好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis, EGPA

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis, EGPA)|好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎が先行し、血液中の好酸球が著しく増えたのちに、全身の小〜中型血管に炎症(血管炎)が起こる病気です。中高年で新たに喘息を発症した人に多く、手足のしびれや麻痺(多発単神経炎)、紫斑、心臓・消化管・腎臓などの臓器障害を起こすことがあります。早期に診断して治療を始めれば多くは寛解に至りますが、再燃や神経障害の後遺症への対応を含めた長期の管理が必要です。厚生労働省の指定難病(告示番号45)です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の要点

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、気管支喘息や好酸球増多に続いて、全身の小〜中型血管に壊死性血管炎が起こる病気です。中高年に多く、手足のしびれ(多発単神経炎)や紫斑、心臓・消化管・腎臓の障害をきたすことがあり、厚生労働省の指定難病(告示番号45)です。

別名・略称チャーグ・ストラウス症候群、Churg-Strauss症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎、EGPA、CSS、Churg-Strauss syndrome
分野免疫・膠原病・自己炎症
好発年齢中高年(新たに喘息を発症した人に多い)
主な症状気管支喘息、副鼻腔炎、手足のしびれ・麻痺(多発単神経炎)、紫斑
臓器障害心臓、消化管、腎臓などに起こることがある
主な検査血液中の好酸球増多、ANCA(主にMPO-ANCA、陽性は3〜4割)、病理検査
主な治療副腎皮質ステロイドを中心とした薬物治療(重症度に応じ免疫抑制薬などを併用)
受診する主な診療科膠原病・リウマチ内科、呼吸器内科、アレルギー科

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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症とは

EGPAは、好酸球に富む肉芽腫性炎症と小〜中型血管の壊死性血管炎を特徴とし、気管支喘息と好酸球増多を伴う全身性疾患です。2012年の改訂Chapel Hill分類では、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)とともにANCA関連血管炎に分類されています。ただし、ANCA(抗好中球細胞質抗体、主にMPO-ANCA)が陽性となるのは患者全体の3〜4割程度で、多くはANCA陰性です。この点で、アレルギー性・好酸球性の炎症と自己免疫性の血管炎という二つの性格をあわせ持つ、特異な位置づけの疾患といえます。

1951年に病理医のChurgとStraussが、重症喘息・好酸球増多・全身性血管炎を伴う剖検例をまとめて報告し、長くチャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome)、日本ではアレルギー性肉芽腫性血管炎とも呼ばれてきました。2012年に病態を表す現在の名称に改められています。近年は、ANCA陽性群(腎炎、紫斑、多発単神経炎、肺胞出血など血管炎による症状が目立つ)とANCA陰性群(心筋炎、好酸球性肺炎など組織への好酸球浸潤による症状が目立つ)で臨床像や遺伝的背景が異なることがわかってきました。このため、性格の異なる二つの病型を含む疾患群としてとらえる考え方が広がっています。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の疫学・患者数

EGPAはまれな疾患です。欧米の報告では年間発症率は人口100万人あたり1〜数人程度、有病率は100万人あたり十数〜数十人程度とされています。日本では指定難病の医療受給者証の所持者が数千人規模とされ、毎年一定数の新規発症があると推定されています。発症年齢の中心は40〜60歳代の中高年で、平均は50歳前後とされます。小児での発症は極めてまれです。日本の調査ではやや女性に多いとする報告があります。典型例では、成人になってから喘息を発症し(成人発症喘息)、数年から十年ほどの経過で血管炎を起こします。喘息患者全体のなかでEGPAを発症するのはごく一部です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因・病態生理

原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な体質に環境因子(アレルゲン、感染、薬剤など)が加わって発症すると考えられています。親から子へ単純に遺伝する病気ではありません。ゲノムワイド関連解析では、MPO-ANCA陽性群がHLA-DQ領域と関連し、ANCA陰性群は喘息や好酸球に関わる遺伝子領域(IL5やTSLP、GATA3周辺など)と関連すると報告されています。この結果は、二つの病型の遺伝的背景が異なることを示唆しています。免疫学的には、2型ヘルパーT細胞(Th2)や2型自然リンパ球が過剰に活性化し、IL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが増えています。なかでもIL-5は、骨髄での好酸球の産生・成熟と、組織での生存を強く促します。これが抗IL-5療法の理論的根拠になっています。

発症機序は次のように考えられています。まず気道や副鼻腔で2型炎症が持続し、喘息や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎が起こります。次に、IL-5などの作用で血液中と組織の好酸球が著しく増えます。組織に入り込んだ好酸球は、主要塩基性蛋白(MBP)、好酸球陽イオン蛋白(ECP)、好酸球ペルオキシダーゼなどの顆粒蛋白や、活性酸素、脂質メディエーターを放出して血管内皮や周囲の組織を傷害します。心筋、神経、消化管などへの好酸球浸潤は、それだけで臓器障害の原因になります。ANCA陽性例では、MPO-ANCAが好中球を活性化して好中球細胞外トラップ(NETs)の形成などを促し、壊死性の小型血管炎を引き起こすと考えられています。末梢神経障害は、神経を栄養する小血管(神経栄養血管)の炎症による虚血で、軸索が変性して生じます。なお、ロイコトリエン受容体拮抗薬などの喘息治療薬の使用中に発症した例が報告されています。ただし薬剤そのものが原因というよりも、全身ステロイドの減量により潜在していた病態が表面化した可能性が指摘されており、因果関係は確立していません。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の症状

  • 気管支喘息: ほぼ全例にみられ、成人になってからの発症や、急に悪化して全身ステロイドが必要になることが特徴です。血管炎の発症に数年先行することが多い一方で、血管炎期にはかえって喘息が軽くなる例もあります。
  • アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎(鼻茸): 鼻閉、嗅覚低下、鼻汁が続き、好酸球性副鼻腔炎の病像をとることが多いとされます。喘息とともに前駆症状として重要です。
  • 多発単神経炎(しびれ・筋力低下): 日本の患者で最も頻度の高い血管炎症状で、手足の一部に突然強いしびれや痛みが出て、下垂足(足首が上がらない)や下垂手を生じることがあります。左右非対称に複数の神経が順に障害されるのが典型で、後遺症として残りやすい症状です。
  • 全身症状(発熱・体重減少・倦怠感): 38℃以上の発熱が続き、数か月で数kg以上の体重減少をきたすことがあります。血管炎期に入ったことを示す重要なサインです。
  • 皮膚症状: 下肢を中心とした触れることのできる紫斑(隆起した紫斑)、皮下結節、網状皮斑、蕁麻疹様の発疹などがみられます。皮膚生検は診断に役立ちます。
  • 肺病変: 移動性・一過性の浸潤影(好酸球性肺炎)が特徴で、咳、息切れ、発熱を伴います。ANCA陽性例ではまれに肺胞出血を起こします。
  • 心臓病変: 好酸球性心筋炎、心膜炎、冠動脈の血管炎などにより、心不全、不整脈、胸痛を起こします。自覚症状が乏しいこともあり、生命予後を左右する最も重要な臓器障害です。
  • 消化器症状: 腹痛、下痢、消化管出血がみられ、好酸球性胃腸炎や血管炎による潰瘍・穿孔を起こすことがあります。重症例では緊急手術が必要になることもあります。
  • 腎病変: 血尿や蛋白尿を呈し、ANCA陽性例では急速進行性糸球体腎炎を起こすことがあります。頻度はGPAやMPAより低いとされます。
  • 関節痛・筋痛: 多発関節痛や筋肉痛、筋力低下がみられ、血管炎の活動性を反映します。
  • 中枢神経・眼の症状: まれに脳梗塞、脳出血、脳神経麻痺を起こします。網膜動脈閉塞などの眼病変により視力が低下することもあります。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の経過と合併症

典型的な経過は3つの病期に分けて説明されます。①前駆期:喘息やアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎が数年から十年以上続く時期、②好酸球増多期:血液中の好酸球が著しく増え、好酸球性肺炎や胃腸炎など組織への好酸球浸潤が起こる時期、③血管炎期:発熱、体重減少、多発単神経炎、紫斑、臓器障害が出現する時期です。ただし、これらの病期は重なり合ったり順序が入れ替わったりすることもあります。血管炎期に入ると数週間で急速に進行する例があり、心臓や消化管が侵されると命に関わります。そのため、治療せずに経過をみることは勧められません。治療によって多くは寛解に至りますが、ステロイドの減量中や中止後に3〜5割程度で再燃がみられるとされ、喘息や副鼻腔炎の症状が残って少量のステロイドを長く続ける例も少なくありません。

合併症は、病気そのものによるものと治療に伴うものに分けられます。病気によるものでは、多発単神経炎のしびれ・痛み・運動障害の後遺症が最も多く、日常生活動作や就労に影響します。ほかに、心筋障害による慢性心不全や不整脈、腎機能障害、消化管穿孔後の後遺症などがあります。治療に伴うものでは、長期・大量のステロイドと免疫抑制薬による感染症(ニューモシスチス肺炎、細菌性肺炎、帯状疱疹、B型肝炎ウイルスの再活性化など)、骨粗鬆症と骨折、大腿骨頭壊死、糖尿病、脂質異常症、高血圧、白内障・緑内障、筋力低下(ステロイド筋症)、不眠や気分変調などが問題になります。シクロホスファミドでは、出血性膀胱炎、性腺機能障害、将来の悪性腫瘍リスクなどにも注意が必要です。血栓症(静脈血栓塞栓症)のリスクが上がることも報告されています。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断・診断基準

診断は、喘息やアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎の既往、末梢血の好酸球増多、血管炎を示す臨床症状の三つを組み合わせて総合的に行います。可能であれば組織生検で裏づけます。日本の指定難病の診断基準(旧厚生省難治性血管炎調査研究班の基準)では、①気管支喘息またはアレルギー性鼻炎、②好酸球増加、③血管炎による症状(発熱、体重減少、多発単神経炎、消化管出血、紫斑、多関節痛・関節炎、筋肉痛・筋力低下など)の主要臨床所見と、好酸球浸潤を伴う小血管の肉芽腫性または壊死性血管炎、血管外肉芽腫といった組織所見を組み合わせて、確実例(Definite)とします。組織所見がなくても、主要臨床所見がそろい特徴的な経過をたどる場合は確実例と判定されることがあります。あわせて、寄生虫感染、好酸球増多症候群、薬剤反応など好酸球が増える他の原因を除外します。さらに、心臓、腎臓、消化管、神経などの臓器障害の有無と重症度を評価して、治療方針を決めます。

  • 末梢血好酸球数・血液検査: 好酸球の著しい増加(多くは1,500/μL以上、白血球の10%超)が特徴です。血清IgEの上昇、CRP上昇、赤沈亢進、血小板増多、リウマトイド因子陽性などを伴うことがあります。ステロイド投与中は好酸球が速やかに減るため、治療前の値が重要です。
  • ANCA(MPO-ANCA/PR3-ANCA): MPO-ANCAが陽性となるのは3〜4割程度で、陰性でもEGPAは否定できません。PR3-ANCA陽性の場合はGPAなど他疾患をより慎重に検討します。
  • 組織生検(皮膚・神経・筋・消化管・肺など): 好酸球浸潤を伴う小血管のフィブリノイド壊死性血管炎や血管外肉芽腫が確認されれば、診断の強い根拠になります。病変部位に応じて、皮膚生検、腓腹神経・筋生検、内視鏡下生検などを選びます。
  • 胸部X線・CT、副鼻腔CT: 移動性のすりガラス影や浸潤影、気管支壁の肥厚などがみられます。副鼻腔CTでは粘膜の肥厚や鼻茸を確認します。
  • 神経伝導検査・神経学的診察: 左右非対称の軸索障害パターン(活動電位の振幅低下)は多発単神経炎を裏づけます。障害の分布や重症度を客観的に記録し、治療効果や後遺症の評価にも用います。
  • 心臓評価(心電図・心エコー・心筋トロポニン・BNP・心臓MRI): 心筋炎や心機能低下は自覚症状に乏しいことがあるため、診断時に全例でスクリーニングすることが勧められます。心臓MRIの遅延造影は潜在性の心筋障害の検出に有用です。
  • 尿検査・腎機能・消化管評価: 血尿、蛋白尿、赤血球円柱、血清クレアチニンの上昇から腎病変を評価します。腹部症状があれば内視鏡やCTで潰瘍・穿孔の有無を確認します。
  • 除外のための検査: 寄生虫(特に糞線虫)の抗体検査や便検査、骨髄検査やFIP1L1-PDGFRA融合遺伝子などの検査、アスペルギルス関連抗体などで、他の好酸球増多の原因を除外します。B型肝炎ウイルスや結核など、免疫抑制療法の前に必要なスクリーニングも行います。
  • 分類基準・重症度評価(2022 ACR/EULAR分類基準、Five Factor Scoreなど): 2022年のACR/EULAR分類基準では、閉塞性気道疾患、鼻茸、好酸球数1,000/μL以上などに加点し、c-ANCA/PR3-ANCA陽性や血尿に減点して判定します(主に研究用の基準です)。治療の強さを決めるために、心臓・消化管・腎・中枢神経病変などからなるFive Factor Score(FFS)などで予後不良因子を評価します。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と鑑別すべき疾患

  • 好酸球増多症候群(HES): 持続する好酸球増多と臓器障害を示しますが、血管炎の所見や喘息の先行を欠くことが多く、骨髄性HESではFIP1L1-PDGFRA融合遺伝子などで鑑別します。
  • 寄生虫感染症(糞線虫症など): 好酸球増多の原因として必ず除外が必要です。特に糞線虫感染はステロイド投与で播種性の重症感染を起こしうるため、流行地(沖縄・南九州など)の出身者では治療前の検査が重要です。
  • 慢性好酸球性肺炎・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA): 喘息と好酸球増多を伴いますが、病変が肺に限られ、多発単神経炎や紫斑など肺以外の血管炎症状を欠く点が異なります。
  • 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)・顕微鏡的多発血管炎(MPA): 同じANCA関連血管炎ですが、喘息の先行や著明な好酸球増多を欠くことが多く、GPAではPR3-ANCAや破壊性の上気道病変が手がかりになります。
  • 結節性多発動脈炎(PAN): 中型動脈の壊死性血管炎で多発単神経炎も起こしますが、喘息や好酸球増多は通常みられず、ANCAも陰性です。
  • 薬剤性好酸球増多・DRESS(薬剤性過敏症症候群): 原因薬剤の投与開始後に、発疹、発熱、肝障害とともに好酸球が増えることで区別され、薬剤歴の確認が重要です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療

治療の目標は、血管炎と好酸球性炎症を速やかに抑えて寛解を導入し、臓器障害の進行と死亡を防ぐことです。そのうえで、再燃を防ぎながらステロイドを可能な限り減量し、治療に伴う合併症を最小限にします。日本では厚生労働省研究班などによるANCA関連血管炎の診療ガイドラインが参照され、重症度に応じて治療の強さを選びます。生命や臓器を脅かす病変(心臓、消化管、中枢神経、腎、重度の神経障害など)がない場合は、主にグルココルチコイド単独で寛解導入を行います。これらの重症病変がある場合は、高用量グルココルチコイドに免疫抑制薬を併用します。寛解後は維持療法へ移行し、ステロイドを段階的に減量します。喘息や副鼻腔炎に対しては、吸入ステロイドなどの局所治療を並行して継続します。薬剤の選択や投与期間は個々の病状、年齢、合併症、妊娠の希望などによって大きく異なるため、膠原病・リウマチ内科、呼吸器内科などの専門医と十分に相談して決めます。

  • グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド): 寛解導入の中心となる治療です。経口プレドニゾロン高用量(体重1kgあたり1mg/日前後)から開始し、重症例ではメチルプレドニゾロンのパルス療法を先行させることがあります。病状をみながら数か月から年単位で漸減します。
  • シクロホスファミド: 心臓、消化管、中枢神経、腎などの重症臓器病変がある場合に、寛解導入でステロイドと併用する代表的な免疫抑制薬です。主に間欠的静注(IVCY)で用い、累積投与量を考慮して期間を限定します。
  • 抗IL-5抗体製剤(メポリズマブ): 日本では既存治療で効果不十分なEGPAに対して承認されています。臨床試験で寛解の達成とステロイドの減量効果、再燃の減少が示されています。主に再燃例やステロイド依存例の寛解維持で用いられ、IL-5経路を標的とする他の生物学的製剤についても臨床試験の成績が報告されています。
  • 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG): 日本では、ステロイドが効果不十分な場合のEGPAに伴う神経障害の改善を目的として保険適用があります。残存する多発単神経炎による運動・感覚障害に対して検討されます。
  • 寛解維持の免疫抑制薬(アザチオプリンなど): 寛解導入後の維持療法や、ステロイドの減量を目的として併用されます。リツキシマブなど他の薬剤が難治例で検討されることもありますが、EGPAでの位置づけや適応は専門医が個別に判断します。
  • 喘息・副鼻腔炎の治療: 吸入ステロイド、長時間作用性気管支拡張薬、点鼻ステロイドなどを継続し、気道症状を全身ステロイドだけに頼らずに管理します。必要に応じて耳鼻咽喉科で鼻茸の治療を行います。
  • 感染症・副作用の予防: ニューモシスチス肺炎の予防(ST合剤など)、骨粗鬆症の予防・治療(ビスホスホネートなど)、B型肝炎ウイルス再活性化のモニタリング、血糖・血圧・眼科の定期チェックを行います。不活化ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌など)の接種も検討します。免疫抑制中の生ワクチンは原則として避けます。
  • リハビリテーション: 多発単神経炎による下垂足や筋力低下に対し、理学療法、作業療法、短下肢装具などで機能回復と転倒予防を図ります。ステロイド筋症の予防にも有用です。
  • 臓器別の専門治療: 心不全や不整脈には循環器内科での薬物療法や機器治療、消化管穿孔には外科手術、急速進行性腎炎には腎臓内科での管理など、障害された臓器に応じた治療を並行して行います。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の予後・長期フォロー

治療法の進歩により、生命予後は大きく改善しました。5年生存率はおおむね9割前後とする報告が多くあります。予後を悪くする主な因子は、心臓病変(心筋炎、心不全)、消化管穿孔・出血、中枢神経病変、腎機能障害、高齢などで、Five Factor Scoreが高いほど死亡リスクが高いとされます。死因としては心臓病変と感染症が重要です。一方で、寛解に至っても末梢神経障害によるしびれ、痛み、筋力低下が長く残ることが多く、喘息のコントロールのために少量のステロイドを続ける人も少なくありません。こうした点はQOLに大きく影響します。抗IL-5療法の登場により、ステロイドを減量しながら寛解を維持できる例が増えています。

長期フォローアップでは、症状、末梢血好酸球数、CRP、ANCA、尿検査、腎機能を定期的に確認し、再燃を早期に察知することが重要です。好酸球の再上昇や喘息の悪化、新たなしびれは再燃の手がかりになりますが、ANCA値だけで治療を変えることはせず、総合的に判断します。心臓病変があった人は心エコーや心電図などで継続的に評価します。治療の副作用対策として、骨密度、血糖、脂質、血圧、眼科検査(白内障・緑内障)、感染症のチェックを定期的に行い、シクロホスファミドの使用歴がある人では膀胱がんなど悪性腫瘍の検診にも留意します。寛解期でも自己判断でステロイドを中断すると、副腎不全や再燃を招くおそれがあります。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

寛解期には多くの人が通常に近い生活を送れますが、いくつかの注意点があります。①ステロイドや免疫抑制薬は自己判断で中止・減量しない、②手洗い、うがい、マスク、人混みを避けるなど感染予防を心がけ、発熱時は早めに受診する、③喘息の吸入薬は症状が落ち着いていても指示通り継続する、④禁煙し、受動喫煙やアレルゲン(ダニ、カビなど)を避ける、⑤骨粗鬆症や糖尿病の予防のため、適度な運動とバランスのよい食事、体重管理を行う、⑥しびれのある手足は温度や傷を感じにくいため、やけどや外傷に注意し、足に合った靴を履く、⑦新しい薬やサプリメントを使うときは主治医や薬剤師に相談する、などです。妊娠・出産は、病状が安定した寛解期であれば可能な場合が多いものの、使用中の薬剤(シクロホスファミドなど一部の薬剤は胎児への影響がある)の調整が必要です。計画的に主治医と産科医に相談してください。EGPAは単一遺伝子による遺伝性疾患ではなく、家族が同じ病気になる可能性は一般に低いと考えられます。家族の発症について不安がある場合は、主治医や遺伝カウンセリング外来で相談できます。

利用できる制度・相談窓口

EGPAは指定難病(告示番号45)で、診断基準を満たし重症度基準に該当する場合、または軽症でも医療費が一定以上かかる場合(軽症高額該当)には、特定医療費(指定難病)助成制度により、所得に応じた自己負担上限額が設定されます。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、窓口は住所地の都道府県・指定都市(保健所など)です。小児期に発症した場合は、小児慢性特定疾病医療費助成の対象となる場合があります。加えて、高額療養費制度、障害が固定した場合の身体障害者手帳(神経障害による肢体不自由、心臓機能障害など)、日常生活や就労に支障がある場合の障害年金、障害者総合支援法による福祉サービス(難病も対象)などを利用できる可能性があります。65歳以上では、要介護状態に応じて介護保険サービスも利用できます。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、病院の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあり、治療と仕事の両立支援についても相談できます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に伴う心のケア・心理社会的支援

EGPAは長い喘息の経過のあとに突然全身の症状が現れることが多く、診断までに複数の診療科を受診して時間がかかることもあり、患者さんや家族は大きな不安を抱えがちです。治療初期の高用量ステロイドは、不眠、気分の高揚や落ち込み、イライラなどの精神症状を引き起こすことがあり、満月様顔貌や体重増加など外見の変化も心理的負担になります。寛解後も、しびれや痛み、下垂足などの後遺症による生活・就労上の制約、再燃への不安、感染への恐れ、長期服薬の負担が続き、抑うつ、不安障害、適応障害につながることがあります。慢性的な神経障害性疼痛は睡眠や気分にも影響します。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、何事にも興味が持てないといった状態は、決して気の持ちようの問題ではありません。主治医や看護師に遠慮なく伝え、必要に応じて心療内科・精神科、臨床心理士、患者会、ピアサポートなどを利用することが大切です。家族も一人で抱え込まず、相談窓口を活用してください。

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好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の受診の目安

  • 喘息のある人が、手足の一部に急にしびれや痛み、力の入りにくさ(つまずきやすい、物を落とす)を感じたときは、早めに受診してください。
  • 38℃以上の発熱が続く、体重が急に減る、足に紫斑(赤紫色の発疹)が出るなどの症状が喘息とともにみられる場合は、速やかに受診してください。
  • 胸の痛み、動悸、息切れの悪化、足のむくみなど心臓の異常を疑う症状があるときは、直ちに医療機関を受診し、強い場合は救急受診してください。
  • 激しい腹痛、吐血・下血、黒色便がある場合は、消化管の穿孔や出血のおそれがあるため救急受診してください。
  • 治療中に高熱、強い咳や息苦しさ、意識の変化、急な片麻痺や言葉のもつれが出たときは、重症感染症や脳血管障害の可能性があるため救急受診してください。
  • 治療中に喘息症状の悪化や新たなしびれが出た場合は、再燃の可能性があるため、次回の予約を待たずに主治医に連絡してください。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症についてのよくある質問

Q. 喘息がある人は誰でもEGPAになる可能性がありますか?

A. EGPAを発症するのは喘息患者のごく一部で、ほとんどの喘息の人には起こりません。ただし、大人になってから発症した喘息に加えて、好酸球の著しい増加、鼻茸を伴う副鼻腔炎、手足のしびれ、発熱、紫斑などがみられる場合は注意が必要で、主治医に相談してください。

Q. ANCAが陰性でもEGPAと診断されるのですか?

A. はい。EGPAでANCAが陽性になるのは3〜4割程度で、陰性の人の方が多い病気です。診断は喘息、好酸球増多、血管炎の症状、組織所見などを総合して行われます。

Q. しびれは治りますか?

A. 治療で血管炎が落ち着くと、しびれや筋力低下は数か月から数年かけてある程度回復することが多いものの、完全には戻らず後遺症として残る場合もあります。ステロイドで改善が不十分な神経障害に対しては免疫グロブリン大量静注療法が検討されることがあり、リハビリテーションや装具も機能の維持に役立ちます。

Q. ステロイドはいつまで続ける必要がありますか?

A. 病状や再燃の有無によって大きく異なります。数年かけて減量し中止できる人もいれば、喘息のコントロールなどのために少量を長く続ける人もいます。抗IL-5抗体製剤などを併用してステロイドを減らせる場合もあるため、自己判断で中止せず、主治医と相談しながら調整してください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。