悪性関節リウマチ

Malignant Rheumatoid Arthritis

悪性関節リウマチ(Malignant Rheumatoid Arthritis)|悪性関節リウマチ(MRA)は、関節リウマチ(RA)の経過中に血管炎をはじめとする関節外症状が現れ、難治性または重篤な病態となったものを指す、わが国独自の疾患概念です。長期罹患の中高年RA患者に多くみられ、皮膚潰瘍、指趾壊疽、多発性単神経炎、間質性肺炎、臓器梗塞などにより生命予後や生活機能に大きく影響することがあります。早期に診断し、病型と重症度に応じた免疫抑制療法と全身管理を行うことが重要です。

悪性関節リウマチの要点

悪性関節リウマチは、関節リウマチの経過中に血管炎や間質性肺炎などの関節外症状を伴い、難治性・重症となった病態で、指定難病(告示番号46)です。長期罹患の中高年に多く、皮膚潰瘍、指趾壊疽、多発性単神経炎、臓器梗塞などがみられ、「悪性」はがんではなく重症・難治を意味します。

別名・略称悪性リウマチ、MRA、リウマトイド血管炎、rheumatoid vasculitis
分野免疫・膠原病・自己炎症
好発年齢長期罹患の中高年の関節リウマチ患者に多い
主な症状皮膚潰瘍、指趾壊疽、多発性単神経炎、間質性肺炎、臓器梗塞など
主な病型全身性動脈炎型(Bevans型)、末梢動脈炎型(Bywaters型)、関節外症状主体の例
診断厚生省研究班の診断基準(1989年作成、のちに改訂)
主な治療病型と重症度に応じた免疫抑制療法と全身管理
受診する主な診療科リウマチ科・膠原病内科

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悪性関節リウマチとは

悪性関節リウマチは、既存の関節リウマチに血管炎や重篤な関節外臓器障害を伴い、難治性で重症な臨床像を示す病態です。欧米ではリウマトイド血管炎(rheumatoid vasculitis)とほぼ同じ意味で用いられます。ただし日本の悪性関節リウマチは、血管炎に加えて間質性肺炎、胸膜炎・心膜炎、上強膜炎、皮下結節などの関節外症状も含む、やや広い概念です。「悪性」は腫瘍(がん)を意味するのではなく、「重症・難治性」という意味です。関節症状の強さとは必ずしも一致せず、関節炎が落ち着いている時期に血管炎が出ることもあります。厚生労働省の指定難病(告示番号46)に定められており、診断には厚生省研究班の診断基準(1989年作成、のちに改訂)が用いられます。

病型は、障害される血管の太さと病態から大きく2つに分けられます。1つは全身性動脈炎型(Bevans型)で、結節性多発動脈炎に似た小〜中型動脈の壊死性血管炎が内臓を含む全身に起こります。発熱、体重減少、多発性単神経炎、皮膚潰瘍、消化管や心臓などの臓器梗塞が比較的急に出現し、重症化しやすいのが特徴です。もう1つは末梢動脈炎型(Bywaters型)で、四肢末梢の小動脈に閉塞性内膜炎が起こります。爪周囲の点状梗塞、指趾の壊疽、下腿潰瘍、感覚優位の末梢神経障害などが中心で、経過は比較的緩やかです。このほか、血管炎が目立たず間質性肺炎や胸膜炎などの関節外症状が主体となる例も、診断基準を満たせば悪性関節リウマチとして扱われます。

悪性関節リウマチの疫学・患者数

わが国の悪性関節リウマチの患者は、指定難病の医療受給者証保持者数でみると数千人規模とされます。関節リウマチ患者全体に占める割合は1%未満(0.6%程度)と推定されています。発症は60歳代を中心とした中高年に多く、関節リウマチの罹患期間が長い(10年以上など)患者に起こりやすいとされます。関節リウマチ自体は女性が男性の約3〜4倍ですが、悪性関節リウマチでは男女比が約1:2と男性の割合が相対的に高いことが知られています。危険因子として、リウマトイド因子(RF)高値、皮下結節の存在、骨びらんの進行した関節病変、喫煙、男性などが報告されています。生物学的製剤などによる関節リウマチ治療の進歩により、欧米ではリウマトイド血管炎の発症が減っているとの報告があり、わが国でも同様の傾向が推測されています。

悪性関節リウマチの原因・病態生理

悪性関節リウマチは遺伝性疾患ではなく、単一の原因遺伝子は知られていません。関節リウマチの疾患感受性に関わるHLA-DRB1の特定の型(シェアードエピトープ)などの遺伝的背景に、喫煙などの環境因子が加わり、長年の自己免疫反応が持続することで発症すると考えられています。中心となる仕組みは免疫複合体の関与です。悪性関節リウマチではIgMやIgGのリウマトイド因子が非常に高い値を示すことが多く、IgGリウマトイド因子同士が結合した免疫複合体が血液中を循環します。これが血管壁に沈着して補体を活性化し、血清補体価の低下を招くと同時に、好中球や単球を呼び寄せて血管壁を傷つけます。

血管壁では、補体の分解産物(C5aなど)により好中球が集まり、活性酸素や蛋白分解酵素を放出して血管壁にフィブリノイド壊死を起こします(壊死性血管炎)。また、活性化したT細胞やマクロファージが産生するTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが血管内皮細胞を活性化し、接着分子の発現や凝固亢進を促します。その結果、内腔の狭窄・閉塞や血栓形成が起こります。全身性動脈炎型では中型動脈までのフィブリノイド壊死が主体で、血流障害が内臓の梗塞や神経栄養血管の閉塞(多発性単神経炎)をもたらします。末梢動脈炎型では内膜の増殖による閉塞性内膜炎が主体で、指趾末端の虚血や皮膚潰瘍が起こります。間質性肺炎や胸膜炎、皮下結節(リウマトイド結節:中心壊死とそれを囲む柵状の組織球からなる肉芽腫)などの関節外病変も、同じ全身性の免疫異常を背景に生じると考えられています。なお、抗好中球細胞質抗体(ANCA)は通常陰性で、ANCA関連血管炎とは機序が異なります。

悪性関節リウマチの症状

  • 関節症状: 関節リウマチによる多関節の腫れ・痛み・変形がみられます。ただし血管炎の活動性と関節炎の活動性は必ずしも一致せず、関節症状が軽い時期に血管炎が出ることもあります。
  • 全身症状(発熱・体重減少・倦怠感): 感染症では説明できない発熱、食欲低下、体重減少、強いだるさが現れます。特に全身性動脈炎型でよくみられ、血管炎が活動している目安になります。
  • 皮膚潰瘍・下腿潰瘍: 足関節(くるぶし)周囲や下腿に、境界がはっきりした深い潰瘍ができ、強い痛みを伴って治りにくいのが特徴です。感染を合併しやすくなります。
  • 指趾の梗塞・壊疽: 爪の周囲や指先に小さな黒褐色の点状梗塞が現れ、進行すると指趾が壊疽(組織が死んで黒くなる状態)に至ることがあります。末梢動脈炎型の代表的な所見です。
  • 紫斑・網状皮斑: 下肢を中心に、触れるとわかる紫斑や、網目状の赤紫色の皮斑(リベド)がみられることがあります。皮膚の小血管に炎症が起きていることを示します。
  • 皮下結節(リウマトイド結節): 肘の外側、後頭部、アキレス腱など圧迫を受けやすい部位に、痛みの少ない硬いしこりができます。RF高値例に多く、悪性関節リウマチの診断基準項目の1つです。
  • 多発性単神経炎・末梢神経障害: 神経を養う血管が詰まり、手足のしびれ、痛み、筋力低下が現れます。下垂足(足首が上がらない)や下垂手として急に気づくことがあり、左右非対称に複数の神経が障害されるのが特徴です。
  • 眼症状(上強膜炎・強膜炎): 白目の充血、眼痛、まぶしさなどがみられます。壊死性強膜炎は強膜が薄くなり穿孔の危険があるため、眼科での早急な評価が必要です。
  • 胸膜炎・心膜炎・心筋炎: 胸水の貯留による胸痛や息切れ、心膜炎による胸痛、心筋炎による不整脈や心不全が起こることがあります。
  • 間質性肺炎・肺線維症: 乾いた咳や労作時の息切れが徐々に、ときに急速に進みます。生命予後に関わる重要な臓器病変で、薬剤性肺障害との区別も問題になります。
  • 臓器梗塞(消化管・心臓など): 腸間膜動脈などの血管炎により腹痛、消化管出血、腸管穿孔が起こったり、冠動脈炎による心筋梗塞が起こったりすることがあり、緊急対応を要します。
  • 腎障害: 頻度は高くありませんが、血尿・蛋白尿や腎機能低下がみられることがあります。続発性アミロイドーシスや薬剤性腎障害との区別が必要です。

悪性関節リウマチの経過と合併症

悪性関節リウマチは、関節リウマチと診断されて長い年月がたってから発症することが多く、RA罹患期間が10年以上の例が典型的です。全身性動脈炎型は、発熱や体重減少に続いて多発性単神経炎、皮膚潰瘍、臓器梗塞などが数週から数カ月の単位で急に進むことがあり、治療が遅れると多臓器障害に至ります。末梢動脈炎型は、指趾の点状梗塞や下腿潰瘍、感覚障害を中心に比較的緩やかに進みますが、潰瘍が治りにくく、感染や壊疽によって切断が必要になる場合もあります。適切な治療で血管炎が落ち着いた後も、ステロイドの減量中や感染症をきっかけに再燃することがあり、慢性的に再燃と寛解を繰り返す例も少なくありません。間質性肺炎は血管炎とは別の経過で慢性的に進行することがあり、長期予後を左右します。

合併症は、病気そのものによるものと治療に伴うものに分けられます。病気によるものとして、皮膚潰瘍の二次感染・骨髄炎、指趾壊疽、神経障害による運動・感覚機能の後遺症、間質性肺炎の進行による呼吸不全、消化管穿孔・出血、心筋梗塞、長期の炎症による続発性(AA)アミロイドーシスなどがあります。治療に伴うものとしては、大量のステロイドや免疫抑制薬による細菌・真菌・ウイルス感染症(ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、帯状疱疹、B型肝炎ウイルスの再活性化、結核など)が特に重要で、死因の上位を占めます。ほかに、骨粗鬆症と脆弱性骨折、糖尿病、高血圧、脂質異常症、白内障・緑内障、消化性潰瘍、シクロホスファミドによる骨髄抑制・出血性膀胱炎・性腺機能障害なども注意すべき合併症です。

悪性関節リウマチの診断・診断基準

診断は、まず関節リウマチの分類基準を満たしていることを前提とし、そのうえで血管炎や関節外症状を示す臨床所見と、血液検査・病理組織所見を組み合わせて行います。わが国の診断基準(厚生省研究班)では、臨床症状・検査所見として(1)多発性神経炎、(2)皮膚潰瘍または梗塞または指趾壊疽、(3)皮下結節、(4)上強膜炎または虹彩炎、(5)滲出性胸膜炎または心嚢炎、(6)心筋炎、(7)間質性肺炎または肺線維症、(8)臓器梗塞、(9)リウマトイド因子高値(2回以上の測定で高値)、(10)血清低補体価または血中免疫複合体陽性、の10項目が挙げられています。組織所見としては、皮膚・筋・神経などの生検で小・中動脈の壊死性血管炎、肉芽腫、閉塞性内膜炎のいずれかを認めることが求められます。臨床症状10項目のうち3項目以上を満たすか、1項目以上に加えて組織所見がある場合に悪性関節リウマチと診断されます。あわせて、感染症、薬剤による副作用、続発性アミロイドーシス、他の膠原病・血管炎などを丁寧に除外することが欠かせません。また、指定難病の医療費助成では、臓器障害の程度などに基づく重症度分類も用いられます。

  • 炎症反応・血算: CRP上昇、赤沈亢進、白血球増加、血小板増加、慢性炎症に伴う貧血などがみられ、血管炎の活動性評価にも用います。IL-6阻害薬を使用中はCRPが上がりにくく、活動性を過小評価しやすいため注意が必要です。
  • リウマトイド因子(RF)・抗CCP抗体: RFが非常に高い値を示すことが多く、診断基準項目にも含まれます。抗CCP抗体は関節リウマチの診断を裏づけますが、血管炎の有無を直接示すものではありません。
  • 血清補体価・免疫複合体・クリオグロブリン: CH50、C3、C4の低下や血中免疫複合体の陽性は免疫複合体性血管炎を示唆し、診断基準項目に含まれます。クリオグロブリンが検出される場合は、C型肝炎ウイルス感染などとの鑑別も行います。
  • ANCA・抗核抗体などの自己抗体: MPO-ANCAやPR3-ANCAは通常陰性で、陽性の場合はANCA関連血管炎の合併や鑑別を検討します。抗核抗体、抗SS-A抗体などで、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群とのオーバーラップも評価します。
  • 組織生検(皮膚・筋・腓腹神経など): 小〜中動脈のフィブリノイド壊死、炎症細胞浸潤、閉塞性内膜炎、肉芽腫などを確認でき、診断の確実性を高めます。潰瘍の辺縁や紫斑部、症状のある神経・筋から採取します。
  • 神経伝導検査: 多発性単神経炎では、左右非対称に複数の神経で軸索障害のパターン(振幅低下)がみられます。障害の範囲や回復の評価にも役立ちます。
  • 胸部X線・胸部CT・呼吸機能検査: 間質性肺炎(網状影、すりガラス影、蜂巣肺など)、胸膜炎、肺結節の評価に用います。メトトレキサートなどによる薬剤性肺障害や感染症との区別にも重要です。
  • 心電図・心エコー・腹部画像・血管造影: 心膜液貯留、心筋障害、冠動脈病変の評価や、腹痛を伴う場合の腸管虚血・穿孔の評価を行います。CTや血管造影で中型動脈の狭窄・微小動脈瘤がみられることがあります。
  • 感染症スクリーニング・尿検査: 血液培養、β-Dグルカン、結核(インターフェロンγ遊離試験)、B型・C型肝炎ウイルスなどを確認し、感染症の除外と治療前の安全確認を行います。尿検査では血尿・蛋白尿で腎病変を評価します。

悪性関節リウマチと鑑別すべき疾患

  • 顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症: ANCA陽性、半月体形成性糸球体腎炎や肺胞出血が目立つ点で区別し、関節リウマチに合併することもあるため注意します。
  • 結節性多発動脈炎: 病理像は全身性動脈炎型と似ていますが、関節リウマチの既往やRF高値・低補体血症を伴わない点が異なります。
  • クリオグロブリン血症性血管炎: C型肝炎ウイルス感染や血液疾患を背景に起こることが多く、血清クリオグロブリンや肝炎ウイルス検査で評価します。
  • 薬剤性障害(薬剤性肺障害・薬剤誘発性血管炎など): メトトレキサートによる間質性肺炎や、TNF阻害薬などによる血管炎・ループス様症状は、薬剤開始との時間的関係や中止後の経過で区別します。
  • 感染症(感染性心内膜炎・敗血症・結核など): 免疫抑制治療中の発熱や皮膚病変、塞栓症状は感染症でも起こるため、血液培養や画像検査で必ず除外します。
  • 動脈硬化性末梢動脈疾患・コレステロール塞栓症・糖尿病性神経障害: 高齢者の指趾虚血や神経障害は動脈硬化や糖尿病でも起こり、血管評価、炎症反応、経過、生検所見から区別します。

悪性関節リウマチの治療

治療の目標は、血管炎と関節外病変の炎症をすみやかに抑えて臓器障害を防ぎ(寛解導入)、その状態を少ない副作用で保つこと(寛解維持)です。同時に、基盤にある関節リウマチの疾患活動性も管理します。治療の強さは病型と重症度で決まります。多発性単神経炎、臓器梗塞、進行性の間質性肺炎、急速に広がる皮膚潰瘍・壊疽などを伴う全身性動脈炎型では、高用量の副腎皮質ステロイド(必要に応じてステロイドパルス療法)に免疫抑制薬(シクロホスファミドなど)を併用し、血漿交換療法を加えることもあります。一方、皮膚の点状梗塞や軽い感覚障害が中心の末梢動脈炎型では、中等量のステロイド、血管拡張薬・抗血小板薬、関節リウマチ治療の強化などで対応することが多くなります。悪性関節リウマチを対象とした大規模な比較試験は少なく、治療はリウマチ専門医が病状と合併症に応じて個別に組み立てます。高齢者が多く感染症が主な死因であるため、感染予防と全身管理が治療の重要な柱となります。

  • 副腎皮質ステロイド: 寛解導入の中心で、重症例ではプレドニゾロン換算で高用量(体重1kgあたり0.5〜1mg程度)を用い、生命や臓器に関わる病態ではメチルプレドニゾロンによるパルス療法を行うこともあります。症状の改善をみながら、再燃に注意して時間をかけて減量します。
  • シクロホスファミド: 全身性動脈炎型や重篤な多発性単神経炎、臓器梗塞などで、ステロイドと併用されることが多い免疫抑制薬です。点滴静注(間欠投与)や内服で用い、骨髄抑制、感染症、出血性膀胱炎、性腺機能障害などの副作用を慎重に監視します。
  • その他の免疫抑制薬(アザチオプリン、メトトレキサートなど): 寛解維持やステロイド減量の目的で用いられます。メトトレキサートは関節リウマチの基本薬ですが、間質性肺炎を伴う例や腎機能低下例では慎重な判断が必要です。
  • 生物学的製剤・JAK阻害薬: TNF阻害薬、IL-6受容体阻害薬、アバタセプトなどは関節リウマチの疾患活動性の管理に用いられ、血管炎への効果を示す報告もあります。一方で、TNF阻害薬などで血管炎が誘発されたという報告もあり、海外で有効性が報告されているリツキシマブは国内では本疾患への保険適用がありません。そのため、選択は専門医が個別に判断します。
  • 血漿交換療法: 病態の原因となる免疫複合体や高力価のリウマトイド因子を血液から除去する治療で、わが国では悪性関節リウマチが保険適用の対象疾患に含まれています。薬物療法で十分な効果が得られない重症例や、ステロイドを増やしにくい例で検討されます。
  • 血管拡張薬・抗血小板薬・抗凝固療法: 指趾の虚血や皮膚潰瘍に対し、プロスタグランジン製剤などの血管拡張薬や抗血小板薬で末梢の血流改善を図ることがあります。出血リスクとのバランスを考えて用います。
  • 皮膚潰瘍・壊疽の局所治療: 皮膚科・形成外科と連携し、洗浄、適切な外用薬や創傷被覆材の使用、感染コントロールを行います。壊疽が進行した場合は切断術が必要になることもあります。
  • 感染予防と副作用対策: ステロイド大量投与時にはST合剤によるニューモシスチス肺炎の予防、B型肝炎ウイルスや結核の再活性化対策、インフルエンザ・肺炎球菌などの不活化ワクチン接種が推奨されます。骨粗鬆症の予防薬、胃粘膜保護、血糖・血圧の管理もあわせて行います。
  • リハビリテーション・装具療法: 多発性単神経炎による下垂足には短下肢装具を用い、筋力・関節可動域の維持訓練を行います。関節変形に対しては作業療法や自助具の活用で日常生活動作を支えます。

悪性関節リウマチの予後・長期フォロー

悪性関節リウマチの予後は、病型と臓器障害の程度によって大きく異なります。全身性動脈炎型は、かつては診断後数年以内の死亡率が高いと報告されており、現在でも予後に注意を要する病態です。死因としては、免疫抑制治療に関連した感染症(肺炎、敗血症など)、間質性肺炎の進行による呼吸不全、血管炎そのものによる消化管穿孔や心筋梗塞などが挙げられます。末梢動脈炎型は生命予後が比較的良好ですが、治りにくい潰瘍や指趾の切断、神経障害の後遺症により生活の質(QOL)が低下することがあります。近年は関節リウマチ治療の進歩と早期診断、感染予防の徹底により、予後は改善傾向にあると考えられています。ただし、高齢で併存疾患の多い患者が多いため、病気の勢いと治療の副作用のバランスをとることが引き続き課題です。

寛解に至った後も、血管炎の再燃、間質性肺炎の進行、関節リウマチの活動性、治療薬の副作用を長期にわたって確認する必要があります。定期的な外来受診では、症状や皮膚・神経所見の診察に加え、血算、CRP・赤沈、補体価、RF、腎機能・肝機能、尿検査を行い、必要に応じて胸部X線・CT、呼吸機能検査、骨密度検査、眼科診察を組み合わせます。ステロイドは再燃に注意しながらできるだけ少ない量まで減らすことが目標です。感染症の徴候は早めに見つけて対応します。多くの診療科が関わるため、リウマチ専門医が中心となって、皮膚科、神経内科、呼吸器内科、眼科、整形外科、リハビリテーション科などと連携する体制が望まれます。

悪性関節リウマチの日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、感染予防が最も大切です。手洗い・うがい、人混みでのマスク着用、口腔ケアを心がけ、医師と相談のうえで予防接種を受けましょう。生ワクチンは免疫抑制治療中には原則として接種できないため、必ず主治医に確認します。皮膚潰瘍や指先の虚血がある場合は、手足を冷やさないよう保温に努め、靴擦れや小さな傷を避けるため足に合った靴を選びます。毎日、足や指先を観察し、傷や色の変化に早く気づくことも大切です。喫煙は血管障害や間質性肺炎を悪化させるため、禁煙が強く勧められます。ステロイドを使用している間は、自己判断で中止・減量すると急な再燃や副腎不全を起こす危険があるため、指示どおりに服用してください。骨粗鬆症予防のための適度な運動とカルシウム・ビタミンDの摂取、体重や血糖の管理も重要です。神経障害で足元が不安定な場合は、装具や手すり、段差の解消などで転倒を防ぎましょう。本症は遺伝性疾患ではなく、家族に同じ病気が必ず現れるわけではありません。ただし関節リウマチになりやすい体質が家族内にみられることはあるため、不安があれば主治医に相談してください。家族には病状や感染予防の必要性を理解してもらい、通院や日常生活の支援体制を整えておくと安心です。

利用できる制度・相談窓口

悪性関節リウマチは指定難病(告示番号46)であり、診断基準を満たし、重症度分類で一定以上(3度以上)と判定された場合に、難病医療費助成制度の対象となります。重症度の基準を満たさない場合でも、医療費の自己負担が高額になる状態が続く場合は「軽症高額該当」として認められることがあります。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)で手続きを行います。認定されると自己負担割合が軽減され、所得に応じた月額の自己負担上限額が設けられます。医療保険の高額療養費制度も併用できます。関節リウマチは介護保険の特定疾病に含まれているため、40〜64歳の方でも要介護認定を受ければ介護保険サービスを利用できます。関節の機能障害や神経障害、呼吸機能障害の程度に応じて身体障害者手帳の交付対象となる場合があり、日常生活や就労に大きな制限がある場合は障害年金の対象となることもあります。会社員の方は療養中に健康保険の傷病手当金を利用できる場合があります。相談窓口としては、病院の医療ソーシャルワーカー(医療相談室)、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の難病担当保健師、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあり、制度の利用や就労・療養生活の悩みについて相談できます。

悪性関節リウマチに伴う心のケア・心理社会的支援

悪性関節リウマチは、長年関節リウマチと付き合ってきた方が「さらに重い病気」と告げられることが多く、大きな衝撃や将来への不安を感じやすい病気です。「悪性」という名称からがんのような病気を連想して強い恐怖を抱く方もいますが、これは「重症・難治性」という意味です。痛みの続く皮膚潰瘍、指の切断への恐れ、しびれや筋力低下による動作の不自由さ、入院の長期化、仕事や家庭での役割の変化などは、抑うつや不安、適応障害の原因となりえます。また、高用量のステロイドは不眠、気分の高揚や落ち込み、いらだちなどの精神症状を起こすことがあり、病気への反応と区別しにくい場合があります。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、何事にも興味がわかないといった状態があれば、我慢せずに主治医や看護師に伝えてください。必要に応じて精神科・心療内科の医師、公認心理師、医療ソーシャルワーカーにつないでもらうことができます。患者会や同じ病気をもつ人との交流が支えになることもあります。介護を担う家族も負担を抱え込みやすいため、家族自身が相談できる場をもつことも大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

悪性関節リウマチの受診の目安

  • 38℃以上の発熱、咳・痰、息苦しさなど感染症を疑う症状が出たときは、免疫抑制治療中であれば早めに主治医へ連絡し受診してください。
  • 急に手足に力が入らなくなった、足首が上がらない、しびれが急速に広がったなどの神経症状は、血管炎の悪化の可能性があるため速やかに受診してください。
  • 指先や足先が黒っぽく変色した、新しい皮膚潰瘍ができた、潰瘍が急に広がって痛みや膿が出てきたときは、早めに受診してください。
  • 激しい腹痛、吐血・下血、黒色便、胸痛や意識の変化がある場合は、臓器梗塞や消化管穿孔のおそれがあるため、ためらわず救急要請・救急受診してください。
  • 目の強い痛みや充血、見えにくさが出たときは、強膜炎などの可能性があるため当日中に眼科を受診してください。
  • 息切れが以前より強くなった、乾いた咳が続くときは、間質性肺炎の悪化や薬剤性肺障害の可能性があるため早めに相談してください。

悪性関節リウマチについてのよくある質問

Q. 「悪性」とありますが、がんなのでしょうか?

A. がん(悪性腫瘍)ではありません。関節リウマチに血管炎などの重い関節外症状が加わり、重症・難治性の経過をとりうることから「悪性」と呼ばれています。人に感染することもありません。

Q. 関節リウマチの人は皆、悪性関節リウマチになるのですか?

A. いいえ、関節リウマチ患者のごく一部(1%未満と推定)にしか起こりません。罹患期間が長い、リウマトイド因子が非常に高い、皮下結節がある、喫煙者などで起こりやすいとされます。関節リウマチの炎症をしっかり抑えることが予防につながると考えられています。

Q. ステロイドはずっと飲み続けなければならないのですか?

A. 発症初期には比較的多い量が必要ですが、病状が落ち着けば再燃に注意しながら少しずつ減らしていきます。最終的に少量で維持できる方や中止できる方もいます。自己判断で中止すると危険なため、減量の進め方は必ず主治医と相談してください。

Q. 関節リウマチで使っている薬はそのまま続けてよいですか?

A. 悪性関節リウマチの診断後は、血管炎の状態、間質性肺炎の有無、感染症のリスクなどに応じて治療内容を見直すことがあります。メトトレキサートや生物学的製剤などは継続・変更・中止のいずれもありうるため、主治医の指示に従い、自己判断で変更しないようにしてください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。