(不活化ワクチン等)の検討を行います。
  • 大動脈病変への外科的・血管内治療: 大動脈瘤や解離、症状を伴う高度狭窄に対しては、炎症の鎮静化を確認したうえで、心臓血管外科による人工血管置換術やステントグラフトなどが検討されます。

巨細胞性動脈炎の予後・長期フォロー

適切に治療されれば炎症は多くの場合コントロールでき、生命予後は一般人口と大きく変わらないとする報告が多くあります。ただし、大動脈瘤・解離を合併した例では予後が悪化しうることが示されています。最も重大な機能予後は視力で、いったん失われた視力は治療しても回復しにくいため、早期診断・早期治療が予後を左右します。再燃は比較的多いものの、多くは治療の調整で対応できます。一方、高齢者における長期ステロイド療法の副作用(骨折、感染症、糖尿病など)はQOL低下の大きな要因です。そのため、ステロイドの総投与量を減らす工夫が重視されています。

寛解後も長期のフォローアップが必要です。症状とCRP・ESRの定期的な確認に加え、大動脈瘤は治療終了後何年も経ってから発見されることがあります。このため、胸部X線や造影CT、MRA、心エコーなどによる大動脈の定期的な評価が推奨されます。間隔は病変の有無や施設の方針により異なります。骨密度、血糖、血圧、眼圧・白内障などステロイド関連の評価も継続します。トシリズマブを使用中・使用後の患者では、炎症反応が隠されやすいことを念頭に置き、症状の変化に注意します。膠原病・リウマチ内科を中心に、眼科、循環器内科、心臓血管外科、かかりつけ医が連携して診療することが望まれます。

巨細胞性動脈炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

治療中は、自己判断でステロイドを減らしたり中止したりしないことが最も大切です。飲み忘れや体調不良で服用できない場合は、早めに主治医に相談してください。頭痛の再出現、顎の痛み、肩のこわばり、見え方の変化があれば、次回受診を待たずに連絡することが重要です。ステロイド使用中は感染症にかかりやすくなります。手洗い・マスク、人混みを避けるなどの対策と、主治医と相談のうえでのインフルエンザ・肺炎球菌などのワクチン接種が勧められます。骨折予防として、転倒しにくい住環境づくり、適度な運動(散歩や筋力維持の体操)、十分なカルシウム・ビタミンD・たんぱく質の摂取を心がけます。血糖や体重が増えやすいため、塩分・糖分の摂りすぎに注意します。視力障害が残った場合は、ロービジョンケア(拡大鏡、照明の工夫、歩行訓練など)を眼科や視覚障害者支援機関で相談できます。GCAは遺伝病ではなく、家族が特別な検査を受ける必要は通常ありません。家族は、患者の症状の変化や薬の副作用に気づく「見守り役」として大切な存在です。

利用できる制度・相談窓口

巨細胞性動脈炎は指定難病(告示番号41)です。診断基準を満たし、重症度分類で一定以上の場合、あるいは軽症でも高額な医療を継続している場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所等)で行います。自己負担上限額は所得に応じて設定されます。50歳以上で発症する疾患のため、小児慢性特定疾病の対象にはなりません。医療費が高額になる場合は高額療養費制度も併用できます。65歳以上の方で日常生活に介助が必要な場合は、介護保険の要介護認定を受けて介護サービスを利用できます。視力障害が残った場合は、視覚障害として身体障害者手帳の対象となることがあります。また、年金加入状況や初診日などの要件を満たせば障害年金の対象となる可能性があります。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、地域包括支援センターなどがあります。制度の詳細や最新の基準は窓口で確認してください。

巨細胞性動脈炎に伴う心のケア・心理社会的支援

高齢になってから突然、命や視力に関わる病気と診断されることは、大きな心理的衝撃となります。「失明するのではないか」「再発したらどうしよう」という不安が続くことは珍しくありません。特にすでに視力を失った方では、読書・運転・外出などそれまでの生活が制限されます。その結果、喪失感、抑うつ、社会的孤立につながることがあります。また、高用量ステロイドそのものが不眠、気分の高揚や落ち込み、いらいら感などの精神症状を起こすことがあります。体型の変化(満月様顔貌)や筋力低下が自己イメージに影響することもあります。こうした変化は「気持ちの弱さ」ではなく、病気や薬の影響として起こりうるものです。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、意欲が湧かないといった場合は、遠慮せず主治医に伝えてください。必要に応じて精神科・心療内科、公認心理師などの専門家に相談することが大切です。介護を担う家族も負担を抱えやすいため、難病相談支援センターや患者会、地域の支援サービスを活用し、一人で抱え込まないようにしましょう。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

巨細胞性動脈炎の受診の目安

  • 片眼または両眼が急に見えにくくなった、視野が欠けた、一時的に真っ暗になった場合は、直ちに救急受診してください(失明予防のため一刻を争います)。
  • 物が二重に見える、急なめまい・ろれつが回らない・手足の麻痺など脳卒中を疑う症状があれば、救急車を要請してください。
  • 50歳以上で、これまでにない頭痛やこめかみの痛み・頭皮の圧痛が出現した場合は、早めに内科を受診してください。
  • 食事中に噛み続けると顎が痛くなり、休むと治まる症状がある場合は、早めに受診してください。
  • 原因不明の発熱、体重減少、肩や腰のこわばりが続く場合は受診し、炎症反応の検査を受けてください。
  • 治療中に頭痛や肩の痛みが再び出てきた、または突然の胸や背中の激痛が生じた場合は、主治医に連絡するか救急受診してください。

巨細胞性動脈炎についてのよくある質問

Q. 側頭動脈生検で異常がなければ、巨細胞性動脈炎ではないのですか?

A. 必ずしもそうではありません。病変は動脈に飛び飛びに存在するため、採取した部分に炎症がなく陰性となることがあります。また、大型血管型では側頭動脈に病変がないこともあります。症状や血液検査、超音波・PETなどの画像を総合して判断します。

Q. ステロイドはどのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?

A. 個人差がありますが、一般に1〜2年程度かけてゆっくり減量し、その後中止を目指します。再燃した場合は増量や他の薬剤の併用が必要となり、より長期になることもあります。自己判断での中止は危険なので、必ず主治医と相談してください。

Q. 失った視力は治療で回復しますか?

A. 残念ながら、いったん失われた視力は治療しても回復しにくいことが多いとされています。治療の大きな目的は、もう片方の眼や残っている視力を守ることです。見え方の異常に気づいたら、すぐに受診することが最も大切です。

Q. 子どもや孫に遺伝しますか?

A. 巨細胞性動脈炎は、特定の遺伝子の変化で親から子へ受け継がれる遺伝病ではありません。体質としてかかりやすさに関係する遺伝的要因は報告されていますが、家族が発症する可能性が特に高いわけではなく、通常は家族に特別な検査は必要ありません。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。