成人発症スチル病
Adult-Onset Still's Disease, AOSD
成人発症スチル病(Adult-Onset Still's Disease, AOSD)|成人発症スチル病(AOSD)は、毎日のように出る39℃以上の高熱、熱と一緒に現れては消えるサーモンピンク色の皮疹、関節の痛みを三つの柱とする全身性の炎症性疾患です。主に16歳以上で発症し、20〜40歳代に多いものの高齢で発症する例も少なくありません。多くはステロイドなどで落ち着きますが、再燃を繰り返す例や、マクロファージ活性化症候群などの命に関わる合併症を起こす例もあり、専門医による継続的な診療が必要です。
成人発症スチル病の要点
成人発症スチル病は、自然免疫の過剰な活性化とIL-1β・IL-18・IL-6などの炎症性サイトカインの増加により、高熱・サーモンピンク色の皮疹・関節炎が起こる自己炎症性疾患です。主に16歳以上で発症し、血清フェリチンが著しく高くなるのが特徴で、日本では指定難病(告示番号54)です。
| 別名・略称 | 成人スチル病、成人Still病、AOSD、Adult Still's disease |
|---|---|
| 分野 | 免疫・膠原病・自己炎症 |
| 遺伝形式 | 明らかな単一遺伝子異常を伴わない多因子性 |
| 好発年齢 | 主に16歳以上、20〜40歳代に多い(高齢発症もある) |
| 主な症状 | 39℃以上の連日の高熱、サーモンピンク色の皮疹、関節痛 |
| 主な検査 | 血清フェリチンの著明高値(リウマトイド因子・抗核抗体は通常陰性) |
| 主な治療 | ステロイドなどによる抗炎症・免疫抑制療法 |
| 受診する主な診療科 | 膠原病・リウマチ科 |
成人発症スチル病とは
成人発症スチル病は、原因となる感染症・悪性腫瘍・他の膠原病がないにもかかわらず、発熱・皮疹・関節炎を中心とした強い全身性炎症が起こる疾患です。古くは膠原病(自己免疫疾患)の一つとして扱われてきました。しかし、リウマトイド因子や抗核抗体などの自己抗体は通常陰性です。また、好中球やマクロファージなど自然免疫の過剰な活性化と、インターロイキン(IL)-1β・IL-18・IL-6などの炎症性サイトカインの過剰産生が病態の中心であることが分かってきました。このため現在では、明らかな単一遺伝子異常を伴わない多因子性の自己炎症性疾患として理解されるようになっています。血清フェリチンが著しく高くなることが特徴で、診断の手がかりとなります。日本では指定難病(告示番号54)に指定されています。
「スチル病」の名は、1897年に英国の小児科医ジョージ・スチルが報告した小児の関節炎に由来します。これは現在の全身型若年性特発性関節炎(sJIA)にあたります。1971年、エリック・バイウォーターズが、同様の病像を示す成人例を「成人スチル病」として報告しました。sJIAとAOSDは症状・検査所見・サイトカインの特徴・治療反応性が非常に似ています。そのため近年は、発症年齢が異なるだけの一連の疾患(スチル病スペクトラム)とみなす考え方が国際的に広がっています。臨床経過から、単周期性(一度の発作で寛解)、多周期性(寛解と再燃を繰り返す)、慢性関節型(関節炎が持続し関節破壊に進む)の3病型に分けるのが一般的です。全身症状が主体の「全身型」と関節症状が主体の「関節型」に分けて、治療選択を考える立場もあります。
成人発症スチル病の疫学・患者数
AOSDは希少疾患です。わが国で厚生労働省研究班が行った全国疫学調査では、患者数は約4,800人、有病率は人口10万人あたり約4人程度と推計されています。年間発症率は海外の報告で人口10万人あたり0.1〜0.4人程度とされますが、調査方法により幅があります。発症年齢は16〜35歳ごろの若年成人に多いとされてきました。ただし日本の調査では平均発症年齢が40歳代とやや高く、65歳以上で発症する高齢発症例も一定の割合で存在し、近年注目されています。性差は、日本ではやや女性に多い傾向がありますが、大きな差はないとする報告もあります。家族内での集積はまれで、遺伝性疾患ではありません。16歳未満で同様の病像を示す場合は、通常、全身型若年性特発性関節炎として扱われます。
成人発症スチル病の原因・病態生理
原因はまだ完全には解明されていません。現在は、遺伝的な素因を持つ人に何らかの引き金(誘因)が加わり、自然免疫系が制御不能なほど活性化することで発症すると考えられています。遺伝的素因としては、特定のHLA型や、サイトカイン関連遺伝子の多型との関連が報告されていますが、単一の原因遺伝子は見つかっていません。誘因としては、風疹・EBウイルス・サイトメガロウイルス・パルボウイルスB19・肝炎ウイルスなどのウイルス感染、マイコプラズマなどの細菌感染、薬剤、精神的・身体的ストレスなどが挙げられています。ただし、いずれも決定的な証拠はありません。家族への遺伝を心配する必要は基本的にありません。
発症機序の中心は、好中球とマクロファージの過剰な活性化です。病原体や組織傷害に由来する分子(PAMPs・DAMPs)の刺激を受けると、細胞内のNLRP3インフラマソームが活性化されます。これによりIL-1βやIL-18の成熟・放出が過剰に起こります。AOSDでは血清IL-18が他疾患と比べて極めて高値になることが知られ、病勢やマクロファージ活性化症候群の発症リスクと関連すると報告されています。IL-1βは発熱・好中球増多・急性期蛋白産生を、IL-6は肝臓でのCRP産生・貧血・関節炎を促します。さらにIL-18は、NK細胞やTh1細胞からのインターフェロン-γ産生を通じてマクロファージをいっそう活性化させます。好中球が放出する好中球細胞外トラップ(NETs)も、炎症を増幅させる要因として注目されています。活性化したマクロファージは大量のフェリチンを産生・放出します。AOSDでフェリチンが数千〜数万ng/mLに達するのはこのためで、炎症に伴って糖鎖が付加されたフェリチンの割合(糖鎖化フェリチン)が低下することも特徴です。この炎症の連鎖が歯止めなく進むと、全身でマクロファージが血球を貪食するマクロファージ活性化症候群(MAS)へ移行し、サイトカインストームから多臓器不全に至ることがあります。
成人発症スチル病の症状
- 弛張熱(スパイク熱): 夕方から夜にかけて39℃以上に急上昇し、数時間で平熱近くまで下がるパターンを毎日1〜2回繰り返します。1週間以上続くことが多く、解熱薬だけでは十分に抑えられないことが特徴です。
- サーモンピンク疹(定型的皮疹): 体幹や四肢の近位部に、かゆみの少ないサーモンピンク色の斑や小さな丘疹が、発熱時に現れ、解熱とともに消えます。こすった部位に皮疹が出るケブネル現象を伴うことがあります。
- 持続性の非定型皮疹: かゆみを伴う褐色調の丘疹や局面が、解熱後も持続する場合があります。皮膚生検で特徴的な所見を示すことがあり、診断の補助になります。
- 関節痛・関節炎: 膝・手首・足首・肘・指などに痛みや腫れが起こり、発熱時に増悪しやすいです。慢性関節型では手根骨の癒合など、関節の変形・強直に進むことがあります。
- 咽頭痛: 発熱に先立って、あるいは同時に強い喉の痛みが出ることが多く、初期には「かぜ」や扁桃炎と誤認されやすい症状です。
- 筋肉痛: 発熱時に全身の筋肉痛を伴うことがありますが、筋酵素(CK)の上昇は通常軽度です。
- リンパ節腫脹: 頸部などのリンパ節が腫れ、軽い圧痛を伴うことがあります。悪性リンパ腫との区別のため、生検が必要になる場合があります。
- 肝腫大・脾腫: 炎症に伴い肝臓や脾臓が腫れることがあり、腹部超音波やCTで確認されます。
- 肝機能障害: AST・ALT・LDHなどの上昇が高頻度にみられます。まれに劇症化することがあり、解熱鎮痛薬などの薬剤性肝障害との区別も重要です。
- 漿膜炎(胸膜炎・心膜炎): 胸の痛みや息苦しさを伴う胸水・心嚢液貯留がみられることがあります。
- 全身倦怠感・体重減少: 持続する高熱と炎症のため、強い倦怠感、食欲低下、体重減少が起こり、日常生活に大きな支障をきたします。
成人発症スチル病の経過と合併症
発症は比較的急で、咽頭痛に続いて高熱・皮疹・関節痛がそろってくるのが典型例です。不明熱として複数の医療機関を受診した末に診断されることも少なくありません。経過は大きく3つの型に分かれ、それぞれ全体のおよそ3分の1ずつを占めるとされます。単周期性は、1回の発作が数週〜数か月で治療により寛解し、その後再燃しない型です。多周期性は、寛解と再燃を繰り返す型で、再燃は数か月〜数年の間隔で起こり、ステロイド減量中に再燃することも多くみられます。慢性関節型は、全身症状が落ち着いても関節炎が持続し、関節リウマチに似た経過で手首や股関節などの破壊・強直に進むことがある型です。発症時の多関節炎や股関節・肩関節の障害は、慢性化と関連すると報告されています。
最も注意すべき合併症はマクロファージ活性化症候群(MAS、二次性血球貪食性リンパ組織球症)です。AOSD患者の1〜2割程度にみられるとされ、発症時だけでなく経過中や治療中にも起こります。持続する高熱、急速な血球減少、フェリチンの急上昇、肝障害の悪化、中性脂肪の上昇、フィブリノゲンの低下などが特徴です。播種性血管内凝固(DIC)や多臓器不全を併発すると致命的になり得ます。このほか、血栓性微小血管症(TMA)、心筋炎・心膜炎(まれに心タンポナーデ)、胸膜炎、間質性肺炎や急性呼吸窮迫症候群、肺高血圧症、無菌性髄膜炎、劇症肝炎が報告されています。長期にわたり炎症が続くとAAアミロイドーシスが起こり得ます。治療に伴う合併症としては、ステロイドや免疫抑制薬による感染症(ニューモシスチス肺炎、結核の再活性化など)、骨粗鬆症・圧迫骨折、大腿骨頭壊死、糖尿病、脂質異常症、白内障なども重要です。
成人発症スチル病の診断・診断基準
AOSDには、これだけで確定できる特異的な検査がありません。そのため、特徴的な臨床症状と検査所見の組み合わせを確認し、似た症状を起こす感染症・悪性腫瘍・他のリウマチ性疾患を一つずつ除外していく「除外診断」が基本となります。まず問診で、熱型、皮疹と発熱の関係、咽頭痛、関節痛の経過を詳しく確認します。血液検査では、白血球(特に好中球)増多、CRP・フェリチンの高値、肝機能異常、自己抗体陰性を確認します。同時に、血液培養や各種ウイルス検査、画像検査、必要に応じて骨髄検査・リンパ節生検・PET-CTを行い、感染症や悪性リンパ腫などを除外します。そのうえで、国際的に広く用いられる山口基準(1992年、日本で作成)などの分類基準に照らして診断します。わが国の指定難病の診断基準も山口基準に準拠しています。高齢発症例では悪性腫瘍に伴う類似病態(腫瘍随伴症候群)が紛れ込みやすいため、特に慎重な除外が求められます。
- 山口基準(Yamaguchi criteria): 大項目(39℃以上の発熱が1週間以上、関節痛が2週間以上、定型的皮疹、好中球80%以上を伴う白血球10,000/μL以上の増多)と小項目(咽頭痛、リンパ節腫脹または脾腫、肝機能異常、リウマトイド因子・抗核抗体陰性)からなります。大項目2つ以上を含む計5項目以上を満たし、除外項目(感染症・悪性腫瘍・膠原病)を否定できればAOSDと分類されます。
- ファウトレル基準(Fautrel criteria): 発熱、関節痛、一過性紅斑、咽頭炎、好中球増多、糖鎖化フェリチン20%以下などを組み合わせた基準で、除外診断を前提としない点が特徴です。ただし糖鎖化フェリチンは一般的な検査ではありません。
- 血算・炎症反応: 好中球優位の白血球増多(2万/μLを超えることもある)、CRP・赤沈の高度上昇、炎症に伴う貧血や血小板増多がみられます。逆に血球が減ってくる場合はMASへの移行を疑います。
- 血清フェリチン: 基準値の数倍〜数十倍(数千〜数万ng/mL)に上昇することが多く、診断の補助と病勢評価に有用です。特異的ではないため、単独で診断はできません。経過中の急上昇はMASの警告サインです。
- 肝機能・凝固・脂質などの生化学検査: AST・ALT・LDHの上昇が高頻度にみられます。MASの評価には、フィブリノゲン、Dダイマー、FDP、中性脂肪、可溶性IL-2受容体などを併せて確認します。
- 自己抗体検査: リウマトイド因子、抗CCP抗体、抗核抗体は通常陰性で、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどとの鑑別に用います。
- 感染症の除外検査: 血液培養(複数セット)、EBウイルス・サイトメガロウイルス・パルボウイルスB19・肝炎ウイルス・HIVなどの検査、結核の検査(インターフェロンγ遊離試験)を行います。心エコーで感染性心内膜炎を除外することもあります。
- 画像検査(超音波・CT・PET-CT): 肝脾腫、リンパ節腫脹、胸水・心嚢液を評価し、悪性腫瘍や深部膿瘍を除外します。FDG-PET/CTでは骨髄・脾臓・リンパ節に集積を示すことがあり、悪性リンパ腫の検索や生検部位の選定にも役立ちます。
- 骨髄検査・リンパ節生検・皮膚生検: 悪性リンパ腫や白血病の除外、MASでの血球貪食像の確認に有用です。リンパ節は反応性過形成を示すのが一般的です。
成人発症スチル病と鑑別すべき疾患
- 感染症(敗血症、感染性心内膜炎、EBウイルス・パルボウイルスB19などのウイルス感染、結核など): 発熱・皮疹・関節痛を起こし得るため、血液培養、ウイルス抗体・抗原検査、心エコーなどで必ず除外します。
- 悪性リンパ腫・白血病などの血液悪性腫瘍: 発熱・リンパ節腫脹・フェリチン高値が共通するため、特に高齢者や治療抵抗例では、リンパ節生検、骨髄検査、PET-CTで除外します。
- 全身性エリテマトーデスなどの膠原病・血管炎: 抗核抗体・抗dsDNA抗体・補体低下・ANCAなどの所見があり、AOSDとは異なる臓器障害のパターンを示します。
- 遺伝性自己炎症性疾患(家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群など): 周期的に発熱を繰り返し、家族歴があることや遺伝子検査の結果から区別します。
- 薬剤性過敏症症候群(DIHS): 発熱・皮疹・肝障害が共通しますが、原因薬剤の内服歴、好酸球増多、ヒトヘルペスウイルス6型の再活性化などが手がかりになります。
- 反応性関節炎・亜急性甲状腺炎・組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)など: それぞれ先行感染の有無、甲状腺の圧痛と甲状腺ホルモン異常、リンパ節の病理所見などで区別します。
成人発症スチル病の治療
治療の目標は、炎症を速やかに鎮めて症状を消失させ、MASなどの重篤な合併症と関節破壊を防ぎ、最終的にはステロイドを最小限に減らすか中止した状態で寛解を維持することです。治療は重症度と臓器障害の有無に応じて段階的に選択されます。軽症例では非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で経過をみることもあります。しかしNSAIDs単独で寛解に至る例は少なく、多くの例では副腎皮質ステロイドが治療の中心になります。ステロイドの減量で再燃する場合や副作用が問題となる場合には、免疫抑制薬や生物学的製剤を追加します。わが国では、既存治療で効果不十分なAOSDに対し、IL-6受容体阻害薬トシリズマブが保険適用を取得しています。MASの合併時は、入院のうえ集中的な治療が必要です。治療方針は厚生労働省研究班による診療ガイドラインなども参考に、患者さんの状態や生活背景を踏まえて決定されます。具体的な薬剤の選択や用量は、必ず主治医・リウマチ専門医と相談してください。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・解熱鎮痛薬: 軽症例や診断確定までの対症療法として用いられます。効果は限定的なことが多く、肝障害を悪化させることがあるため、肝機能を確認しながら使用します。
- 副腎皮質ステロイド(経口): 治療の中心で、中等症以上ではプレドニゾロン換算で体重1kgあたり0.5〜1mg程度の中〜高用量から開始し、症状とCRP・フェリチンの改善を確認しながら数か月以上かけて慎重に減量するのが一般的です。急な減量は再燃の原因になります。
- ステロイドパルス療法: 重症例、MAS合併例、心筋炎などの重要臓器障害を伴う例で、メチルプレドニゾロンの大量点滴を短期間行い、強力かつ迅速に炎症を抑えます。
- 免疫抑制薬(メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムスなど): ステロイドの減量が難しい場合のステロイド減量目的や、慢性関節炎の制御に用いられます。シクロスポリンはMASの治療に併用されることがあります。保険適用の有無を含め、主治医の判断で選択されます。
- IL-6阻害薬(トシリズマブ): 既存治療で効果不十分な難治例に対して日本で承認されている生物学的製剤で、全身症状・関節症状の改善とステロイド減量効果が期待されます。CRPや発熱が抑えられるため、感染症やMASの徴候が見えにくくなる点に注意が必要です。
- その他の生物学的製剤(IL-1阻害薬など): 海外ではIL-1阻害薬が全身型の難治例に有効と報告され、一部の国で承認されています。国内での承認状況は限られるため、使用の可否は専門医に確認が必要です。TNF阻害薬は主に慢性関節型で検討されることがあります。
- MASに対する集中治療: ステロイドパルス、シクロスポリン、血漿交換、DICに対する抗凝固療法などを組み合わせ、集中治療が可能な施設で全身管理を行います。早期の診断と治療開始が予後を左右します。
- 感染症予防と副作用対策: 高用量ステロイドや免疫抑制治療中は、ST合剤によるニューモシスチス肺炎の予防、結核やB型肝炎の再活性化対策、骨粗鬆症治療薬、胃粘膜保護薬などを状況に応じて併用します。
- リハビリテーション・関節ケア: 慢性関節型では、関節可動域の維持や筋力訓練を行います。関節破壊が進行した場合は、人工関節置換術などの整形外科的治療を検討します。
成人発症スチル病の予後・長期フォロー
適切な治療により、多くの患者さんで発熱や皮疹などの全身症状はコントロールでき、生命予後は全体として良好とされています。単周期性の場合は、治療終了後に再燃なく経過することも珍しくありません。一方、多周期性では再燃のたびにステロイドの増量が必要となり、累積投与量の増加による副作用が長期的なQOL低下の大きな要因となります。慢性関節型では、関節破壊による機能障害が問題になります。死亡に結びつく主な原因は、MAS・DIC・TMAなどの重篤な合併症と、治療に伴う重症感染症です。高齢発症例は、合併症や治療関連の有害事象が多く、予後がやや不良であるとの報告があります。生物学的製剤の登場により、難治例でもステロイドを減量しやすくなり、長期予後の改善が期待されています。
寛解後も、再燃の早期発見と治療の副作用管理のために、リウマチ・膠原病内科での定期的な通院が必要です。通院のたびに、症状の確認、血算・CRP・フェリチン・肝機能などの検査を行います。ステロイドを長期に使う場合は、骨密度、血糖、脂質、血圧、眼科検査(白内障・緑内障)を定期的に評価します。生物学的製剤の使用中は、感染症の徴候に特に注意します。また、炎症反応が出にくくなるため、症状の変化を主治医に細かく伝えることが重要です。再燃は感染症やストレス、ステロイドの減量を契機に起こることがあり、治療終了後数年たってから再燃する例もあります。症状が落ち着いていても自己判断で通院や服薬を中断しないことが大切です。
成人発症スチル病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
活動期は十分な休養と栄養をとり、無理をしないことが基本です。寛解期には、体調に合わせて通常の学業や仕事、運動を再開できます。ステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤を使用している間は感染症にかかりやすくなります。手洗い・うがい・マスクを心がけ、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの不活化ワクチンの接種は主治医と相談してください。生ワクチン(麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜなど)は、免疫抑制治療中は原則として接種できないため注意が必要です。ステロイド使用中は、骨粗鬆症予防のためにカルシウム・ビタミンDを意識した食事と適度な運動を心がけます。体重増加や血糖上昇を防ぐため、塩分・糖分・カロリーの摂りすぎにも注意しましょう。ステロイドを自己判断で急に中止すると、再燃や副腎不全を起こす危険があります。妊娠・出産は寛解期であれば可能なことが多いものの、妊娠中・産後に再燃することがあります。使用中の薬剤には妊娠中に使えないものもあるため、妊娠を希望する場合は計画的に主治医と相談することが勧められます。AOSDは遺伝病ではなく、子どもに遺伝する可能性は低いと考えられており、遺伝カウンセリングが必要となることは通常ありません。
利用できる制度・相談窓口
成人発症スチル病は指定難病(告示番号54)です。診断基準を満たし、研究班が定めた重症度スコアで一定以上の重症度に該当する場合、難病医療費助成制度により、指定医療機関での医療費の自己負担割合が原則2割に軽減されます。さらに、所得に応じて月額の自己負担上限額が設定されます。重症度の基準に満たない場合でも、医療費の総額が一定以上となる状態が続く場合には「軽症高額該当」として対象になることがあります。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県(指定都市)の窓口(多くは保健所)に行います。生物学的製剤などで医療費が高額になる場合は、健康保険の高額療養費制度も併せて活用できます。指定難病の患者さんは障害者総合支援法の対象となり、症状に応じて障害福祉サービスを利用できる場合があります。関節障害などで日常生活や就労に著しい制限が残る場合には、身体障害者手帳や障害年金の対象となる可能性があります。会社員などで療養のため休職する場合は、健康保険の傷病手当金が利用できます。なお、16歳未満で発症した同様の病態は全身型若年性特発性関節炎として、小児慢性特定疾病の対象となります。制度や療養生活の相談は、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカーが窓口となります。就労については、ハローワークの難病患者就職サポーターにも相談できます。
成人発症スチル病に伴う心のケア・心理社会的支援
AOSDは若年〜中年の働き盛りに突然発症することが多く、原因不明の高熱が続いて診断がつくまでの不安や、長期入院・休職による生活の変化が大きな心理的負担となります。診断後も、いつ再燃するか分からないという予期不安があり、慢性疾患や難病に共通する抑うつや適応障害が生じることがあります。さらに、AOSD特有の課題として、高用量ステロイドの影響があります。ステロイドは、満月様顔貌や体重増加などの外見の変化を起こし、気分の高揚・不眠・抑うつ・いらいらといった精神症状を直接引き起こすこともあります。これらが自己評価の低下や対人関係のストレスにつながりやすい点に留意が必要です。結婚・妊娠・就労などのライフイベントと治療の両立に悩む方も少なくありません。気分の落ち込み、不眠、意欲の低下が2週間以上続く場合や、薬の影響と思われる精神症状がある場合は、我慢せず主治医に伝えてください。必要に応じて、精神科・心療内科、公認心理師などの専門家に相談することが大切です。患者会や難病相談支援センターで同じ病気の方と交流することも、孤立感の軽減に役立ちます。家族も病気について正しく理解し、本人の体調の波を受け止めることが支えになります。
Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。
成人発症スチル病の受診の目安
- 原因の分からない39℃以上の発熱が1週間以上続き、皮疹や関節痛、咽頭痛を伴う場合は、早めに内科(できればリウマチ・膠原病内科)を受診してください。
- 治療中に高熱が続き、ぐったりする、出血しやすい(あざ・鼻血・歯ぐきからの出血)、黄疸が出るなどの症状がある場合は、マクロファージ活性化症候群の可能性があるため、すぐに受診してください。
- 胸の痛み、息苦しさ、動悸、意識がもうろうとするなどの症状が出た場合は、救急受診を検討してください。
- 免疫抑制治療中に発熱・咳・息切れ・排尿時痛などの感染症を疑う症状がある場合は、炎症反応が隠れていることもあるため、早めに主治医に連絡してください。
- 寛解後に、以前と同じような夕方の発熱や皮疹、関節痛が再び現れた場合は、再燃の可能性があるため、早めに受診してください。
成人発症スチル病についてのよくある質問
Q. 子どもの病気と聞いたスチル病が、大人にも起こるのですか?
A. はい。もともと小児の全身型若年性特発性関節炎がスチル病と呼ばれ、同じ病像を成人で示すものが成人発症スチル病です。現在は、両者は発症年齢が異なるだけの同一スペクトラムの病気と考えられています。
Q. ステロイドはいつまで飲む必要がありますか?
A. 個人差が大きく、数か月で減量・中止できる方もいれば、再燃を繰り返し長期の内服が必要な方もいます。急な減量や中止は再燃や副腎不全の原因になるため、必ず主治医の指示に従って減量してください。減量が難しい場合は、免疫抑制薬や生物学的製剤の併用が検討されます。
Q. 一度治っても、また再発しますか?
A. 一度の発作で治まりその後再燃しない方もいますが、およそ3分の1程度の方は寛解と再燃を繰り返す経過をとるとされています。数年後に再燃することもあるため、症状が落ち着いていても定期的な通院を続けることが大切です。
Q. 仕事や妊娠・出産はできますか?
A. 病状が安定していれば、多くの方が仕事に復帰し、通常の生活を送っています。妊娠・出産も寛解期であれば可能なことが多いですが、使用中の薬の調整や、妊娠中・産後の再燃への備えが必要です。妊娠を希望する場合は、事前に主治医と計画を立ててください。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。