バージャー病

Buerger's Disease

バージャー病(Buerger's Disease)|バージャー病(閉塞性血栓血管炎、Thromboangiitis Obliterans:TAO)は、手足の中小の動脈と静脈に炎症を伴う血栓ができ、血管が詰まっていく病気です。主に50歳未満の喫煙男性に発症し、手足の冷え・痛みから難治性の潰瘍や壊疽(えそ)に進むことがあります。生命に関わることは少ない一方、指趾や四肢の切断により生活や就労に大きな影響を及ぼしうる疾患です。禁煙の徹底が治療の土台です。

バージャー病の要点

バージャー病(閉塞性血栓血管炎)は、手足の中小の動脈と静脈に炎症を伴う血栓ができて詰まる非動脈硬化性の血管疾患です。主に50歳未満の喫煙男性に発症し、手足の冷え・痛みから難治性の潰瘍や壊疽に進むことがある指定難病で、禁煙が治療の基本です。

別名・略称ビュルガー病、閉塞性血栓血管炎、TAO、Thromboangiitis obliterans、Winiwarter-Buerger病
分野循環器・先天性心疾患
好発年齢・背景主に50歳未満の喫煙男性
主な症状手足の冷え・しびれ、間欠性跛行、安静時痛、潰瘍・壊疽
好発部位下腿・足部、前腕・手の中小動脈(分節的に閉塞)
主な治療禁煙の徹底が治療の土台
指定難病告示番号47
受診する主な診療科血管外科・循環器内科

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バージャー病とは

バージャー病は、四肢末梢の中小動脈とそれに伴走する静脈に、分節的(とびとび)に炎症性の血栓閉塞を起こす非動脈硬化性の血管疾患です。病理学的には、急性期に血管内腔を埋める炎症細胞に富む血栓(微小膿瘍や多核巨細胞を伴うことがある)がみられます。一方で血管壁の構造、特に内弾性板は比較的保たれます。この点が、壁の壊死を主体とする結節性多発動脈炎などの壊死性血管炎や、粥腫を形成する動脈硬化と異なります。慢性期には血栓が器質化・再疎通し、動脈・静脈・神経を一塊に包み込む血管周囲の線維化が残ります。病変は下腿・足部、前腕・手の動脈に好発し、大動脈や腸骨動脈などの中枢の大血管が侵されることはまれです。ただし、内臓動脈や脳・冠動脈に病変があったとする報告も散見されます。

1908年に米国の Leo Buerger が切断肢の病理所見をまとめて報告したことから、その名が付けられました(それ以前にvon Winiwarterの記載もあります)。日本では「閉塞性血栓血管炎」が正式な病名で、「ビュルガー病」とも表記されます。指定難病(告示番号47)に指定されています。明確な病型分類はありませんが、臨床的には主に障害される部位(下肢型、上下肢型)や重症度(冷感・しびれ→間欠性跛行→安静時疼痛→潰瘍・壊死)で整理されます。下肢虚血の重症度評価には、閉塞性動脈硬化症と同様にFontaine分類やRutherford分類も用いられます。かつて「動脈硬化の一亜型ではないか」との議論もありましたが、現在では独立した疾患単位と考えられています。

バージャー病の疫学・患者数

バージャー病は世界的に、喫煙率の高い地域、特に東アジア・南アジア・中東・東欧で多く、欧米では少ない疾患とされます。日本では1970年代に患者数が多く、1万人前後と推定された時期もありました。その後は喫煙率の低下などを背景に新規発症は明らかに減少しています。現在の医療費助成の受給者数は数千人規模とされ、患者層の高齢化が進んでいます。発症年齢は20〜40歳代が中心で、50歳未満の発症が典型です。男性に圧倒的に多いものの、近年は女性例の割合がやや増えているとの報告があります。患者のほぼ全員に喫煙歴(受動喫煙や無煙たばこを含む)があり、歯周病との関連を指摘する研究もあります。

バージャー病の原因・病態生理

原因はまだ完全には解明されていませんが、喫煙が発症と増悪にもっとも強く関わる因子であることは確立しています。たばこ煙の成分(ニコチン、一酸化炭素、酸化ストレス物質など)による血管内皮障害が出発点と考えられています。その上に、免疫学的な反応が加わると想定されています。具体的には、血管壁のコラーゲンに対する細胞性免疫、抗内皮細胞抗体の検出、病変部での樹状細胞やT細胞の浸潤などが報告されています。遺伝的素因として、日本人では特定のHLA型との関連が報告されていますが、単一遺伝子病ではなく、親から子へ遺伝する病気とは考えられていません。また、慢性歯周炎の口腔内細菌のDNAが病変血管から検出されたとの報告があり、感染・炎症の関与も研究されています。

発症機序は次のように考えられています。喫煙などにより末梢の中小血管の内皮が障害されると、凝固が亢進し、血管が収縮しやすくなり、内皮依存性の血管拡張反応も低下します。こうして炎症を伴う血栓が分節的に形成されます。血栓は炎症とともに末梢から中枢へ、また新たな部位へと再発を繰り返し、多数の動脈が閉塞していきます。閉塞部の周囲には細い側副血行路が発達し、血管造影で特徴的な「コルクの栓抜き状(corkscrew)」の像を示します。しかし末梢の細い動脈ほど閉塞しやすいため、側副血行で補いきれません。その結果、指趾の虚血、すなわち冷感、疼痛、潰瘍、壊死が生じます。静脈にも同様の炎症性血栓が起こり、皮下の静脈に沿った発赤・硬結(遊走性静脈炎)として現れます。血管周囲の線維化が伴走する神経に及ぶと、虚血とあわせて神経障害性の痛みやしびれの原因となります。喫煙を続ける限りこの過程は進行しやすく、禁煙により新たな血栓形成は抑えられる傾向があります。

バージャー病の症状

  • 冷感・しびれ: もっとも早期からみられる症状で、指趾が冷たく感じ、しびれやピリピリ感を伴います。寒冷期に悪化しやすい特徴があります。
  • レイノー現象: 寒冷や緊張で指先が白→紫→赤と色調変化します。上肢病変を持つ患者でしばしばみられます。
  • 間欠性跛行(足底跛行): 歩くと痛みで立ち止まり、休むと回復します。病変が末梢にあるため、ふくらはぎより足の裏(土踏まず)の痛みとして現れやすいのが特徴です。
  • 安静時疼痛: 虚血が進むと、じっとしていても指趾が強く痛みます。夜間に悪化し、足を下げると和らぐため、座ったまま眠る患者もいます。
  • 皮膚の色調変化: 足を挙げると蒼白になり、下げると暗赤色〜紫色になる(dependent rubor)など、虚血に伴う色調変化がみられます。
  • 虚血性潰瘍: 指趾の先端や爪周囲に、痛みの強い治りにくい潰瘍ができます。深爪や靴ずれなどの小さな傷がきっかけになることが多くあります。
  • 壊疽(えそ): 血流が途絶えた組織が黒色に乾いて壊死します。感染を伴うと湿性壊疽となり、急速に拡大することがあります。
  • 遊走性静脈炎: 手足の皮下静脈に沿って、赤く痛む索状のしこりが場所を変えながら繰り返し出現します。動脈症状に先行することもある重要な所見です。
  • 上肢の虚血症状: 下肢だけでなく手指の冷感、潰瘍、壊死が生じることがあります。上肢にも病変がある点は、動脈硬化との鑑別に役立ちます。
  • 爪・皮膚の栄養障害: 爪の変形や発育不良、皮膚の萎縮・菲薄化、脱毛など、慢性虚血による変化がみられます。
  • 末梢動脈拍動の減弱・消失: 足背動脈・後脛骨動脈、橈骨動脈・尺骨動脈の拍動が触れにくくなります。一方で大腿動脈など中枢の拍動は通常保たれます。

バージャー病の経過と合併症

経過は慢性・進行性で、増悪と寛解を繰り返すのが一般的です。初期には冷感・しびれ・レイノー現象や遊走性静脈炎が現れます。次いで足底の間欠性跛行、安静時疼痛へと進み、最終的に潰瘍・壊死に至ることがあります(Fontaine分類のⅠ〜Ⅳ度に相当)。病勢は喫煙の継続と強く相関します。禁煙を徹底した患者では新たな閉塞や大切断(下腿・大腿レベルの切断)の頻度が大きく下がることが、多くの研究で示されています。一方、本数を減らすだけでは不十分とされます。年齢とともに炎症の活動性は落ち着く傾向がありますが、過去に閉塞した血管が元に戻るわけではありません。高齢になると動脈硬化が加わり、虚血が再び悪化することもあります。

主な合併症は、潰瘍・壊死に伴う感染(蜂窩織炎、骨髄炎)と、それによる指趾・四肢の切断です。小切断(指趾レベル)は比較的多く経験されます。慢性的な強い疼痛は睡眠障害、鎮痛薬への依存、抑うつの原因となり、QOLを大きく損ないます。切断後には断端の創傷治癒遅延や幻肢痛が問題になることがあります。まれに腸間膜動脈などの内臓動脈や冠動脈・脳動脈の病変が報告されています。ただし、生命予後に影響する心血管イベントの多くは、喫煙継続や加齢に伴う動脈硬化性疾患と関連すると考えられています。

バージャー病の診断・診断基準

診断に特異的な血液検査はありません。典型的な臨床像、画像所見、他疾患の除外を組み合わせて行います。日本では厚生労働省研究班の診断基準が用いられます。その骨子は、①50歳未満の若年発症、②喫煙歴、③膝窩動脈以下の下肢動脈閉塞、④上肢動脈の閉塞、⑤遊走性静脈炎の既往または合併、⑥高血圧症・脂質異常症・糖尿病を合併しない、の各項目です。これらを満たし、閉塞性動脈硬化症、外傷性閉塞、膠原病などの血管炎、血液凝固異常、塞栓症などを除外したうえで総合的に判断します(国際的にはShionoyaの基準やOlinの基準も知られています)。実際の診療では、まず問診(喫煙歴、症状の経過、静脈炎の既往)と身体診察(脈拍触知、Allen試験)を行います。続いて足関節上腕血圧比(ABI)などの非侵襲的検査で虚血の程度を評価し、超音波・CT・MRアンギオグラフィで閉塞部位と形態を確認します。必要に応じて血管造影を行います。

  • 身体診察・Allen試験: 四肢の脈拍の触知、皮膚の色調・温度、潰瘍の有無を評価します。Allen試験で手の橈骨・尺骨動脈の開存性をみることで、上肢病変を推定できます。
  • 足関節上腕血圧比(ABI)・足趾上腕血圧比(TBI): 下肢血流低下の有無と程度を簡便に評価できます。病変が末梢中心のためABIが比較的保たれることがあり、TBIや足趾血圧が有用です。
  • 皮膚灌流圧(SPP)・経皮酸素分圧(TcPO2): 足部・指趾の微小循環を評価し、潰瘍が治る見込みの判断や切断レベルの決定に用いられます。
  • 血管超音波検査: 下腿・前腕動脈の閉塞部位や側副血行を非侵襲的に観察できます。静脈炎・血栓の評価にも有用です。
  • CT/MRアンギオグラフィ: 中枢側に動脈硬化性の病変がないこと、末梢の分節的閉塞があることを確認します。腎機能や造影剤アレルギーに配慮して選択されます。
  • 血管造影: 病変部の壁不整や石灰化を伴わない途絶状〜先細り状の閉塞、分節的病変、閉塞部周囲のコルクの栓抜き状側副血行が特徴です。治療方針を決めるうえで最も詳細な情報が得られます。
  • 血液・尿検査: 本症に特異的なマーカーはなく、炎症反応も正常〜軽度上昇にとどまることが多い検査です。血糖・HbA1c・脂質、抗核抗体・ANCA・抗リン脂質抗体、凝固線溶系などで、動脈硬化の危険因子や膠原病、血栓性素因を除外します。
  • 心エコー・心電図: 心房細動や心内血栓、弁膜症などによる塞栓症を除外する目的で行われます。
  • 病理組織検査: 診断に必須ではありませんが、切断肢などで炎症性血栓と保たれた内弾性板が確認されれば診断を裏付けます。診断目的の生検は創傷治癒不良の危険があるため通常は避けます。

バージャー病と鑑別すべき疾患

  • 閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患): 高齢、糖尿病・高血圧・脂質異常症を背景に、腸骨・大腿動脈など中枢の血管に石灰化・壁不整を伴う病変を示します。この点でバージャー病と区別されます。
  • 膠原病関連血管障害(全身性強皮症、SLEなど): 女性に多く、皮膚硬化や多臓器症状、自己抗体陽性を伴うことで鑑別します。
  • 結節性多発動脈炎など壊死性血管炎: 発熱・体重減少・腎障害・多発単神経炎などの全身症状や、高い炎症反応、生検での血管壁の壊死所見が鑑別点です。
  • 抗リン脂質抗体症候群・血栓性素因: 抗リン脂質抗体の陽性、動静脈血栓症の反復、妊娠合併症の既往などにより区別されます。
  • 心原性・動脈原性塞栓症: 突然発症の急性虚血と、心房細動や近位動脈瘤などの塞栓源の存在が鑑別の手がかりです。
  • 胸郭出口症候群・振動障害(手腕振動症候群): 上肢のみの虚血では、上肢の姿勢による誘発や振動工具の使用歴を確認して区別します。

バージャー病の治療

治療の大原則は完全な禁煙です。紙巻きたばこだけでなく、加熱式たばこ、葉巻、無煙たばこ、受動喫煙も避ける必要があります。禁煙なしには、どの薬物療法・手術も効果が限られます。そのうえで、寒冷・外傷を避ける生活上の工夫と足のケアを行い、虚血の程度に応じて抗血小板薬や血管拡張作用をもつ薬剤を用います。潰瘍・壊死や強い安静時疼痛があれば、プロスタグランジン製剤の点滴、創傷管理、疼痛管理、感染治療を集中的に行います。可能であれば血行再建術、交感神経遮断術、脊髄刺激療法なども検討します。最終的に救肢が困難な場合には、機能的に最も有利なレベルでの切断を行います。治療法の選択は、病変の部位・範囲、側副血行、創の状態、全身状態によって個別に異なります。血管外科、皮膚科・形成外科、ペインクリニック、リハビリテーション科などとの連携が重要です。具体的な方針は主治医・専門医とよく相談してください。

  • 禁煙治療: もっとも重要で効果が確立した治療です。禁煙外来での行動療法や薬物療法を活用し、家族を含めた受動喫煙対策も行います。ニコチン製剤による禁煙補助の可否については、ニコチン自体が病態に影響する可能性も議論されているため、主治医と相談して決めます。
  • 抗血小板薬・血管拡張薬(内服): シロスタゾール、ベラプロスト、サルポグレラート、経口プロスタグランジンE1誘導体(リマプロスト)などが、冷感・疼痛・潰瘍の改善目的で用いられます。出血傾向、頭痛、動悸などの副作用に注意が必要です。
  • プロスタグランジン製剤・抗凝固薬の点滴: 潰瘍・壊死や安静時疼痛がある場合に、入院のうえアルプロスタジル(PGE1)製剤などの点滴が行われます。日本ではアルガトロバンなどが保険適用となっている状況もあります。
  • 創傷管理・感染治療: 壊死組織の除去、適切な被覆材、免荷(圧のかからない工夫)を行います。感染に対しては抗菌薬投与や切開排膿を行い、皮膚科・形成外科と連携して治療します。
  • 疼痛管理: 非ステロイド性抗炎症薬、神経障害性疼痛治療薬、必要に応じてオピオイドや神経ブロックを組み合わせます。痛みによる不眠や悪循環を断つことを目指します。
  • 交感神経遮断術・脊髄刺激療法: 腰部・胸部交感神経節ブロックや交感神経切除術で末梢血管の収縮を抑え、疼痛の軽減や皮膚血流の改善を図ります。難治性の疼痛に対しては、脊髄刺激療法が選択肢となることもあります。
  • 外科的血行再建術: 適切な流入路と流出路となる血管があれば、自家静脈を用いた下腿・足部へのバイパス手術が検討されます。ただし末梢病変のため適応となる例は限られ、禁煙継続が開存性を左右します。カテーテル治療は限定的な適応とされます。
  • 再生医療・遺伝子治療: 他に手段がない重症虚血に対し、自家骨髄細胞などを用いた血管新生療法や遺伝子治療が臨床研究・先進的治療として試みられてきました。有効性・適応は限られ、実施施設も限定されます。
  • 切断術とリハビリテーション: 救肢が困難な壊死や制御できない感染では、指趾や下腿などの切断が行われます。その後は義肢装着と歩行訓練により、生活・就労への復帰を目指します。

バージャー病の予後・長期フォロー

バージャー病そのものが生命予後を大きく損なうことは少なく、一般人口と比べて生存率に大きな差はないとする報告が多くあります。一方で四肢予後は禁煙の有無で大きく分かれます。喫煙を続けた患者では大切断に至る割合が明らかに高く、禁煙を達成した患者では多くが大切断を回避できるとされます。指趾の小切断は禁煙後も一定の頻度でみられます。慢性疼痛や歩行障害、手指の巧緻性低下は、就労や日常生活動作に影響します。早期診断、禁煙、創傷予防によってQOLを保つことが重要です。

長期フォローアップでは、禁煙の継続確認(必要に応じて尿中コチニンなどで客観的に確認することもあります)、症状の変化、脈拍やABI・TBI・SPPなどの定期的な評価を行います。あわせて、足や手の傷・潰瘍の早期発見に努めます。中高年以降は動脈硬化の危険因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の管理も加わり、冠動脈疾患や脳血管疾患にも目を配る必要があります。切断後の患者では、断端や反対側肢の保護、義肢の適合確認、リハビリテーションを継続します。寛解しているようにみえても、再喫煙をきっかけに再燃することがあります。そのため、長期にわたって専門医と連携することが勧められます。

バージャー病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、第一に一本も吸わない完全禁煙と受動喫煙の回避を続けることです。家族や職場の協力が欠かせません。寒冷は血管を収縮させるため、手袋・厚手の靴下で保温し、冷水作業を避けます。一方で、こたつ、湯たんぽ、カイロによる低温やけどにも注意します(感覚が鈍く、虚血部位は傷が治りにくいため)。毎日、手足に傷・水疱・色の変化がないか観察し、清潔と保湿を保ちます。深爪を避け、足に合った靴を選び、裸足歩行はしないようにします。跛行がある場合でも、痛みの範囲内での歩行運動が側副血行の発達に役立つことがあります。運動の程度は主治医と相談してください。歯周病との関連も指摘されているため、口腔ケアや歯科受診も勧められます。本症は親から子に遺伝する病気とは考えられていませんが、家族の喫煙は本人の受動喫煙につながるため、家族ぐるみで禁煙に取り組むことが望まれます。

利用できる制度・相談窓口

バージャー病は指定難病であり、診断基準を満たし、一定の重症度以上と判定された場合(または軽症でも医療費が高額な状態が続く場合)に、特定医療費(指定難病)の医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、住所地の都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に提出します。認定されると、所得に応じた自己負担上限額が設定されます。指定難病の患者は障害者総合支援法の対象となり、障害福祉サービスや補装具(義足など)の支給を受けられる場合があります。切断や歩行障害が残れば、身体障害者手帳(肢体不自由)の取得、障害年金(初診日に加入していた年金制度による)の申請も検討できます。高額療養費制度、傷病手当金、65歳以上での介護保険サービスも状況に応じて利用できます。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、患者会などがあります。就労については、ハローワークの難病患者就職サポーターに相談できます。

バージャー病に伴う心のケア・心理社会的支援

バージャー病では、慢性的な強い痛みや睡眠不足、切断への恐れ、外見の変化が、抑うつや不安、適応障害につながりやすいとされます。発症が20〜40歳代の働き盛りであるため、仕事の継続や収入、家族の扶養への不安も大きな負担になります。加えてこの病気に特有の課題として、禁煙が治療の鍵である一方、ニコチン依存は意思の弱さではなく治療が必要な依存症であることが挙げられます。「吸ってしまった」という自責感や、周囲からの非難が孤立を深めることがあります。禁煙は一人で抱え込まず、禁煙外来や心理職の支援を活用することが大切です。痛みやストレスで喫煙欲求が強まる悪循環もあるため、疼痛管理と心のケアを並行して行うことが望まれます。気分の落ち込み、不眠、意欲低下、希死念慮があるときは、遠慮せず主治医に伝えてください。精神科・心療内科、ペインクリニック、医療ソーシャルワーカー、患者会につながることが助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

バージャー病の受診の目安

  • 喫煙歴のある若い方で、手足の冷えやしびれ、指先の色の変化が続くときは、血管外科などを受診してください。
  • 歩くと足の裏やふくらはぎが痛み、休むと治まる症状があるときは、早めに受診してください。
  • 手足の指に治りにくい傷や潰瘍、黒く変色した部分ができたときは、速やかに受診してください。
  • 安静にしていても指が強く痛む、夜間に痛みで眠れないときは、重症虚血の可能性があるため早急に受診してください。
  • 手足が急に冷たく蒼白になり、強い痛みやしびれ・動かしにくさが出たときは、急性動脈閉塞の可能性があるため救急受診してください。
  • 潰瘍や壊死の周囲が赤く腫れる、膿が出る、発熱があるときは、感染の拡大が疑われるため当日中に受診してください。

バージャー病についてのよくある質問

Q. 本数を減らしたり、加熱式たばこに替えたりすれば大丈夫ですか?

A. 減煙や加熱式たばこへの切り替えでは不十分と考えられています。ごく少量の喫煙や受動喫煙でも病状が悪化しうるため、完全な禁煙が必要です。禁煙外来などの支援を積極的に利用してください。

Q. 禁煙すれば病気は治りますか?

A. 禁煙により新たな血管閉塞や大きな切断のリスクは大きく下がります。ただし、すでに詰まった血管が元通りになるわけではありません。冷えやしびれが残ることもあるため、薬物療法や足のケアを続けながら長期に経過をみていきます。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 特定の体質(HLA型など)との関連は報告されていますが、親から子へ直接遺伝する病気とは考えられていません。むしろ家族の喫煙による受動喫煙が問題となるため、家族ぐるみの禁煙が大切です。

Q. 閉塞性動脈硬化症とはどう違うのですか?

A. 閉塞性動脈硬化症は主に高齢者に起こり、糖尿病や高血圧などを背景に、比較的太い動脈が動脈硬化で狭くなる病気です。バージャー病は若年の喫煙者に多く、手足の末梢の細い動脈と静脈に炎症性の血栓が生じる点が異なります。治療方針も一部異なるため、正確な診断が重要です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。