顕微鏡的多発血管炎

Microscopic Polyangiitis, MPA

顕微鏡的多発血管炎(Microscopic Polyangiitis, MPA)|顕微鏡的多発血管炎(MPA)は、全身の細い血管(小型血管)に壊死を伴う炎症が起こり、主に腎臓・肺・末梢神経・皮膚が障害される自己免疫性の血管炎です。日本では抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎のなかで最も多く、とくに高齢者に多いのが特徴です。急速に腎機能が低下したり肺出血を起こしたりすることがあるため、早期の診断と治療開始が重要です。

顕微鏡的多発血管炎の要点

顕微鏡的多発血管炎は、全身の細い血管に壊死性の炎症が起こる自己免疫性のANCA関連血管炎で、腎臓・肺・末梢神経・皮膚などが障害されます。急速に進行する腎炎や肺胞出血、発熱・体重減少などがみられ、高齢者に多く、早期の診断と治療が重要な指定難病(告示番号43)です。

別名・略称MPA、顕微鏡的多発動脈炎、Microscopic polyarteritis、MPO-ANCA関連血管炎
分野免疫・膠原病・自己炎症
遺伝形式典型的な遺伝性疾患ではない
好発年齢高齢者に多い
主な症状発熱・体重減少・倦怠感、腎障害、肺胞出血、末梢神経障害、皮膚症状
主な検査MPO-ANCA測定、尿検査・腎機能検査、胸部画像検査、生検
主な治療副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬(シクロホスファミド、リツキシマブなど)
受診する主な診療科リウマチ・膠原病内科、腎臓内科、呼吸器内科

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顕微鏡的多発血管炎とは

顕微鏡的多発血管炎は、2012年改訂Chapel Hill分類で「免疫複合体の沈着がほとんどない(pauci-immune)壊死性血管炎で、主に小型血管(毛細血管、細静脈、細動脈)を侵し、中型動脈にも及びうるもの」と定義されています。病理学的に肉芽腫性炎症を伴わない点で多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と、喘息や好酸球増多を伴わない点で好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と区別されます。腎臓では壊死性半月体形成性糸球体腎炎、肺では肺毛細血管炎による肺胞出血を起こしやすく、両者がそろうと「肺腎症候群」と呼ばれる重篤な病態になります。血清では多くの例でMPO-ANCA(ミエロペルオキシダーゼに対するANCA)が陽性となります。

歴史的には、1948年にDavsonらが結節性多発動脈炎(PAN)のうち糸球体腎炎を伴い顕微鏡でしか確認できない細い血管が侵される病型を「顕微鏡的型」として報告したのが始まりです。その後ANCAが発見され、1994年のChapel Hill会議でPANとは異なる独立した疾患として整理されました。現在はGPA、EGPAとともにANCA関連血管炎に分類されます。近年は臨床病型よりも抗体の種類(MPO-ANCA型かPR3-ANCA型か)で病気の性質や再燃のしやすさが異なることが注目されており、2022年には米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会(ACR/EULAR)による新しい分類基準も公表されています。日本では指定難病(告示番号43)に指定されています。

顕微鏡的多発血管炎の疫学・患者数

ANCA関連血管炎の病型や抗体の割合には地域差があり、欧米ではPR3-ANCA陽性のGPAが比較的多いのに対し、日本を含む東アジアではMPO-ANCA陽性のMPAが大半を占めるとされます。国内の医療費助成受給者数は指定難病の血管炎のなかでも多く、高齢化に伴い増加傾向にあると考えられています。発症年齢は中高年から高齢者が中心で、国内の報告では平均発症年齢がおおむね70歳前後とされ、80歳代での発症も珍しくありません。性差は大きくありませんが、日本ではやや女性に多いとする報告があります。小児や若年成人での発症はまれです。高齢発症が多いことから、診断時すでに腎機能低下や併存疾患を抱えている患者が多く、治療に伴う感染症のリスクが高い点が日本の診療上の大きな課題となっています。

顕微鏡的多発血管炎の原因・病態生理

MPAの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な素因に環境要因が加わり、自己免疫反応が引き起こされると考えられています。単一遺伝子の異常で起こる遺伝病ではなく、親から子へ直接遺伝する疾患ではありません。日本人ではHLA-DRB1*09:01などの特定のHLA型とMPO-ANCA陽性血管炎との関連が報告されています。環境要因としては、シリカ(粉じん)への曝露、感染症、特定の薬剤(抗甲状腺薬のプロピルチオウラシル、降圧薬のヒドララジンなど)が誘因となりうることが知られており、薬剤性ANCA関連血管炎として区別して扱われることもあります。

発症機序の中心は好中球です。感染などを契機にTNF-αなどの炎症性サイトカインが好中球を「プライミング」すると、本来細胞内の顆粒にあるMPOが細胞表面に移動します。そこにMPO-ANCAが結合すると好中球が過剰に活性化し、血管内皮に接着して活性酸素や蛋白分解酵素を放出し、さらに好中球細胞外トラップ(NETs)を形成して血管壁を傷害します。NETs自体がMPOを含み、自己抗原の提示を促して自己免疫を持続させる悪循環も想定されています。また、補体第二経路の活性化により生じるC5aが受容体(C5aR)を介して好中球をさらに呼び寄せ活性化することが重要とされ、これが近年のC5a受容体拮抗薬開発の根拠となりました。B細胞はANCAの産生源として、T細胞は炎症の維持に関わります。こうした機序により糸球体毛細血管が壊死して半月体が形成され、肺では肺胞壁の毛細血管炎から出血が起こります。一方、MPO-ANCAは慢性的な肺の線維化(間質性肺炎)とも関連し、血管炎症状に先行して間質性肺炎が見つかることもあります。

顕微鏡的多発血管炎の症状

  • 発熱・全身倦怠感: 原因不明の微熱〜高熱が数週間続くことが多く、初期症状として最も頻度が高い症状です。感染症と区別がつきにくく、抗菌薬が効かない発熱として気づかれることがあります。
  • 体重減少・食欲不振: 数か月で数kg以上の体重減少をきたすことがあります。高齢者では「年のせい」と見過ごされやすいため注意が必要です。
  • 急速進行性糸球体腎炎: 血尿・蛋白尿とともに数週〜数か月で腎機能が急速に低下する最も重要な臓器障害です。自覚症状に乏しく、健診や他疾患の採血で偶然見つかることもあります。
  • むくみ・高血圧・尿量減少: 腎機能の低下が進むと、足のむくみ、血圧上昇、尿量の減少がみられます。重症例では透析が必要になることがあります。
  • 肺胞出血: 肺の毛細血管炎により、血痰・喀血、息切れ、貧血の進行をきたします。喀血を伴わずに急速な呼吸不全と貧血で発症することもあり、生命にかかわる緊急事態です。
  • 間質性肺炎: 乾いた咳や労作時の息切れが徐々に進行します。日本のMPAで頻度が高く、血管炎の発症より前に見つかる場合もあります。
  • 多発単神経炎: 神経を養う細い血管の炎症により、手足の一部に強いしびれ・痛みが出たり、下垂足(足首が上がらない)や下垂手が生じたりします。左右非対称に複数の神経が順次障害されるのが特徴です。
  • 皮膚症状(紫斑・網状皮斑・潰瘍): 下肢を中心に、触れるとわずかに盛り上がった紫斑(触知性紫斑)、網目状の皮斑、皮下結節、皮膚潰瘍がみられることがあります。
  • 関節痛・筋肉痛: 全身の関節痛や筋肉痛、筋力低下がみられ、高齢者ではリウマチ性多発筋痛症と紛らわしいことがあります。
  • 消化管症状: 腸管の血管炎により腹痛、消化管出血、まれに腸管穿孔をきたすことがあります。
  • 眼・耳鼻症状: 強膜炎や上強膜炎による目の充血・痛み、中耳炎や難聴がみられることがあります。日本ではANCA関連血管炎性中耳炎として耳症状から発見される例も報告されています。

顕微鏡的多発血管炎の経過と合併症

多くの場合、発熱・倦怠感・体重減少などの非特異的な全身症状が数週〜数か月先行し、その後に腎炎、肺病変、神経障害などの臓器症状が明らかになります。治療されないと腎不全や肺出血により致命的となりうるため、「寛解導入」→「寛解維持」という流れで治療を進めます。治療により多くの患者で寛解(病気の活動性がない状態)が得られますが、治療を減量・終了した後に再燃することがあり、MPO-ANCA陽性例はPR3-ANCA陽性例に比べ再燃率がやや低いとされるものの、再燃は決してまれではありません。病気の活動性は全身の臓器症状を点数化するBVAS(Birmingham Vasculitis Activity Score)などで、蓄積した臓器障害はVDI(Vasculitis Damage Index)で評価されます。血管炎の炎症が治まっても、腎臓の硬化や肺の線維化、神経障害などの不可逆的な後遺症が残ることがあります。

合併症には、病気そのものによるものと治療に伴うものがあります。病気によるものとしては、末期腎不全(透析導入)、間質性肺炎の進行による慢性呼吸不全、肺胞出血、神経障害による歩行障害・慢性疼痛、心血管疾患や静脈血栓塞栓症のリスク上昇が挙げられます。治療関連では、感染症が早期死亡の主要な原因であり、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、帯状疱疹、B型肝炎ウイルスの再活性化などに注意が必要です。グルココルチコイド(ステロイド)による糖尿病、骨粗鬆症・骨折、白内障・緑内障、筋力低下、精神症状、シクロホスファミドによる出血性膀胱炎・性腺機能障害・二次発がん、リツキシマブによる低ガンマグロブリン血症なども知られています。

顕微鏡的多発血管炎の診断・診断基準

MPAに単独で確定診断できる検査はなく、臨床症状、血液・尿検査、画像検査、病理組織所見を総合して診断します。原因不明の発熱や炎症反応の持続に加え、血尿・蛋白尿、腎機能低下、肺の陰影、しびれなどがみられた場合にMPAを疑い、MPO-ANCAとPR3-ANCAを測定します。同時に、感染症(特に感染性心内膜炎)、悪性腫瘍、他の膠原病など、似た症状を示す疾患を除外することが極めて重要です。可能であれば腎臓、皮膚、神経・筋などの生検で壊死性血管炎や半月体形成性糸球体腎炎を確認します。日本では厚生労働省研究班の診断基準(主要症候・主要組織所見・主要検査所見の組み合わせによりDefinite/Probableを判定)が医療費助成の申請に用いられ、研究や分類には2022年ACR/EULAR分類基準も参照されます。急速に進行する腎炎や肺出血がある場合は、検査結果を待ちすぎず専門施設で迅速に治療を開始することがあります。

  • ANCA検査(MPO-ANCA・PR3-ANCA): MPAではMPO-ANCAが大部分で陽性となり、蛍光抗体法ではP-ANCAパターンを示します。陰性でもMPAを否定できず、また抗体価の推移だけで再燃を判断することはできないため、臨床所見と合わせて解釈します。
  • 尿検査(尿沈渣): 変形赤血球を含む血尿、赤血球円柱、蛋白尿は糸球体の炎症を示す重要な所見です。腎炎の早期発見や再燃の察知にも役立つため、定期的に行われます。
  • 血液検査: CRP・赤沈の上昇、正球性貧血、白血球・血小板の増加、血清クレアチニン上昇などがみられます。抗GBM抗体、抗核抗体、補体、クリオグロブリン、肝炎ウイルスなどを調べて鑑別に役立てます。
  • 腎生検: 免疫グロブリンや補体の沈着がほとんどない(pauci-immune型)壊死性半月体形成性糸球体腎炎が典型的です。診断の確定だけでなく、半月体の新旧や線維化の程度から腎機能の回復見込みを推定するのにも有用です。
  • 胸部CT・胸部X線: 肺胞出血ではすりガラス影や浸潤影、間質性肺炎では網状影・蜂巣肺などを認めます。日本では通常型間質性肺炎(UIP)パターンの線維化が少なくないとされます。
  • 気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄): 洗浄液が回を重ねるごとに赤くなる所見やヘモジデリン貪食マクロファージは肺胞出血を示唆します。感染症の除外にも重要です。
  • 皮膚・神経・筋生検: 皮膚生検では白血球破砕性血管炎、神経・筋生検では小〜中型血管のフィブリノイド壊死や血管周囲の炎症細胞浸潤が確認できることがあります。
  • 神経伝導検査: 多発単神経炎のパターンで軸索障害を認め、障害部位や範囲の評価、生検部位の選択に役立ちます。
  • 厚生労働省診断基準・ACR/EULAR 2022分類基準: 国内基準では急速進行性糸球体腎炎、肺出血または間質性肺炎、その他の臓器症状、組織所見、MPO-ANCA陽性の組み合わせで判定します。ACR/EULAR基準はMPO-ANCA陽性、pauci-immune型糸球体腎炎、間質性肺炎などに加点し、鼻副鼻腔病変やPR3-ANCA陽性などで減点するスコア方式です。

顕微鏡的多発血管炎と鑑別すべき疾患

  • 多発血管炎性肉芽腫症(GPA): 鼻・副鼻腔・眼窩などの上気道病変や肺の結節・空洞などの肉芽腫性病変を伴い、PR3-ANCA陽性が多い点で区別されます。
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA): 先行する気管支喘息やアレルギー性鼻炎、末梢血の著明な好酸球増多を伴う点が鑑別点です。
  • 抗糸球体基底膜(GBM)病: 抗GBM抗体陽性で、腎生検で基底膜に沿った線状のIgG沈着を認めます。ANCAと両方陽性となる例もあります。
  • 結節性多発動脈炎: 中型動脈が主体で、糸球体腎炎や肺毛細血管炎を起こさず、ANCAは通常陰性で血管造影の微小動脈瘤などが参考になります。
  • 全身性エリテマトーデス・IgA血管炎など免疫複合体性疾患: 低補体血症、抗核抗体・抗DNA抗体、腎生検での免疫複合体沈着の有無などで区別します。
  • 感染性心内膜炎など感染症: 発熱、紫斑、腎炎を伴いANCAが偽陽性となることもあるため、血液培養や心エコーで除外することが重要です。

顕微鏡的多発血管炎の治療

治療の目標は、壊死性血管炎による臓器障害の進行を速やかに止めて寛解に導き(寛解導入療法)、その状態を長く保って再燃を防ぎ(寛解維持療法)、同時に治療による感染症などの副作用を最小限に抑えることです。日本では厚生労働省研究班などによる「ANCA関連血管炎診療ガイドライン」が参照されており、年齢、腎機能、重症度(肺胞出血や急速進行性腎炎の有無など)、感染リスクを考慮して治療薬を選択します。寛解導入では、グルココルチコイドに免疫抑制薬(シクロホスファミドまたはリツキシマブ)を併用するのが基本で、近年はグルココルチコイドの減量や、補体C5a受容体拮抗薬を併用してステロイド使用量を減らす治療も選択肢となっています。高齢者が多い日本では、過剰な免疫抑制による感染症死を避けることが特に重視されます。具体的な治療内容は病状によって大きく異なるため、腎臓内科・リウマチ膠原病内科・呼吸器内科などの専門医と十分に相談して決めることが大切です。

  • グルココルチコイド(ステロイド): 寛解導入の基盤となる薬で、重症例ではメチルプレドニゾロンの大量点滴(パルス療法)を行った後、内服で開始し段階的に減量します。大規模臨床試験の結果から、従来より減量を早めたレジメンも感染症を減らす選択肢とされています。
  • シクロホスファミド: 強力な免疫抑制薬で、点滴静注(間欠的投与)または内服で用いられます。年齢や腎機能に応じて用量を調整し、骨髄抑制、膀胱障害、性腺機能障害などに注意が必要です。
  • リツキシマブ: B細胞表面のCD20を標的とする抗体製剤で、日本でもMPA・GPAに対して承認されています。寛解導入でシクロホスファミドと同等の効果が示され、寛解維持療法としても用いられます。
  • アバコパン(C5a受容体拮抗薬): 好中球の活性化に関わる補体C5aの受容体を阻害する内服薬で、日本でもMPA・GPAに対して承認されています。標準治療と併用することでステロイド使用量の削減が期待されますが、肝機能障害などに注意が必要です。
  • 血漿交換療法: 重篤な腎機能障害や肺胞出血を伴う例で、血中のANCAなどを除去する目的で併用が検討されることがあります。大規模試験では全体として生存や腎予後の改善が明確でなかったため、適応は個別に慎重に判断されます。
  • 寛解維持療法(アザチオプリン・リツキシマブ等): 寛解後は少量のグルココルチコイドに加え、アザチオプリンや定期的なリツキシマブ投与などで再燃を防ぎます。維持療法の期間は一般に年単位で、再燃リスクと副作用を踏まえて決定されます。
  • 感染症予防: ニューモシスチス肺炎予防のためのST合剤などの予防内服、B型肝炎ウイルスの事前検査とモニタリング、インフルエンザや肺炎球菌などの不活化ワクチン接種が推奨されます。生ワクチンは免疫抑制中は原則として避けます。
  • 腎不全・呼吸不全への支持療法: 降圧療法、腎保護、必要に応じた透析療法や酸素療法を行います。末期腎不全に至った場合は、病勢が安定していれば腎移植も選択肢となります。
  • ステロイド副作用対策・リハビリテーション: 骨粗鬆症予防薬、胃粘膜保護薬、血糖管理などを行います。神経障害や筋力低下に対しては、装具療法を含むリハビリテーションで日常生活動作の維持を図ります。

顕微鏡的多発血管炎の予後・長期フォロー

かつてMPAは無治療では多くが短期間で亡くなる疾患でしたが、グルココルチコイドと免疫抑制薬による治療の普及で生命予後は大きく改善しました。報告により差はあるものの、5年生存率はおおむね7〜8割前後とされています。一方で、高齢、診断時の腎機能低下、肺胞出血、間質性肺炎の合併は予後不良因子と考えられています。特に治療開始後1年以内の死亡は、血管炎そのものよりも感染症によるものが多いことが知られています。腎予後については、診断時に高度な腎機能障害がある例の一部は透析が必要となりますが、治療により透析から離脱できる例もあります。寛解後も再燃の可能性があるほか、神経障害による痛みやしびれ、間質性肺炎による息切れ、ステロイドの副作用などが生活の質(QOL)に影響することがあり、多職種による包括的な支援が求められます。

寛解に至った後も、長期にわたる定期通院が必要です。外来では、症状の確認に加え、尿検査(血尿・蛋白尿)、腎機能、炎症反応、ANCA、血球数、胸部画像などを定期的に評価します。ANCA値の上昇は再燃の目安の一つになりますが、それだけで治療を強化するかどうかは症状や尿所見を含めて総合的に判断します。また、間質性肺炎の進行、骨密度、血糖、血圧、脂質、眼科的合併症(白内障・緑内障)、悪性腫瘍(特にシクロホスファミド使用歴がある場合の膀胱がんなど)、リツキシマブ使用後の免疫グロブリン値などにも注意を払います。治療薬を減量・中止した後も再燃することがあるため、自己判断で通院や服薬を中断しないことが大切です。

顕微鏡的多発血管炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

治療中、とくにグルココルチコイドや免疫抑制薬を使用している期間は感染症にかかりやすいため、手洗い・うがい・マスク着用、人混みを避けるなどの基本的な感染対策を心がけましょう。発熱や咳が出たときは早めに主治医に相談することが重要です。処方された薬は自己判断で中止・減量せず、特にステロイドの急な中止は副腎不全を招くおそれがあります。ステロイドによる骨粗鬆症や筋力低下を防ぐため、カルシウム・ビタミンDを意識した食事、適度な運動、転倒予防が役立ちます。腎機能が低下している場合は、医師や管理栄養士の指導のもとで塩分・蛋白質・カリウムなどの調整を行います。禁煙は肺の保護と感染予防の両面で重要で、粉じん(シリカ)への職業的曝露がある場合は相談が必要です。ワクチン接種や歯科治療、他院での処方を受ける際は、MPAで治療中であることを伝えましょう。MPAは親から子へ直接遺伝する病気ではなく、家族が同じ病気を発症するリスクが大きく高まるわけではありません。家族の方には、病状や治療の副作用への理解を深め、体調変化に気づいたら受診を促す支え手になっていただくことが助けになります。

利用できる制度・相談窓口

顕微鏡的多発血管炎は指定難病(告示番号43)であり、診断基準を満たし、重症度分類で一定以上の重症度に該当する場合、または軽症でも医療費が一定額を超える状態が続く場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請は難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で行います。助成が認められると、所得に応じた自己負担上限額が設定されます。腎機能障害や呼吸機能障害が一定の程度に達した場合は身体障害者手帳の対象となることがあり、人工透析を受ける場合には特定疾病療養受療証(長期高額疾病)により自己負担が軽減されます。病気により仕事や日常生活に支障がある場合は、障害年金の対象となる可能性があります。65歳以上で介護が必要になった場合は介護保険サービスを利用できます。なお、40〜64歳の方の介護保険で対象となる「特定疾病」にMPAそのものは含まれていないため、この年代では障害福祉サービスなど他の制度を検討します。高額療養費制度も併用できます。各都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカーなどが制度や就労・生活の相談に応じています。

顕微鏡的多発血管炎に伴う心のケア・心理社会的支援

MPAは突然の入院や集中的な治療を経験することが多く、診断直後には強い不安や混乱を感じる方が少なくありません。寛解後も再燃への不安、透析や呼吸機能低下などの後遺症への喪失感、ステロイドによる体型変化や不眠・気分の変動、神経障害による慢性的な痛みなどが、抑うつや不安障害、適応障害の引き金になることがあります。グルココルチコイド自体が気分の高揚や落ち込み、不眠といった精神症状を起こしうる点もこの病気の治療に特有の課題です。また、高齢で発症する方が多いため、入院を機に体力や認知機能が低下したり、介護する配偶者や家族の負担が大きくなったりすることもあります。働く世代では休職や復職、仕事との両立が大きな悩みとなります。気分の落ち込みが続く、眠れない、何事にも興味が持てないといった状態は治療可能な症状であり、決して我慢すべきものではありません。主治医や看護師に率直に伝え、必要に応じて心療内科・精神科、公認心理師、医療ソーシャルワーカー、患者会などの支援を活用することが、病気と上手に付き合っていくうえで大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

顕微鏡的多発血管炎の受診の目安

  • 血痰や喀血、急に強まる息切れ・呼吸困難がある場合は、肺胞出血の可能性があるため直ちに救急受診してください。
  • 尿の量が急に減った、全身のむくみが急速に強くなった、尿が赤褐色になったなどの変化がある場合は、すぐに受診してください。
  • 治療中に38℃以上の発熱、悪寒、咳、強い倦怠感が出た場合は、重い感染症の可能性があるため早めに主治医に連絡してください。
  • 手足の急なしびれや痛み、足首や手首が動かしにくくなった場合は、神経障害の悪化が疑われるため早めに受診してください。
  • 原因のわからない発熱や体重減少が数週間続き、健診などで血尿・蛋白尿や腎機能の異常を指摘された場合は、腎臓内科や膠原病内科の受診を検討してください。
  • 強い腹痛や黒色便・下血がある場合は、消化管の血管炎や出血の可能性があるため救急受診してください。

顕微鏡的多発血管炎についてのよくある質問

Q. MPAは治る病気ですか?

A. 現在の治療により多くの方が寛解(病気の活動性が抑えられた状態)に至り、日常生活に戻ることができます。ただし、治療を減量・中止した後に再燃することがあるため、寛解後も長期の通院と経過観察が必要です。主治医と相談しながら、再燃予防と副作用軽減のバランスをとっていきます。

Q. ANCAの値が下がらない(または上がった)のですが、再発ですか?

A. ANCA値は病気の活動性の目安の一つですが、値だけで再燃かどうかを判断することはできません。症状、尿検査、腎機能、画像検査などと合わせて総合的に評価されます。値の変化が気になる場合は主治医に説明を求めてください。

Q. 透析になったら、もう腎臓は回復しないのですか?

A. 診断時に透析が必要になった方でも、治療により炎症が治まると腎機能が回復し、透析から離脱できる場合があります。一方、腎臓の線維化が進んでいる場合は回復が難しいこともあり、腎生検の所見などが見通しの参考になります。末期腎不全となった場合も、病気が安定していれば腎移植が選択肢になります。

Q. 家族や子どもに遺伝しますか?

A. MPAは特定の遺伝子の異常で親から子へ直接遺伝する病気ではありません。体質(HLA型など)が発症のなりやすさに関わるとされますが、家族が発症する可能性は低いと考えられています。心配な点があれば主治医に相談してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。