特発性血小板減少性紫斑病

Idiopathic Thrombocytopenic Purpura (ITP)

特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura (ITP))|特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、自己免疫の異常によって血小板が壊され、つくられにくくもなるため、血小板数が減って出血しやすくなる病気です。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢でみられ、小児では自然に治ることが多い一方、成人では慢性化しやすく、長く付き合う病気になることがあります。多くの方は日常生活を大きく制限されずに過ごせますが、まれに脳出血など重い出血を起こすことがあるため、病状に合わせた管理が大切です。

特発性血小板減少性紫斑病の要点

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、ほかに明らかな原因がないのに自己免疫の異常で血小板が壊され、つくられにくくもなって血小板数が減る病気です。皮下出血(紫斑)や鼻出血などの出血症状がみられ、国の指定難病(告示番号63)の対象です。

別名・略称ITP、免疫性血小板減少症、免疫性血小板減少性紫斑病、Immune Thrombocytopenia、Immune Thrombocytopenic Purpura、慢性ITP
分野血液疾患
遺伝形式通常は遺伝しない後天性の病気
好発年齢乳幼児から高齢者まで幅広くみられる
主な症状紫斑、鼻出血、歯肉出血、月経過多など(無症状のこともある)
主な検査血液検査(血小板数10万/μL未満、赤血球・白血球は原則正常)、ほかの原因の除外
主な治療ピロリ菌除菌、副腎皮質ステロイド、TPO受容体作動薬、リツキシマブなど
受診する主な診療科血液内科、小児科(血液)

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特発性血小板減少性紫斑病とは

ITPは、ほかに明らかな原因や基礎疾患がないのに、免疫学的な機序で血小板が減る後天性の病気です。国際的な基準では、末梢血の血小板数が10万/μL未満に減り、それを説明できるほかの病気がない状態と定義されます。紫斑(皮下出血)が出ない例も多いこと、病気の本態が自己免疫であることから、国際的には免疫性血小板減少症(Immune Thrombocytopenia)と呼ばれるようになりました。略称は同じITPです。国内の指定難病(告示番号63)では「特発性血小板減少性紫斑病」の名称が使われ、小児慢性特定疾病では「免疫性血小板減少性紫斑病」として扱われています。赤血球と白血球は原則として正常で、血小板だけが減る点が特徴です。

分類にはいくつかの方法があります。原因となる病気がないものを一次性ITP、全身性エリテマトーデス(SLE)や抗リン脂質抗体症候群、リンパ増殖性疾患、HIV・C型肝炎ウイルスなどの感染症、薬剤などに伴うものを二次性ITPとして区別します。経過による分類として、日本ではかつて発症から6か月以内に治るものを急性型、6か月以上続くものを慢性型としてきました。現在は国際作業部会の提案に沿って、診断から3か月以内を新規診断ITP、3〜12か月を持続性ITP、12か月を超えるものを慢性ITPと呼ぶことが一般的です。治療については、日本ではヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌で血小板が増える例があることが国際的にも早くから報告されてきました。成人ITP治療の参照ガイドは改訂が重ねられ、トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)やリツキシマブ、さらに新しい作用機序の薬剤も治療に取り入れられています。

特発性血小板減少性紫斑病の疫学・患者数

国内の指定難病医療受給者証の所持者は2万人前後で推移しているとされます。ただし、軽症で助成の対象にならない方や経過観察中の方も多く、実際の患者数はこれより多いと考えられます。国内の疫学研究では、新たに発症する人は年間で人口10万人あたり2〜3人程度と推定されています。発症年齢には小児期(特に2〜5歳前後)、20〜40歳代の若年成人(女性に多い)、60〜80歳代の高齢者の3つの山があるとされ、近年は高齢者での発症が目立つと報告されています。性差については、小児では男女差がほとんどなく、若年成人では女性が明らかに多く、高齢者では差が小さくなる傾向があります。小児ITPの多くはウイルス感染や予防接種の後に急に発症し、成人ITPは自覚症状がないまま健康診断などで偶然見つかることも少なくありません。

特発性血小板減少性紫斑病の原因・病態生理

ITPの中心にあるのは血小板に対する自己免疫です。多くの患者さんでは、血小板の表面にある糖蛋白、特にGPIIb/IIIa(インテグリンαIIbβ3)やGPIb/IXに対する自己抗体(主にIgG)がつくられます。抗体が結合した血小板は、主に脾臓のマクロファージにFcγ受容体を介して捕まり、壊されます。その結果、血小板の寿命は通常の7〜10日から大きく短くなります。さらに近年は、骨髄での血小板産生の障害も重要と考えられています。自己抗体は骨髄の巨核球にも結合し、成熟や血小板の放出を妨げます。また、血小板をつくる働きを促すトロンボポエチン(TPO)の血中濃度は、血小板が減っている割にあまり上がらないことが知られています。つまりITPは「壊されすぎ」と「つくられ足りない」の両方が重なって起こる病気です。一般に遺伝性の病気ではなく、家族内で発症することはまれです。

発症の引き金はまだ完全には分かっていません。免疫寛容(自分を攻撃しないしくみ)の破綻には、制御性T細胞の数や働きの低下、ヘルパーT細胞のバランスの偏り、B細胞を活性化する因子の増加などが関わると考えられています。抗体に頼らない経路として、細胞傷害性T細胞が血小板や巨核球を直接攻撃するしくみも報告されており、抗体が検出されない例や、抗体を標的にした治療が効きにくい例の一因と考えられています。小児では、ウイルス感染後に病原体の抗原と血小板の抗原が似ていることから交差反応(分子相同性)が起こり、一時的に自己抗体がつくられるという説が有力です。成人では、日本を含む東アジアでピロリ菌感染との関連が注目されています。菌の成分に対する抗体と血小板の糖蛋白との交差反応や、単球のFcγ受容体バランスの変化などが仮説として挙げられています。

特発性血小板減少性紫斑病の症状

  • 点状出血: 皮膚に針で突いたような赤い小さな点が多数出ます。すねなど体の下の方や、圧迫やこすれのある部位に出やすいのが特徴です。
  • 紫斑(あざ): 軽くぶつけただけ、あるいは覚えがないのに青あざ(斑状出血)ができやすくなります。病名の由来になった代表的な症状です。
  • 口腔内の血豆(wet purpura): 頬の内側や舌に血豆(血疱)ができる状態で、粘膜からの出血のしやすさを示します。重い出血が起こる危険が高いサインとされます。
  • 歯肉出血: 歯みがきや食事のときに歯ぐきから出血し、止まりにくくなります。
  • 鼻出血: 鼻血が繰り返し出たり、長く止まらなかったりします。小児でよくみられます。
  • 月経過多: 経血の量が増え、期間が長くなります。若い女性では鉄欠乏性貧血の原因にもなります。
  • 消化管出血・血尿: 黒色便や血便、赤〜茶色の尿として現れます。血小板が極端に少ないときに起こりやすく、急いで受診する必要があります。
  • 結膜下出血・眼底出血: 白目が赤く染まったり、まれに網膜に出血して見え方に影響したりすることがあります。
  • 頭蓋内出血: 頭痛、嘔吐、意識障害、手足のまひなどで発症します。頻度は低いものの、ITPで最も重い合併症で、高齢者や血小板数が著しく少ない場合に起こりやすいとされます。
  • 疲労感・倦怠感: 貧血がなくても慢性的な疲れやすさを訴える患者さんが多いことが報告されており、生活の質(QOL)に影響します。
  • 無症状: 成人では、出血症状がないまま健康診断や他の病気の検査で血小板減少を指摘されて見つかることも少なくありません。

特発性血小板減少性紫斑病の経過と合併症

経過は年齢によって大きく異なります。小児ITPの多くは急に発症し、およそ7〜8割が6〜12か月以内に自然に、あるいは治療によって回復するとされます。慢性化するのは一部で、慢性化した場合でも数年の経過で軽快する例があります。成人ITPは発症の時期がはっきりしないことが多く、半数以上が慢性に移行します。血小板数がおおむね3万/μL以上に保たれていれば、重い出血はまれです。一方、1万/μL未満の状態が続いたり、口の中の血豆や消化管出血があったりする場合は、重い出血の危険が高くなります。長い経過のなかで自然に回復する成人例もあります。治療によって安定し、薬を減らしたりやめたりできる例も少なくありません。ただし、感染症や手術、妊娠などをきっかけに血小板が再び減ることがあります。

最も重い合併症は頭蓋内出血です。成人では年間で1%に満たない頻度とされますが、高齢、血小板数が極端に少ないこと、過去の重い出血、抗血栓薬の服用などで危険が高まります。月経過多や消化管出血による鉄欠乏性貧血もよくみられる合併症です。意外なことに、ITPの患者さんは同じ年代の一般の人より静脈血栓や動脈血栓がやや多いことが報告されており、高齢の方や血栓の危険因子がある方では注意が必要です。治療に関連する合併症も大切で、副腎皮質ステロイドの長期使用による糖尿病、骨粗鬆症、感染症、白内障、気分の変化などがあります。脾臓を摘出した後には、肺炎球菌などによる重症感染症(脾摘後重症感染症)や血栓症の危険があります。TPO-RAでは血栓症や肝機能障害、骨髄の線維化が注意点として挙げられています。

特発性血小板減少性紫斑病の診断・診断基準

ITPには、これだけで確定できる特異的な検査が現在もありません。そのため、血小板減少を起こすほかの病気をひとつずつ除外していく「除外診断」が基本になります。まず血算と末梢血塗抹標本で、減っているのが血小板だけであることと、本当に減っていること(偽性血小板減少でないこと)を確かめます。次に凝固検査、肝機能、自己抗体、ウイルス検査、ピロリ菌検査などで、二次性ITPや他の病気を調べます。高齢の方、血小板以外の血球にも異常がある方、典型的でない経過の方、治療が効きにくい方では骨髄検査を行い、骨髄異形成症候群や白血病、再生不良性貧血などを除外します。国内の診断基準(厚生労働省研究班)に加え、日本では血小板の回転が速くなっていることや自己免疫の関与を示す検査を組み合わせた診断基準案も提案されています。小児では、典型的な経過で他の血球に異常がなければ、骨髄検査を省略することもあります。

  • 血算・末梢血塗抹標本: 血小板数が10万/μL未満で、赤血球と白血球の数や形が原則正常であることを確認します。塗抹標本では大型の血小板がみられることがあり、異常な細胞や破砕赤血球がないことも確かめます。
  • 偽性血小板減少の除外: 採血管の抗凝固剤(EDTA)によって血小板が凝集し、見かけ上少なく測定されることがあります。塗抹標本で凝集を確認したり、クエン酸やヘパリンの採血管で測り直したりします。
  • 凝固検査(PT・APTT・フィブリノゲン・Dダイマーなど): ITPでは原則として正常です。異常があれば、播種性血管内凝固(DIC)や肝疾患などを考えます。
  • 骨髄検査: 巨核球が正常か増えていて、他の血球系に異常がないことがITPに合う所見です。高齢者や典型的でない例では、骨髄異形成症候群などを除外するために重要です。
  • 網状血小板比率(幼若血小板比率)・血漿TPO濃度: ITPでは血小板が速く入れ替わるため、生まれたばかりの若い血小板の割合が高くなります。一方、TPO濃度は正常から軽度上昇にとどまります。再生不良性貧血など産生の低下による血小板減少(TPOが著しく高い)との区別に役立ちます。
  • 血小板関連IgG(PAIgG)・抗GPIIb/IIIa抗体関連検査: PAIgGはITPで高くなりやすい一方、他の病気でも上がるため特異性は低く、これだけで診断はできません。抗GPIIb/IIIa抗体を産生するB細胞の測定などは特異性が高いとされますが、実施できる施設は限られます。
  • ピロリ菌検査: 尿素呼気試験、便中抗原、血清抗体などで感染の有無を調べます。陽性の場合は除菌が治療の選択肢になるため、成人では基本的な検査です。
  • 二次性ITPのスクリーニング: 抗核抗体、抗リン脂質抗体、HIV・HCV・HBV検査、甲状腺機能、免疫グロブリン、直接クームス試験などを調べます。SLE、抗リン脂質抗体症候群、エバンス症候群、免疫不全症などが隠れていないかを確認します。
  • 重症度分類(指定難病): 血小板数と出血症状の程度からStage分類で重症度を判定し、医療費助成の対象となるかの判断に用います。

特発性血小板減少性紫斑病と鑑別すべき疾患

  • 偽性血小板減少症: 採血管内で血小板が凝集して見かけ上少なくなるもので、塗抹標本で凝集塊を確認し、別の抗凝固剤で測り直せば正常値になります。
  • 先天性(遺伝性)血小板減少症(エプスタイン症候群などMYH9異常症を含む): 幼少時から血小板が少なく、巨大な血小板、家族歴、難聴や腎障害などを伴うことがあり、ITPとして治療しても効果がないことが手がかりになります。
  • 骨髄異形成症候群・再生不良性貧血・白血病: 骨髄で血球がつくられにくくなる病気で、他の血球の減少や形の異常、骨髄所見、TPO高値などで区別します。
  • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)・溶血性尿毒症症候群・DIC: 破砕赤血球を伴う溶血性貧血、腎障害、精神神経症状、凝固異常などを伴い、ADAMTS13活性の測定などで区別します。緊急の治療が必要な病気です。
  • 二次性血小板減少(SLE・抗リン脂質抗体症候群・肝硬変による脾機能亢進・薬剤性・ヘパリン起因性血小板減少症): 基礎疾患の症状や検査所見、脾臓の腫れ、薬剤を使い始めた時期との関係から判断し、原因に対する治療を優先します。
  • 妊娠性血小板減少症: 妊娠後期に軽い血小板減少(多くは7万/μL以上)がみられ、妊娠前には正常で、出産後に回復する点でITPと異なります。

特発性血小板減少性紫斑病の治療

ITPの治療目標は、血小板数を正常に戻すことではなく、重い出血を防げる安全な血小板数(成人ではおおむね3万/μL以上が目安)を、副作用をできるだけ少なく保つことです。成人で血小板数が3万/μL程度以上あり、出血症状がなければ、治療をせずに経過をみることが一般的です。治療を始めるかどうかは、血小板数だけでなく、出血症状、年齢、抗血栓薬の使用、仕事や生活のしかた、手術や出産の予定、患者さん本人の希望などを合わせて判断します。国内の成人ITP治療の参照ガイドでは、ピロリ菌陽性ならまず除菌を検討し、第一選択として副腎皮質ステロイドを用います。効果が不十分な場合や、ステロイドを減らせない場合には、TPO-RA、リツキシマブ、脾臓摘出術などの第二選択治療を検討するという段階的な考え方が示されています。重い出血や緊急手術では、免疫グロブリン大量療法や血小板輸血などを組み合わせて速やかに血小板を増やします。小児では自然に治る例が多いため、出血症状が軽ければ経過観察が中心です。どの治療が適しているかは個人差が大きいため、血液専門医とよく相談しながら決めることが大切です。

  • ピロリ菌除菌療法: 成人でピロリ菌が陽性の場合、血小板数にかかわらずまず除菌が検討されます。国内では除菌に成功した人のおよそ半数で血小板が増えたと報告されています。副作用が比較的少ない点も利点です。
  • 副腎皮質ステロイド: 第一選択の治療で、プレドニゾロンを体重に応じた量で始め、効果をみながら少しずつ減らしていきます。デキサメタゾンを短期間に大量に使う方法もあります。多くの人で血小板が増えますが、減量すると再び減ることも多く、長期使用による副作用に注意が必要です。
  • トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA): エルトロンボパグ(飲み薬)やロミプロスチム(週1回の皮下注射)が、骨髄の巨核球を刺激して血小板をつくる力を高めます。高い効果が期待できる第二選択薬で、長く続けて使うことが多い一方、血栓症や肝機能障害などの注意点があります。
  • リツキシマブ: B細胞の表面にあるCD20を標的とする抗体薬で、自己抗体をつくるもとを減らします。国内でもITPへの使用が認められています。効果は人によって異なり、B型肝炎ウイルスの再活性化や感染症への注意が必要です。
  • 脾臓摘出術(脾摘): 血小板が壊される主な場所である脾臓を取り除く手術で、長く効果が続く割合が比較的高いとされます。ただし不可逆的な治療で、術後の重症感染症や血栓症の危険があるため、近年は薬物療法の選択肢が増えたこともあり、適応を慎重に検討します。手術の前には肺炎球菌などのワクチン接種が推奨されます。
  • 免疫グロブリン大量療法(IVIG): 重い出血があるとき、緊急手術や出産の前など、短期間で血小板を増やす必要がある場面で使います。数日で効果が出ますが、効果は一時的です。
  • 血小板輸血・緊急時の治療: 頭蓋内出血などの生命にかかわる出血では、血小板輸血をIVIGやステロイドと組み合わせて行います。輸血した血小板もすぐに壊されるため、単独での効果は限られます。
  • その他の治療: 脾臓のマクロファージでの血小板破壊にかかわる経路を抑えるSYK阻害薬ホスタマチニブなど、新しい作用機序の薬剤も国内で使用できるようになってきました。難治例では、免疫抑制薬などを専門医が個別に検討します。
  • 支持療法・生活上の管理: 月経過多にはホルモン療法などを婦人科と連携して行い、貧血には鉄剤を用います。抗血小板薬や抗凝固薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使うかどうかは主治医と調整します。

特発性血小板減少性紫斑病の予後・長期フォロー

ITPの生命予後は全体として良好で、多くの患者さんは治療を受けながら、ほぼ通常どおりの生活を送れます。小児ではほとんどが回復し、慢性化した場合も重い出血はまれです。成人では、血小板数が3万/μL以上に保たれていれば、一般の人と比べて生命予後に大きな差はないとされます。一方、治療が効きにくく血小板数が極端に少ない状態が続く場合や、高齢の方では、出血や感染症(治療の副作用によるものを含む)による死亡の危険が高くなります。疲れやすさ、出血への不安、通院や治療の負担、ステロイドの副作用による体型や気分の変化などがQOLを下げることも知られており、身体面と心理面の両方への配慮が求められます。

長期フォローアップでは、血小板数の定期的な確認に加え、使っている治療薬に応じた副作用の検査を行います。たとえばステロイドでは血糖、血圧、骨密度、眼科検診、TPO-RAでは肝機能や血栓症の徴候、リツキシマブでは免疫グロブリン値やB型肝炎ウイルスなどを確認します。経過中にSLEなどの膠原病、リンパ増殖性疾患、骨髄の病気が明らかになることもあります。血小板以外の血球の変化や新しい症状が出た場合は、診断を見直します。脾摘を受けた方は生涯にわたって感染症に注意し、ワクチンの追加接種について主治医と相談しましょう。病状が安定して治療を減らしたり休薬したりする場合も、再発がないか定期的に経過をみることが重要です。

特発性血小板減少性紫斑病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

血小板数が十分に保たれていれば、運動や仕事、学業に大きな制限はありません。血小板が少ない時期には、頭部を強くぶつける危険のあるコンタクトスポーツや激しい格闘技を避けるなど、血小板数に応じた活動の調整について主治医と相談しましょう。歯みがきには柔らかい歯ブラシを使い、鼻を強くかまない、便秘で強くいきまないといった工夫が役立ちます。解熱鎮痛薬のなかには血小板の働きを弱めるもの(アスピリンや一部のNSAIDs)があるため、市販薬やサプリメントを使う前に医師や薬剤師に確認してください。抜歯や手術、内視鏡検査、予防接種を受けるときは、ITPであることと服用している薬を必ず伝えましょう。飲酒は血小板に影響することがあるため、控えめにします。妊娠・出産は多くの場合可能ですが、妊娠中は血小板が減りやすく、使える薬も限られます。また、母親の抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移り、生まれた赤ちゃんの血小板が一時的に減ることがあります。妊娠を考える段階から、血液内科と、ITPの妊娠管理に慣れた産科・新生児科がある施設で計画的に管理を受けることが勧められます。ITPは一般に遺伝する病気ではありません。ただし、家族にも幼少時から血小板が少ない人がいる場合は、遺伝性の血小板減少症の可能性があるため、主治医に伝えてください。

利用できる制度・相談窓口

ITPは指定難病(告示番号63)で、診断基準を満たし、重症度分類(血小板数と出血症状によるStage分類)で一定以上の重症度と判定された場合に、医療費助成を受けられます。重症度の基準を満たさなくても、高額な医療費が続く場合(軽症高額該当)には対象になることがあります。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(多くは保健所)で手続きを行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)の方は、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象疾病(免疫性血小板減少性紫斑病)として助成を受けられる場合があります。医療費が高額になる場合は、健康保険の高額療養費制度も利用できます。病状が重く日常生活や就労に長く支障がある場合には、障害年金の対象になることもあるため、年金事務所や社会保険労務士に相談してください。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、病院の医療ソーシャルワーカー(医療相談室)、保健所の難病担当保健師などがあり、制度の利用や就労・就学の相談に応じています。難病情報センターのウェブサイトでも制度や病気の情報が提供されています。

特発性血小板減少性紫斑病に伴う心のケア・心理社会的支援

ITPは外見から分かりにくい病気ですが、「いつ出血するか分からない」という不安、毎回の血液検査の結果に気持ちが左右されること、再発への恐れなど、慢性疾患に特有の心理的な負担を伴います。疲れやすさを周囲に理解してもらえないつらさや、あざができやすいことによる人目への悩み(特に子どもや若い女性)もよく聞かれます。さらに、ステロイドの副作用として気分の落ち込み、不眠、いらいら、高揚感などが現れることがあり、顔が丸くなるなどの体型の変化もストレスの原因になります。小児の保護者は、子どもの活動をどこまで制限すべきかに悩みやすく、過度に保護的になってしまうこともあります。若い女性では、妊娠・出産への不安を抱えることが少なくありません。気分の落ち込みや強い不安が2週間以上続く、眠れない、仕事や学校に行くのがつらいといった状態は、抑うつ状態や適応障害のサインかもしれません。一人で抱え込まず、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカー、必要に応じて心療内科・精神科、難病相談支援センターに相談してください。患者会などで同じ病気を持つ人と交流することが支えになる場合もあります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

特発性血小板減少性紫斑病の受診の目安

  • 頭痛、嘔吐、意識がもうろうとする、手足のまひやしびれ、ろれつが回らないなどの症状があれば、頭蓋内出血の可能性があるため、ただちに救急車を呼んでください。
  • 黒色便や血便、吐血、多量の血尿、30分以上止まらない鼻血などの出血がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
  • 口の中に血豆が多数できる、あざや点状出血が急に広がるときは、血小板が大きく減っている可能性があるため、早めに主治医に連絡しましょう。
  • 頭部を強く打った場合は、症状がなくても受診して評価を受けてください。
  • 脾摘後やステロイド・リツキシマブ使用中に高熱が出た場合は、重症感染症のおそれがあるため、早めに受診してください。
  • 足のむくみや痛み、急な息切れや胸の痛みは血栓症の可能性があり、特にTPO-RAを使用中の方は速やかに受診しましょう。

特発性血小板減少性紫斑病についてのよくある質問

Q. ITPは治る病気ですか?

A. 小児ではほとんどが数か月から1年ほどで回復します。成人では慢性化することが多いものの、治療で血小板数が安定し、薬を減らしたりやめたりできる人もいます。自然に回復する例もあり、治療の目標は安全な血小板数を保って普通の生活を送ることです。

Q. 血小板数がいくつ以下になると危険ですか?

A. 成人では一般に3万/μL以上あれば重い出血はまれで、1万/μL未満では重い出血の危険が高まるとされます。ただし、危険の程度は年齢、出血症状、服用している薬などによって変わります。数値だけで判断せず、主治医と目安を共有しておくことが大切です。

Q. ピロリ菌の除菌で本当に血小板が増えるのですか?

A. 日本を含む東アジアでは、ピロリ菌陽性のITP患者さんの約半数で、除菌後に血小板が増えたと報告されています。陰性の方には効果は期待できず、陽性でも効かない場合があります。検査を受けるかどうかは主治医と相談してください。

Q. ITPでも妊娠・出産はできますか?

A. 多くの方が妊娠・出産をしています。ただし、妊娠中は血小板が減りやすく、使える薬が限られ、分娩や麻酔のために一定以上の血小板数が必要です。また、赤ちゃんの血小板が一時的に減ることもあります。妊娠を考えた段階で主治医に相談し、血液内科と産科・新生児科が連携できる施設で管理を受けることが勧められます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。