皮膚筋炎と多発性筋炎
Dermatomyositis/Polymyositis
皮膚筋炎と多発性筋炎(Dermatomyositis/Polymyositis)|皮膚筋炎と多発性筋炎は、免疫の異常によって主に体幹に近い筋肉(肩・腰・太もも)に炎症が起こり、筋力が低下する自己免疫疾患です。皮膚筋炎では特徴的な皮疹を伴い、病型によっては間質性肺炎や悪性腫瘍を合併することがあり、それらが生命予後を大きく左右します。小児から高齢者まで発症し、日常生活動作や就労・学業に長く影響しうるため、膠原病内科・神経内科・皮膚科・呼吸器内科などが連携して診療にあたります。
皮膚筋炎と多発性筋炎の要点
皮膚筋炎と多発性筋炎は、自己免疫の異常で肩・腰・太ももなど体幹に近い筋肉に炎症が起こり、筋力低下をきたす膠原病です。皮膚筋炎では特徴的な皮疹を伴い、間質性肺炎や悪性腫瘍を合併することがあり、日本では指定難病(告示番号50)です。
| 別名・略称 | 皮膚筋炎、多発性筋炎、DM、PM、PM/DM、特発性炎症性筋疾患、筋炎、Dermatomyositis、Polymyositis |
|---|---|
| 分野 | 免疫・膠原病・自己炎症 |
| 主な症状 | 体幹に近い筋肉の左右対称な筋力低下、皮膚筋炎ではヘリオトロープ疹・ゴットロン丘疹などの皮疹 |
| 主な合併症 | 間質性肺炎、悪性腫瘍(特に成人の皮膚筋炎)、関節炎、心臓・消化管の障害 |
| 主な検査 | 血液検査(CK・アルドラーゼ)、筋炎特異的自己抗体、筋電図、MRI、筋生検、胸部CT |
| 主な治療 | 副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、重症例では免疫グロブリン大量静注療法など |
| 好発年齢 | 小児から高齢者まで幅広く発症 |
| 受診する主な診療科 | 膠原病内科、神経内科、皮膚科、呼吸器内科 |
皮膚筋炎と多発性筋炎とは
皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)と多発性筋炎(polymyositis:PM)は、骨格筋を主な標的とする慢性の炎症性疾患で、特発性炎症性筋疾患(idiopathic inflammatory myopathies:IIM、筋炎)に含まれます。左右対称に体幹に近い筋肉(近位筋)の筋力が低下するのが基本です。DMではヘリオトロープ疹やゴットロン丘疹などの特徴的な皮膚症状を伴い、PMでは皮膚症状がありません。筋肉以外にも肺(間質性肺炎)、関節、心臓、消化管、皮膚の血管などが侵されることがある全身性疾患で、膠原病(全身性自己免疫疾患)の一つに数えられます。日本では「皮膚筋炎/多発性筋炎」として指定難病(告示番号50)に指定されており、筋症状がほとんどない無筋症性皮膚筋炎(clinically amyopathic DM:CADM)も含めて扱われます。
分類としては、1975年にBohanとPeterが提唱した診断基準が長く使われ、DMとPMの二分法が定着しました。その後、2017年にEULAR/ACR(欧州・米国リウマチ学会)の分類基準が公表され、日本でも厚生労働省研究班による診断基準(2015年策定)が指定難病の認定に用いられています。近年は、患者さんごとに特定の筋炎特異的自己抗体(MSA)が見つかることが分かり、抗体ごとに臨床像・合併症・治療反応性が大きく異なることから、抗体に基づく分類が重視されています。代表的なものに、間質性肺炎・関節炎・機械工の手などを特徴とする抗ARS抗体症候群(抗Jo-1抗体など)、急速進行性間質性肺炎を起こしうる抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎、成人で悪性腫瘍の合併が多い抗TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎、典型的な皮膚筋炎像をとる抗Mi-2抗体陽性例などがあります。また、従来PMと診断されていた例の多くは、壊死が主体で炎症細胞浸潤の乏しい免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM;抗SRP抗体・抗HMGCR抗体など)、封入体筋炎、抗ARS抗体症候群などに再分類されるようになり、厳密な意味での純粋なPMは比較的まれと考えられています。小児期発症例は若年性皮膚筋炎と呼ばれ、成人とは異なる特徴をもちます。
皮膚筋炎と多発性筋炎の疫学・患者数
日本では指定難病の医療受給者証の所持者数が2万人を超えており、炎症性筋疾患の中では最も多い疾患群です。発症年齢には二つの山があるとされ、小児期(おおむね5〜15歳ごろ、主に若年性皮膚筋炎)と成人期(40〜60歳代)に多くみられます。性別では女性に多く、男女比はおおよそ1:2〜3と報告されています。ただし、悪性腫瘍を合併する皮膚筋炎は高齢者に多く、性差は比較的小さいとされます。抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は欧米に比べて日本を含む東アジアで多いことが知られ、急速進行性間質性肺炎の頻度が高い点で日本の診療上とくに重要です。発症率については海外で人口10万人あたり年間おおむね1人前後と報告されることが多いものの、調査方法や分類基準によって幅があります。
皮膚筋炎と多発性筋炎の原因・病態生理
根本的な原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な素因に、紫外線、感染症、薬剤、喫煙、悪性腫瘍などの環境要因が加わり、自己免疫反応が起こると考えられています。親から子へ単一の遺伝子で受け継がれる遺伝病ではなく、家族内発症はまれです。疾患感受性には特定のHLA(ヒト白血球抗原)型との関連が人種ごとに報告されており、日本人では抗MDA5抗体陽性例などで特定のHLA-DRB1アレルとの関連が報告されています。成人の皮膚筋炎で悪性腫瘍の合併が多いことから、腫瘍に発現した自己抗原(TIF1-γなど)に対する免疫反応が筋肉や皮膚にも向かう、という腫瘍随伴性の機序も想定されています。
病態は病型によって異なります。皮膚筋炎では、筋肉内の毛細血管が主な標的となり、I型インターフェロンの強い活性化(インターフェロン・シグネチャー)と補体の活性化を背景に、毛細血管内皮が傷害されて膜侵襲複合体(MAC)が沈着し、毛細血管が減少します。その結果、血流の乏しくなりやすい筋束の辺縁部の筋線維が萎縮し、病理学的に特徴的な筋束周辺性萎縮(perifascicular atrophy)が生じます。皮膚の血管障害も同様の機序で起こり、皮疹や爪周囲の毛細血管異常、皮膚潰瘍の原因となります。一方、多発性筋炎では、MHCクラスI分子を異常に発現した筋線維に対してCD8陽性細胞傷害性T細胞が直接侵入し、筋線維を破壊する細胞性免疫が主体とされます。抗ARS抗体症候群では、アミノアシルtRNA合成酵素に対する免疫反応が筋と肺の双方に及ぶと考えられ、抗MDA5抗体陽性例では、ウイルスRNAを感知するMDA5を介した自然免疫の過剰な活性化が、急速に進行する肺障害や高フェリチン血症に関与していると推測されています。炎症が長引くと筋線維は脱落し、脂肪や線維組織に置き換わるため、治療開始が遅れると筋力の回復が不十分になることがあります。
皮膚筋炎と多発性筋炎の症状
- 近位筋の筋力低下: 肩・上腕・腰・太ももなどの筋力が左右対称に数週〜数か月かけて低下し、階段昇降、しゃがみ立ち、髪を洗う・物を棚に上げる動作が難しくなります。首を持ち上げる筋(頸部屈筋)の筋力低下もよくみられます。
- 筋肉痛・筋把握痛: 筋肉を握ると痛む、動かすと痛むといった症状が一部の患者さんにみられますが、痛みがほとんどない例も少なくありません。
- ヘリオトロープ疹: 上まぶたを中心に現れる紫紅色〜赤紫色の、しばしばむくみを伴う皮疹で、皮膚筋炎に特徴的です。
- ゴットロン丘疹・ゴットロン徴候: 手指の関節の背側に盛り上がった紅色の丘疹(ゴットロン丘疹)や、肘・膝の伸側に角化を伴う紅斑(ゴットロン徴候)が現れます。
- 顔面・体幹の紅斑(Vネック徴候・ショール徴候): 前胸部のV字部分や首・肩から背中にかけての紅斑で、日光で悪化しやすく、かゆみを伴うことがあります。
- 爪囲紅斑・爪上皮出血点: 爪の根元の発赤や甘皮部分の点状出血、毛細血管の拡張がみられ、皮膚の微小血管障害を反映します。
- 機械工の手(メカニックスハンド): 手指の側面や指腹の皮膚が硬く荒れてひび割れる変化で、抗ARS抗体症候群で特徴的にみられます。
- 咳・労作時の息切れ: 間質性肺炎による症状で、筋症状より先に出ることもあります。抗MDA5抗体陽性例では数週間で急速に悪化することがあり注意が必要です。
- 嚥下障害・構音障害: のどや食道上部の筋肉が侵されると、飲み込みにくさ、むせ、鼻声などが生じ、誤嚥性肺炎の原因になります。
- 関節痛・関節炎: 手指などの関節の痛みや腫れがみられ、通常は関節破壊を伴いませんが、抗ARS抗体症候群でよくみられます。
- 発熱・倦怠感・体重減少: 全身の炎症に伴う症状で、持続する場合は活動性の高い病態や悪性腫瘍の合併も念頭に置かれます。
- レイノー現象・皮膚潰瘍・皮下石灰化: 寒冷時の手指の色調変化、指先や関節部の皮膚潰瘍(抗MDA5抗体陽性例で多い)、皮下の石灰沈着(若年性皮膚筋炎で多い)がみられることがあります。
皮膚筋炎と多発性筋炎の経過と合併症
多くは数週から数か月の経過で筋力低下や皮疹が進行し、亜急性に発症します。治療への反応から、1回の治療で寛解に至り再燃しない単相性、寛解と再燃を繰り返す多相性、治療を続けても活動性が残る慢性持続性の経過に大別されます。筋力は血清CK値が改善した後、数か月以上かけてゆっくり回復するのが一般的で、ステロイドの減量中に再燃することも少なくありません。病型による違いは大きく、抗ARS抗体症候群は治療反応は比較的良好なものの再燃しやすく慢性化しやすい一方、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎では筋症状が軽いにもかかわらず間質性肺炎が数週〜数か月で急速に進行し、発症早期の数か月が生命予後を左右する時期となります。抗TIF1-γ抗体陽性例では、悪性腫瘍の経過が全体の予後を規定することが多くあります。
最も重要な合併症は間質性肺炎で、筋炎患者さんの相当数(報告により3〜6割程度)に合併するとされ、慢性に経過するもの、亜急性〜急速に進行するものがあります。次に重要なのが悪性腫瘍で、特に成人の皮膚筋炎では一般人口より合併率が高く、筋炎の診断前後の数年間(とくに前後3年以内)に見つかることが多いとされます。日本では胃がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がんなどが報告されています。そのほか、心筋炎や不整脈・心不全などの心病変、嚥下障害による誤嚥性肺炎、呼吸筋の筋力低下による換気障害、若年性皮膚筋炎での皮下石灰沈着や血管炎による消化管病変などがあります。治療に伴うものとして、ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス感染症などの日和見感染症、ステロイドによる骨粗鬆症・骨折、糖尿病、高血圧、白内障・緑内障、大腿骨頭壊死症、ステロイドミオパチー(筋力低下の再燃と紛らわしい)などにも注意が必要です。
皮膚筋炎と多発性筋炎の診断・診断基準
診断は、筋力低下の分布や皮疹などの臨床症状に、血液検査(筋原性酵素・自己抗体)、筋電図、筋MRI、筋生検などの所見を組み合わせて総合的に行います。日本では厚生労働省研究班の診断基準が用いられ、皮膚症状(ヘリオトロープ疹、ゴットロン丘疹、ゴットロン徴候)に加え、近位筋の筋力低下、筋原性酵素の上昇、筋痛、筋電図の筋原性変化、抗ARS抗体などの自己抗体、非破壊性関節炎、全身性炎症所見、筋病理所見といった項目の組み合わせで判定します。皮膚症状があり筋症状を欠く場合でも、無筋症性皮膚筋炎として扱われます。同時に、予後を左右する間質性肺炎・悪性腫瘍・心病変の評価を診断時から並行して進めることが非常に重要です。また、筋ジストロフィーや代謝性ミオパチー、薬剤性・内分泌性の筋障害など、治療方針がまったく異なる疾患を除外することも欠かせません。
- 血清筋原性酵素(CK・アルドラーゼなど): 筋線維の破壊を反映してCK、アルドラーゼ、AST、ALT、LDH、ミオグロビンなどが上昇し、病勢の指標にもなります。ただし皮膚筋炎、とくに無筋症性や抗MDA5抗体陽性例ではCKが正常〜軽度上昇にとどまることがあります。
- 筋炎特異的自己抗体・関連抗体: 抗ARS抗体(抗Jo-1抗体を含む)、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体などが国内で保険診療として測定可能で、病型の特定と合併症リスク(間質性肺炎、悪性腫瘍)の予測に役立ちます。重複症候群の評価のため抗核抗体や他の膠原病関連抗体も調べます。
- 筋MRI: STIR法やT2強調像で炎症のある筋肉や筋膜が高信号を示し、病変の分布や活動性、筋生検部位の選択に有用です。脂肪置換の程度から慢性化の評価もできます。
- 針筋電図: 低振幅・短持続の運動単位電位や早期動員といった筋原性変化と、線維自発電位などの安静時異常放電がみられ、神経原性疾患との鑑別に役立ちます。
- 筋生検(病理検査): 皮膚筋炎では筋束周辺性萎縮や血管周囲の炎症細胞浸潤、MxAの筋線維発現、多発性筋炎では非壊死線維へのCD8陽性T細胞の侵入とMHCクラスIの発現が特徴です。壊死性ミオパチーや封入体筋炎、筋ジストロフィーなどとの鑑別に重要です。
- 皮膚生検: 皮疹の診断が難しい場合に行い、表皮基底層の液状変性や真皮のムチン沈着など、皮膚筋炎に矛盾しない所見を確認します。
- 胸部高分解能CT・呼吸機能検査・KL-6など: 間質性肺炎の有無と広がりをHRCTで評価し、肺活量・肺拡散能(DLco)、血清KL-6・SP-Dで重症度や経過を追跡します。抗MDA5抗体陽性例では血清フェリチン高値が重症化の指標として用いられます。
- 悪性腫瘍スクリーニング: とくに成人の皮膚筋炎や抗TIF1-γ抗体陽性例では、胸腹部CT、上下部消化管内視鏡、婦人科・乳腺検査、腫瘍マーカーなどで年齢・性別に応じた全身検索を行います。
- 心電図・心エコー・心筋トロポニン: 心筋炎や伝導障害、心機能低下の有無を評価します。トロポニンは心臓特異性の高い指標として、骨格筋由来の上昇が少ないトロポニンIが参考にされます。
皮膚筋炎と多発性筋炎と鑑別すべき疾患
- 封入体筋炎: 50歳以上に多く、手指屈筋や大腿四頭筋が侵されやすい非対称な筋力低下で緩徐に進行し、ステロイドに反応しにくい点と筋生検の縁取り空胞などで鑑別します。
- 免疫介在性壊死性ミオパチー: 抗SRP抗体や抗HMGCR抗体(スタチン服用歴と関連することがある)が陽性で、著明なCK高値と炎症細胞浸潤に乏しい筋線維壊死が特徴です。
- 筋ジストロフィー(肢帯型など): 緩徐進行性で家族歴を伴うことがあり、筋生検の免疫染色や遺伝子検査で特定のタンパク欠損・遺伝子変異を確認して鑑別します。
- 代謝性・内分泌性・薬剤性ミオパチー: 筋型糖原病やミトコンドリア病、甲状腺機能低下症、スタチンなどの薬剤による筋障害は、運動との関連、内分泌検査、服薬歴で鑑別します。
- 重症筋無力症: 日内変動や易疲労性、眼瞼下垂・複視が目立ち、CKは通常正常で、抗アセチルコリン受容体抗体や反復刺激試験で鑑別します。
- 他の膠原病による筋炎(重複症候群): 全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、シェーグレン症候群などに筋炎が合併する場合があり、各疾患に特徴的な症状と自己抗体で評価します。
皮膚筋炎と多発性筋炎の治療
治療の目標は、筋肉や肺などの炎症を速やかに鎮めて臓器障害の進行を防ぎ、筋力と生活機能を回復させること、そして長期的には再燃を防ぎながらステロイドなどの副作用を最小限にすることです。基本は副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)による初期治療で、重症例や再燃しやすい例、ステロイドを減らしたい例では早期から免疫抑制薬を併用するのが近年の考え方です。治療の強さは、筋症状の重症度だけでなく、間質性肺炎の有無と進行速度、自己抗体の種類によって大きく変わります。とくに抗MDA5抗体陽性で急速進行性の間質性肺炎が疑われる場合は、診断早期から複数の薬剤を組み合わせた強力な治療が検討される緊急性の高い病態です。悪性腫瘍を合併している場合は、腫瘍の治療によって筋炎が改善することもあり、腫瘍治療と筋炎治療のバランスを各科で協議します。治療内容や薬剤の選択は病型・重症度・合併症・年齢・妊娠希望などで個別に判断されるため、主治医・専門医と十分に相談することが大切です。
- 副腎皮質ステロイド: プレドニゾロンを体重あたり高用量(目安として0.75〜1mg/kg/日程度)で開始し、筋力・CKなどの改善を確認しながら数か月以上かけて慎重に減量するのが一般的です。重症例や急速進行例ではステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン大量点滴)が行われることがあります。
- 免疫抑制薬: メトトレキサート、アザチオプリン、タクロリムス、シクロスポリンなどがステロイドの効果増強や減量目的で併用されます。国内ではタクロリムスが多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎に対して保険適用を有しています。
- シクロホスファミド静注療法: 重症・進行性の間質性肺炎や難治例で用いられ、抗MDA5抗体陽性の急速進行性間質性肺炎では、大量ステロイド・カルシニューリン阻害薬との3剤併用療法の有効性が国内から報告されています。
- 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG): 国内ではステロイドが十分に効かない多発性筋炎・皮膚筋炎の筋力低下に対して保険適用があり、重い嚥下障害を伴う例などでも検討されます。
- その他の治療(難治例): 難治例では血漿交換療法、リツキシマブやJAK阻害薬などの使用が報告されていますが、国内では本症に対して適応外の薬剤もあり、専門施設で慎重に判断されます。線維化が進行する間質性肺疾患には抗線維化薬が検討されることがあります。
- 皮膚症状の治療: 日焼け止めや衣類による遮光を基本とし、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を用います。ヒドロキシクロロキンは海外で皮膚症状に用いられますが、国内では本症への適応はなく、使用は専門医の判断となります。
- リハビリテーション: 炎症の強い急性期は関節拘縮予防や負荷の軽い運動にとどめ、炎症が落ち着いた後は段階的な筋力・持久力訓練を行います。適切な運動は病勢を悪化させず、機能回復に有用とされています。
- 嚥下・呼吸・栄養のサポート: 嚥下障害には嚥下評価に基づく食形態の調整や嚥下訓練を行い、必要に応じて一時的な経管栄養を用います。呼吸不全には酸素療法や人工呼吸管理が必要になることがあります。
- 合併症予防: ニューモシスチス肺炎予防のST合剤、骨粗鬆症予防の骨吸収抑制薬、胃粘膜保護、血糖・血圧管理、B型肝炎ウイルス再活性化対策、不活化ワクチン接種などを、治療と並行して行います。
皮膚筋炎と多発性筋炎の予後・長期フォロー
治療の進歩により生命予後は大きく改善し、多くの患者さんは治療によって日常生活が送れる程度まで回復します。一方で、再燃を繰り返したり筋力低下が残ったりして、長期的な治療が必要になる例も少なくありません。生命予後を左右する主な要因は、間質性肺炎(特に急速進行性)、悪性腫瘍、感染症、心病変です。抗MDA5抗体陽性の急速進行性間質性肺炎は、かつては致死率が非常に高い病態でしたが、早期の強力な併用療法によって救命率が改善してきたと報告されています。高齢発症、嚥下障害、治療開始の遅れ、心病変の合併などは機能予後・生命予後が不良となる因子とされます。若年性皮膚筋炎は一般に成人より生命予後が良好ですが、皮下石灰化や成長への影響、長期のステロイド使用に伴う問題などに配慮が必要です。
病状が落ち着いた後も、筋力、CKなどの血液検査、皮疹、呼吸機能・胸部画像、KL-6などを定期的に確認し、再燃の早期発見に努めます。再燃は、ステロイドの減量中や感染症・妊娠出産などを契機に起こることがあります。筋力低下が再び現れた場合には、病気の再燃なのか、ステロイドミオパチーなのか、廃用なのかの見極めが重要です。成人の皮膚筋炎では、診断後少なくとも数年間は悪性腫瘍の定期検診を継続することが推奨されます。また、長期のステロイド・免疫抑制薬使用に伴う骨密度、眼科検診(白内障・緑内障)、血糖・脂質、感染症の管理も欠かせません。
皮膚筋炎と多発性筋炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
日常生活では、まず紫外線対策が重要です。日光は皮膚筋炎の皮疹を悪化させるため、日焼け止め、帽子、長袖などで遮光を心がけましょう。治療中は免疫力が低下しているため、手洗い・うがい、混雑した場所でのマスク着用、インフルエンザや肺炎球菌などの不活化ワクチン接種(主治医と相談)を行い、発熱や咳があれば早めに受診してください。生ワクチンは免疫抑制治療中には原則として接種できません。喫煙は間質性肺炎や血管障害を悪化させるため禁煙が強く勧められます。運動は、炎症が落ち着いていれば無理のない範囲で継続することが筋力維持に役立ちますが、強い筋肉痛や疲労が翌日まで残るような過度の運動は避け、リハビリ担当者と内容を相談しましょう。飲み込みにくさがある場合は、とろみをつける、少量ずつ食べるなどの工夫をし、むせが増えたら主治医に伝えてください。ステロイド内服中は、自己判断での中断・減量は副腎不全や再燃を招く危険があるため絶対に避け、食事は塩分・糖分・カロリーの摂りすぎに注意し、カルシウムやたんぱく質を十分に摂りましょう。妊娠・出産は可能な場合が多いものの、病状が安定した時期の計画的な妊娠が望ましく、メトトレキサートやシクロホスファミドなど妊娠中に使用できない薬剤もあるため、事前に主治医と相談することが大切です。本症は親から子へそのまま遺伝する病気ではないため、家族が過度に心配する必要はありませんが、不安がある場合は遺伝の専門家に相談することもできます。
利用できる制度・相談窓口
皮膚筋炎/多発性筋炎は指定難病(告示番号50)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、または重症度基準を満たさなくても高額な医療費が継続する場合(軽症高額該当)に、特定医療費(指定難病)の医療費助成を受けられます。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、住所地を管轄する保健所や都道府県・指定都市の窓口に申請します。認定されると医療費の自己負担割合が原則2割となり、所得に応じた月額自己負担上限額が設定されます。18歳未満(継続の場合は20歳未満)で発症した若年性皮膚筋炎などは、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となります。また、指定難病は障害者総合支援法の対象疾病に含まれるため、障害者手帳がなくても必要に応じて居宅介護や補装具、日常生活用具給付などの障害福祉サービスを利用できる場合があります。筋力低下や呼吸機能障害が残った場合は、程度に応じて身体障害者手帳(肢体不自由、呼吸器機能障害など)の取得や、日常生活・就労に支障がある場合は障害年金の対象となることがあります。65歳以上の方は介護保険サービスを利用できます(40〜64歳では、本症自体は介護保険の特定疾病に含まれていませんが、ステロイドによる骨折を伴う骨粗鬆症など特定疾病に該当する場合は対象となりえます)。医療費については高額療養費制度も併用できます。療養生活や就労の相談は、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、病院の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーターなどが窓口となります。
皮膚筋炎と多発性筋炎に伴う心のケア・心理社会的支援
難病と診断されること自体が大きな心理的負担となり、将来への不安、抑うつ、不眠、適応障害などがみられることは珍しくありません。皮膚筋炎/多発性筋炎に特有の課題として、まず、それまで当たり前にできていた立ち上がりや階段昇降、家事、仕事ができなくなる身体機能の喪失感があります。顔面やまぶた、手指などの目立つ部位の皮疹は外見上の悩みにつながり、人と会うことを避けてしまう方もいます。また、高用量ステロイドは気分の高揚や落ち込み、不眠、イライラなどの精神症状を引き起こすことがあり、満月様顔貌や体重増加といった外見の変化も心理的負担となります。間質性肺炎や悪性腫瘍の合併を告げられた場合の不安、長期の治療や再燃への恐れ、就労・学業の中断、経済的な問題、家族の介護負担なども重なりやすい病気です。こうした気持ちは自然な反応であり、一人で抱え込まずに主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーに伝えてください。必要に応じて精神科・心療内科や臨床心理士(公認心理師)による支援を受けることも有効です。ステロイドによる精神症状が疑われる場合は、薬剤の調整や対症療法で改善することもあります。同じ病気をもつ人と交流できる患者会や、難病相談支援センターのピアサポートも、孤立感の軽減に役立ちます。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
皮膚筋炎と多発性筋炎の受診の目安
- 数週間から数か月の間に、階段の昇り降り、しゃがんだ状態からの立ち上がり、腕を上げる動作がしにくくなってきた場合は、早めに内科(膠原病内科・神経内科)を受診してください。
- まぶたの紫紅色の腫れや、手指の関節の背側の赤い発疹など、皮膚筋炎を疑う皮疹がある場合は、筋力低下がなくても皮膚科や膠原病内科を受診してください。
- 空咳や、坂道・階段での息切れが新たに出現した、あるいは悪化してきた場合は、間質性肺炎の可能性があるため速やかに受診してください。
- 安静時にも息苦しい、息切れが数日単位で急速に悪化している、唇や指先が紫色になるといった場合は、救急受診が必要です。
- 飲み込めない、食事や水分でひどくむせる、発熱を伴う咳や痰が出るといった場合は、誤嚥性肺炎の危険があるため早急に受診してください。
- 治療中に38℃以上の発熱、強い倦怠感、動悸、胸痛、失神などが現れた場合は、感染症や心病変の可能性があるため、すぐに主治医に連絡するか救急受診してください。
皮膚筋炎と多発性筋炎についてのよくある質問
Q. 皮膚筋炎と診断されたら、がんの検査は必ず必要ですか?
A. 成人の皮膚筋炎では悪性腫瘍を合併する頻度が一般より高く、とくに診断前後の数年間に見つかることが多いため、診断時に年齢・性別や自己抗体の種類に応じた全身の検査が勧められます。がんが見つかった場合、その治療によって筋炎が改善することもあります。診断後も数年間は定期的な検診を続けることが大切です。
Q. ステロイドはいつまで飲み続ける必要がありますか?
A. 一般に高用量から開始し、数か月から1年以上かけて少しずつ減量します。病状によっては少量を長期間続けたり、免疫抑制薬を併用してステロイドをできるだけ減らしたりします。自己判断で中止すると再燃や副腎不全を起こす危険があるため、必ず主治医の指示に従ってください。
Q. 運動はしても大丈夫ですか?
A. 炎症が強い時期は安静を優先し、関節が固まらないための軽い運動を中心にします。病状が落ち着いた後は、適切な運動が筋力や体力の回復に役立つことが分かっています。運動の強さや内容はリハビリの専門職と相談し、翌日まで強い疲労や筋肉痛が残らない範囲で行いましょう。
Q. 子どもに遺伝しますか?妊娠・出産はできますか?
A. 皮膚筋炎/多発性筋炎は、親から子へそのまま受け継がれる遺伝病ではなく、家族内で発症することはまれです。妊娠・出産は可能な場合が多いですが、病状が安定した時期に計画することが望ましく、妊娠中に使えない薬もあります。妊娠を希望する場合は、早めに主治医や産科医と相談してください。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。