後縦靱帯骨化症

Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament

後縦靱帯骨化症(Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament)|後縦靱帯骨化症(OPLL)は、背骨の椎体の後ろ側を縦に走る「後縦靱帯」が骨のように硬くなり(骨化)、厚みを増して脊柱管を狭める病気です。中高年の男性に多く、とくに首(頚椎)に生じやすいとされます。骨化が脊髄や神経根を圧迫すると、手足のしびれ、手指の動かしにくさ、歩行障害、排尿障害などが現れ、日常生活に大きな影響を及ぼします。本疾患は血液や免疫の病気ではありません。脊椎の靱帯に本来はない骨ができる「異所性骨化」によって、脊髄や神経が圧迫される病気です。

後縦靱帯骨化症の要点

後縦靱帯骨化症(OPLL)は、脊柱管の前壁を縦に走る後縦靱帯が骨化して厚くなり、脊髄や神経根を圧迫する病気で、中高年の男性の頚椎に多くみられます。手足のしびれ、手指の動かしにくさ、歩行障害、排尿障害などが現れ、国の指定難病(告示番号69)に定められています。

別名・略称OPLL、後縦靭帯骨化症、後縦靱帯骨化
分野骨・関節・結合組織疾患
好発年齢・性別中高年に多く、男性に多い
好発部位頚椎が最多、次いで胸椎、腰椎
主な症状手足のしびれ、手指の巧緻運動障害、歩行障害、排尿障害
主な検査単純X線、CT、MRI
主な治療保存療法(生活指導・装具・薬物)、症状が進行する場合は手術(除圧術)
受診する主な診療科整形外科(脊椎外科)

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後縦靱帯骨化症とは

後縦靱帯は、椎体と椎間板の後面に沿って頭側から尾側へ連続する靱帯で、脊柱管の前壁にあたります。後縦靱帯骨化症は、この靱帯に本来はない骨組織ができる(異所性骨化)ことで靱帯が肥厚・硬化し、脊柱管が前方から狭くなる疾患です。骨化があっても無症状のまま経過する人も多く、画像検査で偶然見つかることもあります。一方、骨化が大きくなったり、首の動きによって脊髄が繰り返し圧迫・こすられたりすると、脊髄症(頚髄症・胸髄症)や神経根症を発症します。指定難病では「後縦靱帯骨化症」(告示番号69)として位置づけられ、画像で骨化が確認され、それに起因する神経障害がある場合に対象となります。

部位による分類では、頚椎OPLLが最も多く、次いで胸椎OPLL、腰椎OPLLの順とされます。頚椎OPLLは単純X線側面像での骨化形態から、複数椎体にわたって連続する「連続型」、椎体後面に椎体ごとに分かれて存在する「分節型」、両者が混在する「混合型」、椎間板レベルに限局する「その他(限局型)」に分類されるのが一般的です。日本で比較的早くから報告が集積され、欧米よりアジア、とくに日本人に多いことから「Japanese disease」と呼ばれた歴史があります。厚生省(当時)の特定疾患調査研究班が1970年代から組織的に研究を進め、現在も厚生労働省の研究班や日本整形外科学会などにより診療ガイドラインが整備されています。また、黄色靱帯骨化症(OLF)や前縦靱帯骨化、びまん性特発性骨増殖症(DISH)を合併することがあり、全身の靱帯が骨化しやすい体質(骨化素因)の一表現と考えられています。

後縦靱帯骨化症の疫学・患者数

日本人の成人を対象とした頚椎単純X線での調査では、頚椎OPLLの頻度はおおむね数%(2〜4%程度)と報告されていますが、CTを用いた研究ではより高頻度に見つかるとする報告もあります。欧米人ではこれより低く、東アジアに多い傾向があります。発症(症状出現)は40〜60歳代に多く、50歳前後がピークとされます。頚椎OPLLは男性が女性のおよそ2倍多いとされる一方、胸椎OPLLは女性にやや多い傾向が報告されています。肥満、糖尿病などの耐糖能異常との関連が指摘されているほか、家族内発症が多いことも知られ、患者の兄弟姉妹では一般集団より高い頻度で骨化が認められると報告されています。指定難病としての医療費助成受給者は全国で数万人規模とされますが、これは症状があり重症度基準を満たす一部の患者であり、無症状の骨化保有者はさらに多いと考えられます。

後縦靱帯骨化症の原因・病態生理

原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的素因と環境・代謝要因が組み合わさって発症する多因子疾患と考えられています。家系内集積や双生児研究から遺伝的要因の関与は確実視されており、単一遺伝子病ではなく、複数の感受性遺伝子が関与する多遺伝子性の疾患とされます。日本人を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)では複数の疾患感受性領域が同定されており、骨・軟骨の形成にかかわる遺伝子群の関与が示唆されています。また、無機ピロリン酸の産生にかかわる酵素(ENPP1)の異常を持つマウスで脊椎靱帯の骨化が生じることや、コラーゲン関連遺伝子の多型との関連が報告されていますが、個々の遺伝子の寄与は大きくありません。代謝・内分泌面では、肥満、糖尿病・高インスリン血症、カルシウム・リン代謝異常(副甲状腺機能低下症、X連鎖性低リン血症性くる病など)、成長ホルモン過剰(先端巨大症)との関連が報告されています。

発症機序としては、後縦靱帯の中で靱帯細胞(線維芽細胞)が軟骨細胞様・骨芽細胞様に分化し、軟骨内骨化の過程を経て骨組織に置き換わっていくと考えられています。BMP(骨形成因子)やTGF-βなどの骨形成シグナル、インスリンやレプチンなどの代謝性因子、首の動きに伴う靱帯への機械的ストレスが、この分化を促進すると推測されています。骨化は年単位でゆっくり厚みと長さを増すことが多く、とくに若年発症例や連続型・混合型で進行しやすいとされます。神経障害は、①骨化による脊柱管の静的狭窄(脊柱管前後径に対して骨化が占める割合=占拠率が高いほど危険)と、②首の屈伸に伴い骨化の隙間(分節部)で脊髄が動かされ圧迫される動的因子の両方によって生じます。慢性的な圧迫は脊髄の灰白質・白質の虚血や脱髄、神経細胞の脱落を招き、MRIのT2強調像での髄内高信号として捉えられることがあります。脊柱管が狭い状態では、転倒など比較的軽微な外傷でも脊髄損傷(骨傷のない頚髄損傷など)を起こしやすくなります。

後縦靱帯骨化症の症状

  • 首・肩の痛みやこわばり: 初期症状として首の痛み、肩こり、首の動かしにくさが現れることがあります。骨化に特異的な症状ではないため、見過ごされやすい点に注意が必要です。
  • 手指のしびれ: 両手や指先のジンジンするしびれ、感覚の鈍さが出現します。頚髄症では手袋型に両側性に広がることが多いとされます。
  • 手の巧緻運動障害: 箸が使いにくい、ボタンを留めにくい、字が書きにくいなど細かい動作が困難になります。指を伸ばしたとき小指側の指が離れる(finger escape sign)など「脊髄症手」と呼ばれる所見がみられることがあります。
  • 歩行障害(痙性歩行): 足がつっぱる、ふらつく、階段の昇り降りで手すりが必要になるなど、下肢の痙性と感覚障害による歩行障害が生じます。進行すると杖や車椅子が必要になる場合があります。
  • 下肢・体幹のしびれ: 足のしびれや感覚低下、胸髄の圧迫では胸腹部に帯状のしびれや締め付け感が出ることがあります。
  • 腱反射亢進・病的反射: 診察で上下肢の腱反射亢進、ホフマン反射やバビンスキー反射などの病的反射が確認され、脊髄が障害されているサインとなります。
  • 排尿・排便障害: 頻尿、残尿感、尿が出にくい、失禁、便秘などの膀胱直腸障害が現れることがあり、脊髄症が進行した指標の一つとされます。
  • 神経根症状(上肢への放散痛): 骨化が神経根を圧迫すると、片側の肩から腕・指にかけて放散する痛みやしびれ、筋力低下が生じることがあります。
  • 筋力低下・筋萎縮: 手の筋肉(骨間筋など)がやせたり握力が低下したりすることがあります。
  • 外傷後の急激な悪化: 転倒や追突事故などで首を反らせた際に、骨折がなくても急に四肢の麻痺やしびれが強まることがあり、OPLLの重要な特徴です。

後縦靱帯骨化症の経過と合併症

OPLLの自然経過は個人差が大きく、骨化があっても生涯にわたり脊髄症を発症しない人が少なくありません。長期追跡研究では、診断時に脊髄症のない人の多くは長期間にわたり脊髄症を発症しない一方、一部は徐々に症状が出現・進行すると報告されています。脊髄症発症の危険因子としては、骨化占拠率が高いこと(一般に60%前後を超える場合)、残存する有効脊柱管径が狭いこと、頚椎の可動域が大きく動的圧迫があること、混合型などが挙げられています。症状は数か月〜数年かけて緩やかに進行することが多いものの、外傷を契機に急激に悪化することもあります。一度生じた脊髄の障害は、長期間放置されると手術後も回復しにくくなるため、症状の推移を定期的に評価することが重要です。

合併症としては、まず軽微な外傷による脊髄損傷が最も重要で、転倒によって四肢麻痺に至ることがあります。歩行障害による転倒・骨折、排尿障害に伴う尿路感染症、長期臥床による廃用症候群、褥瘡、誤嚥性肺炎などにも注意が必要です。黄色靱帯骨化症(とくに胸椎)、DISH、腰部脊柱管狭窄症を合併することがあり、複数部位に病変がある場合は症状の原因部位を見極める必要があります(広範脊柱管狭窄症として扱われることもあります)。また、糖尿病や肥満を合併する頻度が高く、全身管理や手術リスクに影響します。手術関連の合併症としては、C5麻痺(術後の肩挙上困難)、髄液漏、骨化の術後進展、頚椎後弯の進行、隣接椎間障害などが知られています。

後縦靱帯骨化症の診断・診断基準

診断は、手足のしびれや巧緻運動障害、歩行障害などの症状と神経学的診察所見から脊髄症・神経根症を疑い、画像検査で後縦靱帯の骨化を確認し、さらにその骨化が症状の原因として説明できるかを評価する流れで行われます。骨化自体はX線で比較的容易に見つかりますが、症状が他の疾患(頚椎症、神経変性疾患、末梢神経障害など)によるものでないかを慎重に鑑別することが重要です。重症度は日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準(JOAスコア)などで評価され、手術適応の判断や経過観察に用いられます。指定難病の医療費助成では、画像所見と神経症状を含む診断基準を満たしたうえで、厚生労働省が定める重症度基準に該当するか、または軽症でも医療費が一定以上かかる場合(軽症高額該当)が対象となります。申請には難病指定医による臨床調査個人票が必要です。

  • 神経学的診察: 腱反射亢進、病的反射(ホフマン反射、バビンスキー反射など)、感覚障害の分布、筋力低下、歩行状態などを評価し、脊髄レベルの障害部位を推定します。
  • 頚椎単純X線(側面像・機能撮影): 椎体後方の骨化像を確認し、連続型・分節型・混合型・限局型に分類します。前屈・後屈の機能撮影で可動性や不安定性を評価します。
  • CT(多断面再構成): 骨化の形態、厚さ、占拠率、範囲を最も正確に把握できる検査です。硬膜骨化を示唆する所見(double-layer signなど)の有無は前方手術の計画にも重要です。
  • MRI: 脊髄の圧迫の程度や、T2強調像での髄内高信号(脊髄内の変化)を評価します。骨化そのものは低信号で描出されにくいため、CTと組み合わせて判断します。
  • 脊髄造影・CTミエログラフィー: MRIが撮影できない場合や手術計画で詳細な圧迫部位の評価が必要な場合に行われることがあります。
  • JOAスコア(頚髄症治療成績判定基準): 上肢・下肢の運動機能、感覚、膀胱機能を点数化し、重症度評価や手術前後の変化の判定に用いられます。
  • K-line: 頚椎側面像でC2とC7の脊柱管中央を結んだ線と骨化の位置関係をみる指標で、骨化がこの線を越える(K-line陰性)場合は後方除圧のみでは改善が得にくいとされ、術式選択の参考になります。
  • 電気生理学的検査: 体性感覚誘発電位(SEP)、運動誘発電位(MEP)、神経伝導検査、筋電図などで障害部位の推定や末梢神経障害・運動ニューロン疾患との鑑別を行います。
  • 全脊椎の画像評価・血液検査: 胸椎OPLLや黄色靱帯骨化の合併を確認するため全脊椎の評価が推奨されます。血糖・HbA1c、カルシウム・リンなど代謝異常の有無も確認されます。

後縦靱帯骨化症と鑑別すべき疾患

  • 頚椎症性脊髄症: 椎間板の変性や骨棘による圧迫で同様の症状を呈しますが、CTで靱帯の連続的・分節的な骨化がない点で区別されます。
  • 頚椎椎間板ヘルニア: 比較的若年にも生じ、MRIで椎間板の突出が確認され、骨化を伴わない点が異なります(限局型OPLLとの区別にCTが有用です)。
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS): 感覚障害を伴わない進行性の筋力低下・筋萎縮と広範な脱神経所見を示し、画像上の圧迫で説明できない点が鑑別の要点です。
  • 多発性硬化症・視神経脊髄炎: MRIで脊髄内に炎症性病変を認め、寛解・再発する経過や視神経症状、髄液所見・抗体検査で区別されます。
  • 黄色靱帯骨化症: 脊柱管の後方から脊髄を圧迫し主に胸椎に多い疾患で、OPLLと合併することもあるためCTで骨化の位置を確認します。
  • 脊髄腫瘍・脊髄空洞症: MRIで髄内・硬膜内の腫瘤や空洞を認めることで区別され、骨化を伴う患者でも症状が画像と合わない場合は検索が必要です。

後縦靱帯骨化症の治療

治療の基本は、①神経症状の有無と重症度、②骨化の大きさ・占拠率と動的因子、③症状の進行速度を総合的に評価し、保存療法か手術療法かを選択することです。骨化があっても無症状または軽い痛みのみの場合は、首を強く反らす姿勢や転倒を避ける生活指導と定期的な経過観察が中心となります。骨化そのものを消失させたり進行を確実に止めたりする薬物療法は現時点では確立していません。一方、手指の巧緻運動障害や歩行障害などの脊髄症が明らかで進行性の場合、日常生活に支障がある場合には、障害が固定する前の手術(除圧術、必要に応じて固定術)が検討されます。術式は骨化の範囲や形態、頚椎の配列(前弯・後弯)、K-line、全身状態などによって選ばれ、それぞれに利点とリスクがあるため、脊椎脊髄外科の専門医と十分に相談して決めることが大切です。

  • 生活指導・頚部の安静: 首を後ろに強く反らせる動作(上を向いての作業、うがい、美容室での洗髪姿勢など)や転倒を避けるよう指導されます。症状が強い時期には頚椎カラーが短期間用いられることがあります。
  • 薬物療法(対症療法): 痛みに対して消炎鎮痛薬、しびれや神経障害性疼痛に対してプレガバリンやミロガバリンなどが用いられることがありますが、症状を和らげる目的であり骨化を治すものではありません。
  • リハビリテーション: 筋力・バランス訓練、歩行訓練、手指の巧緻動作訓練などにより機能維持と転倒予防を図ります。頚椎を無理に動かす牽引や強いマッサージは症状を悪化させるおそれがあるため、主治医と相談のうえ行います。
  • 椎弓形成術(後方除圧術): 頚椎の後方から椎弓を開いて脊柱管を拡大し、脊髄を後方に逃がす手術で、多椎間に及ぶ頚椎OPLLで広く行われています。頚椎の前弯が保たれ、骨化が大きすぎない(K-line陽性など)場合に良い成績が期待されるとされます。
  • 後方除圧固定術: 後方除圧にスクリューなどによる固定を加え、動的な圧迫を抑える方法で、後弯傾向がある例、K-line陰性例、不安定性がある例などで選択されることがあります。
  • 前方除圧固定術(骨化浮上術など): 首の前方から骨化を直接切除する、または薄くして前方へ浮上させ、骨移植や固定を行う方法で、占拠率の高い骨化や後弯例に有効とされます。一方で、手技の難度が高く、髄液漏や嚥下障害などの合併症に注意が必要です。
  • 胸椎OPLLの手術: 胸椎は生理的に後弯しているため後方除圧だけでは効果が限られることがあり、後方除圧固定術や後方からの前方除圧などが行われます。術後麻痺のリスクが頚椎より高いとされ、経験豊富な施設での治療が望まれます。
  • 術中脊髄モニタリング・周術期管理: 手術中に運動誘発電位などで脊髄機能を監視し、合併症の予防に努めます。糖尿病などの併存症の管理も術後成績に影響します。
  • 術後リハビリテーション・装具: 術後は早期からの離床と機能訓練が行われ、術式に応じて頚椎カラーを一定期間使用することがあります。回復には数か月〜1年以上かかることもあります。

後縦靱帯骨化症の予後・長期フォロー

OPLLそのものが直接生命にかかわることは通常まれで、生命予後は併存症(糖尿病、心血管疾患など)の影響を受けます。機能予後は、脊髄症の重症度と罹病期間に大きく左右され、術前の障害が軽く罹病期間が短いほど術後の改善が得られやすいとされます。手術により歩行や手の機能が改善する例が多い一方、長期間の圧迫で脊髄に不可逆的な変化が生じている場合には、しびれや痙性が残ることも少なくありません。頚椎OPLLの手術成績は総じて良好と報告されていますが、長期的には骨化の進展や頚椎配列の変化、加齢に伴う機能低下により症状が再び悪化することがあります。外傷による急性の脊髄損傷はQOLを大きく損なうため、転倒予防が予後改善の重要な鍵となります。

長期フォローアップでは、症状(しびれ、手指の動き、歩行、排尿)の変化をJOAスコアなどで定期的に評価し、必要に応じて単純X線やCT、MRIで骨化の進展と脊髄圧迫を確認します。保存療法中の方は、症状の悪化がみられた時点で手術適応を再検討します。手術後も骨化は進展しうるため、年単位での経過観察が推奨されます。他部位(胸椎・腰椎)の骨化や黄色靱帯骨化が後から症状を起こすことがあるため、新たな下肢症状や排尿障害が出た場合は全脊椎の評価が必要です。糖尿病・肥満などの代謝性疾患の管理、骨粗鬆症対策、筋力維持も長期的な機能維持に役立ちます。

後縦靱帯骨化症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活では、首を強く反らせる姿勢と転倒を避けることが最も重要です。高い所の物を取る、天井を見上げての作業、美容院やうがいで首を大きく反らす動作は控えめにし、枕は首が過度に反らない高さに調整します。足元を明るくし、段差の解消や手すりの設置、滑りにくい履物の使用など住環境を整えることで転倒を防ぎます。飲酒時の転倒、自転車やバイク、コンタクトスポーツなど頭頸部に衝撃が加わる活動にも注意が必要です。自動車運転ではヘッドレストを適切な位置に調整します。適正体重の維持と血糖管理、適度な運動(ウォーキングなど、主治医が許可した範囲)は全身状態の改善に役立ちます。家族内に発症者が多い傾向はありますが、単一遺伝子による遺伝病ではないため、家族が必ず発症するわけではありません。家族に首や手足の症状がある場合は、早めに整形外科などを受診するとよいでしょう。遺伝に関する不安がある場合は、主治医に相談するか、必要に応じて遺伝カウンセリングの専門外来を利用することもできます。

利用できる制度・相談窓口

後縦靱帯骨化症は指定難病(告示番号69)であり、診断基準と重症度基準を満たす場合、または軽症でも月ごとの医療費総額が一定以上となる月が年間に一定回数以上ある場合(軽症高額該当)には、特定医療費(指定難病)の医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票などを添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所など)に行います。また、後縦靱帯骨化症は介護保険の特定疾病に含まれるため、40〜64歳の方でも要介護認定を受ければ介護保険サービス(訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、住宅改修など)を利用できます。手足の麻痺が残る場合は身体障害者手帳(肢体不自由)の対象となることがあり、補装具の給付や税制上の優遇などが受けられます。症状により就労や日常生活が制限される場合は障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の対象となる可能性があります。そのほか、高額療養費制度、会社員の方の傷病手当金、障害者総合支援法による障害福祉サービス(指定難病の方も対象)などがあります。制度の詳細や手続きは、都道府県の難病相談支援センター、保健所、病院の医療ソーシャルワーカー(相談室)、市区町村の介護・障害福祉窓口、地域包括支援センターなどで相談できます。

後縦靱帯骨化症に伴う心のケア・心理社会的支援

後縦靱帯骨化症は、働き盛りから中高年に発症し、手指の不自由さや歩行障害が仕事、家事、趣味に直接影響するため、喪失感や将来への不安を抱きやすい病気です。「いつ悪化するかわからない」「転んだら麻痺になるかもしれない」という恐れから外出や活動を控え、結果として筋力低下や社会的孤立、抑うつにつながることがあります。手術を受けるかどうかの決断、術後に思ったほど症状が改善しない場合の落胆、慢性的なしびれや痛みによる睡眠障害やいらだちも、心理的負担の大きな要因です。家族も介護負担や役割変化に悩むことがあります。気分の落ち込みや意欲低下、不眠、不安が2週間以上続く場合は、適応障害やうつ病の可能性もあるため、我慢せず主治医に伝え、必要に応じて心療内科・精神科、公認心理師などの専門職につないでもらいましょう。痛みやしびれに対しては、ペインクリニックや多職種による支援が役立つこともあります。患者会や難病相談支援センターで同じ病気の方と経験を共有することも、孤立感の軽減に有効です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

後縦靱帯骨化症の受診の目安

  • 箸が使いにくい、ボタンが留めにくい、字が書きにくいなど手指の細かい動作がしにくくなった場合は、整形外科(脊椎脊髄外科)を受診しましょう。
  • 手足のしびれが広がる、歩くとふらつく、階段で手すりが必要になったなど、症状が徐々に進行している場合は早めに主治医に相談してください。
  • 尿が出にくい、残尿感や頻尿、失禁など新たな排尿・排便の異常が現れた場合は速やかに受診してください。
  • 転倒や交通事故などで首を打ったり反らせたりした後に、手足のしびれや動かしにくさが急に強まった場合は、救急受診が必要です。
  • 手術後に発熱、創部の腫れや液体の漏れ、急な手足の麻痺や呼吸・飲み込みの異常が生じた場合は、直ちに手術を受けた医療機関へ連絡してください。

後縦靱帯骨化症についてのよくある質問

Q. 骨化が見つかったら、必ず手術が必要ですか?

A. いいえ。骨化があっても無症状、または軽い症状のみであれば、生活上の注意と定期的な経過観察で過ごす方も多くいます。手術は、脊髄症の症状が明らかで進行している場合や日常生活に支障がある場合に検討されますので、主治医とよく相談してください。

Q. 骨化を薬で溶かしたり、止めたりできますか?

A. 現時点では、骨化を消失させたり進行を確実に止めたりする薬は確立していません。薬物療法は痛みやしびれを和らげるための対症療法が中心で、病気の原因や骨化を抑える治療法の研究が進められています。

Q. 家族や子どもにも遺伝しますか?

A. 家族内に発症者が多い傾向はありますが、複数の遺伝的要因と環境要因が関与する多因子疾患と考えられており、親から子へ必ず遺伝する病気ではありません。ご家族に首や手足の症状がある場合は、早めに医療機関で相談するとよいでしょう。

Q. 首のマッサージや整体を受けても大丈夫ですか?

A. 脊柱管が狭くなっている状態で首を強くひねったり反らしたりすると、脊髄を傷めて症状が悪化するおそれがあります。首への強い施術は避け、リハビリや運動の内容は主治医やリハビリ専門職と相談してから行うことをおすすめします。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。